口語訳聖書 日本聖書協会 [#改ページ] マタイによる福音書[#「マタイによる福音書」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]アブラハムの|子《こ》であるダビデの|子《こ》、イエス・キリストの|系図《けいず》。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]アブラハムはイサクの|父《ちち》であり、イサクはヤコブの|父《ちち》、ヤコブはユダとその|兄弟《きょうだい》たちとの|父《ちち》、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ユダはタマルによるパレスとザラとの|父《ちち》、パレスはエスロンの|父《ちち》、エスロンはアラムの|父《ちち》、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]アラムはアミナダブの|父《ちち》、アミナダブはナアソンの|父《ちち》、ナアソンはサルモンの|父《ちち》、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]サルモンはラハブによるボアズの|父《ちち》、ボアズはルツによるオベデの|父《ちち》、オベデはエッサイの|父《ちち》、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]エッサイはダビデ|王《おう》の|父《ちち》であった。  ダビデはウリヤの|妻《つま》によるソロモンの|父《ちち》であり、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ソロモンはレハベアムの|父《ちち》、レハベアムはアビヤの|父《ちち》、アビヤはアサの|父《ちち》、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]アサはヨサパテの|父《ちち》、ヨサパテはヨラムの|父《ちち》、ヨラムはウジヤの|父《ちち》、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ウジヤはヨタムの|父《ちち》、ヨタムはアハズの|父《ちち》、アハズはヒゼキヤの|父《ちち》、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]ヒゼキヤはマナセの|父《ちち》、マナセはアモンの|父《ちち》、アモンはヨシヤの|父《ちち》、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ヨシヤはバビロンへ|移《うつ》されたころ、エコニヤとその|兄弟《きょうだい》たちとの|父《ちち》となった。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]バビロンへ|移《うつ》されたのち、エコニヤはサラテルの|父《ちち》となった。サラテルはゾロバベルの|父《ちち》、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ゾロバベルはアビウデの|父《ちち》、アビウデはエリヤキムの|父《ちち》、エリヤキムはアゾルの|父《ちち》、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]アゾルはサドクの|父《ちち》、サドクはアキムの|父《ちち》、アキムはエリウデの|父《ちち》、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]エリウデはエレアザルの|父《ちち》、エレアザルはマタンの|父《ちち》、マタンはヤコブの|父《ちち》、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]ヤコブはマリヤの|夫《おっと》ヨセフの|父《ちち》であった。このマリヤからキリストといわれるイエスがお|生《うま》れになった。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]だから、アブラハムからダビデまでの|代《だい》は|合《あ》わせて十四|代《だい》、ダビデからバビロンへ|移《うつ》されるまでは十四|代《だい》、そして、バビロンへ|移《うつ》されてからキリストまでは十四|代《だい》である。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]イエス・キリストの|誕生《たんじょう》の|次第《しだい》はこうであった。|母《はは》マリヤはヨセフと|婚約《こんやく》していたが、まだ|一緒《いっしょ》にならない|前《まえ》に、|聖霊《せいれい》によって|身重《みおも》になった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|夫《おっと》ヨセフは|正《ただ》しい|人《ひと》であったので、|彼女《かのじょ》のことが|公《おおや》けになることを|好《この》まず、ひそかに|離縁《りえん》しようと|決心《けっしん》した。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》がこのことを|思《おも》いめぐらしていたとき、|主《しゅ》の|使《つかい》が|夢《ゆめ》に|現《あらわ》れて|言《い》った、「ダビデの|子《こ》ヨセフよ、|心配《しんぱい》しないでマリヤを|妻《つま》として|迎《むか》えるがよい。その|胎内《たいない》に|宿《やど》っているものは|聖霊《せいれい》によるのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》は|男《おとこ》の|子《こ》を|産《う》むであろう。その|名《な》をイエスと|名《な》づけなさい。|彼《かれ》は、おのれの|民《たみ》をそのもろもろの|罪《つみ》から|救《すく》う|者《もの》となるからである」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すべてこれらのことが|起《おこ》ったのは、|主《しゅ》が|預言者《よげんしゃ》によって|言《い》われたことの|成就《じょうじゅ》するためである。すなわち、 [#ここから2字下げ] [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]「|見《み》よ、おとめがみごもって|男《おとこ》の|子《こ》を|産《う》むであろう。 その|名《な》はインマヌエルと|呼《よ》ばれるであろう」。 [#ここで字下げ終わり] これは、「|神《かみ》われらと|共《とも》にいます」という|意味《いみ》である。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ヨセフは|眠《ねむ》りからさめた|後《のち》に、|主《しゅ》の|使《つかい》が|命《めい》じたとおりに、マリヤを|妻《つま》に|迎《むか》えた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|子《こ》が|生《うま》れるまでは、|彼女《かのじょ》を|知《し》ることはなかった。そして、その|子《こ》をイエスと|名《な》づけた。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスがヘロデ|王《おう》の|代《だい》に、ユダヤのベツレヘムでお|生《うま》れになったとき、|見《み》よ、|東《ひがし》からきた|博士《はかせ》たちがエルサレムに|着《つ》いて|言《い》った、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「ユダヤ|人《じん》の|王《おう》としてお|生《うま》れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちは|東《ひがし》の|方《ほう》でその|星《ほし》を|見《み》たので、そのかたを|拝《おが》みにきました」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ヘロデ|王《おう》はこのことを|聞《き》いて|不安《ふあん》を|感《かん》じた。エルサレムの|人々《ひとびと》もみな、|同様《どうよう》であった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこで|王《おう》は|祭司長《さいしちょう》たちと|民《たみ》の|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちとを|全部《ぜんぶ》|集《あつ》めて、キリストはどこに|生《うま》れるのかと、|彼《かれ》らに|問《と》いただした。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|王《おう》に|言《い》った、「それはユダヤのベツレヘムです。|預言者《よげんしゃ》がこうしるしています、 [#ここから2字下げ] [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]『ユダの|地《ち》、ベツレヘムよ、 おまえはユダの|君《きみ》たちの|中《なか》で、 |決《けっ》して|最《もっと》も|小《ちい》さいものではない。 おまえの|中《なか》からひとりの|君《きみ》が|出《で》て、 わが|民《たみ》イスラエルの|牧者《ぼくしゃ》となるであろう』」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ヘロデはひそかに|博士《はかせ》たちを|呼《よ》んで、|星《ほし》の|現《あらわ》れた|時《とき》について|詳《くわ》しく|聞《き》き、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らをベツレヘムにつかわして|言《い》った、「|行《い》って、その|幼《おさ》な|子《ご》のことを|詳《くわ》しく|調《しら》べ、|見《み》つかったらわたしに|知《し》らせてくれ。わたしも|拝《おが》みに|行《い》くから」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|王《おう》の|言《い》うことを|聞《き》いて|出《で》かけると、|見《み》よ、|彼《かれ》らが|東方《とうほう》で|見《み》た|星《ほし》が、|彼《かれ》らより|先《さき》に|進《すす》んで、|幼《おさ》な|子《ご》のいる|所《ところ》まで|行《い》き、その|上《うえ》にとどまった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはその|星《ほし》を|見《み》て、|非常《ひじょう》な|喜《よろこ》びにあふれた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そして、|家《いえ》にはいって、|母《はは》マリヤのそばにいる|幼《おさ》な|子《ご》に|会《あ》い、ひれ|伏《ふ》して|拝《おが》み、また、|宝《たから》の|箱《はこ》をあけて、|黄金《おうごん》・|乳香《にゅうこう》・|没薬《もつやく》などの|贈《おく》り|物《もの》をささげた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そして、|夢《ゆめ》でヘロデのところに|帰《かえ》るなとのみ|告《つ》げを|受《う》けたので、|他《た》の|道《みち》をとおって|自分《じぶん》の|国《くに》へ|帰《かえ》って|行《い》った。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|帰《かえ》って|行《い》ったのち、|見《み》よ、|主《しゅ》の|使《つかい》が|夢《ゆめ》でヨセフに|現《あらわ》れて|言《い》った、「|立《た》って、|幼《おさ》な|子《ご》とその|母《はは》を|連《つ》れて、エジプトに|逃《に》げなさい。そして、あなたに|知《し》らせるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが|幼《おさ》な|子《ご》を|捜《さが》し|出《だ》して、|殺《ころ》そうとしている」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ヨセフは|立《た》って、|夜《よる》の|間《あいだ》に|幼《おさ》な|子《ご》とその|母《はは》とを|連《つ》れてエジプトへ|行《い》き、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ヘロデが|死《し》ぬまでそこにとどまっていた。それは、|主《しゅ》が|預言者《よげんしゃ》によって「エジプトからわが|子《こ》を|呼《よ》び|出《だ》した」と|言《い》われたことが、|成就《じょうじゅ》するためである。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]さて、ヘロデは|博士《はかせ》たちにだまされたと|知《し》って、|非常《ひじょう》に|立腹《りっぷく》した。そして|人々《ひとびと》をつかわし、|博士《はかせ》たちから|確《たし》かめた|時《とき》に|基《もとづ》いて、ベツレヘムとその|附近《ふきん》の|地方《ちほう》とにいる二|歳《さい》|以下《いか》の|男《おとこ》の|子《こ》を、ことごとく|殺《ころ》した。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|預言者《よげんしゃ》エレミヤによって|言《い》われたことが、|成就《じょうじゅ》したのである。 [#ここから2字下げ] [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]「|叫《さけ》び|泣《な》く|大《おお》いなる|悲《かな》しみの|声《こえ》が ラマで|聞《きこ》えた。 ラケルはその|子《こ》らのためになげいた。 |子《こ》らがもはやいないので、 |慰《なぐさ》められることさえ|願《ねが》わなかった」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]さて、ヘロデが|死《し》んだのち、|見《み》よ、|主《しゅ》の|使《つかい》がエジプトにいるヨセフに|夢《ゆめ》で|現《あらわ》れて|言《い》った、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]「|立《た》って、|幼《おさ》な|子《ご》とその|母《はは》を|連《つ》れて、イスラエルの|地《ち》に|行《い》け。|幼《おさ》な|子《ご》の|命《いのち》をねらっていた|人々《ひとびと》は、|死《し》んでしまった」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこでヨセフは|立《た》って、|幼《おさ》な|子《ご》とその|母《はは》とを|連《つ》れて、イスラエルの|地《ち》に|帰《かえ》った。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、アケラオがその|父《ちち》ヘロデに|代《かわ》ってユダヤを|治め《おさめ》ていると|聞《き》いたので、そこへ|行《い》くことを|恐《おそ》れた。そして|夢《ゆめ》でみ|告《つ》げを|受《う》けたので、ガリラヤの|地方《ちほう》に|退《しりぞ》き、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ナザレという|町《まち》に|行《い》って|住《す》んだ。これは|預言者《よげんしゃ》たちによって、「|彼《かれ》はナザレ|人《びと》と|呼《よ》ばれるであろう」と|言《い》われたことが、|成就《じょうじゅ》するためである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、バプテスマのヨハネが|現《あらわ》れ、ユダヤの|荒野《あらの》で|教《おしえ》を|宣《の》べて|言《い》った、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「|悔《く》い|改《あらた》めよ、|天国《てんごく》は|近《ちか》づいた」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|預言者《よげんしゃ》イザヤによって、 [#ここから2字下げ] 「|荒野《あらの》で|呼《よ》ばわる|者《もの》の|声《こえ》がする、 『|主《しゅ》の|道《みち》を|備《そな》えよ、 その|道《みち》|筋《すじ》をまっすぐにせよ』」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》われたのは、この|人《ひと》のことである。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]このヨハネは、らくだの|毛《け》ごろもを|着物《きもの》にし、|腰《こし》に|皮《かわ》の|帯《おび》をしめ、いなごと|野《の》|蜜《みつ》とを|食物《しょくもつ》としていた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]すると、エルサレムとユダヤ|全土《ぜんど》とヨルダン|附近《ふきん》|一帯《いったい》の|人々《ひとびと》が、ぞくぞくとヨハネのところに|出《で》てきて、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|罪《つみ》を|告白《こくはく》し、ヨルダン|川《がわ》でヨハネからバプテスマを|受《う》けた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネは、パリサイ|人《びと》やサドカイ|人《びと》が|大《おお》ぜいバプテスマを|受《う》けようとしてきたのを|見《み》て、|彼《かれ》らに|言《い》った、「まむしの|子《こ》らよ、|迫《せま》ってきている|神《かみ》の|怒《いか》りから、おまえたちはのがれられると、だれが|教《おし》えたのか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]だから、|悔改《くいあらた》めにふさわしい|実《み》を|結《むす》べ。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》たちの|父《ちち》にはアブラハムがあるなどと、|心《こころ》の|中《なか》で|思《おも》ってもみるな。おまえたちに|言《い》っておく、|神《かみ》はこれらの|石《いし》ころからでも、アブラハムの|子《こ》を|起《おこ》すことができるのだ。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|斧《おの》がすでに|木《き》の|根《ね》もとに|置《お》かれている。だから、|良《よ》い|実《み》を|結《むす》ばない|木《き》はことごとく|切《き》られて、|火《ひ》の|中《なか》に|投《な》げ|込《こ》まれるのだ。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|悔改《くいあらた》めのために、|水《みず》でおまえたちにバプテスマを|授《さづ》けている。しかし、わたしのあとから|来《く》る|人《ひと》はわたしよりも|力《ちから》のあるかたで、わたしはそのくつをぬがせてあげる|値《ね》うちもない。このかたは、|聖霊《せいれい》と|火《ひ》とによっておまえたちにバプテスマをお|授《さづ》けになるであろう。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]また、|箕《み》を|手《て》に|持《も》って、|打《う》ち|場《ば》の|麦《むぎ》をふるい|分《わ》け、|麦《むぎ》は|倉《くら》に|納《おさ》め、からは|消《き》えない|火《ひ》で|焼《や》き|捨《す》てるであろう」。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そのときイエスは、ガリラヤを|出《で》てヨルダン|川《がわ》に|現《あらわ》れ、ヨハネのところにきて、バプテスマを|受《う》けようとされた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ところがヨハネは、それを|思《おも》いとどまらせようとして|言《い》った、「わたしこそあなたからバプテスマを|受《う》けるはずですのに、あなたがわたしのところにおいでになるのですか」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「|今《いま》は|受《う》けさせてもらいたい。このように、すべての|正《ただ》しいことを|成就《じょうじゅ》するのは、われわれにふさわしいことである」。そこでヨハネはイエスの|言《い》われるとおりにした。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]イエスはバプテスマを|受《う》けるとすぐ、|水《みず》から|上《あ》がられた。すると、|見《み》よ、|天《てん》が|開《ひら》け、|神《かみ》の|御霊《みたま》がはとのように|自分《じぶん》の|上《うえ》に|下《くだ》ってくるのを、ごらんになった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また|天《てん》から|声《こえ》があって|言《い》った、「これはわたしの|愛《あい》する|子《こ》、わたしの|心《こころ》にかなう|者《もの》である」。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスは|御霊《みたま》によって|荒野《あらの》に|導《みちび》かれた。|悪魔《あくま》に|試《こころ》みられるためである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして、四十|日《にち》四十|夜《や》、|断食《だんじき》をし、そののち|空腹《くうふく》になられた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すると|試《こころ》みる|者《もの》がきて|言《い》った、「もしあなたが|神《かみ》の|子《こ》であるなら、これらの|石《いし》がパンになるように|命《めい》じてごらんなさい」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「『|人《ひと》はパンだけで|生《い》きるものではなく、|神《かみ》の|口《くち》から|出《で》る一つ一つの|言《ことば》で|生《い》きるものである』と|書《か》いてある」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それから|悪魔《あくま》は、イエスを|聖《せい》なる|都《みやこ》に|連《つ》れて|行《い》き、|宮《みや》の|頂上《ちょうじょう》に|立《た》たせて[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「もしあなたが|神《かみ》の|子《こ》であるなら、|下《した》へ|飛《と》びおりてごらんなさい。 [#ここから2字下げ] 『|神《かみ》はあなたのために|御使《みつかい》たちにお|命《めい》じになると、 あなたの|足《あし》が|石《いし》に|打《う》ちつけられないように、 |彼《かれ》らはあなたを|手《て》でささえるであろう』 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてありますから」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「『|主《しゅ》なるあなたの|神《かみ》を|試《こころ》みてはならない』とまた|書《か》いてある」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|次《つぎ》に|悪魔《あくま》は、イエスを|非常《ひじょう》に|高《たか》い|山《やま》に|連《つ》れて|行《い》き、この|世《よ》のすべての|国々《くにぐに》とその|栄華《えいが》とを|見《み》せて[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「もしあなたが、ひれ|伏《ふ》してわたしを|拝《おが》むなら、これらのものを|皆《みな》あなたにあげましょう」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「サタンよ、|退《しりぞ》け。『|主《しゅ》なるあなたの|神《かみ》を|拝《はい》し、ただ|神《かみ》にのみ|仕《つか》えよ』と|書《か》いてある」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|悪魔《あくま》はイエスを|離《はな》れ|去《さ》り、そして、|御使《みつかい》たちがみもとにきて|仕《つか》えた。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスはヨハネが|捕《とら》えられたと|聞《き》いて、ガリラヤへ|退《しりぞ》かれた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そしてナザレを|去《さ》り、ゼブルンとナフタリとの|地方《ちほう》にある|海《うみ》べの|町《まち》カペナウムに|行《い》って|住《す》まわれた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]これは|預言者《よげんしゃ》イザヤによって|言《い》われた|言《ことば》が、|成就《じょうじゅ》するためである。 [#ここから2字下げ] [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]「ゼブルンの|地《ち》、ナフタリの|地《ち》、 |海《うみ》に|沿《そ》う|地方《ちほう》、ヨルダンの|向《む》こうの|地《ち》、 |異邦人《いほうじん》のガリラヤ、 [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|暗黒《あんこく》の|中《なか》に|住《す》んでいる|民《たみ》は|大《おお》いなる|光《ひかり》を|見《み》、 |死《し》の|地《ち》、|死《し》の|陰《かげ》に|住《す》んでいる|人々《ひとびと》に、|光《ひかり》がのぼった」。 [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]この|時《とき》からイエスは|教《おしえ》を|宣《の》べはじめて|言《い》われた、「|悔《く》い|改《あらた》めよ、|天国《てんごく》は|近《ちか》づいた」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスがガリラヤの|海《うみ》べを|歩《ある》いておられると、ふたりの|兄弟《きょうだい》、すなわち、ペテロと|呼《よ》ばれたシモンとその|兄弟《きょうだい》アンデレとが、|海《うみ》に|網《あみ》を|打《う》っているのをごらんになった。|彼《かれ》らは|漁師《りょうし》であった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、|人間《にんげん》をとる|漁師《りょうし》にしてあげよう」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》らはすぐに|網《あみ》を|捨《す》てて、イエスに|従《したが》った。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこから|進《すす》んで|行《い》かれると、ほかのふたりの|兄弟《きょうだい》、すなわち、ゼベダイの|子《こ》ヤコブとその|兄弟《きょうだい》ヨハネとが、|父《ちち》ゼベダイと|一緒《いっしょ》に、|舟《ふね》の|中《なか》で|網《あみ》を|繕《つくろ》っているのをごらんになった。そこで|彼《かれ》らをお|招《まね》きになると、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すぐ|舟《ふね》と|父《ちち》とをおいて、イエスに|従《したが》って|行《い》った。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはガリラヤの|全《ぜん》|地《ち》を|巡《めぐ》り|歩《ある》いて、|諸《しょ》|会堂《かいどう》で|教《おし》え、|御国《みくに》の|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》え、|民《たみ》の|中《なか》のあらゆる|病気《びょうき》、あらゆるわずらいをおいやしになった。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、その|評判《ひょうばん》はシリヤ|全《ぜん》|地《ち》にひろまり、|人々《ひとびと》があらゆる|病《やまい》にかかっている|者《もの》、すなわち、いろいろの|病気《びょうき》と|苦《くる》しみとに|悩《なや》んでいる|者《もの》、|悪霊《あくれい》につかれている|者《もの》、てんかん、|中風《ちゅうぶ》の|者《もの》などをイエスのところに|連《つ》れてきたので、これらの|人々《ひとびと》をおいやしになった。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]こうして、ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ|及《およ》びヨルダンの|向《む》こうから、おびただしい|群衆《ぐんしゅう》がきてイエスに|従《したが》った。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこの|群衆《ぐんしゅう》を|見《み》て、|山《やま》に|登《のぼ》り、|座《ざ》につかれると、|弟子《でし》たちがみもとに|近寄《ちかよ》ってきた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|口《くち》を|開《ひら》き、|彼《かれ》らに|教《おし》えて|言《い》われた。 [#ここから2字下げ] [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]「こころの|貧《まず》しい|人《ひと》たちは、さいわいである、 |天国《てんごく》は|彼《かれ》らのものである。 [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|悲《かな》しんでいる|人《ひと》たちは、さいわいである、 |彼《かれ》らは|慰《なぐさ》められるであろう。 [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|柔和《にゅうわ》な|人《ひと》たちは、さいわいである、 |彼《かれ》らは|地《ち》を|受《う》けつぐであろう。 [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|義《ぎ》に|飢《う》えかわいている|人《ひと》たちは、さいわいである、 |彼《かれ》らは|飽《あ》き|足《た》りるようになるであろう。 [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あわれみ|深《ぶか》い|人《ひと》たちは、さいわいである、 |彼《かれ》らはあわれみを|受《う》けるであろう。 [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|心《こころ》の|清《きよ》い|人《ひと》たちは、さいわいである、 |彼《かれ》らは|神《かみ》を|見《み》るであろう。 [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|平和《へいわ》をつくり|出《だ》す|人《ひと》たちは、さいわいである、 |彼《かれ》らは|神《かみ》の|子《こ》と|呼《よ》ばれるであろう。 [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|義《ぎ》のために|迫害《はくがい》されてきた|人《ひと》たちは、 さいわいである、 |天国《てんごく》は|彼《かれ》らのものである。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしのために|人々《ひとびと》があなたがたをののしり、また|迫害《はくがい》し、あなたがたに|対《たい》し|偽《いつわ》って|様々《さまざま》の|悪口《あっこう》を|言《い》う|時《とき》には、あなたがたは、さいわいである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|喜《よろこ》び、よろこべ、|天《てん》においてあなたがたの|受《う》ける|報《むく》いは|大《おお》きい。あなたがたより|前《まえ》の|預言者《よげんしゃ》たちも、|同《おな》じように|迫害《はくがい》されたのである。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|地《ち》の|塩《しお》である。もし|塩《しお》のききめがなくなったら、|何《なに》によってその|味《あじ》が|取《と》りもどされようか。もはや、なんの|役《やく》にも|立《た》たず、ただ|外《そと》に|捨《す》てられて、|人々《ひとびと》にふみつけられるだけである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|世《よ》の|光《ひかり》である。|山《やま》の|上《うえ》にある|町《まち》は|隠《かく》れることができない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]また、あかりをつけて、それを|枡《ます》の|下《した》におく|者《もの》はいない。むしろ|燭台《しょくだい》の|上《うえ》において、|家《いえ》の|中《なか》のすべてのものを|照《てら》させるのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そのように、あなたがたの|光《ひかり》を|人々《ひとびと》の|前《まえ》に|輝《かがや》かし、そして、|人々《ひとびと》があなたがたのよいおこないを|見《み》て、|天《てん》にいますあなたがたの|父《ちち》をあがめるようにしなさい。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|律法《りっぽう》や|預言者《よげんしゃ》を|廃《はい》するためにきた、と|思《おも》ってはならない。|廃《はい》するためではなく、|成就《じょうじゅ》するためにきたのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]よく|言《い》っておく。|天地《てんち》が|滅《ほろ》び|行《ゆ》くまでは、|律法《りっぽう》の一|点《てん》、|一画《いっかく》もすたることはなく、ことごとく|全《まっと》うされるのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]それだから、これらの|最《もっと》も|小《ちい》さいいましめの一つでも|破《やぶ》り、またそうするように|人《ひと》に|教《おし》えたりする|者《もの》は、|天国《てんごく》で|最《もっと》も|小《ちい》さい|者《もの》と|呼《よ》ばれるであろう。しかし、これをおこないまたそう|教《おし》える|者《もの》は、|天国《てんごく》で|大《おお》いなる|者《もの》と|呼《よ》ばれるであろう。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|言《い》っておく。あなたがたの|義《ぎ》が|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》やパリサイ|人《びと》の|義《ぎ》にまさっていなければ、|決《けっ》して|天国《てんごく》に、はいることはできない。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|昔《むかし》の|人々《ひとびと》に『|殺《ころ》すな。|殺《ころ》す|者《もの》は|裁判《さいばん》を|受《う》けねばならない』と|言《い》われていたことは、あなたがたの|聞《き》いているところである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしはあなたがたに|言《い》う。|兄弟《きょうだい》に|対《たい》して|怒《いか》る|者《もの》は、だれでも|裁判《さいばん》を|受《う》けねばならない。|兄弟《きょうだい》にむかって|愚《おろ》か|者《もの》と|言《い》う|者《もの》は、|議会《ぎかい》に|引《ひ》きわたされるであろう。また、ばか|者《もの》と|言《い》う|者《もの》は、|地獄《じごく》の|火《ひ》に|投《な》げ|込《こ》まれるであろう。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]だから、|祭壇《さいだん》に|供《そな》え|物《もの》をささげようとする|場合《ばあい》、|兄弟《きょうだい》が|自分《じぶん》に|対《たい》して|何《なに》かうらみをいだいていることを、そこで|思《おも》い|出《だ》したなら、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]その|供《そな》え|物《もの》を|祭壇《さいだん》の|前《まえ》に|残《のこ》しておき、まず|行《い》ってその|兄弟《きょうだい》と|和解《わかい》し、それから|帰《かえ》ってきて、|供《そな》え|物《もの》をささげることにしなさい。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]あなたを|訴《うった》える|者《もの》と|一緒《いっしょ》に|道《みち》を|行《い》く|時《とき》には、その|途中《とちゅう》で|早《はや》く|仲直《なかなお》りをしなさい。そうしないと、その|訴《うった》える|者《もの》はあなたを|裁判官《さいばんかん》にわたし、|裁判官《さいばんかん》は|下役《したやく》にわたし、そして、あなたは|獄《ごく》に|入《い》れられるであろう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]よくあなたに|言《い》っておく。|最後《さいご》の一コドラントを|支払《しはら》ってしまうまでは、|決《けっ》してそこから|出《で》てくることはできない。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]『|姦淫《かんいん》するな』と|言《い》われていたことは、あなたがたの|聞《き》いているところである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしはあなたがたに|言《い》う。だれでも、|情欲《じょうよく》をいだいて|女《おんな》を|見《み》る|者《もの》は、|心《こころ》の|中《なか》ですでに|姦淫《かんいん》をしたのである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたの|右《みぎ》の|目《め》が|罪《つみ》を|犯《おか》させるなら、それを|抜《ぬ》き|出《だ》して|捨《す》てなさい。|五体《ごたい》の|一部《いちぶ》を|失《うしな》っても、|全身《ぜんしん》が|地獄《じごく》に|投《な》げ|入《い》れられない|方《ほう》が、あなたにとって|益《えき》である。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたの|右《みぎ》の|手《て》が|罪《つみ》を|犯《おか》させるなら、それを|切《き》って|捨《す》てなさい。|五体《ごたい》の|一部《いちぶ》を|失《うしな》っても、|全身《ぜんしん》が|地獄《じごく》に|落《お》ち|込《こ》まない|方《ほう》が、あなたにとって|益《えき》である。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]また『|妻《つま》を|出《だ》す|者《もの》は|離縁《りえん》|状《じょう》を|渡《わた》せ』と|言《い》われている。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしはあなたがたに|言《い》う。だれでも、|不品行《ふひんこう》|以外《いがい》の|理由《りゆう》で|自分《じぶん》の|妻《つま》を|出《だ》す|者《もの》は、|姦淫《かんいん》を|行《おこな》わせるのである。また|出《だ》された|女《おんな》をめとる|者《もの》も、|姦淫《かんいん》を|行《おこな》うのである。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]また|昔《むかし》の|人々《ひとびと》に『いつわり|誓《ちか》うな、|誓《ちか》ったことは、すべて|主《しゅ》に|対《たい》して|果《はた》せ』と|言《い》われていたことは、あなたがたの|聞《き》いているところである。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしはあなたがたに|言《い》う。いっさい|誓《ちか》ってはならない。|天《てん》をさして|誓《ちか》うな。そこは|神《かみ》の|御座《みざ》であるから。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]また|地《ち》をさして|誓《ちか》うな。そこは|神《かみ》の|足《あし》|台《だい》であるから。またエルサレムをさして|誓《ちか》うな。それは『|大王《だいおう》の|都《みやこ》』であるから。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]また、|自分《じぶん》の|頭《あたま》をさして|誓《ちか》うな。あなたは|髪《かみ》の|毛《け》|一《ひと》すじさえ、|白《しろ》くも|黒《くろ》くもすることができない。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|言葉《ことば》は、ただ、しかり、しかり、|否《いな》、|否《いな》、であるべきだ。それ|以上《いじょう》に|出《で》ることは、|悪《あく》から|来《く》るのである。  [#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]『|目《め》には|目《め》を、|歯《は》には|歯《は》を』と|言《い》われていたことは、あなたがたの|聞《き》いているところである。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしはあなたがたに|言《い》う。|悪人《あくにん》に|手向《てむ》かうな。もし、だれかがあなたの|右《みぎ》の|頬《ほお》を|打《う》つなら、ほかの|頬《ほお》をも|向《む》けてやりなさい。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたを|訴《うった》えて、|下着《したぎ》を|取《と》ろうとする|者《もの》には、|上着《うわぎ》をも|与《あた》えなさい。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]もし、だれかが、あなたをしいて一マイル|行《い》かせようとするなら、その|人《ひと》と|共《とも》に二マイル|行《い》きなさい。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|求《もと》める|者《もの》には|与《あた》え、|借《か》りようとする|者《もの》を|断《ことわ》るな。  [#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]『|隣《とな》り|人《びと》を|愛《あい》し、|敵《てき》を|憎《にく》め』と|言《い》われていたことは、あなたがたの|聞《き》いているところである。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしはあなたがたに|言《い》う。|敵《てき》を|愛《あい》し、|迫害《はくがい》する|者《もの》のために|祈《いの》れ。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|天《てん》にいますあなたがたの|父《ちち》の|子《こ》となるためである。|天《てん》の|父《ちち》は、|悪《わる》い|者《もの》の|上《うえ》にも|良《よ》い|者《もの》の|上《うえ》にも、|太陽《たいよう》をのぼらせ、|正《ただ》しい|者《もの》にも|正《ただ》しくない|者《もの》にも、|雨《あめ》を|降《ふ》らして|下《くだ》さるからである。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|自分《じぶん》を|愛《あい》する|者《もの》を|愛《あい》したからとて、なんの|報《むく》いがあろうか。そのようなことは|取税人《しゅぜいにん》でもするではないか。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》だけにあいさつをしたからとて、なんのすぐれた|事《こと》をしているだろうか。そのようなことは|異邦人《いほうじん》でもしているではないか。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]それだから、あなたがたの|天《てん》の|父《ちち》が|完全《かんぜん》であられるように、あなたがたも|完全《かんぜん》な|者《もの》となりなさい。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|義《ぎ》を、|見《み》られるために|人《ひと》の|前《まえ》で|行《おこな》わないように、|注意《ちゅうい》しなさい。もし、そうしないと、|天《てん》にいますあなたがたの|父《ちち》から|報《むく》いを|受《う》けることがないであろう。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]だから、|施《ほどこ》しをする|時《とき》には、|偽善者《ぎぜんしゃ》たちが|人《ひと》にほめられるため|会堂《かいどう》や|町《まち》の|中《なか》でするように、|自分《じぶん》の|前《まえ》でラッパを|吹《ふ》きならすな。よく|言《い》っておくが、|彼《かれ》らはその|報《むく》いを|受《う》けてしまっている。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたは|施《ほどこ》しをする|場合《ばあい》、|右《みぎ》の|手《て》のしていることを|左《ひだり》の|手《て》に|知《し》らせるな。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]それは、あなたのする|施《ほどこ》しが|隠《かく》れているためである。すると、|隠《かく》れた|事《こと》を|見《み》ておられるあなたの|父《ちち》は、|報《むく》いてくださるであろう。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また|祈《いの》る|時《とき》には、|偽善者《ぎぜんしゃ》たちのようにするな。|彼《かれ》らは|人《ひと》に|見《み》せようとして、|会堂《かいどう》や|大通《おおどお》りのつじに|立《た》って|祈《いの》ることを|好《この》む。よく|言《い》っておくが、|彼《かれ》らはその|報《むく》いを|受《う》けてしまっている。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]あなたは|祈《いの》る|時《とき》、|自分《じぶん》のへやにはいり、|戸《と》を|閉《と》じて、|隠《かく》れた|所《ところ》においでになるあなたの|父《ちち》に|祈《いの》りなさい。すると、|隠《かく》れた|事《こと》を|見《み》ておられるあなたの|父《ちち》は、|報《むく》いてくださるであろう。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]また、|祈《いの》る|場合《ばあい》、|異邦人《いほうじん》のように、くどくどと|祈《いの》るな。|彼《かれ》らは|言葉《ことば》かずが|多《おお》ければ、|聞《き》きいれられるものと|思《おも》っている。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]だから、|彼《かれ》らのまねをするな。あなたがたの|父《ちち》なる|神《かみ》は、|求《もと》めない|先《さき》から、あなたがたに|必要《ひつよう》なものはご|存《ぞん》じなのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたはこう|祈《いの》りなさい、 [#ここから2字下げ] |天《てん》にいますわれらの|父《ちち》よ、 |御名《みな》があがめられますように。 [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|御国《みくに》がきますように。 みこころが|天《てん》に|行《おこな》われるとおり、 |地《ち》にも|行《おこな》われますように。 [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|日《ひ》ごとの|食物《しょくもつ》を、 きょうもお|与《あた》えください。 [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちに|負債《ふさい》のある|者《もの》をゆるしましたように、 わたしたちの|負債《ふさい》をもおゆるしください。 [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちを|試《こころ》みに|会《あ》わせないで、 |悪《あ》しき|者《もの》からお|救《すく》いください。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]もしも、あなたがたが、|人々《ひとびと》のあやまちをゆるすならば、あなたがたの|天《てん》の|父《ちち》も、あなたがたをゆるして|下《くだ》さるであろう。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]もし|人《ひと》をゆるさないならば、あなたがたの|父《ちち》も、あなたがたのあやまちをゆるして|下《くだ》さらないであろう。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]また|断食《だんじき》をする|時《とき》には、|偽善者《ぎぜんしゃ》がするように、|陰気《いんき》な|顔《かお》つきをするな。|彼《かれ》らは|断食《だんじき》をしていることを|人《ひと》に|見《み》せようとして、|自分《じぶん》の|顔《かお》を|見苦《みぐる》しくするのである。よく|言《い》っておくが、|彼《かれ》らはその|報《むく》いを|受《う》けてしまっている。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|断食《だんじき》をする|時《とき》には、|自分《じぶん》の|頭《あたま》に|油《あぶら》を|塗《ぬ》り、|顔《かお》を|洗《あら》いなさい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]それは|断食《だんじき》をしていることが|人《ひと》に|知《し》れないで、|隠《かく》れた|所《ところ》においでになるあなたの|父《ちち》に|知《し》られるためである。すると、|隠《かく》れた|事《こと》を|見《み》ておられるあなたの|父《ちち》は、|報《むく》いて|下《くだ》さるであろう。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|自分《じぶん》のために、|虫《むし》が|食《く》い、さびがつき、また、|盗人《ぬすびと》らが|押《お》し|入《い》って|盗《ぬす》み|出《だ》すような|地上《ちじょう》に、|宝《たから》をたくわえてはならない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]むしろ|自分《じぶん》のため、|虫《むし》も|食《く》わず、さびもつかず、また、|盗人《ぬすびと》らが|押《お》し|入《い》って|盗《ぬす》み|出《だ》すこともない|天《てん》に、|宝《たから》をたくわえなさい。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|宝《たから》のある|所《ところ》には、|心《こころ》もあるからである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|目《め》はからだのあかりである。だから、あなたの|目《め》が|澄《す》んでおれば、|全身《ぜんしん》も|明《あか》るいだろう。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたの|目《め》が|悪《わる》ければ、|全身《ぜんしん》も|暗《くら》いだろう。だから、もしあなたの|内《うち》なる|光《ひかり》が|暗《くら》ければ、その|暗《くら》さは、どんなであろう。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]だれも、ふたりの|主人《しゅじん》に|兼《か》ね|仕《つか》えることはできない。|一方《いっぽう》を|憎《にく》んで|他方《たほう》を|愛《あい》し、あるいは、|一方《いっぽう》に|親《した》しんで|他方《たほう》をうとんじるからである。あなたがたは、|神《かみ》と|富《とみ》とに|兼《か》ね|仕《つか》えることはできない。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]それだから、あなたがたに|言《い》っておく。|何《なに》を|食《た》べようか、|何《なに》を|飲《の》もうかと、|自分《じぶん》の|命《いのち》のことで|思《おも》いわずらい、|何《なに》を|着《き》ようかと|自分《じぶん》のからだのことで|思《おも》いわずらうな。|命《いのち》は|食物《しょくもつ》にまさり、からだは|着物《きもの》にまさるではないか。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|空《そら》の|鳥《とり》を|見《み》るがよい。まくことも、|刈《か》ることもせず、|倉《くら》に|取《と》りいれることもしない。それだのに、あなたがたの|天《てん》の|父《ちち》は|彼《かれ》らを|養《やしな》っていて|下《くだ》さる。あなたがたは|彼《かれ》らよりも、はるかにすぐれた|者《もの》ではないか。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうち、だれが|思《おも》いわずらったからとて、|自分《じぶん》の|寿命《じゅみょう》をわずかでも|延《の》ばすことができようか。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]また、なぜ、|着物《きもの》のことで|思《おも》いわずらうのか。|野《の》の|花《はな》がどうして|育《そだ》っているか、|考《かんが》えて|見《み》るがよい。|働《はたら》きもせず、|紡《つむ》ぎもしない。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたに|言《い》うが、|栄華《えいが》をきわめた|時《とき》のソロモンでさえ、この|花《はな》の一つほどにも|着飾《きかざ》ってはいなかった。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]きょうは|生《は》えていて、あすは|炉《ろ》に|投《な》げ|入《い》れられる|野《の》の|草《くさ》でさえ、|神《かみ》はこのように|装《よそお》って|下《くだ》さるのなら、あなたがたに、それ|以上《いじょう》よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、|信仰《しんこう》の|薄《うす》い|者《もの》たちよ。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]だから、|何《なに》を|食《た》べようか、|何《なに》を|飲《の》もうか、あるいは|何《なに》を|着《き》ようかと|言《い》って|思《おも》いわずらうな。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]これらのものはみな、|異邦人《いほうじん》が|切《せつ》に|求《もと》めているものである。あなたがたの|天《てん》の|父《ちち》は、これらのものが、ことごとくあなたがたに|必要《ひつよう》であることをご|存《ぞん》じである。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]まず|神《かみ》の|国《くに》と|神《かみ》の|義《ぎ》とを|求《もと》めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて|添《そ》えて|与《あた》えられるであろう。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]だから、あすのことを|思《おも》いわずらうな。あすのことは、あす|自身《じしん》が|思《おも》いわずらうであろう。一|日《にち》の|苦労《くろう》は、その|日《ひ》一|日《にち》だけで|十分《じゅうぶん》である。 第七章[#「第七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》をさばくな。|自分《じぶん》がさばかれないためである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたがさばくそのさばきで、|自分《じぶん》もさばかれ、あなたがたの|量《はか》るそのはかりで、|自分《じぶん》にも|量《はか》り|与《あた》えられるであろう。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]なぜ、|兄弟《きょうだい》の|目《め》にあるちりを|見《み》ながら、|自分《じぶん》の|目《め》にある|梁《はり》を|認《みと》めないのか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|目《め》には|梁《はり》があるのに、どうして|兄弟《きょうだい》にむかって、あなたの|目《め》からちりを|取《と》らせてください、と|言《い》えようか。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|偽善者《ぎぜんしゃ》よ、まず|自分《じぶん》の|目《め》から|梁《はり》を|取《と》りのけるがよい。そうすれば、はっきり|見《み》えるようになって、|兄弟《きょうだい》の|目《め》からちりを|取《と》りのけることができるだろう。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|聖《せい》なるものを|犬《いぬ》にやるな。また|真珠《しんじゅ》を|豚《ぶた》に|投《な》げてやるな。|恐《おそ》らく|彼《かれ》らはそれらを|足《あし》で|踏《ふ》みつけ、|向《む》きなおってあなたがたにかみついてくるであろう。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|求《もと》めよ、そうすれば、|与《あた》えられるであろう。|捜《さが》せ、そうすれば、|見《み》いだすであろう。|門《もん》をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すべて|求《もと》める|者《もの》は|得《え》、|捜《さが》す|者《もの》は|見《み》いだし、|門《もん》をたたく|者《もの》はあけてもらえるからである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうちで、|自分《じぶん》の|子《こ》がパンを|求《もと》めるのに、|石《いし》を|与《あた》える|者《もの》があろうか。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|魚《うお》を|求《もと》めるのに、へびを|与《あた》える|者《もの》があろうか。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]このように、あなたがたは|悪《わる》い|者《もの》であっても、|自分《じぶん》の|子供《こども》には、|良《よ》い|贈《おく》り|物《もの》をすることを|知《し》っているとすれば、|天《てん》にいますあなたがたの|父《ちち》はなおさら、|求《もと》めてくる|者《もの》に|良《よ》いものを|下《くだ》さらないことがあろうか。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]だから、|何事《なにごと》でも|人々《ひとびと》からしてほしいと|望《のぞ》むことは、|人々《ひとびと》にもそのとおりにせよ。これが|律法《りっぽう》であり|預言者《よげんしゃ》である。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|狭《せま》い|門《もん》からはいれ。|滅《ほろ》びにいたる|門《もん》は|大《おお》きく、その|道《みち》は|広《ひろ》い。そして、そこからはいって|行《い》く|者《もの》が|多《おお》い。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|命《いのち》にいたる|門《もん》は|狭《せま》く、その|道《みち》は|細《ほそ》い。そして、それを|見《み》いだす|者《もの》が|少《すく》ない。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]にせ|預言者《よげんしゃ》を|警戒《けいかい》せよ。|彼《かれ》らは、|羊《ひつじ》の|衣《ころも》を|着《き》てあなたがたのところに|来《く》るが、その|内側《うちがわ》は|強欲《ごうよく》なおおかみである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、その|実《み》によって|彼《かれ》らを|見《み》わけるであろう。|茨《いばら》からぶどうを、あざみからいちじくを|集《あつ》める|者《もの》があろうか。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そのように、すべて|良《よ》い|木《き》は|良《よ》い|実《み》を|結《むす》び、|悪《わる》い|木《き》は|悪《わる》い|実《み》を|結《むす》ぶ。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|良《よ》い|木《き》が|悪《わる》い|実《み》をならせることはないし、|悪《わる》い|木《き》が|良《よ》い|実《み》をならせることはできない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|良《よ》い|実《み》を|結《むす》ばない|木《き》はことごとく|切《き》られて、|火《ひ》の|中《なか》に|投《な》げ|込《こ》まれる。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]このように、あなたがたはその|実《み》によって|彼《かれ》らを|見《み》わけるのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしにむかって『|主《しゅ》よ、|主《しゅ》よ』と|言《い》う|者《もの》が、みな|天国《てんごく》にはいるのではなく、ただ、|天《てん》にいますわが|父《ちち》の|御旨《みむね》を|行《おこな》う|者《もの》だけが、はいるのである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には、|多《おお》くの|者《もの》が、わたしにむかって『|主《しゅ》よ、|主《しゅ》よ、わたしたちはあなたの|名《な》によって|預言《よげん》したではありませんか。また、あなたの|名《な》によって|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》し、あなたの|名《な》によって|多《おお》くの|力《ちから》あるわざを|行《おこな》ったではありませんか』と|言《い》うであろう。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、わたしは|彼《かれ》らにはっきり、こう|言《い》おう、『あなたがたを|全《まった》く|知《し》らない。|不法《ふほう》を|働《はたら》く|者《もの》どもよ、|行《い》ってしまえ』。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]それで、わたしのこれらの|言葉《ことば》を|聞《き》いて|行《おこな》うものを、|岩《いわ》の|上《うえ》に|自分《じぶん》の|家《いえ》を|建《た》てた|賢《かしこ》い|人《ひと》に|比《くら》べることができよう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|雨《あめ》が|降《ふ》り、|洪水《こうずい》が|押《お》し|寄《よ》せ、|風《かぜ》が|吹《ふ》いてその|家《いえ》に|打《う》ちつけても、|倒《たお》れることはない。|岩《いわ》を|土台《どだい》としているからである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしのこれらの|言葉《ことば》を|聞《き》いても|行《おこな》わない|者《もの》を、|砂《すな》の|上《うえ》に|自分《じぶん》の|家《いえ》を|建《た》てた|愚《おろ》かな|人《ひと》に|比《くら》べることができよう。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|雨《あめ》が|降《ふ》り、|洪水《こうずい》が|押《お》し|寄《よ》せ、|風《かぜ》が|吹《ふ》いてその|家《いえ》に|打《う》ちつけると、|倒《たお》れてしまう。そしてその|倒《たお》れ|方《かた》はひどいのである」。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]イエスがこれらの|言《ことば》を|語《かた》り|終《お》えられると、|群衆《ぐんしゅう》はその|教《おしえ》にひどく|驚《おどろ》いた。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それは|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちのようにではなく、|権威《けんい》ある|者《もの》のように、|教《おし》えられたからである。 第八章[#「第八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|山《やま》をお|降《お》りになると、おびただしい|群衆《ぐんしゅう》がついてきた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すると、そのとき、ひとりのらい|病人《びょうにん》がイエスのところにきて、ひれ|伏《ふ》して|言《い》った、「|主《しゅ》よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|手《て》を|伸《の》ばして、|彼《かれ》にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と|言《い》われた。すると、らい|病《びょう》は|直《ただ》ちにきよめられた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「だれにも|話《はな》さないように、|注意《ちゅうい》しなさい。ただ|行《い》って、|自分《じぶん》のからだを|祭司《さいし》に|見《み》せ、それから、モーセが|命《めい》じた|供《そな》え|物《もの》をささげて、|人々《ひとびと》に|証明《しょうめい》しなさい」。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスがカペナウムに|帰《かえ》ってこられたとき、ある|百卒長《ひゃくそつちょう》がみもとにきて|訴《うった》えて|言《い》った、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》よ、わたしの|僕《しもべ》が|中風《ちゅうぶ》でひどく|苦《くる》しんで、|家《いえ》に|寝《ね》ています」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に、「わたしが|行《い》ってなおしてあげよう」と|言《い》われた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そこで|百卒長《ひゃくそつちょう》は|答《こた》えて|言《い》った、「|主《しゅ》よ、わたしの|屋根《やね》の|下《した》にあなたをお|入《い》れする|資格《しかく》は、わたしにはございません。ただ、お|言葉《ことば》を|下《くだ》さい。そうすれば|僕《しもべ》はなおります。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしも|権威《けんい》の|下《した》にある|者《もの》ですが、わたしの|下《した》にも|兵卒《へいそつ》がいまして、ひとりの|者《もの》に『|行《い》け』と|言《い》えば|行《い》き、ほかの|者《もの》に『こい』と|言《い》えばきますし、また、|僕《しもべ》に『これをせよ』と|言《い》えば、してくれるのです」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれを|聞《き》いて|非常《ひじょう》に|感心《かんしん》され、ついてきた|人々《ひとびと》に|言《い》われた、「よく|聞《き》きなさい。イスラエル|人《ひと》の|中《なか》にも、これほどの|信仰《しんこう》を|見《み》たことがない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]なお、あなたがたに|言《い》うが、|多《おお》くの|人《ひと》が|東《ひがし》から|西《にし》からきて、|天国《てんごく》で、アブラハム、イサク、ヤコブと|共《とも》に|宴会《えんかい》の|席《せき》につくが、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]この|国《くに》の|子《こ》らは|外《そと》のやみに|追《お》い|出《だ》され、そこで|泣《な》き|叫《さけ》んだり、|歯《は》がみをしたりするであろう」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスは|百卒長《ひゃくそつちょう》に「|行《い》け、あなたの|信《しん》じたとおりになるように」と|言《い》われた。すると、ちょうどその|時《とき》に、|僕《しもべ》はいやされた。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスはペテロの|家《いえ》にはいって|行《い》かれ、そのしゅうとめが|熱病《ねつびょう》で、|床《とこ》についているのをごらんになった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、その|手《て》にさわられると、|熱《ねつ》が|引《ひ》いた。そして|女《おんな》は|起《お》きあがってイエスをもてなした。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|夕暮《ゆうぐれ》になると、|人々《ひとびと》は|悪霊《あくれい》につかれた|者《もの》を|大《おお》ぜい、みもとに|連《つ》れてきたので、イエスはみ|言葉《ことば》をもって|霊《れい》どもを|追《お》い|出《だ》し、|病人《びょうにん》をことごとくおいやしになった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]これは、|預言者《よげんしゃ》イザヤによって「|彼《かれ》は、わたしたちのわずらいを|身《み》に|受《う》け、わたしたちの|病《やまい》を|負《お》うた」と|言《い》われた|言葉《ことば》が|成就《じょうじゅ》するためである。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、|群衆《ぐんしゅう》が|自分《じぶん》のまわりに|群《むら》がっているのを|見《み》て、|向《む》こう|岸《ぎし》に|行《い》くようにと|弟子《でし》たちにお|命《めい》じになった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]するとひとりの|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》が|近《ちか》づいてきて|言《い》った、「|先生《せんせい》、あなたがおいでになる|所《ところ》なら、どこへでも|従《したが》ってまいります」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスはその|人《ひと》に|言《い》われた、「きつねには|穴《あな》があり、|空《そら》の|鳥《とり》には|巣《す》がある。しかし、|人《ひと》の|子《こ》にはまくらする|所《ところ》がない」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]また|弟子《でし》のひとりが|言《い》った、「|主《しゅ》よ、まず、|父《ちち》を|葬《ほうむ》りに|行《い》かせて|下《くだ》さい」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「わたしに|従《したが》ってきなさい。そして、その|死人《しにん》を|葬《ほうむ》ることは、|死人《しにん》に|任《まか》せておくがよい」。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスが|舟《ふね》に|乗《の》り|込《こ》まれると、|弟子《でし》たちも|従《したが》った。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]すると|突然《とつぜん》、|海上《かいじょう》に|激《はげ》しい|暴風《ぼうふう》が|起《おこ》って、|舟《ふね》は|波《なみ》にのまれそうになった。ところが、イエスは|眠《ねむ》っておられた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこで|弟子《でし》たちはみそばに|寄《よ》ってきてイエスを|起《おこ》し、「|主《しゅ》よ、お|助《たす》けください、わたしたちは|死《し》にそうです」と|言《い》った。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「なぜこわがるのか、|信仰《しんこう》の|薄《うす》い|者《もの》たちよ」。それから|起《お》きあがって、|風《かぜ》と|海《うみ》とをおしかりになると、|大《おお》なぎになった。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|驚《おどろ》いて|言《い》った、「このかたはどういう|人《ひと》なのだろう。|風《かぜ》も|海《うみ》も|従《したが》わせるとは」。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]それから、|向《む》こう|岸《ぎし》、ガダラ|人《びと》の|地《ち》に|着《つ》かれると、|悪霊《あくれい》につかれたふたりの|者《もの》が、|墓場《はかば》から|出《で》てきてイエスに|出会《であ》った。|彼《かれ》らは|手《て》に|負《お》えない|乱暴《らんぼう》|者《もの》で、だれもその|辺《へん》の|道《みち》を|通《とお》ることができないほどであった。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]すると|突然《とつぜん》、|彼《かれ》らは|叫《さけ》んで|言《い》った、「|神《かみ》の|子《こ》よ、あなたはわたしどもとなんの|係《かか》わりがあるのです。まだその|時《とき》ではないのに、ここにきて、わたしどもを|苦《くる》しめるのですか」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]さて、そこからはるか|離《はな》れた|所《ところ》に、おびただしい|豚《ぶた》の|群《む》れが|飼《か》ってあった。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|悪霊《あくれい》どもはイエスに|願《ねが》って|言《い》った、「もしわたしどもを|追《お》い|出《だ》されるのなら、あの|豚《ぶた》の|群《む》れの|中《なか》につかわして|下《くだ》さい」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスが「|行《い》け」と|言《い》われると、|彼《かれ》らは|出《で》て|行《い》って、|豚《ぶた》の|中《なか》へはいり|込《こ》んだ。すると、その|群《む》れ|全体《ぜんたい》が、がけから|海《うみ》へなだれを|打《う》って|駆《か》け|下《くだ》り、|水《みず》の|中《なか》で|死《し》んでしまった。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|飼《か》う|者《もの》たちは|逃《に》げて|町《まち》に|行《い》き、|悪霊《あくれい》につかれた|者《もの》たちのことなど、いっさいを|知《し》らせた。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]すると、|町中《まちじゅう》の|者《もの》がイエスに|会《あ》いに|出《で》てきた。そして、イエスに|会《あ》うと、この|地方《ちほう》から|去《さ》ってくださるようにと|頼《たの》んだ。 第九章[#「第九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスは|舟《ふね》に|乗《の》って|海《うみ》を|渡《わた》り、|自分《じぶん》の|町《まち》に|帰《かえ》られた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すると、|人々《ひとびと》が|中風《ちゅうぶ》の|者《もの》を|床《とこ》の|上《うえ》に|寝《ね》かせたままでみもとに|運《はこ》んできた。イエスは|彼《かれ》らの|信仰《しんこう》を|見《み》て、|中風《ちゅうぶ》の|者《もの》に、「|子《こ》よ、しっかりしなさい。あなたの|罪《つみ》はゆるされたのだ」と|言《い》われた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すると、ある|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちが|心《こころ》の|中《なか》で|言《い》った、「この|人《ひと》は|神《かみ》を|汚《けが》している」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らの|考《かんが》えを|見抜《みぬ》いて、「なぜ、あなたがたは|心《こころ》の|中《なか》で|悪《わる》いことを|考《かんが》えているのか。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|罪《つみ》はゆるされた、と|言《い》うのと、|起《お》きて|歩《ある》け、と|言《い》うのと、どちらがたやすいか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|人《ひと》の|子《こ》は|地上《ちじょう》で|罪《つみ》をゆるす|権威《けんい》をもっていることが、あなたがたにわかるために」と|言《い》い、|中風《ちゅうぶ》の|者《もの》にむかって、「|起《お》きよ、|床《とこ》を|取《と》りあげて|家《いえ》に|帰《かえ》れ」と|言《い》われた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》は|起《お》きあがり、|家《いえ》に|帰《かえ》って|行《い》った。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》はそれを|見《み》て|恐《おそ》れ、こんな|大《おお》きな|権威《けんい》を|人《ひと》にお|与《あた》えになった|神《かみ》をあがめた。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]さてイエスはそこから|進《すす》んで|行《い》かれ、マタイという|人《ひと》が|収税所《しゅうぜいしょ》にすわっているのを|見《み》て、「わたしに|従《したが》ってきなさい」と|言《い》われた。すると|彼《かれ》は|立《た》ちあがって、イエスに|従《したが》った。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスが|家《いえ》で|食事《しょくじ》の|席《せき》についておられた|時《とき》のことである。|多《おお》くの|取税人《しゅぜいにん》や|罪人《つみびと》たちがきて、イエスや|弟子《でし》たちと|共《とも》にその|席《せき》に|着《つ》いていた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》たちはこれを|見《み》て、|弟子《でし》たちに|言《い》った、「なぜ、あなたがたの|先生《せんせい》は、|取税人《しゅぜいにん》や|罪人《つみびと》などと|食事《しょくじ》を|共《とも》にするのか」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれを|聞《き》いて|言《い》われた、「|丈夫《じょうぶ》な|人《ひと》には|医者《いしゃ》はいらない。いるのは|病人《びょうにん》である。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]『わたしが|好《この》むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう|意味《いみ》か、|学《まな》んできなさい。わたしがきたのは、|義人《ぎじん》を|招《まね》くためではなく、|罪人《つみびと》を|招《まね》くためである」。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、ヨハネの|弟子《でし》たちがイエスのところにきて|言《い》った、「わたしたちとパリサイ|人《びと》たちとが|断食《だんじき》をしているのに、あなたの|弟子《でし》たちは、なぜ|断食《だんじき》をしないのですか」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|言《い》われた、「|婚礼《こんれい》の|客《きゃく》は、|花婿《はなむこ》が|一緒《いっしょ》にいる|間《あいだ》は、|悲《かな》しんでおられようか。しかし、|花婿《はなむこ》が|奪《うば》い|去《さ》られる|日《ひ》が|来《く》る。その|時《とき》には|断食《だんじき》をするであろう。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]だれも、|真新《まあたら》しい|布《ぬの》ぎれで、|古《ふる》い|着物《きもの》につぎを|当《あ》てはしない。そのつぎきれは|着物《きもの》を|引《ひ》き|破《やぶ》り、そして、|破《やぶ》れがもっとひどくなるから。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]だれも、|新《あたら》しいぶどう|酒《しゅ》を|古《ふる》い|皮《かわ》|袋《ぶくろ》に|入《い》れはしない。もしそんなことをしたら、その|皮《かわ》|袋《ぶくろ》は|張《は》り|裂《さ》け、|酒《さけ》は|流《なが》れ|出《で》るし、|皮《かわ》|袋《ぶくろ》もむだになる。だから、|新《あたら》しいぶどう|酒《しゅ》は|新《あたら》しい|皮《かわ》|袋《ぶくろ》に|入《い》れるべきである。そうすれば|両方《りょうほう》とも|長《なが》もちがするであろう」。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]これらのことを|彼《かれ》らに|話《はな》しておられると、そこにひとりの|会堂司《かいどうづかさ》がきて、イエスを|拝《はい》して|言《い》った、「わたしの|娘《むすめ》がただ|今《いま》|死《し》にました。しかしおいでになって|手《て》をその|上《うえ》においてやって|下《くだ》さい。そうしたら、|娘《むすめ》は|生《い》き|返《かえ》るでしょう」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスが|立《た》って|彼《かれ》について|行《い》かれると、|弟子《でし》たちも|一緒《いっしょ》に|行《い》った。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]するとそのとき、十二|年間《ねんかん》も|長《なが》|血《ち》をわずらっている|女《おんな》が|近寄《ちかよ》ってきて、イエスのうしろからみ|衣《ころも》のふさにさわった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]み|衣《ころも》にさわりさえすれば、なおしていただけるだろう、と|心《こころ》の|中《なか》で|思《おも》っていたからである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|振《ふ》り|向《む》いて、この|女《おんな》を|見《み》て|言《い》われた、「|娘《むすめ》よ、しっかりしなさい。あなたの|信仰《しんこう》があなたを|救《すく》ったのです」。するとこの|女《おんな》はその|時《とき》に、いやされた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスは|司《つかさ》の|家《いえ》に|着《つ》き、|笛《ふえ》|吹《ふ》きどもや|騒《さわ》いでいる|群衆《ぐんしゅう》を|見《み》て|言《い》われた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]「あちらへ|行《い》っていなさい。|少女《しょうじょ》は|死《し》んだのではない。|眠《ねむ》っているだけである」。すると|人々《ひとびと》はイエスをあざ|笑《わら》った。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|群衆《ぐんしゅう》を|外《そと》へ|出《だ》したのち、イエスは|内《うち》へはいって、|少女《しょうじょ》の|手《て》をお|取《と》りになると、|少女《しょうじょ》は|起《お》きあがった。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そして、そのうわさがこの|地方《ちほう》|全体《ぜんたい》にひろまった。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そこから|進《すす》んで|行《い》かれると、ふたりの|盲人《もうじん》が、「ダビデの|子《こ》よ、わたしたちをあわれんで|下《くだ》さい」と|叫《さけ》びながら、イエスについてきた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そしてイエスが|家《いえ》にはいられると、|盲人《もうじん》たちがみもとにきたので、|彼《かれ》らに「わたしにそれができると|信《しん》じるか」と|言《い》われた。|彼《かれ》らは|言《い》った、「|主《しゅ》よ、|信《しん》じます」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》らの|目《め》にさわって|言《い》われた、「あなたがたの|信仰《しんこう》どおり、あなたがたの|身《み》になるように」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》らの|目《め》が|開《ひら》かれた。イエスは|彼《かれ》らをきびしく|戒《いまし》めて|言《い》われた、「だれにも|知《し》れないように|気《き》をつけなさい」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らは|出《で》て|行《い》って、その|地方《ちほう》|全体《ぜんたい》にイエスのことを|言《い》いひろめた。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|出《で》て|行《い》くと、|人々《ひとびと》は|悪霊《あくれい》につかれたおしをイエスのところに|連《つ》れてきた。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]すると、|悪霊《あくれい》は|追《お》い|出《だ》されて、おしが|物《もの》を|言《い》うようになった。|群衆《ぐんしゅう》は|驚《おどろ》いて、「このようなことがイスラエルの|中《なか》で|見《み》られたことは、これまで|一度《いちど》もなかった」と|言《い》った。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、パリサイ|人《びと》たちは|言《い》った、「|彼《かれ》は、|悪霊《あくれい》どものかしらによって|悪霊《あくれい》どもを|追《お》い|出《だ》しているのだ」。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、すべての|町々《まちまち》|村々《むらむら》を|巡《めぐ》り|歩《ある》いて、|諸《しょ》|会堂《かいどう》で|教《おし》え、|御国《みくに》の|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》え、あらゆる|病気《びょうき》、あらゆるわずらいをおいやしになった。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]また|群衆《ぐんしゅう》が|飼《か》う|者《もの》のない|羊《ひつじ》のように|弱《よわ》り|果《は》てて、|倒《たお》れているのをごらんになって、|彼《かれ》らを|深《ふか》くあわれまれた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そして|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「|収穫《しゅうかく》は|多《おお》いが、|働《はたら》き|人《びと》が|少《すく》ない。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]だから、|収穫《しゅうかく》の|主《しゅ》に|願《ねが》って、その|収穫《しゅうかく》のために|働《はたら》き|人《びと》を|送《おく》り|出《だ》すようにしてもらいなさい」。 第一〇章[#「第一〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは十二|弟子《でし》を|呼《よ》び|寄《よ》せて、|汚《けが》れた|霊《れい》を|追《お》い|出《だ》し、あらゆる|病気《びょうき》、あらゆるわずらいをいやす|権威《けんい》をお|授《さづ》けになった。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]十二|使徒《しと》の|名《な》は、|次《つぎ》のとおりである。まずペテロと|呼《よ》ばれたシモンとその|兄弟《きょうだい》アンデレ、それからゼベダイの|子《こ》ヤコブとその|兄弟《きょうだい》ヨハネ、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ピリポとバルトロマイ、トマスと|取税人《しゅぜいにん》マタイ、アルパヨの|子《こ》ヤコブとタダイ、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|熱心《ねっしん》|党《とう》のシモンとイスカリオテのユダ。このユダはイエスを|裏切《うらぎ》った|者《もの》である。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこの十二|人《にん》をつかわすに|当《あた》り、|彼《かれ》らに|命《めい》じて|言《い》われた、「|異邦人《いほうじん》の|道《みち》に|行《い》くな。またサマリヤ|人《びと》の|町《まち》にはいるな。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、イスラエルの|家《いえ》の|失《うしな》われた|羊《ひつじ》のところに|行《い》け。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|行《い》って、『|天国《てんごく》が|近《ちか》づいた』と|宣《の》べ|伝《つた》えよ。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|病人《びょうにん》をいやし、|死人《しにん》をよみがえらせ、らい|病人《びょうにん》をきよめ、|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》せ。ただで|受《う》けたのだから、ただで|与《あた》えるがよい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|財布《さいふ》の|中《なか》に|金《きん》、|銀《ぎん》または|銭《ぜに》を|入《い》れて|行《い》くな。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|旅行《りょこう》のための|袋《ふくろ》も、二|枚《まい》の|下着《したぎ》も、くつも、つえも|持《も》って|行《い》くな。|働《はたら》き|人《びと》がその|食物《しょくもつ》を|得《え》るのは|当然《とうぜん》である。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]どの|町《まち》、どの|村《むら》にはいっても、その|中《なか》でだれがふさわしい|人《ひと》か、たずね|出《だ》して、|立《た》ち|去《さ》るまではその|人《ひと》のところにとどまっておれ。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]その|家《いえ》にはいったなら、|平安《へいあん》を|祈《いの》ってあげなさい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]もし|平安《へいあん》を|受《う》けるにふさわしい|家《いえ》であれば、あなたがたの|祈《いの》る|平安《へいあん》はその|家《いえ》に|来《く》るであろう。もしふさわしくなければ、その|平安《へいあん》はあなたがたに|帰《かえ》って|来《く》るであろう。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたがたを|迎《むか》えもせず、またあなたがたの|言葉《ことば》を|聞《き》きもしない|人《ひと》があれば、その|家《いえ》や|町《まち》を|立《た》ち|去《さ》る|時《とき》に、|足《あし》のちりを|払《はら》い|落《おと》しなさい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたによく|言《い》っておく。さばきの|日《ひ》には、ソドム、ゴモラの|地《ち》の|方《ほう》が、その|町《まち》よりは|耐《た》えやすいであろう。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあなたがたをつかわすのは、|羊《ひつじ》をおおかみの|中《なか》に|送《おく》るようなものである。だから、へびのように|賢《かしこ》く、はとのように|素直《すなお》であれ。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》に|注意《ちゅうい》しなさい。|彼《かれ》らはあなたがたを|衆議所《しゅうぎしょ》に|引《ひ》き|渡《わた》し、|会堂《かいどう》でむち|打《う》つであろう。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]またあなたがたは、わたしのために|長官《ちょうかん》たちや|王《おう》たちの|前《まえ》に|引《ひ》き|出《だ》されるであろう。それは、|彼《かれ》らと|異邦人《いほうじん》とに|対《たい》してあかしをするためである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがあなたがたを|引《ひ》き|渡《わた》したとき、|何《なに》をどう|言《い》おうかと|心配《しんぱい》しないがよい。|言《い》うべきことは、その|時《とき》に|授《さづ》けられるからである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|語《かた》る|者《もの》は、あなたがたではなく、あなたがたの|中《なか》にあって|語《かた》る|父《ちち》の|霊《れい》である。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》は|兄弟《きょうだい》を、|父《ちち》は|子《こ》を|殺《ころ》すために|渡《わた》し、また|子《こ》は|親《おや》に|逆《さか》らって|立《た》ち、|彼《かれ》らを|殺《ころ》させるであろう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]またあなたがたは、わたしの|名《な》のゆえにすべての|人《ひと》に|憎《にく》まれるであろう。しかし、|最後《さいご》まで|耐《た》え|忍《しの》ぶ|者《もの》は|救《すく》われる。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]一つの|町《まち》で|迫害《はくがい》されたなら、|他《た》の|町《まち》へ|逃《に》げなさい。よく|言《い》っておく。あなたがたがイスラエルの|町々《まちまち》を|回《まわ》り|終《おわ》らないうちに、|人《ひと》の|子《こ》は|来《く》るであろう。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》はその|師《し》|以上《いじょう》のものではなく、|僕《しもべ》はその|主人《しゅじん》|以上《いじょう》の|者《もの》ではない。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》がその|師《し》のようであり、|僕《しもべ》がその|主人《しゅじん》のようであれば、それで|十分《じゅうぶん》である。もし|家《いえ》の|主人《しゅじん》がベルゼブルと|言《い》われるならば、その|家《いえ》の|者《もの》どもはなおさら、どんなにか|悪《わる》く|言《い》われることであろう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]だから|彼《かれ》らを|恐《おそ》れるな。おおわれたもので、|現《あらわ》れてこないものはなく、|隠《かく》れているもので、|知《し》られてこないものはない。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|暗《くら》やみであなたがたに|話《はな》すことを、|明《あか》るみで|言《い》え。|耳《みみ》にささやかれたことを、|屋根《やね》の|上《うえ》で|言《い》いひろめよ。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]また、からだを|殺《ころ》しても、|魂《たましい》を|殺《ころ》すことのできない|者《もの》どもを|恐《おそ》れるな。むしろ、からだも|魂《たましい》も|地獄《じごく》で|滅《ほろ》ぼす|力《ちから》のあるかたを|恐《おそ》れなさい。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]二|羽《わ》のすずめは一アサリオンで|売《う》られているではないか。しかもあなたがたの|父《ちち》の|許《ゆる》しがなければ、その一|羽《わ》も|地《ち》に|落《お》ちることはない。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]またあなたがたの|頭《あたま》の|毛《け》までも、みな|数《かぞ》えられている。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]それだから、|恐《おそ》れることはない。あなたがたは|多《おお》くのすずめよりも、まさった|者《もの》である。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]だから|人《ひと》の|前《まえ》でわたしを|受《う》けいれる|者《もの》を、わたしもまた、|天《てん》にいますわたしの|父《ちち》の|前《まえ》で|受《う》けいれるであろう。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|人《ひと》の|前《まえ》でわたしを|拒《こば》む|者《もの》を、わたしも|天《てん》にいますわたしの|父《ちち》の|前《まえ》で|拒《こば》むであろう。  [#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|地上《ちじょう》に|平和《へいわ》をもたらすために、わたしがきたと|思《おも》うな。|平和《へいわ》ではなく、つるぎを|投《な》げ|込《こ》むためにきたのである。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]わたしがきたのは、|人《ひと》をその|父《ちち》と、|娘《むすめ》をその|母《はは》と、|嫁《よめ》をそのしゅうとめと|仲《なか》たがいさせるためである。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]そして|家《いえ》の|者《もの》が、その|人《ひと》の|敵《てき》となるであろう。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]わたしよりも|父《ちち》または|母《はは》を|愛《あい》する|者《もの》は、わたしにふさわしくない。わたしよりもむすこや|娘《むすめ》を|愛《あい》する|者《もの》は、わたしにふさわしくない。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]また|自分《じぶん》の|十字架《じゅうじか》をとってわたしに|従《したが》ってこない|者《もの》はわたしにふさわしくない。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|命《いのち》を|得《え》ている|者《もの》はそれを|失《うしな》い、わたしのために|自分《じぶん》の|命《いのち》を|失《うしな》っている|者《もの》は、それを|得《え》るであろう。  [#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたを|受《う》けいれる|者《もの》は、わたしを|受《う》けいれるのである。わたしを|受《う》けいれる|者《もの》は、わたしをおつかわしになったかたを|受《う》けいれるのである。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|預言者《よげんしゃ》の|名《な》のゆえに|預言者《よげんしゃ》を|受《う》けいれる|者《もの》は、|預言者《よげんしゃ》の|報《むく》いを|受《う》け、|義人《ぎじん》の|名《な》のゆえに|義人《ぎじん》を|受《う》けいれる|者《もの》は、|義人《ぎじん》の|報《むく》いを|受《う》けるであろう。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|弟子《でし》であるという|名《な》のゆえに、この|小《ちい》さい|者《もの》のひとりに|冷《つめ》たい|水《みず》一|杯《ぱい》でも|飲《の》ませてくれる|者《もの》は、よく|言《い》っておくが、|決《けっ》してその|報《むく》いからもれることはない」。 第一一章[#「第一一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは十二|弟子《でし》にこのように|命《めい》じ|終《お》えてから、|町々《まちまち》で|教《おし》えまた|宣《の》べ|伝《つた》えるために、そこを|立《た》ち|去《さ》られた。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]さて、ヨハネは|獄中《ごくちゅう》でキリストのみわざについて|伝《つた》え|聞《き》き、|自分《じぶん》の|弟子《でし》たちをつかわして、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスに|言《い》わせた、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを|待《ま》つべきでしょうか」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「|行《い》って、あなたがたが|見聞《みき》きしていることをヨハネに|報告《ほうこく》しなさい。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|盲人《もうじん》は|見《み》え、|足《あし》なえは|歩《ある》き、らい|病人《びょうにん》はきよまり、|耳《みみ》しいは|聞《きこ》え、|死人《しにん》は|生《い》きかえり、|貧《まず》しい|人々《ひとびと》は|福音《ふくいん》を|聞《き》かされている。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしにつまずかない|者《もの》は、さいわいである」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|帰《かえ》ってしまうと、イエスはヨハネのことを|群衆《ぐんしゅう》に|語《かた》りはじめられた、「あなたがたは、|何《なに》を|見《み》に|荒野《あらの》に|出《で》てきたのか。|風《かぜ》に|揺《ゆ》らぐ|葦《あし》であるか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]では、|何《なに》を|見《み》に|出《で》てきたのか。|柔《やわ》らかい|着物《きもの》をまとった|人《ひと》か。|柔《やわ》らかい|着物《きもの》をまとった|人々《ひとびと》なら、|王《おう》の|家《いえ》にいる。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]では、なんのために|出《で》てきたのか。|預言者《よげんしゃ》を|見《み》るためか。そうだ、あなたがたに|言《い》うが、|預言者《よげんしゃ》|以上《いじょう》の|者《もの》である。 [#ここから2字下げ] [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]『|見《み》よ、わたしは|使《つかい》をあなたの|先《さき》につかわし、 あなたの|前《まえ》に、|道《みち》を|整《ととの》えさせるであろう』 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるのは、この|人《ひと》のことである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたによく|言《い》っておく。|女《おんな》の|産《う》んだ|者《もの》の|中《なか》で、バプテスマのヨハネより|大《おお》きい|人物《じんぶつ》は|起《おこ》らなかった。しかし、|天国《てんごく》で|最《もっと》も|小《ちい》さい|者《もの》も、|彼《かれ》よりは|大《おお》きい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]バプテスマのヨハネの|時《とき》から|今《いま》に|至《いた》るまで、|天国《てんごく》は|激《はげ》しく|襲《おそ》われている。そして|激《はげ》しく|襲《おそ》う|者《もの》たちがそれを|奪《うば》い|取《と》っている。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]すべての|預言者《よげんしゃ》と|律法《りっぽう》とが|預言《よげん》したのは、ヨハネの|時《とき》までである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして、もしあなたがたが|受《う》けいれることを|望《のぞ》めば、この|人《ひと》こそは、きたるべきエリヤなのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|耳《みみ》のある|者《もの》は|聞《き》くがよい。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》の|時代《じだい》を|何《なに》に|比《くら》べようか。それは|子供《こども》たちが|広場《ひろば》にすわって、ほかの|子供《こども》たちに|呼《よ》びかけ、 [#ここから2字下げ] [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]『わたしたちが|笛《ふえ》を|吹《ふ》いたのに、 あなたたちは|踊《おど》ってくれなかった。 |弔《とむら》いの|歌《うた》を|歌《うた》ったのに、 |胸《むね》を|打《う》ってくれなかった』 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》うのに|似《に》ている。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、ヨハネがきて、|食《た》べることも、|飲《の》むこともしないと、あれは|悪霊《あくれい》につかれているのだ、と|言《い》い、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また|人《ひと》の|子《こ》がきて、|食《た》べたり|飲《の》んだりしていると、|見《み》よ、あれは|食《しょく》をむさぼる|者《もの》、|大酒《おおざけ》を|飲《の》む|者《もの》、また|取税人《しゅぜいにん》、|罪人《つみびと》の|仲間《なかま》だ、と|言《い》う。しかし、|知恵《ちえ》の|正《ただ》しいことは、その|働《はたら》きが|証明《しょうめい》する」。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスは、|数々《かずかず》の|力《ちから》あるわざがなされたのに、|悔《く》い|改《あらた》めることをしなかった|町々《まちまち》を、|責《せ》めはじめられた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]「わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちのうちでなされた|力《ちから》あるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、|彼《かれ》らはとうの|昔《むかし》に、|荒布《あらぬの》をまとい|灰《はい》をかぶって、|悔《く》い|改《あらた》めたであろう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、おまえたちに|言《い》っておく。さばきの|日《ひ》には、ツロとシドンの|方《ほう》がおまえたちよりも、|耐《た》えやすいであろう。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ああ、カペナウムよ、おまえは|天《てん》にまで|上《あ》げられようとでもいうのか。|黄泉《よみ》にまで|落《おと》されるであろう。おまえの|中《なか》でなされた|力《ちから》あるわざが、もしソドムでなされたなら、その|町《まち》は|今日《きょう》までも|残《のこ》っていたであろう。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたに|言《い》う。さばきの|日《ひ》には、ソドムの|地《ち》の|方《ほう》がおまえよりは|耐《た》えやすいであろう」。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そのときイエスは|声《こえ》をあげて|言《い》われた、「|天地《てんち》の|主《しゅ》なる|父《ちち》よ。あなたをほめたたえます。これらの|事《こと》を|知恵《ちえ》のある|者《もの》や|賢《かしこ》い|者《もの》に|隠《かく》して、|幼《おさ》な|子《ご》にあらわしてくださいました。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》よ、これはまことにみこころにかなった|事《こと》でした。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]すべての|事《こと》は|父《ちち》からわたしに|任《まか》せられています。そして、|子《こ》を|知《し》る|者《もの》は|父《ちち》のほかにはなく、|父《ちち》を|知《し》る|者《もの》は、|子《こ》と、|父《ちち》をあらわそうとして|子《こ》が|選《えら》んだ|者《もの》とのほかに、だれもありません。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]すべて|重荷《おもに》を|負《お》うて|苦労《くろう》している|者《もの》は、わたしのもとにきなさい。あなたがたを|休《やす》ませてあげよう。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|柔和《にゅうわ》で|心《こころ》のへりくだった|者《もの》であるから、わたしのくびきを|負《お》うて、わたしに|学《まな》びなさい。そうすれば、あなたがたの|魂《たましい》に|休《やす》みが|与《あた》えられるであろう。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしのくびきは|負《お》いやすく、わたしの|荷《に》は|軽《かる》いからである」。 第一二章[#「第一二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、ある|安息日《あんそくにち》に、イエスは|麦畑《むぎばたけ》の|中《なか》を|通《とお》られた。すると|弟子《でし》たちは、|空腹《くうふく》であったので、|穂《ほ》を|摘《つ》んで|食《た》べはじめた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》たちがこれを|見《み》て、イエスに|言《い》った、「ごらんなさい、あなたの|弟子《でし》たちが、|安息日《あんそくにち》にしてはならないことをしています」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたは、ダビデとその|供《とも》の|者《もの》たちとが|飢《う》えたとき、ダビデが|何《なに》をしたか|読《よ》んだことがないのか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|神《かみ》の|家《いえ》にはいって、|祭司《さいし》たちのほか、|自分《じぶん》も|供《とも》の|者《もの》たちも|食《た》べてはならぬ|供《そな》えのパンを|食《た》べたのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また、|安息日《あんそくにち》に|宮仕《みやづか》えをしている|祭司《さいし》たちは|安息日《あんそくにち》を|破《やぶ》っても|罪《つみ》にはならないことを、|律法《りっぽう》で|読《よ》んだことがないのか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》っておく。|宮《みや》よりも|大《おお》いなる|者《もの》がここにいる。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]『わたしが|好《この》むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう|意味《いみ》か|知《し》っていたなら、あなたがたは|罪《つみ》のない|者《もの》をとがめなかったであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》は|安息日《あんそくにち》の|主《しゅ》である」。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]イエスはそこを|去《さ》って、|彼《かれ》らの|会堂《かいどう》にはいられた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]すると、そのとき、|片手《かたて》のなえた|人《ひと》がいた。|人々《ひとびと》はイエスを|訴《うった》えようと|思《おも》って、「|安息日《あんそくにち》に|人《ひと》をいやしても、さしつかえないか」と|尋《たず》ねた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたのうちに、一|匹《ぴき》の|羊《ひつじ》を|持《も》っている|人《ひと》があるとして、もしそれが|安息日《あんそくにち》に|穴《あな》に|落《お》ちこんだなら、|手《て》をかけて|引《ひ》き|上《あ》げてやらないだろうか。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》は|羊《ひつじ》よりも、はるかにすぐれているではないか。だから、|安息日《あんそくにち》に|良《よ》いことをするのは、|正《ただ》しいことである」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そしてイエスはその|人《ひと》に、「|手《て》を|伸《の》ばしなさい」と|言《い》われた。そこで|手《て》を|伸《の》ばすと、ほかの|手《て》のように|良《よ》くなった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》たちは|出《で》て|行《い》って、なんとかしてイエスを|殺《ころ》そうと|相談《そうだん》した。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれを|知《し》って、そこを|去《さ》って|行《い》かれた。ところが|多《おお》くの|人々《ひとびと》がついてきたので、|彼《かれ》らを|皆《みな》いやし、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして|自分《じぶん》のことを|人々《ひとびと》にあらわさないようにと、|彼《かれ》らを|戒《いまし》められた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]これは|預言者《よげんしゃ》イザヤの|言《い》った|言葉《ことば》が、|成就《じょうじゅ》するためである、 [#ここから2字下げ] [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]「|見《み》よ、わたしが|選《えら》んだ|僕《しもべ》、 わたしの|心《こころ》にかなう、|愛《あい》する|者《もの》。 わたしは|彼《かれ》にわたしの|霊《れい》を|授《さづ》け、 そして|彼《かれ》は|正義《せいぎ》を|異邦人《いほうじん》に|宣《の》べ|伝《つた》えるであろう。 [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|争《あらそ》わず、|叫《さけ》ばず、 またその|声《こえ》を|大路《おおじ》で|聞《き》く|者《もの》はない。 [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》が|正義《せいぎ》に|勝《か》ちを|得《え》させる|時《とき》まで、 いためられた|葦《あし》を|折《お》ることがなく、 |煙《けむ》っている|燈心《とうしん》を|消《け》すこともない。 [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|異邦人《いほうじん》は|彼《かれ》の|名《な》に|望《のぞ》みを|置《お》くであろう」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|人々《ひとびと》が|悪霊《あくれい》につかれた|盲人《もうじん》のおしを|連《つ》れてきたので、イエスは|彼《かれ》をいやして、|物《もの》を|言《い》い、また|目《め》が|見《み》えるようにされた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]すると|群衆《ぐんしゅう》はみな|驚《おどろ》いて|言《い》った、「この|人《ひと》が、あるいはダビデの|子《こ》ではあるまいか」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、パリサイ|人《びと》たちは、これを|聞《き》いて|言《い》った、「この|人《ひと》が|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》しているのは、まったく|悪霊《あくれい》のかしらベルゼブルによるのだ」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らの|思《おも》いを|見抜《みぬ》いて|言《い》われた、「おおよそ、|内部《ないぶ》で|分《わか》れ|争《あらそ》う|国《くに》は|自滅《じめつ》し、|内《うち》わで|分《わか》れ|争《あらそ》う|町《まち》や|家《いえ》は|立《た》ち|行《い》かない。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]もしサタンがサタンを|追《お》い|出《だ》すならば、それは|内《うち》わで|分《わか》れ|争《あらそ》うことになる。それでは、その|国《くに》はどうして|立《た》ち|行《い》けよう。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしがベルゼブルによって|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》すとすれば、あなたがたの|仲間《なかま》はだれによって|追《お》い|出《だ》すのであろうか。だから、|彼《かれ》らがあなたがたをさばく|者《もの》となるであろう。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしが|神《かみ》の|霊《れい》によって|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》しているのなら、|神《かみ》の|国《くに》はすでにあなたがたのところにきたのである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]まただれでも、まず|強《つよ》い|人《ひと》を|縛《しば》りあげなければ、どうして、その|人《ひと》の|家《いえ》に|押《お》し|入《い》って|家財《かざい》を|奪《うば》い|取《と》ることができようか。|縛《しば》ってから、はじめてその|家《いえ》を|掠奪《りゃくだつ》することができる。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|味方《みかた》でない|者《もの》は、わたしに|反対《はんたい》するものであり、わたしと|共《とも》に|集《あつ》めない|者《もの》は、|散《ち》らすものである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたに|言《い》っておく。|人《ひと》には、その|犯《おか》すすべての|罪《つみ》も|神《かみ》を|汚《けが》す|言葉《ことば》も、ゆるされる。しかし、|聖霊《せいれい》を|汚《けが》す|言葉《ことば》は、ゆるされることはない。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]また|人《ひと》の|子《こ》に|対《たい》して|言《い》い|逆《さか》らう|者《もの》は、ゆるされるであろう。しかし、|聖霊《せいれい》に|対《たい》して|言《い》い|逆《さか》らう|者《もの》は、この|世《よ》でも、きたるべき|世《よ》でも、ゆるされることはない。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|木《き》が|良《よ》ければ、その|実《み》も|良《よ》いとし、|木《き》が|悪《わる》ければ、その|実《み》も|悪《わる》いとせよ。|木《き》はその|実《み》でわかるからである。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]まむしの|子《こ》らよ。あなたがたは|悪《わる》い|者《もの》であるのに、どうして|良《よ》いことを|語《かた》ることができようか。おおよそ、|心《こころ》からあふれることを、|口《くち》が|語《かた》るものである。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|善人《ぜんにん》はよい|倉《くら》から|良《よ》い|物《もの》を|取《と》り|出《だ》し、|悪人《あくにん》は|悪《わる》い|倉《くら》から|悪《わる》い|物《もの》を|取《と》り|出《だ》す。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》うが、|審判《しんぱん》の|日《ひ》には、|人《ひと》はその|語《かた》る|無益《むえき》な|言葉《ことば》に|対《たい》して、|言《い》い|開《ひら》きをしなければならないであろう。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、|自分《じぶん》の|言葉《ことば》によって|正《ただ》しいとされ、また|自分《じぶん》の|言葉《ことば》によって|罪《つみ》ありとされるからである」。  [#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、パリサイ|人《びと》のうちのある|人々《ひとびと》がイエスにむかって|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちはあなたから、しるしを|見《み》せていただきとうございます」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》らに|答《こた》えて|言《い》われた、「|邪悪《じゃあく》で|不義《ふぎ》な|時代《じだい》は、しるしを|求《もと》める。しかし、|預言者《よげんしゃ》ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも|与《あた》えられないであろう。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、ヨナが三|日《か》三|晩《ばん》、|大魚《たいぎょ》の|腹《はら》の|中《うち》にいたように、|人《ひと》の|子《こ》も三|日《か》三|晩《ばん》、|地《ち》の|中《なか》にいるであろう。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]ニネベの|人々《ひとびと》が、|今《いま》の|時代《じだい》の|人々《ひとびと》と|共《とも》にさばきの|場《ば》に|立《た》って、|彼《かれ》らを|罪《つみ》に|定《さだ》めるであろう。なぜなら、ニネベの|人々《ひとびと》はヨナの|宣教《せんきょう》によって|悔《く》い|改《あらた》めたからである。しかし|見《み》よ、ヨナにまさる|者《もの》がここにいる。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|南《みなみ》の|女王《じょおう》が、|今《いま》の|時代《じだい》の|人々《ひとびと》と|共《とも》にさばきの|場《ば》に|立《た》って、|彼《かれ》らを|罪《つみ》に|定《さだ》めるであろう。なぜなら、|彼女《かのじょ》はソロモンの|知恵《ちえ》を|聞《き》くために|地《ち》の|果《はて》から、はるばるきたからである。しかし|見《み》よ、ソロモンにまさる|者《もの》がここにいる。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|汚《けが》れた|霊《れい》が|人《ひと》から|出《で》ると、|休《やす》み|場《ば》を|求《もと》めて|水《みず》の|無《な》い|所《ところ》を|歩《ある》きまわるが、|見《み》つからない。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|出《で》てきた|元《もと》の|家《いえ》に|帰《かえ》ろうと|言《い》って|帰《かえ》って|見《み》ると、その|家《いえ》はあいていて、そうじがしてある|上《うえ》、|飾《かざ》りつけがしてあった。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]そこでまた|出《で》て|行《い》って、|自分《じぶん》|以上《いじょう》に|悪《わる》い|他《た》の七つの|霊《れい》を|一緒《いっしょ》に|引《ひ》き|連《つ》れてきて|中《なか》にはいり、そこに|住《す》み|込《こ》む。そうすると、その|人《ひと》ののちの|状態《じょうたい》は|初《はじ》めよりももっと|悪《わる》くなるのである。よこしまな|今《いま》の|時代《じだい》も、このようになるであろう」。  [#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]イエスがまだ|群衆《ぐんしゅう》に|話《はな》しておられるとき、その|母《はは》と|兄弟《きょうだい》たちとが、イエスに|話《はな》そうと|思《おも》って|外《そと》に|立《た》っていた。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]それで、ある|人《ひと》がイエスに|言《い》った、「ごらんなさい。あなたの|母上《ははうえ》と|兄弟《きょうだい》がたが、あなたに|話《はな》そうと|思《おも》って、|外《そと》に|立《た》っておられます」。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|知《し》らせてくれた|者《もの》に|答《こた》えて|言《い》われた、「わたしの|母《はは》とは、だれのことか。わたしの|兄弟《きょうだい》とは、だれのことか」。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]そして、|弟子《でし》たちの|方《ほう》に|手《て》をさし|伸《の》べて|言《い》われた、「ごらんなさい。ここにわたしの|母《はは》、わたしの|兄弟《きょうだい》がいる。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]|天《てん》にいますわたしの|父《ちち》のみこころを|行《おこな》う|者《もの》はだれでも、わたしの|兄弟《きょうだい》、また|姉妹《しまい》、また|母《はは》なのである」。 第一三章[#「第一三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》、イエスは|家《いえ》を|出《で》て、|海《うみ》べにすわっておられた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》がみもとに|集《あつ》まったので、イエスは|舟《ふね》に|乗《の》ってすわられ、|群衆《ぐんしゅう》はみな|岸《きし》に|立《た》っていた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|譬《たとえ》で|多《おお》くの|事《こと》を|語《かた》り、こう|言《い》われた、「|見《み》よ、|種《たね》まきが|種《たね》をまきに|出《で》て|行《い》った。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]まいているうちに、|道《みち》ばたに|落《お》ちた|種《たね》があった。すると、|鳥《とり》がきて|食《た》べてしまった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|種《たね》は|土《つち》の|薄《うす》い|石地《いしじ》に|落《お》ちた。そこは|土《つち》が|深《ふか》くないので、すぐ|芽《め》を|出《だ》したが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|日《ひ》が|上《のぼ》ると|焼《や》けて、|根《ね》がないために|枯《か》れてしまった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|種《たね》はいばらの|地《ち》に|落《お》ちた。すると、いばらが|伸《の》びて、ふさいでしまった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|種《たね》は|良《よ》い|地《ち》に|落《お》ちて|実《み》を|結《むす》び、あるものは百|倍《ばい》、あるものは六十|倍《ばい》、あるものは三十|倍《ばい》にもなった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|耳《みみ》のある|者《もの》は|聞《き》くがよい」。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それから、|弟子《でし》たちがイエスに|近寄《ちかよ》ってきて|言《い》った、「なぜ、|彼《かれ》らに|譬《たとえ》でお|話《はな》しになるのですか」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「あなたがたには、|天国《てんごく》の|奥義《おくぎ》を|知《し》ることが|許《ゆる》されているが、|彼《かれ》らには|許《ゆる》されていない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]おおよそ、|持《も》っている|人《ひと》は|与《あた》えられて、いよいよ|豊《ゆた》かになるが、|持《も》っていない|人《ひと》は、|持《も》っているものまでも|取《と》り|上《あ》げられるであろう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]だから、|彼《かれ》らには|譬《たとえ》で|語《かた》るのである。それは|彼《かれ》らが、|見《み》ても|見《み》ず、|聞《き》いても|聞《き》かず、また|悟《さと》らないからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]こうしてイザヤの|言《い》った|預言《よげん》が、|彼《かれ》らの|上《うえ》に|成就《じょうじゅ》したのである。 [#ここから2字下げ] 『あなたがたは|聞《き》くには|聞《き》くが、|決《けっ》して|悟《さと》らない。 |見《み》るには|見《み》るが、|決《けっ》して|認《みと》めない。 [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]この|民《たみ》の|心《こころ》は|鈍《にぶ》くなり、 その|耳《みみ》は|聞《きこ》えにくく、 その|目《め》は|閉《と》じている。 それは、|彼《かれ》らが|目《め》で|見《み》ず、|耳《みみ》で|聞《き》かず、|心《こころ》で|悟《さと》らず、 |悔《く》い|改《あらた》めていやされることがないためである』。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたの|目《め》は|見《み》ており、|耳《みみ》は|聞《き》いているから、さいわいである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたによく|言《い》っておく。|多《おお》くの|預言者《よげんしゃ》や|義人《ぎじん》は、あなたがたの|見《み》ていることを|見《み》ようと|熱心《ねっしん》に|願《ねが》ったが、|見《み》ることができず、またあなたがたの|聞《き》いていることを|聞《き》こうとしたが、|聞《き》けなかったのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|種《たね》まきの|譬《たとえ》を|聞《き》きなさい。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]だれでも|御国《みくに》の|言《ことば》を|聞《き》いて|悟《さと》らないならば、|悪《わる》い|者《もの》がきて、その|人《ひと》の|心《こころ》にまかれたものを|奪《うば》いとって|行《い》く。|道《みち》ばたにまかれたものというのは、そういう|人《ひと》のことである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|石地《いしじ》にまかれたものというのは、|御言《みことば》を|聞《き》くと、すぐに|喜《よろこ》んで|受《う》ける|人《ひと》のことである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]その|中《なか》に|根《ね》がないので、しばらく|続《つづ》くだけであって、|御言《みことば》のために|困難《こんなん》や|迫害《はくがい》が|起《おこ》ってくると、すぐつまずいてしまう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]また、いばらの|中《なか》にまかれたものとは、|御言《みことば》を|聞《き》くが、|世《よ》の|心《こころ》づかいと|富《とみ》の|惑《まど》わしとが|御言《みことば》をふさぐので、|実《み》を|結《むす》ばなくなる|人《ひと》のことである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]また、|良《よ》い|地《ち》にまかれたものとは、|御言《みことば》を|聞《き》いて|悟《さと》る|人《ひと》のことであって、そういう|人《ひと》が|実《み》を|結《むす》び、百|倍《ばい》、あるいは六十|倍《ばい》、あるいは三十|倍《ばい》にもなるのである」。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]また、ほかの|譬《たとえ》を|彼《かれ》らに|示《しめ》して|言《い》われた、「|天国《てんごく》は、|良《よ》い|種《たね》を|自分《じぶん》の|畑《はたけ》にまいておいた|人《ひと》のようなものである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》が|眠《ねむ》っている|間《あいだ》に|敵《てき》がきて、|麦《むぎ》の|中《なか》に|毒《どく》|麦《むぎ》をまいて|立《た》ち|去《さ》った。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|芽《め》がはえ|出《で》て|実《み》を|結《むす》ぶと、|同時《どうじ》に|毒《どく》|麦《むぎ》もあらわれてきた。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|僕《しもべ》たちがきて、|家《いえ》の|主人《しゅじん》に|言《い》った、『ご|主人様《しゅじんさま》、|畑《はたけ》におまきになったのは、|良《よ》い|種《たね》ではありませんでしたか。どうして|毒《どく》|麦《むぎ》がはえてきたのですか』。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》は|言《い》った、『それは|敵《てき》のしわざだ』。すると|僕《しもべ》たちが|言《い》った『では|行《い》って、それを|抜《ぬ》き|集《あつ》めましょうか』。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|言《い》った、『いや、|毒《どく》|麦《むぎ》を|集《あつ》めようとして、|麦《むぎ》も|一緒《いっしょ》に|抜《ぬ》くかも|知《し》れない。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|収穫《しゅうかく》まで、|両方《りょうほう》とも|育《そだ》つままにしておけ。|収穫《しゅうかく》の|時《とき》になったら、|刈《か》る|者《もの》に、まず|毒《どく》|麦《むぎ》を|集《あつ》めて|束《たば》にして|焼《や》き、|麦《むぎ》の|方《ほう》は|集《あつ》めて|倉《くら》に|入《い》れてくれ、と|言《い》いつけよう』」。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]また、ほかの|譬《たとえ》を|彼《かれ》らに|示《しめ》して|言《い》われた、「|天国《てんごく》は、一|粒《つぶ》のからし|種《だね》のようなものである。ある|人《ひと》がそれをとって|畑《はたけ》にまくと、[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]それはどんな|種《たね》よりも|小《ちい》さいが、|成長《せいちょう》すると、|野菜《やさい》の|中《なか》でいちばん|大《おお》きくなり、|空《そら》の|鳥《とり》がきて、その|枝《えだ》に|宿《やど》るほどの|木《き》になる」。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]またほかの|譬《たとえ》を|彼《かれ》らに|語《かた》られた、「|天国《てんごく》は、パン|種《たね》のようなものである。|女《おんな》がそれを|取《と》って三|斗《と》の|粉《こな》の|中《なか》に|混《ま》ぜると、|全体《ぜんたい》がふくらんでくる」。  [#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれらのことをすべて、|譬《たとえ》で|群衆《ぐんしゅう》に|語《かた》られた。|譬《たとえ》によらないでは|何事《なにごと》も|彼《かれ》らに|語《かた》られなかった。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]これは|預言者《よげんしゃ》によって|言《い》われたことが、|成就《じょうじゅ》するためである、 [#ここから2字下げ] 「わたしは|口《くち》を|開《ひら》いて|譬《たとえ》を|語《かた》り、 |世《よ》の|初《はじ》めから|隠《かく》されていることを|語《かた》り|出《だ》そう」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスは、|群衆《ぐんしゅう》をあとに|残《のこ》して|家《いえ》にはいられた。すると|弟子《でし》たちは、みもとにきて|言《い》った、「|畑《はたけ》の|毒《どく》|麦《むぎ》の|譬《たとえ》を|説明《せつめい》してください」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「|良《よ》い|種《たね》をまく|者《もの》は、|人《ひと》の|子《こ》である。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|畑《はたけ》は|世界《せかい》である。|良《よ》い|種《たね》と|言《い》うのは|御国《みくに》の|子《こ》たちで、|毒《どく》|麦《むぎ》は|悪《わる》い|者《もの》の|子《こ》たちである。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]それをまいた|敵《てき》は|悪魔《あくま》である。|収穫《しゅうかく》とは|世《よ》の|終《おわ》りのことで、|刈《か》る|者《もの》は|御使《みつかい》たちである。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]だから、|毒《どく》|麦《むぎ》が|集《あつ》められて|火《ひ》で|焼《や》かれるように、|世《よ》の|終《おわ》りにもそのとおりになるであろう。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》はその|使《つかい》たちをつかわし、つまずきとなるものと|不法《ふほう》を|行《おこな》う|者《もの》とを、ことごとく|御国《みくに》からとり|集《あつ》めて、[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|炉《ろ》の|火《ひ》に|投《な》げ|入《い》れさせるであろう。そこでは|泣《な》き|叫《さけ》んだり、|歯《は》がみをしたりするであろう。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|義人《ぎじん》たちは|彼《かれ》らの|父《ちち》の|御国《みくに》で、|太陽《たいよう》のように|輝《かがや》きわたるであろう。|耳《みみ》のある|者《もの》は|聞《き》くがよい。  [#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]|天国《てんごく》は、|畑《はたけ》に|隠《かく》してある|宝《たから》のようなものである。|人《ひと》がそれを|見《み》つけると|隠《かく》しておき、|喜《よろこ》びのあまり、|行《い》って|持《も》ち|物《もの》をみな|売《う》りはらい、そしてその|畑《はたけ》を|買《か》うのである。  [#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]また|天国《てんごく》は、|良《よ》い|真珠《しんじゅ》を|捜《さが》している|商人《しょうにん》のようなものである。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|高価《こうか》な|真珠《しんじゅ》一|個《こ》を|見《み》いだすと、|行《い》って|持《も》ち|物《もの》をみな|売《う》りはらい、そしてこれを|買《か》うのである。  [#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]また|天国《てんごく》は、|海《うみ》におろして、あらゆる|種類《しゅるい》の|魚《うお》を|囲《かこ》みいれる|網《あみ》のようなものである。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]それがいっぱいになると|岸《きし》に|引《ひ》き|上《あ》げ、そしてすわって、|良《よ》いのを|器《うつわ》に|入《い》れ、|悪《わる》いのを|外《そと》へ|捨《す》てるのである。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]|世《よ》の|終《おわ》りにも、そのとおりになるであろう。すなわち、|御使《みつかい》たちがきて、|義人《ぎじん》のうちから|悪人《あくにん》をえり|分《わ》け、[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]そして|炉《ろ》の|火《ひ》に|投《な》げこむであろう。そこでは|泣《な》き|叫《さけ》んだり、|歯《は》がみをしたりするであろう。  [#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、これらのことが|皆《みな》わかったか」。|彼《かれ》らは「わかりました」と|答《こた》えた。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「それだから、|天国《てんごく》のことを|学《まな》んだ|学者《がくしゃ》は、|新《あたら》しいものと|古《ふる》いものとを、その|倉《くら》から|取《と》り|出《だ》す|一家《いっか》の|主人《しゅじん》のようなものである」。  [#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれらの|譬《たとえ》を|語《かた》り|終《お》えてから、そこを|立《た》ち|去《さ》られた。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]そして|郷里《きょうり》に|行《い》き、|会堂《かいどう》で|人々《ひとびと》を|教《おし》えられたところ、|彼《かれ》らは|驚《おどろ》いて|言《い》った、「この|人《ひと》は、この|知恵《ちえ》とこれらの|力《ちから》あるわざとを、どこで|習《なら》ってきたのか。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》は|大工《だいく》の|子《こ》ではないか。|母《はは》はマリヤといい、|兄弟《きょうだい》たちは、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではないか。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]またその|姉妹《しまい》たちもみな、わたしたちと|一緒《いっしょ》にいるではないか。こんな|数々《かずかず》のことを、いったい、どこで|習《なら》ってきたのか」。[#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]こうして|人々《ひとびと》はイエスにつまずいた。しかし、イエスは|言《い》われた、「|預言者《よげんしゃ》は、|自分《じぶん》の|郷里《きょうり》や|自分《じぶん》の|家《いえ》|以外《いがい》では、どこででも|敬《うやま》われないことはない」。[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》らの|不《ふ》|信仰《しんこう》のゆえに、そこでは|力《ちから》あるわざを、あまりなさらなかった。 第一四章[#「第一四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、|領主《りょうしゅ》ヘロデはイエスのうわさを|聞《き》いて、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|家来《けらい》に|言《い》った、「あれはバプテスマのヨハネだ。|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえったのだ。それで、あのような|力《ちから》が|彼《かれ》のうちに|働《はたら》いているのだ」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]というのは、ヘロデは|先《さき》に、|自分《じぶん》の|兄弟《きょうだい》ピリポの|妻《つま》ヘロデヤのことで、ヨハネを|捕《とら》えて|縛《しば》り、|獄《ごく》に|入《い》れていた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、ヨハネはヘロデに、「その|女《おんな》をめとるのは、よろしくない」と|言《い》ったからである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこでヘロデはヨハネを|殺《ころ》そうと|思《おも》ったが、|群衆《ぐんしゅう》を|恐《おそ》れた。|彼《かれ》らがヨハネを|預言者《よげんしゃ》と|認《みと》めていたからである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]さてヘロデの|誕生《たんじょう》|日《び》の|祝《いわい》に、ヘロデヤの|娘《むすめ》がその|席上《せきじょう》で|舞《まい》をまい、ヘロデを|喜《よろこ》ばせたので、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》の|願《ねが》うものは、なんでも|与《あた》えようと、|彼《かれ》は|誓《ちか》って|約束《やくそく》までした。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼女《かのじょ》は|母《はは》にそそのかされて、「バプテスマのヨハネの|首《くび》を|盆《ぼん》に|載《の》せて、ここに|持《も》ってきていただきとうございます」と|言《い》った。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|王《おう》は|困《こま》ったが、いったん|誓《ちか》ったのと、また|列座《れつざ》の|人《ひと》たちの|手前《てまえ》、それを|与《あた》えるように|命《めい》じ、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》をつかわして、|獄中《ごくちゅう》でヨハネの|首《くび》を|切《き》らせた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]その|首《くび》は|盆《ぼん》に|載《の》せて|運《はこ》ばれ、|少女《しょうじょ》にわたされ、|少女《しょうじょ》はそれを|母《はは》のところに|持《も》って|行《い》った。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それから、ヨハネの|弟子《でし》たちがきて、|死体《したい》を|引《ひ》き|取《と》って|葬《ほうむ》った。そして、イエスのところに|行《い》って|報告《ほうこく》した。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこのことを|聞《き》くと、|舟《ふね》に|乗《の》ってそこを|去《さ》り、|自分《じぶん》ひとりで|寂《さび》しい|所《ところ》へ|行《い》かれた。しかし、|群衆《ぐんしゅう》はそれと|聞《き》いて、|町々《まちまち》から|徒歩《とほ》であとを|追《お》ってきた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|舟《ふね》から|上《あ》がって、|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》をごらんになり、|彼《かれ》らを|深《ふか》くあわれんで、そのうちの|病人《びょうにん》たちをおいやしになった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|夕方《ゆうがた》になったので、|弟子《でし》たちがイエスのもとにきて|言《い》った、「ここは|寂《さび》しい|所《ところ》でもあり、もう|時《とき》もおそくなりました。|群衆《ぐんしゅう》を|解散《かいさん》させ、めいめいで|食物《しょくもつ》を|買《か》いに、|村々《むらむら》へ|行《い》かせてください」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|言《い》われた、「|彼《かれ》らが|出《で》かけて|行《い》くには|及《およ》ばない。あなたがたの|手《て》で|食物《しょくもつ》をやりなさい」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|言《い》った、「わたしたちはここに、パン五つと|魚《うお》二ひきしか|持《も》っていません」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「それをここに|持《も》ってきなさい」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そして|群衆《ぐんしゅう》に|命《めい》じて、|草《くさ》の|上《うえ》にすわらせ、五つのパンと二ひきの|魚《うお》とを|手《て》に|取《と》り、|天《てん》を|仰《あお》いでそれを|祝福《しゅくふく》し、パンをさいて|弟子《でし》たちに|渡《わた》された。|弟子《でし》たちはそれを|群衆《ぐんしゅう》に|与《あた》えた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》は|食《た》べて|満腹《まんぷく》した。パンくずの|残《のこ》りを|集《あつ》めると、十二のかごにいっぱいになった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|食《た》べた|者《もの》は、|女《おんな》と|子供《こども》とを|除《のぞ》いて、おおよそ五千|人《にん》であった。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]それからすぐ、イエスは|群衆《ぐんしゅう》を|解散《かいさん》させておられる|間《あいだ》に、しいて|弟子《でし》たちを|舟《ふね》に|乗《の》り|込《こ》ませ、|向《む》こう|岸《ぎし》へ|先《さき》におやりになった。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そして|群衆《ぐんしゅう》を|解散《かいさん》させてから、|祈《いの》るためひそかに|山《やま》へ|登《のぼ》られた。|夕方《ゆうがた》になっても、ただひとりそこにおられた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ところが|舟《ふね》は、もうすでに|陸《りく》から|数丁《すうちょう》も|離《はな》れており、|逆風《ぎゃくふう》が|吹《ふ》いていたために、|波《なみ》に|悩《なや》まされていた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|夜明《よあ》けの四|時《じ》ごろ、|海《うみ》の|上《うえ》を|歩《ある》いて|彼《かれ》らの|方《ほう》へ|行《い》かれた。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは、イエスが|海《うみ》の|上《うえ》を|歩《ある》いておられるのを|見《み》て、|幽霊《ゆうれい》だと|言《い》っておじ|惑《まど》い、|恐怖《きょうふ》のあまり|叫《さけ》び|声《ごえ》をあげた。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスはすぐに|彼《かれ》らに|声《こえ》をかけて、「しっかりするのだ、わたしである。|恐《おそ》れることはない」と|言《い》われた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]するとペテロが|答《こた》えて|言《い》った、「|主《しゅ》よ、あなたでしたか。では、わたしに|命《めい》じて、|水《みず》の|上《うえ》を|渡《わた》ってみもとに|行《い》かせてください」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、「おいでなさい」と|言《い》われたので、ペテロは|舟《ふね》からおり、|水《みず》の|上《うえ》を|歩《ある》いてイエスのところへ|行《い》った。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|風《かぜ》を|見《み》て|恐《おそ》ろしくなり、そしておぼれかけたので、|彼《かれ》は|叫《さけ》んで、「|主《しゅ》よ、お|助《たす》けください」と|言《い》った。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはすぐに|手《て》を|伸《の》ばし、|彼《かれ》をつかまえて|言《い》われた、「|信仰《しんこう》の|薄《うす》い|者《もの》よ、なぜ|疑《うたが》ったのか」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ふたりが|舟《ふね》に|乗《の》り|込《こ》むと、|風《かぜ》はやんでしまった。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|舟《ふね》の|中《なか》にいた|者《もの》たちはイエスを|拝《はい》して、「ほんとうに、あなたは|神《かみ》の|子《こ》です」と|言《い》った。  [#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》らは|海《うみ》を|渡《わた》ってゲネサレの|地《ち》に|着《つ》いた。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]するとその|土地《とち》の|人々《ひとびと》はイエスと|知《し》って、その|附近《ふきん》|全体《ぜんたい》に|人《ひと》をつかわし、イエスのところに|病人《びょうにん》をみな|連《つ》れてこさせた。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》らにイエスの|上着《うわぎ》のふさにでも、さわらせてやっていただきたいとお|願《ねが》いした。そしてさわった|者《もの》は|皆《みな》いやされた。 第一五章[#「第一五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]ときに、パリサイ|人《びと》と|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちとが、エルサレムからイエスのもとにきて|言《い》った、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「あなたの|弟子《でし》たちは、なぜ|昔《むかし》の|人々《ひとびと》の|言伝《いいつた》えを|破《やぶ》るのですか。|彼《かれ》らは|食事《しょくじ》の|時《とき》に|手《て》を|洗《あら》っていません」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「なぜ、あなたがたも|自分《じぶん》たちの|言伝《いいつた》えによって、|神《かみ》のいましめを|破《やぶ》っているのか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|言《い》われた、『|父《ちち》と|母《はは》とを|敬《うやま》え』、また『|父《ちち》または|母《はは》をののしる|者《もの》は、|必《かなら》ず|死《し》に|定《さだ》められる』と。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それだのに、あなたがたは『だれでも|父《ちち》または|母《はは》にむかって、あなたにさしあげるはずのこのものは|供《そな》え|物《もの》です、と|言《い》えば、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》または|母《はは》を|敬《うやま》わなくてもよろしい』と|言《い》っている。こうしてあなたがたは|自分《じぶん》たちの|言伝《いいつた》えによって、|神《かみ》の|言《ことば》を|無《む》にしている。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|偽善者《ぎぜんしゃ》たちよ、イザヤがあなたがたについて、こういう|適切《てきせつ》な|預言《よげん》をしている、 [#ここから2字下げ] [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]『この|民《たみ》は、|口《くち》さきではわたしを|敬《うやま》うが、 その|心《こころ》はわたしから|遠《とお》く|離《はな》れている。 [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|人間《にんげん》のいましめを|教《おしえ》として|教《おし》え、 |無意味《むいみ》にわたしを|拝《おが》んでいる』」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスは|群衆《ぐんしゅう》を|呼《よ》び|寄《よ》せて|言《い》われた、「|聞《き》いて|悟《さと》るがよい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|口《くち》にはいるものは|人《ひと》を|汚《けが》すことはない。かえって、|口《くち》から|出《で》るものが|人《ひと》を|汚《けが》すのである」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|弟子《でし》たちが|近寄《ちかよ》ってきてイエスに|言《い》った、「パリサイ|人《びと》たちが|御言《みことば》を|聞《き》いてつまずいたことを、ご|存《ぞん》じですか」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「わたしの|天《てん》の|父《ちち》がお|植《う》えにならなかったものは、みな|抜《ぬ》き|取《と》られるであろう。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らをそのままにしておけ。|彼《かれ》らは|盲人《もうじん》を|手引《てび》きする|盲人《もうじん》である。もし|盲人《もうじん》が|盲人《もうじん》を|手引《てび》きするなら、ふたりとも|穴《あな》に|落《お》ち|込《こ》むであろう」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ペテロが|答《こた》えて|言《い》った、「その|譬《たとえ》を|説明《せつめい》してください」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「あなたがたも、まだわからないのか。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|口《くち》にはいってくるものは、みな|腹《はら》の|中《なか》にはいり、そして、|外《そと》に|出《で》て|行《い》くことを|知《し》らないのか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|口《くち》から|出《で》て|行《い》くものは、|心《こころ》の|中《なか》から|出《で》てくるのであって、それが|人《ひと》を|汚《けが》すのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|悪《わる》い|思《おも》い、すなわち、|殺人《さつじん》、|姦淫《かんいん》、|不品行《ふひんこう》、|盗《ぬす》み、|偽証《ぎしょう》、|誹《そし》りは、|心《こころ》の|中《なか》から|出《で》てくるのであって、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]これらのものが|人《ひと》を|汚《けが》すのである。しかし、|洗《あら》わない|手《て》で|食事《しょくじ》することは、|人《ひと》を|汚《けが》すのではない」。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスはそこを|出《で》て、ツロとシドンとの|地方《ちほう》へ|行《い》かれた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すると、そこへ、その|地方《ちほう》|出《で》のカナンの|女《おんな》が|出《で》てきて、「|主《しゅ》よ、ダビデの|子《こ》よ、わたしをあわれんでください。|娘《むすめ》が|悪霊《あくれい》にとりつかれて|苦《くる》しんでいます」と|言《い》って|叫《さけ》びつづけた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスはひと|言《こと》もお|答《こた》えにならなかった。そこで|弟子《でし》たちがみもとにきて|願《ねが》って|言《い》った、「この|女《おんな》を|追《お》い|払《はら》ってください。|叫《さけ》びながらついてきていますから」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「わたしは、イスラエルの|家《いえ》の|失《うしな》われた|羊《ひつじ》|以外《いがい》の|者《もの》には、つかわされていない」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|女《おんな》は|近寄《ちかよ》りイエスを|拝《はい》して|言《い》った、「|主《しゅ》よ、わたしをお|助《たす》けください」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「|子供《こども》たちのパンを|取《と》って|小犬《こいぬ》に|投《な》げてやるのは、よろしくない」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]すると|女《おんな》は|言《い》った、「|主《しゅ》よ、お|言葉《ことば》どおりです。でも、|小犬《こいぬ》もその|主人《しゅじん》の|食卓《しょくたく》から|落《お》ちるパンくずは、いただきます」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「|女《おんな》よ、あなたの|信仰《しんこう》は|見《み》あげたものである。あなたの|願《ねが》いどおりになるように」。その|時《とき》に、|娘《むすめ》はいやされた。  [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]イエスはそこを|去《さ》って、ガリラヤの|海《うみ》べに|行《い》き、それから|山《やま》に|登《のぼ》ってそこにすわられた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]すると|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》が、|足《あし》なえ、|不具者《ふぐしゃ》、|盲人《もうじん》、おし、そのほか|多《おお》くの|人々《ひとびと》を|連《つ》れてきて、イエスの|足《あし》もとに|置《お》いたので、|彼《かれ》らをおいやしになった。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》は、おしが|物《もの》を|言《い》い、|不具者《ふぐしゃ》が|直《なお》り、|足《あし》なえが|歩《ある》き、|盲人《もうじん》が|見《み》えるようになったのを|見《み》て|驚《おどろ》き、そしてイスラエルの|神《かみ》をほめたたえた。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|弟子《でし》たちを|呼《よ》び|寄《よ》せて|言《い》われた、「この|群衆《ぐんしゅう》がかわいそうである。もう三|日間《かかん》もわたしと|一緒《いっしょ》にいるのに、|何《なに》も|食《た》べるものがない。しかし、|彼《かれ》らを|空腹《くうふく》のままで|帰《かえ》らせたくはない。|恐《おそ》らく|途中《とちゅう》で|弱《よわ》り|切《き》ってしまうであろう」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|言《い》った、「|荒野《あらの》の|中《なか》で、こんなに|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》にじゅうぶん|食《た》べさせるほどたくさんのパンを、どこで|手《て》に|入《い》れましょうか」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|弟子《でし》たちに「パンはいくつあるか」と|尋《たず》ねられると、「七つあります。また|小《ちい》さい|魚《うお》が|少《すこ》しあります」と|答《こた》えた。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|群衆《ぐんしゅう》に、|地《ち》にすわるようにと|命《めい》じ、[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]七つのパンと|魚《うお》とを|取《と》り、|感謝《かんしゃ》してこれをさき、|弟子《でし》たちにわたされ、|弟子《でし》たちはこれを|群衆《ぐんしゅう》にわけた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|一同《いちどう》の|者《もの》は|食《た》べて|満腹《まんぷく》した。そして|残《のこ》ったパンくずを|集《あつ》めると、七つのかごにいっぱいになった。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|食《た》べた|者《もの》は、|女《おんな》と|子供《こども》とを|除《のぞ》いて四千|人《にん》であった。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|群衆《ぐんしゅう》を|解散《かいさん》させ、|舟《ふね》に|乗《の》ってマガダンの|地方《ちほう》へ|行《い》かれた。 第一六章[#「第一六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》とサドカイ|人《びと》とが|近寄《ちかよ》ってきて、イエスを|試《こころ》み、|天《てん》からのしるしを|見《み》せてもらいたいと|言《い》った。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたは|夕方《ゆうがた》になると、『|空《そら》がまっかだから、|晴《はれ》だ』と|言《い》い、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]また|明《あ》け|方《がた》には『|空《そら》が|曇《くも》ってまっかだから、きょうは|荒《あ》れだ』と|言《い》う。あなたがたは|空《そら》の|模様《もよう》を|見分《みわ》けることを|知《し》りながら、|時《とき》のしるしを|見分《みわ》けることができないのか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|邪悪《じゃあく》で|不義《ふぎ》な|時代《じだい》は、しるしを|求《もと》める。しかし、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも|与《あた》えられないであろう」。そして、イエスは|彼《かれ》らをあとに|残《のこ》して|立《た》ち|去《さ》られた。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|向《む》こう|岸《ぎし》に|行《い》ったが、パンを|持《も》って|来《く》るのを|忘《わす》れていた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|言《い》われた、「パリサイ|人《びと》とサドカイ|人《びと》とのパン|種《だね》を、よくよく|警戒《けいかい》せよ」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは、これは|自分《じぶん》たちがパンを|持《も》ってこなかったためであろうと|言《い》って、|互《たがい》に|論《ろん》じ|合《あ》った。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエスはそれと|知《し》って|言《い》われた、「|信仰《しんこう》の|薄《うす》い|者《もの》たちよ、なぜパンがないからだと|互《たがい》に|論《ろん》じ|合《あ》っているのか。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]まだわからないのか。|覚《おぼ》えていないのか。五つのパンを五千|人《にん》に|分《わ》けたとき、|幾《いく》かご|拾《ひろ》ったか。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]また、七つのパンを四千|人《にん》に|分《わ》けたとき、|幾《いく》かご|拾《ひろ》ったか。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|言《い》ったのは、パンについてではないことを、どうして|悟《さと》らないのか。ただ、パリサイ|人《びと》とサドカイ|人《びと》とのパン|種《だね》を|警戒《けいかい》しなさい」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そのとき|彼《かれ》らは、イエスが|警戒《けいかい》せよと|言《い》われたのは、パン|種《だね》のことではなく、パリサイ|人《びと》とサドカイ|人《びと》との|教《おしえ》のことであると|悟《さと》った。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスがピリポ・カイザリヤの|地方《ちほう》に|行《い》かれたとき、|弟子《でし》たちに|尋《たず》ねて|言《い》われた、「|人々《ひとびと》は|人《ひと》の|子《こ》をだれと|言《い》っているか」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|言《い》った、「ある|人々《ひとびと》はバプテスマのヨハネだと|言《い》っています。しかし、ほかの|人《ひと》たちは、エリヤだと|言《い》い、また、エレミヤあるいは|預言者《よげんしゃ》のひとりだ、と|言《い》っている|者《もの》もあります」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと|言《い》うか」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロが|答《こた》えて|言《い》った、「あなたこそ、|生《い》ける|神《かみ》の|子《こ》キリストです」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスは|彼《かれ》にむかって|言《い》われた、「バルヨナ・シモン、あなたはさいわいである。あなたにこの|事《こと》をあらわしたのは、|血肉《けつにく》ではなく、|天《てん》にいますわたしの|父《ちち》である。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしもあなたに|言《い》う。あなたはペテロである。そして、わたしはこの|岩《いわ》の|上《うえ》にわたしの|教会《きょうかい》を|建《た》てよう。|黄泉《よみ》の|力《ちから》もそれに|打《う》ち|勝《か》つことはない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたに|天国《てんごく》のかぎを|授《さづ》けよう。そして、あなたが|地上《ちじょう》でつなぐことは、|天《てん》でもつながれ、あなたが|地上《ちじょう》で|解《と》くことは|天《てん》でも|解《と》かれるであろう」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスは、|自分《じぶん》がキリストであることをだれにも|言《い》ってはいけないと、|弟子《でし》たちを|戒《いまし》められた。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]この|時《とき》から、イエス・キリストは、|自分《じぶん》が|必《かなら》ずエルサレムに|行《い》き、|長老《ちょうろう》、|祭司長《さいしちょう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちから|多《おお》くの|苦《くる》しみを|受《う》け、|殺《ころ》され、そして三|日《か》|目《め》によみがえるべきことを、|弟子《でし》たちに|示《しめ》しはじめられた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すると、ペテロはイエスをわきへ|引《ひ》き|寄《よ》せて、いさめはじめ、「|主《しゅ》よ、とんでもないことです。そんなことがあるはずはございません」と|言《い》った。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|振《ふ》り|向《む》いて、ペテロに|言《い》われた、「サタンよ、|引《ひ》きさがれ。わたしの|邪魔《じゃま》をする|者《もの》だ。あなたは|神《かみ》のことを|思《おも》わないで、|人《ひと》のことを|思《おも》っている」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスは|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「だれでもわたしについてきたいと|思《おも》うなら、|自分《じぶん》を|捨《す》て、|自分《じぶん》の|十字架《じゅうじか》を|負《お》うて、わたしに|従《したが》ってきなさい。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|命《いのち》を|救《すく》おうと|思《おも》う|者《もの》はそれを|失《うしな》い、わたしのために|自分《じぶん》の|命《いのち》を|失《うしな》う|者《もの》は、それを|見《み》いだすであろう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]たとい|人《ひと》が|全《ぜん》|世界《せかい》をもうけても、|自分《じぶん》の|命《いのち》を|損《そん》したら、なんの|得《とく》になろうか。また、|人《ひと》はどんな|代価《だいか》を|払《はら》って、その|命《いのち》を|買《か》いもどすことができようか。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》は|父《ちち》の|栄光《えいこう》のうちに、|御使《みつかい》たちを|従《したが》えて|来《く》るが、その|時《とき》には、|実際《じっさい》のおこないに|応《おう》じて、それぞれに|報《むく》いるであろう。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》いておくがよい、|人《ひと》の|子《こ》が|御国《みくに》の|力《ちから》をもって|来《く》るのを|見《み》るまでは、|死《し》を|味《あじ》わわない|者《もの》が、ここに|立《た》っている|者《もの》の|中《なか》にいる」。 第一七章[#「第一七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|六日《むいか》ののち、イエスはペテロ、ヤコブ、ヤコブの|兄弟《きょうだい》ヨハネだけを|連《つ》れて、|高《たか》い|山《やま》に|登《のぼ》られた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|彼《かれ》らの|目《め》の|前《まえ》でイエスの|姿《すがた》が|変《かわ》り、その|顔《かお》は|日《ひ》のように|輝《かがや》き、その|衣《ころも》は|光《ひかり》のように|白《しろ》くなった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すると、|見《み》よ、モーセとエリヤが|彼《かれ》らに|現《あらわ》れて、イエスと|語《かた》り|合《あ》っていた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはイエスにむかって|言《い》った、「|主《しゅ》よ、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。もし、おさしつかえなければ、わたしはここに|小屋《こや》を三つ|建《た》てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》がまだ|話《はな》し|終《お》えないうちに、たちまち、|輝《かがや》く|雲《くも》が|彼《かれ》らをおおい、そして|雲《くも》の|中《なか》から|声《こえ》がした、「これはわたしの|愛《あい》する|子《こ》、わたしの|心《こころ》にかなう|者《もの》である。これに|聞《き》け」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちはこれを|聞《き》いて|非常《ひじょう》に|恐《おそ》れ、|顔《かお》を|地《ち》に|伏《ふ》せた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|近《ちか》づいてきて、|手《て》を|彼《かれ》らにおいて|言《い》われた、「|起《お》きなさい、|恐《おそ》れることはない」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|目《め》をあげると、イエスのほかには、だれも|見《み》えなかった。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|一同《いちどう》が|山《やま》を|下《くだ》って|来《く》るとき、イエスは「|人《ひと》の|子《こ》が|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえるまでは、いま|見《み》たことをだれにも|話《はな》してはならない」と、|彼《かれ》らに|命《めい》じられた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちはイエスにお|尋《たず》ねして|言《い》った、「いったい、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちは、なぜ、エリヤが|先《さき》に|来《く》るはずだと|言《い》っているのですか」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|答《こた》えて|言《い》われた、「|確《たし》かに、エリヤがきて、|万事《ばんじ》を|元《もと》どおりに|改《あらた》めるであろう。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたに|言《い》っておく。エリヤはすでにきたのだ。しかし|人々《ひとびと》は|彼《かれ》を|認《みと》めず、|自分《じぶん》かってに|彼《かれ》をあしらった。|人《ひと》の|子《こ》もまた、そのように|彼《かれ》らから|苦《くる》しみを|受《う》けることになろう」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|弟子《でし》たちは、イエスがバプテスマのヨハネのことを|言《い》われたのだと|悟《さと》った。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]さて|彼《かれ》らが|群衆《ぐんしゅう》のところに|帰《かえ》ると、ひとりの|人《ひと》がイエスに|近寄《ちかよ》ってきて、ひざまずいて、|言《い》った、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》よ、わたしの|子《こ》をあわれんでください。てんかんで|苦《くる》しんでおります。|何《なん》|度《ど》も|何《なん》|度《ど》も|火《ひ》の|中《なか》や|水《みず》の|中《なか》に|倒《たお》れるのです。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それで、その|子《こ》をお|弟子《でし》たちのところに|連《つ》れてきましたが、なおしていただけませんでした」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「ああ、なんという|不《ふ》|信仰《しんこう》な、|曲《まが》った|時代《じだい》であろう。いつまで、わたしはあなたがたと|一緒《いっしょ》におられようか。いつまであなたがたに|我慢《がまん》ができようか。その|子《こ》をここに、わたしのところに|連《つ》れてきなさい」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]イエスがおしかりになると、|悪霊《あくれい》はその|子《こ》から|出《で》て|行《い》った。そして|子《こ》はその|時《とき》いやされた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]それから、|弟子《でし》たちがひそかにイエスのもとにきて|言《い》った、「わたしたちは、どうして|霊《れい》を|追《お》い|出《だ》せなかったのですか」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|言《い》われた、「あなたがたの|信仰《しんこう》が|足《た》りないからである。よく|言《い》い|聞《き》かせておくが、もし、からし|種《だね》一|粒《つぶ》ほどの|信仰《しんこう》があるなら、この|山《やま》にむかって『ここからあそこに|移《うつ》れ』と|言《い》えば、|移《うつ》るであろう。このように、あなたがたにできない|事《こと》は、|何《なに》もないであろう。〔[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、このたぐいは、|祈《いのり》と|断食《だんじき》とによらなければ、|追《お》い|出《だ》すことはできない〕」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがガリラヤで|集《あつ》まっていた|時《とき》、イエスは|言《い》われた、「|人《ひと》の|子《こ》は|人々《ひとびと》の|手《て》にわたされ、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らに|殺《ころ》され、そして三|日《か》|目《め》によみがえるであろう」。|弟子《でし》たちは|非常《ひじょう》に|心《こころ》をいためた。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがカペナウムにきたとき、|宮《みや》の|納入《のうにゅう》|金《きん》を|集《あつ》める|人《ひと》たちがペテロのところにきて|言《い》った、「あなたがたの|先生《せんせい》は|宮《みや》の|納入《のうにゅう》|金《きん》を|納《おさ》めないのか」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは「|納《おさ》めておられます」と|言《い》った。そして|彼《かれ》が|家《いえ》にはいると、イエスから|先《さき》に|話《はな》しかけて|言《い》われた、「シモン、あなたはどう|思《おも》うか。この|世《よ》の|王《おう》たちは|税《ぜい》や|貢《みつぎ》をだれから|取《と》るのか。|自分《じぶん》の|子《こ》からか、それとも、ほかの|人《ひと》たちからか」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]ペテロが「ほかの|人《ひと》たちからです」と|答《こた》えると、イエスは|言《い》われた、「それでは、|子《こ》は|納《おさ》めなくてもよいわけである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らをつまずかせないために、|海《うみ》に|行《い》って、つり|針《はり》をたれなさい。そして|最初《さいしょ》につれた|魚《うお》をとって、その|口《くち》をあけると、|銀貨《ぎんか》一|枚《まい》が|見《み》つかるであろう。それをとり|出《だ》して、わたしとあなたのために|納《おさ》めなさい」。 第一八章[#「第一八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|弟子《でし》たちがイエスのもとにきて|言《い》った、「いったい、|天国《てんごく》ではだれがいちばん|偉《えら》いのですか」。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスは|幼《おさ》な|子《ご》を|呼《よ》び|寄《よ》せ、|彼《かれ》らのまん|中《なか》に|立《た》たせて|言《い》われた、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]「よく|聞《き》きなさい。|心《こころ》をいれかえて|幼《おさ》な|子《ご》のようにならなければ、|天国《てんごく》にはいることはできないであろう。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]この|幼《おさ》な|子《ご》のように|自分《じぶん》を|低《ひく》くする|者《もの》が、|天国《てんごく》でいちばん|偉《えら》いのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また、だれでも、このようなひとりの|幼《おさ》な|子《ご》を、わたしの|名《な》のゆえに|受《う》けいれる|者《もの》は、わたしを|受《う》けいれるのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしを|信《しん》ずるこれらの|小《ちい》さい|者《もの》のひとりをつまずかせる|者《もの》は、|大《おお》きなひきうすを|首《くび》にかけられて|海《うみ》の|深《ふか》みに|沈《しず》められる|方《ほう》が、その|人《ひと》の|益《えき》になる。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]この|世《よ》は、|罪《つみ》の|誘惑《ゆうわく》があるから、わざわいである。|罪《つみ》の|誘惑《ゆうわく》は|必《かなら》ず|来《く》る。しかし、それをきたらせる|人《ひと》は、わざわいである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたの|片手《かたて》または|片足《かたあし》が、|罪《つみ》を|犯《おか》させるなら、それを|切《き》って|捨《す》てなさい。|両手《りょうて》、|両足《りょうあし》がそろったままで、|永遠《えいえん》の|火《ひ》に|投《な》げ|込《こ》まれるよりは、|片手《かたて》、|片足《かたあし》になって|命《いのち》に|入《はい》る|方《ほう》がよい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたの|片目《かため》が|罪《つみ》を|犯《おか》させるなら、それを|抜《ぬ》き|出《だ》して|捨《す》てなさい。|両《りょう》|眼《がん》がそろったままで|地獄《じごく》の|火《ひ》に|投《な》げ|入《い》れられるよりは、|片目《かため》になって|命《いのち》に|入《はい》る|方《ほう》がよい。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、これらの|小《ちい》さい|者《もの》のひとりをも|軽《かろ》んじないように、|気《き》をつけなさい。あなたがたに|言《い》うが、|彼《かれ》らの|御使《みつかい》たちは|天《てん》にあって、|天《てん》にいますわたしの|父《ちち》のみ|顔《かお》をいつも|仰《あお》いでいるのである。〔[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》は、|滅《ほろ》びる|者《もの》を|救《すく》うためにきたのである。〕[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはどう|思《おも》うか。ある|人《ひと》に百|匹《ぴき》の|羊《ひつじ》があり、その|中《なか》の一|匹《ぴき》が|迷《まよ》い|出《で》たとすれば、九十九|匹《ひき》を|山《やま》に|残《のこ》しておいて、その|迷《まよ》い|出《で》ている|羊《ひつじ》を|捜《さが》しに|出《で》かけないであろうか。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]もしそれを|見《み》つけたなら、よく|聞《き》きなさい、|迷《まよ》わないでいる九十九|匹《ひき》のためよりも、むしろその一|匹《ぴき》のために|喜《よろこ》ぶであろう。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そのように、これらの|小《ちい》さい|者《もの》のひとりが|滅《ほろ》びることは、|天《てん》にいますあなたがたの|父《ちち》のみこころではない。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたの|兄弟《きょうだい》が|罪《つみ》を|犯《おか》すなら、|行《い》って、|彼《かれ》とふたりだけの|所《ところ》で|忠告《ちゅうこく》しなさい。もし|聞《き》いてくれたら、あなたの|兄弟《きょうだい》を|得《え》たことになる。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]もし|聞《き》いてくれないなら、ほかにひとりふたりを、|一緒《いっしょ》に|連《つ》れて|行《い》きなさい。それは、ふたりまたは三|人《にん》の|証人《しょうにん》の|口《くち》によって、すべてのことがらが|確《たし》かめられるためである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]もし|彼《かれ》らの|言《い》うことを|聞《き》かないなら、|教会《きょうかい》に|申《もう》し|出《で》なさい。もし|教会《きょうかい》の|言《い》うことも|聞《き》かないなら、その|人《ひと》を|異邦人《いほうじん》または|取税人《しゅぜいにん》|同様《どうよう》に|扱《あつか》いなさい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]よく|言《い》っておく。あなたがたが|地上《ちじょう》でつなぐことは、|天《てん》でも|皆《みな》つながれ、あなたがたが|地上《ちじょう》で|解《と》くことは、|天《てん》でもみな|解《と》かれるであろう。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また、よく|言《い》っておく。もしあなたがたのうちのふたりが、どんな|願《ねが》い|事《ごと》についても|地上《ちじょう》で|心《こころ》を|合《あ》わせるなら、|天《てん》にいますわたしの|父《ちち》はそれをかなえて|下《くだ》さるであろう。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ふたりまたは三|人《にん》が、わたしの|名《な》によって|集《あつ》まっている|所《ところ》には、わたしもその|中《なか》にいるのである」。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、ペテロがイエスのもとにきて|言《い》った、「|主《しゅ》よ、|兄弟《きょうだい》がわたしに|対《たい》して|罪《つみ》を|犯《おか》した|場合《ばあい》、|幾《いく》たびゆるさねばなりませんか。七たびまでですか」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「わたしは七たびまでとは|言《い》わない。七たびを七十|倍《ばい》するまでにしなさい。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それだから、|天国《てんごく》は|王《おう》が|僕《しもべ》たちと|決算《けっさん》をするようなものだ。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|決算《けっさん》が|始《はじ》まると、一万タラントの|負債《ふさい》のある|者《もの》が、|王《おう》のところに|連《つ》れられてきた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|返《かえ》せなかったので、|主人《しゅじん》は、その|人《ひと》|自身《じしん》とその|妻子《さいし》と|持《も》ち|物《もの》|全部《ぜんぶ》とを|売《う》って|返《かえ》すように|命《めい》じた。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、この|僕《しもべ》はひれ|伏《ふ》して|哀願《あいがん》した、『どうぞお|待《ま》ちください。|全部《ぜんぶ》お|返《かえ》しいたしますから』。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|僕《しもべ》の|主人《しゅじん》はあわれに|思《おも》って、|彼《かれ》をゆるし、その|負債《ふさい》を|免《めん》じてやった。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]その|僕《しもべ》が|出《で》て|行《い》くと、百デナリを|貸《か》しているひとりの|仲間《なかま》に|出会《であ》い、|彼《かれ》をつかまえ、|首《くび》をしめて『|借金《しゃっきん》を|返《かえ》せ』と|言《い》った。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこでこの|仲間《なかま》はひれ|伏《ふ》し、『どうか|待《ま》ってくれ。|返《かえ》すから』と|言《い》って|頼《たの》んだ。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし|承知《しょうち》せずに、その|人《ひと》をひっぱって|行《い》って、|借金《しゃっきん》を|返《かえ》すまで|獄《ごく》に|入《い》れた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]その|人《ひと》の|仲間《なかま》たちは、この|様子《ようす》を|見《み》て、|非常《ひじょう》に|心《こころ》をいため、|行《い》ってそのことをのこらず|主人《しゅじん》に|話《はな》した。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこでこの|主人《しゅじん》は|彼《かれ》を|呼《よ》びつけて|言《い》った、『|悪《わる》い|僕《しもべ》、わたしに|願《ねが》ったからこそ、あの|負債《ふさい》を|全部《ぜんぶ》ゆるしてやったのだ。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあわれんでやったように、あの|仲間《なかま》をあわれんでやるべきではなかったか』。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]そして|主人《しゅじん》は|立腹《りっぷく》して、|負債《ふさい》|全部《ぜんぶ》を|返《かえ》してしまうまで、|彼《かれ》を|獄吏《ごくり》に|引《ひ》きわたした。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがためいめいも、もし|心《こころ》から|兄弟《きょうだい》をゆるさないならば、わたしの|天《てん》の|父《ちち》もまたあなたがたに|対《たい》して、そのようになさるであろう」。 第一九章[#「第一九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれらのことを|語《かた》り|終《お》えられてから、ガリラヤを|去《さ》ってヨルダンの|向《む》こうのユダヤの|地方《ちほう》へ|行《い》かれた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すると|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》がついてきたので、|彼《かれ》らをそこでおいやしになった。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]さてパリサイ|人《びと》たちが|近《ちか》づいてきて、イエスを|試《こころ》みようとして|言《い》った、「|何《なに》かの|理由《りゆう》で、|夫《おっと》がその|妻《つま》を|出《だ》すのは、さしつかえないでしょうか」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「あなたがたはまだ|読《よ》んだことがないのか。『|創造者《そうぞうしゃ》は|初《はじ》めから|人《ひと》を|男《おとこ》と|女《おんな》とに|造《つく》られ、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そして|言《い》われた、それゆえに、|人《ひと》は|父母《ふぼ》を|離《はな》れ、その|妻《つま》と|結《むす》ばれ、ふたりの|者《もの》は|一体《いったい》となるべきである』。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはもはや、ふたりではなく|一体《いったい》である。だから、|神《かみ》が|合《あ》わせられたものを、|人《ひと》は|離《はな》してはならない」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはイエスに|言《い》った、「それでは、なぜモーセは、|妻《つま》を|出《だ》す|場合《ばあい》には|離縁《りえん》|状《じょう》を|渡《わた》せ、と|定《さだ》めたのですか」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|言《い》われた、「モーセはあなたがたの|心《こころ》が、かたくななので、|妻《つま》を|出《だ》すことを|許《ゆる》したのだが、|初《はじ》めからそうではなかった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしはあなたがたに|言《い》う。|不品行《ふひんこう》のゆえでなくて、|自分《じぶん》の|妻《つま》を|出《だ》して|他《た》の|女《おんな》をめとる|者《もの》は、|姦淫《かんいん》を|行《おこな》うのである」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|言《い》った、「もし|妻《つま》に|対《たい》する|夫《おっと》の|立場《たちば》がそうだとすれば、|結婚《けっこん》しない|方《ほう》がましです」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「その|言葉《ことば》を|受《う》けいれることができるのはすべての|人《ひと》ではなく、ただそれを|授《さづ》けられている|人々《ひとびと》だけである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|母《はは》の|胎内《たいない》から|独身者《どくしんしゃ》に|生《うま》れついているものがあり、また|他《ほか》から|独身者《どくしんしゃ》にされたものもあり、また|天国《てんごく》のために、みずから|進《すす》んで|独身者《どくしんしゃ》となったものもある。この|言葉《ことば》を|受《う》けられる|者《もの》は、|受《う》けいれるがよい」。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスに|手《て》をおいて|祈《いの》っていただくために、|人々《ひとびと》が|幼《おさ》な|子《ご》らをみもとに|連《つ》れてきた。ところが、|弟子《でし》たちは|彼《かれ》らをたしなめた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|言《い》われた、「|幼《おさ》な|子《ご》らをそのままにしておきなさい。わたしのところに|来《く》るのをとめてはならない。|天国《てんごく》はこのような|者《もの》の|国《くに》である」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そして|手《て》を|彼《かれ》らの|上《うえ》においてから、そこを|去《さ》って|行《い》かれた。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]すると、ひとりの|人《ひと》がイエスに|近寄《ちかよ》ってきて|言《い》った、「|先生《せんせい》、|永遠《えいえん》の|生命《せいめい》を|得《え》るためには、どんなよいことをしたらいいでしょうか」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「なぜよい|事《こと》についてわたしに|尋《たず》ねるのか。よいかたはただひとりだけである。もし|命《いのち》に|入《はい》りたいと|思《おも》うなら、いましめを|守《まも》りなさい」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|言《い》った、「どのいましめですか」。イエスは|言《い》われた、「『|殺《ころ》すな、|姦淫《かんいん》するな、|盗《ぬす》むな、|偽証《ぎしょう》を|立《た》てるな。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》と|母《はは》とを|敬《うやま》え』。また『|自分《じぶん》を|愛《あい》するように、あなたの|隣《とな》り|人《ひと》を|愛《あい》せよ』」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]この|青年《せいねん》はイエスに|言《い》った、「それはみな|守《まも》ってきました。ほかに|何《なに》が|足《た》りないのでしょう」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「もしあなたが|完全《かんぜん》になりたいと|思《おも》うなら、|帰《かえ》ってあなたの|持《も》ち|物《もの》を|売《う》り|払《はら》い、|貧《まず》しい|人々《ひとびと》に|施《ほどこ》しなさい。そうすれば、|天《てん》に|宝《たから》を|持《も》つようになろう。そして、わたしに|従《したが》ってきなさい」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]この|言葉《ことば》を|聞《き》いて、|青年《せいねん》は|悲《かな》しみながら|立《た》ち|去《さ》った。たくさんの|資産《しさん》を|持《も》っていたからである。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスは|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「よく|聞《き》きなさい。|富《と》んでいる|者《もの》が|天国《てんごく》にはいるのは、むずかしいものである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがたに|言《い》うが、|富《と》んでいる|者《もの》が|神《かみ》の|国《くに》にはいるよりは、らくだが|針《はり》の|穴《あな》を|通《とお》る|方《ほう》が、もっとやさしい」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちはこれを|聞《き》いて|非常《ひじょう》に|驚《おどろ》いて|言《い》った、「では、だれが|救《すく》われることができるのだろう」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らを|見《み》つめて|言《い》われた、「|人《ひと》にはそれはできないが、|神《かみ》にはなんでもできない|事《こと》はない」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、ペテロがイエスに|答《こた》えて|言《い》った、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを|捨《す》てて、あなたに|従《したが》いました。ついては、|何《なに》がいただけるでしょうか」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「よく|聞《き》いておくがよい。|世《よ》が|改《あらた》まって、|人《ひと》の|子《こ》がその|栄光《えいこう》の|座《ざ》につく|時《とき》には、わたしに|従《したが》ってきたあなたがたもまた、十二の|位《くらい》に|座《ざ》してイスラエルの十二の|部族《ぶぞく》をさばくであろう。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]おおよそ、わたしの|名《な》のために、|家《いえ》、|兄弟《きょうだい》、|姉妹《しまい》、|父《ちち》、|母《はは》、|子《こ》、もしくは|畑《はたけ》を|捨《す》てた|者《もの》は、その|幾《いく》|倍《ばい》もを|受《う》け、また|永遠《えいえん》の|生命《せいめい》を|受《う》けつぐであろう。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|多《おお》くの|先《さき》の|者《もの》はあとになり、あとの|者《もの》は|先《さき》になるであろう。 第二〇章[#「第二〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|天国《てんごく》は、ある|家《いえ》の|主人《しゅじん》が、|自分《じぶん》のぶどう|園《えん》に|労働者《ろうどうしゃ》を|雇《やと》うために、|夜《よ》が|明《あ》けると|同時《どうじ》に、|出《で》かけて|行《い》くようなものである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|労働者《ろうどうしゃ》たちと、一|日《にち》一デナリの|約束《やくそく》をして、|彼《かれ》らをぶどう|園《えん》に|送《おく》った。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]それから九|時《じ》ごろに|出《で》て|行《い》って、|他《た》の|人々《ひとびと》が|市場《いちば》で|何《なに》もせずに|立《た》っているのを|見《み》た。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そして、その|人《ひと》たちに|言《い》った、『あなたがたも、ぶどう|園《えん》に|行《い》きなさい。|相当《そうとう》な|賃銀《ちんぎん》を|払《はら》うから』。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|出《で》かけて|行《い》った。|主人《しゅじん》はまた、十二|時《じ》ごろと三|時《じ》ごろとに|出《で》て|行《い》って、|同《おな》じようにした。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]五|時《とき》ごろまた|出《で》て|行《い》くと、まだ|立《た》っている|人々《ひとびと》を|見《み》たので、|彼《かれ》らに|言《い》った、『なぜ、|何《なに》もしないで、一|日《にち》|中《ぢゅう》ここに|立《た》っていたのか』。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが『だれもわたしたちを|雇《やと》ってくれませんから』と|答《こた》えたので、その|人々《ひとびと》に|言《い》った、『あなたがたも、ぶどう|園《えん》に|行《い》きなさい』。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]さて、|夕方《ゆうがた》になって、ぶどう|園《えん》の|主人《しゅじん》は|管理人《かんりにん》に|言《い》った、『|労働者《ろうどうしゃ》たちを|呼《よ》びなさい。そして、|最後《さいご》にきた|人々《ひとびと》からはじめて|順々《じゅんじゅん》に|最初《さいしょ》にきた|人々《ひとびと》にわたるように、|賃銀《ちんぎん》を|払《はら》ってやりなさい』。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、五|時《とき》ごろに|雇《やと》われた|人々《ひとびと》がきて、それぞれ一デナリずつもらった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|最初《さいしょ》の|人々《ひとびと》がきて、もっと|多《おお》くもらえるだろうと|思《おも》っていたのに、|彼《かれ》らも一デナリずつもらっただけであった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]もらったとき、|家《いえ》の|主人《しゅじん》にむかって|不平《ふへい》をもらして[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、『この|最後《さいご》の|者《もの》たちは一|時間《じかん》しか|働《はたら》かなかったのに、あなたは一|日《にち》じゅう、|労苦《ろうく》と|暑《あつ》さを|辛抱《しんぼう》したわたしたちと|同《おな》じ|扱《あつか》いをなさいました』。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》はそのひとりに|答《こた》えて|言《い》った、『|友《とも》よ、わたしはあなたに|対《たい》して|不正《ふせい》をしてはいない。あなたはわたしと一デナリの|約束《やくそく》をしたではないか。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|賃銀《ちんぎん》をもらって|行《い》きなさい。わたしは、この|最後《さいご》の|者《もの》にもあなたと|同様《どうよう》に|払《はら》ってやりたいのだ。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|物《もの》を|自分《じぶん》がしたいようにするのは、|当《あた》りまえではないか。それともわたしが|気前《きまえ》よくしているので、ねたましく|思《おも》うのか』。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]このように、あとの|者《もの》は|先《さき》になり、|先《さき》の|者《もの》はあとになるであろう」。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスはエルサレムへ|上《のぼ》るとき、十二|弟子《でし》をひそかに|呼《よ》びよせ、その|途中《とちゅう》で|彼《かれ》らに|言《い》われた、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]「|見《み》よ、わたしたちはエルサレムへ|上《のぼ》って|行《い》くが、|人《ひと》の|子《こ》は|祭司長《さいしちょう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちの|手《て》に|渡《わた》されるであろう。|彼《かれ》らは|彼《かれ》に|死刑《しけい》を|宣告《せんこく》し、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》をあざけり、むち|打《う》ち、|十字架《じゅうじか》につけさせるために、|異邦人《いほうじん》に|引《ひ》きわたすであろう。そして|彼《かれ》は三|日《か》|目《め》によみがえるであろう」。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、ゼベダイの|子《こ》らの|母《はは》が、その|子《こ》らと|一緒《いっしょ》にイエスのもとにきてひざまずき、|何事《なにごと》かをお|願《ねが》いした。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼女《かのじょ》に|言《い》われた、「|何《なに》をしてほしいのか」。|彼女《かのじょ》は|言《い》った、「わたしのこのふたりのむすこが、あなたの|御国《みくに》で、ひとりはあなたの|右《みぎ》に、ひとりは|左《ひだり》にすわれるように、お|言葉《ことば》をください」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「あなたがたは、|自分《じぶん》が|何《なに》を|求《もと》めているのか、わかっていない。わたしの|飲《の》もうとしている|杯《さかずき》を|飲《の》むことができるか」。|彼《かれ》らは「できます」と|答《こた》えた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|確《たし》かに、あなたがたはわたしの|杯《さかずき》を|飲《の》むことになろう。しかし、わたしの|右《みぎ》、|左《ひだり》にすわらせることは、わたしのすることではなく、わたしの|父《ちち》によって|備《そな》えられている|人々《ひとびと》だけに|許《ゆる》されることである」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]十|人《にん》の|者《もの》はこれを|聞《き》いて、このふたりの|兄弟《きょうだい》たちのことで|憤慨《ふんがい》した。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》らを|呼《よ》び|寄《よ》せて|言《い》われた、「あなたがたの|知《し》っているとおり、|異邦人《いほうじん》の|支配者《しはいしゃ》たちはその|民《たみ》を|治め《おさめ》、また|偉《えら》い|人《ひと》たちは、その|民《たみ》の|上《うえ》に|権力《けんりょく》をふるっている。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|間《あいだ》ではそうであってはならない。かえって、あなたがたの|間《あいだ》で|偉《えら》くなりたいと|思《おも》う|者《もの》は、|仕《つか》える|人《ひと》となり、[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|間《あいだ》でかしらになりたいと|思《おも》う|者《もの》は、|僕《しもべ》とならねばならない。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]それは、|人《ひと》の|子《こ》がきたのも、|仕《つか》えられるためではなく、|仕《つか》えるためであり、また|多《おお》くの|人《ひと》のあがないとして、|自分《じぶん》の|命《いのち》を|与《あた》えるためであるのと、ちょうど|同《おな》じである」。  [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》らがエリコを|出《で》て|行《い》ったとき、|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》がイエスに|従《したが》ってきた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]すると、ふたりの|盲人《もうじん》が|道《みち》ばたにすわっていたが、イエスがとおって|行《い》かれると|聞《き》いて、|叫《さけ》んで|言《い》った、「|主《しゅ》よ、ダビデの|子《こ》よ、わたしたちをあわれんで|下《くだ》さい」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》は|彼《かれ》らをしかって|黙《だま》らせようとしたが、|彼《かれ》らはますます|叫《さけ》びつづけて|言《い》った、「|主《しゅ》よ、ダビデの|子《こ》よ、わたしたちをあわれんで|下《くだ》さい」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|立《た》ちどまり、|彼《かれ》らを|呼《よ》んで|言《い》われた、「わたしに|何《なに》をしてほしいのか」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|言《い》った、「|主《しゅ》よ、|目《め》をあけていただくことです」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|深《ふか》くあわれんで、|彼《かれ》らの|目《め》にさわられた。すると|彼《かれ》らは、たちまち|見《み》えるようになり、イエスに|従《したが》って|行《い》った。 第二一章[#「第二一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|彼《かれ》らがエルサレムに|近《ちか》づき、オリブ|山《やま》|沿《ぞ》いのベテパゲに|着《つ》いたとき、イエスはふたりの|弟子《でし》をつかわして|言《い》われた、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「|向《む》こうの|村《むら》へ|行《い》きなさい。するとすぐ、ろばがつながれていて、|子《こ》ろばがそばにいるのを|見《み》るであろう。それを|解《と》いてわたしのところに|引《ひ》いてきなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]もしだれかが、あなたがたに|何《なに》か|言《い》ったなら、|主《しゅ》がお|入《い》り|用《よう》なのです、と|言《い》いなさい。そう|言《い》えば、すぐ|渡《わた》してくれるであろう」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]こうしたのは、|預言者《よげんしゃ》によって|言《い》われたことが、|成就《じょうじゅ》するためである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、 [#ここから2字下げ] 「シオンの|娘《むすめ》に|告《つ》げよ、 |見《み》よ、あなたの|王《おう》がおいでになる、 |柔和《にゅうわ》なおかたで、ろばに|乗《の》って、 くびきを|負《お》うろばの|子《こ》に|乗《の》って」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|出《で》て|行《い》って、イエスがお|命《めい》じになったとおりにし、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ろばと|子《こ》ろばとを|引《ひ》いてきた。そしてその|上《うえ》に|自分《じぶん》たちの|上着《うわぎ》をかけると、イエスはそれにお|乗《の》りになった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》のうち|多《おお》くの|者《もの》は|自分《じぶん》たちの|上着《うわぎ》を|道《みち》に|敷《し》き、また、ほかの|者《もの》たちは|木《き》の|枝《えだ》を|切《き》ってきて|道《みち》に|敷《し》いた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そして|群衆《ぐんしゅう》は、|前《まえ》に|行《ゆ》く|者《もの》も、あとに|従《したが》う|者《もの》も、|共《とも》に|叫《さけ》びつづけた、 [#ここから2字下げ] 「ダビデの|子《こ》に、ホサナ。 |主《しゅ》の|御名《みな》によってきたる|者《もの》に、|祝福《しゅくふく》あれ。 いと|高《たか》き|所《ところ》に、ホサナ」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスがエルサレムにはいって|行《い》かれたとき、|町中《まちじゅう》がこぞって|騒《さわ》ぎ|立《た》ち、「これは、いったい、どなただろう」と|言《い》った。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで|群衆《ぐんしゅう》は、「この|人《ひと》はガリラヤのナザレから|出《で》た|預言者《よげんしゃ》イエスである」と|言《い》った。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスは|宮《みや》にはいられた。そして、|宮《みや》の|庭《にわ》で|売《う》り|買《か》いしていた|人々《ひとびと》をみな|追《お》い|出《だ》し、また|両替人《りょうがえにん》の|台《だい》や、はとを|売《う》る|者《もの》の|腰掛《こしかけ》をくつがえされた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》らに|言《い》われた、「『わたしの|家《いえ》は、|祈《いのり》の|家《いえ》ととなえらるべきである』と|書《か》いてある。それだのに、あなたがたはそれを|強盗《ごうとう》の|巣《す》にしている」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そのとき|宮《みや》の|庭《にわ》で、|盲人《もうじん》や|足《あし》なえがみもとにきたので、|彼《かれ》らをおいやしになった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|祭司長《さいしちょう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちは、イエスがなされた|不思議《ふしぎ》なわざを|見《み》、また|宮《みや》の|庭《にわ》で「ダビデの|子《こ》に、ホサナ」と|叫《さけ》んでいる|子供《こども》たちを|見《み》て|立腹《りっぷく》し、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]イエスに|言《い》った、「あの|子《こ》たちが|何《なに》を|言《い》っているのか、お|聞《き》きですか」。イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「そうだ、|聞《き》いている。あなたがたは『|幼《おさ》な|子《ご》、|乳《ち》のみ|子《ご》たちの|口《くち》にさんびを|備《そな》えられた』とあるのを|読《よ》んだことがないのか」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスは|彼《かれ》らをあとに|残《のこ》し、|都《みやこ》を|出《で》てベタニヤに|行《い》き、そこで|夜《よ》を|過《す》ごされた。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|朝《あさ》はやく|都《みやこ》に|帰《かえ》るとき、イエスは|空腹《くうふく》をおぼえられた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そして、|道《みち》のかたわらに一|本《ぽん》のいちじくの|木《き》があるのを|見《み》て、そこに|行《い》かれたが、ただ|葉《は》のほかは|何《なに》も|見当《みあた》らなかった。そこでその|木《き》にむかって、「|今《いま》から|後《のち》いつまでも、おまえには|実《み》がならないように」と|言《い》われた。すると、いちじくの|木《き》はたちまち|枯《か》れた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちはこれを|見《み》て、|驚《おどろ》いて|言《い》った、「いちじくがどうして、こうすぐに|枯《か》れたのでしょう」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「よく|聞《き》いておくがよい。もしあなたがたが|信《しん》じて|疑《うたが》わないならば、このいちじくにあったようなことが、できるばかりでなく、この|山《やま》にむかって、|動《うご》き|出《だ》して|海《うみ》の|中《なか》にはいれと|言《い》っても、そのとおりになるであろう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]また、|祈《いのり》のとき、|信《しん》じて|求《もと》めるものは、みな|与《あた》えられるであろう」。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|宮《みや》にはいられたとき、|祭司長《さいしちょう》たちや|民《たみ》の|長老《ちょうろう》たちが、その|教《おし》えておられる|所《ところ》にきて|言《い》った、「|何《なに》の|権威《けんい》によって、これらの|事《こと》をするのですか。だれが、そうする|権威《けんい》を|授《さづ》けたのですか」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしも一つだけ|尋《たず》ねよう。あなたがたがそれに|答《こた》えてくれたなら、わたしも、|何《なに》の|権威《けんい》によってこれらの|事《こと》をするのか、あなたがたに|言《い》おう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネのバプテスマはどこからきたのであったか。|天《てん》からであったか、|人《ひと》からであったか」。すると、|彼《かれ》らは|互《たがい》に|論《ろん》じて|言《い》った、「もし|天《てん》からだと|言《い》えば、では、なぜ|彼《かれ》を|信《しん》じなかったのか、とイエスは|言《い》うだろう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もし|人《ひと》からだと|言《い》えば、|群衆《ぐんしゅう》が|恐《おそ》ろしい。|人々《ひとびと》がみなヨハネを|預言者《よげんしゃ》と|思《おも》っているのだから」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは、「わたしたちにはわかりません」と|答《こた》えた。すると、イエスが|言《い》われた、「わたしも|何《なに》の|権威《けんい》によってこれらの|事《こと》をするのか、あなたがたに|言《い》うまい。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはどう|思《おも》うか。ある|人《ひと》にふたりの|子《こ》があったが、|兄《あに》のところに|行《い》って|言《い》った、『|子《こ》よ、きょう、ぶどう|園《えん》へ|行《い》って|働《はたら》いてくれ』。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》は『おとうさん、|参《まい》ります』と|答《こた》えたが、|行《い》かなかった。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]また|弟《おとうと》のところにきて|同《おな》じように|言《い》った。|彼《かれ》は『いやです』と|答《こた》えたが、あとから|心《こころ》を|変《か》えて、|出《で》かけた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]このふたりのうち、どちらが|父《ちち》の|望《のぞ》みどおりにしたのか」。|彼《かれ》らは|言《い》った、「あとの|者《もの》です」。イエスは|言《い》われた、「よく|聞《き》きなさい。|取税人《しゅぜいにん》や|遊女《ゆうじょ》は、あなたがたより|先《さき》に|神《かみ》の|国《くに》にはいる。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]というのは、ヨハネがあなたがたのところにきて、|義《ぎ》の|道《みち》を|説《と》いたのに、あなたがたは|彼《かれ》を|信《しん》じなかった。ところが、|取税人《しゅぜいにん》や|遊女《ゆうじょ》は|彼《かれ》を|信《しん》じた。あなたがたはそれを|見《み》たのに、あとになっても、|心《こころ》をいれ|変《か》えて|彼《かれ》を|信《しん》じようとしなかった。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]もう一つの|譬《たとえ》を|聞《き》きなさい。ある|所《ところ》に、ひとりの|家《いえ》の|主人《しゅじん》がいたが、ぶどう|園《えん》を|造《つく》り、かきをめぐらし、その|中《なか》に|酒《さか》ぶねの|穴《あな》を|掘《ほ》り、やぐらを|立《た》て、それを|農夫《のうふ》たちに|貸《か》して、|旅《たび》に|出《で》かけた。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|収穫《しゅうかく》の|季節《きせつ》がきたので、その|分《わ》け|前《まえ》を|受《う》け|取《と》ろうとして、|僕《しもべ》たちを|農夫《のうふ》のところへ|送《おく》った。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]すると、|農夫《のうふ》たちは、その|僕《しもべ》たちをつかまえて、ひとりを|袋《ふくろ》だたきにし、ひとりを|殺《ころ》し、もうひとりを|石《いし》で|打《う》ち|殺《ころ》した。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]また|別《べつ》に、|前《まえ》よりも|多《おお》くの|僕《しもべ》たちを|送《おく》ったが、|彼《かれ》らをも|同《おな》じようにあしらった。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|最後《さいご》に、わたしの|子《こ》は|敬《うやま》ってくれるだろうと|思《おも》って、|主人《しゅじん》はその|子《こ》を|彼《かれ》らの|所《ところ》につかわした。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]すると|農夫《のうふ》たちは、その|子《こ》を|見《み》て|互《たがい》に|言《い》った、『あれはあと|取《と》りだ。さあ、これを|殺《ころ》して、その|財産《ざいさん》を|手《て》に|入《い》れよう』。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》をつかまえて、ぶどう|園《えん》の|外《そと》に|引《ひ》き|出《だ》して|殺《ころ》した。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]このぶどう|園《えん》の|主人《しゅじん》が|帰《かえ》ってきたら、この|農夫《のうふ》たちをどうするだろうか」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはイエスに|言《い》った、「|悪人《あくにん》どもを、|皆殺《みなごろ》しにして、|季節《きせつ》ごとに|収穫《しゅうかく》を|納《おさ》めるほかの|農夫《のうふ》たちに、そのぶどう|園《えん》を|貸《か》し|与《あた》えるでしょう」。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたは、|聖書《せいしょ》でまだ|読《よ》んだことがないのか、 [#ここから2字下げ] 『|家《いえ》|造《つく》りらの|捨《す》てた|石《いし》が |隅《すみ》のかしら|石《いし》になった。 これは|主《しゅ》がなされたことで、 わたしたちの|目《め》には|不思議《ふしぎ》に|見《み》える』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]それだから、あなたがたに|言《い》うが、|神《かみ》の|国《くに》はあなたがたから|取《と》り|上《あ》げられて、|御国《みくに》にふさわしい|実《み》を|結《むす》ぶような|異邦人《いほうじん》に|与《あた》えられるであろう。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]またその|石《いし》の|上《うえ》に|落《お》ちる|者《もの》は|打《う》ち|砕《くだ》かれ、それがだれかの|上《うえ》に|落《お》ちかかるなら、その|人《ひと》はこなみじんにされるであろう」。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちやパリサイ|人《びと》たちがこの|譬《たとえ》を|聞《き》いたとき、|自分《じぶん》たちのことをさして|言《い》っておられることを|悟《さと》ったので、[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]イエスを|捕《とら》えようとしたが、|群衆《ぐんしゅう》を|恐《おそ》れた。|群衆《ぐんしゅう》はイエスを|預言者《よげんしゃ》だと|思《おも》っていたからである。 第二二章[#「第二二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはまた、|譬《たとえ》で|彼《かれ》らに|語《かた》って|言《い》われた、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「|天国《てんごく》は、ひとりの|王《おう》がその|王子《おうじ》のために、|婚《こん》|宴《えん》を|催《もよお》すようなものである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|王《おう》はその|僕《しもべ》たちをつかわして、この|婚《こん》|宴《えん》に|招《まね》かれていた|人《ひと》たちを|呼《よ》ばせたが、その|人《ひと》たちはこようとはしなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこでまた、ほかの|僕《しもべ》たちをつかわして|言《い》った、『|招《まね》かれた|人《ひと》たちに|言《い》いなさい。|食事《しょくじ》の|用意《ようい》ができました。|牛《うし》も|肥《こ》えた|獣《けもの》もほふられて、すべての|用意《ようい》ができました。さあ、|婚《こん》|宴《えん》においでください』。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らは|知《し》らぬ|顔《かお》をして、ひとりは|自分《じぶん》の|畑《はたけ》に、ひとりは|自分《じぶん》の|商売《しょうばい》に|出《で》て|行《い》き、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]またほかの|人々《ひとびと》は、この|僕《しもべ》たちをつかまえて|侮辱《ぶじょく》を|加《くわ》えた|上《うえ》、|殺《ころ》してしまった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|王《おう》は|立腹《りっぷく》し、|軍隊《ぐんたい》を|送《おく》ってそれらの|人殺《ひとごろ》しどもを|滅《ほろ》ぼし、その|町《まち》を|焼《や》き|払《はら》った。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それから|僕《しもべ》たちに|言《い》った、『|婚《こん》|宴《えん》の|用意《ようい》はできているが、|招《まね》かれていたのは、ふさわしくない|人々《ひとびと》であった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]だから、|町《まち》の|大通《おおどお》りに|出《で》て|行《い》って、|出会《であ》った|人《ひと》はだれでも|婚《こん》|宴《えん》に|連《つ》れてきなさい』。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|僕《しもべ》たちは|道《みち》に|出《で》て|行《い》って、|出会《であ》う|人《ひと》は、|悪人《あくにん》でも|善人《ぜんにん》でもみな|集《あつ》めてきたので、|婚《こん》|宴《えん》の|席《せき》は|客《きゃく》でいっぱいになった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|王《おう》は|客《きゃく》を|迎《むか》えようとしてはいってきたが、そこに|礼服《れいふく》をつけていないひとりの|人《ひと》を|見《み》て、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》に|言《い》った、『|友《とも》よ、どうしてあなたは|礼服《れいふく》をつけないで、ここにはいってきたのですか』。しかし、|彼《かれ》は|黙《だま》っていた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|王《おう》はそばの|者《もの》たちに|言《い》った、『この|者《もの》の|手足《てあし》をしばって、|外《そと》の|暗《くら》やみにほうり|出《だ》せ。そこで|泣《な》き|叫《さけ》んだり、|歯《は》がみをしたりするであろう』。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|招《まね》かれる|者《もの》は|多《おお》いが、|選《えら》ばれる|者《もの》は|少《すく》ない」。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そのときパリサイ|人《びと》たちがきて、どうかしてイエスを|言葉《ことば》のわなにかけようと、|相談《そうだん》をした。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》らの|弟子《でし》を、ヘロデ|党《とう》の|者《もの》たちと|共《とも》に、イエスのもとにつかわして|言《い》わせた、「|先生《せんせい》、わたしたちはあなたが|真実《しんじつ》なかたであって、|真理《しんり》に|基《もとづ》いて|神《かみ》の|道《みち》を|教《おし》え、また、|人《ひと》に|分《わ》け|隔《へだ》てをしないで、だれをもはばかられないことを|知《し》っています。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それで、あなたはどう|思《おも》われますか、|答《こた》えてください。カイザルに|税金《ぜいきん》を|納《おさ》めてよいでしょうか、いけないでしょうか」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らの|悪意《あくい》を|知《し》って|言《い》われた、「|偽善者《ぎぜんしゃ》たちよ、なぜわたしをためそうとするのか。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|税《ぜい》に|納《おさ》める|貨幣《かへい》を|見《み》せなさい」。|彼《かれ》らはデナリ一つを|持《も》ってきた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|言《い》われた、「これは、だれの|肖像《しょうぞう》、だれの|記号《きごう》か」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは「カイザルのです」と|答《こた》えた。するとイエスは|言《い》われた、「それでは、カイザルのものはカイザルに、|神《かみ》のものは|神《かみ》に|返《かえ》しなさい」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはこれを|聞《き》いて|驚嘆《きょうたん》し、イエスを|残《のこ》して|立《た》ち|去《さ》った。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|復活《ふっかつ》ということはないと|主張《しゅちょう》していたサドカイ|人《びと》たちが、その|日《ひ》、イエスのもとにきて|質問《しつもん》した、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]「|先生《せんせい》、モーセはこう|言《い》っています、『もし、ある|人《ひと》が|子《こ》がなくて|死《し》んだなら、その|弟《おとうと》は|兄《あに》の|妻《つま》をめとって、|兄《あに》のために|子《こ》をもうけねばならない』。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしたちのところに七|人《にん》の|兄弟《きょうだい》がありました。|長男《ちょうなん》は|妻《つま》をめとったが|死《し》んでしまい、そして|子《こ》がなかったので、その|妻《つま》を|弟《おとうと》に|残《のこ》しました。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|次男《じなん》も|三男《さんなん》も、ついに七|人《にん》とも|同《おな》じことになりました。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|最後《さいご》に、その|女《おんな》も|死《し》にました。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]すると|復活《ふっかつ》の|時《とき》には、この|女《おんな》は、七|人《にん》のうちだれの|妻《つま》なのでしょうか。みんながこの|女《おんな》を|妻《つま》にしたのですが」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「あなたがたは|聖書《せいしょ》も|神《かみ》の|力《ちから》も|知《し》らないから、|思《おも》い|違《ちが》いをしている。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|復活《ふっかつ》の|時《とき》には、|彼《かれ》らはめとったり、とついだりすることはない。|彼《かれ》らは|天《てん》にいる|御使《みつかい》のようなものである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]また、|死人《しにん》の|復活《ふっかつ》については、|神《かみ》があなたがたに|言《い》われた|言葉《ことば》を|読《よ》んだことがないのか。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]『わたしはアブラハムの|神《かみ》、イサクの|神《かみ》、ヤコブの|神《かみ》である』と|書《か》いてある。|神《かみ》は|死《し》んだ|者《もの》の|神《かみ》ではなく、|生《い》きている|者《もの》の|神《かみ》である」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》はこれを|聞《き》いて、イエスの|教《おしえ》に|驚《おどろ》いた。  [#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]さて、パリサイ|人《びと》たちは、イエスがサドカイ|人《びと》たちを|言《い》いこめられたと|聞《き》いて、|一緒《いっしょ》に|集《あつ》まった。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》らの|中《なか》のひとりの|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》が、イエスをためそうとして|質問《しつもん》した、[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]「|先生《せんせい》、|律法《りっぽう》の|中《なか》で、どのいましめがいちばん|大切《たいせつ》なのですか」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「『|心《こころ》をつくし、|精神《せいしん》をつくし、|思《おも》いをつくして、|主《しゅ》なるあなたの|神《かみ》を|愛《あい》せよ』。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]これがいちばん|大切《たいせつ》な、|第《だい》一のいましめである。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》二もこれと|同様《どうよう》である、『|自分《じぶん》を|愛《あい》するようにあなたの|隣《とな》り|人《びと》を|愛《あい》せよ』。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]これらの二つのいましめに、|律法《りっぽう》|全体《ぜんたい》と|預言者《よげんしゃ》とが、かかっている」。  [#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》たちが|集《あつ》まっていたとき、イエスは|彼《かれ》らにお|尋《たず》ねになった、[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]「あなたがたはキリストをどう|思《おも》うか。だれの|子《こ》なのか」。|彼《かれ》らは「ダビデの|子《こ》です」と|答《こた》えた。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「それではどうして、ダビデが|御霊《みたま》に|感《かん》じてキリストを|主《しゅ》と|呼《よ》んでいるのか。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち [#ここから2字下げ] 『|主《しゅ》はわが|主《しゅ》に|仰《おお》せになった、 あなたの|敵《てき》をあなたの|足《あし》もとに|置《お》くときまでは、 わたしの|右《みぎ》に|座《ざ》していなさい』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]このように、ダビデ|自身《じしん》がキリストを|主《しゅ》と|呼《よ》んでいるなら、キリストはどうしてダビデの|子《こ》であろうか」。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]イエスにひと|言《こと》でも|答《こた》えうる|者《もの》は、なかったし、その|日《ひ》からもはや、|進《すす》んでイエスに|質問《しつもん》する|者《もの》も、いなくなった。 第二三章[#「第二三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そのときイエスは、|群衆《ぐんしゅう》と|弟子《でし》たちとに|語《かた》って|言《い》われた、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》とパリサイ|人《びと》とは、モーセの|座《ざ》にすわっている。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]だから、|彼《かれ》らがあなたがたに|言《い》うことは、みな|守《まも》って|実行《じっこう》しなさい。しかし、|彼《かれ》らのすることには、ならうな。|彼《かれ》らは|言《い》うだけで、|実行《じっこう》しないから。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また、|重《おも》い|荷物《にもつ》をくくって|人々《ひとびと》の|肩《かた》にのせるが、それを|動《うご》かすために、|自分《じぶん》では|指《ゆび》一|本《ぽん》も|貸《か》そうとはしない。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そのすることは、すべて|人《ひと》に|見《み》せるためである。すなわち、|彼《かれ》らは|経札《きょうふだ》を|幅広《はばひろ》くつくり、その|衣《ころも》のふさを|大《おお》きくし、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]また、|宴会《えんかい》の|上座《じょうざ》、|会堂《かいどう》の|上席《じょうせき》を|好《この》み、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|広場《ひろば》であいさつされることや、|人々《ひとびと》から|先生《せんせい》と|呼《よ》ばれることを|好《この》んでいる。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたは|先生《せんせい》と|呼《よ》ばれてはならない。あなたがたの|先生《せんせい》は、ただひとりであって、あなたがたはみな|兄弟《きょうだい》なのだから。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]また、|地上《ちじょう》のだれをも、|父《ちち》と|呼《よ》んではならない。あなたがたの|父《ちち》はただひとり、すなわち、|天《てん》にいます|父《ちち》である。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがたは|教師《きょうし》と|呼《よ》ばれてはならない。あなたがたの|教師《きょうし》はただひとり、すなわち、キリストである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたがたのうちでいちばん|偉《えら》い|者《もの》は、|仕《つか》える|人《ひと》でなければならない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]だれでも|自分《じぶん》を|高《たか》くする|者《もの》は|低《ひく》くされ、|自分《じぶん》を|低《ひく》くする|者《もの》は|高《たか》くされるであろう。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|偽善《ぎぜん》な|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、パリサイ|人《びと》たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、|天国《てんごく》を|閉《と》ざして|人々《ひとびと》をはいらせない。|自分《じぶん》もはいらないし、はいろうとする|人《ひと》をはいらせもしない。〔[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|偽善《ぎぜん》な|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、パリサイ|人《びと》たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは、やもめたちの|家《いえ》を|食《く》い|倒《たお》し、|見《み》えのために|長《なが》い|祈《いのり》をする。だから、もっときびしいさばきを|受《う》けるに|違《ちが》いない。〕[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|偽善《ぎぜん》な|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、パリサイ|人《びと》たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたはひとりの|改宗者《かいしゅうしゃ》をつくるために、|海《うみ》と|陸《りく》とを|巡《めぐ》り|歩《ある》く。そして、つくったなら、|彼《かれ》を|自分《じぶん》より|倍《ばい》もひどい|地獄《じごく》の|子《こ》にする。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|盲目《もうもく》な|案内《あんない》|者《しゃ》たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは|言《い》う、『|神殿《しんでん》をさして|誓《ちか》うなら、そのままでよいが、|神殿《しんでん》の|黄金《こがね》をさして|誓《ちか》うなら、|果《はた》す|責任《せきにん》がある』と。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|愚《おろ》かな|盲目《もうもく》な|人《ひと》たちよ。|黄金《こがね》と、|黄金《こがね》を|神聖《しんせい》にする|神殿《しんでん》と、どちらが|大事《だいじ》なのか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがたは|言《い》う、『|祭壇《さいだん》をさして|誓《ちか》うなら、そのままでよいが、その|上《うえ》の|供《そな》え|物《もの》をさして|誓《ちか》うなら、|果《はた》す|責任《せきにん》がある』と。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|盲目《もうもく》な|人《ひと》たちよ。|供《そな》え|物《もの》と|供《そな》え|物《もの》を|神聖《しんせい》にする|祭壇《さいだん》とどちらが|大事《だいじ》なのか。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|祭壇《さいだん》をさして|誓《ちか》う|者《もの》は、|祭壇《さいだん》と、その|上《うえ》にあるすべての|物《もの》とをさして|誓《ちか》うのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|神殿《しんでん》をさして|誓《ちか》う|者《もの》は、|神殿《しんでん》とその|中《なか》に|住《す》んでおられるかたとをさして|誓《ちか》うのである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]また、|天《てん》をさして|誓《ちか》う|者《もの》は、|神《かみ》の|御座《みざ》とその|上《うえ》にすわっておられるかたとをさして|誓《ちか》うのである。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|偽善《ぎぜん》な|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、パリサイ|人《びと》たちよ。あなたがたは、わざわいである。はっか、いのんど、クミンなどの|薬味《やくみ》の十|分《ぶん》の一を|宮《みや》に|納《おさ》めておりながら、|律法《りっぽう》の|中《なか》でもっと|重要《じゅうよう》な、|公平《こうへい》とあわれみと|忠実《ちゅうじつ》とを|見《み》のがしている。それもしなければならないが、これも|見《み》のがしてはならない。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|盲目《もうもく》な|案内《あんない》|者《しゃ》たちよ。あなたがたは、ぶよはこしているが、らくだはのみこんでいる。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|偽善《ぎぜん》な|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、パリサイ|人《びと》たちよ。あなたがたは、わざわいである。|杯《さかずき》と|皿《さら》との|外側《そとがわ》はきよめるが、|内側《うちがわ》は|貪欲《どんよく》と|放縦《ほうじゅう》とで|満《み》ちている。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|盲目《もうもく》なパリサイ|人《びと》よ。まず、|杯《さかずき》の|内側《うちがわ》をきよめるがよい。そうすれば、|外側《そとがわ》も|清《きよ》くなるであろう。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|偽善《ぎぜん》な|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、パリサイ|人《びと》たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは|白《しろ》く|塗《ぬ》った|墓《はか》に|似《に》ている。|外側《そとがわ》は|美《うつく》しく|見《み》えるが、|内側《うちがわ》は|死人《しにん》の|骨《ほね》や、あらゆる|不潔《ふけつ》なものでいっぱいである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]このようにあなたがたも、|外側《そとがわ》は|人《ひと》に|正《ただ》しく|見《み》えるが、|内側《うちがわ》は|偽善《ぎぜん》と|不法《ふほう》とでいっぱいである。  [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|偽善《ぎぜん》な|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、パリサイ|人《びと》たちよ。あなたがたは、わざわいである。あなたがたは|預言者《よげんしゃ》の|墓《はか》を|建《た》て、|義人《ぎじん》の|碑《ひ》を|飾《かざ》り|立《た》てて、こう|言《い》っている、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]『もしわたしたちが|先祖《せんぞ》の|時代《じだい》に|生《い》きていたなら、|預言者《よげんしゃ》の|血《ち》を|流《なが》すことに|加《くわ》わってはいなかっただろう』と。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]このようにして、あなたがたは|預言者《よげんしゃ》を|殺《ころ》した|者《もの》の|子孫《しそん》であることを、|自分《じぶん》で|証明《しょうめい》している。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたもまた|先祖《せんぞ》たちがした|悪《あく》の|枡目《ますめ》を|満《み》たすがよい。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]へびよ、まむしの|子《こ》らよ、どうして|地獄《じごく》の|刑罰《けいばつ》をのがれることができようか。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]それだから、わたしは、|預言者《よげんしゃ》、|知者《ちしゃ》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちをあなたがたにつかわすが、そのうちのある|者《もの》を|殺《ころ》し、また|十字架《じゅうじか》につけ、そのある|者《もの》を|会堂《かいどう》でむち|打《う》ち、また|町《まち》から|町《まち》へと|迫害《はくがい》して|行《い》くであろう。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]こうして|義人《ぎじん》アベルの|血《ち》から、|聖所《せいじょ》と|祭壇《さいだん》との|間《あいだ》であなたがたが|殺《ころ》したバラキヤの|子《こ》ザカリヤの|血《ち》に|至《いた》るまで、|地上《ちじょう》に|流《なが》された|義人《ぎじん》の|血《ち》の|報《むく》いが、ことごとくあなたがたに|及《およ》ぶであろう。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]よく|言《い》っておく。これらのことの|報《むく》いは、みな|今《いま》の|時代《じだい》に|及《およ》ぶであろう。  [#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]ああ、エルサレム、エルサレム、|預言者《よげんしゃ》たちを|殺《ころ》し、おまえにつかわされた|人《ひと》たちを|石《いし》で|打《う》ち|殺《ころ》す|者《もの》よ。ちょうど、めんどりが|翼《つばさ》の|下《した》にそのひなを|集《あつ》めるように、わたしはおまえの|子《こ》らを|幾《いく》たび|集《あつ》めようとしたことであろう。それだのに、おまえたちは|応《おう》じようとしなかった。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、おまえたちの|家《いえ》は|見捨《みす》てられてしまう。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|言《い》っておく、 [#ここから2字下げ] 『|主《しゅ》の|御名《みな》によってきたる|者《もの》に、|祝福《しゅくふく》あれ』 [#ここで字下げ終わり] とおまえたちが|言《い》う|時《とき》までは、|今後《こんご》ふたたび、わたしに|会《あ》うことはないであろう」。 第二四章[#「第二四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|宮《みや》から|出《で》て|行《い》こうとしておられると、|弟子《でし》たちは|近寄《ちかよ》ってきて、|宮《みや》の|建物《たてもの》にイエスの|注意《ちゅうい》を|促《うなが》した。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らにむかって|言《い》われた、「あなたがたは、これらすべてのものを|見《み》ないか。よく|言《い》っておく。その|石《いし》一つでもくずされずに、そこに|他《た》の|石《いし》の|上《うえ》に|残《のこ》ることもなくなるであろう」。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]またオリブ|山《やま》ですわっておられると、|弟子《でし》たちが、ひそかにみもとにきて|言《い》った、「どうぞお|話《はな》しください。いつ、そんなことが|起《おこ》るのでしょうか。あなたがまたおいでになる|時《とき》や、|世《よ》の|終《おわ》りには、どんな|前兆《ぜんちょう》がありますか」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「|人《ひと》に|惑《まど》わされないように|気《き》をつけなさい。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|多《おお》くの|者《もの》がわたしの|名《な》を|名《な》のって|現《あらわ》れ、|自分《じぶん》がキリストだと|言《い》って、|多《おお》くの|人《ひと》を|惑《まど》わすであろう。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]また、|戦争《せんそう》と|戦争《せんそう》のうわさとを|聞《き》くであろう。|注意《ちゅうい》していなさい、あわててはいけない。それは|起《おこ》らねばならないが、まだ|終《おわ》りではない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|民《たみ》は|民《たみ》に、|国《くに》は|国《くに》に|敵対《てきたい》して|立《た》ち|上《あ》がるであろう。またあちこちに、ききんが|起《おこ》り、また|地震《じしん》があるであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、すべてこれらは|産《う》みの|苦《くる》しみの|初《はじ》めである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そのとき|人々《ひとびと》は、あなたがたを|苦《くる》しみにあわせ、また|殺《ころ》すであろう。またあなたがたは、わたしの|名《な》のゆえにすべての|民《たみ》に|憎《にく》まれるであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|多《おお》くの|人《ひと》がつまずき、また|互《たがい》に|裏切《うらぎ》り、|憎《にく》み|合《あ》うであろう。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また|多《おお》くのにせ|預言者《よげんしゃ》が|起《おこ》って、|多《おお》くの|人《ひと》を|惑《まど》わすであろう。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]また|不法《ふほう》がはびこるので、|多《おお》くの|人《ひと》の|愛《あい》が|冷《ひ》えるであろう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|最後《さいご》まで|耐《た》え|忍《しの》ぶ|者《もの》は|救《すく》われる。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そしてこの|御国《みくに》の|福音《ふくいん》は、すべての|民《たみ》に|対《たい》してあかしをするために、|全《ぜん》|世界《せかい》に|宣《の》べ|伝《つた》えられるであろう。そしてそれから|最後《さいご》が|来《く》るのである。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|預言者《よげんしゃ》ダニエルによって|言《い》われた|荒《あ》らす|憎《にく》むべき|者《もの》が、|聖《せい》なる|場所《ばしょ》に|立《た》つのを|見《み》たならば(|読者《どくしゃ》よ、|悟《さと》れ)、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、ユダヤにいる|人々《ひとびと》は|山《やま》へ|逃《に》げよ。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|屋上《おくじょう》にいる|者《もの》は、|家《いえ》からものを|取《と》り|出《だ》そうとして|下《した》におりるな。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|畑《はたけ》にいる|者《もの》は、|上着《うわぎ》を|取《と》りにあとへもどるな。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には、|身重《みおも》の|女《おんな》と|乳飲《ちの》み|子《ご》をもつ|女《おんな》とは、|不幸《ふこう》である。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|逃《に》げるのが、|冬《ふゆ》または|安息日《あんそくにち》にならないように|祈《いの》れ。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》には、|世《よ》の|初《はじ》めから|現在《げんざい》に|至《いた》るまで、かつてなく|今後《こんご》もないような|大《おお》きな|患難《かんなん》が|起《おこ》るからである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]もしその|期間《きかん》が|縮《ちぢ》められないなら、|救《すく》われる|者《もの》はひとりもないであろう。しかし、|選民《せんみん》のためには、その|期間《きかん》が|縮《ちぢ》められるであろう。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、だれかがあなたがたに『|見《み》よ、ここにキリストがいる』、また、『あそこにいる』と|言《い》っても、それを|信《しん》じるな。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]にせキリストたちや、にせ|預言者《よげんしゃ》たちが|起《おこ》って、|大《おお》いなるしるしと|奇跡《きせき》とを|行《おこな》い、できれば、|選民《せんみん》をも|惑《まど》わそうとするであろう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、あなたがたに|前《まえ》もって|言《い》っておく。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]だから、|人々《ひとびと》が『|見《み》よ、|彼《かれ》は|荒野《あらの》にいる』と|言《い》っても、|出《で》て|行《い》くな。また『|見《み》よ、へやの|中《なか》にいる』と|言《い》っても、|信《しん》じるな。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]ちょうど、いなずまが|東《ひがし》から|西《にし》にひらめき|渡《わた》るように、|人《ひと》の|子《こ》も|現《あらわ》れるであろう。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|死体《したい》のあるところには、はげたかが|集《あつ》まるものである。  [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、その|時《とき》に|起《おこ》る|患難《かんなん》の|後《のち》、たちまち|日《ひ》は|暗《くら》くなり、|月《つき》はその|光《ひかり》を|放《はな》つことをやめ、|星《ほし》は|空《そら》から|落《お》ち、|天体《てんたい》は|揺《ゆ》り|動《うご》かされるであろう。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|人《ひと》の|子《こ》のしるしが|天《てん》に|現《あらわ》れるであろう。またそのとき、|地《ち》のすべての|民族《みんぞく》は|嘆《なげ》き、そして|力《ちから》と|大《おお》いなる|栄光《えいこう》とをもって、|人《ひと》の|子《こ》が|天《てん》の|雲《くも》に|乗《の》って|来《く》るのを、|人々《ひとびと》は|見《み》るであろう。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]また、|彼《かれ》は|大《おお》いなるラッパの|音《おと》と|共《とも》に|御使《みつかい》たちをつかわして、|天《てん》のはてからはてに|至《いた》るまで、|四方《しほう》からその|選民《せんみん》を|呼《よ》び|集《あつ》めるであろう。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]いちじくの|木《き》からこの|譬《たとえ》を|学《まな》びなさい。その|枝《えだ》が|柔《やわ》らかになり、|葉《は》が|出《で》るようになると、|夏《なつ》の|近《ちか》いことがわかる。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そのように、すべてこれらのことを|見《み》たならば、|人《ひと》の|子《こ》が|戸口《とぐち》まで|近《ちか》づいていると|知《し》りなさい。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》いておきなさい。これらの|事《こと》が、ことごとく|起《おこ》るまでは、この|時代《じだい》は|滅《ほろ》びることがない。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|天地《てんち》は|滅《ほろ》びるであろう。しかしわたしの|言葉《ことば》は|滅《ほろ》びることがない。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》、その|時《とき》は、だれも|知《し》らない。|天《てん》の|御使《みつかい》たちも、また|子《こ》も|知《し》らない、ただ|父《ちち》だけが|知《し》っておられる。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》の|現《あらわ》れるのも、ちょうどノアの|時《とき》のようであろう。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|洪水《こうずい》の|出《で》る|前《まえ》、ノアが|箱舟《はこぶね》にはいる|日《ひ》まで、|人々《ひとびと》は|食《く》い、|飲《の》み、めとり、とつぎなどしていた。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そして|洪水《こうずい》が|襲《おそ》ってきて、いっさいのものをさらって|行《い》くまで、|彼《かれ》らは|気《き》がつかなかった。|人《ひと》の|子《こ》の|現《あらわ》れるのも、そのようであろう。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、ふたりの|者《もの》が|畑《はたけ》にいると、ひとりは|取《と》り|去《さ》られ、ひとりは|取《と》り|残《のこ》されるであろう。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]ふたりの|女《おんな》がうすをひいていると、ひとりは|取《と》り|去《さ》られ、ひとりは|残《のこ》されるであろう。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]だから、|目《め》をさましていなさい。いつの|日《ひ》にあなたがたの|主《しゅ》がこられるのか、あなたがたには、わからないからである。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]このことをわきまえているがよい。|家《いえ》の|主人《しゅじん》は、|盗賊《とうぞく》がいつごろ|来《く》るかわかっているなら、|目《め》をさましていて、|自分《じぶん》の|家《いえ》に|押《お》し|入《い》ることを|許《ゆる》さないであろう。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたも|用意《ようい》をしていなさい。|思《おも》いがけない|時《とき》に|人《ひと》の|子《こ》が|来《く》るからである。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》がその|家《いえ》の|僕《しもべ》たちの|上《うえ》に|立《た》てて、|時《とき》に|応《おう》じて|食物《しょくもつ》をそなえさせる|忠実《ちゅうじつ》な|思慮《しりょ》|深《ぶか》い|僕《しもべ》は、いったい、だれであろう。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》が|帰《かえ》ってきたとき、そのようにつとめているのを|見《み》られる|僕《しもべ》は、さいわいである。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]よく|言《い》っておくが、|主人《しゅじん》は|彼《かれ》を|立《た》てて|自分《じぶん》の|全《ぜん》|財産《ざいさん》を|管理《かんり》させるであろう。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]もしそれが|悪《わる》い|僕《しもべ》であって、|自分《じぶん》の|主人《しゅじん》は|帰《かえ》りがおそいと|心《こころ》の|中《なか》で|思《おも》い、[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]その|僕《しもべ》|仲間《なかま》をたたきはじめ、また|酒飲《さけの》み|仲間《なかま》と|一緒《いっしょ》に|食《た》べたり|飲《の》んだりしているなら、[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]その|僕《しもべ》の|主人《しゅじん》は|思《おも》いがけない|日《ひ》、|気《き》がつかない|時《とき》に|帰《かえ》ってきて、[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》を|厳罰《げんばつ》に|処《しょ》し、|偽善者《ぎぜんしゃ》たちと|同《おな》じ|目《め》にあわせるであろう。|彼《かれ》はそこで|泣《な》き|叫《さけ》んだり、|歯《は》がみをしたりするであろう。 第二五章[#「第二五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこで|天国《てんごく》は、十|人《にん》のおとめがそれぞれあかりを|手《て》にして、|花婿《はなむこ》を|迎《むか》えに|出《で》て|行《い》くのに|似《に》ている。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]その|中《なか》の五|人《にん》は|思慮《しりょ》が|浅《あさ》く、五|人《にん》は|思慮《しりょ》|深《ぶか》い|者《もの》であった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|思慮《しりょ》の|浅《あさ》い|者《もの》たちは、あかりは|持《も》っていたが、|油《あぶら》を|用意《ようい》していなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|思慮《しりょ》|深《ぶか》い|者《もの》たちは、|自分《じぶん》たちのあかりと|一緒《いっしょ》に、|入《い》れものの|中《なか》に|油《あぶら》を|用意《ようい》していた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|花婿《はなむこ》の|来《く》るのがおくれたので、|彼《かれ》らはみな|居眠《いねむ》りをして、|寝《ね》てしまった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|夜中《よなか》に、『さあ、|花婿《はなむこ》だ、|迎《むか》えに|出《で》なさい』と|呼《よ》ぶ|声《こえ》がした。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、おとめたちはみな|起《お》きて、それぞれあかりを|整《ととの》えた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|思慮《しりょ》の|浅《あさ》い|女《おんな》たちが、|思慮《しりょ》|深《ぶか》い|女《おんな》たちに|言《い》った、『あなたがたの|油《あぶら》をわたしたちにわけてください。わたしたちのあかりが|消《き》えかかっていますから』。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すると、|思慮《しりょ》|深《ぶか》い|女《おんな》たちは|答《こた》えて|言《い》った、『わたしたちとあなたがたとに|足《た》りるだけは、|多分《たぶん》ないでしょう。|店《みせ》に|行《い》って、あなたがたの|分《ふん》をお|買《か》いになる|方《ほう》がよいでしょう』。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|買《か》いに|出《で》ているうちに、|花婿《はなむこ》が|着《つ》いた。そこで、|用意《ようい》のできていた|女《おんな》たちは、|花婿《はなむこ》と|一緒《いっしょ》に|婚《こん》|宴《えん》のへやにはいり、そして|戸《と》がしめられた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そのあとで、ほかのおとめたちもきて、『ご|主人様《しゅじんさま》、ご|主人様《しゅじんさま》、どうぞ、あけてください』と|言《い》った。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]しかし|彼《かれ》は|答《こた》えて、『はっきり|言《い》うが、わたしはあなたがたを|知《し》らない』と|言《い》った。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]だから、|目《め》をさましていなさい。その|日《ひ》その|時《とき》が、あなたがたにはわからないからである。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]また|天国《てんごく》は、ある|人《ひと》が|旅《たび》に|出《で》るとき、その|僕《しもべ》どもを|呼《よ》んで、|自分《じぶん》の|財産《ざいさん》を|預《あづ》けるようなものである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、それぞれの|能力《のうりょく》に|応《おう》じて、ある|者《もの》には五タラント、ある|者《もの》には二タラント、ある|者《もの》には一タラントを|与《あた》えて、|旅《たび》に|出《で》た。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]五タラントを|渡《わた》された|者《もの》は、すぐに|行《い》って、それで|商売《しょうばい》をして、ほかに五タラントをもうけた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]二タラントの|者《もの》も|同様《どうよう》にして、ほかに二タラントをもうけた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、一タラントを|渡《わた》された|者《もの》は、|行《い》って|地《ち》を|掘《ほ》り、|主人《しゅじん》の|金《かね》を|隠《かく》しておいた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]だいぶ|時《とき》がたってから、これらの|僕《しもべ》の|主人《しゅじん》が|帰《かえ》ってきて、|彼《かれ》らと|計算《けいさん》をしはじめた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]すると五タラントを|渡《わた》された|者《もの》が|進《すす》み|出《で》て、ほかの五タラントをさし|出《だ》して|言《い》った、『ご|主人様《しゅじんさま》、あなたはわたしに五タラントをお|預《あづ》けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに五タラントをもうけました』。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》は|彼《かれ》に|言《い》った、『|良《よ》い|忠実《ちゅうじつ》な|僕《しもべ》よ、よくやった。あなたはわずかなものに|忠実《ちゅうじつ》であったから、|多《おお》くのものを|管理《かんり》させよう。|主人《しゅじん》と|一緒《いっしょ》に|喜《よろこ》んでくれ』。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]二タラントの|者《もの》も|進《すす》み|出《で》て|言《い》った、『ご|主人様《しゅじんさま》、あなたはわたしに二タラントをお|預《あづ》けになりましたが、ごらんのとおり、ほかに二タラントをもうけました』。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》は|彼《かれ》に|言《い》った、『|良《よ》い|忠実《ちゅうじつ》な|僕《しもべ》よ、よくやった。あなたはわずかなものに|忠実《ちゅうじつ》であったから、|多《おお》くのものを|管理《かんり》させよう。|主人《しゅじん》と|一緒《いっしょ》に|喜《よろこ》んでくれ』。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]一タラントを|渡《わた》された|者《もの》も|進《すす》み|出《で》て|言《い》った、『ご|主人様《しゅじんさま》、わたしはあなたが、まかない|所《ところ》から|刈《か》り、|散《ち》らさない|所《ところ》から|集《あつ》める|酷《こく》な|人《ひと》であることを|承知《しょうち》していました。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこで|恐《おそ》ろしさのあまり、|行《い》って、あなたのタラントを|地《ち》の|中《なか》に|隠《かく》しておきました。ごらんください。ここにあなたのお|金《かね》がございます』。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]すると、|主人《しゅじん》は|彼《かれ》に|答《こた》えて|言《い》った、『|悪《わる》い|怠惰《たいだ》な|僕《しもべ》よ、あなたはわたしが、まかない|所《ところ》から|刈《か》り、|散《ち》らさない|所《ところ》から|集《あつ》めることを|知《し》っているのか。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]それなら、わたしの|金《かね》を|銀行《ぎんこう》に|預《あづ》けておくべきであった。そうしたら、わたしは|帰《かえ》ってきて、|利子《りし》と|一緒《いっしょ》にわたしの|金《かね》を|返《かえ》してもらえたであろうに。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]さあ、そのタラントをこの|者《もの》から|取《と》りあげて、十タラントを|持《も》っている|者《もの》にやりなさい。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]おおよそ、|持《も》っている|人《ひと》は|与《あた》えられて、いよいよ|豊《ゆた》かになるが、|持《も》っていない|人《ひと》は、|持《も》っているものまでも|取《と》り|上《あ》げられるであろう。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]この|役《やく》に|立《た》たない|僕《しもべ》を|外《そと》の|暗《くら》い|所《ところ》に|追《お》い|出《だ》すがよい。|彼《かれ》は、そこで|泣《な》き|叫《さけ》んだり、|歯《は》がみをしたりするであろう』。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》が|栄光《えいこう》の|中《なか》にすべての|御使《みつかい》たちを|従《したが》えて|来《く》るとき、|彼《かれ》はその|栄光《えいこう》の|座《ざ》につくであろう。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そして、すべての|国民《こくみん》をその|前《まえ》に|集《あつ》めて、|羊飼《ひつじかい》が|羊《ひつじ》とやぎとを|分《わ》けるように、|彼《かれ》らをより|分《わ》け、[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|羊《ひつじ》を|右《みぎ》に、やぎを|左《ひだり》におくであろう。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|王《おう》は|右《みぎ》にいる|人々《ひとびと》に|言《い》うであろう、『わたしの|父《ちち》に|祝福《しゅくふく》された|人《ひと》たちよ、さあ、|世《よ》の|初《はじ》めからあなたがたのために|用意《ようい》されている|御国《みくに》を|受《う》けつぎなさい。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わたしが|空腹《くうふく》のときに|食《た》べさせ、かわいていたときに|飲《の》ませ、|旅人《たびびと》であったときに|宿《やど》を|貸《か》し、[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|裸《はだか》であったときに|着《き》せ、|病気《びょうき》のときに|見舞《みま》い、|獄《ごく》にいたときに|尋《たず》ねてくれたからである』。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|正《ただ》しい|者《もの》たちは|答《こた》えて|言《い》うであろう、『|主《しゅ》よ、いつ、わたしたちは、あなたが|空腹《くうふく》であるのを|見《み》て|食物《しょくもつ》をめぐみ、かわいているのを|見《み》て|飲《の》ませましたか。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]いつあなたが|旅人《たびびと》であるのを|見《み》て|宿《やど》を|貸《か》し、|裸《はだか》なのを|見《み》て|着《き》せましたか。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]また、いつあなたが|病気《びょうき》をし、|獄《ごく》にいるのを|見《み》て、あなたの|所《ところ》に|参《まい》りましたか』。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]すると、|王《おう》は|答《こた》えて|言《い》うであろう、『あなたがたによく|言《い》っておく。わたしの|兄弟《きょうだい》であるこれらの|最《もっと》も|小《ちい》さい|者《もの》のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしたのである』。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]それから、|左《ひだり》にいる|人々《ひとびと》にも|言《い》うであろう、『のろわれた|者《もの》どもよ、わたしを|離《はな》れて、|悪魔《あくま》とその|使《つかい》たちとのために|用意《ようい》されている|永遠《えいえん》の|火《ひ》にはいってしまえ。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わたしが|空腹《くうふく》のときに|食《た》べさせず、かわいていたときに|飲《の》ませず、[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|旅人《たびびと》であったときに|宿《やど》を|貸《か》さず、|裸《はだか》であったときに|着《き》せず、また|病気《びょうき》のときや、|獄《ごく》にいたときに、わたしを|尋《たず》ねてくれなかったからである』。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|彼《かれ》らもまた|答《こた》えて|言《い》うであろう、『|主《しゅ》よ、いつ、あなたが|空腹《くうふく》であり、かわいておられ、|旅人《たびびと》であり、|裸《はだか》であり、|病気《びょうき》であり、|獄《ごく》におられたのを|見《み》て、わたしたちはお|世話《せわ》をしませんでしたか』。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|彼《かれ》は|答《こた》えて|言《い》うであろう、『あなたがたによく|言《い》っておく。これらの|最《もっと》も|小《ちい》さい|者《もの》のひとりにしなかったのは、すなわち、わたしにしなかったのである』。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》らは|永遠《えいえん》の|刑罰《けいばつ》を|受《う》け、|正《ただ》しい|者《もの》は|永遠《えいえん》の|生命《せいめい》に|入《い》るであろう」。 第二六章[#「第二六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれらの|言葉《ことば》をすべて|語《かた》り|終《お》えてから、|弟子《でし》たちに|言《い》われた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「あなたがたが|知《し》っているとおり、ふつかの|後《のち》には|過越《すぎこし》の|祭《まつり》になるが、|人《ひと》の|子《こ》は|十字架《じゅうじか》につけられるために|引《ひ》き|渡《わた》される」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|祭司長《さいしちょう》たちや|民《たみ》の|長老《ちょうろう》たちが、カヤパという|大祭司《だいさいし》の|中庭《なかにわ》に|集《あつ》まり、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|策略《さくりゃく》をもってイエスを|捕《とら》えて|殺《ころ》そうと|相談《そうだん》した。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし|彼《かれ》らは|言《い》った、「|祭《まつり》の|間《あいだ》はいけない。|民衆《みんしゅう》の|中《なか》に|騒《さわ》ぎが|起《おこ》るかも|知《し》れない」。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスがベタニヤで、らい|病人《びょうにん》シモンの|家《いえ》におられたとき、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ひとりの|女《おんな》が、|高価《こうか》な|香油《こうゆ》が|入《い》れてある|石膏《せっこう》のつぼを|持《も》ってきて、イエスに|近寄《ちかよ》り、|食事《しょくじ》の|席《せき》についておられたイエスの|頭《あたま》に|香油《こうゆ》を|注《そそ》ぎかけた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すると、|弟子《でし》たちはこれを|見《み》て|憤《いきどお》って|言《い》った、「なんのためにこんなむだ|使《づかい》をするのか。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それを|高《たか》く|売《う》って、|貧《まず》しい|人《ひと》たちに|施《ほどこ》すことができたのに」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスはそれを|聞《き》いて|彼《かれ》らに|言《い》われた、「なぜ、|女《おんな》を|困《こま》らせるのか。わたしによい|事《こと》をしてくれたのだ。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|貧《まず》しい|人《ひと》たちはいつもあなたがたと|一緒《いっしょ》にいるが、わたしはいつも|一緒《いっしょ》にいるわけではない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》がわたしのからだにこの|香油《こうゆ》を|注《そそ》いだのは、わたしの|葬《ほうむ》りの|用意《ようい》をするためである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》きなさい。|全《ぜん》|世界《せかい》のどこででも、この|福音《ふくいん》が|宣《の》べ|伝《つた》えられる|所《ところ》では、この|女《おんな》のした|事《こと》も|記念《きねん》として|語《かた》られるであろう」。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|時《とき》に、十二|弟子《でし》のひとりイスカリオテのユダという|者《もの》が、|祭司長《さいしちょう》たちのところに|行《い》って[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「|彼《かれ》をあなたがたに|引《ひ》き|渡《わた》せば、いくらくださいますか」。すると、|彼《かれ》らは|銀貨《ぎんか》三十|枚《まい》を|彼《かれ》に|支払《しはら》った。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》から、ユダはイエスを|引《ひ》きわたそうと、|機会《きかい》をねらっていた。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]さて、|除酵祭《じょこうさい》の|第《だい》一|日《にち》に、|弟子《でし》たちはイエスのもとにきて|言《い》った、「|過越《すぎこし》の|食事《しょくじ》をなさるために、わたしたちはどこに|用意《ようい》をしたらよいでしょうか」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「|市内《しない》にはいり、かねて|話《はな》してある|人《ひと》の|所《ところ》に|行《い》って|言《い》いなさい、『|先生《せんせい》が、わたしの|時《とき》が|近《ちか》づいた、あなたの|家《いえ》で|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》に|過越《すぎこし》を|守《まも》ろうと、|言《い》っておられます』」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちはイエスが|命《めい》じられたとおりにして、|過越《すぎこし》の|用意《ようい》をした。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|夕方《ゆうがた》になって、イエスは十二|弟子《でし》と|一緒《いっしょ》に|食事《しょくじ》の|席《せき》につかれた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そして、|一同《いちどう》が|食事《しょくじ》をしているとき|言《い》われた、「|特《とく》にあなたがたに|言《い》っておくが、あなたがたのうちのひとりが、わたしを|裏切《うらぎ》ろうとしている」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|非常《ひじょう》に|心配《しんぱい》して、つぎつぎに「|主《しゅ》よ、まさか、わたしではないでしょう」と|言《い》い|出《だ》した。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「わたしと|一緒《いっしょ》に|同《おな》じ|鉢《はち》に|手《て》を|入《い》れている|者《もの》が、わたしを|裏切《うらぎ》ろうとしている。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]たしかに|人《ひと》の|子《こ》は、|自分《じぶん》について|書《か》いてあるとおりに|去《さ》って|行《い》く。しかし、|人《ひと》の|子《こ》を|裏切《うらぎ》るその|人《ひと》は、わざわいである。その|人《ひと》は|生《うま》れなかった|方《ほう》が、|彼《かれ》のためによかったであろう」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]イエスを|裏切《うらぎ》ったユダが|答《こた》えて|言《い》った、「|先生《せんせい》、まさか、わたしではないでしょう」。イエスは|言《い》われた、「いや、あなただ」。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|一同《いちどう》が|食事《しょくじ》をしているとき、イエスはパンを|取《と》り、|祝福《しゅくふく》してこれをさき、|弟子《でし》たちに|与《あた》えて|言《い》われた、「|取《と》って|食《た》べよ、これはわたしのからだである」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]また|杯《さかずき》を|取《と》り、|感謝《かんしゃ》して|彼《かれ》らに|与《あた》えて|言《い》われた、「みな、この|杯《さかずき》から|飲《の》め。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]これは、|罪《つみ》のゆるしを|得《え》させるようにと、|多《おお》くの|人《ひと》のために|流《なが》すわたしの|契約《けいやく》の|血《ち》である。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》っておく。わたしの|父《ちち》の|国《くに》であなたがたと|共《とも》に、|新《あたら》しく|飲《の》むその|日《ひ》までは、わたしは|今後《こんご》|決《けっ》して、ぶどうの|実《み》から|造《つく》ったものを|飲《の》むことをしない」。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、さんびを|歌《うた》った|後《のち》、オリブ|山《やま》へ|出《で》かけて|行《い》った。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスは|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「|今夜《こんや》、あなたがたは|皆《みな》わたしにつまずくであろう。『わたしは|羊飼《ひつじかい》を|打《う》つ。そして、|羊《ひつじ》の|群《む》れは|散《ち》らされるであろう』と、|書《か》いてあるからである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより|先《さき》にガリラヤへ|行《い》くであろう」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]するとペテロはイエスに|答《こた》えて|言《い》った、「たとい、みんなの|者《もの》があなたにつまずいても、わたしは|決《けっ》してつまずきません」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「よくあなたに|言《い》っておく。|今夜《こんや》、|鶏《にわとり》が|鳴《な》く|前《まえ》に、あなたは三|度《ど》わたしを|知《し》らないと|言《い》うだろう」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|言《い》った、「たといあなたと|一緒《いっしょ》に|死《し》なねばならなくなっても、あなたを|知《し》らないなどとは、|決《けっ》して|申《もう》しません」。|弟子《でし》たちもみな|同《おな》じように|言《い》った。  [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスは|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》に、ゲツセマネという|所《ところ》へ|行《い》かれた。そして|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「わたしが|向《む》こうへ|行《い》って|祈《いの》っている|間《あいだ》、ここにすわっていなさい」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そしてペテロとゼベダイの|子《こ》ふたりとを|連《つ》れて|行《い》かれたが、|悲《かな》しみを|催《もよお》しまた|悩《なや》みはじめられた。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしは|悲《かな》しみのあまり|死《し》ぬほどである。ここに|待《ま》っていて、わたしと|一緒《いっしょ》に|目《め》をさましていなさい」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そして|少《すこ》し|進《すす》んで|行《い》き、うつぶしになり、|祈《いの》って|言《い》われた、「わが|父《ちち》よ、もしできることでしたらどうか、この|杯《さかずき》をわたしから|過《す》ぎ|去《さ》らせてください。しかし、わたしの|思《おも》いのままにではなく、みこころのままになさって|下《くだ》さい」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]それから、|弟子《でし》たちの|所《ところ》にきてごらんになると、|彼《かれ》らが|眠《ねむ》っていたので、ペテロに|言《い》われた、「あなたがたはそんなに、ひと|時《とき》もわたしと|一緒《いっしょ》に|目《め》をさましていることが、できなかったのか。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|誘惑《ゆうわく》に|陥《おちい》らないように、|目《め》をさまして|祈《いの》っていなさい。|心《こころ》は|熱《ねっ》しているが、|肉体《にくたい》が|弱《よわ》いのである」。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]また二|度目《どめ》に|行《い》って、|祈《いの》って|言《い》われた、「わが|父《ちち》よ、この|杯《さかずき》を|飲《の》むほかに|道《みち》がないのでしたら、どうか、みこころが|行《おこな》われますように」。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]またきてごらんになると、|彼《かれ》らはまた|眠《ねむ》っていた。その|目《め》が|重《おも》くなっていたのである。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]それで|彼《かれ》らをそのままにして、また|行《い》って、三|度目《どめ》に|同《おな》じ|言葉《ことば》で|祈《いの》られた。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]それから|弟子《でし》たちの|所《ところ》に|帰《かえ》ってきて、|言《い》われた、「まだ|眠《ねむ》っているのか、|休《やす》んでいるのか。|見《み》よ、|時《とき》が|迫《せま》った。|人《ひと》の|子《こ》は|罪人《つみびと》らの|手《て》に|渡《わた》されるのだ。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|立《た》て、さあ|行《い》こう。|見《み》よ、わたしを|裏切《うらぎ》る|者《もの》が|近《ちか》づいてきた」。  [#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]そして、イエスがまだ|話《はな》しておられるうちに、そこに、十二|弟子《でし》のひとりのユダがきた。また|祭司長《さいしちょう》、|民《たみ》の|長老《ちょうろう》たちから|送《おく》られた|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》も、|剣《けん》と|棒《ぼう》とを|持《も》って|彼《かれ》についてきた。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]イエスを|裏切《うらぎ》った|者《もの》が、あらかじめ|彼《かれ》らに、「わたしの|接吻《せっぷん》する|者《もの》が、その|人《ひと》だ。その|人《ひと》をつかまえろ」と|合図《あいず》をしておいた。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はすぐイエスに|近寄《ちかよ》り、「|先生《せんせい》、いかがですか」と|言《い》って、イエスに|接吻《せっぷん》した。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「|友《とも》よ、なんのためにきたのか」。このとき、|人々《ひとびと》が|進《すす》み|寄《よ》って、イエスに|手《て》をかけてつかまえた。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスと|一緒《いっしょ》にいた|者《もの》のひとりが、|手《て》を|伸《の》ばして|剣《けん》を|抜《ぬ》き、そして|大祭司《だいさいし》の|僕《しもべ》に|切《き》りかかって、その|片耳《かたみみ》を|切《き》り|落《おと》した。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「あなたの|剣《けん》をもとの|所《ところ》におさめなさい。|剣《けん》をとる|者《もの》はみな、|剣《けん》で|滅《ほろ》びる。[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]それとも、わたしが|父《ちち》に|願《ねが》って、|天《てん》の|使《つかい》たちを十二|軍団《ぐんだん》|以上《いじょう》も、|今《いま》つかわしていただくことができないと、あなたは|思《おも》うのか。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、それでは、こうならねばならないと|書《か》いてある|聖書《せいしょ》の|言葉《ことば》は、どうして|成就《じょうじゅ》されようか」。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスは|群衆《ぐんしゅう》に|言《い》われた、「あなたがたは|強盗《ごうとう》にむかうように、|剣《けん》や|棒《ぼう》を|持《も》ってわたしを|捕《とら》えにきたのか。わたしは|毎日《まいにち》、|宮《みや》ですわって|教《おし》えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、すべてこうなったのは、|預言者《よげんしゃ》たちの|書《か》いたことが、|成就《じょうじゅ》するためである」。そのとき、|弟子《でし》たちは|皆《みな》イエスを|見捨《みす》てて|逃《に》げ|去《さ》った。  [#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスをつかまえた|人《ひと》たちは、|大祭司《だいさいし》カヤパのところにイエスを|連《つ》れて|行《い》った。そこには|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、|長老《ちょうろう》たちが|集《あつ》まっていた。[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|遠《とお》くからイエスについて、|大祭司《だいさいし》の|中庭《なかにわ》まで|行《い》き、そのなりゆきを|見《み》とどけるために、|中《なか》にはいって|下役《したやく》どもと|一緒《いっしょ》にすわっていた。[#太字]五九[#「五九」は行右小書き][#太字終わり]さて、|祭司長《さいしちょう》たちと|全《ぜん》|議会《ぎかい》とは、イエスを|死刑《しけい》にするため、イエスに|不利《ふり》な|偽証《ぎしょう》を|求《もと》めようとしていた。[#太字]六〇[#「六〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|多《おお》くの|偽証者《ぎしょうしゃ》が|出《で》てきたが、|証拠《しょうこ》があがらなかった。しかし、|最後《さいご》にふたりの|者《もの》が|出《で》てきて[#太字]六一[#「六一」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「この|人《ひと》は、わたしは|神《かみ》の|宮《みや》を|打《う》ちこわし、三|日《か》の|後《のち》に|建《た》てることができる、と|言《い》いました」。[#太字]六二[#「六二」は行右小書き][#太字終わり]すると、|大祭司《だいさいし》が|立《た》ち|上《あ》がってイエスに|言《い》った、「|何《なに》も|答《こた》えないのか。これらの|人々《ひとびと》があなたに|対《たい》して|不利《ふり》な|証言《しょうげん》を|申《もう》し|立《た》てているが、どうなのか」。[#太字]六三[#「六三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスは|黙《だま》っておられた。そこで|大祭司《だいさいし》は|言《い》った、「あなたは|神《かみ》の|子《こ》キリストなのかどうか、|生《い》ける|神《かみ》に|誓《ちか》ってわれわれに|答《こた》えよ」。[#太字]六四[#「六四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「あなたの|言《い》うとおりである。しかし、わたしは|言《い》っておく。あなたがたは、|間《ま》もなく、|人《ひと》の|子《こ》が|力《ちから》ある|者《もの》の|右《みぎ》に|座《ざ》し、|天《てん》の|雲《くも》に|乗《の》って|来《く》るのを|見《み》るであろう」。[#太字]六五[#「六五」は行右小書き][#太字終わり]すると、|大祭司《だいさいし》はその|衣《ころも》を|引《ひ》き|裂《さ》いて|言《い》った、「|彼《かれ》は|神《かみ》を|汚《けが》した。どうしてこれ|以上《いじょう》、|証人《しょうにん》の|必要《ひつよう》があろう。あなたがたは|今《いま》このけがし|言《ごと》を|聞《き》いた。[#太字]六六[#「六六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|意見《いけん》はどうか」。すると、|彼《かれ》らは|答《こた》えて|言《い》った、「|彼《かれ》は|死《し》に|当《あた》るものだ」。[#太字]六七[#「六七」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》らはイエスの|顔《かお》につばきをかけて、こぶしで|打《う》ち、またある|人《ひと》は|手《て》のひらでたたいて|言《い》った、[#太字]六八[#「六八」は行右小書き][#太字終わり]「キリストよ、|言《い》いあててみよ、|打《う》ったのはだれか」。  [#太字]六九[#「六九」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|外《そと》で|中庭《なかにわ》にすわっていた。するとひとりの|女中《じょちゅう》が|彼《かれ》のところにきて、「あなたもあのガリラヤ|人《びと》イエスと|一緒《いっしょ》だった」と|言《い》った。[#太字]七〇[#「七〇」は行右小書き][#太字終わり]するとペテロは、みんなの|前《まえ》でそれを|打《う》ち|消《け》して|言《い》った、「あなたが|何《なに》を|言《い》っているのか、わからない」。[#太字]七一[#「七一」は行右小書き][#太字終わり]そう|言《い》って|入口《いりぐち》の|方《ほう》に|出《で》て|行《い》くと、ほかの|女中《じょちゅう》が|彼《かれ》を|見《み》て、そこにいる|人々《ひとびと》にむかって、「この|人《ひと》はナザレ|人《びと》イエスと|一緒《いっしょ》だった」と|言《い》った。[#太字]七二[#「七二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》は|再《ふたた》びそれを|打《う》ち|消《け》して、「そんな|人《ひと》は|知《し》らない」と|誓《ちか》って|言《い》った。[#太字]七三[#「七三」は行右小書き][#太字終わり]しばらくして、そこに|立《た》っていた|人々《ひとびと》が|近寄《ちかよ》ってきて、ペテロに|言《い》った、「|確《たし》かにあなたも|彼《かれ》らの|仲間《なかま》だ。|言葉《ことば》づかいであなたのことがわかる」。[#太字]七四[#「七四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は「その|人《ひと》のことは|何《なに》も|知《し》らない」と|言《い》って、|激《はげ》しく|誓《ちか》いはじめた。するとすぐ|鶏《にわとり》が|鳴《な》いた。[#太字]七五[#「七五」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは「|鶏《にわとり》が|鳴《な》く|前《まえ》に、三|度《ど》わたしを|知《し》らないと|言《い》うであろう」と|言《い》われたイエスの|言葉《ことば》を|思《おも》い|出《だ》し、|外《そと》に|出《で》て|激《はげ》しく|泣《な》いた。 第二七章[#「第二七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けると、|祭司長《さいしちょう》たち、|民《たみ》の|長老《ちょうろう》たち|一同《いちどう》は、イエスを|殺《ころ》そうとして|協議《きょうぎ》をこらした|上《うえ》、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]イエスを|縛《しば》って|引《ひ》き|出《だ》し、|総督《そうとく》ピラトに|渡《わた》した。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスを|裏切《うらぎ》ったユダは、イエスが|罪《つみ》に|定《さだ》められたのを|見《み》て|後悔《こうかい》し、|銀貨《ぎんか》三十|枚《まい》を|祭司長《さいしちょう》、|長老《ちょうろう》たちに|返《かえ》して[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「わたしは|罪《つみ》のない|人《ひと》の|血《ち》を|売《う》るようなことをして、|罪《つみ》を|犯《おか》しました」。しかし|彼《かれ》らは|言《い》った、「それは、われわれの|知《し》ったことか。|自分《じぶん》で|始末《しまつ》するがよい」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》は|銀貨《ぎんか》を|聖所《せいじょ》に|投《な》げ|込《こ》んで|出《で》て|行《い》き、|首《くび》をつって|死《し》んだ。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちは、その|銀貨《ぎんか》を|拾《ひろ》いあげて|言《い》った、「これは|血《ち》の|代価《だいか》だから、|宮《みや》の|金庫《きんこ》に|入《い》れるのはよくない」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは|協議《きょうぎ》の|上《うえ》、|外国《がいこく》|人《ひと》の|墓地《ぼち》にするために、その|金《かね》で|陶器《とうき》|師《し》の|畑《はたけ》を|買《か》った。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そのために、この|畑《はたけ》は|今日《きょう》まで|血《ち》の|畑《はたけ》と|呼《よ》ばれている。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]こうして|預言者《よげんしゃ》エレミヤによって|言《い》われた|言葉《ことば》が、|成就《じょうじゅ》したのである。すなわち、「|彼《かれ》らは、|値《ね》をつけられたもの、すなわち、イスラエルの|子《こ》らが|値《ね》をつけたものの|代価《だいか》、|銀貨《ぎんか》三十を|取《と》って、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》がお|命《めい》じになったように、|陶器《とうき》|師《し》の|畑《はたけ》の|代価《だいか》として、その|金《かね》を|与《あた》えた」。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスは|総督《そうとく》の|前《まえ》に|立《た》たれた。すると|総督《そうとく》はイエスに|尋《たず》ねて|言《い》った、「あなたがユダヤ|人《じん》の|王《おう》であるか」。イエスは「そのとおりである」と|言《い》われた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|祭司長《さいしちょう》、|長老《ちょうろう》たちが|訴《うった》えている|間《あいだ》、イエスはひと|言《こと》もお|答《こた》えにならなかった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]するとピラトは|言《い》った、「あんなにまで|次々《つぎつぎ》に、あなたに|不利《ふり》な|証言《しょうげん》を|立《た》てているのが、あなたには|聞《きこ》えないのか」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|総督《そうとく》が|非常《ひじょう》に|不思議《ふしぎ》に|思《おも》ったほどに、イエスは|何《なに》を|言《い》われても、ひと|言《こと》もお|答《こた》えにならなかった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]さて、|祭《まつり》のたびごとに、|総督《そうとく》は|群衆《ぐんしゅう》が|願《ねが》い|出《で》る|囚人《しゅうじん》ひとりを、ゆるしてやる|慣例《かんれい》になっていた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]ときに、バラバという|評判《ひょうばん》の|囚人《しゅうじん》がいた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それで、|彼《かれ》らが|集《あつ》まったとき、ピラトは|言《い》った、「おまえたちは、だれをゆるしてほしいのか。バラバか、それとも、キリストといわれるイエスか」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがイエスを|引《ひ》きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにはよくわかっていたからである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また、ピラトが|裁判《さいばん》の|席《せき》についていたとき、その|妻《つま》が|人《ひと》を|彼《かれ》のもとにつかわして、「あの|義人《ぎじん》には|関係《かんけい》しないでください。わたしはきょう|夢《ゆめ》で、あの|人《ひと》のためにさんざん|苦《くる》しみましたから」と|言《い》わせた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|祭司長《さいしちょう》、|長老《ちょうろう》たちは、バラバをゆるして、イエスを|殺《ころ》してもらうようにと、|群衆《ぐんしゅう》を|説《と》き|伏《ふ》せた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|総督《そうとく》は|彼《かれ》らにむかって|言《い》った、「ふたりのうち、どちらをゆるしてほしいのか」。|彼《かれ》らは「バラバの|方《ほう》を」と|言《い》った。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは|言《い》った、「それではキリストといわれるイエスは、どうしたらよいか」。|彼《かれ》らはいっせいに「|十字架《じゅうじか》につけよ」と|言《い》った。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、ピラトは|言《い》った、「あの|人《ひと》は、いったい、どんな|悪事《あくじ》をしたのか」。すると|彼《かれ》らはいっそう|激《はげ》しく|叫《さけ》んで、「|十字架《じゅうじか》につけよ」と|言《い》った。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは|手《て》のつけようがなく、かえって|暴動《ぼうどう》になりそうなのを|見《み》て、|水《みず》を|取《と》り、|群衆《ぐんしゅう》の|前《まえ》で|手《て》を|洗《あら》って|言《い》った、「この|人《ひと》の|血《ち》について、わたしには|責任《せきにん》がない。おまえたちが|自分《じぶん》で|始末《しまつ》をするがよい」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]すると、|民衆《みんしゅう》|全体《ぜんたい》が|答《こた》えて|言《い》った、「その|血《ち》の|責任《せきにん》は、われわれとわれわれの|子孫《しそん》の|上《うえ》にかかってもよい」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ピラトはバラバをゆるしてやり、イエスをむち|打《う》ったのち、|十字架《じゅうじか》につけるために|引《ひ》きわたした。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]それから|総督《そうとく》の|兵士《へいし》たちは、イエスを|官邸《かんてい》に|連《つ》れて|行《い》って、|全《ぜん》|部隊《ぶたい》をイエスのまわりに|集《あつ》めた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そしてその|上着《うわぎ》をぬがせて、|赤《あか》い|外套《がいとう》を|着《き》せ、[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]また、いばらで|冠《かんむり》を|編《あ》んでその|頭《あたま》にかぶらせ、|右《みぎ》の|手《て》には|葦《あし》の|棒《ぼう》を|持《も》たせ、それからその|前《まえ》にひざまずき、|嘲弄《ちょうろう》して、「ユダヤ|人《じん》の|王《おう》、ばんざい」と|言《い》った。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]また、イエスにつばきをかけ、|葦《あし》の|棒《ぼう》を|取《と》りあげてその|頭《あたま》をたたいた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]こうしてイエスを|嘲弄《ちょうろう》したあげく、|外套《がいとう》をはぎ|取《と》って|元《もと》の|上着《うわぎ》を|着《き》せ、それから|十字架《じゅうじか》につけるために|引《ひ》き|出《だ》した。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|出《で》て|行《い》くと、シモンという|名《な》のクレネ|人《びと》に|出会《であ》ったので、イエスの|十字架《じゅうじか》を|無理《むり》に|負《お》わせた。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そして、ゴルゴタ、すなわち、されこうべの|場《ば》、という|所《ところ》にきたとき、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはにがみをまぜたぶどう|酒《しゅ》を|飲《の》ませようとしたが、イエスはそれをなめただけで、|飲《の》もうとされなかった。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはイエスを|十字架《じゅうじか》につけてから、くじを|引《ひ》いて、その|着物《きもの》を|分《わ》け、[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]そこにすわってイエスの|番《ばん》をしていた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そしてその|頭《あたま》の|上《うえ》の|方《ほう》に、「これはユダヤ|人《じん》の|王《おう》イエス」と|書《か》いた|罪状《ざいじょう》|書《が》きをかかげた。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|同時《どうじ》に、ふたりの|強盗《ごうとう》がイエスと|一緒《いっしょ》に、ひとりは|右《みぎ》に、ひとりは|左《ひだり》に、|十字架《じゅうじか》につけられた。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そこを|通《とお》りかかった|者《もの》たちは、|頭《あたま》を|振《ふ》りながら、イエスをののしって[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「|神殿《しんでん》を|打《う》ちこわして三|日《か》のうちに|建《た》てる|者《もの》よ。もし|神《かみ》の|子《こ》なら、|自分《じぶん》を|救《すく》え。そして|十字架《じゅうじか》からおりてこい」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちも|同《おな》じように、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、|長老《ちょうろう》たちと|一緒《いっしょ》になって、|嘲弄《ちょうろう》して|言《い》った、[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]「|他人《たにん》を|救《すく》ったが、|自分《じぶん》|自身《じしん》を|救《すく》うことができない。あれがイスラエルの|王《おう》なのだ。いま|十字架《じゅうじか》からおりてみよ。そうしたら|信《しん》じよう。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|神《かみ》にたよっているが、|神《かみ》のおぼしめしがあれば、|今《いま》、|救《すく》ってもらうがよい。|自分《じぶん》は|神《かみ》の|子《こ》だと|言《い》っていたのだから」。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]|一緒《いっしょ》に|十字架《じゅうじか》につけられた|強盗《ごうとう》どもまでも、|同《おな》じようにイエスをののしった。  [#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]さて、|昼《ひる》の十二|時《じ》から|地上《ちじょう》の|全面《ぜんめん》が|暗《くら》くなって、三|時《じ》に|及《およ》んだ。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]そして三|時《じ》ごろに、イエスは|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と|言《い》われた。それは「わが|神《かみ》、わが|神《かみ》、どうしてわたしをお|見捨《みす》てになったのですか」という|意味《いみ》である。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]すると、そこに|立《た》っていたある|人々《ひとびと》が、これを|聞《き》いて|言《い》った、「あれはエリヤを|呼《よ》んでいるのだ」。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]するとすぐ、|彼《かれ》らのうちのひとりが|走《はし》り|寄《よ》って、|海綿《かいめん》を|取《と》り、それに|酢《す》いぶどう|酒《しゅ》を|含《ふく》ませて|葦《あし》の|棒《ぼう》につけ、イエスに|飲《の》ませようとした。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|人々《ひとびと》は|言《い》った、「|待《ま》て、エリヤが|彼《かれ》を|救《すく》いに|来《く》るかどうか、|見《み》ていよう」。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスはもう|一度《いちど》|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んで、ついに|息《いき》をひきとられた。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]すると|見《み》よ、|神殿《しんでん》の|幕《まく》が|上《うえ》から|下《した》まで|真二《まっぷた》つに|裂《さ》けた。また|地震《じしん》があり、|岩《いわ》が|裂《さ》け、[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]また|墓《はか》が|開《あ》け、|眠《ねむ》っている|多《おお》くの|聖徒《せいと》たちの|死体《したい》が|生《い》き|返《かえ》った。[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]そしてイエスの|復活《ふっかつ》ののち、|墓《はか》から|出《で》てきて、|聖《せい》なる|都《みやこ》にはいり、|多《おお》くの|人《ひと》に|現《あらわ》れた。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]|百卒長《ひゃくそつちょう》、および|彼《かれ》と|一緒《いっしょ》にイエスの|番《ばん》をしていた|人々《ひとびと》は、|地震《じしん》や、いろいろのできごとを|見《み》て|非常《ひじょう》に|恐《おそ》れ、「まことに、この|人《ひと》は|神《かみ》の|子《こ》であった」と|言《い》った。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]また、そこには|遠《とお》くの|方《ほう》から|見《み》ている|女《おんな》たちも|多《おお》くいた。|彼《かれ》らはイエスに|仕《つか》えて、ガリラヤから|従《したが》ってきた|人《ひと》たちであった。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]その|中《なか》には、マグダラのマリヤ、ヤコブとヨセフとの|母《はは》マリヤ、またゼベダイの|子《こ》たちの|母《はは》がいた。  [#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]|夕方《ゆうがた》になってから、アリマタヤの|金持《かねもち》で、ヨセフという|名《な》の|人《ひと》がきた。|彼《かれ》もまたイエスの|弟子《でし》であった。[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》がピラトの|所《ところ》へ|行《い》って、イエスのからだの|引取《ひきと》りかたを|願《ねが》った。そこで、ピラトはそれを|渡《わた》すように|命《めい》じた。[#太字]五九[#「五九」は行右小書き][#太字終わり]ヨセフは|死体《したい》を|受《う》け|取《と》って、きれいな|亜麻布《あまぬの》に|包《つつ》み、[#太字]六〇[#「六〇」は行右小書き][#太字終わり]|岩《いわ》を|掘《ほ》って|造《つく》った|彼《かれ》の|新《あたら》しい|墓《はか》に|納《おさ》め、そして|墓《はか》の|入口《いりぐち》に|大《おお》きい|石《いし》をころがしておいて、|帰《かえ》った。[#太字]六一[#「六一」は行右小書き][#太字終わり]マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、|墓《はか》にむかってそこにすわっていた。  [#太字]六二[#「六二」は行右小書き][#太字終わり]あくる|日《ひ》は|準備《じゅんび》の|日《ひ》の|翌日《よくじつ》であったが、その|日《ひ》に、|祭司長《さいしちょう》、パリサイ|人《びと》たちは、ピラトのもとに|集《あつ》まって|言《い》った、[#太字]六三[#「六三」は行右小書き][#太字終わり]「|長官《ちょうかん》、あの|偽《いつわ》り|者《もの》がまだ|生《い》きていたとき、『三|日《か》の|後《のち》に|自分《じぶん》はよみがえる』と|言《い》ったのを、|思《おも》い|出《だ》しました。[#太字]六四[#「六四」は行右小書き][#太字終わり]ですから、三|日《か》|目《め》まで|墓《はか》の|番《ばん》をするように、さしずをして|下《くだ》さい。そうしないと、|弟子《でし》たちがきて|彼《かれ》を|盗《ぬす》み|出《だ》し、『イエスは|死人《しにん》の|中《なか》から、よみがえった』と、|民衆《みんしゅう》に|言《い》いふらすかも|知《し》れません。そうなると、みんなが|前《まえ》よりも、もっとひどくだまされることになりましょう」。[#太字]六五[#「六五」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは|彼《かれ》らに|言《い》った、「|番人《ばんにん》がいるから、|行《い》ってできる|限《かぎ》り、|番《ばん》をさせるがよい」。[#太字]六六[#「六六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|行《い》って|石《いし》に|封印《ふういん》をし、|番人《ばんにん》を|置《お》いて|墓《はか》の|番《ばん》をさせた。 第二八章[#「第二八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|安息日《あんそくにち》が|終《おわ》って、|週《しゅう》の|初《はじ》めの|日《ひ》の|明《あ》け|方《がた》に、マグダラのマリヤとほかのマリヤとが、|墓《はか》を|見《み》にきた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すると、|大《おお》きな|地震《じしん》が|起《おこ》った。それは|主《しゅ》の|使《つかい》が|天《てん》から|下《くだ》って、そこにきて|石《いし》をわきへころがし、その|上《うえ》にすわったからである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]その|姿《すがた》はいなずまのように|輝《かがや》き、その|衣《ころも》は|雪《ゆき》のように|真白《まっしろ》であった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|見張《みは》りをしていた|人《ひと》たちは、|恐《おそ》ろしさの|余《あま》り|震《ふる》えあがって、|死人《しにん》のようになった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]この|御使《みつかい》は|女《おんな》たちにむかって|言《い》った、「|恐《おそ》れることはない。あなたがたが|十字架《じゅうじか》におかかりになったイエスを|捜《さが》していることは、わたしにわかっているが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]もうここにはおられない。かねて|言《い》われたとおりに、よみがえられたのである。さあ、イエスが|納《おさ》められていた|場所《ばしょ》をごらんなさい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そして、|急《いそ》いで|行《い》って、|弟子《でし》たちにこう|伝《つた》えなさい、『イエスは|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえられた。|見《み》よ、あなたがたより|先《さき》にガリラヤへ|行《い》かれる。そこでお|会《あ》いできるであろう』。あなたがたに、これだけ|言《い》っておく」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そこで|女《おんな》たちは|恐《おそ》れながらも|大《おお》|喜《よろこ》びで、|急《いそ》いで|墓《はか》を|立《た》ち|去《さ》り、|弟子《でし》たちに|知《し》らせるために|走《はし》って|行《い》った。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスは|彼《かれ》らに|出会《であ》って、「|平安《へいあん》あれ」と|言《い》われたので、|彼《かれ》らは|近寄《ちかよ》りイエスのみ|足《あし》をいだいて|拝《はい》した。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|恐《おそ》れることはない。|行《い》って|兄弟《きょうだい》たちに、ガリラヤに|行《い》け、そこでわたしに|会《あ》えるであろう、と|告《つ》げなさい」。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》たちが|行《おこな》っている|間《あいだ》に、|番人《ばんにん》のうちのある|人々《ひとびと》が|都《みやこ》に|帰《かえ》って、いっさいの|出来事《できごと》を|祭司長《さいしちょう》たちに|話《はな》した。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちは|長老《ちょうろう》たちと|集《あつ》まって|協議《きょうぎ》をこらし、|兵卒《へいそつ》たちにたくさんの|金《かね》を|与《あた》えて|言《い》った、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]「『|弟子《でし》たちが|夜中《よなか》にきて、われわれの|寝《ね》ている|間《あいだ》に|彼《かれ》を|盗《ぬす》んだ』と|言《い》え。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|万一《まんいち》このことが|総督《そうとく》の|耳《みみ》にはいっても、われわれが|総督《そうとく》に|説《と》いて、あなたがたに|迷惑《めいわく》が|掛《か》からないようにしよう」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|金《かね》を|受《う》け|取《と》って、|教《おし》えられたとおりにした。そしてこの|話《はなし》は、|今日《きょう》に|至《いた》るまでユダヤ|人《じん》の|間《あいだ》にひろまっている。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]さて、十一|人《にん》の|弟子《でし》たちはガリラヤに|行《い》って、イエスが|彼《かれ》らに|行《い》くように|命《めい》じられた|山《やま》に|登《のぼ》った。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そして、イエスに|会《あ》って|拝《はい》した。しかし、|疑《うたが》う|者《もの》もいた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|近《ちか》づいてきて|言《い》われた、「わたしは、|天《てん》においても|地《ち》においても、いっさいの|権威《けんい》を|授《さづ》けられた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]それゆえに、あなたがたは|行《い》って、すべての|国民《こくみん》を|弟子《でし》として、|父《ちち》と|子《こ》と|聖霊《せいれい》との|名《な》によって、|彼《かれ》らにバプテスマを|施《ほどこ》し、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|命《めい》じておいたいっさいのことを|守《まも》るように|教《おし》えよ。|見《み》よ、わたしは|世《よ》の|終《おわ》りまで、いつもあなたがたと|共《とも》にいるのである」。 [#改ページ] マルコによる福音書[#「マルコによる福音書」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|子《こ》イエス・キリストの|福音《ふくいん》のはじめ。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|預言者《よげんしゃ》イザヤの|書《しょ》に、 [#ここから2字下げ] 「|見《み》よ、わたしは|使《つかい》をあなたの|先《さき》につかわし、 あなたの|道《みち》を|整《ととの》えさせるであろう。 [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|荒野《あらの》で|呼《よ》ばわる|者《もの》の|声《こえ》がする、 『|主《しゅ》の|道《みち》を|備《そな》えよ、 その|道《みち》|筋《すじ》をまっすぐにせよ』」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるように、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]バプテスマのヨハネが|荒野《あらの》に|現《あらわ》れて、|罪《つみ》のゆるしを|得《え》させる|悔改《くいあらた》めのバプテスマを|宣《の》べ|伝《つた》えていた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ユダヤ|全土《ぜんど》とエルサレムの|全《ぜん》|住民《じゅうみん》とが、|彼《かれ》のもとにぞくぞくと|出《で》て|行《い》って、|自分《じぶん》の|罪《つみ》を|告白《こくはく》し、ヨルダン|川《がわ》でヨハネからバプテスマを|受《う》けた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]このヨハネは、らくだの|毛《け》ごろもを|身《み》にまとい、|腰《こし》に|皮《かわ》の|帯《おび》をしめ、いなごと|野《の》|蜜《みつ》とを|食物《しょくもつ》としていた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|宣《の》べ|伝《つた》えて|言《い》った、「わたしよりも|力《ちから》のあるかたが、あとからおいでになる。わたしはかがんで、そのくつのひもを|解《と》く|値《ね》うちもない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|水《みず》でバプテスマを|授《さづ》けたが、このかたは、|聖霊《せいれい》によってバプテスマをお|授《さづ》けになるであろう」。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、イエスはガリラヤのナザレから|出《で》てきて、ヨルダン|川《がわ》で、ヨハネからバプテスマをお|受《う》けになった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、|水《みず》の|中《なか》から|上《あ》がられるとすぐ、|天《てん》が|裂《さ》けて、|聖霊《せいれい》がはとのように|自分《じぶん》に|下《くだ》って|来《く》るのを、ごらんになった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]すると|天《てん》から|声《こえ》があった、「あなたはわたしの|愛《あい》する|子《こ》、わたしの|心《こころ》にかなう|者《もの》である」。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それからすぐに、|御霊《みたま》がイエスを|荒野《あらの》に|追《お》いやった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは四十|日《にち》のあいだ|荒野《あらの》にいて、サタンの|試《こころ》みにあわれた。そして|獣《けもの》もそこにいたが、|御使《みつかい》たちはイエスに|仕《つか》えていた。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネが|捕《とら》えられた|後《のち》、イエスはガリラヤに|行《い》き、|神《かみ》の|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えて|言《い》われた、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]「|時《とき》は|満《み》ちた、|神《かみ》の|国《くに》は|近《ちか》づいた。|悔《く》い|改《あらた》めて|福音《ふくいん》を|信《しん》ぜよ」。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスはガリラヤの|海《うみ》べを|歩《ある》いて|行《い》かれ、シモンとシモンの|兄弟《きょうだい》アンデレとが、|海《うみ》で|網《あみ》を|打《う》っているのをごらんになった。|彼《かれ》らは|漁師《りょうし》であった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、|人間《にんげん》をとる|漁師《りょうし》にしてあげよう」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》らはすぐに|網《あみ》を|捨《す》てて、イエスに|従《したが》った。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また|少《すこ》し|進《すす》んで|行《い》かれると、ゼベダイの|子《こ》ヤコブとその|兄弟《きょうだい》ヨハネとが、|舟《ふね》の|中《なか》で|網《あみ》を|繕《つくろ》っているのをごらんになった。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、すぐ|彼《かれ》らをお|招《まね》きになると、|父《ちち》ゼベダイを|雇人《やといにん》たちと|一緒《いっしょ》に|舟《ふね》において、イエスのあとについて|行《い》った。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》らはカペナウムに|行《い》った。そして|安息日《あんそくにち》にすぐ、イエスは|会堂《かいどう》にはいって|教《おし》えられた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は、その|教《おしえ》に|驚《おどろ》いた。|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちのようにではなく、|権威《けんい》ある|者《もの》のように、|教《おし》えられたからである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ちょうどその|時《とき》、けがれた|霊《れい》につかれた|者《もの》が|会堂《かいどう》にいて、|叫《さけ》んで|言《い》った、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]「ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの|係《かか》わりがあるのです。わたしたちを|滅《ほろ》ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。|神《かみ》の|聖者《せいじゃ》です」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれをしかって、「|黙《だま》れ、この|人《ひと》から|出《で》て|行《い》け」と|言《い》われた。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]すると、けがれた|霊《れい》は|彼《かれ》をひきつけさせ、|大声《おおごえ》をあげて、その|人《ひと》から|出《で》て|行《い》った。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はみな|驚《おどろ》きのあまり、|互《たがい》に|論《ろん》じて|言《い》った、「これは、いったい|何事《なにごと》か。|権威《けんい》ある|新《あたら》しい|教《おしえ》だ。けがれた|霊《れい》にさえ|命《めい》じられると、|彼《かれ》らは|従《したが》うのだ」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]こうしてイエスのうわさは、たちまちガリラヤの|全《ぜん》|地方《ちほう》、いたる|所《ところ》にひろまった。  [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それから|会堂《かいどう》を|出《で》るとすぐ、ヤコブとヨハネとを|連《つ》れて、シモンとアンデレとの|家《いえ》にはいって|行《い》かれた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが、シモンのしゅうとめが|熱病《ねつびょう》で|床《とこ》についていたので、|人々《ひとびと》はさっそく、そのことをイエスに|知《し》らせた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|近寄《ちかよ》り、その|手《て》をとって|起《おこ》されると、|熱《ねつ》が|引《ひ》き、|女《おんな》は|彼《かれ》らをもてなした。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|夕暮《ゆうぐれ》になり|日《ひ》が|沈《しず》むと、|人々《ひとびと》は|病人《びょうにん》や|悪霊《あくれい》につかれた|者《もの》をみな、イエスのところに|連《つ》れてきた。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|町中《まちじゅう》の|者《もの》が|戸口《とぐち》に|集《あつ》まった。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、さまざまの|病《やまい》をわずらっている|多《おお》くの|人々《ひとびと》をいやし、また|多《おお》くの|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》された。また、|悪霊《あくれい》どもに、|物言《ものい》うことをお|許《ゆる》しにならなかった。|彼《かれ》らがイエスを|知《し》っていたからである。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|朝《あさ》はやく、|夜《よる》の|明《あ》けるよほど|前《まえ》に、イエスは|起《お》きて|寂《さび》しい|所《ところ》へ|出《で》て|行《い》き、そこで|祈《いの》っておられた。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]すると、シモンとその|仲間《なかま》とが、あとを|追《お》ってきた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そしてイエスを|見《み》つけて、「みんなが、あなたを|捜《さが》しています」と|言《い》った。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「ほかの、|附近《ふきん》の|町々《まちまち》にみんなで|行《い》って、そこでも|教《おしえ》を|宣《の》べ|伝《つた》えよう。わたしはこのために|出《で》てきたのだから」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そして、ガリラヤ|全《ぜん》|地《ち》を|巡《めぐ》りあるいて、|諸《しょ》|会堂《かいどう》で|教《おしえ》を|宣《の》べ|伝《つた》え、また|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》された。  [#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]ひとりのらい|病人《びょうにん》が、イエスのところに|願《ねが》いにきて、ひざまずいて|言《い》った、「みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|深《ふか》くあわれみ、|手《て》を|伸《の》ばして|彼《かれ》にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と|言《い》われた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]すると、らい|病《びょう》が|直《ただ》ちに|去《さ》って、その|人《ひと》はきよくなった。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》をきびしく|戒《いまし》めて、すぐにそこを|去《さ》らせ、こう|言《い》い|聞《き》かせられた、[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]「|何《なに》も|人《ひと》に|話《はな》さないように、|注意《ちゅうい》しなさい。ただ|行《い》って、|自分《じぶん》のからだを|祭司《さいし》に|見《み》せ、それから、モーセが|命《めい》じた|物《もの》をあなたのきよめのためにささげて、|人々《ひとびと》に|証明《しょうめい》しなさい」。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》は|出《で》て|行《い》って、|自分《じぶん》の|身《み》に|起《おこ》ったことを|盛《さか》んに|語《かた》り、また|言《い》いひろめはじめたので、イエスはもはや|表立《おもてだ》っては|町《まち》に、はいることができなくなり、|外《そと》の|寂《さび》しい|所《ところ》にとどまっておられた。しかし、|人々《ひとびと》は|方々《ほうぼう》から、イエスのところにぞくぞくと|集《あつ》まってきた。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|幾日《いくにち》かたって、イエスがまたカペナウムにお|帰《かえ》りになったとき、|家《いえ》におられるといううわさが|立《た》ったので、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|多《おお》くの|人々《ひとびと》が|集《あつ》まってきて、もはや|戸口《とぐち》のあたりまでも、すきまが|無《な》いほどになった。そして、イエスは|御言《みことば》を|彼《かれ》らに|語《かた》っておられた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すると、|人々《ひとびと》がひとりの|中風《ちゅうぶ》の|者《もの》を四|人《にん》の|人《ひと》に|運《はこ》ばせて、イエスのところに|連《つ》れてきた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|群衆《ぐんしゅう》のために|近寄《ちかよ》ることができないので、イエスのおられるあたりの|屋根《やね》をはぎ、|穴《あな》をあけて、|中風《ちゅうぶ》の|者《もの》を|寝《ね》かせたまま、|床《とこ》をつりおろした。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らの|信仰《しんこう》を|見《み》て、|中風《ちゅうぶ》の|者《もの》に、「|子《こ》よ、あなたの|罪《つみ》はゆるされた」と|言《い》われた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ところが、そこに|幾人《いくにん》かの|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》がすわっていて、|心《こころ》の|中《なか》で|論《ろん》じた、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]「この|人《ひと》は、なぜあんなことを|言《い》うのか。それは|神《かみ》をけがすことだ。|神《かみ》ひとりのほかに、だれが|罪《つみ》をゆるすことができるか」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、|彼《かれ》らが|内心《ないしん》このように|論《ろん》じているのを、|自分《じぶん》の|心《こころ》ですぐ|見《み》ぬいて、「なぜ、あなたがたは|心《こころ》の|中《なか》でそんなことを|論《ろん》じているのか。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|中風《ちゅうぶ》の|者《もの》に、あなたの|罪《つみ》はゆるされた、と|言《い》うのと、|起《お》きよ、|床《とこ》を|取《と》りあげて|歩《ある》け、と|言《い》うのと、どちらがたやすいか。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|人《ひと》の|子《こ》は|地上《ちじょう》で|罪《つみ》をゆるす|権威《けんい》をもっていることが、あなたがたにわかるために」と|彼《かれ》らに|言《い》い、|中風《ちゅうぶ》の|者《もの》にむかって、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]「あなたに|命《めい》じる。|起《お》きよ、|床《とこ》を|取《と》りあげて|家《いえ》に|帰《かえ》れ」と|言《い》われた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》は|起《お》きあがり、すぐに|床《とこ》を|取《と》りあげて、みんなの|前《まえ》を|出《で》て|行《い》ったので、|一同《いちどう》は|大《おお》いに|驚《おどろ》き、|神《かみ》をあがめて、「こんな|事《こと》は、まだ一|度《ど》も|見《み》たことがない」と|言《い》った。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはまた|海《うみ》べに|出《で》て|行《い》かれると、|多《おお》くの|人々《ひとびと》がみもとに|集《あつ》まってきたので、|彼《かれ》らを|教《おし》えられた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]また|途中《とちゅう》で、アルパヨの|子《こ》レビが|収税所《しゅうぜいしょ》にすわっているのをごらんになって、「わたしに|従《したが》ってきなさい」と|言《い》われた。すると|彼《かれ》は|立《た》ちあがって、イエスに|従《したが》った。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》の|家《いえ》で、|食事《しょくじ》の|席《せき》についておられたときのことである。|多《おお》くの|取税人《しゅぜいにん》や|罪人《つみびと》たちも、イエスや|弟子《でし》たちと|共《とも》にその|席《せき》に|着《つ》いていた。こんな|人《ひと》たちが|大《おお》ぜいいて、イエスに|従《したが》ってきたのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|派《は》の|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちは、イエスが|罪人《つみびと》や|取税人《しゅぜいにん》たちと|食事《しょくじ》を|共《とも》にしておられるのを|見《み》て、|弟子《でし》たちに|言《い》った、「なぜ、|彼《かれ》は|取税人《しゅぜいにん》や|罪人《つみびと》などと|食事《しょくじ》を|共《とも》にするのか」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれを|聞《き》いて|言《い》われた、「|丈夫《じょうぶ》な|人《ひと》には|医者《いしゃ》はいらない。いるのは|病人《びょうにん》である。わたしがきたのは、|義人《ぎじん》を|招《まね》くためではなく、|罪人《つみびと》を|招《まね》くためである」。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネの|弟子《でし》とパリサイ|人《びと》とは、|断食《だんじき》をしていた。そこで|人々《ひとびと》がきて、イエスに|言《い》った、「ヨハネの|弟子《でし》たちとパリサイ|人《びと》の|弟子《でし》たちとが|断食《だんじき》をしているのに、あなたの|弟子《でし》たちは、なぜ|断食《だんじき》をしないのですか」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|言《い》われた、「|婚礼《こんれい》の|客《きゃく》は、|花婿《はなむこ》が|一緒《いっしょ》にいるのに、|断食《だんじき》ができるであろうか。|花婿《はなむこ》と|一緒《いっしょ》にいる|間《あいだ》は、|断食《だんじき》はできない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|花婿《はなむこ》が|奪《うば》い|去《さ》られる|日《ひ》が|来《く》る。その|日《ひ》には|断食《だんじき》をするであろう。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]だれも、|真新《まあたら》しい|布《ぬの》ぎれを、|古《ふる》い|着物《きもの》に|縫《ぬ》いつけはしない。もしそうすれば、|新《あたら》しいつぎは|古《ふる》い|着物《きもの》を|引《ひ》き|破《やぶ》り、そして、|破《やぶ》れがもっとひどくなる。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]まただれも、|新《あたら》しいぶどう|酒《しゅ》を|古《ふる》い|皮《かわ》|袋《ぶくろ》に|入《い》れはしない。もしそうすれば、ぶどう|酒《しゅ》は|皮《かわ》|袋《ぶくろ》をはり|裂《さ》き、そして、ぶどう|酒《しゅ》も|皮《かわ》|袋《ぶくろ》もむだになってしまう。〔だから、|新《あたら》しいぶどう|酒《しゅ》は|新《あたら》しい|皮《かわ》|袋《ぶくろ》に|入《い》れるべきである〕」。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ある|安息日《あんそくにち》に、イエスは|麦畑《むぎばたけ》の|中《なか》をとおって|行《い》かれた。そのとき|弟子《でし》たちが、|歩《ある》きながら|穂《ほ》をつみはじめた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]すると、パリサイ|人《びと》たちがイエスに|言《い》った、「いったい、|彼《かれ》らはなぜ、|安息日《あんそくにち》にしてはならぬことをするのですか」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたは、ダビデとその|供《とも》の|者《もの》たちとが|食物《しょくもつ》がなくて|飢《う》えたとき、ダビデが|何《なに》をしたか、まだ|読《よ》んだことがないのか。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|大祭司《だいさいし》アビアタルの|時《とき》、|神《かみ》の|家《いえ》にはいって、|祭司《さいし》たちのほか|食《た》べてはならぬ|供《そな》えのパンを、|自分《じぶん》も|食《た》べ、また|供《とも》の|者《もの》たちにも|与《あた》えたではないか」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]また|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|安息日《あんそくにち》は|人《ひと》のためにあるもので、|人《ひと》が|安息日《あんそくにち》のためにあるのではない。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]それだから、|人《ひと》の|子《こ》は、|安息日《あんそくにち》にもまた|主《しゅ》なのである」。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスがまた|会堂《かいどう》にはいられると、そこに|片手《かたて》のなえた|人《ひと》がいた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はイエスを|訴《うった》えようと|思《おも》って、|安息日《あんそくにち》にその|人《ひと》をいやされるかどうかをうかがっていた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスは|片手《かたて》のなえたその|人《ひと》に、「|立《た》って、|中《なか》へ|出《で》てきなさい」と|言《い》い、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》にむかって、「|安息日《あんそくにち》に|善《ぜん》を|行《おこな》うのと|悪《あく》を|行《おこな》うのと、|命《いのち》を|救《すく》うのと|殺《ころ》すのと、どちらがよいか」と|言《い》われた。|彼《かれ》らは|黙《だま》っていた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|怒《いか》りを|含《ふく》んで|彼《かれ》らを|見《み》まわし、その|心《こころ》のかたくななのを|嘆《なげ》いて、その|人《ひと》に「|手《て》を|伸《の》ばしなさい」と|言《い》われた。そこで|手《て》を|伸《の》ばすと、その|手《て》は|元《もと》どおりになった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》たちは|出《で》て|行《い》って、すぐにヘロデ|党《とう》の|者《もの》たちと、なんとかしてイエスを|殺《ころ》そうと|相談《そうだん》しはじめた。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスは|弟子《でし》たちと|共《とも》に|海《うみ》べに|退《しりぞ》かれたが、ガリラヤからきたおびただしい|群衆《ぐんしゅう》がついて|行《い》った。またユダヤから、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]エルサレムから、イドマヤから、|更《さら》にヨルダンの|向《む》こうから、ツロ、シドンのあたりからも、おびただしい|群衆《ぐんしゅう》が、そのなさっていることを|聞《き》いて、みもとにきた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|群衆《ぐんしゅう》が|自分《じぶん》に|押《お》し|迫《せま》るのを|避《さ》けるために、|小舟《こぶね》を|用意《ようい》しておけと、|弟子《でし》たちに|命《めい》じられた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それは、|多《おお》くの|人《ひと》をいやされたので、|病苦《びょうく》に|悩《なや》む|者《もの》は|皆《みな》イエスにさわろうとして、|押《お》し|寄《よ》せてきたからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また、けがれた|霊《れい》どもはイエスを|見《み》るごとに、みまえにひれ|伏《ふ》し、|叫《さけ》んで、「あなたこそ|神《かみ》の|子《こ》です」と|言《い》った。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|御《ご》|自身《じしん》のことを|人《ひと》にあらわさないようにと、|彼《かれ》らをきびしく|戒《いまし》められた。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]さてイエスは|山《やま》に|登《のぼ》り、みこころにかなった|者《もの》たちを|呼《よ》び|寄《よ》せられたので、|彼《かれ》らはみもとにきた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そこで十二|人《にん》をお|立《た》てになった。|彼《かれ》らを|自分《じぶん》のそばに|置《お》くためであり、さらに|宣教《せんきょう》につかわし、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]また|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》す|権威《けんい》を|持《も》たせるためであった。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]こうして、この十二|人《にん》をお|立《た》てになった。そしてシモンにペテロという|名《な》をつけ、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]またゼベダイの|子《こ》ヤコブと、ヤコブの|兄弟《きょうだい》ヨハネ、|彼《かれ》らにはボアネルゲ、すなわち、|雷《かみなり》の|子《こ》という|名《な》をつけられた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]つぎにアンデレ、ピリポ、バルトロマイ、マタイ、トマス、アルパヨの|子《こ》ヤコブ、タダイ、|熱心《ねっしん》|党《とう》のシモン、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]それからイスカリオテのユダ。このユダがイエスを|裏切《うらぎ》ったのである。  イエスが|家《いえ》にはいられると、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》がまた|集《あつ》まってきたので、|一同《いちどう》は|食事《しょくじ》をする|暇《ひま》もないほどであった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|身内《みうち》の|者《もの》たちはこの|事《こと》を|聞《き》いて、イエスを|取押《とりおさ》えに|出《で》てきた。|気《き》が|狂《くる》ったと|思《おも》ったからである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]また、エルサレムから|下《くだ》ってきた|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちも、「|彼《かれ》はベルゼブルにとりつかれている」と|言《い》い、「|悪霊《あくれい》どものかしらによって、|悪霊《あくれい》どもを|追《お》い|出《だ》しているのだ」とも|言《い》った。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らを|呼《よ》び|寄《よ》せ、|譬《たとえ》をもって|言《い》われた、「どうして、サタンがサタンを|追《お》い|出《だ》すことができようか。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]もし|国《くに》が|内部《ないぶ》で|分《わか》れ|争《あらそ》うなら、その|国《くに》は|立《た》ち|行《い》かない。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]また、もし|家《いえ》が|内《うち》わで|分《わか》れ|争《あらそ》うなら、その|家《いえ》は|立《た》ち|行《い》かないであろう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]もしサタンが|内部《ないぶ》で|対立《たいりつ》し|分争《ぶんそう》するなら、|彼《かれ》は|立《た》ち|行《い》けず、|滅《ほろ》んでしまう。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]だれでも、まず|強《つよ》い|人《ひと》を|縛《しば》りあげなければ、その|人《ひと》の|家《いえ》に|押《お》し|入《い》って|家財《かざい》を|奪《うば》い|取《と》ることはできない。|縛《しば》ってからはじめて、その|家《いえ》を|略奪《りゃくだつ》することができる。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]よく|言《い》い|聞《き》かせておくが、|人《ひと》の|子《こ》らには、その|犯《おか》すすべての|罪《つみ》も|神《かみ》をけがす|言葉《ことば》も、ゆるされる。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|聖霊《せいれい》をけがす|者《もの》は、いつまでもゆるされず、|永遠《えいえん》の|罪《つみ》に|定《さだ》められる」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そう|言《い》われたのは、|彼《かれ》らが「イエスはけがれた|霊《れい》につかれている」と|言《い》っていたからである。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスの|母《はは》と|兄弟《きょうだい》たちとがきて、|外《そと》に|立《た》ち、|人《ひと》をやってイエスを|呼《よ》ばせた。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ときに、|群衆《ぐんしゅう》はイエスを|囲《かこ》んですわっていたが、「ごらんなさい。あなたの|母上《ははうえ》と|兄弟《きょうだい》、|姉妹《しまい》たちが、|外《そと》であなたを|尋《たず》ねておられます」と|言《い》った。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えて|言《い》われた、「わたしの|母《はは》、わたしの|兄弟《きょうだい》とは、だれのことか」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]そして、|自分《じぶん》をとりかこんで、すわっている|人々《ひとびと》を|見《み》まわして、|言《い》われた、「ごらんなさい、ここにわたしの|母《はは》、わたしの|兄弟《きょうだい》がいる。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》のみこころを|行《おこな》う|者《もの》はだれでも、わたしの|兄弟《きょうだい》、また|姉妹《しまい》、また|母《はは》なのである」。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはまたも、|海《うみ》べで|教《おし》えはじめられた。おびただしい|群衆《ぐんしゅう》がみもとに|集《あつ》まったので、イエスは|舟《ふね》に|乗《の》ってすわったまま、|海上《かいじょう》におられ、|群衆《ぐんしゅう》はみな|海《うみ》に|沿《そ》って|陸地《りくち》にいた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|譬《たとえ》で|多《おお》くの|事《こと》を|教《おし》えられたが、その|教《おしえ》の|中《なか》で|彼《かれ》らにこう|言《い》われた、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]「|聞《き》きなさい、|種《たね》まきが|種《たね》をまきに|出《で》て|行《い》った。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]まいているうちに、|道《みち》ばたに|落《お》ちた|種《たね》があった。すると、|鳥《とり》がきて|食《た》べてしまった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|種《たね》は|土《つち》の|薄《うす》い|石地《いしじ》に|落《お》ちた。そこは|土《つち》が|深《ふか》くないので、すぐ|芽《め》を|出《だ》したが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|日《ひ》が|上《のぼ》ると|焼《や》けて、|根《ね》がないために|枯《か》れてしまった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|種《たね》はいばらの|中《なか》に|落《お》ちた。すると、いばらが|伸《の》びて、ふさいでしまったので、|実《み》を|結《むす》ばなかった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|種《たね》は|良《よ》い|地《ち》に|落《お》ちた。そしてはえて、|育《そだ》って、ますます|実《み》を|結《むす》び、三十|倍《ばい》、六十|倍《ばい》、百|倍《ばい》にもなった」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そして|言《い》われた、「|聞《き》く|耳《みみ》のある|者《もの》は|聞《き》くがよい」。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスがひとりになられた|時《とき》、そばにいた|者《もの》たちが、十二|弟子《でし》と|共《とも》に、これらの|譬《たとえ》について|尋《たず》ねた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|言《い》われた、「あなたがたには|神《かみ》の|国《くに》の|奥義《おくぎ》が|授《さづ》けられているが、ほかの|者《もの》たちには、すべてが|譬《たとえ》で|語《かた》られる。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それは [#ここから2字下げ] 『|彼《かれ》らは|見《み》るには|見《み》るが、|認《みと》めず、 |聞《き》くには|聞《き》くが、|悟《さと》らず、 |悔《く》い|改《あらた》めてゆるされることがない』ためである」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]また|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたはこの|譬《たとえ》がわからないのか。それでは、どうしてすべての|譬《たとえ》がわかるだろうか。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|種《たね》まきは|御言《みことば》をまくのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|道《みち》ばたに|御言《みことば》がまかれたとは、こういう|人《ひと》たちのことである。すなわち、|御言《みことば》を|聞《き》くと、すぐにサタンがきて、|彼《かれ》らの|中《なか》にまかれた|御言《みことば》を、|奪《うば》って|行《い》くのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|同《おな》じように、|石地《いしじ》にまかれたものとは、こういう|人《ひと》たちのことである。|御言《みことば》を|聞《き》くと、すぐに|喜《よろこ》んで|受《う》けるが、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|中《なか》に|根《ね》がないので、しばらく|続《つづ》くだけである。そののち、|御言《みことば》のために|困難《こんなん》や|迫害《はくがい》が|起《おこ》ってくると、すぐつまずいてしまう。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]また、いばらの|中《なか》にまかれたものとは、こういう|人《ひと》たちのことである。|御言《みことば》を|聞《き》くが、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|世《よ》の|心《こころ》づかいと、|富《とみ》の|惑《まど》わしと、その|他《た》いろいろな|欲《よく》とがはいってきて、|御言《みことば》をふさぐので、|実《み》を|結《むす》ばなくなる。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]また、|良《よ》い|地《ち》にまかれたものとは、こういう|人《ひと》たちのことである。|御言《みことば》を|聞《き》いて|受《う》けいれ、三十|倍《ばい》、六十|倍《ばい》、百|倍《ばい》の|実《み》を|結《むす》ぶのである」。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]また|彼《かれ》らに|言《い》われた、「ますの|下《した》や|寝台《しんだい》の|下《した》に|置《お》くために、あかりを|持《も》ってくることがあろうか。|燭台《しょくだい》の|上《うえ》に|置《お》くためではないか。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]なんでも、|隠《かく》されているもので、|現《あらわ》れないものはなく、|秘密《ひみつ》にされているもので、|明《あか》るみに|出《で》ないものはない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|聞《き》く|耳《みみ》のある|者《もの》は|聞《き》くがよい」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]また|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|聞《き》くことがらに|注意《ちゅうい》しなさい。あなたがたの|量《はか》るそのはかりで、|自分《じぶん》にも|量《はか》り|与《あた》えられ、その|上《うえ》になお|増《ま》し|加《くわ》えられるであろう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]だれでも、|持《も》っている|人《ひと》は|更《さら》に|与《あた》えられ、|持《も》っていない|人《ひと》は、|持《も》っているものまでも|取《と》り|上《あ》げられるであろう」。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]また|言《い》われた、「|神《かみ》の|国《くに》は、ある|人《ひと》が|地《ち》に|種《たね》をまくようなものである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|夜昼《よるひる》、|寝起《ねお》きしている|間《あいだ》に、|種《たね》は|芽《め》を|出《だ》して|育《そだ》って|行《い》くが、どうしてそうなるのか、その|人《ひと》は|知《し》らない。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|地《ち》はおのずから|実《み》を|結《むす》ばせるもので、|初《はじ》めに|芽《め》、つぎに|穂《ほ》、つぎに|穂《ほ》の|中《なか》に|豊《ゆた》かな|実《み》ができる。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|実《み》がいると、すぐにかまを|入《い》れる。|刈入《かりい》れ|時《とき》がきたからである」。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]また|言《い》われた、「|神《かみ》の|国《くに》を|何《なに》に|比《くら》べようか。また、どんな|譬《たとえ》で|言《い》いあらわそうか。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]それは一|粒《つぶ》のからし|種《たね》のようなものである。|地《ち》にまかれる|時《とき》には、|地上《ちじょう》のどんな|種《たね》よりも|小《ちい》さいが、[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]まかれると、|成長《せいちょう》してどんな|野菜《やさい》よりも|大《おお》きくなり、|大《おお》きな|枝《えだ》を|張《は》り、その|陰《かげ》に|空《そら》の|鳥《とり》が|宿《やど》るほどになる」。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこのような|多《おお》くの|譬《たとえ》で、|人々《ひとびと》の|聞《き》く|力《ちから》にしたがって、|御言《みことば》を|語《かた》られた。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|譬《たとえ》によらないでは|語《かた》られなかったが、|自分《じぶん》の|弟子《でし》たちには、ひそかにすべてのことを|解《と》き|明《あ》かされた。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]さてその|日《ひ》、|夕方《ゆうがた》になると、イエスは|弟子《でし》たちに、「|向《む》こう|岸《ぎし》へ|渡《わた》ろう」と|言《い》われた。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|群衆《ぐんしゅう》をあとに|残《のこ》し、イエスが|舟《ふね》に|乗《の》っておられるまま、|乗《の》り|出《だ》した。ほかの|舟《ふね》も|一緒《いっしょ》に|行《い》った。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]すると、|激《はげ》しい|突風《とっぷう》が|起《おこ》り、|波《なみ》が|舟《ふね》の|中《なか》に|打《う》ち|込《こ》んできて、|舟《ふね》に|満《み》ちそうになった。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]ところがイエス|自身《じしん》は、|舳《とも》の|方《ほう》でまくらをして、|眠《ねむ》っておられた。そこで、|弟子《でし》たちはイエスをおこして、「|先生《せんせい》、わたしどもがおぼれ|死《し》んでも、おかまいにならないのですか」と|言《い》った。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|起《お》きあがって|風《かぜ》をしかり、|海《うみ》にむかって、「|静《しず》まれ、|黙《だま》れ」と|言《い》われると、|風《かぜ》はやんで、|大《おお》なぎになった。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「なぜ、そんなにこわがるのか。どうして|信仰《しんこう》がないのか」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|恐《おそ》れおののいて、|互《たがい》に|言《い》った、「いったい、この|方《ほう》はだれだろう。|風《かぜ》も|海《うみ》も|従《したが》わせるとは」。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]こうして|彼《かれ》らは|海《うみ》の|向《む》こう|岸《ぎし》、ゲラサ|人《びと》の|地《ち》に|着《つ》いた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスが|舟《ふね》からあがられるとすぐに、けがれた|霊《れい》につかれた|人《ひと》が|墓場《はかば》から|出《で》てきて、イエスに|出会《であ》った。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》は|墓場《はかば》をすみかとしており、もはやだれも、|鎖《くさり》でさえも|彼《かれ》をつなぎとめて|置《お》けなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はたびたび|足《あし》かせや|鎖《くさり》でつながれたが、|鎖《くさり》を|引《ひ》きちぎり、|足《あし》かせを|砕《くだ》くので、だれも|彼《かれ》を|押《おさ》えつけることができなかったからである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そして、|夜昼《よるひる》たえまなく|墓場《はかば》や|山《やま》で|叫《さけ》びつづけて、|石《いし》で|自分《じぶん》のからだを|傷《きず》つけていた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ところが、この|人《ひと》がイエスを|遠《とお》くから|見《み》て、|走《はし》り|寄《よ》って|拝《はい》し、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んで|言《い》った、「いと|高《たか》き|神《かみ》の|子《こ》イエスよ、あなたはわたしとなんの|係《かか》わりがあるのです。|神《かみ》に|誓《ちか》ってお|願《ねが》いします。どうぞ、わたしを|苦《くる》しめないでください」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それは、イエスが、「けがれた|霊《れい》よ、この|人《ひと》から|出《で》て|行《い》け」と|言《い》われたからである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]また|彼《かれ》に、「なんという|名前《なまえ》か」と|尋《たず》ねられると、「レギオンと|言《い》います。|大《おお》ぜいなのですから」と|答《こた》えた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、|自分《じぶん》たちをこの|土地《とち》から|追《お》い|出《だ》さないようにと、しきりに|願《ねが》いつづけた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]さて、そこの|山《やま》の|中腹《ちゅうふく》に、|豚《ぶた》の|大群《たいぐん》が|飼《か》ってあった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|霊《れい》はイエスに|願《ねが》って|言《い》った、「わたしどもを、|豚《ぶた》にはいらせてください。その|中《なか》へ|送《おく》ってください」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスがお|許《ゆる》しになったので、けがれた|霊《れい》どもは|出《で》て|行《い》って、|豚《ぶた》の|中《なか》へはいり|込《こ》んだ。すると、その|群《む》れは二千|匹《ひき》ばかりであったが、がけから|海《うみ》へなだれを|打《う》って|駆《か》け|下《くだ》り、|海《うみ》の|中《なか》でおぼれ|死《し》んでしまった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|豚《ぶた》を|飼《か》う|者《もの》たちが|逃《に》げ|出《だ》して、|町《まち》や|村《むら》にふれまわったので、|人々《ひとびと》は|何事《なにごと》が|起《おこ》ったのかと|見《み》にきた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そして、イエスのところにきて、|悪霊《あくれい》につかれた|人《ひと》が|着物《きもの》を|着《き》て、|正気《しょうき》になってすわっており、それがレギオンを|宿《やど》していた|者《もの》であるのを|見《み》て、|恐《おそ》れた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]また、それを|見《み》た|人《ひと》たちは、|悪霊《あくれい》につかれた|人《ひと》の|身《み》に|起《おこ》った|事《こと》と|豚《ぶた》のこととを、|彼《かれ》らに|話《はな》して|聞《き》かせた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|人々《ひとびと》はイエスに、この|地方《ちほう》から|出《で》て|行《い》っていただきたいと、|頼《たの》みはじめた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|舟《ふね》に|乗《の》ろうとされると、|悪霊《あくれい》につかれていた|人《ひと》がお|供《とも》をしたいと|願《ねが》い|出《で》た。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスはお|許《ゆる》しにならないで、|彼《かれ》に|言《い》われた、「あなたの|家族《かぞく》のもとに|帰《かえ》って、|主《しゅ》がどんなに|大《おお》きなことをしてくださったか、またどんなにあわれんでくださったか、それを|知《し》らせなさい」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》は|立《た》ち|去《さ》り、そして|自分《じぶん》にイエスがしてくださったことを、ことごとくデカポリスの|地方《ちほう》に|言《い》いひろめ|出《だ》したので、|人々《ひとびと》はみな|驚《おどろ》き|怪《あや》しんだ。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエスがまた|舟《ふね》で|向《む》こう|岸《ぎし》へ|渡《わた》られると、|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》がみもとに|集《あつ》まってきた。イエスは|海《うみ》べにおられた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこへ、|会堂司《かいどうづかさ》のひとりであるヤイロという|者《もの》がきて、イエスを|見《み》かけるとその|足《あし》もとにひれ|伏《ふ》し、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しきりに|願《ねが》って|言《い》った、「わたしの|幼《おさな》い|娘《むすめ》が|死《し》にかかっています。どうぞ、その|子《こ》がなおって|助《たす》かりますように、おいでになって、|手《て》をおいてやってください」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》と|一緒《いっしょ》に|出《で》かけられた。|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》もイエスに|押《お》し|迫《せま》りながら、ついて|行《い》った。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]さてここに、十二|年間《ねんかん》も|長《なが》|血《ち》をわずらっている|女《おんな》がいた。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|多《おお》くの|医者《いしゃ》にかかって、さんざん|苦《くる》しめられ、その|持《も》ち|物《もの》をみな|費《ついや》してしまったが、なんのかいもないばかりか、かえってますます|悪《わる》くなる|一方《いっぽう》であった。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》がイエスのことを|聞《き》いて、|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》にまぎれ|込《こ》み、うしろから、み|衣《ころも》にさわった。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]それは、せめて、み|衣《ころも》にでもさわれば、なおしていただけるだろうと、|思《おも》っていたからである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]すると、|血《ち》の|元《もと》がすぐにかわき、|女《おんな》は|病気《びょうき》がなおったことを、その|身《み》に|感《かん》じた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスはすぐ、|自分《じぶん》の|内《うち》から|力《ちから》が|出《で》て|行《い》ったことに|気《き》づかれて、|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》で|振《ふ》り|向《む》き、「わたしの|着物《きもの》にさわったのはだれか」と|言《い》われた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]そこで|弟子《でし》たちが|言《い》った、「ごらんのとおり、|群衆《ぐんしゅう》があなたに|押《お》し|迫《せま》っていますのに、だれがさわったかと、おっしゃるのですか」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスはさわった|者《もの》を|見《み》つけようとして、|見《み》まわしておられた。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]その|女《おんな》は|自分《じぶん》の|身《み》に|起《おこ》ったことを|知《し》って、|恐《おそ》れおののきながら|進《すす》み|出《で》て、みまえにひれ|伏《ふ》して、すべてありのままを|申《もう》し|上《あ》げた。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスはその|女《おんな》に|言《い》われた、「|娘《むすめ》よ、あなたの|信仰《しんこう》があなたを|救《すく》ったのです。|安心《あんしん》して|行《い》きなさい。すっかりなおって、|達者《たっしゃ》でいなさい」。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]イエスが、まだ|話《はな》しておられるうちに、|会堂司《かいどうづかさ》の|家《いえ》から|人々《ひとびと》がきて|言《い》った、「あなたの|娘《むすめ》はなくなりました。このうえ、|先生《せんせい》を|煩《わずら》わすには|及《およ》びますまい」。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]イエスはその|話《はな》している|言葉《ことば》を|聞《き》き|流《なが》して、|会堂司《かいどうづかさ》に|言《い》われた、「|恐《おそ》れることはない。ただ|信《しん》じなさい」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そしてペテロ、ヤコブ、ヤコブの|兄弟《きょうだい》ヨハネのほかは、ついて|来《く》ることを、だれにもお|許《ゆる》しにならなかった。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|会堂司《かいどうづかさ》の|家《いえ》に|着《つ》くと、イエスは|人々《ひとびと》が|大声《おおごえ》で|泣《な》いたり、|叫《さけ》んだりして、|騒《さわ》いでいるのをごらんになり、[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|内《うち》にはいって、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「なぜ|泣《な》き|騒《さわ》いでいるのか。|子供《こども》は|死《し》んだのではない。|眠《ねむ》っているだけである」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はイエスをあざ|笑《わら》った。しかし、イエスはみんなの|者《もの》を|外《そと》に|出《だ》し、|子供《こども》の|父母《ふぼ》と|供《とも》の|者《もの》たちだけを|連《つ》れて、|子供《こども》のいる|所《ところ》にはいって|行《い》かれた。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]そして|子供《こども》の|手《て》を|取《と》って、「タリタ、クミ」と|言《い》われた。それは、「|少女《しょうじょ》よ、さあ、|起《お》きなさい」という|意味《いみ》である。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]すると、|少女《しょうじょ》はすぐに|起《お》き|上《あ》がって、|歩《ある》き|出《だ》した。十二|歳《さい》にもなっていたからである。|彼《かれ》らはたちまち|非常《ひじょう》な|驚《おどろ》きに|打《う》たれた。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、だれにもこの|事《こと》を|知《し》らすなと、きびしく|彼《かれ》らに|命《めい》じ、また、|少女《しょうじょ》に|食物《しょくもつ》を|与《あた》えるようにと|言《い》われた。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはそこを|去《さ》って、|郷里《きょうり》に|行《い》かれたが、|弟子《でし》たちも|従《したが》って|行《い》った。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして、|安息日《あんそくにち》になったので、|会堂《かいどう》で|教《おし》えはじめられた。それを|聞《き》いた|多《おお》くの|人々《ひとびと》は、|驚《おどろ》いて|言《い》った、「この|人《ひと》は、これらのことをどこで|習《なら》ってきたのか。また、この|人《ひと》の|授《さず》かった|知恵《ちえ》はどうだろう。このような|力《ちから》あるわざがその|手《て》で|行《おこな》われているのは、どうしてか。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》は|大工《だいく》ではないか。マリヤのむすこで、ヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンの|兄弟《きょうだい》ではないか。またその|姉妹《しまい》たちも、ここにわたしたちと|一緒《いっしょ》にいるではないか」。こうして|彼《かれ》らはイエスにつまずいた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「|預言者《よげんしゃ》は、|自分《じぶん》の|郷里《きょうり》、|親族《しんぞく》、|家《いえ》|以外《いがい》では、どこででも|敬《うやま》われないことはない」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そして、そこでは|力《ちから》あるわざを一つもすることができず、ただ|少数《しょうすう》の|病人《びょうにん》に|手《て》をおいていやされただけであった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》らの|不《ふ》|信仰《しんこう》を|驚《おどろ》き|怪《あや》しまれた。  それからイエスは、|附近《ふきん》の|村々《むらむら》を|巡《めぐ》りあるいて|教《おし》えられた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]また十二|弟子《でし》を|呼《よ》び|寄《よ》せ、ふたりずつつかわすことにして、|彼《かれ》らにけがれた|霊《れい》を|制《せい》する|権威《けんい》を|与《あた》え、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]また|旅《たび》のために、つえ一|本《ぽん》のほかには|何《なに》も|持《も》たないように、パンも、|袋《ぶくろ》も、|帯《おび》の|中《なか》に|銭《ぜに》も|持《も》たず、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ただわらじをはくだけで、|下着《したぎ》も二|枚《まい》は|着《き》ないように|命《めい》じられた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》らに|言《い》われた、「どこへ|行《い》っても、|家《いえ》にはいったなら、その|土地《とち》を|去《さ》るまでは、そこにとどまっていなさい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがたを|迎《むか》えず、あなたがたの|話《はなし》を|聞《き》きもしない|所《ところ》があったなら、そこから|出《で》て|行《い》くとき、|彼《かれ》らに|対《たい》する|抗議《こうぎ》のしるしに、|足《あし》の|裏《うら》のちりを|払《はら》い|落《おと》しなさい」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|出《で》て|行《い》って、|悔改《くいあらた》めを|宣《の》べ|伝《つた》え、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|多《おお》くの|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》し、|大《おお》ぜいの|病人《びょうにん》に|油《あぶら》をぬっていやした。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスの|名《な》が|知《し》れわたって、ヘロデ|王《おう》の|耳《みみ》にはいった。ある|人々《ひとびと》は「バプテスマのヨハネが、|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえってきたのだ。それで、あのような|力《ちから》が|彼《かれ》のうちに|働《はたら》いているのだ」と|言《い》い、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|他《た》の|人々《ひとびと》は「|彼《かれ》はエリヤだ」と|言《い》い、また|他《た》の|人々《ひとびと》は「|昔《むかし》の|預言者《よげんしゃ》のような|預言者《よげんしゃ》だ」と|言《い》った。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ヘロデはこれを|聞《き》いて、「わたしが|首《くび》を|切《き》ったあのヨハネがよみがえったのだ」と|言《い》った。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]このヘロデは、|自分《じぶん》の|兄弟《きょうだい》ピリポの|妻《つま》ヘロデヤをめとったが、そのことで、|人《ひと》をつかわし、ヨハネを|捕《とら》えて|獄《ごく》につないだ。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]それは、ヨハネがヘロデに、「|兄弟《きょうだい》の|妻《つま》をめとるのは、よろしくない」と|言《い》ったからである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ヘロデヤはヨハネを|恨《うら》み、|彼《かれ》を|殺《ころ》そうと|思《おも》っていたが、できないでいた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]それはヘロデが、ヨハネは|正《ただ》しくて|聖《せい》なる|人《ひと》であることを|知《し》って、|彼《かれ》を|恐《おそ》れ、|彼《かれ》に|保護《ほご》を|加《くわ》え、またその|教《おしえ》を|聞《き》いて|非常《ひじょう》に|悩《なや》みながらも、なお|喜《よろこ》んで|聞《き》いていたからである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]ところが、よい|機会《きかい》がきた。ヘロデは|自分《じぶん》の|誕生《たんじょう》|日《ひ》の|祝《いわい》に、|高官《こうかん》や|将校《しょうこう》やガリラヤの|重立《おもだ》った|人《ひと》たちを|招《まね》いて|宴会《えんかい》を|催《もよお》したが、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこへ、このヘロデヤの|娘《むすめ》がはいってきて|舞《まい》をまい、ヘロデをはじめ|列座《れつざ》の|人《ひと》たちを|喜《よろこ》ばせた。そこで|王《おう》はこの|少女《しょうじょ》に「ほしいものはなんでも|言《い》いなさい。あなたにあげるから」と|言《い》い、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]さらに「ほしければ、この|国《くに》の|半分《はんぶん》でもあげよう」と|誓《ちか》って|言《い》った。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこで|少女《しょうじょ》は|座《ざ》をはずして、|母《はは》に「|何《なに》をお|願《ねが》いしましょうか」と|尋《たず》ねると、|母《はは》は「バプテスマのヨハネの|首《くび》を」と|答《こた》えた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]するとすぐ、|少女《しょうじょ》は|急《いそ》いで|王《おう》のところに|行《い》って|願《ねが》った、「|今《いま》すぐに、バプテスマのヨハネの|首《くび》を|盆《ぼん》にのせて、それをいただきとうございます」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|王《おう》は|非常《ひじょう》に|困《こま》ったが、いったん|誓《ちか》ったのと、また|列座《れつざ》の|人《ひと》たちの|手前《てまえ》、|少女《しょうじょ》の|願《ねが》いを|退《しりぞ》けることを|好《この》まなかった。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|王《おう》はすぐに|衛兵《えいへい》をつかわし、ヨハネの|首《くび》を|持《も》って|来《く》るように|命《めい》じた。|衛兵《えいへい》は|出《で》て|行《い》き、|獄中《ごくちゅう》でヨハネの|首《くび》を|切《き》り、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|盆《ぼん》にのせて|持《も》ってきて|少女《しょうじょ》に|与《あた》え、|少女《しょうじょ》はそれを|母《はは》にわたした。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネの|弟子《でし》たちはこのことを|聞《き》き、その|死体《したい》を|引《ひ》き|取《と》りにきて、|墓《はか》に|納《おさ》めた。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]さて、|使徒《しと》たちはイエスのもとに|集《あつ》まってきて、|自分《じぶん》たちがしたことや|教《おし》えたことを、みな|報告《ほうこく》した。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「さあ、あなたがたは、|人《ひと》を|避《さ》けて|寂《さび》しい|所《ところ》へ|行《い》って、しばらく|休《やす》むがよい」。それは、|出入《でい》りする|人《ひと》が|多《おお》くて、|食事《しょくじ》をする|暇《ひま》もなかったからである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは|人《ひと》を|避《さ》け、|舟《ふね》に|乗《の》って|寂《さび》しい|所《ところ》へ|行《い》った。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|多《おお》くの|人々《ひとびと》は|彼《かれ》らが|出《で》かけて|行《い》くのを|見《み》、それと|気《き》づいて、|方々《ほうぼう》の|町々《まちまち》からそこへ、一せいに|駆《か》けつけ、|彼《かれ》らより|先《さき》に|着《つ》いた。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|舟《ふね》から|上《あ》がって|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》をごらんになり、|飼《か》う|者《もの》のない|羊《ひつじ》のようなその|有様《ありさま》を|深《ふか》くあわれんで、いろいろと|教《おし》えはじめられた。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]ところが、はや|時《とき》もおそくなったので、|弟子《でし》たちはイエスのもとにきて|言《い》った、「ここは|寂《さび》しい|所《ところ》でもあり、もう|時《とき》もおそくなりました。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]みんなを|解散《かいさん》させ、めいめいで|何《なに》か|食《た》べる|物《もの》を|買《か》いに、まわりの|部落《ぶらく》や|村々《むらむら》へ|行《い》かせてください」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「あなたがたの|手《て》で|食物《しょくもつ》をやりなさい」。|弟子《でし》たちは|言《い》った、「わたしたちが二百デナリものパンを|買《か》ってきて、みんなに|食《た》べさせるのですか」。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|言《い》われた、「パンは|幾《いく》つあるか。|見《み》てきなさい」。|彼《かれ》らは|確《たし》かめてきて、「五つあります。それに|魚《うお》が二ひき」と|言《い》った。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは、みんなを|組々《くみぐみ》に|分《わ》けて、|青草《あおくさ》の|上《うえ》にすわらせるように|命《めい》じられた。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は、あるいは百|人《にん》ずつ、あるいは五十|人《にん》ずつ、|列《れつ》をつくってすわった。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスは五つのパンと二ひきの|魚《うお》とを|手《て》に|取《と》り、|天《てん》を|仰《あお》いでそれを|祝福《しゅくふく》し、パンをさき、|弟子《でし》たちにわたして|配《くば》らせ、また、二ひきの|魚《うお》もみんなにお|分《わ》けになった。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》は|食《た》べて|満腹《まんぷく》した。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、パンくずや|魚《うお》の|残《のこ》りを|集《あつ》めると、十二のかごにいっぱいになった。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]パンを|食《た》べた|者《もの》は|男《おとこ》五千|人《にん》であった。  [#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]それからすぐ、イエスは|自分《じぶん》で|群衆《ぐんしゅう》を|解散《かいさん》させておられる|間《あいだ》に、しいて|弟子《でし》たちを|舟《ふね》に|乗《の》り|込《こ》ませ、|向《む》こう|岸《ぎし》のベツサイダへ|先《さき》におやりになった。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]そして|群衆《ぐんしゅう》に|別《わか》れてから、|祈《いの》るために|山《やま》へ|退《しりぞ》かれた。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]|夕方《ゆうがた》になったとき、|舟《ふね》は|海《うみ》のまん|中《なか》に|出《で》ており、イエスだけが|陸地《りくち》におられた。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]ところが|逆風《ぎゃくふう》が|吹《ふ》いていたために、|弟子《でし》たちがこぎ|悩《なや》んでいるのをごらんになって、|夜明《よあ》けの四|時《じ》ごろ、|海《うみ》の|上《うえ》を|歩《ある》いて|彼《かれ》らに|近《ちか》づき、そのそばを|通《とお》り|過《す》ぎようとされた。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはイエスが|海《うみ》の|上《うえ》を|歩《ある》いておられるのを|見《み》て、|幽霊《ゆうれい》だと|思《おも》い、|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んだ。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》がそれを|見《み》て、おじ|恐《おそ》れたからである。しかし、イエスはすぐ|彼《かれ》らに|声《こえ》をかけ、「しっかりするのだ。わたしである。|恐《おそ》れることはない」と|言《い》われた。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》らの|舟《ふね》に|乗《の》り|込《こ》まれると、|風《かぜ》はやんだ。|彼《かれ》らは|心《こころ》の|中《なか》で、|非常《ひじょう》に|驚《おどろ》いた。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]|先《さき》のパンのことを|悟《さと》らず、その|心《こころ》が|鈍《にぶ》くなっていたからである。  [#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|海《うみ》を|渡《わた》り、ゲネサレの|地《ち》に|着《つ》いて|舟《ふね》をつないだ。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]そして|舟《ふね》からあがると、|人々《ひとびと》はすぐイエスと|知《し》って、[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]その|地方《ちほう》をあまねく|駆《か》けめぐり、イエスがおられると|聞《き》けば、どこへでも|病人《びょうにん》を|床《とこ》にのせて|運《はこ》びはじめた。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]そして、|村《むら》でも|町《まち》でも|部落《ぶらく》でも、イエスがはいって|行《い》かれる|所《ところ》では、|病人《びょうにん》たちをその|広場《ひろば》におき、せめてその|上着《うわぎ》のふさにでも、さわらせてやっていただきたいと、お|願《ねが》いした。そしてさわった|者《もの》は|皆《みな》いやされた。 第七章[#「第七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、パリサイ|人《びと》と、ある|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちとが、エルサレムからきて、イエスのもとに|集《あつ》まった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして|弟子《でし》たちのうちに、|不浄《ふじょう》な|手《て》、すなわち|洗《あら》わない|手《て》で、パンを|食《た》べている|者《もの》があるのを|見《み》た。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]もともと、パリサイ|人《びと》をはじめユダヤ|人《じん》はみな、|昔《むかし》の|人《ひと》の|言伝《いいつた》えをかたく|守《まも》って、|念入《ねんい》りに|手《て》を|洗《あら》ってからでないと、|食事《しょくじ》をしない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また|市場《いちば》から|帰《かえ》ったときには、|身《み》を|清《きよ》めてからでないと、|食事《しょくじ》をせず、なおそのほかにも、|杯《さかずき》、|鉢《はち》、|銅器《どうき》を|洗《あら》うことなど、|昔《むかし》から|受《う》けついでかたく|守《まも》っている|事《こと》が、たくさんあった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、パリサイ|人《びと》と|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちとは、イエスに|尋《たず》ねた、「なぜ、あなたの|弟子《でし》たちは、|昔《むかし》の|人《ひと》の|言伝《いいつた》えに|従《したが》って|歩《あゆ》まないで、|不浄《ふじょう》な|手《て》でパンを|食《た》べるのですか」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「イザヤは、あなたがた|偽善者《ぎぜんしゃ》について、こう|書《か》いているが、それは|適切《てきせつ》な|預言《よげん》である、 [#ここから2字下げ] 『この|民《たみ》は、|口《くち》さきではわたしを|敬《うやま》うが、 その|心《こころ》はわたしから|遠《とお》く|離《はな》れている。 [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|人間《にんげん》のいましめを|教《おしえ》として|教《おし》え、 |無意味《むいみ》にわたしを|拝《おが》んでいる』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|神《かみ》のいましめをさしおいて、|人間《にんげん》の|言伝《いいつた》えを|固執《こしつ》している」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]また、|言《い》われた、「あなたがたは、|自分《じぶん》たちの|言伝《いいつた》えを|守《まも》るために、よくも|神《かみ》のいましめを|捨《す》てたものだ。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]モーセは|言《い》ったではないか、『|父《ちち》と|母《はは》とを|敬《うやま》え』、また『|父《ちち》または|母《はは》をののしる|者《もの》は、|必《かなら》ず|死《し》に|定《さだ》められる』と。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]それだのに、あなたがたは、もし|人《ひと》が|父《ちち》または|母《はは》にむかって、あなたに|差上《さしあ》げるはずのこのものはコルバン、すなわち、|供《そな》え|物《もの》ですと|言《い》えば、それでよいとして、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]その|人《ひと》は|父母《ふぼ》に|対《たい》して、もう|何《なに》もしないで|済《す》むのだと|言《い》っている。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]こうしてあなたがたは、|自分《じぶん》たちが|受《う》けついだ|言伝《いいつた》えによって、|神《かみ》の|言《ことば》を|無《む》にしている。また、このような|事《こと》をしばしばおこなっている」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスは|再《ふたた》び|群衆《ぐんしゅう》を|呼《よ》び|寄《よ》せて|言《い》われた、「あなたがたはみんな、わたしの|言《い》うことを|聞《き》いて|悟《さと》るがよい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すべて|外《そと》から|人《ひと》の|中《なか》にはいって、|人《ひと》をけがしうるものはない。かえって、|人《ひと》の|中《なか》から|出《で》てくるものが、|人《ひと》をけがすのである。〔[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|聞《き》く|耳《みみ》のある|者《もの》は|聞《き》くがよい〕」。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|群衆《ぐんしゅう》を|離《はな》れて|家《いえ》にはいられると、|弟子《でし》たちはこの|譬《たとえ》について|尋《たず》ねた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]すると、|言《い》われた、「あなたがたも、そんなに|鈍《にぶ》いのか。すべて、|外《そと》から|人《ひと》の|中《なか》にはいって|来《く》るものは、|人《ひと》を|汚《けが》し|得《え》ないことが、わからないのか。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]それは|人《ひと》の|心《こころ》の|中《なか》にはいるのではなく、|腹《はら》の|中《うち》にはいり、そして、|外《そと》に|出《で》て|行《い》くだけである」。イエスはこのように、どんな|食物《しょくもつ》でもきよいものとされた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]さらに|言《い》われた、「|人《ひと》から|出《で》て|来《く》るもの、それが|人《ひと》をけがすのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]すなわち|内部《ないぶ》から、|人《ひと》の|心《こころ》の|中《なか》から、|悪《わる》い|思《おも》いが|出《で》て|来《く》る。|不品行《ふひんこう》、|盗《ぬす》み、|殺人《さつじん》、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|姦淫《かんいん》、|貪欲《どんよく》、|邪悪《じゃあく》、|欺《あざむ》き、|好色《こうしょく》、|妬《ねた》み、|誹《そし》り、|高慢《こうまん》、|愚痴《ぐち》。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]これらの|悪《あく》はすべて|内部《ないぶ》から|出《で》てきて、|人《ひと》をけがすのである」。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスは、そこを|立《た》ち|去《さ》って、ツロの|地方《ちほう》に|行《い》かれた。そして、だれにも|知《し》れないように、|家《いえ》の|中《なか》にはいられたが、|隠《かく》れていることができなかった。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そして、けがれた|霊《れい》につかれた|幼《おさな》い|娘《むすめ》をもつ|女《おんな》が、イエスのことをすぐ|聞《き》きつけてきて、その|足《あし》もとにひれ|伏《ふ》した。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》はギリシヤ|人《じん》で、スロ・フェニキヤの|生《うま》れであった。そして、|娘《むすめ》から|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》してくださいとお|願《ねが》いした。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|女《おんな》に|言《い》われた、「まず|子供《こども》たちに|十分《じゅうぶん》|食《た》べさすべきである。|子供《こども》たちのパンを|取《と》って|小犬《こいぬ》に|投《な》げてやるのは、よろしくない」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]すると、|女《おんな》は|答《こた》えて|言《い》った、「|主《しゅ》よ、お|言葉《ことば》どおりです。でも、|食卓《しょくたく》の|下《した》にいる|小犬《こいぬ》も、|子供《こども》たちのパンくずは、いただきます」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|言《い》われた、「その|言葉《ことば》で、じゅうぶんである。お|帰《かえ》りなさい。|悪霊《あくれい》は|娘《むすめ》から|出《で》てしまった」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|女《おんな》が|家《いえ》に|帰《かえ》ってみると、その|子《こ》は|床《とこ》の|上《うえ》に|寝《ね》ており、|悪霊《あくれい》は|出《で》てしまっていた。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスはまたツロの|地方《ちほう》を|去《さ》り、シドンを|経《へ》てデカポリス|地方《ちほう》を|通《とお》りぬけ、ガリラヤの|海《うみ》べにこられた。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]すると|人々《ひとびと》は、|耳《みみ》が|聞《きこ》えず|口《くち》のきけない|人《ひと》を、みもとに|連《つ》れてきて、|手《て》を|置《お》いてやっていただきたいとお|願《ねが》いした。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》ひとりを|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》から|連《つ》れ|出《だ》し、その|両《りょう》|耳《みみ》に|指《ゆび》をさし|入《い》れ、それから、つばきでその|舌《した》を|潤《うるお》し、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|天《てん》を|仰《あお》いでため|息《いき》をつき、その|人《ひと》に「エパタ」と|言《い》われた。これは「|開《ひら》けよ」という|意味《いみ》である。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》の|耳《みみ》が|開《ひら》け、その|舌《した》のもつれもすぐ|解《と》けて、はっきりと|話《はな》すようになった。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、この|事《こと》をだれにも|言《い》ってはならぬと、|人々《ひとびと》に|口止《くちど》めをされたが、|口止《くちど》めをすればするほど、かえって、ますます|言《い》いひろめた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、ひとかたならず|驚《おどろ》いて|言《い》った、「このかたのなさった|事《こと》は、|何《なに》もかも、すばらしい。|耳《みみ》の|聞《きこ》えない|者《もの》を|聞《きこ》えるようにしてやり、|口《くち》のきけない|者《もの》をきけるようにしておやりになった」。 第八章[#「第八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、また|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》が|集《あつ》まっていたが、|何《なに》も|食《た》べるものがなかったので、イエスは|弟子《でし》たちを|呼《よ》び|寄《よ》せて|言《い》われた、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「この|群衆《ぐんしゅう》がかわいそうである。もう三|日間《かかん》もわたしと|一緒《いっしょ》にいるのに、|何《なに》も|食《た》べるものがない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]もし、|彼《かれ》らを|空腹《くうふく》のまま|家《いえ》に|帰《かえ》らせるなら、|途中《とちゅう》で|弱《よわ》り|切《き》ってしまうであろう。それに、なかには|遠《とお》くからきている|者《もの》もある」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|答《こた》えた、「こんな|荒野《あらの》で、どこからパンを|手《て》に|入《い》れて、これらの|人々《ひとびと》にじゅうぶん|食《た》べさせることができましょうか」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|弟子《でし》たちに、「パンはいくつあるか」と|尋《たず》ねられると、「七つあります」と|答《こた》えた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|群衆《ぐんしゅう》に|地《ち》にすわるように|命《めい》じられた。そして七つのパンを|取《と》り、|感謝《かんしゃ》してこれをさき、|人々《ひとびと》に|配《くば》るように|弟子《でし》たちに|渡《わた》されると、|弟子《でし》たちはそれを|群衆《ぐんしゅう》に|配《くば》った。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]また|小《ちい》さい|魚《うお》が|少《すこ》しばかりあったので、|祝福《しゅくふく》して、それをも|人々《ひとびと》に|配《くば》るようにと|言《い》われた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|食《た》べて|満腹《まんぷく》した。そして|残《のこ》ったパンくずを|集《あつ》めると、七かごになった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》の|数《かず》はおよそ四千|人《にん》であった。それからイエスは|彼《かれ》らを|解散《かいさん》させ、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]すぐ|弟子《でし》たちと|共《とも》に|舟《ふね》に|乗《の》って、ダルマヌタの|地方《ちほう》へ|行《い》かれた。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》たちが|出《で》てきて、イエスを|試《こころ》みようとして|議論《ぎろん》をしかけ、|天《てん》からのしるしを|求《もと》めた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、|心《こころ》の|中《なか》で|深《ふか》く|嘆息《たんそく》して|言《い》われた、「なぜ、|今《いま》の|時代《じだい》はしるしを|求《もと》めるのだろう。よく|言《い》い|聞《き》かせておくが、しるしは|今《いま》の|時代《じだい》には|決《けっ》して|与《あた》えられない」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そして、イエスは|彼《かれ》らをあとに|残《のこ》し、また|舟《ふね》に|乗《の》って|向《む》こう|岸《ぎし》へ|行《い》かれた。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちはパンを|持《も》って|来《く》るのを|忘《わす》れていたので、|舟《ふね》の|中《なか》にはパン一つしか|持《も》ち|合《あ》わせがなかった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスは|彼《かれ》らを|戒《いまし》めて、「パリサイ|人《びと》のパン|種《だね》とヘロデのパン|種《だね》とを、よくよく|警戒《けいかい》せよ」と|言《い》われた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは、これは|自分《じぶん》たちがパンを|持《も》っていないためであろうと、|互《たがい》に|論《ろん》じ|合《あ》った。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスはそれと|知《し》って、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「なぜ、パンがないからだと|論《ろん》じ|合《あ》っているのか。まだわからないのか、|悟《さと》らないのか。あなたがたの|心《こころ》は|鈍《にぶ》くなっているのか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|目《め》があっても|見《み》えないのか。|耳《みみ》があっても|聞《きこ》えないのか。まだ|思《おも》い|出《だ》さないのか。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]五つのパンをさいて五千|人《にん》に|分《わ》けたとき、|拾《ひろ》い|集《あつ》めたパンくずは、|幾《いく》つのかごになったか」。|弟子《でし》たちは|答《こた》えた、「十二かごです」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]「七つのパンを四千|人《にん》に|分《わ》けたときには、パンくずを|幾《いく》つのかごに|拾《ひろ》い|集《あつ》めたか」。「七かごです」と|答《こた》えた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「まだ|悟《さと》らないのか」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そのうちに、|彼《かれ》らはベツサイダに|着《つ》いた。すると|人々《ひとびと》が、ひとりの|盲人《もうじん》を|連《つ》れてきて、さわってやっていただきたいとお|願《ねが》いした。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこの|盲人《もうじん》の|手《て》をとって、|村《むら》の|外《そと》に|連《つ》れ|出《だ》し、その|両方《りょうほう》の|目《め》につばきをつけ、|両手《りょうて》を|彼《かれ》に|当《あ》てて、「|何《なに》か|見《み》えるか」と|尋《たず》ねられた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》は|顔《かお》を|上《あ》げて|言《い》った、「|人《ひと》が|見《み》えます。|木《き》のように|見《み》えます。|歩《ある》いているようです」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスが|再《ふたた》び|目《め》の|上《うえ》に|両手《りょうて》を|当《あ》てられると、|盲人《もうじん》は|見《み》つめているうちに、なおってきて、すべてのものがはっきりと|見《み》えだした。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは、「|村《むら》にはいってはいけない」と|言《い》って、|彼《かれ》を|家《いえ》に|帰《かえ》された。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスは|弟子《でし》たちとピリポ・カイザリヤの|村々《むらむら》へ|出《で》かけられたが、その|途中《とちゅう》で、|弟子《でし》たちに|尋《たず》ねて|言《い》われた、「|人々《ひとびと》は、わたしをだれと|言《い》っているか」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|答《こた》えて|言《い》った、「バプテスマのヨハネだと、|言《い》っています。また、エリヤだと|言《い》い、また、|預言者《よげんしゃ》のひとりだと|言《い》っている|者《もの》もあります」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らに|尋《たず》ねられた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと|言《い》うか」。ペテロが|答《こた》えて|言《い》った、「あなたこそキリストです」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは、|自分《じぶん》のことをだれにも|言《い》ってはいけないと、|彼《かれ》らを|戒《いまし》められた。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]それから、|人《ひと》の|子《こ》は|必《かなら》ず|多《おお》くの|苦《くる》しみを|受《う》け、|長老《ちょうろう》、|祭司長《さいしちょう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちに|捨《す》てられ、また|殺《ころ》され、そして三|日《か》の|後《のち》によみがえるべきことを、|彼《かれ》らに|教《おし》えはじめ、[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]しかもあからさまに、この|事《こと》を|話《はな》された。すると、ペテロはイエスをわきへ|引《ひ》き|寄《よ》せて、いさめはじめたので、[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|振《ふ》り|返《かえ》って、|弟子《でし》たちを|見《み》ながら、ペテロをしかって|言《い》われた、「サタンよ、|引《ひ》きさがれ。あなたは|神《かみ》のことを|思《おも》わないで、|人《ひと》のことを|思《おも》っている」。  [#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]それから|群衆《ぐんしゅう》を|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》に|呼《よ》び|寄《よ》せて、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「だれでもわたしについてきたいと|思《おも》うなら、|自分《じぶん》を|捨《す》て、|自分《じぶん》の|十字架《じゅうじか》を|負《お》うて、わたしに|従《したが》ってきなさい。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|命《いのち》を|救《すく》おうと|思《おも》う|者《もの》はそれを|失《うしな》い、わたしのため、また|福音《ふくいん》のために、|自分《じぶん》の|命《いのち》を|失《うしな》う|者《もの》は、それを|救《すく》うであろう。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》が|全《ぜん》|世界《せかい》をもうけても、|自分《じぶん》の|命《いのち》を|損《そん》したら、なんの|得《とく》になろうか。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]また、|人《ひと》はどんな|代価《だいか》を|払《はら》って、その|命《いのち》を|買《か》いもどすことができようか。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|邪悪《じゃあく》で|罪深《つみぶか》いこの|時代《じだい》にあって、わたしとわたしの|言葉《ことば》とを|恥《は》じる|者《もの》に|対《たい》しては、|人《ひと》の|子《こ》もまた、|父《ちち》の|栄光《えいこう》のうちに|聖《せい》なる|御使《みつかい》たちと|共《とも》に|来《く》るときに、その|者《もの》を|恥《は》じるであろう」。 第九章[#「第九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]また、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「よく|聞《き》いておくがよい。|神《かみ》の|国《くに》が|力《ちから》をもって|来《く》るのを|見《み》るまでは、|決《けっ》して|死《し》を|味《あじ》わわない|者《もの》が、ここに|立《た》っている|者《もの》の|中《なか》にいる」。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|六日《むいか》の|後《のち》、イエスは、ただペテロ、ヤコブ、ヨハネだけを|連《つ》れて、|高《たか》い|山《やま》に|登《のぼ》られた。ところが、|彼《かれ》らの|目《め》の|前《まえ》でイエスの|姿《すがた》が|変《かわ》り、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]その|衣《ころも》は|真白《まっしろ》く|輝《かがや》き、どんな|布《ぬの》さらしでも、それほどに|白《しろ》くすることはできないくらいになった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すると、エリヤがモーセと|共《とも》に|彼《かれ》らに|現《あらわ》れて、イエスと|語《かた》り|合《あ》っていた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはイエスにむかって|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは|小屋《こや》を三つ|建《た》てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そう|言《い》ったのは、みんなの|者《もの》が|非常《ひじょう》に|恐《おそ》れていたので、ペテロは|何《なに》を|言《い》ってよいか、わからなかったからである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]すると、|雲《くも》がわき|起《おこ》って|彼《かれ》らをおおった。そして、その|雲《くも》の|中《なか》から|声《こえ》があった、「これはわたしの|愛《あい》する|子《こ》である。これに|聞《き》け」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|急《いそ》いで|見《み》まわしたが、もはやだれも|見《み》えず、ただイエスだけが、|自分《じぶん》たちと|一緒《いっしょ》におられた。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|一同《いちどう》が|山《やま》を|下《くだ》って|来《く》るとき、イエスは「|人《ひと》の|子《こ》が|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえるまでは、いま|見《み》たことをだれにも|話《はな》してはならない」と、|彼《かれ》らに|命《めい》じられた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはこの|言葉《ことば》を|心《こころ》にとめ、|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえるとはどういうことかと、|互《たがい》に|論《ろん》じ|合《あ》った。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そしてイエスに|尋《たず》ねた、「なぜ、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちは、エリヤが|先《さき》に|来《く》るはずだと|言《い》っているのですか」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「|確《たし》かに、エリヤが|先《さき》にきて、|万事《ばんじ》を|元《もと》どおりに|改《あらた》める。しかし、|人《ひと》の|子《こ》について、|彼《かれ》が|多《おお》くの|苦《くる》しみを|受《う》け、かつ|恥《は》ずかしめられると、|書《か》いてあるのはなぜか。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しかしあなたがたに|言《い》っておく、エリヤはすでにきたのだ。そして|彼《かれ》について|書《か》いてあるように、|人々《ひとびと》は|自分《じぶん》かってに|彼《かれ》をあしらった」。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]さて、|彼《かれ》らがほかの|弟子《でし》たちの|所《ところ》にきて|見《み》ると、|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》が|弟子《でし》たちを|取《と》り|囲《かこ》み、そして|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちが|彼《かれ》らと|論《ろん》じ|合《あ》っていた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》はみな、すぐイエスを|見《み》つけて、|非常《ひじょう》に|驚《おどろ》き、|駆《か》け|寄《よ》ってきて、あいさつをした。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|彼《かれ》らに、「あなたがたは|彼《かれ》らと|何《なに》を|論《ろん》じているのか」と|尋《たず》ねられると、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》のひとりが|答《こた》えた、「|先生《せんせい》、おしの|霊《れい》につかれているわたしのむすこを、こちらに|連《つ》れて|参《まい》りました。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|霊《れい》がこのむすこにとりつきますと、どこででも|彼《かれ》を|引《ひ》き|倒《たお》し、それから|彼《かれ》はあわを|吹《ふ》き、|歯《は》をくいしばり、からだをこわばらせてしまいます。それでお|弟子《でし》たちに、この|霊《れい》を|追《お》い|出《だ》してくださるように|願《ねが》いましたが、できませんでした」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「ああ、なんという|不《ふ》|信仰《しんこう》な|時代《じだい》であろう。いつまで、わたしはあなたがたと|一緒《いっしょ》におられようか。いつまで、あなたがたに|我慢《がまん》ができようか。その|子《こ》をわたしの|所《ところ》に|連《つ》れてきなさい」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|人々《ひとびと》は、その|子《こ》をみもとに|連《つ》れてきた。|霊《れい》がイエスを|見《み》るや|否《いな》や、その|子《こ》をひきつけさせたので、|子《こ》は|地《ち》に|倒《たお》れ、あわを|吹《ふ》きながらころげまわった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスが|父親《ちちおや》に「いつごろから、こんなになったのか」と|尋《たず》ねられると、|父親《ちちおや》は|答《こた》えた、「|幼《おさな》い|時《とき》からです。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|霊《れい》はたびたび、この|子《こ》を|火《ひ》の|中《なか》、|水《みず》の|中《なか》に|投《な》げ|入《い》れて、|殺《ころ》そうとしました。しかしできますれば、わたしどもをあわれんでお|助《たす》けください」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「もしできれば、と|言《い》うのか。|信《しん》ずる|者《もの》には、どんな|事《こと》でもできる」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]その|子《こ》の|父親《ちちおや》はすぐ|叫《さけ》んで|言《い》った、「|信《しん》じます。|不《ふ》|信仰《しんこう》なわたしを、お|助《たす》けください」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|群衆《ぐんしゅう》が|駆《か》け|寄《よ》って|来《く》るのをごらんになって、けがれた|霊《れい》をしかって|言《い》われた、「おしとつんぼの|霊《れい》よ、わたしがおまえに|命《めい》じる。この|子《こ》から|出《で》て|行《い》け。二|度《ど》と、はいって|来《く》るな」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]すると|霊《れい》は|叫《さけ》び|声《ごえ》をあげ、|激《はげ》しく|引《ひ》きつけさせて|出《で》て|行《い》った。その|子《こ》は|死人《しにん》のようになったので、|多《おお》くの|人《ひと》は、|死《し》んだのだと|言《い》った。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスが|手《て》を|取《と》って|起《おこ》されると、その|子《こ》は|立《た》ち|上《あ》がった。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|家《いえ》にはいられたとき、|弟子《でし》たちはひそかにお|尋《たず》ねした、「わたしたちは、どうして|霊《れい》を|追《お》い|出《だ》せなかったのですか」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスは|言《い》われた、「このたぐいは、|祈《いのり》によらなければ、どうしても|追《お》い|出《だ》すことはできない」。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》らはそこを|立《た》ち|去《さ》り、ガリラヤをとおって|行《い》ったが、イエスは|人《ひと》に|気《き》づかれるのを|好《この》まれなかった。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]それは、イエスが|弟子《でし》たちに|教《おし》えて、「|人《ひと》の|子《こ》は|人々《ひとびと》の|手《て》にわたされ、|彼《かれ》らに|殺《ころ》され、|殺《ころ》されてから三|日《か》の|後《のち》によみがえるであろう」と|言《い》っておられたからである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らはイエスの|言《い》われたことを|悟《さと》らず、また|尋《たず》ねるのを|恐《おそ》れていた。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》らはカペナウムにきた。そして|家《いえ》におられるとき、イエスは|弟子《でし》たちに|尋《たず》ねられた、「あなたがたは|途中《とちゅう》で|何《なに》を|論《ろん》じていたのか」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|黙《だま》っていた。それは|途中《とちゅう》で、だれが一ばん|偉《えら》いかと、|互《たがい》に|論《ろん》じ|合《あ》っていたからである。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスはすわって十二|弟子《でし》を|呼《よ》び、そして|言《い》われた、「だれでも一ばん|先《さき》になろうと|思《おも》うならば、一ばんあとになり、みんなに|仕《つか》える|者《もの》とならねばならない」。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]そして、ひとりの|幼《おさ》な|子《ご》をとりあげて、|彼《かれ》らのまん|中《なか》に|立《た》たせ、それを|抱《だ》いて|言《い》われた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]「だれでも、このような|幼《おさ》な|子《ご》のひとりを、わたしの|名《な》のゆえに|受《う》けいれる|者《もの》は、わたしを|受《う》けいれるのである。そして、わたしを|受《う》けいれる|者《もの》は、わたしを|受《う》けいれるのではなく、わたしをおつかわしになったかたを|受《う》けいれるのである」。  [#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネがイエスに|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちについてこない|者《もの》が、あなたの|名《な》を|使《つか》って|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》しているのを|見《み》ましたが、その|人《ひと》はわたしたちについてこなかったので、やめさせました」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「やめさせないがよい。だれでもわたしの|名《な》で|力《ちから》あるわざを|行《おこな》いながら、すぐそのあとで、わたしをそしることはできない。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちに|反対《はんたい》しない|者《もの》は、わたしたちの|味方《みかた》である。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]だれでも、キリストについている|者《もの》だというので、あなたがたに|水《みず》|一杯《いっぱい》でも|飲《の》ませてくれるものは、よく|言《い》っておくが、|決《けっ》してその|報《むく》いからもれることはないであろう。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしを|信《しん》じるこれらの|小《ちい》さい|者《もの》のひとりをつまずかせる|者《もの》は、|大《おお》きなひきうすを|首《くび》にかけられて|海《うみ》に|投《な》げ|込《こ》まれた|方《ほう》が、はるかによい。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]もし、あなたの|片手《かたて》が|罪《つみ》を|犯《おか》させるなら、それを|切《き》り|捨《す》てなさい。|両手《りょうて》がそろったままで|地獄《じごく》の|消《き》えない|火《ひ》の|中《なか》に|落《お》ち|込《こ》むよりは、かたわになって|命《いのち》に|入《はい》る|方《ほう》がよい。〔[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]|地獄《じごく》では、うじがつきず、|火《ひ》も|消《き》えることがない。〕[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]もし、あなたの|片足《かたあし》が|罪《つみ》を|犯《おか》させるなら、それを|切《き》り|捨《す》てなさい。|両足《りょうあし》がそろったままで|地獄《じごく》に|投《な》げ|入《い》れられるよりは、|片足《かたあし》で|命《いのち》に|入《はい》る|方《ほう》がよい。〔[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|地獄《じごく》では、うじがつきず、|火《ひ》も|消《き》えることがない。〕[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]もし、あなたの|片目《かため》が|罪《つみ》を|犯《おか》させるなら、それを|抜《ぬ》き|出《だ》しなさい。|両《りょう》|眼《がん》がそろったままで|地獄《じごく》に|投《な》げ|入《い》れられるよりは、|片目《かため》になって|神《かみ》の|国《くに》に|入《はい》る|方《ほう》がよい。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]|地獄《じごく》では、うじがつきず、|火《ひ》も|消《き》えることがない。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》はすべて|火《ひ》で|塩《しお》づけられねばならない。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]|塩《しお》はよいものである。しかし、もしその|塩《しお》の|味《あじ》がぬけたら、|何《なに》によってその|味《あじ》が|取《と》りもどされようか。あなたがた|自身《じしん》の|内《うち》に|塩《しお》を|持《も》ちなさい。そして、|互《たがい》に|和《やわ》らぎなさい」。 第一〇章[#「第一〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスはそこを|去《さ》って、ユダヤの|地方《ちほう》とヨルダンの|向《む》こう|側《がわ》へ|行《い》かれたが、|群衆《ぐんしゅう》がまた|寄《よ》り|集《あつ》まったので、いつものように、また|教《おし》えておられた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、パリサイ|人《びと》たちが|近《ちか》づいてきて、イエスを|試《こころ》みようとして|質問《しつもん》した、「|夫《おっと》はその|妻《つま》を|出《だ》しても|差《さ》しつかえないでしょうか」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「モーセはあなたがたになんと|命《めい》じたか」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|言《い》った、「モーセは、|離縁《りえん》|状《じょう》を|書《か》いて|妻《つま》を|出《だ》すことを|許《ゆる》しました」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|言《い》われた、「モーセはあなたがたの|心《こころ》が、かたくななので、あなたがたのためにこの|定《さだ》めを|書《か》いたのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|天地《てんち》|創造《そうぞう》の|初《はじ》めから、『|神《かみ》は|人《ひと》を|男《おとこ》と|女《おんな》とに|造《つく》られた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それゆえに、|人《ひと》はその|父母《ふぼ》を|離《はな》れ、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ふたりの|者《もの》は|一体《いったい》となるべきである』。|彼《かれ》らはもはや、ふたりではなく|一体《いったい》である。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]だから、|神《かみ》が|合《あ》わせられたものを、|人《ひと》は|離《はな》してはならない」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|家《いえ》にはいってから、|弟子《でし》たちはまたこのことについて|尋《たず》ねた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|言《い》われた、「だれでも、|自分《じぶん》の|妻《つま》を|出《だ》して|他《た》の|女《おんな》をめとる|者《もの》は、その|妻《つま》に|対《たい》して|姦淫《かんいん》を|行《おこな》うのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]また|妻《つま》が、その|夫《おっと》と|別《わか》れて|他《た》の|男《おとこ》にとつぐならば、|姦淫《かんいん》を|行《おこな》うのである」。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスにさわっていただくために、|人々《ひとびと》が|幼《おさ》な|子《ご》らをみもとに|連《つ》れてきた。ところが、|弟子《でし》たちは|彼《かれ》らをたしなめた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]それを|見《み》てイエスは|憤《いきどお》り、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|幼《おさ》な|子《ご》らをわたしの|所《ところ》に|来《く》るままにしておきなさい。|止《と》めてはならない。|神《かみ》の|国《くに》はこのような|者《もの》の|国《くに》である。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》いておくがよい。だれでも|幼《おさ》な|子《ご》のように|神《かみ》の|国《くに》を|受《う》けいれる|者《もの》でなければ、そこにはいることは|決《けっ》してできない」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》らを|抱《いだ》き、|手《て》をその|上《うえ》において|祝福《しゅくふく》された。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|道《みち》に|出《で》て|行《い》かれると、ひとりの|人《ひと》が|走《はし》り|寄《よ》り、みまえにひざまずいて|尋《たず》ねた、「よき|師《し》よ、|永遠《えいえん》の|生命《せいめい》を|受《う》けるために、|何《なに》をしたらよいでしょうか」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「なぜわたしをよき|者《もの》と|言《い》うのか。|神《かみ》ひとりのほかによい|者《もの》はいない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]いましめはあなたの|知《し》っているとおりである。『|殺《ころ》すな、|姦淫《かんいん》するな、|盗《ぬす》むな、|偽証《ぎしょう》を|立《た》てるな。|欺《あざむ》き|取《と》るな。|父《ちち》と|母《はは》とを|敬《うやま》え』」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》は|言《い》った、「|先生《せんせい》、それらの|事《こと》はみな、|小《ちい》さい|時《とき》から|守《まも》っております」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|目《め》をとめ、いつくしんで|言《い》われた、「あなたに|足《た》りないことが一つある。|帰《かえ》って、|持《も》っているものをみな|売《う》り|払《はら》って、|貧《まず》しい|人々《ひとびと》に|施《ほどこ》しなさい。そうすれば、|天《てん》に|宝《たから》を|持《も》つようになろう。そして、わたしに|従《したが》ってきなさい」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》はこの|言葉《ことば》を|聞《き》いて、|顔《かお》を|曇《くも》らせ、|悲《かな》しみながら|立《た》ち|去《さ》った。たくさんの|資産《しさん》を|持《も》っていたからである。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスは|見《み》まわして、|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「|財産《ざいさん》のある|者《もの》が|神《かみ》の|国《くに》にはいるのは、なんとむずかしいことであろう」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちはこの|言葉《ことば》に|驚《おどろ》き|怪《あや》しんだ。イエスは|更《さら》に|言《い》われた、「|子《こ》たちよ、|神《かみ》の|国《くに》にはいるのは、なんとむずかしいことであろう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|富《と》んでいる|者《もの》が|神《かみ》の|国《くに》にはいるよりは、らくだが|針《はり》の|穴《あな》を|通《とお》る|方《ほう》が、もっとやさしい」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》らはますます|驚《おどろ》いて、|互《たがい》に|言《い》った、「それでは、だれが|救《すく》われることができるのだろう」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らを|見《み》つめて|言《い》われた、「|人《ひと》にはできないが、|神《かみ》にはできる。|神《かみ》はなんでもできるからである」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]ペテロがイエスに|言《い》い|出《だ》した、「ごらんなさい、わたしたちはいっさいを|捨《す》てて、あなたに|従《したが》って|参《まい》りました」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「よく|聞《き》いておくがよい。だれでもわたしのために、また|福音《ふくいん》のために、|家《いえ》、|兄弟《きょうだい》、|姉妹《しまい》、|母《はは》、|父《ちち》、|子《こ》、もしくは|畑《はたけ》を|捨《す》てた|者《もの》は、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|必《かなら》ずその百|倍《ばい》を|受《う》ける。すなわち、|今《いま》この|時代《じだい》では|家《いえ》、|兄弟《きょうだい》、|姉妹《しまい》、|母《はは》、|子《こ》および|畑《はたけ》を|迫害《はくがい》と|共《とも》に|受《う》け、また、きたるべき|世《よ》では|永遠《えいえん》の|生命《せいめい》を|受《う》ける。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|多《おお》くの|先《さき》の|者《もの》はあとになり、あとの|者《もの》は|先《さき》になるであろう」。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]さて、|一同《いちどう》はエルサレムへ|上《のぼ》る|途上《とじょう》にあったが、イエスが|先頭《せんとう》に|立《た》って|行《い》かれたので、|彼《かれ》らは|驚《おどろ》き|怪《あや》しみ、|従《したが》う|者《もの》たちは|恐《おそ》れた。するとイエスはまた十二|弟子《でし》を|呼《よ》び|寄《よ》せて、|自分《じぶん》の|身《み》に|起《おこ》ろうとすることについて|語《かた》りはじめられた、[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]「|見《み》よ、わたしたちはエルサレムへ|上《のぼ》って|行《い》くが、|人《ひと》の|子《こ》は|祭司長《さいしちょう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちの|手《て》に|引《ひ》きわたされる。そして|彼《かれ》らは|死刑《しけい》を|宣告《せんこく》した|上《うえ》、|彼《かれ》を|異邦人《いほうじん》に|引《ひ》きわたすであろう。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]また|彼《かれ》をあざけり、つばきをかけ、むち|打《う》ち、ついに|殺《ころ》してしまう。そして|彼《かれ》は三|日《か》の|後《のち》によみがえるであろう」。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]さて、ゼベダイの|子《こ》のヤコブとヨハネとがイエスのもとにきて|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちがお|頼《たの》みすることは、なんでもかなえてくださるようにお|願《ねが》いします」。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに「|何《なに》をしてほしいと、|願《ねが》うのか」と|言《い》われた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》らは|言《い》った、「|栄光《えいこう》をお|受《う》けになるとき、ひとりをあなたの|右《みぎ》に、ひとりを|左《ひだり》にすわるようにしてください」。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「あなたがたは|自分《じぶん》が|何《なに》を|求《もと》めているのか、わかっていない。あなたがたは、わたしが|飲《の》む|杯《さかずき》を|飲《の》み、わたしが|受《う》けるバプテスマを|受《う》けることができるか」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは「できます」と|答《こた》えた。するとイエスは|言《い》われた、「あなたがたは、わたしが|飲《の》む|杯《さかずき》を|飲《の》み、わたしが|受《う》けるバプテスマを|受《う》けるであろう。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしの|右《みぎ》、|左《ひだり》にすわらせることは、わたしのすることではなく、ただ|備《そな》えられている|人々《ひとびと》だけに|許《ゆる》されることである」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]十|人《にん》の|者《もの》はこれを|聞《き》いて、ヤコブとヨハネとのことで|憤慨《ふんがい》し|出《だ》した。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》らを|呼《よ》び|寄《よ》せて|言《い》われた、「あなたがたの|知《し》っているとおり、|異邦人《いほうじん》の|支配者《しはいしゃ》と|見《み》られている|人々《ひとびと》は、その|民《たみ》を|治め《おさめ》、また|偉《えら》い|人《ひと》たちは、その|民《たみ》の|上《うえ》に|権力《けんりょく》をふるっている。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたの|間《あいだ》では、そうであってはならない。かえって、あなたがたの|間《あいだ》で|偉《えら》くなりたいと|思《おも》う|者《もの》は、|仕《つか》える|人《ひと》となり、[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|間《あいだ》でかしらになりたいと|思《おも》う|者《もの》は、すべての|人《ひと》の|僕《しもべ》とならねばならない。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》がきたのも、|仕《つか》えられるためではなく、|仕《つか》えるためであり、また|多《おお》くの|人《ひと》のあがないとして、|自分《じぶん》の|命《いのち》を|与《あた》えるためである」。  [#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》らはエリコにきた。そして、イエスが|弟子《でし》たちや|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》と|共《とも》にエリコから|出《で》かけられたとき、テマイの|子《こ》、バルテマイという|盲人《もうじん》のこじきが、|道《みち》ばたにすわっていた。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ナザレのイエスだと|聞《き》いて、|彼《かれ》は「ダビデの|子《こ》イエスよ、わたしをあわれんでください」と|叫《さけ》び|出《だ》した。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]|多《おお》くの|人々《ひとびと》は|彼《かれ》をしかって|黙《だま》らせようとしたが、|彼《かれ》はますます|激《はげ》しく|叫《さけ》びつづけた、「ダビデの|子《こ》イエスよ、わたしをあわれんでください」。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|立《た》ちどまって「|彼《かれ》を|呼《よ》べ」と|命《めい》じられた。そこで、|人々《ひとびと》はその|盲人《もうじん》を|呼《よ》んで|言《い》った、「|喜《よろこ》べ、|立《た》て、おまえを|呼《よ》んでおられる」。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》は|上着《うわぎ》を|脱《ぬ》ぎ|捨《す》て、|踊《おど》りあがってイエスのもとにきた。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》にむかって|言《い》われた、「わたしに|何《なに》をしてほしいのか」。その|盲人《もうじん》は|言《い》った、「|先生《せんせい》、|見《み》えるようになることです」。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|言《い》われた、「|行《い》け、あなたの|信仰《しんこう》があなたを|救《すく》った」。すると|彼《かれ》は、たちまち|見《み》えるようになり、イエスに|従《したが》って|行《い》った。 第一一章[#「第一一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|彼《かれ》らがエルサレムに|近《ちか》づき、オリブの|山《やま》に|沿《そ》ったベテパゲ、ベタニヤの|附近《ふきん》にきた|時《とき》、イエスはふたりの|弟子《でし》をつかわして|言《い》われた、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「むこうの|村《むら》へ|行《い》きなさい。そこにはいるとすぐ、まだだれも|乗《の》ったことのないろばの|子《こ》が、つないであるのを|見《み》るであろう。それを|解《と》いて|引《ひ》いてきなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]もし、だれかがあなたがたに、なぜそんな|事《こと》をするのかと|言《い》ったなら、|主《しゅ》がお|入《い》り|用《よう》なのです。またすぐ、ここへ|返《かえ》してくださいますと、|言《い》いなさい」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|出《で》かけて|行《い》き、そして|表通《おもてどお》りの|戸口《とぐち》に、ろばの|子《こ》がつないであるのを|見《み》たので、それを|解《と》いた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]すると、そこに|立《た》っていた|人々《ひとびと》が|言《い》った、「そのろばの|子《こ》を|解《と》いて、どうするのか」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは、イエスが|言《い》われたとおり|彼《かれ》らに|話《はな》したので、ゆるしてくれた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|弟子《でし》たちは、そのろばの|子《こ》をイエスのところに|引《ひ》いてきて、|自分《じぶん》たちの|上着《うわぎ》をそれに|投《な》げかけると、イエスはその|上《うえ》にお|乗《の》りになった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すると|多《おお》くの|人々《ひとびと》は|自分《じぶん》たちの|上着《うわぎ》を|道《みち》に|敷《し》き、また|他《た》の|人々《ひとびと》は|葉《は》のついた|枝《えだ》を|野原《のはら》から|切《き》ってきて|敷《し》いた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そして、|前《まえ》に|行《ゆ》く|者《もの》も、あとに|従《したが》う|者《もの》も|共《とも》に|叫《さけ》びつづけた、 [#ここから2字下げ] 「ホサナ、 |主《しゅ》の|御名《みな》によってきたる|者《もの》に、|祝福《しゅくふく》あれ。 [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》きたる、われらの|父《ちち》ダビデの|国《くに》に、|祝福《しゅくふく》あれ。 いと|高《たか》き|所《ところ》に、ホサナ」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]こうしてイエスはエルサレムに|着《つ》き、|宮《みや》にはいられた。そして、すべてのものを|見《み》まわった|後《のち》、もはや|時《とき》もおそくなっていたので、十二|弟子《でし》と|共《とも》にベタニヤに|出《で》て|行《い》かれた。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|翌日《よくじつ》、|彼《かれ》らがベタニヤから|出《で》かけてきたとき、イエスは|空腹《くうふく》をおぼえられた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そして、|葉《は》の|茂《しげ》ったいちじくの|木《き》を|遠《とお》くからごらんになって、その|木《き》に|何《なに》かありはしないかと|近寄《ちかよ》られたが、|葉《は》のほかは|何《なに》も|見当《みあた》らなかった。いちじくの|季節《きせつ》でなかったからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスはその|木《き》にむかって、「|今《いま》から|後《のち》いつまでも、おまえの|実《み》を|食《た》べる|者《もの》がないように」と|言《い》われた。|弟子《でし》たちはこれを|聞《き》いていた。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》らはエルサレムにきた。イエスは|宮《みや》に|入《はい》り、|宮《みや》の|庭《にわ》で|売《う》り|買《か》いしていた|人々《ひとびと》を|追《お》い|出《だ》しはじめ、|両替人《りょうがえにん》の|台《だい》や、はとを|売《う》る|者《もの》の|腰掛《こしかけ》をくつがえし、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]また|器《うつわ》ものを|持《も》って|宮《みや》の|庭《にわ》を|通《とお》り|抜《ぬ》けるのをお|許《ゆる》しにならなかった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》らに|教《おし》えて|言《い》われた、「『わたしの|家《いえ》は、すべての|国民《こくみん》の|祈《いのり》の|家《いえ》ととなえらるべきである』と|書《か》いてあるではないか。それだのに、あなたがたはそれを|強盗《ごうとう》の|巣《す》にしてしまった」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちはこれを|聞《き》いて、どうかしてイエスを|殺《ころ》そうと|計《はか》った。|彼《かれ》らは、|群衆《ぐんしゅう》がみなその|教《おしえ》に|感動《かんどう》していたので、イエスを|恐《おそ》れていたからである。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|夕方《ゆうがた》になると、イエスと|弟子《でし》たちとは、いつものように|都《みやこ》の|外《そと》に|出《で》て|行《い》った。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|朝《あさ》はやく|道《みち》をとおっていると、|彼《かれ》らは|先《さき》のいちじくが|根元《ねもと》から|枯《か》れているのを|見《み》た。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ペテロは|思《おも》い|出《だ》してイエスに|言《い》った、「|先生《せんせい》、ごらんなさい。あなたがのろわれたいちじくが、|枯《か》れています」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「|神《かみ》を|信《しん》じなさい。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》いておくがよい。だれでもこの|山《やま》に、|動《うご》き|出《だ》して、|海《うみ》の|中《なか》にはいれと|言《い》い、その|言《い》ったことは|必《かなら》ず|成《な》ると、|心《こころ》に|疑《うたが》わないで|信《しん》じるなら、そのとおりに|成《な》るであろう。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたがたに|言《い》うが、なんでも|祈《いの》り|求《もと》めることは、すでにかなえられたと|信《しん》じなさい。そうすれば、そのとおりになるであろう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]また|立《た》って|祈《いの》るとき、だれかに|対《たい》して、|何《なに》か|恨《うら》み|事《こと》があるならば、ゆるしてやりなさい。そうすれば、|天《てん》にいますあなたがたの|父《ちち》も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださるであろう。〔[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]もしゆるさないならば、|天《てん》にいますあなたがたの|父《ちち》も、あなたがたのあやまちを、ゆるしてくださらないであろう〕」。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはまたエルサレムにきた。そして、イエスが|宮《みや》の|内《うち》を|歩《ある》いておられると、|祭司長《さいしちょう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、|長老《ちょうろう》たちが、みもとにきて|言《い》った、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]「|何《なに》の|権威《けんい》によってこれらの|事《こと》をするのですか。だれが、そうする|権威《けんい》を|授《さづ》けたのですか」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「一つだけ|尋《たず》ねよう。それに|答《こた》えてほしい。そうしたら、|何《なに》の|権威《けんい》によって、わたしがこれらの|事《こと》をするのか、あなたがたに|言《い》おう。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネのバプテスマは|天《てん》からであったか、|人《ひと》からであったか、|答《こた》えなさい」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》らは|互《たがい》に|論《ろん》じて|言《い》った、「もし|天《てん》からだと|言《い》えば、では、なぜ|彼《かれ》を|信《しん》じなかったのか、とイエスは|言《い》うだろう。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|人《ひと》からだと|言《い》えば……」。|彼《かれ》らは|群衆《ぐんしゅう》を|恐《おそ》れていた。|人々《ひとびと》が|皆《みな》、ヨハネを|預言者《よげんしゃ》だとほんとうに|思《おも》っていたからである。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]それで|彼《かれ》らは「わたしたちにはわかりません」と|答《こた》えた。するとイエスは|言《い》われた、「わたしも|何《なに》の|権威《けんい》によってこれらの|事《こと》をするのか、あなたがたに|言《い》うまい」。 第一二章[#「第一二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|譬《たとえ》で|彼《かれ》らに|語《かた》り|出《だ》された、「ある|人《ひと》がぶどう|園《えん》を|造《つく》り、|垣《かき》をめぐらし、また|酒《さか》ぶねの|穴《あな》を|掘《ほ》り、やぐらを|立《た》て、それを|農夫《のうふ》たちに|貸《か》して、|旅《たび》に|出《で》かけた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|季節《きせつ》になったので、|農夫《のうふ》たちのところへ、ひとりの|僕《しもべ》を|送《おく》って、ぶどう|園《えん》の|収穫《しゅうかく》の|分《わ》け|前《まえ》を|取《と》り|立《た》てさせようとした。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》らはその|僕《しもべ》をつかまえて、|袋《ふくろ》だたきにし、から|手《て》で|帰《かえ》らせた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また|他《た》の|僕《しもべ》を|送《おく》ったが、その|頭《あたま》をなぐって|侮辱《ぶじょく》した。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこでまた|他《た》の|者《もの》を|送《おく》ったが、|今度《こんど》はそれを|殺《ころ》してしまった。そのほか、なお|大《おお》ぜいの|者《もの》を|送《おく》ったが、|彼《かれ》らを|打《う》ったり、|殺《ころ》したりした。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ここに、もうひとりの|者《もの》がいた。それは|彼《かれ》の|愛子《あいし》であった。|自分《じぶん》の|子《こ》は|敬《うやま》ってくれるだろうと|思《おも》って、|最後《さいご》に|彼《かれ》をつかわした。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]すると、|農夫《のうふ》たちは『あれはあと|取《と》りだ。さあ、これを|殺《ころ》してしまおう。そうしたら、その|財産《ざいさん》はわれわれのものになるのだ』と|話《はな》し|合《あ》い、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》をつかまえて|殺《ころ》し、ぶどう|園《えん》の|外《そと》に|投《な》げ|捨《す》てた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]このぶどう|園《えん》の|主人《しゅじん》は、どうするだろうか。|彼《かれ》は|出《で》てきて、|農夫《のうふ》たちを|殺《ころ》し、ぶどう|園《えん》を|他《た》の|人々《ひとびと》に|与《あた》えるであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、この|聖書《せいしょ》の|句《く》を|読《よ》んだことがないのか。 [#ここから2字下げ] 『|家《いえ》|造《つく》りらの|捨《す》てた|石《いし》が |隅《すみ》のかしら|石《いし》になった。 [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]これは|主《しゅ》がなされたことで、 わたしたちの|目《め》には|不思議《ふしぎ》に|見《み》える』」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはいまの|譬《たとえ》が、|自分《じぶん》たちに|当《あ》てて|語《かた》られたことを|悟《さと》ったので、イエスを|捕《とら》えようとしたが、|群衆《ぐんしゅう》を|恐《おそ》れた。そしてイエスをそこに|残《のこ》して|立《た》ち|去《さ》った。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]さて、|人々《ひとびと》はパリサイ|人《びと》やヘロデ|党《とう》の|者《もの》を|数人《すうにん》、イエスのもとにつかわして、その|言葉《ことば》じりを|捕《とら》えようとした。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはきてイエスに|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちはあなたが|真実《しんじつ》なかたで、だれをも、はばかられないことを|知《し》っています。あなたは|人《ひと》に|分《わ》け|隔《へだ》てをなさらないで、|真理《しんり》に|基《もとづ》いて|神《かみ》の|道《みち》を|教《おし》えてくださいます。ところで、カイザルに|税金《ぜいきん》を|納《おさ》めてよいでしょうか、いけないでしょうか。|納《おさ》めるべきでしょうか、|納《おさ》めてはならないのでしょうか」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らの|偽善《ぎぜん》を|見抜《みぬ》いて|言《い》われた、「なぜわたしをためそうとするのか。デナリを|持《も》ってきて|見《み》せなさい」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはそれを|持《も》ってきた。そこでイエスは|言《い》われた、「これは、だれの|肖像《しょうぞう》、だれの|記号《きごう》か」。|彼《かれ》らは「カイザルのです」と|答《こた》えた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|言《い》われた、「カイザルのものはカイザルに、|神《かみ》のものは|神《かみ》に|返《かえ》しなさい」。|彼《かれ》らはイエスに|驚嘆《きょうたん》した。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|復活《ふっかつ》ということはないと|主張《しゅちょう》していたサドカイ|人《びと》たちが、イエスのもとにきて|質問《しつもん》した、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]「|先生《せんせい》、モーセは、わたしたちのためにこう|書《か》いています、『もし、ある|人《ひと》の|兄《あに》が|死《し》んで、その|残《のこ》された|妻《つま》に、|子《こ》がない|場合《ばあい》には、|弟《おとうと》はこの|女《おんな》をめとって、|兄《あに》のために|子《こ》をもうけねばならない』。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ここに、七|人《にん》の|兄弟《きょうだい》がいました。|長男《ちょうなん》は|妻《つま》をめとりましたが、|子《こ》がなくて|死《し》に、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|次男《じなん》がその|女《おんな》をめとって、また|子《こ》をもうけずに|死《し》に、|三男《さんなん》も|同様《どうよう》でした。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]こうして、七|人《にん》ともみな|子孫《しそん》を|残《のこ》しませんでした。|最後《さいご》にその|女《おんな》も|死《し》にました。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|復活《ふっかつ》のとき、|彼《かれ》らが|皆《みな》よみがえった|場合《ばあい》、この|女《おんな》はだれの|妻《つま》なのでしょうか。七|人《にん》とも|彼女《かのじょ》を|妻《つま》にしたのですが」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「あなたがたがそんな|思《おも》い|違《ちが》いをしているのは、|聖書《せいしょ》も|神《かみ》の|力《ちから》も|知《し》らないからではないか。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえるときには、めとったり、とついだりすることはない。|彼《かれ》らは|天《てん》にいる|御使《みつかい》のようなものである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|死人《しにん》がよみがえることについては、モーセの|書《しょ》の|柴《しば》の|篇《へん》で、|神《かみ》がモーセに|仰《おお》せられた|言葉《ことば》を|読《よ》んだことがないのか。『わたしはアブラハムの|神《かみ》、イサクの|神《かみ》、ヤコブの|神《かみ》である』とあるではないか。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|死《し》んだ|者《もの》の|神《かみ》ではなく、|生《い》きている|者《もの》の|神《かみ》である。あなたがたは|非常《ひじょう》な|思《おも》い|違《ちが》いをしている」。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]ひとりの|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》がきて、|彼《かれ》らが|互《たがい》に|論《ろん》じ|合《あ》っているのを|聞《き》き、またイエスが|巧《たく》みに|答《こた》えられたのを|認《みと》めて、イエスに|質問《しつもん》した、「すべてのいましめの|中《なか》で、どれが|第《だい》一のものですか」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「|第《だい》一のいましめはこれである、『イスラエルよ、|聞《き》け。|主《しゅ》なるわたしたちの|神《かみ》は、ただひとりの|主《しゅ》である。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|心《こころ》をつくし、|精神《せいしん》をつくし、|思《おも》いをつくし、|力《ちから》をつくして、|主《しゅ》なるあなたの|神《かみ》を|愛《あい》せよ』。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》二はこれである、『|自分《じぶん》を|愛《あい》するようにあなたの|隣《とな》り|人《ひと》を|愛《あい》せよ』。これより|大事《だいじ》ないましめは、ほかにない」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、この|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》はイエスに|言《い》った、「|先生《せんせい》、|仰《おお》せのとおりです、『|神《かみ》はひとりであって、そのほかに|神《かみ》はない』と|言《い》われたのは、ほんとうです。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]また『|心《こころ》をつくし、|知恵《ちえ》をつくし、|力《ちから》をつくして|神《かみ》を|愛《あい》し、また|自分《じぶん》を|愛《あい》するように|隣《とな》り|人《ひと》を|愛《あい》する』ということは、すべての|燔祭《はんさい》や|犠牲《ぎせい》よりも、はるかに|大事《だいじ》なことです」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、|彼《かれ》が|適切《てきせつ》な|答《こたえ》をしたのを|見《み》て|言《い》われた、「あなたは|神《かみ》の|国《くに》から|遠《とお》くない」。それから|後《のち》は、イエスにあえて|問《と》う|者《もの》はなかった。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|宮《みや》で|教《おし》えておられたとき、こう|言《い》われた、「|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちは、どうしてキリストをダビデの|子《こ》だと|言《い》うのか。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]ダビデ|自身《じしん》が|聖霊《せいれい》に|感《かん》じて|言《い》った、 [#ここから2字下げ] 『|主《しゅ》はわが|主《しゅ》に|仰《おお》せになった、 あなたの|敵《てき》をあなたの|足《あし》もとに|置《お》くときまでは、 わたしの|右《みぎ》に|座《ざ》していなさい』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]このように、ダビデ|自身《じしん》がキリストを|主《しゅ》と|呼《よ》んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの|子《こ》であろうか」。  |大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》は、|喜《よろこ》んでイエスに|耳《みみ》を|傾《かたむ》けていた。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]イエスはその|教《おしえ》の|中《なか》で|言《い》われた、「|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》に|気《き》をつけなさい。|彼《かれ》らは|長《なが》い|衣《ころも》を|着《き》て|歩《ある》くことや、|広場《ひろば》であいさつされることや、[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]また|会堂《かいどう》の|上席《じょうせき》、|宴会《えんかい》の|上座《かみざ》を|好《この》んでいる。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]また、やもめたちの|家《いえ》を|食《く》い|倒《たお》し、|見《み》えのために|長《なが》い|祈《いのり》をする。|彼《かれ》らはもっときびしいさばきを|受《う》けるであろう」。  [#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、さいせん|箱《はこ》にむかってすわり、|群衆《ぐんしゅう》がその|箱《はこ》に|金《かね》を|投《な》げ|入《い》れる|様子《ようす》を|見《み》ておられた。|多《おお》くの|金持《かねもち》は、たくさんの|金《かね》を|投《な》げ|入《い》れていた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ひとりの|貧《まず》しいやもめがきて、レプタ二つを|入《い》れた。それは一コドラントに|当《あた》る。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|弟子《でし》たちを|呼《よ》び|寄《よ》せて|言《い》われた、「よく|聞《き》きなさい。あの|貧《まず》しいやもめは、さいせん|箱《はこ》に|投《な》げ|入《い》れている|人《ひと》たちの|中《なか》で、だれよりもたくさん|入《い》れたのだ。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》はありあまる|中《なか》から|投《な》げ|入《い》れたが、あの|婦人《ふじん》はその|乏《とぼ》しい|中《なか》から、あらゆる|持《も》ち|物《もの》、その|生活《せいかつ》|費《ひ》|全部《ぜんぶ》を|入《い》れたからである」。 第一三章[#「第一三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|宮《みや》から|出《で》て|行《い》かれるとき、|弟子《でし》のひとりが|言《い》った、「|先生《せんせい》、ごらんなさい。なんという|見事《みごと》な|石《いし》、なんという|立派《りっぱ》な|建物《たてもの》でしょう」。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「あなたは、これらの|大《おお》きな|建物《たてもの》をながめているのか。その|石《いし》一つでもくずされないままで、|他《た》の|石《いし》の|上《うえ》に|残《のこ》ることもなくなるであろう」。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]またオリブ|山《やま》で、|宮《みや》にむかってすわっておられると、ペテロ、ヤコブ、ヨハネ、アンデレが、ひそかにお|尋《たず》ねした。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]「わたしたちにお|話《はな》しください。いつ、そんなことが|起《おこ》るのでしょうか。またそんなことがことごとく|成就《じょうじゅ》するような|場合《ばあい》には、どんな|前兆《ぜんちょう》がありますか」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|話《はな》しはじめられた、「|人《ひと》に|惑《まど》わされないように|気《き》をつけなさい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|多《おお》くの|者《もの》がわたしの|名《な》を|名《な》のって|現《あらわ》れ、|自分《じぶん》がそれだと|言《い》って、|多《おお》くの|人《ひと》を|惑《まど》わすであろう。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]また、|戦争《せんそう》と|戦争《せんそう》のうわさとを|聞《き》くときにも、あわてるな。それは|起《おこ》らねばならないが、まだ|終《おわ》りではない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|民《たみ》は|民《たみ》に、|国《くに》は|国《くに》に|敵対《てきたい》して|立《た》ち|上《あ》がるであろう。またあちこちに|地震《じしん》があり、またききんが|起《おこ》るであろう。これらは|産《う》みの|苦《くる》しみの|初《はじ》めである。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|自分《じぶん》で|気《き》をつけていなさい。あなたがたは、わたしのために、|衆議所《しゅうぎしょ》に|引《ひ》きわたされ、|会堂《かいどう》で|打《う》たれ、|長官《ちょうかん》たちや|王《おう》たちの|前《まえ》に|立《た》たされ、|彼《かれ》らに|対《たい》してあかしをさせられるであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|福音《ふくいん》はまずすべての|民《たみ》に|宣《の》べ|伝《つた》えられねばならない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そして、|人々《ひとびと》があなたがたを|連《つ》れて|行《い》って|引《ひ》きわたすとき、|何《なに》を|言《い》おうかと、|前《まえ》もって|心配《しんぱい》するな。その|場合《ばあい》、|自分《じぶん》に|示《しめ》されることを|語《かた》るがよい。|語《かた》る|者《もの》はあなたがた|自身《じしん》ではなくて、|聖霊《せいれい》である。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]また|兄弟《きょうだい》は|兄弟《きょうだい》を、|父《ちち》は|子《こ》を|殺《ころ》すために|渡《わた》し、|子《こ》は|両親《りょうしん》に|逆《さか》らって|立《た》ち、|彼《かれ》らを|殺《ころ》させるであろう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがたはわたしの|名《な》のゆえに、すべての|人《ひと》に|憎《にく》まれるであろう。しかし、|最後《さいご》まで|耐《た》え|忍《しの》ぶ|者《もの》は|救《すく》われる。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|荒《あ》らす|憎《にく》むべきものが、|立《た》ってはならぬ|所《ところ》に|立《た》つのを|見《み》たならば(|読者《どくしゃ》よ、|悟《さと》れ)、そのとき、ユダヤにいる|人々《ひとびと》は|山《やま》へ|逃《に》げよ。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|屋上《おくじょう》にいる|者《もの》は、|下《した》におりるな。また|家《いえ》から|物《もの》を|取《と》り|出《だ》そうとして|内《うち》にはいるな。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|畑《はたけ》にいる|者《もの》は、|上着《うわぎ》を|取《と》りにあとへもどるな。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には、|身重《みおも》の|女《おんな》と|乳飲《ちの》み|子《ご》をもつ|女《おんな》とは、|不幸《ふこう》である。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]この|事《こと》が|冬《ふゆ》おこらぬように|祈《いの》れ。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には、|神《かみ》が|万物《ばんぶつ》を|造《つく》られた|創造《そうぞう》の|初《はじ》めから|現在《げんざい》に|至《いた》るまで、かつてなく|今後《こんご》もないような|患難《かんなん》が|起《おこ》るからである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]もし|主《しゅ》がその|期間《きかん》を|縮《ちぢ》めてくださらないなら、|救《すく》われる|者《もの》はひとりもないであろう。しかし、|選《えら》ばれた|選民《せんみん》のために、その|期間《きかん》を|縮《ちぢ》めてくださったのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、だれかがあなたがたに『|見《み》よ、ここにキリストがいる』、『|見《み》よ、あそこにいる』と|言《い》っても、それを|信《しん》じるな。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]にせキリストたちや、にせ|預言者《よげんしゃ》たちが|起《おこ》って、しるしと|奇跡《きせき》とを|行《おこな》い、できれば、|選民《せんみん》をも|惑《まど》わそうとするであろう。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]だから、|気《き》をつけていなさい。いっさいの|事《こと》を、あなたがたに|前《まえ》もって|言《い》っておく。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には、この|患難《かんなん》の|後《のち》、|日《ひ》は|暗《くら》くなり、|月《つき》はその|光《ひかり》を|放《はな》つことをやめ、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|星《ほし》は|空《そら》から|落《お》ち、|天体《てんたい》は|揺《ゆ》り|動《うご》かされるであろう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|大《おお》いなる|力《ちから》と|栄光《えいこう》とをもって、|人《ひと》の|子《こ》が|雲《くも》に|乗《の》って|来《く》るのを、|人々《ひとびと》は|見《み》るであろう。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|彼《かれ》は|御使《みつかい》たちをつかわして、|地《ち》のはてから|天《てん》のはてまで、|四方《しほう》からその|選民《せんみん》を|呼《よ》び|集《あつ》めるであろう。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]いちじくの|木《き》からこの|譬《たとえ》を|学《まな》びなさい。その|枝《えだ》が|柔《やわ》らかになり、|葉《は》が|出《で》るようになると、|夏《なつ》の|近《ちか》いことがわかる。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そのように、これらの|事《こと》が|起《おこ》るのを|見《み》たならば、|人《ひと》の|子《こ》が|戸口《とぐち》まで|近《ちか》づいていると|知《し》りなさい。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》いておきなさい。これらの|事《こと》が、ことごとく|起《おこ》るまでは、この|時代《じだい》は|滅《ほろ》びることがない。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|天地《てんち》は|滅《ほろ》びるであろう。しかしわたしの|言葉《ことば》は|滅《ほろ》びることがない。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》、その|時《とき》は、だれも|知《し》らない。|天《てん》にいる|御使《みつかい》たちも、また|子《こ》も|知《し》らない、ただ|父《ちち》だけが|知《し》っておられる。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|気《き》をつけて、|目《め》をさましていなさい。その|時《とき》がいつであるか、あなたがたにはわからないからである。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]それはちょうど、|旅《たび》に|立《た》つ|人《ひと》が|家《いえ》を|出《で》るに|当《あた》り、その|僕《しもべ》たちに、それぞれ|仕事《しごと》を|割《わ》り|当《あ》てて|責任《せきにん》をもたせ、|門番《もんばん》には|目《め》をさましておれと、|命《めい》じるようなものである。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]だから、|目《め》をさましていなさい。いつ、|家《いえ》の|主人《しゅじん》が|帰《かえ》って|来《く》るのか、|夕方《ゆうがた》か、|夜中《よなか》か、にわとりの|鳴《な》くころか、|明《あ》け|方《がた》か、わからないからである。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]あるいは|急《きゅう》に|帰《かえ》ってきて、あなたがたの|眠《ねむ》っているところを|見《み》つけるかも|知《し》れない。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|目《め》をさましていなさい。わたしがあなたがたに|言《い》うこの|言葉《ことば》は、すべての|人々《ひとびと》に|言《い》うのである」。 第一四章[#「第一四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|過越《すぎこし》と|除酵《じょこう》との|祭《まつり》の二|日《か》|前《まえ》になった。|祭司長《さいしちょう》たちや|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちは、|策略《さくりゃく》をもってイエスを|捕《とら》えたうえ、なんとかして|殺《ころ》そうと|計《はか》っていた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、「|祭《まつり》の|間《あいだ》はいけない。|民衆《みんしゅう》が|騒《さわ》ぎを|起《おこ》すかも|知《し》れない」と|言《い》っていた。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスがベタニヤで、らい|病人《びょうにん》シモンの|家《いえ》にいて、|食卓《しょくたく》についておられたとき、ひとりの|女《おんな》が、|非常《ひじょう》に|高価《こうか》で|純粋《じゅんすい》なナルドの|香油《こうゆ》が|入《い》れてある|石膏《せっこう》のつぼを|持《も》ってきて、それをこわし、|香油《こうゆ》をイエスの|頭《あたま》に|注《そそ》ぎかけた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すると、ある|人々《ひとびと》が|憤《いきどお》って|互《たがい》に|言《い》った、「なんのために|香油《こうゆ》をこんなにむだにするのか。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]この|香油《こうゆ》を三百デナリ|以上《いじょう》にでも|売《う》って、|貧《まず》しい|人《ひと》たちに|施《ほどこ》すことができたのに」。そして|女《おんな》をきびしくとがめた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|言《い》われた、「するままにさせておきなさい。なぜ|女《おんな》を|困《こま》らせるのか。わたしによい|事《こと》をしてくれたのだ。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|貧《まず》しい|人《ひと》たちはいつもあなたがたと|一緒《いっしょ》にいるから、したいときにはいつでも、よい|事《こと》をしてやれる。しかし、わたしはあなたがたといつも|一緒《いっしょ》にいるわけではない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》はできる|限《かぎ》りの|事《こと》をしたのだ。すなわち、わたしのからだに|油《あぶら》を|注《そそ》いで、あらかじめ|葬《ほうむ》りの|用意《ようい》をしてくれたのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》きなさい。|全《ぜん》|世界《せかい》のどこででも、|福音《ふくいん》が|宣《の》べ|伝《つた》えられる|所《ところ》では、この|女《おんな》のした|事《こと》も|記念《きねん》として|語《かた》られるであろう」。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]ときに、十二|弟子《でし》のひとりイスカリオテのユダは、イエスを|祭司長《さいしちょう》たちに|引《ひ》きわたそうとして、|彼《かれ》らの|所《ところ》へ|行《い》った。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはこれを|聞《き》いて|喜《よろこ》び、|金《きん》を|与《あた》えることを|約束《やくそく》した。そこでユダは、どうかしてイエスを|引《ひ》きわたそうと、|機会《きかい》をねらっていた。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|除酵祭《じょこうさい》の|第《だい》一|日《にち》、すなわち|過越《すぎこし》の|小羊《こひつじ》をほふる|日《ひ》に、|弟子《でし》たちがイエスに|尋《たず》ねた、「わたしたちは、|過越《すぎこし》の|食事《しょくじ》をなさる|用意《ようい》を、どこへ|行《い》ってしたらよいでしょうか」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスはふたりの|弟子《でし》を|使《つか》いに|出《だ》して|言《い》われた、「|市内《しない》に|行《い》くと、|水《みず》がめを|持《も》っている|男《おとこ》に|出会《であ》うであろう。その|人《ひと》について|行《い》きなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして、その|人《ひと》がはいって|行《い》く|家《いえ》の|主人《しゅじん》に|言《い》いなさい、『|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》に|過越《すぎこし》の|食事《しょくじ》をする|座敷《ざしき》はどこか、と|先生《せんせい》が|言《い》っておられます』。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]するとその|主人《しゅじん》は、|席《せき》を|整《ととの》えて|用意《ようい》された二|階《かい》の|広間《ひろま》を|見《み》せてくれるから、そこにわたしたちのために|用意《ようい》をしなさい」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|出《で》かけて|市内《しない》に|行《い》って|見《み》ると、イエスが|言《い》われたとおりであったので、|過越《すぎこし》の|食事《しょくじ》の|用意《ようい》をした。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|夕方《ゆうがた》になって、イエスは十二|弟子《でし》と|一緒《いっしょ》にそこに|行《い》かれた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そして、|一同《いちどう》が|席《せき》について|食事《しょくじ》をしているとき|言《い》われた、「|特《とく》にあなたがたに|言《い》っておくが、あなたがたの|中《なか》のひとりで、わたしと|一緒《いっしょ》に|食事《しょくじ》をしている|者《もの》が、わたしを|裏切《うらぎ》ろうとしている」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|心配《しんぱい》して、ひとりびとり「まさか、わたしではないでしょう」と|言《い》い|出《だ》した。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「十二|人《にん》の|中《なか》のひとりで、わたしと|一緒《いっしょ》に|同《おな》じ|鉢《はち》にパンをひたしている|者《もの》が、それである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]たしかに|人《ひと》の|子《こ》は、|自分《じぶん》について|書《か》いてあるとおりに|去《さ》って|行《い》く。しかし、|人《ひと》の|子《こ》を|裏切《うらぎ》るその|人《ひと》は、わざわいである。その|人《ひと》は|生《うま》れなかった|方《ほう》が、|彼《かれ》のためによかったであろう」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|一同《いちどう》が|食事《しょくじ》をしているとき、イエスはパンを|取《と》り、|祝福《しゅくふく》してこれをさき、|弟子《でし》たちに|与《あた》えて|言《い》われた、「|取《と》れ、これはわたしのからだである」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]また|杯《さかずき》を|取《と》り、|感謝《かんしゃ》して|彼《かれ》らに|与《あた》えられると、|一同《いちどう》はその|杯《さかずき》から|飲《の》んだ。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]イエスはまた|言《い》われた、「これは、|多《おお》くの|人《ひと》のために|流《なが》すわたしの|契約《けいやく》の|血《ち》である。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたによく|言《い》っておく。|神《かみ》の|国《くに》で|新《あたら》しく|飲《の》むその|日《ひ》までは、わたしは|決《けっ》して二|度《ど》と、ぶどうの|実《み》から|造《つく》ったものを|飲《の》むことをしない」。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、さんびを|歌《うた》った|後《のち》、オリブ|山《やま》へ|出《で》かけて|行《い》った。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスは|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「あなたがたは|皆《みな》、わたしにつまずくであろう。『わたしは|羊飼《ひつじかい》を|打《う》つ。そして、|羊《ひつじ》は|散《ち》らされるであろう』と|書《か》いてあるからである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより|先《さき》にガリラヤへ|行《い》くであろう」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]するとペテロはイエスに|言《い》った、「たとい、みんなの|者《もの》がつまずいても、わたしはつまずきません」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「あなたによく|言《い》っておく。きょう、|今夜《こんや》、にわとりが二|度《ど》|鳴《な》く|前《まえ》に、そう|言《い》うあなたが、三|度《ど》わたしを|知《し》らないと|言《い》うだろう」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|力《ちから》をこめて|言《い》った、「たといあなたと|一緒《いっしょ》に|死《し》なねばならなくなっても、あなたを|知《し》らないなどとは、|決《けっ》して|申《もう》しません」。みんなの|者《もの》もまた、|同《おな》じようなことを|言《い》った。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]さて、|一同《いちどう》はゲツセマネという|所《ところ》にきた。そしてイエスは|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「わたしが|祈《いの》っている|間《あいだ》、ここにすわっていなさい」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そしてペテロ、ヤコブ、ヨハネを|一緒《いっしょ》に|連《つ》れて|行《い》かれたが、|恐《おそ》れおののき、また|悩《なや》みはじめて、|彼《かれ》らに|言《い》われた、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]「わたしは|悲《かな》しみのあまり|死《し》ぬほどである。ここに|待《ま》っていて、|目《め》をさましていなさい」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そして|少《すこ》し|進《すす》んで|行《い》き、|地《ち》にひれ|伏《ふ》し、もしできることなら、この|時《とき》を|過《す》ぎ|去《さ》らせてくださるようにと|祈《いの》りつづけ、そして|言《い》われた、[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]「アバ、|父《ちち》よ、あなたには、できないことはありません。どうか、この|杯《さかずき》をわたしから|取《と》りのけてください。しかし、わたしの|思《おも》いではなく、みこころのままになさってください」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]それから、きてごらんになると、|弟子《でし》たちが|眠《ねむ》っていたので、ペテロに|言《い》われた、「シモンよ、|眠《ねむ》っているのか、ひと|時《とき》も|目《め》をさましていることができなかったのか。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|誘惑《ゆうわく》に|陥《おちい》らないように、|目《め》をさまして|祈《いの》っていなさい。|心《こころ》は|熱《ねっ》しているが、|肉体《にくたい》が|弱《よわ》いのである」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]また|離《はな》れて|行《い》って|同《おな》じ|言葉《ことば》で|祈《いの》られた。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]またきてごらんになると、|彼《かれ》らはまだ|眠《ねむ》っていた。その|目《め》が|重《おも》くなっていたのである。そして、|彼《かれ》らはどうお|答《こた》えしてよいか、わからなかった。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]三|度目《どめ》にきて|言《い》われた、「まだ|眠《ねむ》っているのか、|休《やす》んでいるのか。もうそれでよかろう。|時《とき》がきた。|見《み》よ、|人《ひと》の|子《こ》は|罪人《つみびと》らの|手《て》に|渡《わた》されるのだ。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|立《た》て、さあ|行《い》こう。|見《み》よ、わたしを|裏切《うらぎ》る|者《もの》が|近《ちか》づいてきた」。  [#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]そしてすぐ、イエスがまだ|話《はな》しておられるうちに、十二|弟子《でし》のひとりのユダが|進《すす》みよってきた。また|祭司長《さいしちょう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》、|長老《ちょうろう》たちから|送《おく》られた|群衆《ぐんしゅう》も、|剣《けん》と|棒《ぼう》とを|持《も》って|彼《かれ》についてきた。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]イエスを|裏切《うらぎ》る|者《もの》は、あらかじめ|彼《かれ》らに|合図《あいず》をしておいた、「わたしの|接吻《せっぷん》する|者《もの》が、その|人《ひと》だ。その|人《ひと》をつかまえて、まちがいなく|引《ひ》ひっぱって|行《い》け」。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|来《く》るとすぐ、イエスに|近寄《ちかよ》り、「|先生《せんせい》」と|言《い》って|接吻《せっぷん》した。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はイエスに|手《て》をかけてつかまえた。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスのそばに|立《た》っていた|者《もの》のひとりが、|剣《けん》を|抜《ぬ》いて|大祭司《だいさいし》の|僕《しもべ》に|切《き》りかかり、その|片耳《かたみみ》を|切《き》り|落《おと》した。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らにむかって|言《い》われた、「あなたがたは|強盗《ごうとう》にむかうように、|剣《けん》や|棒《ぼう》を|持《も》ってわたしを|捕《とら》えにきたのか。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|毎日《まいにち》あなたがたと|一緒《いっしょ》に|宮《みや》にいて|教《おし》えていたのに、わたしをつかまえはしなかった。しかし|聖書《せいしょ》の|言葉《ことば》は|成就《じょうじゅ》されねばならない」。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|皆《みな》イエスを|見捨《みす》てて|逃《に》げ|去《さ》った。  [#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]ときに、ある|若者《わかもの》が|身《み》に|亜麻布《あまぬの》をまとって、イエスのあとについて|行《い》ったが、|人々《ひとびと》が|彼《かれ》をつかまえようとしたので、[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]その|亜麻布《あまぬの》を|捨《す》てて、|裸《はだか》で|逃《に》げて|行《い》った。  [#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスを|大祭司《だいさいし》のところに|連《つ》れて|行《い》くと、|祭司長《さいしちょう》、|長老《ちょうろう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちがみな|集《あつ》まってきた。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|遠《とお》くからイエスについて|行《い》って、|大祭司《だいさいし》の|中庭《なかにわ》まではいり|込《こ》み、その|下役《したやく》どもにまじってすわり、|火《ひ》にあたっていた。  [#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]さて、|祭司長《さいしちょう》たちと|全《ぜん》|議会《ぎかい》とは、イエスを|死刑《しけい》にするために、イエスに|不利《ふり》な|証拠《しょうこ》を|見《み》つけようとしたが、|得《え》られなかった。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]|多《おお》くの|者《もの》がイエスに|対《たい》して|偽証《ぎしょう》を|立《た》てたが、その|証言《しょうげん》が|合《あ》わなかったからである。[#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]ついに、ある|人々《ひとびと》が|立《た》ちあがり、イエスに|対《たい》して|偽証《ぎしょう》を|立《た》てて|言《い》った、[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]「わたしたちはこの|人《ひと》が『わたしは|手《て》で|造《つく》ったこの|神殿《しんでん》を|打《う》ちこわし、三|日《か》の|後《のち》に|手《て》で|造《つく》られない|別《べつ》の|神殿《しんでん》を|建《た》てるのだ』と|言《い》うのを|聞《き》きました」。[#太字]五九[#「五九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、このような|証言《しょうげん》も|互《たがい》に|合《あ》わなかった。[#太字]六〇[#「六〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|大祭司《だいさいし》が|立《た》ちあがって、まん|中《なか》に|進《すす》み、イエスに|聞《き》きただして|言《い》った、「|何《なに》も|答《こた》えないのか。これらの|人々《ひとびと》があなたに|対《たい》して|不利《ふり》な|証言《しょうげん》を|申《もう》し|立《た》てているが、どうなのか」。[#太字]六一[#「六一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスは|黙《だま》っていて、|何《なに》もお|答《こた》えにならなかった。|大祭司《だいさいし》は|再《ふたた》び|聞《き》きただして|言《い》った、「あなたは、ほむべき|者《もの》の|子《こ》、キリストであるか」。[#太字]六二[#「六二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「わたしがそれである。あなたがたは|人《ひと》の|子《こ》が|力《ちから》ある|者《もの》の|右《みぎ》に|座《ざ》し、|天《てん》の|雲《くも》に|乗《の》って|来《く》るのを|見《み》るであろう」。[#太字]六三[#「六三」は行右小書き][#太字終わり]すると、|大祭司《だいさいし》はその|衣《ころも》を|引《ひ》き|裂《さ》いて|言《い》った、「どうして、これ|以上《いじょう》、|証人《しょうにん》の|必要《ひつよう》があろう。[#太字]六四[#「六四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはこのけがし|言《ごと》を|聞《き》いた。あなたがたの|意見《いけん》はどうか」。すると、|彼《かれ》らは|皆《みな》、イエスを|死《し》に|当《あた》るものと|断定《だんてい》した。[#太字]六五[#「六五」は行右小書き][#太字終わり]そして、ある|者《もの》はイエスにつばきをかけ、|目隠《めかく》しをし、こぶしでたたいて、「|言《い》いあててみよ」と|言《い》いはじめた。また|下役《したやく》どもはイエスを|引《ひ》きとって、|手《て》のひらでたたいた。  [#太字]六六[#「六六」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|下《した》で|中庭《なかにわ》にいたが、|大祭司《だいさいし》の|女中《じょちゅう》のひとりがきて、[#太字]六七[#「六七」は行右小書き][#太字終わり]ペテロが|火《ひ》にあたっているのを|見《み》ると、|彼《かれ》を|見《み》つめて、「あなたもあのナザレ|人《びと》イエスと|一緒《いっしょ》だった」と|言《い》った。[#太字]六八[#「六八」は行右小書き][#太字終わり]するとペテロはそれを|打《う》ち|消《け》して、「わたしは|知《し》らない。あなたの|言《い》うことがなんの|事《こと》か、わからない」と|言《い》って、|庭口《にわぐち》の|方《ほう》に|出《で》て|行《い》った。[#太字]六九[#「六九」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|先《さき》の|女中《じょちゅう》が|彼《かれ》を|見《み》て、そばに|立《た》っていた|人々《ひとびと》に、またもや「この|人《ひと》はあの|仲間《なかま》のひとりです」と|言《い》いだした。[#太字]七〇[#「七〇」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|再《ふたた》びそれを|打《う》ち|消《け》した。しばらくして、そばに|立《た》っていた|人《ひと》たちがまたペテロに|言《い》った、「|確《たし》かにあなたは|彼《かれ》らの|仲間《なかま》だ。あなたもガリラヤ|人《びと》だから」。[#太字]七一[#「七一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》は、「あなたがたの|話《はな》しているその|人《ひと》のことは|何《なに》も|知《し》らない」と|言《い》い|張《は》って、|激《はげ》しく|誓《ちか》いはじめた。[#太字]七二[#「七二」は行右小書き][#太字終わり]するとすぐ、にわとりが二|度目《どめ》に|鳴《な》いた。ペテロは、「にわとりが二|度《ど》|鳴《な》く|前《まえ》に、三|度《ど》わたしを|知《し》らないと|言《い》うであろう」と|言《い》われたイエスの|言葉《ことば》を|思《おも》い|出《だ》し、そして|思《おも》いかえして|泣《な》きつづけた。 第一五章[#「第一五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けるとすぐ、|祭司長《さいしちょう》たちは|長老《ちょうろう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たち、および|全《ぜん》|議会《ぎかい》と|協議《きょうぎ》をこらした|末《すえ》、イエスを|縛《しば》って|引《ひ》き|出《だ》し、ピラトに|渡《わた》した。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ピラトはイエスに|尋《たず》ねた、「あなたがユダヤ|人《じん》の|王《おう》であるか」。イエスは、「そのとおりである」とお|答《こた》えになった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこで|祭司長《さいしちょう》たちは、イエスのことをいろいろと|訴《うった》えた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ピラトはもう|一度《いちど》イエスに|尋《たず》ねた、「|何《なに》も|答《こた》えないのか。|見《み》よ、あなたに|対《たい》してあんなにまで|次々《つぎつぎ》に|訴《うった》えているではないか」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスはピラトが|不思議《ふしぎ》に|思《おも》うほどに、もう|何《なに》もお|答《こた》えにならなかった。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]さて、|祭《まつり》のたびごとに、ピラトは|人々《ひとびと》が|願《ねが》い|出《で》る|囚人《しゅうじん》ひとりを、ゆるしてやることにしていた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ここに、|暴動《ぼうどう》を|起《おこ》し|人殺《ひとごろ》しをしてつながれていた|暴徒《ぼうと》の|中《なか》に、バラバという|者《もの》がいた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》が|押《お》しかけてきて、いつものとおりにしてほしいと|要求《ようきゅう》しはじめたので、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは|彼《かれ》らにむかって、「おまえたちはユダヤ|人《じん》の|王《おう》をゆるしてもらいたいのか」と|言《い》った。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それは、|祭司長《さいしちょう》たちがイエスを|引《ひ》きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにわかっていたからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]しかし|祭司長《さいしちょう》たちは、バラバの|方《ほう》をゆるしてもらうように、|群衆《ぐんしゅう》を|煽動《せんどう》した。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そこでピラトはまた|彼《かれ》らに|言《い》った、「それでは、おまえたちがユダヤ|人《じん》の|王《おう》と|呼《よ》んでいるあの|人《ひと》は、どうしたらよいか」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、また|叫《さけ》んだ、「|十字架《じゅうじか》につけよ」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは|言《い》った、「あの|人《ひと》は、いったい、どんな|悪事《あくじ》をしたのか」。すると、|彼《かれ》らは一そう|激《はげ》しく|叫《さけ》んで、「|十字架《じゅうじか》につけよ」と|言《い》った。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それで、ピラトは|群衆《ぐんしゅう》を|満足《まんぞく》させようと|思《おも》って、バラバをゆるしてやり、イエスをむち|打《う》ったのち、|十字架《じゅうじか》につけるために|引《ひ》きわたした。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|兵士《へいし》たちはイエスを、|邸宅《ていたく》、すなわち|総督《そうとく》|官邸《かんてい》の|内《うち》に|連《つ》れて|行《い》き、|全《ぜん》|部隊《ぶたい》を|呼《よ》び|集《あつ》めた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そしてイエスに|紫《むらさき》の|衣《ころも》を|着《き》せ、いばらの|冠《かんむり》を|編《あ》んでかぶらせ、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]「ユダヤ|人《じん》の|王《おう》、ばんざい」と|言《い》って|敬礼《けいれい》をしはじめた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また、|葦《あし》の|棒《ぼう》でその|頭《あたま》をたたき、つばきをかけ、ひざまずいて|拝《おが》んだりした。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]こうして、イエスを|嘲弄《ちょうろう》したあげく、|紫《むらさき》の|衣《ころも》をはぎとり、|元《もと》の|上着《うわぎ》を|着《き》せた。それから、|彼《かれ》らはイエスを|十字架《じゅうじか》につけるために|引《ひ》き|出《だ》した。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこへ、アレキサンデルとルポスとの|父《ちち》シモンというクレネ|人《びと》が、|郊外《こうがい》からきて|通《とお》りかかったので、|人々《ひとびと》はイエスの|十字架《じゅうじか》を|無理《むり》に|負《お》わせた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そしてイエスをゴルゴタ、その|意味《いみ》は、されこうべ、という|所《ところ》に|連《つ》れて|行《い》った。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そしてイエスに、|没薬《もつやく》をまぜたぶどう|酒《しゅ》をさし|出《だ》したが、お|受《う》けにならなかった。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスを|十字架《じゅうじか》につけた。そしてくじを|引《ひ》いて、だれが|何《なに》を|取《と》るかを|定《さだ》めたうえ、イエスの|着物《きもの》を|分《わ》けた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]イエスを|十字架《じゅうじか》につけたのは、|朝《あさ》の九|時《じ》ごろであった。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]イエスの|罪状《ざいじょう》|書《が》きには「ユダヤ|人《じん》の|王《おう》」と、しるしてあった。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]また、イエスと|共《とも》にふたりの|強盗《ごうとう》を、ひとりを|右《みぎ》に、ひとりを|左《ひだり》に、|十字架《じゅうじか》につけた。〔[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]こうして「|彼《かれ》は|罪人《つみびと》たちのひとりに|数《かぞ》えられた」と|書《か》いてある|言葉《ことば》が|成就《じょうじゅ》したのである。〕[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこを|通《とお》りかかった|者《もの》たちは、|頭《あたま》を|振《ふ》りながら、イエスをののしって|言《い》った、「ああ、|神殿《しんでん》を|打《う》ちこわして三|日《か》のうちに|建《た》てる|者《もの》よ、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|十字架《じゅうじか》からおりてきて|自分《じぶん》を|救《すく》え」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちも|同《おな》じように、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちと|一緒《いっしょ》になって、かわるがわる|嘲弄《ちょうろう》して|言《い》った、「|他人《たにん》を|救《すく》ったが、|自分《じぶん》|自身《じしん》を|救《すく》うことができない。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]イスラエルの|王《おう》キリスト、いま|十字架《じゅうじか》からおりてみるがよい。それを|見《み》たら|信《しん》じよう」。また、|一緒《いっしょ》に|十字架《じゅうじか》につけられた|者《もの》たちも、イエスをののしった。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|昼《ひる》の十二|時《じ》になると、|全《ぜん》|地《ち》は|暗《くら》くなって、三|時《じ》に|及《およ》んだ。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]そして三|時《じ》に、イエスは|大声《おおごえ》で、「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ」と|叫《さけ》ばれた。それは「わが|神《かみ》、わが|神《かみ》、どうしてわたしをお|見捨《みす》てになったのですか」という|意味《いみ》である。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]すると、そばに|立《た》っていたある|人々《ひとびと》が、これを|聞《き》いて|言《い》った、「そら、エリヤを|呼《よ》んでいる」。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]ひとりの|人《ひと》が|走《はし》って|行《い》き、|海綿《かいめん》に|酢《す》いぶどう|酒《しゅ》を|含《ふく》ませて|葦《あし》の|棒《ぼう》につけ、イエスに|飲《の》ませようとして|言《い》った、「|待《ま》て、エリヤが|彼《かれ》をおろしに|来《く》るかどうか、|見《み》ていよう」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|声《こえ》|高《たか》く|叫《さけ》んで、ついに|息《いき》をひきとられた。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|神殿《しんでん》の|幕《まく》が|上《うえ》から|下《した》まで|真二《まっぷた》つに|裂《さ》けた。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]イエスにむかって|立《た》っていた|百卒長《ひゃくそつちょう》は、このようにして|息《いき》をひきとられたのを|見《み》て|言《い》った、「まことに、この|人《ひと》は|神《かみ》の|子《こ》であった」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]また、|遠《とお》くの|方《ほう》から|見《み》ている|女《おんな》たちもいた。その|中《なか》には、マグダラのマリヤ、|小《しょう》ヤコブとヨセとの|母《はは》マリヤ、またサロメがいた。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはイエスがガリラヤにおられたとき、そのあとに|従《したが》って|仕《つか》えた|女《おんな》たちであった。なおそのほか、イエスと|共《とも》にエルサレムに|上《のぼ》ってきた|多《おお》くの|女《おんな》たちもいた。  [#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]さて、すでに|夕《ゆう》がたになったが、その|日《ひ》は|準備《じゅんび》の|日《ひ》、すなわち|安息日《あんそくにち》の|前日《ぜんじつ》であったので、[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]アリマタヤのヨセフが|大胆《だいたん》にもピラトの|所《ところ》へ|行《い》き、イエスのからだの引|取《と》りかたを|願《ねが》った。|彼《かれ》は|地位《ちい》の|高《たか》い|議員《ぎいん》であって、|彼《かれ》|自身《じしん》、|神《かみ》の|国《くに》を|待《ま》ち|望《のぞ》んでいる|人《ひと》であった。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは、イエスがもはや|死《し》んでしまったのかと|不審《ふしん》に|思《おも》い、|百卒長《ひゃくそつちょう》を|呼《よ》んで、もう|死《し》んだのかと|尋《たず》ねた。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]そして、|百卒長《ひゃくそつちょう》から|確《たし》かめた|上《うえ》、|死体《したい》をヨセフに|渡《わた》した。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ヨセフは|亜麻布《あまぬの》を|買《か》い|求《もと》め、イエスをとりおろして、その|亜麻布《あまぬの》に|包《つつ》み、|岩《いわ》を|掘《ほ》って|造《つく》った|墓《はか》に|納《おさ》め、|墓《はか》の|入口《いりぐち》に|石《いし》をころがしておいた。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]マグダラのマリヤとヨセの|母《はは》マリヤとは、イエスが|納《おさ》められた|場所《ばしょ》を|見《み》とどけた。 第一六章[#「第一六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|安息日《あんそくにち》が|終《おわ》ったので、マグダラのマリヤとヤコブの|母《はは》マリヤとサロメとが、|行《い》ってイエスに|塗《ぬ》るために、|香料《こうりょう》を|買《か》い|求《もと》めた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして|週《しゅう》の|初《はじ》めの|日《ひ》に、|早朝《そうちょう》、|日《ひ》の|出《で》のころ|墓《はか》に|行《い》った。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》らは「だれが、わたしたちのために、|墓《はか》の|入口《いりぐち》から|石《いし》をころがしてくれるのでしょうか」と|話《はな》し|合《あ》っていた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|目《め》をあげて|見《み》ると、|石《いし》はすでにころがしてあった。この|石《いし》は|非常《ひじょう》に|大《おお》きかった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|墓《はか》の|中《なか》にはいると、|右手《みぎて》に|真白《まっしろ》な|長《なが》い|衣《ころも》を|着《き》た|若者《わかもの》がすわっているのを|見《み》て、|非常《ひじょう》に|驚《おどろ》いた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]するとこの|若者《わかもの》は|言《い》った、「|驚《おどろ》くことはない。あなたがたは|十字架《じゅうじか》につけられたナザレ|人《びと》イエスを|捜《さが》しているのであろうが、イエスはよみがえって、ここにはおられない。ごらんなさい、ここがお|納《おさ》めした|場所《ばしょ》である。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》から|弟子《でし》たちとペテロとの|所《ところ》へ|行《い》って、こう|伝《つた》えなさい。イエスはあなたがたより|先《さき》にガリラヤへ|行《い》かれる。かねて、あなたがたに|言《い》われたとおり、そこでお|会《あ》いできるであろう、と」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》たちはおののき|恐《おそ》れながら、|墓《はか》から|出《で》て|逃《に》げ|去《さ》った。そして、|人《ひと》には|何《なに》も|言《い》わなかった。|恐《おそ》ろしかったからである。  〔[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|週《しゅう》の|初《はじ》めの|日《ひ》の|朝《あさ》|早《はや》く、イエスはよみがえって、まずマグダラのマリヤに|御《ご》|自身《じしん》をあらわされた。イエスは|以前《いぜん》に、この|女《おんな》から七つの|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》されたことがある。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]マリヤは、イエスと|一緒《いっしょ》にいた|人々《ひとびと》が|泣《な》き|悲《かな》しんでいる|所《ところ》に|行《い》って、それを|知《し》らせた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、イエスが|生《い》きておられる|事《こと》と、|彼女《かのじょ》に|御《ご》|自身《じしん》をあらわされた|事《こと》とを|聞《き》いたが、|信《しん》じなかった。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]この|後《のち》、そのうちのふたりが、いなかの|方《ほう》へ|歩《ある》いていると、イエスはちがった|姿《すがた》で|御《ご》|自身《じしん》をあらわされた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]このふたりも、ほかの|人々《ひとびと》の|所《ところ》に|行《い》って|話《はな》したが、|彼《かれ》らはその|話《はなし》を|信《しん》じなかった。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》、イエスは十一|弟子《でし》が|食卓《しょくたく》についているところに|現《あらわ》れ、|彼《かれ》らの|不《ふ》|信仰《しんこう》と、|心《こころ》のかたくななことをお|責《せ》めになった。|彼《かれ》らは、よみがえられたイエスを|見《み》た|人々《ひとびと》の|言《い》うことを、|信《しん》じなかったからである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|全《ぜん》|世界《せかい》に|出《で》て|行《い》って、すべての|造《つく》られたものに|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えよ。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|信《しん》じてバプテスマを|受《う》ける|者《もの》は|救《すく》われる。しかし、|不《ふ》|信仰《しんこう》の|者《もの》は|罪《つみ》に|定《さだ》められる。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|信《しん》じる|者《もの》には、このようなしるしが|伴《ともな》う。すなわち、|彼《かれ》らはわたしの|名《な》で|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》し、|新《あたら》しい|言葉《ことば》を|語《かた》り、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]へびをつかむであろう。また、|毒《どく》を|飲《の》んでも、|決《けっ》して|害《がい》を|受《う》けない。|病人《びょうにん》に|手《て》をおけば、いやされる」。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》イエスは|彼《かれ》らに|語《かた》り|終《おわ》ってから、|天《てん》にあげられ、|神《かみ》の|右《みぎ》にすわられた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|出《で》て|行《い》って、|至《いた》る|所《ところ》で|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えた。|主《しゅ》も|彼《かれ》らと|共《とも》に|働《はたら》き、|御言《みことば》に|伴《ともな》うしるしをもって、その|確《たし》かなことをお|示《しめ》しになった。〕 [#改ページ] ルカによる福音書[#「ルカによる福音書」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|間《あいだ》に|成就《じょうじゅ》された|出来事《できごと》を、|最初《さいしょ》から|親《した》しく|見《み》た|人々《ひとびと》であって、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|御言《みことば》に|仕《つか》えた|人々《ひとびと》が|伝《つた》えたとおり|物語《ものがたり》に|書《か》き|連《つら》ねようと、|多《おお》くの|人《ひと》が|手《て》を|着《つ》けましたが、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]テオピロ|閣下《かっか》よ、わたしもすべての|事《こと》を|初《はじ》めから|詳《くわ》しく|調《しら》べていますので、ここに、それを|順序《じゅんじょ》|正《ただ》しく|書《か》きつづって、|閣下《かっか》に|献《けん》じることにしました。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すでにお|聞《き》きになっている|事《こと》が|確実《かくじつ》であることを、これによって|十分《じゅうぶん》に|知《し》っていただきたいためであります。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤの|王《おう》ヘロデの|世《よ》に、アビヤの|組《くみ》の|祭司《さいし》で|名《な》をザカリヤという|者《もの》がいた。その|妻《つま》はアロン|家《いえ》の|娘《むすめ》のひとりで、|名《な》をエリサベツといった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ふたりとも|神《かみ》のみまえに|正《ただ》しい|人《ひと》であって、|主《しゅ》の|戒《いまし》めと|定《さだ》めとを、みな|落度《おちど》なく|行《おこな》っていた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ところが、エリサベツは|不妊《ふにん》の|女《おんな》であったため、|彼《かれ》らには|子《こ》がなく、そしてふたりともすでに|年老《としお》いていた。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]さてザカリヤは、その|組《くみ》が|当番《とうばん》になり|神《かみ》のみまえに|祭司《さいし》の|務《つとめ》をしていたとき、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|祭司《さいし》|職《しょく》の|慣例《かんれい》に|従《したが》ってくじを|引《ひ》いたところ、|主《しゅ》の|聖所《せいじょ》にはいって|香《こう》をたくことになった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|香《こう》をたいている|間《あいだ》、|多《おお》くの|民衆《みんしゅう》はみな|外《そと》で|祈《いの》っていた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]すると|主《しゅ》の|御使《みつかい》が|現《あらわ》れて、|香《こう》|壇《だん》の|右《みぎ》に|立《た》った。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ザカリヤはこれを|見《み》て、おじ|惑《まど》い、|恐怖《きょうふ》の|念《ねん》に|襲《おそ》われた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そこで|御使《みつかい》が|彼《かれ》に|言《い》った、「|恐《おそ》れるな、ザカリヤよ、あなたの|祈《いのり》が|聞《き》きいれられたのだ。あなたの|妻《つま》エリサベツは|男《おとこ》の|子《こ》を|産《う》むであろう。その|子《こ》をヨハネと|名《な》づけなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はあなたに|喜《よろこ》びと|楽《たの》しみとをもたらし、|多《おお》くの|人々《ひとびと》もその|誕生《たんじょう》を|喜《よろこ》ぶであろう。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|主《しゅ》のみまえに|大《おお》いなる|者《もの》となり、ぶどう|酒《しゅ》や|強《つよ》い|酒《さけ》をいっさい|飲《の》まず、|母《はは》の|胎内《たいない》にいる|時《とき》からすでに|聖霊《せいれい》に|満《み》たされており、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして、イスラエルの|多《おお》くの|子《こ》らを、|主《しゅ》なる|彼《かれ》らの|神《かみ》に|立《た》ち|帰《かえ》らせるであろう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はエリヤの|霊《れい》と|力《ちから》とをもって、みまえに|先立《さきだ》って|行《い》き、|父《ちち》の|心《こころ》を|子《こ》に|向《む》けさせ、|逆《さか》らう|者《もの》に|義人《ぎじん》の|思《おも》いを|持《も》たせて、|整《ととの》えられた|民《たみ》を|主《しゅ》に|備《そな》えるであろう」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]するとザカリヤは|御使《みつかい》に|言《い》った、「どうしてそんな|事《こと》が、わたしにわかるでしょうか。わたしは|老人《ろうじん》ですし、|妻《つま》も|年《とし》をとっています」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》が|答《こた》えて|言《い》った、「わたしは|神《かみ》のみまえに|立《た》つガブリエルであって、この|喜《よろこ》ばしい|知《し》らせをあなたに|語《かた》り|伝《つた》えるために、つかわされたものである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|時《とき》が|来《く》れば|成就《じょうじゅ》するわたしの|言葉《ことば》を|信《しん》じなかったから、あなたはおしになり、この|事《こと》の|起《おこ》る|日《ひ》まで、ものが|言《い》えなくなる」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|民衆《みんしゅう》はザカリヤを|待《ま》っていたので、|彼《かれ》が|聖所《せいじょ》|内《うち》で|暇《ひま》どっているのを|不思議《ふしぎ》に|思《おも》っていた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ついに|彼《かれ》は|出《で》てきたが、|物《もの》が|言《い》えなかったので、|人々《ひとびと》は|彼《かれ》が|聖所《せいじょ》|内《うち》でまぼろしを|見《み》たのだと|悟《さと》った。|彼《かれ》は|彼《かれ》らに|合図《あいず》をするだけで、|引《ひ》きつづき、おしのままでいた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それから|務《つとめ》の|期日《きじつ》が|終《おわ》ったので、|家《いえ》に|帰《かえ》った。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そののち、|妻《つま》エリサベツはみごもり、五か|月《げつ》のあいだ|引《ひ》きこもっていたが、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》は、|今《いま》わたしを|心《こころ》にかけてくださって、|人々《ひとびと》の|間《あいだ》からわたしの|恥《はじ》を|取《と》り|除《のぞ》くために、こうしてくださいました」と|言《い》った。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]六か|月《げつ》|目《め》に、|御使《みつかい》ガブリエルが、|神《かみ》からつかわされて、ナザレというガリラヤの|町《まち》の|一《いち》|処女《しょじょ》のもとにきた。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]この|処女《しょじょ》はダビデ|家《いえ》の|出《で》であるヨセフという|人《ひと》のいいなづけになっていて、|名《な》をマリヤといった。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》がマリヤのところにきて|言《い》った、「|恵《めぐ》まれた|女《おんな》よ、おめでとう、|主《しゅ》があなたと|共《とも》におられます」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]この|言葉《ことば》にマリヤはひどく|胸騒《むなさわ》ぎがして、このあいさつはなんの|事《こと》であろうかと、|思《おも》いめぐらしていた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]すると|御使《みつかい》が|言《い》った、「|恐《おそ》れるな、マリヤよ、あなたは|神《かみ》から|恵《めぐ》みをいただいているのです。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、あなたはみごもって|男《おとこ》の|子《こ》を|産《う》むでしょう。その|子《こ》をイエスと|名《な》づけなさい。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|大《おお》いなる|者《もの》となり、いと|高《たか》き|者《もの》の|子《こ》と、となえられるでしょう。そして、|主《しゅ》なる|神《かみ》は|彼《かれ》に|父《ちち》ダビデの|王座《おうざ》をお|与《あた》えになり、[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はとこしえにヤコブの|家《いえ》を|支配《しはい》し、その|支配《しはい》は|限《かぎ》りなく|続《つづ》くでしょう」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]そこでマリヤは|御使《みつかい》に|言《い》った、「どうして、そんな|事《こと》があり|得《え》ましょうか。わたしにはまだ|夫《おっと》がありませんのに」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》が|答《こた》えて|言《い》った、「|聖霊《せいれい》があなたに|臨《のぞ》み、いと|高《たか》き|者《もの》の|力《ちから》があなたをおおうでしょう。それゆえに、|生《うま》れ|出《で》る|子《こ》は|聖《せい》なるものであり、|神《かみ》の|子《こ》と、となえられるでしょう。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|親族《しんぞく》エリサベツも|老年《ろうねん》ながら|子《こ》を|宿《やど》しています。|不妊《ふにん》の|女《おんな》といわれていたのに、はや六か|月《げつ》になっています。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》には、なんでもできないことはありません」。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]そこでマリヤが|言《い》った、「わたしは|主《しゅ》のはしためです。お|言葉《ことば》どおりこの|身《み》に|成《な》りますように」。そして|御使《みつかい》は|彼女《かのじょ》から|離《はな》れて|行《い》った。  [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、マリヤは|立《た》って、|大急《おおいそ》ぎで|山里《やまざと》へむかいユダの|町《まち》に|行《い》き、[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]ザカリヤの|家《いえ》にはいってエリサベツにあいさつした。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]エリサベツがマリヤのあいさつを|聞《き》いたとき、その|子《こ》が|胎内《たいない》でおどった。エリサベツは|聖霊《せいれい》に|満《み》たされ、[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|声《こえ》|高《たか》く|叫《さけ》んで|言《い》った、「あなたは|女《おんな》の|中《なか》で|祝福《しゅくふく》されたかた、あなたの|胎《たい》の|実《み》も|祝福《しゅくふく》されています。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》の|母上《ははうえ》がわたしのところにきてくださるとは、なんという|光栄《こうえい》でしょう。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]ごらんなさい。あなたのあいさつの|声《こえ》がわたしの|耳《みみ》にはいったとき、|子供《こども》が|胎内《たいない》で|喜《よろこ》びおどりました。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》のお|語《かた》りになったことが|必《かなら》ず|成就《じょうじゅ》すると|信《しん》じた|女《おんな》は、なんとさいわいなことでしょう」。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]するとマリヤは|言《い》った、 [#ここから2字下げ] 「わたしの|魂《たましい》は|主《しゅ》をあがめ、 [#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|霊《れい》は|救主《すくいぬし》なる|神《かみ》をたたえます。 [#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]この|卑《いや》しい|女《おんな》をさえ、|心《こころ》にかけてくださいました。 |今《いま》からのち|代々《よよ》の|人々《ひとびと》は、わたしをさいわいな|女《おんな》と|言《い》うでしょう、 [#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]|力《ちから》あるかたが、わたしに|大《おお》きな|事《こと》をしてくださったからです。 そのみ|名《な》はきよく、 [#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]そのあわれみは、|代々《よよ》|限《かぎ》りなく |主《しゅ》をかしこみ|恐《おそ》れる|者《もの》に|及《およ》びます。 [#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》はみ|腕《うで》をもって|力《ちから》をふるい、 |心《こころ》の|思《おも》いのおごり|高《たか》ぶる|者《もの》を|追《お》い|散《ち》らし、 [#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]|権力《けんりょく》ある|者《もの》を|王座《おうざ》から|引《ひ》きおろし、 |卑《いや》しい|者《もの》を|引《ひ》き|上《あ》げ、 [#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]|飢《う》えている|者《もの》を|良《よ》いもので|飽《あ》かせ、 |富《と》んでいる|者《もの》を|空腹《くうふく》のまま|帰《かえ》らせなさいます。 [#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は、あわれみをお|忘《わす》れにならず、 その|僕《しもべ》イスラエルを|助《たす》けてくださいました、 [#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|父祖《ふそ》アブラハムとその|子孫《しそん》とを とこしえにあわれむと|約束《やくそく》なさったとおりに」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]マリヤは、エリサベツのところに三か|月《げつ》ほど|滞在《たいざい》してから、|家《いえ》に|帰《かえ》った。  [#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]さてエリサベツは|月《つき》が|満《み》ちて、|男《おとこ》の|子《こ》を|産《う》んだ。[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]|近所《きんじょ》の|人々《ひとびと》や|親族《しんぞく》は、|主《しゅ》が|大《おお》きなあわれみを|彼女《かのじょ》におかけになったことを|聞《き》いて、|共《とも》どもに|喜《よろこ》んだ。[#太字]五九[#「五九」は行右小書き][#太字終わり]八|日目《かめ》になったので、|幼《おさ》な|子《ご》に|割礼《かつれい》をするために|人々《ひとびと》がきて、|父《ちち》の|名《な》にちなんでザカリヤという|名《な》にしようとした。[#太字]六〇[#「六〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|母親《ははおや》は、「いいえ、ヨハネという|名《な》にしなくてはいけません」と|言《い》った。[#太字]六一[#「六一」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は、「あなたの|親族《しんぞく》の|中《なか》には、そういう|名《な》のついた|者《もの》は、ひとりもいません」と|彼女《かのじょ》に|言《い》った。[#太字]六二[#「六二」は行右小書き][#太字終わり]そして|父親《ちちおや》に、どんな|名《な》にしたいのですかと、|合図《あいず》で|尋《たず》ねた。[#太字]六三[#「六三」は行右小書き][#太字終わり]ザカリヤは|書《かき》|板《いた》を|持《も》ってこさせて、それに「その|名《な》はヨハネ」と|書《か》いたので、みんなの|者《もの》は|不思議《ふしぎ》に|思《おも》った。[#太字]六四[#「六四」は行右小書き][#太字終わり]すると、|立《た》ちどころにザカリヤの|口《くち》が|開《ひら》けて|舌《した》がゆるみ、|語《かた》り|出《だ》して|神《かみ》をほめたたえた。[#太字]六五[#「六五」は行右小書き][#太字終わり]|近所《きんじょ》の|人々《ひとびと》はみな|恐《おそ》れをいだき、またユダヤの|山里《やまざと》の|至《いた》るところに、これらの|事《こと》がことごとく|語《かた》り|伝《つた》えられたので、[#太字]六六[#「六六」は行右小書き][#太字終わり]|聞《き》く|者《もの》たちは|皆《みな》それを|心《こころ》に|留《と》めて、「この|子《こ》は、いったい、どんな|者《もの》になるだろう」と|語《かた》り|合《あ》った。|主《しゅ》のみ|手《て》が|彼《かれ》と|共《とも》にあった。 [#ここから2字下げ] [#太字]六七[#「六七」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》ザカリヤは|聖霊《せいれい》に|満《み》たされ、|預言《よげん》して|言《い》った、 [#太字]六八[#「六八」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》なるイスラエルの|神《かみ》は、ほむべきかな。 |神《かみ》はその|民《たみ》を|顧《かえり》みてこれをあがない、 [#太字]六九[#「六九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちのために|救《すくい》の|角《つの》を |僕《しもべ》ダビデの|家《いえ》にお|立《た》てになった。 [#太字]七〇[#「七〇」は行右小書き][#太字終わり]|古《ふる》くから、|聖《せい》なる|預言者《よげんしゃ》たちの|口《くち》によってお|語《かた》りになったように、 [#太字]七一[#「七一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちを|敵《てき》から、またすべてわたしたちを|憎《にく》む|者《もの》の|手《て》から、|救《すく》い|出《だ》すためである。 [#太字]七二[#「七二」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|神《かみ》はわたしたちの|父祖《ふそ》たちにあわれみをかけ、その|聖《せい》なる|契約《けいやく》、 [#太字]七三[#「七三」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|父祖《ふそ》アブラハムにお|立《た》てになった|誓《ちか》いをおぼえて、 [#太字]七四[#「七四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちを|敵《てき》の|手《て》から|救《すく》い|出《だ》し、 [#太字]七五[#「七五」は行右小書き][#太字終わり]|生《い》きている|限《かぎ》り、きよく|正《ただ》しく、 みまえに|恐《おそ》れなく|仕《つか》えさせてくださるのである。 [#太字]七六[#「七六」は行右小書き][#太字終わり]|幼《おさ》な|子《ご》よ、あなたは、いと|高《たか》き|者《もの》の|預言者《よげんしゃ》と|呼《よ》ばれるであろう。 |主《しゅ》のみまえに|先立《さきだ》って|行《い》き、その|道《みち》を|備《そな》え、 [#太字]七七[#「七七」は行右小書き][#太字終わり]|罪《つみ》のゆるしによる|救《すくい》を その|民《たみ》に|知《し》らせるのであるから。 [#太字]七八[#「七八」は行右小書き][#太字終わり]これはわたしたちの|神《かみ》のあわれみ|深《ふか》いみこころによる。 また、そのあわれみによって、|日《ひ》の|光《ひかり》が|上《うえ》からわたしたちに|臨《のぞ》み、 [#太字]七九[#「七九」は行右小書き][#太字終わり]|暗黒《あんこく》と|死《し》の|陰《かげ》とに|住《す》む|者《もの》を|照《てら》し、 わたしたちの|足《あし》を|平和《へいわ》の|道《みち》へ|導《みちび》くであろう」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]八〇[#「八〇」は行右小書き][#太字終わり]|幼《おさ》な|子《ご》は|成長《せいちょう》し、その|霊《れい》も|強《つよ》くなり、そしてイスラエルに|現《あらわ》れる|日《ひ》まで、|荒野《あらの》にいた。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、|全《ぜん》|世界《せかい》の|人口《じんこう》|調査《ちょうさ》をせよとの|勅令《ちょくれい》が、|皇帝《こうてい》アウグストから|出《で》た。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]これは、クレニオがシリヤの|総督《そうとく》であった|時《とき》に|行《おこな》われた|最初《さいしょ》の|人口《じんこう》|調査《ちょうさ》であった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はみな|登録《とうろく》をするために、それぞれ|自分《じぶん》の|町《まち》へ|帰《かえ》って|行《い》った。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ヨセフもダビデの|家系《かけい》であり、またその|血統《けっとう》であったので、ガリラヤの|町《まち》ナザレを|出《で》て、ユダヤのベツレヘムというダビデの|町《まち》へ|上《のぼ》って|行《い》った。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それは、すでに|身重《みおも》になっていたいいなづけの|妻《つま》マリヤと|共《とも》に、|登録《とうろく》をするためであった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|彼《かれ》らがベツレヘムに|滞在《たいざい》している|間《あいだ》に、マリヤは|月《つき》が|満《み》ちて、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|初子《ういご》を|産《う》み、|布《ぬの》にくるんで、|飼葉《かいば》おけの|中《なか》に|寝《ね》かせた。|客間《きゃくま》には|彼《かれ》らのいる|余地《よち》がなかったからである。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]さて、この|地方《ちほう》で|羊飼《ひつじかい》たちが|夜《よる》、|野宿《のじゅく》しながら|羊《ひつじ》の|群《む》れの|番《ばん》をしていた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すると|主《しゅ》の|御使《みつかい》が|現《あらわ》れ、|主《しゅ》の|栄光《えいこう》が|彼《かれ》らをめぐり|照《てら》したので、|彼《かれ》らは|非常《ひじょう》に|恐《おそ》れた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》は|言《い》った、「|恐《おそ》れるな。|見《み》よ、すべての|民《たみ》に|与《あた》えられる|大《おお》きな|喜《よろこ》びを、あなたがたに|伝《つた》える。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]きょうダビデの|町《まち》に、あなたがたのために|救主《すくいぬし》がお|生《うま》れになった。このかたこそ|主《しゅ》なるキリストである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|幼《おさ》な|子《ご》が|布《ぬの》にくるまって|飼葉《かいば》おけの|中《なか》に|寝《ね》かしてあるのを|見《み》るであろう。それが、あなたがたに|与《あた》えられるしるしである」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]するとたちまち、おびただしい|天《てん》の|軍勢《ぐんぜい》が|現《あらわ》れ、|御使《みつかい》と|一緒《いっしょ》になって|神《かみ》をさんびして|言《い》った、 [#ここから2字下げ] [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]「いと|高《たか》きところでは、|神《かみ》に|栄光《えいこう》があるように、 |地《ち》の|上《うえ》では、み|心《こころ》にかなう|人々《ひとびと》に|平和《へいわ》があるように」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》たちが|彼《かれ》らを|離《はな》れて|天《てん》に|帰《かえ》ったとき、|羊飼《ひつじかい》たちは「さあ、ベツレヘムへ|行《い》って、|主《しゅ》がお|知《し》らせ|下《くだ》さったその|出来事《できごと》を|見《み》てこようではないか」と、|互《たがい》に|語《かた》り|合《あ》った。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして|急《いそ》いで|行《い》って、マリヤとヨセフ、また|飼葉《かいば》おけに|寝《ね》かしてある|幼《おさ》な|子《ご》を|捜《さが》しあてた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らに|会《あ》った|上《うえ》で、この|子《こ》について|自分《じぶん》たちに|告《つ》げ|知《し》らされた|事《こと》を、|人々《ひとびと》に|伝《つた》えた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はみな、|羊飼《ひつじかい》たちが|話《はな》してくれたことを|聞《き》いて、|不思議《ふしぎ》に|思《おも》った。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、マリヤはこれらの|事《こと》をことごとく|心《こころ》に|留《と》めて、|思《おも》いめぐらしていた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|羊飼《ひつじかい》たちは、|見聞《みき》きしたことが|何《なに》もかも|自分《じぶん》たちに|語《かた》られたとおりであったので、|神《かみ》をあがめ、またさんびしながら|帰《かえ》って|行《い》った。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]八|日《か》が|過《す》ぎ、|割礼《かつれい》をほどこす|時《とき》となったので、|受胎《じゅたい》のまえに|御使《みつかい》が|告《つ》げたとおり、|幼《おさ》な|子《ご》をイエスと|名《な》づけた。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]それから、モーセの|律法《りっぽう》による|彼《かれ》らのきよめの|期間《きかん》が|過《す》ぎたとき、|両親《りょうしん》は|幼《おさ》な|子《ご》を|連《つ》れてエルサレムへ|上《のぼ》った。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それは|主《しゅ》の|律法《りっぽう》に「|母《はは》の|胎《たい》を|初《はじ》めて|開《ひら》く|男《おとこ》の|子《こ》はみな、|主《しゅ》に|聖《せい》|別《べつ》された|者《もの》と、となえられねばならない」と|書《か》いてあるとおり、|幼《おさ》な|子《ご》を|主《しゅ》にささげるためであり、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]また|同《おな》じ|主《しゅ》の|律法《りっぽう》に、「|山《やま》ばと一つがい、または、|家《いえ》ばとのひな二|羽《わ》」と|定《さだ》めてあるのに|従《したが》って、|犠牲《ぎせい》をささげるためであった。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、エルサレムにシメオンという|名《な》の|人《ひと》がいた。この|人《ひと》は|正《ただ》しい|信仰《しんこう》|深《ふか》い|人《ひと》で、イスラエルの|慰《なぐさ》められるのを|待《ま》ち|望《のぞ》んでいた。また|聖霊《せいれい》が|彼《かれ》に|宿《やど》っていた。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そして|主《しゅ》のつかわす|救主《すくいぬし》に|会《あ》うまでは|死《し》ぬことはないと、|聖霊《せいれい》の|示《しめ》しを|受《う》けていた。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》が|御霊《みたま》に|感《かん》じて|宮《みや》にはいった。すると|律法《りっぽう》に|定《さだ》めてあることを|行《おこな》うため、|両親《りょうしん》もその|子《こ》イエスを|連《つ》れてはいってきたので、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]シメオンは|幼《おさ》な|子《ご》を|腕《うで》に|抱《いだ》き、|神《かみ》をほめたたえて|言《い》った、 [#ここから2字下げ] [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》よ、|今《いま》こそ、あなたはみ|言葉《ことば》のとおりに この|僕《しもべ》を|安《やす》らかに|去《さ》らせてくださいます、 [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|目《め》が|今《いま》あなたの|救《すくい》を|見《み》たのですから。 [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]この|救《すくい》はあなたが|万民《ばんみん》のまえにお|備《そな》えになったもので、 [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|異邦人《いほうじん》を|照《てら》す|啓示《けいじ》の|光《ひかり》、 み|民《たみ》イスラエルの|栄光《えいこう》であります」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》と|母《はは》とは|幼《おさ》な|子《ご》についてこのように|語《かた》られたことを、|不思議《ふしぎ》に|思《おも》った。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]するとシメオンは|彼《かれ》らを|祝《しゅく》し、そして|母《はは》マリヤに|言《い》った、「ごらんなさい、この|幼《おさ》な|子《ご》は、イスラエルの|多《おお》くの|人《ひと》を|倒《たお》れさせたり|立《た》ちあがらせたりするために、また|反対《はんたい》を|受《う》けるしるしとして、|定《さだ》められています。――[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなた|自身《じしん》もつるぎで|胸《むね》を|刺《さ》し|貫《つらぬ》かれるでしょう。――それは|多《おお》くの|人《ひと》の|心《こころ》にある|思《おも》いが、|現《あらわ》れるようになるためです」。  [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]また、アセル|族《ぞく》のパヌエルの|娘《むすめ》で、アンナという|女《おんな》|預言者《よげんしゃ》がいた。|彼女《かのじょ》は|非常《ひじょう》に|年《とし》をとっていた。むすめ|時代《じだい》にとついで、七|年間《ねんかん》だけ|夫《おっと》と|共《とも》に|住《す》み、[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》やもめぐらしをし、八十四|歳《さい》になっていた。そして|宮《みや》を|離《はな》れずに|夜《よる》も|昼《ひる》も|断食《だんじき》と|祈《いのり》とをもって|神《かみ》に|仕《つか》えていた。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]この|老女《ろうじょ》も、ちょうどそのとき|近寄《ちかよ》ってきて、|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》をささげ、そしてこの|幼《おさ》な|子《ご》のことを、エルサレムの|救《すくい》を|待《ま》ち|望《のぞ》んでいるすべての|人々《ひとびと》に|語《かた》りきかせた。  [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|両親《りょうしん》は|主《しゅ》の|律法《りっぽう》どおりすべての|事《こと》をすませたので、ガリラヤへむかい、|自分《じぶん》の|町《まち》ナザレに|帰《かえ》った。  [#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|幼《おさ》な|子《ご》は、ますます|成長《せいちょう》して|強《つよ》くなり、|知恵《ちえ》に|満《み》ち、そして|神《かみ》の|恵《めぐ》みがその|上《うえ》にあった。  [#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスの|両親《りょうしん》は、|過越《すぎこし》の|祭《まつり》には|毎年《まいとし》エルサレムへ|上《のぼ》っていた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]イエスが十二|歳《さい》になった|時《とき》も、|慣例《かんれい》に|従《したが》って|祭《まつり》のために|上京《じょうきょう》した。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|祭《まつり》が|終《おわ》って|帰《かえ》るとき、|少年《しょうねん》イエスはエルサレムに|居残《いのこ》っておられたが、|両親《りょうしん》はそれに|気《き》づかなかった。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]そして|道連《みちづ》れの|中《なか》にいることと|思《おも》いこんで、一|日《にち》|路《じ》を|行《い》ってしまい、それから、|親族《しんぞく》や|知人《ちじん》の|中《なか》を|捜《さが》しはじめたが、[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》つからないので、|捜《さが》しまわりながらエルサレムへ|引返《ひきかえ》した。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]そして三|日《か》の|後《のち》に、イエスが|宮《みや》の|中《なか》で|教師《きょうし》たちのまん|中《なか》にすわって、|彼《かれ》らの|話《はなし》を|聞《き》いたり|質問《しつもん》したりしておられるのを|見《み》つけた。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]|聞《き》く|人々《ひとびと》はみな、イエスの|賢《かしこ》さやその|答《こたえ》に|驚嘆《きょうたん》していた。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]|両親《りょうしん》はこれを|見《み》て|驚《おどろ》き、そして|母《はは》が|彼《かれ》に|言《い》った、「どうしてこんな|事《こと》をしてくれたのです。ごらんなさい、おとう|様《さま》もわたしも|心配《しんぱい》して、あなたを|捜《さが》していたのです」。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|言《い》われた、「どうしてお|捜《さが》しになったのですか。わたしが|自分《じぶん》の|父《ちち》の|家《いえ》にいるはずのことを、ご|存《ぞん》じなかったのですか」。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|両親《りょうしん》はその|語《かた》られた|言葉《ことば》を|悟《さと》ることができなかった。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスは|両親《りょうしん》と|一緒《いっしょ》にナザレに|下《くだ》って|行《い》き、|彼《かれ》らにお|仕《つか》えになった。|母《はは》はこれらの|事《こと》をみな|心《こころ》に|留《と》めていた。  [#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]イエスはますます|知恵《ちえ》が|加《くわ》わり、|背《せ》たけも|伸《の》び、そして|神《かみ》と|人《ひと》から|愛《あい》された。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|皇帝《こうてい》テベリオ|在位《ざいい》の|第《だい》十五|年《ねん》、ポンテオ・ピラトがユダヤの|総督《そうとく》、ヘロデがガリラヤの|領主《りょうしゅ》、その|兄弟《きょうだい》ピリポがイツリヤ・テラコニテ|地方《ちほう》の|領主《りょうしゅ》、ルサニヤがアビレネの|領主《りょうしゅ》、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]アンナスとカヤパとが|大祭司《だいさいし》であったとき、|神《かみ》の|言《ことば》が|荒野《あらの》でザカリヤの|子《こ》ヨハネに|臨《のぞ》んだ。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はヨルダンのほとりの|全《ぜん》|地方《ちほう》に|行《い》って、|罪《つみ》のゆるしを|得《え》させる|悔改《くいあらた》めのバプテスマを|宣《の》べ|伝《つた》えた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]それは、|預言者《よげんしゃ》イザヤの|言葉《ことば》の|書《しょ》に|書《か》いてあるとおりである。すなわち [#ここから2字下げ] 「|荒野《あらの》で|呼《よ》ばわる|者《もの》の|声《こえ》がする、 『|主《しゅ》の|道《みち》を|備《そな》えよ、 その|道《みち》|筋《すじ》をまっすぐにせよ』。 [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]すべての|谷《たに》は|埋《う》められ、 すべての|山《やま》と|丘《おか》とは、|平《たい》らにされ、 |曲《まが》ったところはまっすぐに、 わるい|道《みち》はならされ、 [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》はみな|神《かみ》の|救《すくい》を|見《み》るであろう」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]さて、ヨハネは、|彼《かれ》からバプテスマを|受《う》けようとして|出《で》てきた|群衆《ぐんしゅう》にむかって|言《い》った、「まむしの|子《こ》らよ、|迫《せま》ってきている|神《かみ》の|怒《いか》りから、のがれられると、おまえたちにだれが|教《おし》えたのか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]だから、|悔改《くいあらた》めにふさわしい|実《み》を|結《むす》べ。|自分《じぶん》たちの|父《ちち》にはアブラハムがあるなどと、|心《こころ》の|中《なか》で|思《おも》ってもみるな。おまえたちに|言《い》っておく。|神《かみ》はこれらの|石《いし》ころからでも、アブラハムの|子《こ》を|起《おこ》すことができるのだ。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|斧《おの》がすでに|木《き》の|根《ね》もとに|置《お》かれている。だから、|良《よ》い|実《み》を|結《むす》ばない|木《き》はことごとく|切《き》られて、|火《ひ》の|中《なか》に|投《な》げ|込《こ》まれるのだ」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|群衆《ぐんしゅう》が|彼《かれ》に、「それでは、わたしたちは|何《なに》をすればよいのですか」と|尋《たず》ねた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|答《こた》えて|言《い》った、「|下着《したぎ》を二|枚《まい》もっている|者《もの》は、|持《も》たない|者《もの》に|分《わ》けてやりなさい。|食物《しょくもつ》を|持《も》っている|者《もの》も|同様《どうよう》にしなさい」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|取税人《しゅぜいにん》もバプテスマを|受《う》けにきて、|彼《かれ》に|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちは|何《なに》をすればよいのですか」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らに|言《い》った、「きまっているもの|以上《いじょう》に|取《と》り|立《た》ててはいけない」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|兵卒《へいそつ》たちもたずねて|言《い》った、「では、わたしたちは|何《なに》をすればよいのですか」。|彼《かれ》は|言《い》った、「|人《ひと》をおどかしたり、だまし|取《と》ったりしてはいけない。|自分《じぶん》の|給与《きゅうよ》で|満足《まんぞく》していなさい」。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|民衆《みんしゅう》は|救主《すくいぬし》を|待《ま》ち|望《のぞ》んでいたので、みな|心《こころ》の|中《なか》でヨハネのことを、もしかしたらこの|人《ひと》がそれではなかろうかと|考《かんが》えていた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そこでヨハネはみんなの|者《もの》にむかって|言《い》った、「わたしは|水《みず》でおまえたちにバプテスマを|授《さづ》けるが、わたしよりも|力《ちから》のあるかたが、おいでになる。わたしには、そのくつのひもを|解《と》く|値《ね》うちもない。このかたは、|聖霊《せいれい》と|火《ひ》とによっておまえたちにバプテスマをお|授《さづ》けになるであろう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また、|箕《み》を|手《て》に|持《も》って、|打《う》ち|場《ば》の|麦《むぎ》をふるい|分《わ》け、|麦《むぎ》は|倉《くら》に|納《おさ》め、からは|消《き》えない|火《ひ》で|焼《や》き|捨《す》てるであろう」。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]こうしてヨハネはほかにもなお、さまざまの|勧《すす》めをして、|民衆《みんしゅう》に|教《おしえ》を|説《と》いた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ところが|領主《りょうしゅ》ヘロデは、|兄弟《きょうだい》の|妻《つま》ヘロデヤのことで、また|自分《じぶん》がしたあらゆる|悪事《あくじ》について、ヨハネから|非難《ひなん》されていたので、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》を|獄《ごく》に|閉《と》じ|込《こ》めて、いろいろな|悪事《あくじ》の|上《うえ》に、もう一つこの|悪事《あくじ》を|重《かさ》ねた。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|民衆《みんしゅう》がみなバプテスマを|受《う》けたとき、イエスもバプテスマを|受《う》けて|祈《いの》っておられると、|天《てん》が|開《ひら》けて、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|聖霊《せいれい》がはとのような|姿《すがた》をとってイエスの|上《うえ》に|下《くだ》り、そして|天《てん》から|声《こえ》がした、「あなたはわたしの|愛《あい》する|子《こ》、わたしの|心《こころ》にかなう|者《もの》である」。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|宣教《せんきょう》をはじめられたのは、|年《とし》およそ三十|歳《さい》の|時《とき》であって、|人々《ひとびと》の|考《かんが》えによれば、ヨセフの|子《こ》であった。ヨセフはヘリの|子《こ》、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]それから、さかのぼって、マタテ、レビ、メルキ、ヤンナイ、ヨセフ、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]マタテヤ、アモス、ナホム、エスリ、ナンガイ、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]マハテ、マタテヤ、シメイ、ヨセク、ヨダ、[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]ヨハナン、レサ、ゾロバベル、サラテル、ネリ、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]メルキ、アデイ、コサム、エルマダム、エル、[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]ヨシュア、エリエゼル、ヨリム、マタテ、レビ、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]シメオン、ユダ、ヨセフ、ヨナム、エリヤキム、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]メレヤ、メナ、マタタ、ナタン、ダビデ、[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]エッサイ、オベデ、ボアズ、サラ、ナアソン、[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]アミナダブ、アデミン、アルニ、エスロン、パレス、ユダ、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]ヤコブ、イサク、アブラハム、テラ、ナホル、[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]セルグ、レウ、ペレグ、エベル、サラ、[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]カイナン、アルパクサデ、セム、ノア、ラメク、[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]メトセラ、エノク、ヤレデ、マハラレル、カイナン、[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]エノス、セツ、アダム、そして|神《かみ》にいたる。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスは|聖霊《せいれい》に|満《み》ちてヨルダン|川《がわ》から|帰《かえ》り、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|荒野《あらの》を四十|日《にち》のあいだ|御霊《みたま》にひきまわされて、|悪魔《あくま》の|試《こころ》みにあわれた。そのあいだ|何《なに》も|食《た》べず、その|日数《ひかず》がつきると、|空腹《くうふく》になられた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこで|悪魔《あくま》が|言《い》った、「もしあなたが|神《かみ》の|子《こ》であるなら、この|石《いし》に、パンになれと|命《めい》じてごらんなさい」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「『|人《ひと》はパンだけで|生《い》きるものではない』と|書《か》いてある」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それから、|悪魔《あくま》はイエスを|高《たか》い|所《ところ》へ|連《つ》れて|行《い》き、またたくまに|世界《せかい》のすべての|国々《くにぐに》を|見《み》せて[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「これらの|国々《くにぐに》の|権威《けんい》と|栄華《えいが》とをみんな、あなたにあげましょう。それらはわたしに|任《まか》せられていて、だれでも|好《す》きな|人《ひと》にあげてよいのですから。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それで、もしあなたがわたしの|前《まえ》にひざまずくなら、これを|全部《ぜんぶ》あなたのものにしてあげましょう」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「『|主《しゅ》なるあなたの|神《かみ》を|拝《はい》し、ただ|神《かみ》にのみ|仕《つか》えよ』と|書《か》いてある」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それから|悪魔《あくま》はイエスをエルサレムに|連《つ》れて|行《い》き、|宮《みや》の|頂上《ちょうじょう》に|立《た》たせて|言《い》った、「もしあなたが|神《かみ》の|子《こ》であるなら、ここから|下《した》へ|飛《と》びおりてごらんなさい。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]『|神《かみ》はあなたのために、|御使《みつかい》たちに|命《めい》じてあなたを|守《まも》らせるであろう』とあり、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また、『あなたの|足《あし》が|石《いし》に|打《う》ちつけられないように、|彼《かれ》らはあなたを|手《て》でささえるであろう』とも|書《か》いてあります」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「『|主《しゅ》なるあなたの|神《かみ》を|試《こころ》みてはならない』と|言《い》われている」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|悪魔《あくま》はあらゆる|試《こころ》みをしつくして、|一時《いちじ》イエスを|離《はな》れた。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスは|御霊《みたま》の|力《ちから》に|満《み》ちあふれてガリラヤへ|帰《かえ》られると、そのうわさがその|地方《ちほう》|全体《ぜんたい》にひろまった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|諸《しょ》|会堂《かいどう》で|教《おし》え、みんなの|者《もの》から|尊敬《そんけい》をお|受《う》けになった。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それからお|育《そだ》ちになったナザレに|行《い》き、|安息日《あんそくにち》にいつものように|会堂《かいどう》にはいり、|聖書《せいしょ》を|朗読《ろうどく》しようとして|立《た》たれた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]すると|預言者《よげんしゃ》イザヤの|書《しょ》が|手渡《てわた》されたので、その|書《しょ》を|開《ひら》いて、こう|書《か》いてある|所《ところ》を|出《だ》された、 [#ここから2字下げ] [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》の|御霊《みたま》がわたしに|宿《やど》っている。 |貧《まず》しい|人々《ひとびと》に|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えさせるために、 わたしを|聖《せい》|別《べつ》してくださったからである。 |主《しゅ》はわたしをつかわして、 |囚人《しゅうじん》が|解放《かいほう》され、|盲人《もうじん》の|目《め》が|開《ひら》かれることを|告《つ》げ|知《し》らせ、 |打《う》ちひしがれている|者《もの》に|自由《じゆう》を|得《え》させ、 [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》のめぐみの|年《とし》を|告《つ》げ|知《し》らせるのである」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|聖書《せいしょ》を|巻《ま》いて|係《かか》りの|者《もの》に|返《かえ》し、|席《せき》に|着《つ》かれると、|会堂《かいどう》にいるみんなの|者《もの》の|目《め》がイエスに|注《そそ》がれた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは、「この|聖《せい》|句《く》は、あなたがたが|耳《みみ》にしたこの|日《ひ》に|成就《じょうじゅ》した」と|説《と》きはじめられた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》らはみなイエスをほめ、またその|口《くち》から|出《で》て|来《く》るめぐみの|言葉《ことば》に|感嘆《かんたん》して|言《い》った、「この|人《ひと》はヨセフの|子《こ》ではないか」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたは、きっと『|医者《いしゃ》よ、|自分《じぶん》|自身《じしん》をいやせ』ということわざを|引《ひ》いて、カペナウムで|行《おこな》われたと|聞《き》いていた|事《こと》を、あなたの|郷里《きょうり》のこの|地《ち》でもしてくれ、と|言《い》うであろう」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]それから|言《い》われた、「よく|言《い》っておく。|預言者《よげんしゃ》は、|自分《じぶん》の|郷里《きょうり》では|歓迎《かんげい》されないものである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》いておきなさい。エリヤの|時代《じだい》に、三|年《ねん》六か|月《げつ》にわたって|天《てん》が|閉《と》じ、イスラエル|全土《ぜんど》に|大《だい》ききんがあった|際《さい》、そこには|多《おお》くのやもめがいたのに、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]エリヤはそのうちのだれにもつかわされないで、ただシドンのサレプタにいるひとりのやもめにだけつかわされた。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]また|預言者《よげんしゃ》エリシャの|時代《じだい》に、イスラエルには|多《おお》くのらい|病人《びょうにん》がいたのに、そのうちのひとりもきよめられないで、ただシリヤのナアマンだけがきよめられた」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|会堂《かいどう》にいた|者《もの》たちはこれを|聞《き》いて、みな|憤《いきどお》りに|満《み》ち、[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|立《た》ち|上《あ》がってイエスを|町《まち》の|外《そと》へ|追《お》い|出《だ》し、その|町《まち》が|建《た》っている|丘《おか》のがけまでひっぱって|行《い》って、|突《つ》き|落《おと》そうとした。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスは|彼《かれ》らのまん|中《なか》を|通《とお》り|抜《ぬ》けて、|去《さ》って|行《い》かれた。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスはガリラヤの|町《まち》カペナウムに|下《くだ》って|行《い》かれた。そして|安息日《あんそくにち》になると、|人々《ひとびと》をお|教《おし》えになったが、[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]その|言葉《ことば》に|権威《けんい》があったので、|彼《かれ》らはその|教《おしえ》に|驚《おどろ》いた。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]すると、|汚《けが》れた|悪霊《あくれい》につかれた|人《ひと》が|会堂《かいどう》にいて、|大声《おおごえ》で|叫《さけ》び|出《だ》した、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]「ああ、ナザレのイエスよ、あなたはわたしたちとなんの|係《かか》わりがあるのです。わたしたちを|滅《ほろ》ぼしにこられたのですか。あなたがどなたであるか、わかっています。|神《かみ》の|聖者《せいじゃ》です」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれをしかって、「|黙《だま》れ、この|人《ひと》から|出《で》て|行《い》け」と|言《い》われた。すると|悪霊《あくれい》は|彼《かれ》を|人《ひと》なかに|投《な》げ|倒《たお》し、|傷《きず》は|負《お》わせずに、その|人《ひと》から|出《で》て|行《い》った。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》は|驚《おどろ》いて、|互《たがい》に|語《かた》り|合《あ》って|言《い》った、「これは、いったい、なんという|言葉《ことば》だろう。|権威《けんい》と|力《ちから》とをもって|汚《けが》れた|霊《れい》に|命《めい》じられると、|彼《かれ》らは|出《で》て|行《い》くのだ」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]こうしてイエスの|評判《ひょうばん》が、その|地方《ちほう》のいたる|所《ところ》にひろまっていった。  [#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|会堂《かいどう》を|出《で》てシモンの|家《いえ》におはいりになった。ところがシモンのしゅうとめが|高《たか》い|熱《ねつ》を|病《や》んでいたので、|人々《ひとびと》は|彼女《かのじょ》のためにイエスにお|願《ねが》いした。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスはそのまくらもとに|立《た》って、|熱《ねつ》が|引《ひ》くように|命《めい》じられると、|熱《ねつ》は|引《ひ》き、|女《おんな》はすぐに|起《お》き|上《あ》がって、|彼《かれ》らをもてなした。  [#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|日《ひ》が|暮《く》れると、いろいろな|病気《びょうき》になやむ|者《もの》をかかえている|人々《ひとびと》が、|皆《みな》それをイエスのところに|連《つ》れてきたので、そのひとりびとりに|手《て》を|置《お》いて、おいやしになった。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|悪霊《あくれい》も「あなたこそ|神《かみ》の|子《こ》です」と|叫《さけ》びながら|多《おお》くの|人々《ひとびと》から|出《で》ていった。しかし、イエスは|彼《かれ》らを|戒《いまし》めて、|物《もの》を|言《い》うことをお|許《ゆる》しにならなかった。|彼《かれ》らがイエスはキリストだと|知《し》っていたからである。  [#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けると、イエスは|寂《さび》しい|所《ところ》へ|出《で》て|行《い》かれたが、|群衆《ぐんしゅう》が|捜《さが》しまわって、みもとに|集《あつ》まり、|自分《じぶん》たちから|離《はな》れて|行《い》かれないようにと、|引《ひ》き|止《と》めた。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]しかしイエスは、「わたしは、ほかの|町々《まちまち》にも|神《かみ》の|国《くに》の|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えねばならない。|自分《じぶん》はそのためにつかわされたのである」と|言《い》われた。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]そして、ユダヤの|諸《しょ》|会堂《かいどう》で|教《おしえ》を|説《と》かれた。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|群衆《ぐんしゅう》が|神《かみ》の|言《ことば》を|聞《き》こうとして|押《お》し|寄《よ》せてきたとき、イエスはゲネサレ|湖畔《こはん》に|立《た》っておられたが、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこに二そうの|小舟《こぶね》が|寄《よ》せてあるのをごらんになった。|漁師《りょうし》たちは、|舟《ふね》からおりて|網《あみ》を|洗《あら》っていた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]その一そうはシモンの|舟《ふね》であったが、イエスはそれに|乗《の》り|込《こ》み、シモンに|頼《たの》んで|岸《きし》から|少《すこ》しこぎ|出《だ》させ、そしてすわって、|舟《ふね》の|中《なか》から|群衆《ぐんしゅう》にお|教《おし》えになった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|話《はなし》がすむと、シモンに「|沖《おき》へこぎ|出《だ》し、|網《あみ》をおろして|漁《りょう》をしてみなさい」と|言《い》われた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]シモンは|答《こた》えて|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちは|夜通《よどお》し|働《はたら》きましたが、|何《なに》も|取《と》れませんでした。しかし、お|言葉《ことば》ですから、|網《あみ》をおろしてみましょう」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そしてそのとおりにしたところ、おびただしい|魚《うお》の|群《む》れがはいって、|網《あみ》が|破《やぶ》れそうになった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、もう一そうの|舟《ふね》にいた|仲間《なかま》に、|加勢《かせい》に|来《く》るよう|合図《あいず》をしたので、|彼《かれ》らがきて|魚《うお》を|両方《りょうほう》の|舟《ふね》いっぱいに|入《い》れた。そのために、|舟《ふね》が|沈《しず》みそうになった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]これを|見《み》てシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれ|伏《ふ》して|言《い》った、「|主《しゅ》よ、わたしから|離《はな》れてください。わたしは|罪深《つみふか》い|者《もの》です」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》も|一緒《いっしょ》にいた|者《もの》たちもみな、|取《と》れた|魚《うお》がおびただしいのに|驚《おどろ》いたからである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]シモンの|仲間《なかま》であったゼベダイの|子《こ》ヤコブとヨハネも、|同様《どうよう》であった。すると、イエスがシモンに|言《い》われた、「|恐《おそ》れることはない。|今《いま》からあなたは|人間《にんげん》をとる|漁師《りょうし》になるのだ」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは|舟《ふね》を|陸《りく》に|引《ひ》き|上《あ》げ、いっさいを|捨《す》ててイエスに|従《したが》った。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]イエスがある|町《まち》におられた|時《とき》、|全身《ぜんしん》らい|病《びょう》になっている|人《ひと》がそこにいた。イエスを|見《み》ると、|顔《かお》を|地《ち》に|伏《ふ》せて|願《ねが》って|言《い》った、「|主《しゅ》よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|手《て》を|伸《の》ばして|彼《かれ》にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と|言《い》われた。すると、らい|病《びょう》がただちに|去《さ》ってしまった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、だれにも|話《はな》さないようにと|彼《かれ》に|言《い》い|聞《き》かせ、「ただ|行《い》って|自分《じぶん》のからだを|祭司《さいし》に|見《み》せ、それからあなたのきよめのため、モーセが|命《めい》じたとおりのささげ|物《もの》をして、|人々《ひとびと》に|証明《しょうめい》しなさい」とお|命《めい》じになった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスの|評判《ひょうばん》はますますひろまって|行《い》き、おびただしい|群衆《ぐんしゅう》が、|教《おしえ》を|聞《き》いたり、|病気《びょうき》をなおしてもらったりするために、|集《あつ》まってきた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかしイエスは、|寂《さび》しい|所《ところ》に|退《しりぞ》いて|祈《いの》っておられた。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]ある|日《ひ》のこと、イエスが|教《おし》えておられると、ガリラヤやユダヤの|方々《ほうぼう》の|村《むら》から、またエルサレムからきたパリサイ|人《びと》や|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちが、そこにすわっていた。|主《しゅ》の|力《ちから》が|働《はたら》いて、イエスは|人々《ひとびと》をいやされた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、ある|人々《ひとびと》が、ひとりの|中風《ちゅうぶ》をわずらっている|人《ひと》を|床《とこ》にのせたまま|連《つ》れてきて、|家《いえ》の|中《なか》に|運《はこ》び|入《い》れ、イエスの|前《まえ》に|置《お》こうとした。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|群衆《ぐんしゅう》のためにどうしても|運《はこ》び|入《い》れる|方法《ほうほう》がなかったので、|屋根《やね》にのぼり、|瓦《かわら》をはいで、|病人《びょうにん》を|床《とこ》ごと|群衆《ぐんしゅう》のまん|中《なか》につりおろして、イエスの|前《まえ》においた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らの|信仰《しんこう》を|見《み》て、「|人《ひと》よ、あなたの|罪《つみ》はゆるされた」と|言《い》われた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]すると|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》とパリサイ|人《びと》たちとは、「|神《かみ》を|汚《けが》すことを|言《い》うこの|人《ひと》は、いったい、|何者《なにもの》だ。|神《かみ》おひとりのほかに、だれが|罪《つみ》をゆるすことができるか」と|言《い》って|論《ろん》じはじめた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らの|論議《ろんぎ》を|見《み》ぬいて、「あなたがたは|心《こころ》の|中《なか》で|何《なに》を|論《ろん》じているのか。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|罪《つみ》はゆるされたと|言《い》うのと、|起《お》きて|歩《ある》けと|言《い》うのと、どちらがたやすいか。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|人《ひと》の|子《こ》は|地上《ちじょう》で|罪《つみ》をゆるす|権威《けんい》を|持《も》っていることが、あなたがたにわかるために」と|彼《かれ》らに|対《たい》して|言《い》い、|中風《ちゅうぶ》の|者《もの》にむかって、「あなたに|命《めい》じる。|起《お》きよ、|床《とこ》を|取《と》り|上《あ》げて|家《いえ》に|帰《かえ》れ」と|言《い》われた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]すると|病人《びょうにん》は|即座《そくざ》にみんなの|前《まえ》で|起《お》きあがり、|寝《ね》ていた|床《とこ》を|取《と》りあげて、|神《かみ》をあがめながら|家《いえ》に|帰《かえ》って|行《い》った。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》は|驚嘆《きょうたん》してしまった。そして|神《かみ》をあがめ、おそれに|満《み》たされて、「きょうは|驚《おどろ》くべきことを|見《み》た」と|言《い》った。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そののち、イエスが|出《で》て|行《い》かれると、レビという|名《な》の|取税人《しゅぜいにん》が|収税所《しゅうぜいしょ》にすわっているのを|見《み》て、「わたしに|従《したが》ってきなさい」と|言《い》われた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》はいっさいを|捨《す》てて|立《た》ちあがり、イエスに|従《したが》ってきた。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それから、レビは|自分《じぶん》の|家《いえ》で、イエスのために|盛大《せいだい》な|宴会《えんかい》を|催《もよお》したが、|取税人《しゅぜいにん》やそのほか|大《おお》ぜいの|人々《ひとびと》が、|共《とも》に|食卓《しょくたく》に|着《つ》いていた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが、パリサイ|人《びと》やその|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちが、イエスの|弟子《でし》たちに|対《たい》してつぶやいて|言《い》った、「どうしてあなたがたは、|取税人《しゅぜいにん》や|罪人《つみびと》などと|飲食《いんしょく》を|共《とも》にするのか」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「|健康《けんこう》な|人《ひと》には|医者《いしゃ》はいらない。いるのは|病人《びょうにん》である。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]わたしがきたのは、|義人《ぎじん》を|招《まね》くためではなく、|罪人《つみびと》を|招《まね》いて|悔《く》い|改《あらた》めさせるためである」。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]また|彼《かれ》らはイエスに|言《い》った、「ヨハネの|弟子《でし》たちは、しばしば|断食《だんじき》をし、また|祈《いのり》をしており、パリサイ|人《びと》の|弟子《でし》たちもそうしているのに、あなたの|弟子《でし》たちは|食《た》べたり|飲《の》んだりしています」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|言《い》われた、「あなたがたは、|花婿《はなむこ》が|一緒《いっしょ》にいるのに、|婚礼《こんれい》の|客《きゃく》に|断食《だんじき》をさせることができるであろうか。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|花婿《はなむこ》が|奪《うば》い|去《さ》られる|日《ひ》が|来《く》る。その|日《ひ》には|断食《だんじき》をするであろう」。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスはまた一つの|譬《たとえ》を|語《かた》られた、「だれも、|新《あたら》しい|着物《きもの》から|布《ぬの》ぎれを|切《き》り|取《と》って、|古《ふる》い|着物《きもの》につぎを|当《あ》てるものはない。もしそんなことをしたら、|新《あたら》しい|着物《きもの》を|裂《さ》くことになるし、|新《あたら》しいのから|取《と》った|布《ぬの》ぎれも|古《ふる》いのに|合《あ》わないであろう。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]まただれも、|新《あたら》しいぶどう|酒《しゅ》を|古《ふる》い|皮《かわ》|袋《ぶくろ》に|入《い》れはしない。もしそんなことをしたら、|新《あたら》しいぶどう|酒《しゅ》は|皮《かわ》|袋《ぶくろ》をはり|裂《さ》き、そしてぶどう|酒《しゅ》は|流《な》れ|出《で》るし、|皮《かわ》|袋《ぶくろ》もむだになるであろう。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|新《あたら》しいぶどう|酒《しゅ》は|新《あたら》しい|皮《かわ》|袋《ぶくろ》に|入《い》れるべきである。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]まただれも、|古《ふる》い|酒《さけ》を|飲《の》んでから、|新《あたら》しいのをほしがりはしない。『|古《ふる》いのが|良《よ》い』と|考《かんが》えているからである」。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]ある|安息日《あんそくにち》にイエスが|麦畑《むぎばたけ》の|中《なか》をとおって|行《い》かれたとき、|弟子《でし》たちが|穂《ほ》をつみ、|手《て》でもみながら|食《た》べていた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すると、あるパリサイ|人《びと》たちが|言《い》った、「あなたがたはなぜ、|安息日《あんそくにち》にしてはならぬことをするのか」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスが|答《こた》えて|言《い》われた、「あなたがたは、ダビデとその|供《とも》の|者《もの》たちとが|飢《う》えていたとき、ダビデのしたことについて、|読《よ》んだことがないのか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|神《かみ》の|家《いえ》にはいって、|祭司《さいし》たちのほかだれも|食《た》べてはならぬ|供《そな》えのパンを|取《と》って|食《た》べ、また|供《とも》の|者《もの》たちにも|与《あた》えたではないか」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|人《ひと》の|子《こ》は|安息日《あんそくにち》の|主《しゅ》である」。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]また、ほかの|安息日《あんそくにち》に|会堂《かいどう》にはいって|教《おし》えておられたところ、そこに|右手《みぎて》のなえた|人《ひと》がいた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》やパリサイ|人《びと》たちは、イエスを|訴《うった》える|口実《こうじつ》を|見付《みつ》けようと|思《おも》って、|安息日《あんそくにち》にいやされるかどうかをうかがっていた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らの|思《おも》っていることを|知《し》って、その|手《て》のなえた|人《ひと》に、「|起《お》きて、まん|中《なか》に|立《た》ちなさい」と|言《い》われると、|起《お》き|上《あ》がって|立《た》った。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らにむかって|言《い》われた、「あなたがたに|聞《き》くが、|安息日《あんそくにち》に|善《ぜん》を|行《おこな》うのと|悪《あく》を|行《おこな》うのと、|命《いのち》を|救《すく》うのと|殺《ころ》すのと、どちらがよいか」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》ら|一同《いちどう》を|見《み》まわして、その|人《ひと》に「|手《て》を|伸《の》ばしなさい」と|言《い》われた。そのとおりにすると、その|手《て》は|元《もと》どおりになった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは|激《はげ》しく|怒《いか》って、イエスをどうかしてやろうと、|互《たがい》に|話合《はなしあ》いをはじめた。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]このころ、イエスは|祈《いの》るために|山《やま》へ|行《い》き、|夜《よ》を|徹《てっ》して|神《かみ》に|祈《いの》られた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けると、|弟子《でし》たちを|呼《よ》び|寄《よ》せ、その|中《なか》から十二|人《にん》を|選《えら》び|出《だ》し、これに|使徒《しと》という|名《な》をお|与《あた》えになった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、ペテロとも|呼《よ》ばれたシモンとその|兄弟《きょうだい》アンデレ、ヤコブとヨハネ、ピリポとバルトロマイ、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]マタイとトマス、アルパヨの|子《こ》ヤコブと、|熱心《ねっしん》|党《とう》と|呼《よ》ばれたシモン、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]ヤコブの|子《こ》ユダ、それからイスカリオテのユダ。このユダが|裏切者《うらぎりもの》となったのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そして、イエスは|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》に|山《やま》を|下《くだ》って|平地《ひらち》に|立《た》たれたが、|大《おお》ぜいの|弟子《でし》たちや、ユダヤ|全土《ぜんど》、エルサレム、ツロとシドンの|海岸《かいがん》|地方《ちほう》などからの|大《だい》|群衆《ぐんしゅう》が、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|教《おしえ》を|聞《き》こうとし、また|病気《びょうき》をなおしてもらおうとして、そこにきていた。そして|汚《けが》れた|霊《れい》に|悩《なや》まされている|者《もの》たちも、いやされた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また|群衆《ぐんしゅう》はイエスにさわろうと|努《つと》めた。それは|力《ちから》がイエスの|内《うち》から|出《で》て、みんなの|者《もの》を|次々《つぎつぎ》にいやしたからである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスは|目《め》をあげ、|弟子《でし》たちを|見《み》て|言《い》われた、 [#ここから2字下げ] 「あなたがた|貧《まず》しい|人《ひと》たちは、さいわいだ。 |神《かみ》の|国《くに》はあなたがたのものである。 [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたいま|飢《う》えている|人《ひと》たちは、さいわいだ。 |飽《あ》き|足《た》りるようになるからである。 あなたがたいま|泣《な》いている|人《ひと》たちは、さいわいだ。 |笑《わら》うようになるからである。 [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》があなたがたを|憎《にく》むとき、また|人《ひと》の|子《こ》のためにあなたがたを|排斥《はいせき》し、ののしり、|汚名《おめい》を|着《き》せるときは、あなたがたはさいわいだ。 [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には|喜《よろこ》びおどれ。|見《み》よ、|天《てん》においてあなたがたの|受《う》ける|報《むく》いは|大《おお》きいのだから。|彼《かれ》らの|祖先《そせん》も、|預言者《よげんしゃ》たちに|対《たい》して|同《おな》じことをしたのである。 [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]しかしあなたがた|富《と》んでいる|人《ひと》たちは、わざわいだ。 |慰《なぐさ》めを|受《う》けてしまっているからである。 [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがた|今《いま》|満腹《まんぷく》している|人《ひと》たちは、わざわいだ。 |飢《う》えるようになるからである。 あなたがた|今《いま》|笑《わら》っている|人《ひと》たちは、わざわいだ。|悲《かな》しみ|泣《な》くようになるからである。 [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》が|皆《みな》あなたがたをほめるときは、あなたがたはわざわいだ。|彼《かれ》らの|祖先《そせん》も、にせ|預言者《よげんしゃ》たちに|対《たい》して|同《おな》じことをしたのである。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|聞《き》いているあなたがたに|言《い》う。|敵《てき》を|愛《あい》し、|憎《にく》む|者《もの》に|親切《しんせつ》にせよ。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]のろう|者《もの》を|祝福《しゅくふく》し、はずかしめる|者《もの》のために|祈《いの》れ。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|頬《ほお》を|打《う》つ|者《もの》にはほかの|頬《ほお》をも|向《む》けてやり、あなたの|上着《うわぎ》を|奪《うば》い|取《と》る|者《もの》には|下着《したぎ》をも|拒《こば》むな。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたに|求《もと》める|者《もの》には|与《あた》えてやり、あなたの|持《も》ち|物《もの》を|奪《うば》う|者《もの》からは|取《と》りもどそうとするな。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》にしてほしいと、あなたがたの|望《のぞ》むことを、|人々《ひとびと》にもそのとおりにせよ。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》を|愛《あい》してくれる|者《もの》を|愛《あい》したからとて、どれほどの|手柄《てがら》になろうか。|罪人《つみびと》でさえ、|自分《じぶん》を|愛《あい》してくれる|者《もの》を|愛《あい》している。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》によくしてくれる|者《もの》によくしたとて、どれほどの|手柄《てがら》になろうか。|罪人《つみびと》でさえ、それくらいの|事《こと》はしている。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]また|返《かえ》してもらうつもりで|貸《か》したとて、どれほどの|手柄《てがら》になろうか。|罪人《つみびと》でも、|同《おな》じだけのものを|返《かえ》してもらおうとして、|仲間《なかま》に|貸《か》すのである。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたは、|敵《てき》を|愛《あい》し、|人《ひと》によくしてやり、また|何《なに》も|当《あ》てにしないで|貸《か》してやれ。そうすれば|受《う》ける|報《むく》いは|大《おお》きく、あなたがたはいと|高《たか》き|者《もの》の|子《こ》となるであろう。いと|高《たか》き|者《もの》は、|恩《おん》を|知《し》らぬ|者《もの》にも|悪人《あくにん》にも、なさけ|深《ぶか》いからである。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|父《ちち》なる|神《かみ》が|慈悲《じひ》|深《ぶか》いように、あなたがたも|慈悲《じひ》|深《ぶか》い|者《もの》となれ。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》をさばくな。そうすれば、|自分《じぶん》もさばかれることがないであろう。また|人《ひと》を|罪《つみ》に|定《さだ》めるな。そうすれば、|自分《じぶん》も|罪《つみ》に|定《さだ》められることがないであろう。ゆるしてやれ。そうすれば、|自分《じぶん》もゆるされるであろう。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|与《あた》えよ。そうすれば、|自分《じぶん》にも|与《あた》えられるであろう。|人々《ひとびと》はおし|入《い》れ、ゆすり|入《い》れ、あふれ|出《で》るまでに|量《りょう》をよくして、あなたがたのふところに|入《い》れてくれるであろう。あなたがたの|量《はか》るその|量《はか》りで、|自分《じぶん》にも|量《はか》りかえされるであろうから」。  [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]イエスはまた一つの|譬《たとえ》を|語《かた》られた、「|盲人《もうじん》は|盲人《もうじん》の|手引《てびき》ができようか。ふたりとも|穴《あな》に|落《お》ち|込《こ》まないだろうか。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》はその|師《し》|以上《いじょう》のものではないが、|修業《しゅうぎょう》をつめば、みなその|師《し》のようになろう。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]なぜ、|兄弟《きょうだい》の|目《め》にあるちりを|見《み》ながら、|自分《じぶん》の|目《め》にある|梁《はり》を|認《みと》めないのか。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|目《め》にある|梁《はり》は|見《み》ないでいて、どうして|兄弟《きょうだい》にむかって、|兄弟《きょうだい》よ、あなたの|目《め》にあるちりを|取《と》らせてください、と|言《い》えようか。|偽善者《ぎぜんしゃ》よ、まず|自分《じぶん》の|目《め》から|梁《はり》を|取《と》りのけるがよい、そうすれば、はっきり|見《み》えるようになって、|兄弟《きょうだい》の|目《め》にあるちりを|取《と》りのけることができるだろう。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|悪《わる》い|実《み》のなる|良《よ》い|木《き》はないし、また|良《よ》い|実《み》のなる|悪《わる》い|木《き》もない。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]|木《き》はそれぞれ、その|実《み》でわかる。いばらからいちじくを|取《と》ることはないし、|野《の》ばらからぶどうを|摘《つ》むこともない。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|善人《ぜんにん》は|良《よ》い|心《こころ》の|倉《くら》から|良《よ》い|物《もの》を|取《と》り|出《だ》し、|悪人《あくにん》は|悪《わる》い|倉《くら》から|悪《わる》い|物《もの》を|取《と》り|出《だ》す。|心《こころ》からあふれ|出《で》ることを、|口《くち》が|語《かた》るものである。  [#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]わたしを|主《しゅ》よ、|主《しゅ》よ、と|呼《よ》びながら、なぜわたしの|言《い》うことを|行《おこな》わないのか。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]わたしのもとにきて、わたしの|言葉《ことば》を|聞《き》いて|行《おこな》う|者《もの》が、|何《なに》に|似《に》ているか、あなたがたに|教《おし》えよう。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]それは、|地《ち》を|深《ふか》く|掘《ほ》り、|岩《いわ》の|上《うえ》に|土台《どだい》をすえて|家《いえ》を|建《た》てる|人《ひと》に|似《に》ている。|洪水《こうずい》が|出《で》て|激流《げきりゅう》がその|家《いえ》に|押《お》し|寄《よ》せてきても、それを|揺《ゆ》り|動《うご》かすことはできない。よく|建《た》ててあるからである。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]しかし|聞《き》いても|行《おこな》わない|人《ひと》は、|土台《どだい》なしで、|土《つち》の|上《うえ》に|家《いえ》を|建《た》てた|人《ひと》に|似《に》ている。|激流《げきりゅう》がその|家《いえ》に|押《お》し|寄《よ》せてきたら、たちまち|倒《たお》れてしまい、その|被害《ひがい》は|大《おお》きいのである」。 第七章[#「第七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれらの|言葉《ことば》をことごとく|人々《ひとびと》に|聞《き》かせてしまったのち、カペナウムに|帰《かえ》ってこられた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ある|百卒長《ひゃくそつちょう》の|頼《たの》みにしていた|僕《しもべ》が、|病気《びょうき》になって|死《し》にかかっていた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]この|百卒長《ひゃくそつちょう》はイエスのことを|聞《き》いて、ユダヤ|人《じん》の|長老《ちょうろう》たちをイエスのところにつかわし、|自分《じぶん》の|僕《しもべ》を|助《たす》けにきてくださるようにと、お|願《ねが》いした。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはイエスのところにきて、|熱心《ねっしん》に|願《ねが》って|言《い》った、「あの|人《ひと》はそうしていただくねうちがございます。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|国民《こくみん》を|愛《あい》し、わたしたちのために|会堂《かいどう》を|建《た》ててくれたのです」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》らと|連《つ》れだってお|出《で》かけになった。ところが、その|家《いえ》からほど|遠《とお》くないあたりまでこられたとき、|百卒長《ひゃくそつちょう》は|友《とも》だちを|送《おく》ってイエスに|言《い》わせた、「|主《しゅ》よ、どうぞ、ご|足労《そくろう》くださいませんように。わたしの|屋根《やね》の|下《した》にあなたをお|入《い》れする|資格《しかく》は、わたしにはございません。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それですから、|自分《じぶん》でお|迎《むか》えにあがるねうちさえないと|思《おも》っていたのです。ただ、お|言葉《ことば》を|下《くだ》さい。そして、わたしの|僕《しもべ》をなおしてください。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしも|権威《けんい》の|下《した》に|服《ふく》している|者《もの》ですが、わたしの|下《した》にも|兵卒《へいそつ》がいまして、ひとりの|者《もの》に『|行《い》け』と|言《い》えば|行《い》き、ほかの|者《もの》に『こい』と|言《い》えばきますし、また、|僕《しもべ》に『これをせよ』と|言《い》えば、してくれるのです」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれを|聞《き》いて|非常《ひじょう》に|感心《かんしん》され、ついてきた|群衆《ぐんしゅう》の|方《ほう》に|振《ふ》り|向《む》いて|言《い》われた、「あなたがたに|言《い》っておくが、これほどの|信仰《しんこう》は、イスラエルの|中《なか》でも|見《み》たことがない」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|使《つかい》にきた|者《もの》たちが|家《いえ》に|帰《かえ》ってみると、|僕《しもべ》は|元気《げんき》になっていた。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そののち、|間《ま》もなく、ナインという|町《まち》へおいでになったが、|弟子《でし》たちや|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》も|一緒《いっしょ》に|行《い》った。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|町《まち》の|門《もん》に|近《ちか》づかれると、ちょうど、あるやもめにとってひとりむすこであった|者《もの》が|死《し》んだので、|葬《ほうむ》りに|出《だ》すところであった。|大《おお》ぜいの|町《まち》の|人《ひと》たちが、その|母《はは》につきそっていた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》はこの|婦人《ふじん》を|見《み》て|深《ふか》い|同情《どうじょう》を|寄《よ》せられ、「|泣《な》かないでいなさい」と|言《い》われた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして|近寄《ちかよ》って|棺《かん》に|手《て》をかけられると、かついでいる|者《もの》たちが|立《た》ち|止《ど》まったので、「|若者《わかもの》よ、さあ、|起《お》きなさい」と|言《い》われた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すると、|死人《しにん》が|起《お》き|上《あ》がって|物《もの》を|言《い》い|出《だ》した。イエスは|彼《かれ》をその|母《はは》にお|渡《わた》しになった。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はみな|恐《おそ》れをいだき、「|大《だい》|預言者《よげんしゃ》がわたしたちの|間《あいだ》に|現《あらわ》れた」、また、「|神《かみ》はその|民《たみ》を|顧《かえり》みてくださった」と|言《い》って、|神《かみ》をほめたたえた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスについてのこの|話《はなし》は、ユダヤ|全土《ぜんど》およびその|附近《ふきん》のいたる|所《ところ》にひろまった。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネの|弟子《でし》たちは、これらのことを|全部《ぜんぶ》|彼《かれ》に|報告《ほうこく》した。するとヨハネは|弟子《でし》の|中《なか》からふたりの|者《もの》を|呼《よ》んで、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》のもとに|送《おく》り、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを|待《ま》つべきでしょうか」と|尋《たず》ねさせた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、この|人《ひと》たちがイエスのもとにきて|言《い》った、「わたしたちはバプテスマのヨハネからの|使《つかい》ですが、『きたるべきかた』はあなたなのですか、それとも、ほかにだれかを|待《ま》つべきでしょうか、とヨハネが|尋《たず》ねています」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスはさまざまの|病苦《びょうく》と|悪霊《あくれい》とに|悩《なや》む|人々《ひとびと》をいやし、また|多《おお》くの|盲人《もうじん》を|見《み》えるようにしておられたが、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|答《こた》えて|言《い》われた、「|行《い》って、あなたがたが|見聞《みき》きしたことを、ヨハネに|報告《ほうこく》しなさい。|盲人《もうじん》は|見《み》え、|足《あし》なえは|歩《ある》き、らい|病人《びょうにん》はきよまり、|耳《みみ》しいは|聞《きこ》え、|死人《しにん》は|生《い》きかえり、|貧《まず》しい|人々《ひとびと》は|福音《ふくいん》を|聞《き》かされている。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]わたしにつまずかない|者《もの》は、さいわいである」。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネの|使《つかい》が|行《い》ってしまうと、イエスはヨハネのことを|群衆《ぐんしゅう》に|語《かた》りはじめられた、「あなたがたは、|何《なに》を|見《み》に|荒野《あらの》に|出《で》てきたのか。|風《かぜ》に|揺《ゆ》らぐ|葦《あし》であるか。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]では、|何《なに》を|見《み》に|出《で》てきたのか。|柔《やわ》らかい|着物《きもの》をまとった|人《ひと》か。きらびやかに|着《つ》かざって、ぜいたくに|暮《くら》している|人々《ひとびと》なら、|宮殿《きゅうでん》にいる。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]では、|何《なに》を|見《み》に|出《で》てきたのか。|預言者《よげんしゃ》か。そうだ、あなたがたに|言《い》うが、|預言者《よげんしゃ》|以上《いじょう》の|者《もの》である。 [#ここから2字下げ] [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]『|見《み》よ、わたしは|使《つかい》をあなたの|先《さき》につかわし、 あなたの|前《まえ》に、|道《みち》を|整《ととの》えさせるであろう』 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるのは、この|人《ひと》のことである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》っておく。|女《おんな》の|産《う》んだ|者《もの》の|中《なか》で、ヨハネより|大《おお》きい|人物《じんぶつ》はいない。しかし、|神《かみ》の|国《くに》で|最《もっと》も|小《ちい》さい|者《もの》も、|彼《かれ》よりは|大《おお》きい。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり](これを|聞《き》いた|民衆《みんしゅう》は|皆《みな》、また|取税人《しゅぜいにん》たちも、ヨハネのバプテスマを|受《う》けて|神《かみ》の|正《ただ》しいことを|認《みと》めた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、パリサイ|人《びと》と|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちとは|彼《かれ》からバプテスマを|受《う》けないで、|自分《じぶん》たちに|対《たい》する|神《かみ》のみこころを|無《む》にした。)[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]だから|今《いま》の|時代《じだい》の|人々《ひとびと》を|何《なに》に|比《くら》べようか。|彼《かれ》らは|何《なに》に|似《に》ているか。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]それは|子供《こども》たちが|広場《ひろば》にすわって、|互《たがい》に|呼《よ》びかけ、 [#ここから2字下げ] 『わたしたちが|笛《ふえ》を|吹《ふ》いたのに、 あなたたちは|踊《おど》ってくれなかった。 |弔《とむら》いの|歌《うた》を|歌《うた》ったのに、 |泣《な》いてくれなかった』 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》うのに|似《に》ている。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、バプテスマのヨハネがきて、パンを|食《た》べることも、ぶどう|酒《しゅ》を|飲《の》むこともしないと、あなたがたは、あれは|悪霊《あくれい》につかれているのだ、と|言《い》い、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]また|人《ひと》の|子《こ》がきて|食《た》べたり|飲《の》んだりしていると、|見《み》よ、あれは|食《しょく》をむさぼる|者《もの》、|大酒《おおざけ》を|飲《の》む|者《もの》、また|取税人《しゅぜいにん》、|罪人《つみびと》の|仲間《なかま》だ、と|言《い》う。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|知恵《ちえ》の|正《ただ》しいことは、そのすべての|子《こ》が|証明《しょうめい》する」。  [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]あるパリサイ|人《びと》がイエスに、|食事《しょくじ》を|共《とも》にしたいと|申《もう》し|出《で》たので、そのパリサイ|人《びと》の|家《いえ》にはいって|食卓《しょくたく》に|着《つ》かれた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]するとそのとき、その|町《まち》で|罪《つみ》の|女《おんな》であったものが、パリサイ|人《びと》の|家《いえ》で|食卓《しょくたく》に|着《つ》いておられることを|聞《き》いて、|香油《こうゆ》が|入《い》れてある|石膏《せっこう》のつぼを|持《も》ってきて、[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|泣《な》きながら、イエスのうしろでその|足《あし》もとに|寄《よ》り、まず|涙《なみだ》でイエスの|足《あし》をぬらし、|自分《じぶん》の|髪《かみ》の|毛《け》でぬぐい、そして、その|足《あし》に|接吻《せっぷん》して、|香油《こうゆ》を|塗《ぬ》った。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]イエスを|招《まね》いたパリサイ|人《びと》がそれを|見《み》て、|心《こころ》の|中《なか》で|言《い》った、「もしこの|人《ひと》が|預言者《よげんしゃ》であるなら、|自分《じぶん》にさわっている|女《おんな》がだれだか、どんな|女《おんな》かわかるはずだ。それは|罪《つみ》の|女《おんな》なのだから」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》にむかって|言《い》われた、「シモン、あなたに|言《い》うことがある」。|彼《かれ》は「|先生《せんせい》、おっしゃってください」と|言《い》った。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|言《い》われた、「ある|金貸《かねか》しに|金《かね》をかりた|人《ひと》がふたりいたが、ひとりは五百デナリ、もうひとりは五十デナリを|借《か》りていた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|返《かえ》すことができなかったので、|彼《かれ》はふたり|共《とも》ゆるしてやった。このふたりのうちで、どちらが|彼《かれ》を|多《おお》く|愛《あい》するだろうか」。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]シモンが|答《こた》えて|言《い》った、「|多《おお》くゆるしてもらったほうだと|思《おも》います」。イエスが|言《い》われた、「あなたの|判断《はんだん》は|正《ただ》しい」。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]それから|女《おんな》の|方《ほう》に|振《ふ》り|向《む》いて、シモンに|言《い》われた、「この|女《おんな》を|見《み》ないか。わたしがあなたの|家《いえ》にはいってきた|時《とき》に、あなたは|足《あし》を|洗《あら》う|水《みず》をくれなかった。ところが、この|女《おんな》は|涙《なみだ》でわたしの|足《あし》をぬらし、|髪《かみ》の|毛《け》でふいてくれた。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]あなたはわたしに|接吻《せっぷん》をしてくれなかったが、|彼女《かのじょ》はわたしが|家《いえ》にはいった|時《とき》から、わたしの|足《あし》に|接吻《せっぷん》をしてやまなかった。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]あなたはわたしの|頭《あたま》に|油《あぶら》を|塗《ぬ》ってくれなかったが、|彼女《かのじょ》はわたしの|足《あし》に|香油《こうゆ》を|塗《ぬ》ってくれた。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]それであなたに|言《い》うが、この|女《おんな》は|多《おお》く|愛《あい》したから、その|多《おお》くの|罪《つみ》はゆるされているのである。|少《すこ》しだけゆるされた|者《もの》は、|少《すこ》しだけしか|愛《あい》さない」。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]そして|女《おんな》に、「あなたの|罪《つみ》はゆるされた」と|言《い》われた。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]すると|同席《どうせき》の|者《もの》たちが|心《こころ》の|中《なか》で|言《い》いはじめた、「|罪《つみ》をゆるすことさえするこの|人《ひと》は、いったい、|何者《なにもの》だろう」。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスは|女《おんな》にむかって|言《い》われた、「あなたの|信仰《しんこう》があなたを|救《すく》ったのです。|安心《あんしん》して|行《い》きなさい」。 第八章[#「第八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そののちイエスは、|神《かみ》の|国《くに》の|福音《ふくいん》を|説《と》きまた|伝《つた》えながら、|町々《まちまち》|村々《むらむら》を|巡回《じゅんかい》し|続《つづ》けられたが、十二|弟子《でし》もお|供《とも》をした。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]また|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》され|病気《びょうき》をいやされた|数名《すうめい》の|婦人《ふじん》たち、すなわち、七つの|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》してもらったマグダラと|呼《よ》ばれるマリヤ、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ヘロデの|家令《かれい》クーザの|妻《つま》ヨハンナ、スザンナ、そのほか|多《おお》くの|婦人《ふじん》たちも|一緒《いっしょ》にいて、|自分《じぶん》たちの|持《も》ち|物《もの》をもって|一行《いっこう》に|奉仕《ほうし》した。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]さて、|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》が|集《あつ》まり、その|上《うえ》、|町々《まちまち》からの|人《ひと》たちがイエスのところに、ぞくぞくと|押《お》し|寄《よ》せてきたので、一つの|譬《たとえ》で|話《はなし》をされた、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]「|種《たね》まきが|種《たね》をまきに|出《で》て|行《い》った。まいているうちに、ある|種《たね》は|道《みち》ばたに|落《お》ち、|踏《ふ》みつけられ、そして|空《そら》の|鳥《とり》に|食《た》べられてしまった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|種《たね》は|岩《いわ》の|上《うえ》に|落《お》ち、はえはしたが|水気《みずけ》がないので|枯《か》れてしまった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|種《たね》は、いばらの|間《あいだ》に|落《お》ちたので、いばらも|一緒《いっしょ》に|茂《しげ》ってきて、それをふさいでしまった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ほかの|種《たね》は|良《よ》い|地《ち》に|落《お》ちたので、はえ|育《そだ》って百|倍《ばい》もの|実《み》を|結《むす》んだ」。こう|語《かた》られたのち、|声《こえ》をあげて「|聞《き》く|耳《みみ》のある|者《もの》は|聞《き》くがよい」と|言《い》われた。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは、この|譬《たとえ》はどういう|意味《いみ》でしょうか、とイエスに|質問《しつもん》した。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|言《い》われた、「あなたがたには、|神《かみ》の|国《くに》の|奥義《おくぎ》を|知《し》ることが|許《ゆる》されているが、ほかの|人《ひと》たちには、|見《み》ても|見《み》えず、|聞《き》いても|悟《さと》られないために、|譬《たとえ》で|話《はな》すのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]この|譬《たとえ》はこういう|意味《いみ》である。|種《たね》は|神《かみ》の|言《ことば》である。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|道《みち》ばたに|落《お》ちたのは、|聞《き》いたのち、|信《しん》じることも|救《すく》われることもないように、|悪魔《あくま》によってその|心《こころ》から|御言《みことば》が|奪《うば》い|取《と》られる|人《ひと》たちのことである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|岩《いわ》の|上《うえ》に|落《お》ちたのは、|御言《みことば》を|聞《き》いた|時《とき》には|喜《よろこ》んで|受《う》けいれるが、|根《ね》が|無《な》いので、しばらくは|信《しん》じていても、|試錬《しれん》の|時《とき》が|来《く》ると、|信仰《しんこう》を|捨《す》てる|人《ひと》たちのことである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]いばらの|中《なか》に|落《お》ちたのは、|聞《き》いてから|日《ひ》を|過《す》ごすうちに、|生活《せいかつ》の|心《こころ》づかいや|富《とみ》や|快楽《かいらく》にふさがれて、|実《み》の|熟《じゅく》するまでにならない|人《ひと》たちのことである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|良《よ》い|地《ち》に|落《お》ちたのは、|御言《みことば》を|聞《き》いたのち、これを|正《ただ》しい|良《よ》い|心《こころ》でしっかりと|守《まも》り、|耐《た》え|忍《しの》んで|実《み》を|結《むす》ぶに|至《いた》る|人《ひと》たちのことである。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]だれもあかりをともして、それを|何《なに》かの|器《うつわ》でおおいかぶせたり、|寝台《しんだい》の|下《した》に|置《お》いたりはしない。|燭台《しょくだい》の|上《うえ》に|置《お》いて、はいって|来《く》る|人《ひと》たちに|光《ひかり》が|見《み》えるようにするのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|隠《かく》されているもので、あらわにならないものはなく、|秘密《ひみつ》にされているもので、ついには|知《し》られ、|明《あか》るみに|出《だ》されないものはない。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]だから、どう|聞《き》くかに|注意《ちゅうい》するがよい。|持《も》っている|人《ひと》は|更《さら》に|与《あた》えられ、|持《も》っていない|人《ひと》は、|持《も》っていると|思《おも》っているものまでも、|取《と》り|上《あ》げられるであろう」。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスの|母《はは》と|兄弟《きょうだい》たちとがイエスのところにきたが、|群衆《ぐんしゅう》のためそば|近《ちか》くに|行《い》くことができなかった。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]それで、だれかが「あなたの|母上《ははうえ》と|兄弟《きょうだい》がたが、お|目《め》にかかろうと|思《おも》って、|外《そと》に|立《た》っておられます」と|取次《とりつ》いだ。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|人々《ひとびと》にむかって|言《い》われた、「|神《かみ》の|御言《みことば》を|聞《き》いて|行《おこな》う|者《もの》こそ、わたしの|母《はは》、わたしの|兄弟《きょうだい》なのである」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ある|日《ひ》のこと、イエスは|弟子《でし》たちと|舟《ふね》に|乗《の》り|込《こ》み、「|湖《みずうみ》の|向《む》こう|岸《ぎし》へ|渡《わた》ろう」と|言《い》われたので、|一同《いちどう》が|船出《ふなで》した。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|渡《わた》って|行《い》く|間《あいだ》に、イエスは|眠《ねむ》ってしまわれた。すると|突風《とっぷう》が|湖《みずうみ》に|吹《ふ》きおろしてきたので、|彼《かれ》らは|水《みず》をかぶって|危険《きけん》になった。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、みそばに|寄《よ》ってきてイエスを|起《おこ》し、「|先生《せんせい》、|先生《せんせい》、わたしたちは|死《し》にそうです」と|言《い》った。イエスは|起《お》き|上《あ》がって、|風《かぜ》と|荒浪《あらなみ》とをおしかりになると、|止《や》んでなぎになった。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたの|信仰《しんこう》は、どこにあるのか」。|彼《かれ》らは|恐《おそ》れ|驚《おどろ》いて|互《たがい》に|言《い》い|合《あ》った、「いったい、このかたはだれだろう。お|命《めい》じになると、|風《かぜ》も|水《みず》も|従《したが》うとは」。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》らはガリラヤの|対岸《たいがん》、ゲラサ|人《びと》の|地《ち》に|渡《わた》った。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|陸《りく》にあがられると、その|町《まち》の|人《ひと》で、|悪霊《あくれい》につかれて|長《なが》いあいだ|着物《きもの》も|着《き》ず、|家《いえ》に|居《い》つかないで|墓場《はかば》にばかりいた|人《ひと》に、|出会《であ》われた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》がイエスを|見《み》て|叫《さけ》び|出《だ》し、みまえにひれ|伏《ふ》して|大声《おおごえ》で|言《い》った、「いと|高《たか》き|神《かみ》の|子《こ》イエスよ、あなたはわたしとなんの|係《かか》わりがあるのです。お|願《ねが》いです、わたしを|苦《くる》しめないでください」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それは、イエスが|汚《けが》れた|霊《れい》に、その|人《ひと》から|出《で》て|行《い》け、とお|命《めい》じになったからである。というのは、|悪霊《あくれい》が|何《なん》|度《ど》も|彼《かれ》をひき|捕《とら》えたので、|彼《かれ》は|鎖《くさり》と|足《あし》かせとでつながれて|看《み》|視《し》されていたが、それを|断《た》ち|切《き》っては|悪霊《あくれい》によって|荒野《あらの》へ|追《お》いやられていたのである。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に「なんという|名前《なまえ》か」とお|尋《たず》ねになると、「レギオンと|言《い》います」と|答《こた》えた。|彼《かれ》の|中《なか》にたくさんの|悪霊《あくれい》がはいり|込《こ》んでいたからである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|悪霊《あくれい》どもは、|底《そこ》|知《し》れぬ|所《ところ》に|落《お》ちて|行《い》くことを|自分《じぶん》たちにお|命《めい》じにならぬようにと、イエスに|願《ねが》いつづけた。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、そこの|山《やま》べにおびただしい|豚《ぶた》の|群《む》れが|飼《か》ってあったので、その|豚《ぶた》の|中《なか》へはいることを|許《ゆる》していただきたいと、|悪霊《あくれい》どもが|願《ねが》い|出《で》た。イエスはそれをお|許《ゆる》しになった。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そこで|悪霊《あくれい》どもは、その|人《ひと》から|出《で》て|豚《ぶた》の|中《なか》へはいり|込《こ》んだ。するとその|群《む》れは、がけから|湖《みずうみ》へなだれを|打《う》って|駆《か》け|下《くだ》り、おぼれ|死《し》んでしまった。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|飼《か》う|者《もの》たちは、この|出来事《できごと》を|見《み》て|逃《に》げ|出《だ》して、|町《まち》や|村里《むらざと》にふれまわった。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はこの|出来事《できごと》を|見《み》に|出《で》てきた。そして、イエスのところにきて、|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》してもらった|人《ひと》が|着物《きもの》を|着《き》て、|正気《しょうき》になってイエスの|足《あし》もとにすわっているのを|見《み》て、|恐《おそ》れた。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]それを|見《み》た|人《ひと》たちは、この|悪霊《あくれい》につかれていた|者《もの》が|救《すく》われた|次第《しだい》を、|彼《かれ》らに|語《かた》り|聞《き》かせた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]それから、ゲラサの|地方《ちほう》の|民衆《みんしゅう》はこぞって、|自分《じぶん》たちの|所《ところ》から|立《た》ち|去《さ》ってくださるようにとイエスに|頼《たの》んだ。|彼《かれ》らが|非常《ひじょう》な|恐怖《きょうふ》に|襲《おそ》われていたからである。そこで、イエスは|舟《ふね》に|乗《の》って|帰《かえ》りかけられた。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》してもらった|人《ひと》は、お|供《とも》をしたいと、しきりに|願《ねが》ったが、イエスはこう|言《い》って|彼《かれ》をお|帰《かえ》しになった。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]「|家《いえ》へ|帰《かえ》って、|神《かみ》があなたにどんなに|大《おお》きなことをしてくださったか、|語《かた》り|聞《き》かせなさい」。そこで|彼《かれ》は|立《た》ち|去《さ》って、|自分《じぶん》にイエスがして|下《くだ》さったことを、ことごとく|町中《まちじゅう》に|言《い》いひろめた。  [#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|帰《かえ》ってこられると、|群衆《ぐんしゅう》は|喜《よろこ》び|迎《むか》えた。みんながイエスを|待《ま》ちうけていたのである。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]するとそこに、ヤイロという|名《な》の|人《ひと》がきた。この|人《ひと》は|会堂司《かいどうづかさ》であった。イエスの|足《あし》もとにひれ|伏《ふ》して、|自分《じぶん》の|家《いえ》においでくださるようにと、しきりに|願《ねが》った。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》に十二|歳《さい》ばかりになるひとり|娘《むすめ》があったが、|死《し》にかけていた。ところが、イエスが|出《で》て|行《い》かれる|途中《とちゅう》、|群衆《ぐんしゅう》が|押《お》し|迫《せま》ってきた。  [#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]ここに、十二|年間《ねんかん》も|長《なが》|血《ち》をわずらっていて、|医者《いしゃ》のために|自分《じぶん》の|身代《しんだい》をみな|使《つか》い|果《はた》してしまったが、だれにもなおしてもらえなかった|女《おんな》がいた。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》がうしろから|近寄《ちかよ》ってみ|衣《ころも》のふさにさわったところ、その|長《なが》|血《ち》がたちまち|止《と》まってしまった。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「わたしにさわったのは、だれか」。|人々《ひとびと》はみな|自分《じぶん》ではないと|言《い》ったので、ペテロが「|先生《せんせい》、|群衆《ぐんしゅう》があなたを|取《と》り|囲《かこ》んで、ひしめき|合《あ》っているのです」と|答《こた》えた。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]しかしイエスは|言《い》われた、「だれかがわたしにさわった。|力《ちから》がわたしから|出《で》て|行《い》ったのを|感《かん》じたのだ」。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》は|隠《かく》しきれないのを|知《し》って、|震《ふる》えながら|進《すす》み|出《で》て、みまえにひれ|伏《ふ》し、イエスにさわった|訳《わけ》と、さわるとたちまちなおったこととを、みんなの|前《まえ》で|話《はな》した。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスが|女《おんな》に|言《い》われた、「|娘《むすめ》よ、あなたの|信仰《しんこう》があなたを|救《すく》ったのです。|安心《あんしん》して|行《い》きなさい」。  [#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]イエスがまだ|話《はな》しておられるうちに、|会堂司《かいどうづかさ》の|家《いえ》から|人《ひと》がきて、「お|嬢《じょう》さんはなくなられました。この|上《うえ》、|先生《せんせい》を|煩《わずら》わすには|及《およ》びません」と|言《い》った。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]しかしイエスはこれを|聞《き》いて|会堂司《かいどうづかさ》にむかって|言《い》われた、「|恐《おそ》れることはない。ただ|信《しん》じなさい。|娘《むすめ》は|助《たす》かるのだ」。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]それから|家《いえ》にはいられるとき、ペテロ、ヨハネ、ヤコブおよびその|子《こ》の|父母《ふぼ》のほかは、だれも|一緒《いっしょ》にはいって|来《く》ることをお|許《ゆる》しにならなかった。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はみな、|娘《むすめ》のために|泣《な》き|悲《かな》しんでいた。イエスは|言《い》われた、「|泣《な》くな、|娘《むすめ》は|死《し》んだのではない。|眠《ねむ》っているだけである」。[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は|娘《むすめ》が|死《し》んだことを|知《し》っていたので、イエスをあざ|笑《わら》った。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|娘《むすめ》の|手《て》を|取《と》って、|呼《よ》びかけて|言《い》われた、「|娘《むすめ》よ、|起《お》きなさい」。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]するとその|霊《れい》がもどってきて、|娘《むすめ》は|即座《そくざ》に|立《た》ち|上《あ》がった。イエスは|何《なに》か|食《た》べ|物《もの》を|与《あた》えるように、さしずをされた。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]|両親《りょうしん》は|驚《おどろ》いてしまった。イエスはこの|出来事《できごと》をだれにも|話《はな》さないようにと、|彼《かれ》らに|命《めい》じられた。 第九章[#「第九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]それからイエスは十二|弟子《でし》を|呼《よ》び|集《あつ》めて、|彼《かれ》らにすべての|悪霊《あくれい》を|制《せい》し、|病気《びょうき》をいやす|力《ちから》と|権威《けんい》とをお|授《さづ》けになった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]また|神《かみ》の|国《くに》を|宣《の》べ|伝《つた》え、かつ|病気《びょうき》をなおすためにつかわして[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》われた、「|旅《たび》のために|何《なに》も|携《たずさ》えるな。つえも|袋《ふくろ》もパンも|銭《ぜに》も|持《も》たず、また|下着《したぎ》も二|枚《まい》は|持《も》つな。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また、どこかの|家《いえ》にはいったら、そこに|留《とど》まっておれ。そしてそこから|出《で》かけることにしなさい。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]だれもあなたがたを|迎《むか》えるものがいなかったら、その|町《まち》を|出《で》て|行《い》くとき、|彼《かれ》らに|対《たい》する|抗議《こうぎ》のしるしに、|足《あし》からちりを|払《はら》い|落《おと》しなさい」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|出《で》て|行《い》って、|村々《むらむら》を|巡《めぐ》り|歩《ある》き、いたる|所《ところ》で|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》え、また|病気《びょうき》をいやした。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]さて、|領主《りょうしゅ》ヘロデはいろいろな|出来事《できごと》を|耳《みみ》にして、あわて|惑《まど》っていた。それは、ある|人《ひと》たちは、ヨハネが|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえったと|言《い》い、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]またある|人《ひと》たちは、エリヤが|現《あらわ》れたと|言《い》い、またほかの|人《ひと》たちは、|昔《むかし》の|預言者《よげんしゃ》のひとりが|復活《ふっかつ》したのだと|言《い》っていたからである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そこでヘロデが|言《い》った、「ヨハネはわたしがすでに|首《くび》を|切《き》ったのだが、こうしてうわさされているこの|人《ひと》は、いったい、だれなのだろう」。そしてイエスに|会《あ》ってみようと|思《おも》っていた。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|使徒《しと》たちは|帰《かえ》ってきて、|自分《じぶん》たちのしたことをすべてイエスに|話《はな》した。それからイエスは|彼《かれ》らを|連《つ》れて、ベツサイダという|町《まち》へひそかに|退《しりぞ》かれた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ところが|群衆《ぐんしゅう》がそれと|知《し》って、ついてきたので、これを|迎《むか》えて|神《かみ》の|国《くに》のことを|語《かた》り|聞《き》かせ、また|治療《ちりょう》を|要《よう》する|人《ひと》たちをいやされた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それから|日《ひ》が|傾《かたむ》きかけたので、十二|弟子《でし》がイエスのもとにきて|言《い》った、「|群衆《ぐんしゅう》を|解散《かいさん》して、まわりの|村々《むらむら》や|部落《ぶらく》へ|行《い》って|宿《やど》を|取《と》り、|食物《しょくもつ》を|手《て》にいれるようにさせてください。わたしたちはこんな|寂《さび》しい|所《ところ》にきているのですから」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しかしイエスは|言《い》われた、「あなたがたの|手《て》で|食物《しょくもつ》をやりなさい」。|彼《かれ》らは|言《い》った、「わたしたちにはパン五つと|魚《うお》二ひきしかありません、この|大《おお》ぜいの|人《ひと》のために|食物《しょくもつ》を|買《か》いに|行《い》くかしなければ」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|男《おとこ》が五千|人《にん》ばかりもいたからである。しかしイエスは|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「|人々《ひとびと》をおおよそ五十|人《にん》ずつの|組《くみ》にして、すわらせなさい」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはそのとおりにして、みんなをすわらせた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは五つのパンと二ひきの|魚《うお》とを|手《て》に|取《と》り、|天《てん》を|仰《あお》いでそれを|祝福《しゅくふく》してさき、|弟子《でし》たちにわたして|群衆《ぐんしゅう》に|配《くば》らせた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》は|食《た》べて|満腹《まんぷく》した。そして、その|余《あま》りくずを|集《あつ》めたら、十二かごあった。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]イエスがひとりで|祈《いの》っておられたとき、|弟子《でし》たちが|近《ちか》くにいたので、|彼《かれ》らに|尋《たず》ねて|言《い》われた、「|群衆《ぐんしゅう》はわたしをだれと|言《い》っているか」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|答《こた》えて|言《い》った、「バプテスマのヨハネだと、|言《い》っています。しかしほかの|人《ひと》たちは、エリヤだと|言《い》い、また|昔《むかし》の|預言者《よげんしゃ》のひとりが|復活《ふっかつ》したのだと、|言《い》っている|者《もの》もあります」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らに|言《い》われた、「それでは、あなたがたはわたしをだれと|言《い》うか」。ペテロが|答《こた》えて|言《い》った、「|神《かみ》のキリストです」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らを|戒《いまし》め、この|事《こと》をだれにも|言《い》うなと|命《めい》じ、そして|言《い》われた、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]「|人《ひと》の|子《こ》は|必《かなら》ず|多《おお》くの|苦《くる》しみを|受《う》け、|長老《ちょうろう》、|祭司長《さいしちょう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちに|捨《す》てられ、また|殺《ころ》され、そして三|日《か》|目《め》によみがえる」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それから、みんなの|者《もの》に|言《い》われた、「だれでもわたしについてきたいと|思《おも》うなら、|自分《じぶん》を|捨《す》て、|日々《ひび》|自分《じぶん》の|十字架《じゅうじか》を|負《お》うて、わたしに|従《したが》ってきなさい。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|命《いのち》を|救《すく》おうと|思《おも》う|者《もの》はそれを|失《うしな》い、わたしのために|自分《じぶん》の|命《いのち》を|失《うしな》う|者《もの》は、それを|救《すく》うであろう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》が|全《ぜん》|世界《せかい》をもうけても、|自分《じぶん》|自身《じしん》を|失《うしな》いまたは|損《そん》したら、なんの|得《とく》になろうか。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]わたしとわたしの|言葉《ことば》とを|恥《は》じる|者《もの》に|対《たい》しては、|人《ひと》の|子《こ》もまた、|自分《じぶん》の|栄光《えいこう》と、|父《ちち》と|聖《せい》なる|御使《みつかい》との|栄光《えいこう》のうちに|現《あらわ》れて|来《く》るとき、その|者《もの》を|恥《は》じるであろう。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》いておくがよい、|神《かみ》の|国《くに》を|見《み》るまでは、|死《し》を|味《あじ》わわない|者《もの》が、ここに|立《た》っている|者《もの》の|中《なか》にいる」。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]これらのことを|話《はな》された|後《のち》、八|日《か》ほどたってから、イエスはペテロ、ヨハネ、ヤコブを|連《つ》れて、|祈《いの》るために|山《やま》に|登《のぼ》られた。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|祈《いの》っておられる|間《あいだ》に、み|顔《かお》の|様《さま》が|変《かわ》り、み|衣《ころも》がまばゆいほどに|白《しろ》く|輝《かがや》いた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]すると|見《み》よ、ふたりの|人《ひと》がイエスと|語《かた》り|合《あ》っていた。それはモーセとエリヤであったが、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|栄光《えいこう》の|中《なか》に|現《あらわ》れて、イエスがエルサレムで|遂《と》げようとする|最後《さいご》のことについて|話《はな》していたのである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ペテロとその|仲間《なかま》の|者《もの》たちとは|熟睡《じゅくすい》していたが、|目《め》をさますと、イエスの|栄光《えいこう》の|姿《すがた》と、|共《とも》に|立《た》っているふたりの|人《ひと》とを|見《み》た。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]このふたりがイエスを|離《はな》れ|去《さ》ろうとしたとき、ペテロは|自分《じぶん》が|何《なに》を|言《い》っているのかわからないで、イエスに|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちがここにいるのは、すばらしいことです。それで、わたしたちは|小屋《こや》を三つ|建《た》てましょう。一つはあなたのために、一つはモーセのために、一つはエリヤのために」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》がこう|言《い》っている|間《あいだ》に、|雲《くも》がわき|起《おこ》って|彼《かれ》らをおおいはじめた。そしてその|雲《くも》に|囲《かこ》まれたとき、|彼《かれ》らは|恐《おそ》れた。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]すると|雲《くも》の|中《なか》から|声《こえ》があった、「これはわたしの|子《こ》、わたしの|選《えら》んだ|者《もの》である。これに|聞《き》け」。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]そして|声《こえ》が|止《や》んだとき、イエスがひとりだけになっておられた。|弟子《でし》たちは|沈黙《ちんもく》を|守《まも》って、|自分《じぶん》たちが|見《み》たことについては、そのころだれにも|話《はな》さなかった。  [#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|翌日《よくじつ》、|一同《いちどう》が|山《やま》を|降《お》りて|来《く》ると、|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》がイエスを|出迎《でむか》えた。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]すると|突然《とつぜん》、ある|人《ひと》が|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》から|大声《おおごえ》をあげて|言《い》った、「|先生《せんせい》、お|願《ねが》いです。わたしのむすこを|見《み》てやってください。この|子《こ》はわたしのひとりむすこですが、[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|霊《れい》が|取《と》りつきますと、|彼《かれ》は|急《きゅう》に|叫《さけ》び|出《だ》すのです。それから、|霊《れい》は|彼《かれ》をひきつけさせて、あわを|吹《ふ》かせ、|彼《かれ》を|弱《よわ》り|果《は》てさせて、なかなか|出《で》て|行《い》かないのです。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]それで、お|弟子《でし》たちに、この|霊《れい》を|追《お》い|出《だ》してくださるように|願《ねが》いましたが、できませんでした」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「ああ、なんという|不《ふ》|信仰《しんこう》な、|曲《まが》った|時代《じだい》であろう。いつまで、わたしはあなたがたと|一緒《いっしょ》におられようか、またあなたがたに|我慢《がまん》ができようか。あなたの|子《こ》をここに|連《つ》れてきなさい」。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、その|子《こ》がイエスのところに|来《く》る|時《とき》にも、|悪霊《あくれい》が|彼《かれ》を|引《ひ》き|倒《たお》して、|引《ひ》きつけさせた。イエスはこの|汚《けが》れた|霊《れい》をしかりつけ、その|子供《こども》をいやして、|父親《ちちおや》にお|渡《わた》しになった。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はみな、|神《かみ》の|偉大《いだい》な|力《ちから》に|非常《ひじょう》に|驚《おどろ》いた。  みんなの|者《もの》がイエスのしておられた|数々《かずかず》の|事《こと》を|不思議《ふしぎ》に|思《おも》っていると、|弟子《でし》たちに|言《い》われた、[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]「あなたがたはこの|言葉《ことば》を|耳《みみ》におさめて|置《お》きなさい。|人《ひと》の|子《こ》は|人々《ひとびと》の|手《て》に|渡《わた》されようとしている」。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らはなんのことかわからなかった。それが|彼《かれ》らに|隠《かく》されていて、|悟《さと》ることができなかったのである。また|彼《かれ》らはそのことについて|尋《たず》ねるのを|恐《おそ》れていた。  [#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちの|間《あいだ》に、|彼《かれ》らのうちでだれがいちばん|偉《えら》いだろうかということで、|議論《ぎろん》がはじまった。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らの|心《こころ》の|思《おも》いを|見抜《みぬ》き、ひとりの|幼《おさ》な|子《ご》を|取《と》りあげて|自分《じぶん》のそばに|立《た》たせ、|彼《かれ》らに|言《い》われた、[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]「だれでもこの|幼《おさ》な|子《ご》をわたしの|名《な》のゆえに|受《う》けいれる|者《もの》は、わたしを|受《う》けいれるのである。そしてわたしを|受《う》けいれる|者《もの》は、わたしをおつかわしになったかたを|受《う》けいれるのである。あなたがたみんなの|中《なか》でいちばん|小《ちい》さい|者《もの》こそ、|大《おお》きいのである」。  [#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]するとヨハネが|答《こた》えて|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちはある|人《ひと》があなたの|名《な》を|使《つか》って|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》しているのを|見《み》ましたが、その|人《ひと》はわたしたちの|仲間《なかま》でないので、やめさせました」。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「やめさせないがよい。あなたがたに|反対《はんたい》しない|者《もの》は、あなたがたの|味方《みかた》なのである」。  [#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスが|天《てん》に|上《あ》げられる|日《ひ》が|近《ちか》づいたので、エルサレムへ|行《い》こうと|決意《けつい》して、その|方《ほう》へ|顔《かお》をむけられ、[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》に|先立《さきだ》って|使者《ししゃ》たちをおつかわしになった。そして|彼《かれ》らがサマリヤ|人《びと》の|村《むら》へはいって|行《い》き、イエスのために|準備《じゅんび》をしようとしたところ、[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]|村人《むらびと》は、エルサレムへむかって|進《すす》んで|行《い》かれるというので、イエスを|歓迎《かんげい》しようとはしなかった。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》のヤコブとヨハネとはそれを|見《み》て|言《い》った、「|主《しゅ》よ、いかがでしょう。|彼《かれ》らを|焼《や》き|払《はら》ってしまうように、|天《てん》から|火《ひ》をよび|求《もと》めましょうか」。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|振《ふ》りかえって、|彼《かれ》らをおしかりになった。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]そして|一同《いちどう》はほかの|村《むら》へ|行《い》った。  [#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]|道《みち》を|進《すす》んで|行《い》くと、ある|人《ひと》がイエスに|言《い》った、「あなたがおいでになる|所《ところ》ならどこへでも|従《したが》ってまいります」。[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]イエスはその|人《ひと》に|言《い》われた、「きつねには|穴《あな》があり、|空《そら》の|鳥《とり》には|巣《す》がある。しかし、|人《ひと》の|子《こ》にはまくらする|所《ところ》がない」。[#太字]五九[#「五九」は行右小書き][#太字終わり]またほかの|人《ひと》に、「わたしに|従《したが》ってきなさい」と|言《い》われた。するとその|人《ひと》が|言《い》った、「まず、|父《ちち》を|葬《ほうむ》りに|行《い》かせてください」。[#太字]六〇[#「六〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》に|言《い》われた、「その|死人《しにん》を|葬《ほうむ》ることは、|死人《しにん》に|任《まか》せておくがよい。あなたは、|出《で》て|行《い》って|神《かみ》の|国《くに》を|告《つ》げひろめなさい」。[#太字]六一[#「六一」は行右小書き][#太字終わり]またほかの|人《ひと》が|言《い》った、「|主《しゅ》よ、|従《したが》ってまいりますが、まず|家《いえ》の|者《もの》に|別《わか》れを|言《い》いに|行《い》かせてください」。[#太字]六二[#「六二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「|手《て》をすきにかけてから、うしろを|見《み》る|者《もの》は、|神《かみ》の|国《くに》にふさわしくないものである」。 第一〇章[#「第一〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》、|主《しゅ》は|別《べつ》に七十二|人《にん》を|選《えら》び、|行《い》こうとしておられたすべての|町《まち》や|村《むら》へ、ふたりずつ|先《さき》におつかわしになった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|収穫《しゅうかく》は|多《おお》いが、|働《はたら》き|人《びと》が|少《すく》ない。だから、|収穫《しゅうかく》の|主《しゅ》に|願《ねが》って、その|収穫《しゅうかく》のために|働《はたら》き|人《びと》を|送《おく》り|出《だ》すようにしてもらいなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]さあ、|行《い》きなさい。わたしがあなたがたをつかわすのは、|小羊《こひつじ》をおおかみの|中《なか》に|送《おく》るようなものである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|財布《さいふ》も|袋《ふくろ》もくつも|持《も》って|行《い》くな。だれにも|道《みち》であいさつするな。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]どこかの|家《いえ》にはいったら、まず『|平安《へいあん》がこの|家《いえ》にあるように』と|言《い》いなさい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]もし|平安《へいあん》の|子《こ》がそこにおれば、あなたがたの|祈《いの》る|平安《へいあん》はその|人《ひと》の|上《うえ》にとどまるであろう。もしそうでなかったら、それはあなたがたの|上《うえ》に|帰《かえ》って|来《く》るであろう。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それで、その|同《おな》じ|家《いえ》に|留《とど》まっていて、|家《いえ》の|人《ひと》が|出《だ》してくれるものを|飲《の》み|食《く》いしなさい。|働《はたら》き|人《びと》がその|報《むく》いを|得《え》るのは|当然《とうぜん》である。|家《いえ》から|家《いえ》へと|渡《わた》り|歩《ある》くな。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]どの|町《まち》へはいっても、|人々《ひとびと》があなたがたを|迎《むか》えてくれるなら、|前《まえ》に|出《だ》されるものを|食《た》べなさい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そして、その|町《まち》にいる|病人《びょうにん》をいやしてやり、『|神《かみ》の|国《くに》はあなたがたに|近《ちか》づいた』と|言《い》いなさい。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、どの|町《まち》へはいっても、|人々《ひとびと》があなたがたを|迎《むか》えない|場合《ばあい》には、|大通《おおどお》りに|出《で》て|行《い》って|言《い》いなさい、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]『わたしたちの|足《あし》についているこの|町《まち》のちりも、ぬぐい|捨《す》てて|行《い》く。しかし、|神《かみ》の|国《くに》が|近《ちか》づいたことは、|承知《しょうち》しているがよい』。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》っておく。その|日《ひ》には、この|町《まち》よりもソドムの|方《ほう》が|耐《た》えやすいであろう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちの|中《なか》でなされた|力《ちから》あるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、|彼《かれ》らはとうの|昔《むかし》に、|荒布《あらぬの》をまとい|灰《はい》の|中《なか》にすわって、|悔《く》い|改《あらた》めたであろう。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、さばきの|日《ひ》には、ツロとシドンの|方《ほう》がおまえたちよりも、|耐《た》えやすいであろう。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ああ、カペナウムよ、おまえは|天《てん》にまで|上《あ》げられようとでもいうのか。|黄泉《よみ》にまで|落《おと》されるであろう。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|聞《き》き|従《したが》う|者《もの》は、わたしに|聞《き》き|従《したが》うのであり、あなたがたを|拒《こば》む|者《もの》は、わたしを|拒《こば》むのである。そしてわたしを|拒《こば》む|者《もの》は、わたしをおつかわしになったかたを|拒《こば》むのである」。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]七十二|人《にん》が|喜《よろこ》んで|帰《かえ》ってきて|言《い》った、「|主《しゅ》よ、あなたの|名《な》によっていたしますと、|悪霊《あくれい》までがわたしたちに|服従《ふくじゅう》します」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしはサタンが|電光《でんこう》のように|天《てん》から|落《お》ちるのを|見《み》た。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]わたしはあなたがたに、へびやさそりを|踏《ふ》みつけ、|敵《てき》のあらゆる|力《ちから》に|打《う》ち|勝《か》つ|権威《けんい》を|授《さづ》けた。だから、あなたがたに|害《がい》をおよぼす|者《もの》はまったく|無《な》いであろう。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|霊《れい》があなたがたに|服従《ふくじゅう》することを|喜《よろこ》ぶな。むしろ、あなたがたの|名《な》が|天《てん》にしるされていることを|喜《よろこ》びなさい」。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスは|聖霊《せいれい》によって|喜《よろこ》びあふれて|言《い》われた、「|天地《てんち》の|主《しゅ》なる|父《ちち》よ。あなたをほめたたえます。これらの|事《こと》を|知恵《ちえ》のある|者《もの》や|賢《かしこ》い|者《もの》に|隠《かく》して、|幼《おさ》な|子《ご》にあらわしてくださいました。|父《ちち》よ、これはまことに、みこころにかなった|事《こと》でした。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すべての|事《こと》は|父《ちち》からわたしに|任《まか》せられています。そして、|子《こ》がだれであるかは、|父《ちち》のほか|知《し》っている|者《もの》はありません。また|父《ちち》がだれであるかは、|子《こ》と、|父《ちち》をあらわそうとして|子《こ》が|選《えら》んだ|者《もの》とのほか、だれも|知《し》っている|者《もの》はいません」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それから|弟子《でし》たちの|方《ほう》に|振《ふ》りむいて、ひそかに|言《い》われた、「あなたがたが|見《み》ていることを|見《み》る|目《め》は、さいわいである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》っておく。|多《おお》くの|預言者《よげんしゃ》や|王《おう》たちも、あなたがたの|見《み》ていることを|見《み》ようとしたが、|見《み》ることができず、あなたがたの|聞《き》いていることを|聞《き》こうとしたが、|聞《き》けなかったのである」。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]するとそこへ、ある|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》が|現《あらわ》れ、イエスを|試《こころ》みようとして|言《い》った、「|先生《せんせい》、|何《なに》をしたら|永遠《えいえん》の|生命《せいめい》が|受《う》けられましょうか」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》に|言《い》われた、「|律法《りっぽう》にはなんと|書《か》いてあるか。あなたはどう|読《よ》むか」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|答《こた》えて|言《い》った、「『|心《こころ》をつくし、|精神《せいしん》をつくし、|力《ちから》をつくし、|思《おも》いをつくして、|主《しゅ》なるあなたの|神《かみ》を|愛《あい》せよ』。また、『|自分《じぶん》を|愛《あい》するように、あなたの|隣《とな》り|人《びと》を|愛《あい》せよ』とあります」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》に|言《い》われた、「あなたの|答《こたえ》は|正《ただ》しい。そのとおり|行《おこな》いなさい。そうすれば、いのちが|得《え》られる」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》は|自分《じぶん》の|立場《たちば》を|弁護《べんご》しようと|思《おも》って、イエスに|言《い》った、「では、わたしの|隣《とな》り|人《びと》とはだれのことですか」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|答《こた》えて|言《い》われた、「ある|人《ひと》がエルサレムからエリコに|下《くだ》って|行《い》く|途中《とちゅう》、|強盗《ごうとう》どもが|彼《かれ》を|襲《おそ》い、その|着物《きもの》をはぎ|取《と》り、|傷《きず》を|負《お》わせ、|半殺《はんごろ》しにしたまま、|逃《に》げ|去《さ》った。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]するとたまたま、ひとりの|祭司《さいし》がその|道《みち》を|下《くだ》ってきたが、この|人《ひと》を|見《み》ると、|向《む》こう|側《がわ》を|通《とお》って|行《い》った。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|同様《どうよう》に、レビ|人《ひと》もこの|場所《ばしょ》にさしかかってきたが、|彼《かれ》を|見《み》ると|向《む》こう|側《がわ》を|通《とお》って|行《い》った。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]ところが、あるサマリヤ|人《びと》が|旅《たび》をしてこの|人《ひと》のところを|通《とお》りかかり、|彼《かれ》を|見《み》て|気《き》の|毒《どく》に|思《おも》い、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|近寄《ちかよ》ってきてその|傷《きず》にオリブ|油《ゆ》とぶどう|酒《しゅ》とを|注《そそ》いでほうたいをしてやり、|自分《じぶん》の|家畜《かちく》に|乗《の》せ、|宿屋《やどや》に|連《つ》れて|行《い》って|介抱《かいほう》した。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|翌日《よくじつ》、デナリ二つを|取《と》り|出《だ》して|宿屋《やどや》の|主人《しゅじん》に|手渡《てわた》し、『この|人《ひと》を|見《み》てやってください。|費用《ひよう》がよけいにかかったら、|帰《かえ》りがけに、わたしが|支払《しはら》います』と|言《い》った。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]この三|人《にん》のうち、だれが|強盗《ごうとう》に|襲《おそ》われた|人《ひと》の|隣《とな》り|人《びと》になったと|思《おも》うか」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》が|言《い》った、「その|人《ひと》に|慈悲《じひ》|深《ぶか》い|行《おこな》いをした|人《ひと》です」。そこでイエスは|言《い》われた、「あなたも|行《い》って|同《おな》じようにしなさい」。  [#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|一同《いちどう》が|旅《たび》を|続《つづ》けているうちに、イエスがある|村《むら》へはいられた。するとマルタという|名《な》の|女《おんな》がイエスを|家《いえ》に|迎《むか》え|入《い》れた。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》にマリヤという|妹《いもうと》がいたが、|主《しゅ》の|足《あし》もとにすわって、|御言《みことば》に|聞《き》き|入《い》っていた。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが、マルタは|接待《せったい》のことで|忙《いそ》がしくて|心《こころ》をとりみだし、イエスのところにきて|言《い》った、「|主《しゅ》よ、|妹《いもうと》がわたしだけに|接待《せったい》をさせているのを、なんともお|思《おも》いになりませんか。わたしの|手伝《てつだ》いをするように|妹《いもうと》におっしゃってください」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は|答《こた》えて|言《い》われた、「マルタよ、マルタよ、あなたは|多《おお》くのことに|心《こころ》を|配《くば》って|思《おも》いわずらっている。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|無《な》くてならぬものは|多《おお》くはない。いや、一つだけである。マリヤはその|良《よ》い|方《ほう》を|選《えら》んだのだ。そしてそれは、|彼女《かのじょ》から|取《と》り|去《さ》ってはならないものである」。 第一一章[#「第一一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]また、イエスはある|所《ところ》で|祈《いの》っておられたが、それが|終《おわ》ったとき、|弟子《でし》のひとりが|言《い》った、「|主《しゅ》よ、ヨハネがその|弟子《でし》たちに|教《おし》えたように、わたしたちにも|祈《いの》ることを|教《おし》えてください」。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|祈《いの》るときには、こう|言《い》いなさい、『|父《ちち》よ、|御名《みな》があがめられますように。|御国《みくに》がきますように。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|日《ひ》ごとの|食物《しょくもつ》を、|日々《ひび》お|与《あた》えください。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちに|負債《ふさい》のある|者《もの》を|皆《みな》ゆるしますから、わたしたちの|罪《つみ》をもおゆるしください。わたしたちを|試《こころ》みに|会《あ》わせないでください』」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたのうちのだれかに、|友人《ゆうじん》があるとして、その|人《ひと》のところへ|真夜中《まよなか》に|行《い》き、『|友《とも》よ、パンを三つ|貸《か》してください。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|友《とも》だちが|旅先《たびさき》からわたしのところに|着《つ》いたのですが、|何《なに》も|出《だ》すものがありませんから』と|言《い》った|場合《ばあい》、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|内《うち》から、『|面倒《めんどう》をかけないでくれ。もう|戸《と》は|締《し》めてしまったし、|子供《こども》たちもわたしと|一緒《いっしょ》に|床《とこ》にはいっているので、いま|起《お》きて|何《なに》もあげるわけにはいかない』と|言《い》うであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、よく|聞《き》きなさい、|友人《ゆうじん》だからというのでは|起《お》きて|与《あた》えないが、しきりに|願《ねが》うので、|起《お》き|上《あ》がって|必要《ひつよう》なものを|出《だ》してくれるであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしはあなたがたに|言《い》う。|求《もと》めよ、そうすれば、|与《あた》えられるであろう。|捜《さが》せ、そうすれば|見《み》いだすであろう。|門《もん》をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]すべて|求《もと》める|者《もの》は|得《え》、|捜《さが》す|者《もの》は|見《み》いだし、|門《もん》をたたく|者《もの》はあけてもらえるからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうちで、|父《ちち》であるものは、その|子《こ》が|魚《うお》を|求《もと》めるのに、|魚《うお》の|代《かわ》りにへびを|与《あた》えるだろうか。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|卵《たまご》を|求《もと》めるのに、さそりを|与《あた》えるだろうか。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]このように、あなたがたは|悪《わる》い|者《もの》であっても、|自分《じぶん》の|子供《こども》には、|良《よ》い|贈《おく》り|物《もの》をすることを|知《し》っているとすれば、|天《てん》の|父《ちち》はなおさら、|求《もと》めて|来《く》る|者《もの》に|聖霊《せいれい》を|下《くだ》さらないことがあろうか」。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスが|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》しておられた。それは、おしの|霊《れい》であった。|悪霊《あくれい》が|出《で》て|行《い》くと、おしが|物《もの》を|言《い》うようになったので、|群衆《ぐんしゅう》は|不思議《ふしぎ》に|思《おも》った。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]その|中《なか》のある|人々《ひとびと》が、「|彼《かれ》は|悪霊《あくれい》のかしらベルゼブルによって、|悪霊《あくれい》どもを|追《お》い|出《だ》しているのだ」と|言《い》い、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]またほかの|人々《ひとびと》は、イエスを|試《こころ》みようとして、|天《てん》からのしるしを|求《もと》めた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]しかしイエスは、|彼《かれ》らの|思《おも》いを|見抜《みぬ》いて|言《い》われた、「おおよそ|国《くに》が|内部《ないぶ》で|分裂《ぶんれつ》すれば|自滅《じめつ》してしまい、また|家《いえ》が|分《わか》れ|争《あらそ》えば|倒《たお》れてしまう。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そこでサタンも|内部《ないぶ》で|分裂《ぶんれつ》すれば、その|国《くに》はどうして|立《た》ち|行《い》けよう。あなたがたはわたしがベルゼブルによって|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》していると|言《い》うが、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしがベルゼブルによって|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》すとすれば、あなたがたの|仲間《なかま》はだれによって|追《お》い|出《だ》すのであろうか。だから、|彼《かれ》らがあなたがたをさばく|者《もの》となるであろう。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしが|神《かみ》の|指《ゆび》によって|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》しているのなら、|神《かみ》の|国《くに》はすでにあなたがたのところにきたのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|強《つよ》い|人《ひと》が|十分《じゅうぶん》に|武装《ぶそう》して|自分《じぶん》の|邸宅《ていたく》を|守《まも》っている|限《かぎ》り、その|持《も》ち|物《もの》は|安全《あんぜん》である。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もっと|強《つよ》い|者《もの》が|襲《おそ》ってきて|彼《かれ》に|打《う》ち|勝《か》てば、その|頼《たの》みにしていた|武具《ぶぐ》を|奪《うば》って、その|分捕《ぶんどり》|品《ひん》を|分《わ》けるのである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|味方《みかた》でない|者《もの》は、わたしに|反対《はんたい》するものであり、わたしと|共《とも》に|集《あつ》めない|者《もの》は、|散《ち》らすものである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|汚《けが》れた|霊《れい》が|人《ひと》から|出《で》ると、|休《やす》み|場《ば》を|求《もと》めて|水《みず》の|無《な》い|所《ところ》を|歩《ある》きまわるが、|見《み》つからないので、|出《で》てきた|元《もと》の|家《いえ》に|帰《かえ》ろうと|言《い》って、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|帰《かえ》って|見《み》ると、その|家《いえ》はそうじがしてある|上《うえ》、|飾《かざ》りつけがしてあった。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこでまた|出《で》て|行《い》って、|自分《じぶん》|以上《いじょう》に|悪《わる》い|他《た》の七つの|霊《れい》を|引《ひ》き|連《つ》れてきて|中《なか》にはいり、そこに|住《す》み|込《こ》む。そうすると、その|人《ひと》の|後《のち》の|状態《じょうたい》は|初《はじ》めよりももっと|悪《わる》くなるのである」。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]イエスがこう|話《はな》しておられるとき、|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》からひとりの|女《おんな》が|声《こえ》を|張《は》りあげて|言《い》った、「あなたを|宿《やど》した|胎《たい》、あなたが|吸《す》われた|乳房《ちぶさ》は、なんとめぐまれていることでしょう」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]しかしイエスは|言《い》われた、「いや、めぐまれているのは、むしろ、|神《かみ》の|言《ことば》を|聞《き》いてそれを|守《まも》る|人《ひと》たちである」。  [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]さて|群衆《ぐんしゅう》が|群《むら》がり|集《あつ》まったので、イエスは|語《かた》り|出《だ》された、「この|時代《じだい》は|邪悪《じゃあく》な|時代《じだい》である。それはしるしを|求《もと》めるが、ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも|与《あた》えられないであろう。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]というのは、ニネベの|人々《ひとびと》に|対《たい》してヨナがしるしとなったように、|人《ひと》の|子《こ》もこの|時代《じだい》に|対《たい》してしるしとなるであろう。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|南《みなみ》の|女王《じょおう》が、|今《いま》の|時代《じだい》の|人々《ひとびと》と|共《とも》にさばきの|場《ば》に|立《た》って、|彼《かれ》らを|罪《つみ》に|定《さだ》めるであろう。なぜなら、|彼女《かのじょ》はソロモンの|知恵《ちえ》を|聞《き》くために、|地《ち》の|果《はて》からはるばるきたからである。しかし|見《み》よ、ソロモンにまさる|者《もの》がここにいる。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ニネベの|人々《ひとびと》が、|今《いま》の|時代《じだい》の|人々《ひとびと》と|共《とも》にさばきの|場《ば》に|立《た》って、|彼《かれ》らを|罪《つみ》に|定《さだ》めるであろう。なぜなら、ニネベの|人々《ひとびと》はヨナの|宣教《せんきょう》によって|悔《く》い|改《あらた》めたからである。しかし|見《み》よ、ヨナにまさる|者《もの》がここにいる。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]だれもあかりをともして、それを|穴倉《あなぐら》の|中《なか》や|枡《ます》の|下《した》に|置《お》くことはしない。むしろはいって|来《く》る|人《ひと》たちに、そのあかりが|見《み》えるように、|燭台《しょくだい》の|上《うえ》におく。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|目《め》は、からだのあかりである。あなたの|目《め》が|澄《す》んでおれば、|全身《ぜんしん》も|明《あか》るいが、|目《め》がわるければ、からだも|暗《くら》い。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたの|内《うち》なる|光《ひかり》が|暗《くら》くならないように|注意《ちゅうい》しなさい。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]もし、あなたのからだ|全体《ぜんたい》が|明《あか》るくて、|暗《くら》い|部分《ぶぶん》が|少《すこ》しもなければ、ちょうど、あかりが|輝《かがや》いてあなたを|照《てら》す|時《とき》のように、|全身《ぜんしん》が|明《あか》るくなるであろう」。  [#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|語《かた》っておられた|時《とき》、あるパリサイ|人《びと》が、|自分《じぶん》の|家《いえ》で|食事《しょくじ》をしていただきたいと|申《もう》し|出《で》たので、はいって|食卓《しょくたく》につかれた。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|食前《しょくぜん》にまず|洗《あら》うことをなさらなかったのを|見《み》て、そのパリサイ|人《びと》が|不思議《ふしぎ》に|思《おも》った。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そこで|主《しゅ》は|彼《かれ》に|言《い》われた、「いったい、あなたがたパリサイ|人《びと》は、|杯《さかずき》や|盆《ぼん》の|外側《そとがわ》をきよめるが、あなたがたの|内側《うちがわ》は|貪欲《どんよく》と|邪悪《じゃあく》とで|満《み》ちている。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|愚《おろ》かな|者《もの》たちよ、|外側《そとがわ》を|造《つく》ったかたは、また|内側《うちがわ》も|造《つく》られたではないか。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|内側《うちがわ》にあるものをきよめなさい。そうすれば、いっさいがあなたがたにとって、|清《きよ》いものとなる。  [#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなた|方《ほう》パリサイ|人《びと》は、わざわいである。はっか、うん|香《こう》、あらゆる|野菜《やさい》などの十|分《ぶん》の一を|宮《みや》に|納《おさ》めておりながら、|義《ぎ》と|神《かみ》に|対《たい》する|愛《あい》とをなおざりにしている。それもなおざりにはできないが、これは|行《おこな》わねばならない。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたパリサイ|人《びと》は、わざわいである。|会堂《かいどう》の|上席《じょうせき》や|広場《ひろば》での|敬礼《けいれい》を|好《この》んでいる。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わざわいである。|人目《ひとめ》につかない|墓《はか》のようなものである。その|上《うえ》を|歩《ある》いても|人々《ひとびと》は|気《き》づかないでいる」。  [#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]ひとりの|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》がイエスに|答《こた》えて|言《い》った、「|先生《せんせい》、そんなことを|言《い》われるのは、わたしたちまでも|侮辱《ぶじょく》することです」。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]そこで|言《い》われた、「あなたがた|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》も、わざわいである。|負《お》い|切《き》れない|重荷《おもに》を|人《ひと》に|負《お》わせながら、|自分《じぶん》ではその|荷《に》に|指《ゆび》一|本《ぽん》でも|触《ふ》れようとしない。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わざわいである。|預言者《よげんしゃ》たちの|碑《ひ》を|建《た》てるが、しかし|彼《かれ》らを|殺《ころ》したのは、あなたがたの|先祖《せんぞ》であったのだ。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたは、|自分《じぶん》の|先祖《せんぞ》のしわざに|同意《どうい》する|証人《しょうにん》なのだ。|先祖《せんぞ》が|彼《かれ》らを|殺《ころ》し、あなたがたがその|碑《ひ》を|建《た》てるのだから。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]それゆえに、『|神《かみ》の|知恵《ちえ》』も|言《い》っている、『わたしは|預言者《よげんしゃ》と|使徒《しと》とを|彼《かれ》らにつかわすが、|彼《かれ》らはそのうちのある|者《もの》を|殺《ころ》したり、|迫害《はくがい》したりするであろう』。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]それで、アベルの|血《ち》から|祭壇《さいだん》と|神殿《しんでん》との|間《あいだ》で|殺《ころ》されたザカリヤの|血《ち》に|至《いた》るまで、|世《よ》の|初《はじ》めから|流《なが》されてきたすべての|預言者《よげんしゃ》の|血《ち》について、この|時代《じだい》がその|責任《せきにん》を|問《と》われる。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]そうだ、あなたがたに|言《い》っておく、この|時代《じだい》がその|責任《せきにん》を|問《と》われるであろう。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがた|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》は、わざわいである。|知識《ちしき》のかぎを|取《と》りあげて、|自分《じぶん》がはいらないばかりか、はいろうとする|人《ひと》たちを|妨《さまた》げてきた」。  [#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]イエスがそこを|出《で》て|行《い》かれると、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》やパリサイ|人《びと》は、|激《はげ》しく|詰《つ》め|寄《よ》り、いろいろな|事《こと》を|問《と》いかけて、[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]イエスの|口《くち》から|何《なに》か|言《い》いがかりを|得《え》ようと、ねらいはじめた。 第一二章[#「第一二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]その|間《あいだ》に、おびただしい|群衆《ぐんしゅう》が、|互《たがい》に|踏《ふ》み|合《あ》うほどに|群《むら》がってきたが、イエスはまず|弟子《でし》たちに|語《かた》りはじめられた、「パリサイ|人《びと》のパン|種《だね》、すなわち|彼《かれ》らの|偽善《ぎぜん》に|気《き》をつけなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]おおいかぶされたもので、|現《あらわ》れてこないものはなく、|隠《かく》れているもので、|知《し》られてこないものはない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたが|暗《くら》やみで|言《い》ったことは、なんでもみな|明《あか》るみで|聞《き》かれ、|密室《みっしつ》で|耳《みみ》にささやいたことは、|屋根《やね》の|上《うえ》で|言《い》いひろめられるであろう。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしの|友《とも》であるあなたがたに|言《い》うが、からだを|殺《ころ》しても、そのあとでそれ|以上《いじょう》なにもできない|者《もの》どもを|恐《おそ》れるな。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|恐《おそ》るべき|者《もの》がだれであるか、|教《おし》えてあげよう。|殺《ころ》したあとで、|更《さら》に|地獄《じごく》に|投《な》げ|込《こ》む|権威《けんい》のあるかたを|恐《おそ》れなさい。そうだ、あなたがたに|言《い》っておくが、そのかたを|恐《おそ》れなさい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]五|羽《わ》のすずめは二アサリオンで|売《う》られているではないか。しかも、その一|羽《わ》も|神《かみ》のみまえで|忘《わす》れられてはいない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]その|上《うえ》、あなたがたの|頭《あたま》の|毛《け》までも、みな|数《かぞ》えられている。|恐《おそ》れることはない。あなたがたは|多《おお》くのすずめよりも、まさった|者《もの》である。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたがたに|言《い》う。だれでも|人《ひと》の|前《まえ》でわたしを|受《う》けいれる|者《もの》を、|人《ひと》の|子《こ》も|神《かみ》の|使《つかい》たちの|前《まえ》で|受《う》けいれるであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|人《ひと》の|前《まえ》でわたしを|拒《こば》む|者《もの》は、|神《かみ》の|使《つかい》たちの|前《まえ》で|拒《こば》まれるであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]また、|人《ひと》の|子《こ》に|言《い》い|逆《さか》らう|者《もの》はゆるされるであろうが、|聖霊《せいれい》をけがす|者《もの》は、ゆるされることはない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|会堂《かいどう》や|役人《やくにん》や|高官《こうかん》の|前《まえ》へひっぱられて|行《い》った|場合《ばあい》には、|何《なに》をどう|弁明《べんめい》しようか、|何《なに》を|言《い》おうかと|心配《しんぱい》しないがよい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》うべきことは、|聖霊《せいれい》がその|時《とき》に|教《おし》えてくださるからである」。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》のひとりがイエスに|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしの|兄弟《きょうだい》に、|遺産《いさん》を|分《わ》けてくれるようにおっしゃってください」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》に|言《い》われた、「|人《ひと》よ、だれがわたしをあなたがたの|裁判人《さいばんにん》または|分配《ぶんぱい》|人《にん》に|立《た》てたのか」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それから|人々《ひとびと》にむかって|言《い》われた、「あらゆる|貪欲《どんよく》に|対《たい》してよくよく|警戒《けいかい》しなさい。たといたくさんの|物《もの》を|持《も》っていても、|人《ひと》のいのちは、|持《も》ち|物《もの》にはよらないのである」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そこで一つの|譬《たとえ》を|語《かた》られた、「ある|金持《かねもち》の|畑《はたけ》が|豊作《ほうさく》であった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》は|心《こころ》の|中《なか》で、『どうしようか、わたしの|作物《さくもつ》をしまっておく|所《ところ》がないのだが』と|思《おも》いめぐらして[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、『こうしよう。わたしの|倉《くら》を|取《と》りこわし、もっと|大《おお》きいのを|建《た》てて、そこに|穀物《こくもつ》や|食糧《しょくりょう》を|全部《ぜんぶ》しまい|込《こ》もう。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そして|自分《じぶん》の|魂《たましい》に|言《い》おう。たましいよ、おまえには|長年《ながねん》|分《ぶん》の|食糧《しょくりょう》がたくさんたくわえてある。さあ|安心《あんしん》せよ、|食《く》え、|飲《の》め、|楽《たの》しめ』。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]すると|神《かみ》が|彼《かれ》に|言《い》われた、『|愚《おろ》かな|者《もの》よ、あなたの|魂《たましい》は|今夜《こんや》のうちにも|取《と》り|去《さ》られるであろう。そしたら、あなたが|用意《ようい》した|物《もの》は、だれのものになるのか』。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》のために|宝《たから》を|積《つ》んで|神《かみ》に|対《たい》して|富《と》まない|者《もの》は、これと|同《おな》じである」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]それから|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「それだから、あなたがたに|言《い》っておく。|何《なに》を|食《た》べようかと、|命《いのち》のことで|思《おも》いわずらい、|何《なに》を|着《き》ようかとからだのことで|思《おも》いわずらうな。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|命《いのち》は|食物《しょくもつ》にまさり、からだは|着物《きもの》にまさっている。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]からすのことを|考《かんが》えて|見《み》よ。まくことも、|刈《か》ることもせず、また、|納屋《なや》もなく|倉《くら》もない。それだのに、|神《かみ》は|彼《かれ》らを|養《やしな》っていて|下《くだ》さる。あなたがたは|鳥《とり》よりも、はるかにすぐれているではないか。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうち、だれが|思《おも》いわずらったからとて、|自分《じぶん》の|寿命《じゅみょう》をわずかでも|延《の》ばすことができようか。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そんな|小《ちい》さな|事《こと》さえできないのに、どうしてほかのことを|思《おも》いわずらうのか。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|野《の》の|花《はな》のことを|考《かんが》えて|見《み》るがよい。|紡《つむ》ぎもせず、|織《お》りもしない。しかし、あなたがたに|言《い》うが、|栄華《えいが》をきわめた|時《とき》のソロモンでさえ、この|花《はな》の一つほどにも|着飾《きかざ》ってはいなかった。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]きょうは|野《の》にあって、あすは|炉《ろ》に|投《な》げ|入《い》れられる|草《くさ》でさえ、|神《かみ》はこのように|装《よそお》って|下《くだ》さるのなら、あなたがたに、それ|以上《いじょう》よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、|信仰《しんこう》の|薄《うす》い|者《もの》たちよ。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたも、|何《なに》を|食《た》べ、|何《なに》を|飲《の》もうかと、あくせくするな、また|気《き》を|使《つか》うな。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]これらのものは|皆《みな》、この|世《よ》の|異邦人《いほうじん》が|切《せつ》に|求《もと》めているものである。あなたがたの|父《ちち》は、これらのものがあなたがたに|必要《ひつよう》であることを、ご|存《ぞん》じである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|御国《みくに》を|求《もと》めなさい。そうすれば、これらのものは|添《そ》えて|与《あた》えられるであろう。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|恐《おそ》れるな、|小《ちい》さい|群《む》れよ。|御国《みくに》を|下《くだ》さることは、あなたがたの|父《ちち》のみこころなのである。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|持《も》ち|物《もの》を|売《う》って、|施《ほどこ》しなさい。|自分《じぶん》のために|古《ふる》びることのない|財布《さいふ》をつくり、|盗人《ぬすびと》も|近寄《ちかよ》らず、|虫《むし》も|食《く》い|破《やぶ》らない|天《てん》に、|尽《つ》きることのない|宝《たから》をたくわえなさい。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|宝《たから》のある|所《ところ》には、|心《こころ》もあるからである。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|腰《こし》に|帯《おび》をしめ、あかりをともしていなさい。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》が|婚《こん》|宴《えん》から|帰《かえ》ってきて|戸《と》をたたくとき、すぐあけてあげようと|待《ま》っている|人《ひと》のようにしていなさい。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》が|帰《かえ》ってきたとき、|目《め》を|覚《さま》しているのを|見《み》られる|僕《しもべ》たちは、さいわいである。よく|言《い》っておく。|主人《しゅじん》が|帯《おび》をしめて|僕《しもべ》たちを|食卓《しょくたく》につかせ、|進《すす》み|寄《よ》って|給仕《きゅうじ》をしてくれるであろう。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》が|夜中《よなか》ごろ、あるいは|夜明《よあ》けごろに|帰《かえ》ってきても、そうしているのを|見《み》られるなら、その|人《ひと》たちはさいわいである。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]このことを、わきまえているがよい。|家《いえ》の|主人《しゅじん》は、|盗賊《とうぞく》がいつごろ|来《く》るかわかっているなら、|自分《じぶん》の|家《いえ》に|押《お》し|入《い》らせはしないであろう。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたも|用意《ようい》していなさい。|思《おも》いがけない|時《とき》に|人《ひと》の|子《こ》が|来《く》るからである」。  [#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]するとペテロが|言《い》った、「|主《しゅ》よ、この|譬《たとえ》を|話《はな》しておられるのはわたしたちのためなのですか。それとも、みんなの|者《もの》のためなのですか」。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|主《しゅ》が|言《い》われた、「|主人《しゅじん》が、|召使《めしつかい》たちの|上《うえ》に|立《た》てて、|時《とき》に|応《おう》じて|定《さだ》めの|食事《しょくじ》をそなえさせる|忠実《ちゅうじつ》な|思慮《しりょ》|深《ぶか》い|家令《かれい》は、いったいだれであろう。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》が|帰《かえ》ってきたとき、そのようにつとめているのを|見《み》られる|僕《しもべ》は、さいわいである。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]よく|言《い》っておくが、|主人《しゅじん》はその|僕《しもべ》を|立《た》てて|自分《じぶん》の|全《ぜん》|財産《ざいさん》を|管理《かんり》させるであろう。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もしその|僕《しもべ》が、|主人《しゅじん》の|帰《かえ》りがおそいと|心《こころ》の|中《なか》で|思《おも》い、|男女《だんじょ》の|召使《めしつかい》たちを|打《う》ちたたき、そして|食《た》べたり、|飲《の》んだりして|酔《よ》いはじめるならば、[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]その|僕《しもべ》の|主人《しゅじん》は|思《おも》いがけない|日《ひ》、|気《き》がつかない|時《とき》に|帰《かえ》って|来《く》るであろう。そして、|彼《かれ》を|厳罰《げんばつ》に|処《しょ》して、|不《ふ》|忠実《ちゅうじつ》なものたちと|同《おな》じ|目《め》にあわせるであろう。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》のこころを|知《し》っていながら、それに|従《したが》って|用意《ようい》もせず|勤《つと》めもしなかった|僕《しもべ》は、|多《おお》くむち|打《う》たれるであろう。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|知《し》らずに|打《う》たれるようなことをした|者《もの》は、|打《う》たれ|方《ほう》が|少《すく》ないだろう。|多《おお》く|与《あた》えられた|者《もの》からは|多《おお》く|求《もと》められ、|多《おお》く|任《まか》せられた|者《もの》からは|更《さら》に|多《おお》く|要求《ようきゅう》されるのである。  [#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|火《ひ》を|地上《ちじょう》に|投《とう》じるためにきたのだ。|火《ひ》がすでに|燃《も》えていたならと、わたしはどんなに|願《ねが》っていることか。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしには|受《う》けねばならないバプテスマがある。そして、それを|受《う》けてしまうまでは、わたしはどんなにか|苦《くる》しい|思《おも》いをすることであろう。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わたしが|平和《へいわ》をこの|地上《ちじょう》にもたらすためにきたと|思《おも》っているのか。あなたがたに|言《い》っておく。そうではない。むしろ|分裂《ぶんれつ》である。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|今《いま》から|後《のち》は、|一家《いっか》の|内《うち》で五|人《にん》が|相《あい》|分《わか》れて、三|人《にん》はふたりに、ふたりは三|人《にん》に|対立《たいりつ》し、[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]また|父《ちち》は|子《こ》に、|子《こ》は|父《ちち》に、|母《はは》は|娘《むすめ》に、|娘《むすめ》は|母《はは》に、しゅうとめは|嫁《よめ》に、|嫁《よめ》はしゅうとめに、|対立《たいりつ》するであろう」。  [#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]イエスはまた|群衆《ぐんしゅう》に|対《たい》しても|言《い》われた、「あなたがたは、|雲《くも》が|西《にし》に|起《おこ》るのを|見《み》るとすぐ、にわか|雨《あめ》がやって|来《く》る、と|言《い》う。|果《はた》してそのとおりになる。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]それから|南風《みなみかぜ》が|吹《ふ》くと、|暑《あ》つくなるだろう、と|言《い》う。|果《はた》してそのとおりになる。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]|偽善者《ぎぜんしゃ》よ、あなたがたは|天地《てんち》の|模様《もよう》を|見分《みわ》けることを|知《し》りながら、どうして|今《いま》の|時代《じだい》を|見分《みわ》けることができないのか。[#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがたは、なぜ|正《ただ》しいことを|自分《じぶん》で|判断《はんだん》しないのか。[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]たとえば、あなたを|訴《うった》える|人《ひと》と|一緒《いっしょ》に|役人《やくにん》のところへ|行《い》くときには、|途中《とちゅう》でその|人《ひと》と|和解《わかい》するように|努《つと》めるがよい。そうしないと、その|人《ひと》はあなたを|裁判官《さいばんかん》のところへひっぱって|行《い》き、|裁判官《さいばんかん》はあなたを|獄吏《ごくり》に|引《ひ》き|渡《わた》し、|獄吏《ごくり》はあなたを|獄《ごく》に|投《な》げ|込《こ》むであろう。[#太字]五九[#「五九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|言《い》って|置《お》く、|最後《さいご》の一レプタまでも|支払《しはら》ってしまうまでは、|決《けっ》してそこから|出《で》て|来《く》ることはできない」。 第一三章[#「第一三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]ちょうどその|時《とき》、ある|人々《ひとびと》がきて、ピラトがガリラヤ|人《びと》たちの|血《ち》を|流《なが》し、それを|彼《かれ》らの|犠牲《ぎせい》の|血《ち》に|混《ま》ぜたことを、イエスに|知《し》らせた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「それらのガリラヤ|人《びと》が、そのような|災難《さいなん》にあったからといって、|他《た》のすべてのガリラヤ|人《びと》|以上《いじょう》に|罪《つみ》が|深《ふか》かったと|思《おも》うのか。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》うが、そうではない。あなたがたも|悔《く》い|改《あらた》めなければ、みな|同《おな》じように|滅《ほろ》びるであろう。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また、シロアムの|塔《とう》が|倒《たお》れたためにおし|殺《ころ》されたあの十八|人《にん》は、エルサレムの|他《た》の|全《ぜん》|住民《じゅうみん》|以上《いじょう》に|罪《つみ》の|負債《ふさい》があったと|思《おも》うか。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》うが、そうではない。あなたがたも|悔《く》い|改《あらた》めなければ、みな|同《おな》じように|滅《ほろ》びるであろう」。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]それから、この|譬《たとえ》を|語《かた》られた、「ある|人《ひと》が|自分《じぶん》のぶどう|園《えん》にいちじくの|木《き》を|植《う》えて|置《お》いたので、|実《み》を|捜《さが》しにきたが|見《み》つからなかった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|園丁《えんてい》に|言《い》った、『わたしは三|年間《ねんかん》も|実《み》を|求《もと》めて、このいちじくの|木《き》のところにきたのだが、いまだに|見《み》あたらない。その|木《き》を|切《き》り|倒《たお》してしまえ。なんのために、|土地《とち》をむだにふさがせて|置《お》くのか』。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すると|園丁《えんてい》は|答《こた》えて|言《い》った、『ご|主人様《しゅじんさま》、ことしも、そのままにして|置《お》いてください。そのまわりを|掘《ほ》って|肥料《ひりょう》をやって|見《み》ますから。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それで|来年《らいねん》|実《み》がなりましたら|結構《けっこう》です。もしそれでもだめでしたら、|切《き》り|倒《たお》してください』」。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|安息日《あんそくにち》に、ある|会堂《かいどう》で|教《おし》えておられると、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこに十八|年間《ねんかん》も|病気《びょうき》の|霊《れい》につかれ、かがんだままで、からだを|伸《の》ばすことの|全《まった》くできない|女《おんな》がいた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこの|女《おんな》を|見《み》て、|呼《よ》びよせ、「|女《おんな》よ、あなたの|病気《びょうき》はなおった」と|言《い》って、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|手《て》をその|上《うえ》に|置《お》かれた。すると|立《た》ちどころに、そのからだがまっすぐになり、そして|神《かみ》をたたえはじめた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ところが|会堂司《かいどうづかさ》は、イエスが|安息日《あんそくにち》に|病気《びょうき》をいやされたことを|憤《いきどお》り、|群衆《ぐんしゅう》にむかって|言《い》った、「|働《はたら》くべき|日《ひ》は|六日《むいか》ある。その|間《あいだ》に、なおしてもらいにきなさい。|安息日《あんそくにち》にはいけない」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》はこれに|答《こた》えて|言《い》われた、「|偽善者《ぎぜんしゃ》たちよ、あなたがたはだれでも、|安息日《あんそくにち》であっても、|自分《じぶん》の|牛《うし》やろばを|家畜《かちく》|小屋《こや》から|解《と》いて、|水《みず》を|飲《の》ませに|引《ひ》き|出《だ》してやるではないか。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それなら、十八|年間《ねんかん》もサタンに|縛《しば》られていた、アブラハムの|娘《むすめ》であるこの|女《おんな》を、|安息日《あんそくにち》であっても、その|束縛《そくばく》から|解《と》いてやるべきではなかったか」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》われたので、イエスに|反対《はんたい》していた|人《ひと》たちはみな|恥《は》じ|入《い》った。そして|群衆《ぐんしゅう》はこぞって、イエスがなされたすべてのすばらしいみわざを|見《み》て|喜《よろこ》んだ。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そこで|言《い》われた、「|神《かみ》の|国《くに》は|何《なに》に|似《に》ているか。またそれを|何《なに》にたとえようか。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]一|粒《つぶ》のからし|種《だね》のようなものである。ある|人《ひと》がそれを|取《と》って|庭《にわ》にまくと、|育《そだ》って|木《き》となり、|空《そら》の|鳥《とり》もその|枝《えだ》に|宿《やど》るようになる」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]また|言《い》われた、「|神《かみ》の|国《くに》を|何《なに》にたとえようか。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]パン|種《だね》のようなものである。|女《おんな》がそれを|取《と》って三|斗《と》の|粉《こな》の|中《なか》に|混《ま》ぜると、|全体《ぜんたい》がふくらんでくる」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]さてイエスは|教《おし》えながら|町々《まちまち》|村々《むらむら》を|通《とお》り|過《す》ぎ、エルサレムへと|旅《たび》を|続《つづ》けられた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]すると、ある|人《ひと》がイエスに、「|主《しゅ》よ、|救《すく》われる|人《ひと》は|少《すく》ないのですか」と|尋《たず》ねた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|人々《ひとびと》にむかって|言《い》われた、「|狭《せま》い|戸口《とぐち》からはいるように|努《つと》めなさい。|事実《じじつ》、はいろうとしても、はいれない|人《ひと》が|多《おお》いのだから。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|家《いえ》の|主人《しゅじん》が|立《た》って|戸《と》を|閉《と》じてしまってから、あなたがたが|外《そと》に|立《た》ち|戸《と》をたたき|始《はじ》めて、『ご|主人様《しゅじんさま》、どうぞあけてください』と|言《い》っても、|主人《しゅじん》はそれに|答《こた》えて、『あなたがたがどこからきた|人《ひと》なのか、わたしは|知《し》らない』と|言《い》うであろう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、『わたしたちはあなたとご|一緒《いっしょ》に|飲《の》み|食《く》いしました。また、あなたはわたしたちの|大通《おおどお》りで|教《おし》えてくださいました』と|言《い》い|出《だ》しても、[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、『あなたがたがどこからきた|人《ひと》なのか、わたしは|知《し》らない。|悪事《あくじ》を|働《はたら》く|者《もの》どもよ、みんな|行《い》ってしまえ』と|言《い》うであろう。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、アブラハム、イサク、ヤコブやすべての|預言者《よげんしゃ》たちが、|神《かみ》の|国《くに》にはいっているのに、|自分《じぶん》たちは|外《そと》に|投《な》げ|出《だ》されることになれば、そこで|泣《な》き|叫《さけ》んだり、|歯《は》がみをしたりするであろう。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それから|人々《ひとびと》が、|東《ひがし》から|西《にし》から、また|南《みなみ》から|北《きた》からきて、|神《かみ》の|国《くに》で|宴会《えんかい》の|席《せき》につくであろう。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]こうしてあとのもので|先《さき》になるものがあり、また、|先《さき》のものであとになるものもある」。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]ちょうどその|時《とき》、あるパリサイ|人《びと》たちが、イエスに|近寄《ちかよ》ってきて|言《い》った、「ここから|出《で》て|行《い》きなさい。ヘロデがあなたを|殺《ころ》そうとしています」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あのきつねのところへ|行《い》ってこう|言《い》え、『|見《み》よ、わたしはきょうもあすも|悪霊《あくれい》を|追《お》い|出《だ》し、また、|病気《びょうき》をいやし、そして三|日《か》|目《め》にわざを|終《お》えるであろう。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、きょうもあすも、またその|次《つぎ》の|日《ひ》も、わたしは|進《すす》んで|行《い》かねばならない。|預言者《よげんしゃ》がエルサレム|以外《いがい》の|地《ち》で|死《し》ぬことは、あり|得《え》ないからである』。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]ああ、エルサレム、エルサレム、|預言者《よげんしゃ》たちを|殺《ころ》し、おまえにつかわされた|人々《ひとびと》を|石《いし》で|打《う》ち|殺《ころ》す|者《もの》よ。ちょうどめんどりが|翼《つばさ》の|下《した》にひなを|集《あつ》めるように、わたしはおまえの|子《こ》らを|幾《いく》たび|集《あつ》めようとしたことであろう。それだのに、おまえたちは|応《おう》じようとしなかった。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、おまえたちの|家《いえ》は|見捨《みす》てられてしまう。わたしは|言《い》って|置《お》く、 [#ここから2字下げ] 『|主《しゅ》の|名《な》によってきたるものに、|祝福《しゅくふく》あれ』 [#ここで字下げ終わり] とおまえたちが|言《い》う|時《とき》の|来《く》るまでは、|再《ふたた》びわたしに|会《あ》うことはないであろう」。 第一四章[#「第一四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]ある|安息日《あんそくにち》のこと、|食事《しょくじ》をするために、あるパリサイ|派《は》のかしらの|家《いえ》にはいって|行《い》かれたが、|人々《ひとびと》はイエスの|様子《ようす》をうかがっていた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]するとそこに、|水腫《すいしゅ》をわずらっている|人《ひと》が、みまえにいた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》やパリサイ|人《びと》たちにむかって|言《い》われた、「|安息日《あんそくにち》に|人《ひと》をいやすのは、|正《ただ》しいことかどうか」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|黙《だま》っていた。そこでイエスはその|人《ひと》に|手《て》を|置《お》いていやしてやり、そしてお|帰《かえ》しになった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたのうちで、|自分《じぶん》のむすこか|牛《うし》が|井戸《いど》に|落《お》ち|込《こ》んだなら、|安息日《あんそくにち》だからといって、すぐに|引《ひ》き|上《あ》げてやらない|者《もの》がいるだろうか」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはこれに|対《たい》して|返《かえ》す|言葉《ことば》がなかった。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|客《きゃく》に|招《まね》かれた|者《もの》たちが|上座《じょうざ》を|選《えら》んでいる|様子《ようす》をごらんになって、|彼《かれ》らに一つの|譬《たとえ》を|語《かた》られた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]「|婚《こん》|宴《えん》に|招《まね》かれたときには、|上座《じょうざ》につくな。あるいは、あなたよりも|身分《みぶん》の|高《たか》い|人《ひと》が|招《まね》かれているかも|知《し》れない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]その|場合《ばあい》、あなたとその|人《ひと》とを|招《まね》いた|者《もの》がきて、『このかたに|座《ざ》を|譲《ゆず》ってください』と|言《い》うであろう。そのとき、あなたは|恥《は》じ|入《い》って|末座《まつざ》につくことになるであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、|招《まね》かれた|場合《ばあい》には、|末座《まつざ》に|行《い》ってすわりなさい。そうすれば、|招《まね》いてくれた|人《ひと》がきて、『|友《とも》よ、|上座《じょうざ》の|方《ほう》へお|進《すす》みください』と|言《い》うであろう。そのとき、あなたは|席《せき》を|共《とも》にするみんなの|前《まえ》で、|面目《めんぼく》をほどこすことになるであろう。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]おおよそ、|自分《じぶん》を|高《たか》くする|者《もの》は|低《ひく》くされ、|自分《じぶん》を|低《ひく》くする|者《もの》は|高《たか》くされるであろう」。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]また、イエスは|自分《じぶん》を|招《まね》いた|人《ひと》に|言《い》われた、「|午餐《ごさん》または|晩餐《ばんさん》の|席《せき》を|設《もう》ける|場合《ばあい》には、|友人《ゆうじん》、|兄弟《きょうだい》、|親族《しんぞく》、|金持《かねもち》の|隣《とな》り|人《びと》などは|呼《よ》ばぬがよい。|恐《おそ》らく|彼《かれ》らもあなたを|招《まね》きかえし、それであなたは|返礼《へんれい》を|受《う》けることになるから。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、|宴会《えんかい》を|催《もよお》す|場合《ばあい》には、|貧乏人《びんぼうにん》、|不具者《ふぐしゃ》、|足《あし》なえ、|盲人《もうじん》などを|招《まね》くがよい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そうすれば、|彼《かれ》らは|返礼《へんれい》ができないから、あなたはさいわいになるであろう。|正《ただ》しい|人々《ひとびと》の|復活《ふっかつ》の|際《さい》には、あなたは|報《むく》いられるであろう」。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|列席者《れっせきしゃ》のひとりがこれを|聞《き》いてイエスに「|神《かみ》の|国《くに》で|食事《しょくじ》をする|人《ひと》は、さいわいです」と|言《い》った。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスが|言《い》われた、「ある|人《ひと》が|盛大《せいだい》な|晩餐《ばんさん》|会《かい》を|催《もよお》して、|大《おお》ぜいの|人《ひと》を|招《まね》いた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|晩餐《ばんさん》の|時刻《じこく》になったので、|招《まね》いておいた|人《ひと》たちのもとに|僕《しもべ》を|送《おく》って、『さあ、おいでください。もう|準備《じゅんび》ができましたから』と|言《い》わせた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]ところが、みんな|一様《いちよう》に|断《ことわ》りはじめた。|最初《さいしょ》の|人《ひと》は、『わたしは|土地《とち》を|買《か》いましたので、|行《い》って|見《み》なければなりません。どうぞ、おゆるしください』と|言《い》った。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|人《ひと》は、『わたしは五|対《つい》の|牛《うし》を|買《か》いましたので、それをしらべに|行《い》くところです。どうぞ、おゆるしください』、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]もうひとりの|人《ひと》は、『わたしは|妻《つま》をめとりましたので、|参《まい》ることができません』と|言《い》った。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|僕《しもべ》は|帰《かえ》ってきて、|以上《いじょう》の|事《こと》を|主人《しゅじん》に|報告《ほうこく》した。すると|家《いえ》の|主人《しゅじん》はおこって|僕《しもべ》に|言《い》った、『いますぐに、|町《まち》の|大通《おおどお》りや|小道《こみち》へ|行《い》って、|貧乏人《びんぼうにん》、|不具者《ふぐしゃ》、|盲人《もうじん》、|足《あし》なえなどを、ここへ|連《つ》れてきなさい』。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|僕《しもべ》は|言《い》った、『ご|主人様《しゅじんさま》、|仰《おお》せのとおりにいたしましたが、まだ|席《せき》がございます』。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》が|僕《しもべ》に|言《い》った、『|道《みち》やかきねのあたりに|出《で》て|行《い》って、この|家《いえ》がいっぱいになるように、|人々《ひとびと》を|無理《むり》やりにひっぱってきなさい。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》って|置《お》くが、|招《まね》かれた|人《ひと》で、わたしの|晩餐《ばんさん》にあずかる|者《もの》はひとりもないであろう』」。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》がついてきたので、イエスは|彼《かれ》らの|方《ほう》に|向《む》いて|言《い》われた、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]「だれでも、|父《ちち》、|母《はは》、|妻《つま》、|子《こ》、|兄弟《きょうだい》、|姉妹《しまい》、さらに|自分《じぶん》の|命《いのち》までも|捨《す》てて、わたしのもとに|来《く》るのでなければ、わたしの|弟子《でし》となることはできない。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|十字架《じゅうじか》を|負《お》うてわたしについて|来《く》るものでなければ、わたしの|弟子《でし》となることはできない。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうちで、だれかが|邸宅《ていたく》を|建《た》てようと|思《おも》うなら、それを|仕上《しあ》げるのに|足《た》りるだけの|金《かね》を|持《も》っているかどうかを|見《み》るため、まず、すわってその|費用《ひよう》を|計算《けいさん》しないだろうか。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そうしないと、|土台《どだい》をすえただけで|完成《かんせい》することができず、|見《み》ているみんなの|人《ひと》が、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]『あの|人《ひと》は|建《た》てかけたが、|仕上《しあ》げができなかった』と|言《い》ってあざ|笑《わら》うようになろう。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]また、どんな|王《おう》でも、ほかの|王《おう》と|戦《たたか》いを|交《まじ》えるために|出《で》て|行《い》く|場合《ばあい》には、まず|座《ざ》して、こちらの一|万人《まんにん》をもって、二|万人《まんにん》を|率《ひき》いて|向《む》かって|来《く》る|敵《てき》に|対抗《たいこう》できるかどうか、|考《かんが》えて|見《み》ないだろうか。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]もし|自分《じぶん》の|力《ちから》にあまれば、|敵《てき》がまだ|遠《とお》くにいるうちに、|使者《ししゃ》を|送《おく》って、|和《わ》を|求《もと》めるであろう。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]それと|同《おな》じように、あなたがたのうちで、|自分《じぶん》の|財産《ざいさん》をことごとく|捨《す》て|切《き》るものでなくては、わたしの|弟子《でし》となることはできない。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|塩《しお》は|良《よ》いものだ。しかし、|塩《しお》もききめがなくなったら、|何《なに》によって|塩味《しおあじ》が|取《と》りもどされようか。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|土《つち》にも|肥料《ひりょう》にも|役《やく》|立《た》たず、|外《そと》に|投《な》げ|捨《す》てられてしまう。|聞《き》く|耳《みみ》のあるものは|聞《き》くがよい」。 第一五章[#「第一五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|取税人《しゅぜいにん》や|罪人《つみびと》たちが|皆《みな》、イエスの|話《はなし》を|聞《き》こうとして|近寄《ちかよ》ってきた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]するとパリサイ|人《びと》や|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちがつぶやいて、「この|人《ひと》は|罪人《つみびと》たちを|迎《むか》えて|一緒《いっしょ》に|食事《しょくじ》をしている」と|言《い》った。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らに、この|譬《たとえ》をお|話《はな》しになった、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]「あなたがたのうちに、百|匹《ぴき》の|羊《ひつじ》を|持《も》っている|者《もの》がいたとする。その一|匹《ぴき》がいなくなったら、九十九|匹《ひき》を|野原《のはら》に|残《のこ》しておいて、いなくなった一|匹《ぴき》を|見《み》つけるまでは|捜《さが》し|歩《ある》かないであろうか。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そして|見《み》つけたら、|喜《よろこ》んでそれを|自分《じぶん》の|肩《かた》に|乗《の》せ、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|家《いえ》に|帰《かえ》ってきて|友人《ゆうじん》や|隣《とな》り|人《びと》を|呼《よ》び|集《あつ》め、『わたしと|一緒《いっしょ》に|喜《よろこ》んでください。いなくなった|羊《ひつじ》を|見《み》つけましたから』と|言《い》うであろう。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》きなさい。それと|同《おな》じように、|罪人《つみびと》がひとりでも|悔《く》い|改《あらた》めるなら、|悔改《くいあらた》めを|必要《ひつよう》としない九十九|人《にん》の|正《ただ》しい|人《ひと》のためにもまさる|大《おお》きいよろこびが、|天《てん》にあるであろう。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]また、ある|女《おんな》が|銀貨《ぎんか》十|枚《まい》を|持《も》っていて、もしその一|枚《まい》をなくしたとすれば、|彼女《かのじょ》はあかりをつけて|家中《いえじゅう》を|掃《は》き、それを|見《み》つけるまでは|注意深《ちゅういぶか》く|捜《さが》さないであろうか。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そして、|見《み》つけたなら、|女《おんな》|友《とも》だちや|近所《きんじょ》の|女《おんな》たちを|呼《よ》び|集《あつ》めて、『わたしと|一緒《いっしょ》に|喜《よろこ》んでください。なくした|銀貨《ぎんか》が|見《み》つかりましたから』と|言《い》うであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》きなさい。それと|同《おな》じように、|罪人《つみびと》がひとりでも|悔《く》い|改《あらた》めるなら、|神《かみ》の|御使《みつかい》たちの|前《まえ》でよろこびがあるであろう」。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また|言《い》われた、「ある|人《ひと》に、ふたりのむすこがあった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|弟《おとうと》が|父親《ちちおや》に|言《い》った、『|父《ちち》よ、あなたの|財産《ざいさん》のうちでわたしがいただく|分《ぶん》をください』。そこで、|父《ちち》はその|身代《しんだい》をふたりに|分《わ》けてやった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それから|幾日《いくにち》もたたないうちに、|弟《おとうと》は|自分《じぶん》のものを|全部《ぜんぶ》とりまとめて|遠《とお》い|所《ところ》へ|行《い》き、そこで|放蕩《ほうとう》に|身《み》を|持《も》ちくずして|財産《ざいさん》を|使《つか》い|果《はた》した。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|何《なに》もかも|浪費《ろうひ》してしまったのち、その|地方《ちほう》にひどいききんがあったので、|彼《かれ》は|食《た》べることにも|窮《きゅう》しはじめた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、その|地方《ちほう》のある|住民《じゅうみん》のところに|行《い》って|身《み》を|寄《よ》せたところが、その|人《ひと》は|彼《かれ》を|畑《はたけ》にやって|豚《ぶた》を|飼《か》わせた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、|豚《ぶた》の|食《た》べるいなご|豆《まめ》で|腹《はら》を|満《み》たしたいと|思《おも》うほどであったが、|何《なに》もくれる|人《ひと》はなかった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》は|本心《ほんしん》に|立《た》ちかえって|言《い》った、『|父《ちち》のところには|食物《しょくもつ》のあり|余《あま》っている|雇人《やといにん》が|大《おお》ぜいいるのに、わたしはここで|飢《う》えて|死《し》のうとしている。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|立《た》って、|父《ちち》のところへ|帰《かえ》って、こう|言《い》おう、|父《ちち》よ、わたしは|天《てん》に|対《たい》しても、あなたにむかっても、|罪《つみ》を|犯《おか》しました。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]もう、あなたのむすこと|呼《よ》ばれる|資格《しかく》はありません。どうぞ、|雇人《やといにん》のひとり|同様《どうよう》にしてください』。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|立《た》って、|父《ちち》のところへ|出《で》かけた。まだ|遠《とお》く|離《はな》れていたのに、|父《ちち》は|彼《かれ》をみとめ、|哀《あわ》れに|思《おも》って|走《はし》り|寄《よ》り、その|首《くび》をだいて|接吻《せっぷん》した。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]むすこは|父《ちち》に|言《い》った、『|父《ちち》よ、わたしは|天《てん》に|対《たい》しても、あなたにむかっても、|罪《つみ》を|犯《おか》しました。もうあなたのむすこと|呼《よ》ばれる|資格《しかく》はありません』。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし|父《ちち》は|僕《しもべ》たちに|言《い》いつけた、『さあ、|早《はや》く、|最上《さいじょう》の|着物《きもの》を|出《だ》してきてこの|子《こ》に|着《き》せ、|指輪《ゆびわ》を|手《て》にはめ、はきものを|足《あし》にはかせなさい。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]また、|肥《こ》えた|子《こ》|牛《うし》を|引《ひ》いてきてほふりなさい。|食《た》べて|楽《たの》しもうではないか。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]このむすこが|死《し》んでいたのに|生《い》き|返《かえ》り、いなくなっていたのに|見《み》つかったのだから』。それから|祝宴《しゅくえん》がはじまった。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|兄《あに》は|畑《はたけ》にいたが、|帰《かえ》ってきて|家《いえ》に|近《ちか》づくと、|音楽《おんがく》や|踊《おど》りの|音《おと》が|聞《きこ》えたので、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]ひとりの|僕《しもべ》を|呼《よ》んで、『いったい、これは|何事《なにごと》なのか』と|尋《たず》ねた。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|僕《しもべ》は|答《こた》えた、『あなたのご|兄弟《きょうだい》がお|帰《かえ》りになりました。|無事《ぶじ》に|迎《むか》えたというので、|父上《ちちうえ》が|肥《こ》えた|子《こ》|牛《うし》をほふらせなさったのです』。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|兄《あに》はおこって|家《いえ》にはいろうとしなかったので、|父《ちち》が|出《で》てきてなだめると、[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|兄《あに》は|父《ちち》にむかって|言《い》った、『わたしは|何《なん》か|年《ねん》もあなたに|仕《つか》えて、一|度《ど》でもあなたの|言《い》いつけにそむいたことはなかったのに、|友《とも》だちと|楽《たの》しむために|子《こ》やぎ一|匹《ぴき》も|下《くだ》さったことはありません。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]それだのに、|遊女《ゆうじょ》どもと|一緒《いっしょ》になって、あなたの|身代《しんだい》を|食《く》いつぶしたこのあなたの|子《こ》が|帰《かえ》ってくると、そのために|肥《こ》えた|子《こ》|牛《うし》をほふりなさいました』。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]すると|父《ちち》は|言《い》った、『|子《こ》よ、あなたはいつもわたしと|一緒《いっしょ》にいるし、またわたしのものは|全部《ぜんぶ》あなたのものだ。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、このあなたの|弟《おとうと》は、|死《し》んでいたのに|生《い》き|返《かえ》り、いなくなっていたのに|見《み》つかったのだから、|喜《よろこ》び|祝《いわ》うのはあたりまえである』」。 第一六章[#「第一六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはまた、|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「ある|金持《かねもち》のところにひとりの|家令《かれい》がいたが、|彼《かれ》は|主人《しゅじん》の|財産《ざいさん》を|浪費《ろうひ》していると、|告《つ》げ|口《ぐち》をする|者《もの》があった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|主人《しゅじん》は|彼《かれ》を|呼《よ》んで|言《い》った、『あなたについて|聞《き》いていることがあるが、あれはどうなのか。あなたの|会計《かいけい》|報告《ほうこく》を|出《だ》しなさい。もう|家令《かれい》をさせて|置《お》くわけにはいかないから』。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]この|家令《かれい》は|心《こころ》の|中《なか》で|思《おも》った、『どうしようか。|主人《しゅじん》がわたしの|職《しょく》を|取《と》り|上《あ》げようとしている。|土《つち》を|掘《ほ》るには|力《ちから》がないし、|物《もの》ごいするのは|恥《は》ずかしい。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そうだ、わかった。こうしておけば、|職《しょく》をやめさせられる|場合《ばあい》、|人々《ひとびと》がわたしをその|家《いえ》に|迎《むか》えてくれるだろう』。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》は、|主人《しゅじん》の|負債《ふさい》|者《しゃ》をひとりびとり|呼《よ》び|出《だ》して、|初《はじ》めの|人《ひと》に、『あなたは、わたしの|主人《しゅじん》にどれだけ|負債《ふさい》がありますか』と|尋《たず》ねた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]『|油《あぶら》百|樽《たる》です』と|答《こた》えた。そこで|家令《かれい》が|言《い》った、『ここにあなたの|証書《しょうしょ》がある。すぐそこにすわって、五十|樽《たる》と|書《か》き|変《か》えなさい』。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|次《つぎ》に、もうひとりに、『あなたの|負債《ふさい》はどれだけですか』と|尋《たず》ねると、『|麦《むぎ》百|石《こく》です』と|答《こた》えた。これに|対《たい》して、『ここに、あなたの|証書《しょうしょ》があるが、八十|石《こく》と|書《か》き|変《か》えなさい』と|言《い》った。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ところが|主人《しゅじん》は、この|不正《ふせい》な|家令《かれい》の|利口《りこう》なやり|方《ほう》をほめた。この|世《よ》の|子《こ》らはその|時代《じだい》に|対《たい》しては、|光《ひかり》の|子《こ》らよりも|利口《りこう》である。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]またあなたがたに|言《い》うが、|不正《ふせい》の|富《とみ》を|用《もち》いてでも、|自分《じぶん》のために|友《とも》だちをつくるがよい。そうすれば、|富《とみ》が|無《な》くなった|場合《ばあい》、あなたがたを|永遠《えいえん》のすまいに|迎《むか》えてくれるであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|小事《しょうじ》に|忠実《ちゅうじつ》な|人《ひと》は、|大事《だいじ》にも|忠実《ちゅうじつ》である。そして、|小事《しょうじ》に|不《ふ》|忠実《ちゅうじつ》な|人《ひと》は|大事《だいじ》にも|不《ふ》|忠実《ちゅうじつ》である。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]だから、もしあなたがたが|不正《ふせい》の|富《とみ》について|忠実《ちゅうじつ》でなかったら、だれが|真《しん》の|富《とみ》を|任《まか》せるだろうか。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]また、もしほかの|人《ひと》のものについて|忠実《ちゅうじつ》でなかったら、だれがあなたがたのものを|与《あた》えてくれようか。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]どの|僕《しもべ》でも、ふたりの|主人《しゅじん》に|兼《か》ね|仕《つか》えることはできない。|一方《いっぽう》を|憎《にく》んで|他方《たほう》を|愛《あい》し、あるいは、|一方《いっぽう》に|親《した》しんで|他方《たほう》をうとんじるからである。あなたがたは、|神《かみ》と|富《とみ》とに|兼《か》ね|仕《つか》えることはできない」。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|欲《よく》の|深《ふか》いパリサイ|人《びと》たちが、すべてこれらの|言葉《ことば》を|聞《き》いて、イエスをあざ|笑《わら》った。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らにむかって|言《い》われた、「あなたがたは、|人々《ひとびと》の|前《まえ》で|自分《じぶん》を|正《ただ》しいとする|人《ひと》たちである。しかし、|神《かみ》はあなたがたの|心《こころ》をご|存《ぞん》じである。|人々《ひとびと》の|間《あいだ》で|尊《たっと》ばれるものは、|神《かみ》のみまえでは|忌《い》みきらわれる。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》と|預言者《よげんしゃ》とはヨハネの|時《とき》までのものである。それ|以来《いらい》、|神《かみ》の|国《くに》が|宣《の》べ|伝《つた》えられ、|人々《ひとびと》は|皆《みな》これに|突入《とつにゅう》している。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|律法《りっぽう》の|一画《いっかく》が|落《お》ちるよりは、|天地《てんち》の|滅《ほろ》びる|方《ほう》が、もっとたやすい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]すべて|自分《じぶん》の|妻《つま》を|出《だ》して|他《た》の|女《おんな》をめとる|者《もの》は、|姦淫《かんいん》を|行《おこな》うものであり、また、|夫《おっと》から|出《だ》された|女《おんな》をめとる|者《もの》も、|姦淫《かんいん》を|行《おこな》うものである。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ある|金持《かねもち》がいた。|彼《かれ》は|紫《むらさき》の|衣《ころも》や|細《ほそ》|布《ぬの》を|着《き》て、|毎日《まいにち》ぜいたくに|遊《あそ》び|暮《くら》していた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ラザロという|貧乏人《びんぼうにん》が|全身《ぜんしん》でき|物《もの》でおおわれて、この|金持《かねもち》の|玄関《げんかん》の|前《まえ》にすわり、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]その|食卓《しょくたく》から|落《お》ちるもので|飢《う》えをしのごうと|望《のぞ》んでいた。その|上《うえ》、|犬《いぬ》がきて|彼《かれ》のでき|物《もの》をなめていた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]この|貧乏人《びんぼうにん》がついに|死《し》に、|御使《みつかい》たちに|連《つ》れられてアブラハムのふところに|送《おく》られた。|金持《かねもち》も|死《し》んで|葬《ほうむ》られた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そして|黄泉《よみ》にいて|苦《くる》しみながら、|目《め》をあげると、アブラハムとそのふところにいるラザロとが、はるかに|見《み》えた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこで|声《こえ》をあげて|言《い》った、『|父《ちち》、アブラハムよ、わたしをあわれんでください。ラザロをおつかわしになって、その|指先《ゆびさき》を|水《みず》でぬらし、わたしの|舌《した》を|冷《ひ》やさせてください。わたしはこの|火炎《かえん》の|中《なか》で|苦《くる》しみもだえています』。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]アブラハムが|言《い》った、『|子《こ》よ、|思《おも》い|出《だ》すがよい。あなたは|生前《せいぜん》よいものを|受《う》け、ラザロの|方《ほう》は|悪《わる》いものを|受《う》けた。しかし|今《いま》ここでは、|彼《かれ》は|慰《なぐさ》められ、あなたは|苦《くる》しみもだえている。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そればかりか、わたしたちとあなたがたとの|間《あいだ》には|大《おお》きな|淵《ふち》がおいてあって、こちらからあなたがたの|方《ほう》へ|渡《わた》ろうと|思《おも》ってもできないし、そちらからわたしたちの|方《ほう》へ|越《こ》えて|来《く》ることもできない』。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|金持《かねもち》が|言《い》った、『|父《ちち》よ、ではお|願《ねが》いします。わたしの|父《ちち》の|家《いえ》へラザロをつかわしてください。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]わたしに五|人《にん》の|兄弟《きょうだい》がいますので、こんな|苦《くる》しい|所《ところ》へ|来《く》ることがないように、|彼《かれ》らに|警告《けいこく》していただきたいのです』。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]アブラハムは|言《い》った、『|彼《かれ》らにはモーセと|預言者《よげんしゃ》とがある。それに|聞《き》くがよかろう』。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|金持《かねもち》が|言《い》った、『いえいえ、|父《ちち》アブラハムよ、もし|死人《しにん》の|中《なか》からだれかが|兄弟《きょうだい》たちのところへ|行《い》ってくれましたら、|彼《かれ》らは|悔《く》い|改《あらた》めるでしょう』。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]アブラハムは|言《い》った、『もし|彼《かれ》らがモーセと|預言者《よげんしゃ》とに|耳《みみ》を|傾《かたむ》けないなら、|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえってくる|者《もの》があっても、|彼《かれ》らはその|勧《すす》めを|聞《き》き|入《い》れはしないであろう』」。 第一七章[#「第一七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「|罪《つみ》の|誘惑《ゆうわく》が|来《く》ることは|避《さ》けられない。しかし、それをきたらせる|者《もの》は、わざわいである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]これらの|小《ちい》さい|者《もの》のひとりを|罪《つみ》に|誘惑《ゆうわく》するよりは、むしろ、ひきうすを|首《くび》にかけられて|海《うみ》に|投《な》げ|入《い》れられた|方《ほう》が、ましである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|自分《じぶん》で|注意《ちゅうい》していなさい。もしあなたの|兄弟《きょうだい》が|罪《つみ》を|犯《おか》すなら、|彼《かれ》をいさめなさい。そして|悔《く》い|改《あらた》めたら、ゆるしてやりなさい。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたに|対《たい》して一|日《にち》に七|度《ど》|罪《つみ》を|犯《おか》し、そして七|度《ど》『|悔《く》い|改《あらた》めます』と|言《い》ってあなたのところへ|帰《かえ》ってくれば、ゆるしてやるがよい」。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|使徒《しと》たちは|主《しゅ》に「わたしたちの|信仰《しんこう》を|増《ま》してください」と|言《い》った。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこで|主《しゅ》が|言《い》われた、「もし、からし|種《だね》一|粒《つぶ》ほどの|信仰《しんこう》があるなら、この|桑《くわ》の|木《き》に、『|抜《ぬ》け|出《だ》して|海《うみ》に|植《う》われ』と|言《い》ったとしても、その|言葉《ことば》どおりになるであろう。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうちのだれかに、|耕作《こうさく》か|牧畜《ぼくちく》かをする|僕《しもべ》があるとする。その|僕《しもべ》が|畑《はたけ》から|帰《かえ》って|来《き》たとき、|彼《かれ》に『すぐきて、|食卓《しょくたく》につきなさい』と|言《い》うだろうか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]かえって、『|夕食《ゆうしょく》の|用意《ようい》をしてくれ。そしてわたしが|飲《の》み|食《く》いをするあいだ、|帯《おび》をしめて|給仕《きゅうじ》をしなさい。そのあとで、|飲《の》み|食《く》いをするがよい』と、|言《い》うではないか。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|僕《しもべ》が|命《めい》じられたことをしたからといって、|主人《しゅじん》は|彼《かれ》に|感謝《かんしゃ》するだろうか。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|同様《どうよう》にあなたがたも、|命《めい》じられたことを|皆《みな》してしまったとき、『わたしたちはふつつかな|僕《しもべ》です。すべき|事《こと》をしたに|過《す》ぎません』と|言《い》いなさい」。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはエルサレムへ|行《い》かれるとき、サマリヤとガリラヤとの|間《あいだ》を|通《とお》られた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そして、ある|村《むら》にはいられると、十|人《にん》のらい|病人《びょうにん》に|出会《であ》われたが、|彼《かれ》らは|遠《とお》くの|方《ほう》で|立《た》ちとどまり、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|声《こえ》を|張《は》りあげて、「イエスさま、わたしたちをあわれんでください」と|言《い》った。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らをごらんになって、「|祭司《さいし》たちのところに|行《い》って、からだを|見《み》せなさい」と|言《い》われた。そして、|行《い》く|途中《とちゅう》で|彼《かれ》らはきよめられた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そのうちのひとりは、|自分《じぶん》がいやされたことを|知《し》り、|大声《おおごえ》で|神《かみ》をほめたたえながら|帰《かえ》ってきて、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]イエスの|足《あし》もとにひれ|伏《ふ》して|感謝《かんしゃ》した。これはサマリヤ|人《びと》であった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》にむかって|言《い》われた、「きよめられたのは、十|人《にん》ではなかったか。ほかの九|人《にん》は、どこにいるのか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》をほめたたえるために|帰《かえ》ってきたものは、この|他国《たこく》|人《じん》のほかにはいないのか」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]それから、その|人《ひと》に|言《い》われた、「|立《た》って|行《い》きなさい。あなたの|信仰《しんこう》があなたを|救《すく》ったのだ」。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|国《くに》はいつ|来《く》るのかと、パリサイ|人《びと》が|尋《たず》ねたので、イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「|神《かみ》の|国《くに》は、|見《み》られるかたちで|来《く》るものではない。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]また『|見《み》よ、ここにある』『あそこにある』などとも|言《い》えない。|神《かみ》の|国《くに》は、|実《じつ》にあなたがたのただ|中《なか》にあるのだ」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]それから|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「あなたがたは、|人《ひと》の|子《こ》の|日《ひ》を一|日《にち》でも|見《み》たいと|願《ねが》っても|見《み》ることができない|時《とき》が|来《く》るであろう。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はあなたがたに、『|見《み》よ、あそこに』『|見《み》よ、ここに』と|言《い》うだろう。しかし、そちらへ|行《い》くな、|彼《かれ》らのあとを|追《お》うな。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]いなずまが|天《てん》の|端《はし》からひかり|出《で》て|天《てん》の|端《はし》へとひらめき|渡《わた》るように、|人《ひと》の|子《こ》もその|日《ひ》には|同《おな》じようであるだろう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》はまず|多《おお》くの|苦《くる》しみを|受《う》け、またこの|時代《じだい》の|人々《ひとびと》に|捨《す》てられねばならない。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そして、ノアの|時《とき》にあったように、|人《ひと》の|子《こ》の|時《とき》にも|同様《どうよう》なことが|起《おこ》るであろう。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]ノアが|箱舟《はこぶね》にはいる|日《ひ》まで、|人々《ひとびと》は|食《く》い、|飲《の》み、めとり、とつぎなどしていたが、そこへ|洪水《こうずい》が|襲《おそ》ってきて、|彼《かれ》らをことごとく|滅《ほろ》ぼした。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]ロトの|時《とき》にも|同《おな》じようなことが|起《おこ》った。|人々《ひとびと》は|食《く》い、|飲《の》み、|買《か》い、|売《う》り、|植《う》え、|建《た》てなどしていたが、[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]ロトがソドムから|出《で》て|行《い》った|日《ひ》に、|天《てん》から|火《ひ》と|硫黄《いおう》とが|降《ふ》ってきて、|彼《かれ》らをことごとく|滅《ほろ》ぼした。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》が|現《あらわ》れる|日《ひ》も、ちょうどそれと|同様《どうよう》であろう。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には、|屋上《おくじょう》にいる|者《もの》は、|自分《じぶん》の|持《も》ち|物《もの》が|家《いえ》の|中《なか》にあっても、|取《と》りにおりるな。|畑《はたけ》にいる|者《もの》も|同《おな》じように、あとへもどるな。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ロトの|妻《つま》のことを|思《おも》い|出《だ》しなさい。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|命《いのち》を|救《すく》おうとするものは、それを|失《うしな》い、それを|失《うしな》うものは、|保《たも》つのである。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》っておく。その|夜《よ》、ふたりの|男《おとこ》が一つ|寝床《ねどこ》にいるならば、ひとりは|取《と》り|去《さ》られ、|他《た》のひとりは|残《のこ》されるであろう。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]ふたりの|女《おんな》が|一緒《いっしょ》にうすをひいているならば、ひとりは|取《と》り|去《さ》られ、|他《た》のひとりは|残《のこ》されるであろう。〔[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]ふたりの|男《おとこ》が|畑《はたけ》におれば、ひとりは|取《と》り|去《さ》られ、|他《た》のひとりは|残《のこ》されるであろう〕」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは「|主《しゅ》よ、それはどこであるのですか」と|尋《たず》ねた。するとイエスは|言《い》われた、「|死体《したい》のある|所《ところ》には、またはげたかが|集《あつ》まるものである」。 第一八章[#「第一八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]また、イエスは|失望《しつぼう》せずに|常《つね》に|祈《いの》るべきことを、|人々《ひとびと》に|譬《たとえ》で|教《おし》えられた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「ある|町《まち》に、|神《かみ》を|恐《おそ》れず、|人《ひと》を|人《ひと》とも|思《おも》わぬ|裁判官《さいばんかん》がいた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ところが、その|同《おな》じ|町《まち》にひとりのやもめがいて、|彼《かれ》のもとにたびたびきて、『どうぞ、わたしを|訴《うった》える|者《もの》をさばいて、わたしを|守《まも》ってください』と|願《ねが》いつづけた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はしばらくの|間《あいだ》きき|入《い》れないでいたが、そののち、|心《こころ》のうちで|考《かんが》えた、『わたしは|神《かみ》をも|恐《おそ》れず、|人《ひと》を|人《ひと》とも|思《おも》わないが、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]このやもめがわたしに|面倒《めんどう》をかけるから、|彼女《かのじょ》のためになる|裁判《さいばん》をしてやろう。そうしたら、|絶《た》えずやってきてわたしを|悩《なや》ますことがなくなるだろう』」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこで|主《しゅ》は|言《い》われた、「この|不義《ふぎ》な|裁判官《さいばんかん》の|言《い》っていることを|聞《き》いたか。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]まして|神《かみ》は、|日夜《にちや》|叫《さけ》び|求《もと》める|選民《せんみん》のために、|正《ただ》しいさばきをしてくださらずに|長《なが》い|間《あいだ》そのままにしておかれることがあろうか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》っておくが、|神《かみ》はすみやかにさばいてくださるであろう。しかし、|人《ひと》の|子《こ》が|来《く》るとき、|地上《ちじょう》に|信仰《しんこう》が|見《み》られるであろうか」。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》を|義人《ぎじん》だと|自任《じにん》して|他人《たにん》を|見下《みさ》げている|人《ひと》たちに|対《たい》して、イエスはまたこの|譬《たとえ》をお|話《はな》しになった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]「ふたりの|人《ひと》が|祈《いの》るために|宮《みや》に|上《のぼ》った。そのひとりはパリサイ|人《びと》であり、もうひとりは|取税人《しゅぜいにん》であった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》は|立《た》って、ひとりでこう|祈《いの》った、『|神《かみ》よ、わたしはほかの|人《ひと》たちのような|貪欲《どんよく》な|者《もの》、|不正《ふせい》な|者《もの》、|姦淫《かんいん》をする|者《もの》ではなく、また、この|取税人《しゅぜいにん》のような|人間《にんげん》でもないことを|感謝《かんしゃ》します。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは一|週《しゅう》に二|度《ど》|断食《だんじき》しており、|全《ぜん》|収入《しゅうにゅう》の十|分《ぶん》の一をささげています』。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|取税人《しゅぜいにん》は|遠《とお》く|離《はな》れて|立《た》ち、|目《め》を|天《てん》にむけようともしないで、|胸《むね》を|打《う》ちながら|言《い》った、『|神様《かみさま》、|罪人《つみびと》のわたしをおゆるしください』と。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》っておく。|神《かみ》に|義《ぎ》とされて|自分《じぶん》の|家《いえ》に|帰《かえ》ったのは、この|取税人《しゅぜいにん》であって、あのパリサイ|人《びと》ではなかった。おおよそ、|自分《じぶん》を|高《たか》くする|者《もの》は|低《ひく》くされ、|自分《じぶん》を|低《ひく》くする|者《もの》は|高《たか》くされるであろう」。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]イエスにさわっていただくために、|人々《ひとびと》が|幼《おさ》な|子《ご》らをみもとに|連《つ》れてきた。ところが、|弟子《でし》たちはそれを|見《み》て、|彼《かれ》らをたしなめた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|幼《おさ》な|子《ご》らを|呼《よ》び|寄《よ》せて|言《い》われた、「|幼《おさ》な|子《ご》らをわたしのところに|来《く》るままにしておきなさい、|止《と》めてはならない。|神《かみ》の|国《くに》はこのような|者《もの》の|国《くに》である。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》いておくがよい。だれでも|幼《おさ》な|子《ご》のように|神《かみ》の|国《くに》を|受《う》けいれる|者《もの》でなければ、そこにはいることは|決《けっ》してできない」。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]また、ある|役人《やくにん》がイエスに|尋《たず》ねた、「よき|師《し》よ、|何《なに》をしたら|永遠《えいえん》の|生命《せいめい》が|受《う》けられましょうか」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「なぜわたしをよき|者《もの》と|言《い》うのか。|神《かみ》ひとりのほかによい|者《もの》はいない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]いましめはあなたの|知《し》っているとおりである、『|姦淫《かんいん》するな、|殺《ころ》すな、|盗《ぬす》むな、|偽証《ぎしょう》を|立《た》てるな、|父《ちち》と|母《はは》とを|敬《うやま》え』」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》は|言《い》った、「それらのことはみな、|小《ちい》さい|時《とき》から|守《まも》っております」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれを|聞《き》いて|言《い》われた、「あなたのする|事《こと》がまだ一つ|残《のこ》っている。|持《も》っているものをみな|売《う》り|払《はら》って、|貧《まず》しい|人々《ひとびと》に|分《わ》けてやりなさい。そうすれば、|天《てん》に|宝《たから》を|持《も》つようになろう。そして、わたしに|従《したが》ってきなさい」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はこの|言葉《ことば》を|聞《き》いて|非常《ひじょう》に|悲《かな》しんだ。|大金持《おおがねもち》であったからである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》の|様子《ようす》を|見《み》て|言《い》われた、「|財産《ざいさん》のある|者《もの》が|神《かみ》の|国《くに》にはいるのはなんとむずかしいことであろう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|富《と》んでいる|者《もの》が|神《かみ》の|国《くに》にはいるよりは、らくだが|針《はり》の|穴《あな》を|通《とお》る|方《ほう》が、もっとやさしい」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]これを|聞《き》いた|人々《ひとびと》が、「それでは、だれが|救《すく》われることができるのですか」と|尋《たず》ねると、[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「|人《ひと》にはできない|事《こと》も、|神《かみ》にはできる」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]ペテロが|言《い》った、「ごらんなさい、わたしたちは|自分《じぶん》のものを|捨《す》てて、あなたに|従《したが》いました」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「よく|聞《き》いておくがよい。だれでも|神《かみ》の|国《くに》のために、|家《いえ》、|妻《つま》、|兄弟《きょうだい》、|両親《りょうしん》、|子《こ》を|捨《す》てた|者《もの》は、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|必《かなら》ずこの|時代《じだい》ではその|幾《いく》|倍《ばい》もを|受《う》け、また、きたるべき|世《よ》では|永遠《えいえん》の|生命《せいめい》を|受《う》けるのである」。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは十二|弟子《でし》を|呼《よ》び|寄《よ》せて|言《い》われた、「|見《み》よ、わたしたちはエルサレムへ|上《のぼ》って|行《い》くが、|人《ひと》の|子《こ》について|預言者《よげんしゃ》たちがしるしたことは、すべて|成就《じょうじゅ》するであろう。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》は|異邦人《いほうじん》に|引《ひ》きわたされ、あざけられ、はずかしめを|受《う》け、つばきをかけられ、[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]また、むち|打《う》たれてから、ついに|殺《ころ》され、そして三|日《か》|目《め》によみがえるであろう」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちには、これらのことが|何一《なにひと》つわからなかった。この|言葉《ことば》が|彼《かれ》らに|隠《かく》されていたので、イエスの|言《い》われた|事《こと》が|理解《りかい》できなかった。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]イエスがエリコに|近《ちか》づかれたとき、ある|盲人《もうじん》が|道《みち》ばたにすわって、|物《もの》ごいをしていた。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》が|通《とお》り|過《す》ぎる|音《おと》を|耳《みみ》にして、|彼《かれ》は|何事《なにごと》があるのかと|尋《たず》ねた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ナザレのイエスがお|通《とお》りなのだと|聞《き》かされたので、[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|声《こえ》をあげて、「ダビデの|子《こ》イエスよ、わたしをあわれんで|下《くだ》さい」と|言《い》った。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|先頭《せんとう》に|立《た》つ|人々《ひとびと》が|彼《かれ》をしかって|黙《だま》らせようとしたが、|彼《かれ》はますます|激《はげ》しく|叫《さけ》びつづけた、「ダビデの|子《こ》よ、わたしをあわれんで|下《くだ》さい」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|立《た》ちどまって、その|者《もの》を|連《つ》れて|来《く》るように、とお|命《めい》じになった。|彼《かれ》が|近《ちか》づいたとき、[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]「わたしに|何《なに》をしてほしいのか」とおたずねになると、「|主《しゅ》よ、|見《み》えるようになることです」と|答《こた》えた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|言《い》われた、「|見《み》えるようになれ。あなたの|信仰《しんこう》があなたを|救《すく》った」。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》は、たちまち|見《み》えるようになった。そして|神《かみ》をあがめながらイエスに|従《したが》って|行《い》った。これを|見《み》て、|人々《ひとびと》はみな|神《かみ》をさんびした。 第一九章[#「第一九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスはエリコにはいって、その|町《まち》をお|通《とお》りになった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、そこにザアカイという|名《な》の|人《ひと》がいた。この|人《ひと》は|取税人《しゅぜいにん》のかしらで、|金持《かねもち》であった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、イエスがどんな|人《ひと》か|見《み》たいと|思《おも》っていたが、|背《せ》が|低《ひく》かったので、|群衆《ぐんしゅう》にさえぎられて|見《み》ることができなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]それでイエスを|見《み》るために、|前《まえ》の|方《ほう》に|走《はし》って|行《い》って、いちじく|桑《くわ》の|木《き》に|登《のぼ》った。そこを|通《とお》られるところだったからである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、その|場所《ばしょ》にこられたとき、|上《うえ》を|見《み》あげて|言《い》われた、「ザアカイよ、|急《いそ》いで|下《くだ》りてきなさい。きょう、あなたの|家《いえ》に|泊《と》まることにしているから」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこでザアカイは|急《いそ》いでおりてきて、よろこんでイエスを|迎《むか》え|入《い》れた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はみな、これを|見《み》てつぶやき、「|彼《かれ》は|罪人《つみびと》の|家《いえ》にはいって|客《きゃく》となった」と|言《い》った。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ザアカイは|立《た》って|主《しゅ》に|言《い》った、「|主《しゅ》よ、わたしは|誓《ちか》って|自分《じぶん》の|財産《ざいさん》の|半分《はんぶん》を|貧民《ひんみん》に|施《ほどこ》します。また、もしだれかから|不正《ふせい》な|取立《とりた》てをしていましたら、それを四|倍《ばい》にして|返《かえ》します」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「きょう、|救《すくい》がこの|家《いえ》にきた。この|人《ひと》もアブラハムの|子《こ》なのだから。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》がきたのは、|失《うしな》われたものを|尋《たず》ね|出《だ》して|救《すく》うためである」。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》がこれらの|言葉《ことば》を|聞《き》いているときに、イエスはなお一つの|譬《たとえ》をお|話《はな》しになった。それはエルサレムに|近《ちか》づいてこられたし、また|人々《ひとびと》が|神《かみ》の|国《くに》はたちまち|現《あらわ》れると|思《おも》っていたためである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それで|言《い》われた、「ある|身分《みぶん》の|高《たか》い|人《ひと》が、|王位《おうい》を|受《う》けて|帰《かえ》ってくるために|遠《とお》い|所《ところ》へ|旅立《たびだ》つことになった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そこで十|人《にん》の|僕《しもべ》を|呼《よ》び十ミナを|渡《わた》して|言《い》った、『わたしが|帰《かえ》って|来《く》るまで、これで|商売《しょうばい》をしなさい』。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|本国《ほんごく》の|住民《じゅうみん》は|彼《かれ》を|憎《にく》んでいたので、あとから|使者《ししゃ》をおくって、『この|人《ひと》が|王《おう》になるのをわれわれは|望《のぞ》んでいない』と|言《い》わせた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]さて、|彼《かれ》が|王位《おうい》を|受《う》けて|帰《かえ》ってきたとき、だれがどんなもうけをしたかを|知《し》ろうとして、|金《かね》を|渡《わた》しておいた|僕《しもべ》たちを|呼《よ》んでこさせた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|最初《さいしょ》の|者《もの》が|進《すす》み|出《で》て|言《い》った、『ご|主人様《しゅじんさま》、あなたの一ミナで十ミナをもうけました』。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》は|言《い》った、『よい|僕《しもべ》よ、うまくやった。あなたは|小《ちい》さい|事《こと》に|忠実《ちゅうじつ》であったから、十の|町《まち》を|支配《しはい》させる』。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|次《つぎ》の|者《もの》がきて|言《い》った、『ご|主人様《しゅじんさま》、あなたの一ミナで五ミナをつくりました』。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこでこの|者《もの》にも、『では、あなたは五つの|町《まち》のかしらになれ』と|言《い》った。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]それから、もうひとりの|者《もの》がきて|言《い》った、『ご|主人様《しゅじんさま》、さあ、ここにあなたの一ミナがあります。わたしはそれをふくさに|包《つつ》んで、しまっておきました。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]あなたはきびしい|方《ほう》で、おあずけにならなかったものを|取《と》りたて、おまきにならなかったものを|刈《か》る|人《ひと》なので、おそろしかったのです』。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》に|言《い》った、『|悪《わる》い|僕《しもべ》よ、わたしはあなたの|言《い》ったその|言葉《ことば》であなたをさばこう。わたしがきびしくて、あずけなかったものを|取《と》りたて、まかなかったものを|刈《か》る|人間《にんげん》だと、|知《し》っているのか。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]では、なぜわたしの|金《かね》を|銀行《ぎんこう》に|入《い》れなかったのか。そうすれば、わたしが|帰《かえ》ってきたとき、その|金《かね》を|利子《りし》と|一緒《いっしょ》に|引《ひ》き|出《だ》したであろうに』。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そして、そばに|立《た》っていた|人々《ひとびと》に、『その一ミナを|彼《かれ》から|取《と》り|上《あ》げて、十ミナを|持《も》っている|者《もの》に|与《あた》えなさい』と|言《い》った。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|言《い》った、『ご|主人様《しゅじんさま》、あの|人《ひと》は|既《すで》に十ミナを|持《も》っています』。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]『あなたがたに|言《い》うが、おおよそ|持《も》っている|人《ひと》には、なお|与《あた》えられ、|持《も》っていない|人《ひと》からは、|持《も》っているものまでも|取《と》り|上《あ》げられるであろう。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]しかしわたしが|王《おう》になることを|好《この》まなかったあの|敵《てき》どもを、ここにひっぱってきて、わたしの|前《まえ》で|打《う》ち|殺《ころ》せ』」。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれらのことを|言《い》ったのち、|先頭《せんとう》に|立《た》ち、エルサレムへ|上《のぼ》って|行《い》かれた。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そしてオリブという|山《やま》に|沿《そ》ったベテパゲとベタニヤに|近《ちか》づかれたとき、ふたりの|弟子《でし》をつかわして|言《い》われた、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]「|向《む》こうの|村《むら》へ|行《い》きなさい。そこにはいったら、まだだれも|乗《の》ったことのないろばの|子《こ》がつないであるのを|見《み》るであろう。それを|解《と》いて、|引《ひ》いてきなさい。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]もしだれかが『なぜ|解《と》くのか』と|問《と》うたら、『|主《しゅ》がお|入《い》り|用《よう》なのです』と、そう|言《い》いなさい」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、つかわされた|者《もの》たちが|行《い》って|見《み》ると、|果《はた》して、|言《い》われたとおりであった。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが、そのろばの|子《こ》を|解《と》いていると、その|持《も》ち|主《ぬし》たちが、「なぜろばの|子《こ》を|解《と》くのか」と|言《い》ったので、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》がお|入《い》り|用《よう》なのです」と|答《こた》えた。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そしてそれをイエスのところに|引《ひ》いてきて、その|子《こ》ろばの|上《うえ》に|自分《じぶん》たちの|上着《うわぎ》をかけてイエスをお|乗《の》せした。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]そして|進《すす》んで|行《い》かれると、|人々《ひとびと》は|自分《じぶん》たちの|上着《うわぎ》を|道《みち》に|敷《し》いた。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]いよいよオリブ|山《やま》の|下《くだ》り|道《みち》あたりに|近《ちか》づかれると、|大《おお》ぜいの|弟子《でし》たちはみな|喜《よろこ》んで、|彼《かれ》らが|見《み》たすべての|力《ちから》あるみわざについて、|声《こえ》|高《たか》らかに|神《かみ》をさんびして|言《い》いはじめた、 [#ここから2字下げ] [#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》の|御名《みな》によってきたる|王《おう》に、 |祝福《しゅくふく》あれ。 |天《てん》には|平和《へいわ》、 いと|高《たか》きところには|栄光《えいこう》あれ」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》にいたあるパリサイ|人《びと》たちがイエスに|言《い》った、「|先生《せんせい》、あなたの|弟子《でし》たちをおしかり|下《くだ》さい」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|答《こた》えて|言《い》われた、「あなたがたに|言《い》うが、もしこの|人《ひと》たちが|黙《だま》れば、|石《いし》が|叫《さけ》ぶであろう」。  [#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]いよいよ|都《みやこ》の|近《ちか》くにきて、それが|見《み》えたとき、そのために|泣《な》いて|言《い》われた、[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]「もしおまえも、この|日《ひ》に、|平和《へいわ》をもたらす|道《みち》を|知《し》ってさえいたら……しかし、それは|今《いま》おまえの|目《め》に|隠《かく》されている。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]いつかは、|敵《てき》が|周囲《しゅうい》に|塁《るい》を|築《きず》き、おまえを|取《と》りかこんで、|四方《しほう》から|押《お》し|迫《せま》り、[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]おまえとその|内《うち》にいる|子《こ》らとを|地《ち》に|打《う》ち|倒《たお》し、|城内《じょうない》の一つの|石《いし》も|他《た》の|石《いし》の|上《うえ》に|残《のこ》して|置《お》かない|日《ひ》が|来《く》るであろう。それは、おまえが|神《かみ》のおとずれの|時《とき》を|知《し》らないでいたからである」。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]それから|宮《みや》にはいり、|商売人《しょうばいにん》たちを|追《お》い|出《だ》しはじめて、[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らに|言《い》われた、「『わが|家《や》は|祈《いのり》の|家《いえ》であるべきだ』と|書《か》いてあるのに、あなたがたはそれを|盗賊《とうぞく》の|巣《す》にしてしまった」。  [#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|毎日《まいにち》、|宮《みや》で|教《おし》えておられた。|祭司長《さいしちょう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》また|民衆《みんしゅう》の|重立《おもだ》った|者《もの》たちはイエスを|殺《ころ》そうと|思《おも》っていたが、[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]|民衆《みんしゅう》がみな|熱心《ねっしん》にイエスに|耳《みみ》を|傾《かたむ》けていたので、|手《て》のくだしようがなかった。 第二〇章[#「第二〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]ある|日《ひ》、イエスが|宮《みや》で|人々《ひとびと》に|教《おし》え、|福音《ふくいん》を|宣《の》べておられると、|祭司長《さいしちょう》や|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちが、|長老《ちょうろう》たちと|共《とも》に|近寄《ちかよ》ってきて、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]イエスに|言《い》った、「|何《なに》の|権威《けんい》によってこれらの|事《こと》をするのですか。そうする|権威《けんい》をあなたに|与《あた》えたのはだれですか、わたしたちに|言《い》ってください」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「わたしも、ひと|言《こと》たずねよう。それに|答《こた》えてほしい。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネのバプテスマは、|天《てん》からであったか、|人《ひと》からであったか」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|互《たがい》に|論《ろん》じて|言《い》った、「もし|天《てん》からだと|言《い》えば、では、なぜ|彼《かれ》を|信《しん》じなかったのか、とイエスは|言《い》うだろう。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もし|人《ひと》からだと|言《い》えば、|民衆《みんしゅう》はみな、ヨハネを|預言者《よげんしゃ》だと|信《しん》じているから、わたしたちを|石《いし》で|打《う》つだろう」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それで|彼《かれ》らは「どこからか、|知《し》りません」と|答《こた》えた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれに|対《たい》して|言《い》われた、「わたしも|何《なに》の|権威《けんい》によってこれらの|事《こと》をするのか、あなたがたに|言《い》うまい」。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|次《つぎ》の|譬《たとえ》を|民衆《みんしゅう》に|語《かた》り|出《だ》された、「ある|人《ひと》がぶどう|園《えん》を|造《つく》って|農夫《のうふ》たちに|貸《か》し、|長《なが》い|旅《たび》に|出《で》た。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|季節《きせつ》になったので、|農夫《のうふ》たちのところへ、ひとりの|僕《しもべ》を|送《おく》って、ぶどう|園《えん》の|収穫《しゅうかく》の|分《わ》け|前《まえ》を|出《だ》させようとした。ところが、|農夫《のうふ》たちは、その|僕《しもべ》を|袋《ふくろ》だたきにし、から|手《て》で|帰《かえ》らせた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》はもうひとりの|僕《しもべ》を|送《おく》った。|彼《かれ》らはその|僕《しもべ》も|袋《ふくろ》だたきにし、|侮辱《ぶじょく》を|加《くわ》えて、から|手《て》で|帰《かえ》らせた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|更《さら》に三|人《にん》|目《め》の|者《もの》を|送《おく》ったが、|彼《かれ》らはこの|者《もの》も、|傷《きず》を|負《お》わせて|追《お》い|出《だ》した。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ぶどう|園《えん》の|主人《しゅじん》は|言《い》った、『どうしようか。そうだ、わたしの|愛子《あいし》をつかわそう。これなら、たぶん|敬《うやま》ってくれるだろう』。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|農夫《のうふ》たちは|彼《かれ》を|見《み》ると、『あれはあと|取《と》りだ。あれを|殺《ころ》してしまおう。そうしたら、その|財産《ざいさん》はわれわれのものになるのだ』と|互《たがい》に|話《はな》し|合《あ》い、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》をぶどう|園《えん》の|外《そと》に|追《お》い|出《だ》して|殺《ころ》した。そのさい、ぶどう|園《えん》の|主人《しゅじん》は、|彼《かれ》らをどうするだろうか。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|出《で》てきて、この|農夫《のうふ》たちを|殺《ころ》し、ぶどう|園《えん》を|他《た》の|人々《ひとびと》に|与《あた》えるであろう」。|人々《ひとびと》はこれを|聞《き》いて、「そんなことがあってはなりません」と|言《い》った。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》らを|見《み》つめて|言《い》われた、「それでは、 [#ここから2字下げ] 『|家《いえ》|造《つく》りらの|捨《す》てた|石《いし》が |隅《すみ》のかしら|石《いし》になった』 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるのは、どういうことか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]すべてその|石《いし》の|上《うえ》に|落《お》ちる|者《もの》は|打《う》ち|砕《くだ》かれ、それがだれかの|上《うえ》に|落《お》ちかかるなら、その|人《ひと》はこなみじんにされるであろう」。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]このとき、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちや|祭司長《さいしちょう》たちはイエスに|手《て》をかけようと|思《おも》ったが、|民衆《みんしゅう》を|恐《おそ》れた。いまの|譬《たとえ》が|自分《じぶん》たちに|当《あ》てて|語《かた》られたのだと、|悟《さと》ったからである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|機会《きかい》をうかがい、|義人《ぎじん》を|装《よそお》うまわし|者《もの》どもを|送《おく》って、イエスを|総督《そうとく》の|支配《しはい》と|権威《けんい》とに|引《ひ》き|渡《わた》すため、その|言葉《ことば》じりを|捕《とら》えさせようとした。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|尋《たず》ねて|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちは、あなたの|語《かた》り|教《おし》えられることが|正《ただ》しく、また、あなたは|分《わ》け|隔《へだ》てをなさらず、|真理《しんり》に|基《もとづ》いて|神《かみ》の|道《みち》を|教《おし》えておられることを、|承知《しょうち》しています。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ところで、カイザルに|貢《みつぎ》を|納《おさ》めてよいでしょうか、いけないでしょうか」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らの|悪巧《わるだく》みを|見破《みやぶ》って|言《い》われた、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]「デナリを|見《み》せなさい。それにあるのは、だれの|肖像《しょうぞう》、だれの|記号《きごう》なのか」。「カイザルのです」と、|彼《かれ》らが|答《こた》えた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「それなら、カイザルのものはカイザルに、|神《かみ》のものは|神《かみ》に|返《かえ》しなさい」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは、|民衆《みんしゅう》の|前《まえ》でイエスの|言葉《ことば》じりを|捕《とら》えることができず、その|答《こたえ》に|驚嘆《きょうたん》して、|黙《だま》ってしまった。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|復活《ふっかつ》ということはないと|言《い》い|張《は》っていたサドカイ|人《びと》のある|者《もの》たちが、イエスに|近寄《ちかよ》ってきて|質問《しつもん》した、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]「|先生《せんせい》、モーセは、わたしたちのためにこう|書《か》いています、『もしある|人《ひと》の|兄《あに》が|妻《つま》をめとり、|子《こ》がなくて|死《し》んだなら、|弟《おとうと》はこの|女《おんな》をめとって、|兄《あに》のために|子《こ》をもうけねばならない』。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]ところで、ここに七|人《にん》の|兄弟《きょうだい》がいました。|長男《ちょうなん》は|妻《つま》をめとりましたが、|子《こ》がなくて|死《し》に、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そして|次男《じなん》、|三男《さんなん》と、|次々《つぎつぎ》に、その|女《おんな》をめとり、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]七|人《にん》とも|同様《どうよう》に、|子《こ》をもうけずに|死《し》にました。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]のちに、その|女《おんな》も|死《し》にました。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]さて、|復活《ふっかつ》の|時《とき》には、この|女《おんな》は七|人《にん》のうち、だれの|妻《つま》になるのですか。七|人《にん》とも|彼女《かのじょ》を|妻《つま》にしたのですが」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「この|世《よ》の|子《こ》らは、めとったり、とついだりするが、[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]かの|世《よ》にはいって|死人《しにん》からの|復活《ふっかつ》にあずかるにふさわしい|者《もの》たちは、めとったり、とついだりすることはない。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|天使《てんし》に|等《ひと》しいものであり、また|復活《ふっかつ》にあずかるゆえに、|神《かみ》の|子《こ》でもあるので、もう|死《し》ぬことはあり|得《え》ないからである。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|死人《しにん》がよみがえることは、モーセも|柴《しば》の|篇《へん》で、|主《しゅ》を『アブラハムの|神《かみ》、イサクの|神《かみ》、ヤコブの|神《かみ》』と|呼《よ》んで、これを|示《しめ》した。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|死《し》んだ|者《もの》の|神《かみ》ではなく、|生《い》きている|者《もの》の|神《かみ》である。|人《ひと》はみな|神《かみ》に|生《い》きるものだからである」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》のうちのある|人々《ひとびと》が|答《こた》えて|言《い》った、「|先生《せんせい》、|仰《おお》せのとおりです」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはそれ|以上《いじょう》|何《なに》もあえて|問《と》いかけようとしなかった。  [#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「どうして|人々《ひとびと》はキリストをダビデの|子《こ》だと|言《い》うのか。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]ダビデ|自身《じしん》が|詩篇《しへん》の|中《なか》で|言《い》っている、 [#ここから2字下げ] 『|主《しゅ》はわが|主《しゅ》に|仰《おお》せになった、 [#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|敵《てき》をあなたの|足《あし》|台《だい》とする|時《とき》までは、 わたしの|右《みぎ》に|座《ざ》していなさい』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]このように、ダビデはキリストを|主《しゅ》と|呼《よ》んでいる。それなら、どうしてキリストはダビデの|子《こ》であろうか」。  [#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|民衆《みんしゅう》がみな|聞《き》いているとき、イエスは|弟子《でし》たちに|言《い》われた、[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]「|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》に|気《き》をつけなさい。|彼《かれ》らは|長《なが》い|衣《ころも》を|着《き》て|歩《ある》くのを|好《この》み、|広場《ひろば》での|敬礼《けいれい》や|会堂《かいどう》の|上席《じょうせき》や|宴会《えんかい》の|上座《じょうざ》をよろこび、[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]やもめたちの|家《いえ》を|食《く》い|倒《たお》し、|見《み》えのために|長《なが》い|祈《いのり》をする。|彼《かれ》らはもっときびしいさばきを|受《う》けるであろう」。 第二一章[#「第二一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|目《め》をあげて、|金持《かねもち》たちがさいせん|箱《はこ》に|献金《けんきん》を|投《な》げ|入《い》れるのを|見《み》られ、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]また、ある|貧《まず》しいやもめが、レプタ二つを|入《い》れるのを|見《み》て[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》われた、「よく|聞《き》きなさい。あの|貧《まず》しいやもめはだれよりもたくさん|入《い》れたのだ。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]これらの|人《ひと》たちはみな、ありあまる|中《なか》から|献金《けんきん》を|投《な》げ|入《い》れたが、あの|婦人《ふじん》は、その|乏《とぼ》しい|中《なか》から、|持《も》っている|生活《せいかつ》|費《ひ》|全部《ぜんぶ》を|入《い》れたからである」。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ある|人々《ひとびと》が、|見事《みごと》な|石《いし》と|奉納物《ほうのうぶつ》とで|宮《みや》が|飾《かざ》られていることを|話《はな》していたので、イエスは|言《い》われた、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]「あなたがたはこれらのものをながめているが、その|石《いし》一つでもくずされずに、|他《た》の|石《いし》の|上《うえ》に|残《のこ》ることもなくなる|日《ひ》が、|来《く》るであろう」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らはたずねた、「|先生《せんせい》、では、いつそんなことが|起《おこ》るのでしょうか。またそんなことが|起《おこ》るような|場合《ばあい》には、どんな|前兆《ぜんちょう》がありますか」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|言《い》われた、「あなたがたは、|惑《まど》わされないように|気《き》をつけなさい。|多《おお》くの|者《もの》がわたしの|名《な》を|名《な》のって|現《あらわ》れ、|自分《じぶん》がそれだとか、|時《とき》が|近《ちか》づいたとか、|言《い》うであろう。|彼《かれ》らについて|行《い》くな。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|戦争《せんそう》と|騒乱《そうらん》とのうわさを|聞《き》くときにも、おじ|恐《おそ》れるな。こうしたことはまず|起《おこ》らねばならないが、|終《おわ》りはすぐにはこない」。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|民《たみ》は|民《たみ》に、|国《くに》は|国《くに》に|敵対《てきたい》して|立《た》ち|上《あ》がるであろう。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また|大《だい》|地震《じしん》があり、あちこちに|疫病《えきびょう》やききんが|起《おこ》り、いろいろ|恐《おそ》ろしいことや|天《てん》からの|物《もの》すごい|前兆《ぜんちょう》があるであろう。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、これらのあらゆる|出来事《できごと》のある|前《まえ》に、|人々《ひとびと》はあなたがたに|手《て》をかけて|迫害《はくがい》をし、|会堂《かいどう》や|獄《ごく》に|引《ひ》き|渡《わた》し、わたしの|名《な》のゆえに|王《おう》や|総督《そうとく》の|前《まえ》にひっぱって|行《い》くであろう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それは、あなたがたがあかしをする|機会《きかい》となるであろう。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]だから、どう|答弁《とうべん》しようかと、|前《まえ》もって|考《かんが》えておかないことに|心《こころ》を|決《き》めなさい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|反対者《はんたいしゃ》のだれもが|抗弁《こうべん》も|否定《ひてい》もできないような|言葉《ことば》と|知恵《ちえ》とを、わたしが|授《さづ》けるから。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたは|両親《りょうしん》、|兄弟《きょうだい》、|親族《しんぞく》、|友人《ゆうじん》にさえ|裏切《うらぎ》られるであろう。また、あなたがたの|中《なか》で|殺《ころ》されるものもあろう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしの|名《な》のゆえにすべての|人《ひと》に|憎《にく》まれるであろう。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたの|髪《かみ》の|毛《け》一すじでも|失《うしな》われることはない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|耐《た》え|忍《しの》ぶことによって、|自分《じぶん》の|魂《たましい》をかち|取《と》るであろう。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]エルサレムが|軍隊《ぐんたい》に|包囲《ほうい》されるのを|見《み》たならば、そのときは、その|滅亡《めつぼう》が|近《ちか》づいたとさとりなさい。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、ユダヤにいる|人々《ひとびと》は|山《やま》へ|逃《に》げよ。|市中《しちゅう》にいる|者《もの》は、そこから|出《で》て|行《い》くがよい。また、いなかにいる|者《もの》は|市内《しない》にはいってはいけない。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]それは、|聖書《せいしょ》にしるされたすべての|事《こと》が|実現《じつげん》する|刑罰《けいばつ》の|日《ひ》であるからだ。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には、|身重《みおも》の|女《おんな》と|乳飲《ちの》み|子《ご》をもつ|女《おんな》とは、|不幸《ふこう》である。|地上《ちじょう》には|大《おお》きな|苦難《くなん》があり、この|民《たみ》にはみ|怒《いか》りが|臨《のぞ》み、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはつるぎの|刃《は》に|倒《たお》れ、また|捕《とら》えられて|諸国《しょこく》へ|引《ひ》きゆかれるであろう。そしてエルサレムは、|異邦人《いほうじん》の|時期《じき》が|満《み》ちるまで、|彼《かれ》らに|踏《ふ》みにじられているであろう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]また|日《ひ》と|月《つき》と|星《ほし》とに、しるしが|現《あらわ》れるであろう。そして、|地上《ちじょう》では、|諸《しょ》|国民《こくみん》が|悩《なや》み、|海《うみ》と|大波《おおなみ》とのとどろきにおじ|惑《まど》い、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は|世界《せかい》に|起《おこ》ろうとする|事《こと》を|思《おも》い、|恐怖《きょうふ》と|不安《ふあん》で|気絶《きぜつ》するであろう。もろもろの|天体《てんたい》が|揺《ゆ》り|動《うご》かされるからである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|大《おお》いなる|力《ちから》と|栄光《えいこう》とをもって、|人《ひと》の|子《こ》が|雲《くも》に|乗《の》って|来《く》るのを、|人々《ひとびと》は|見《み》るであろう。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]これらの|事《こと》が|起《おこ》りはじめたら、|身《み》を|起《おこ》し|頭《あたま》をもたげなさい。あなたがたの|救《すくい》が|近《ちか》づいているのだから」。  [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それから一つの|譬《たとえ》を|話《はな》された、「いちじくの|木《き》を、またすべての|木《き》を|見《み》なさい。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]はや|芽《め》を|出《だ》せば、あなたがたはそれを|見《み》て、|夏《なつ》がすでに|近《ちか》いと、|自分《じぶん》で|気《き》づくのである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]このようにあなたがたも、これらの|事《こと》が|起《おこ》るのを|見《み》たなら、|神《かみ》の|国《くに》が|近《ちか》いのだとさとりなさい。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》いておきなさい。これらの|事《こと》が、ことごとく|起《おこ》るまでは、この|時代《じだい》は|滅《ほろ》びることがない。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|天地《てんち》は|滅《ほろ》びるであろう。しかしわたしの|言葉《ことば》は|決《けっ》して|滅《ほろ》びることがない。  [#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|放縦《ほうじゅう》や、|泥酔《でいすい》や、|世《よ》の|煩《わずら》いのために|心《こころ》が|鈍《にぶ》っているうちに、|思《おも》いがけないとき、その|日《ひ》がわなのようにあなたがたを|捕《とら》えることがないように、よく|注意《ちゅうい》していなさい。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》は|地《ち》の|全面《ぜんめん》に|住《す》むすべての|人《ひと》に|臨《のぞ》むのであるから。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]これらの|起《おこ》ろうとしているすべての|事《こと》からのがれて、|人《ひと》の|子《こ》の|前《まえ》に|立《た》つことができるように、|絶《た》えず|目《め》をさまして|祈《いの》っていなさい」。  [#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|昼《ひる》のあいだは|宮《みや》で|教《おし》え、|夜《よる》には|出《で》て|行《い》ってオリブという|山《やま》で|夜《よ》をすごしておられた。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|民衆《みんしゅう》はみな、み|教《おしえ》を|聞《き》こうとして、いつも|朝《あさ》|早《はや》く|宮《みや》に|行《い》き、イエスのもとに|集《あつ》まった。 第二二章[#「第二二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|過越《すぎこし》といわれている|除酵祭《じょこうさい》が|近《ちか》づいた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちや|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちは、どうかしてイエスを|殺《ころ》そうと|計《はか》っていた。|民衆《みんしゅう》を|恐《おそ》れていたからである。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、十二|弟子《でし》のひとりで、イスカリオテと|呼《よ》ばれていたユダに、サタンがはいった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|彼《かれ》は|祭司長《さいしちょう》たちや|宮守《みやもり》がしらたちのところへ|行《い》って、どうしてイエスを|彼《かれ》らに|渡《わた》そうかと、その|方法《ほうほう》について|協議《きょうぎ》した。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|喜《よろこ》んで、ユダに|金《かね》を|与《あた》える|取決《とりき》めをした。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ユダはそれを|承諾《しょうだく》した。そして、|群衆《ぐんしゅう》のいないときにイエスを|引《ひ》き|渡《わた》そうと、|機会《きかい》をねらっていた。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]さて、|過越《すぎこし》の|小羊《こひつじ》をほふるべき|除酵祭《じょこうさい》の|日《ひ》がきたので、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエスはペテロとヨハネとを|使《つか》いに|出《だ》して|言《い》われた、「|行《い》って、|過越《すぎこし》の|食事《しょくじ》ができるように|準備《じゅんび》をしなさい」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|言《い》った、「どこに|準備《じゅんび》をしたらよいのですか」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「|市内《しない》にはいったら、|水《みず》がめを|持《も》っている|男《おとこ》に|出会《であ》うであろう。その|人《ひと》がはいる|家《いえ》までついて|行《い》って、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]その|家《いえ》の|主人《しゅじん》に|言《い》いなさい、『|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》に|過越《すぎこし》の|食事《しょくじ》をする|座敷《ざしき》はどこか、と|先生《せんせい》が|言《い》っておられます』。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]すると、その|主人《しゅじん》は|席《せき》の|整《ととの》えられた二|階《かい》の|広間《ひろま》を|見《み》せてくれるから、そこに|用意《ようい》をしなさい」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|出《で》て|行《い》ってみると、イエスが|言《い》われたとおりであったので、|過越《すぎこし》の|食事《しょくじ》の|用意《ようい》をした。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|時間《じかん》になったので、イエスは|食卓《しょくたく》につかれ、|使徒《しと》たちも|共《とも》に|席《せき》についた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしは|苦《くる》しみを|受《う》ける|前《まえ》に、あなたがたとこの|過越《すぎこし》の|食事《しょくじ》をしようと、|切《せつ》に|望《のぞ》んでいた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》って|置《お》くが、|神《かみ》の|国《くに》で|過越《すぎこし》が|成就《じょうじゅ》する|時《とき》までは、わたしは二|度《ど》と、この|過越《すぎこし》の|食事《しょくじ》をすることはない」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そして|杯《さかずき》を|取《と》り、|感謝《かんしゃ》して|言《い》われた、「これを|取《と》って、|互《たがい》に|分《わ》けて|飲《の》め。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》っておくが、|今《いま》からのち|神《かみ》の|国《くに》が|来《く》るまでは、わたしはぶどうの|実《み》から|造《つく》ったものを、いっさい|飲《の》まない」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]またパンを|取《と》り、|感謝《かんしゃ》してこれをさき、|弟子《でし》たちに|与《あた》えて|言《い》われた、「これは、あなたがたのために|与《あた》えるわたしのからだである。わたしを|記念《きねん》するため、このように|行《おこな》いなさい」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|食事《しょくじ》ののち、|杯《さかずき》も|同《おな》じ|様《よう》にして|言《い》われた、「この|杯《さかずき》は、あなたがたのために|流《なが》すわたしの|血《ち》で|立《た》てられる|新《あたら》しい|契約《けいやく》である。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、そこに、わたしを|裏切《うらぎ》る|者《もの》が、わたしと|一緒《いっしょ》に|食卓《しょくたく》に|手《て》を|置《お》いている。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|子《こ》は|定《さだ》められたとおりに、|去《さ》って|行《い》く。しかし|人《ひと》の|子《こ》を|裏切《うらぎ》るその|人《ひと》は、わざわいである」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは、|自分《じぶん》たちのうちのだれが、そんな|事《こと》をしようとしているのだろうと、|互《たがい》に|論《ろん》じはじめた。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]それから、|自分《じぶん》たちの|中《なか》でだれがいちばん|偉《えら》いだろうかと|言《い》って、|争論《そうろん》が|彼《かれ》らの|間《あいだ》に、|起《おこ》った。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスが|言《い》われた、「|異邦《いほう》の|王《おう》たちはその|民《たみ》の|上《うえ》に|君臨《くんりん》し、また、|権力《けんりょく》をふるっている|者《もの》たちは|恩人《おんじん》と|呼《よ》ばれる。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたは、そうであってはならない。かえって、あなたがたの|中《なか》でいちばん|偉《えら》い|人《ひと》はいちばん|若《わか》い|者《もの》のように、|指導《しどう》する|人《ひと》は|仕《つか》える|者《もの》のようになるべきである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|食卓《しょくたく》につく|人《ひと》と|給仕《きゅうじ》する|者《もの》と、どちらが|偉《えら》いのか。|食卓《しょくたく》につく|人《ひと》の|方《ほう》ではないか。しかし、わたしはあなたがたの|中《なか》で、|給仕《きゅうじ》をする|者《もの》のようにしている。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わたしの|試錬《しれん》のあいだ、わたしと|一緒《いっしょ》に|最後《さいご》まで|忍《しの》んでくれた|人《ひと》たちである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それで、わたしの|父《ちち》が|国《くに》の|支配《しはい》をわたしにゆだねてくださったように、わたしもそれをあなたがたにゆだね、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|国《くに》で|食卓《しょくたく》について|飲《の》み|食《く》いをさせ、また|位《くらい》に|座《ざ》してイスラエルの十二の|部族《ぶぞく》をさばかせるであろう。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]シモン、シモン、|見《み》よ、サタンはあなたがたを|麦《むぎ》のようにふるいにかけることを|願《ねが》って|許《ゆる》された。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしはあなたの|信仰《しんこう》がなくならないように、あなたのために|祈《いの》った。それで、あなたが|立《た》ち|直《なお》ったときには、|兄弟《きょうだい》たちを|力《ちから》づけてやりなさい」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]シモンが|言《い》った、「|主《しゅ》よ、わたしは|獄《ごく》にでも、また|死《し》に|至《いた》るまでも、あなたとご|一緒《いっしょ》に|行《い》く|覚悟《かくご》です」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスが|言《い》われた、「ペテロよ、あなたに|言《い》っておく。きょう、|鶏《にわとり》が|鳴《な》くまでに、あなたは三|度《ど》わたしを|知《し》らないと|言《い》うだろう」。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしが|財布《さいふ》も|袋《ふくろ》もくつも|持《も》たせずにあなたがたをつかわしたとき、|何《なに》かこまったことがあったか」。|彼《かれ》らは、「いいえ、|何《なに》もありませんでした」と|答《こた》えた。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]そこで|言《い》われた、「しかし|今《いま》は、|財布《さいふ》のあるものは、それを|持《も》って|行《い》け。|袋《ふくろ》も|同様《どうよう》に|持《も》って|行《い》け。また、つるぎのない|者《もの》は、|自分《じぶん》の|上着《うわぎ》を|売《う》って、それを|買《か》うがよい。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|言《い》うが、『|彼《かれ》は|罪人《つみびと》のひとりに|数《かぞ》えられた』としるしてあることは、わたしの|身《み》に|成《な》しとげられねばならない。そうだ、わたしに|係《かか》わることは|成就《じょうじゅ》している」。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちが|言《い》った、「|主《しゅ》よ、ごらんなさい、ここにつるぎが二|振《ふ》りございます」。イエスは|言《い》われた、「それでよい」。  [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|出《で》て、いつものようにオリブ|山《やま》に|行《い》かれると、|弟子《でし》たちも|従《したが》って|行《い》った。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]いつもの|場所《ばしょ》に|着《つ》いてから、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|誘惑《ゆうわく》に|陥《おちい》らないように|祈《いの》りなさい」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]そしてご|自分《じぶん》は、|石《いし》を|投《な》げてとどくほど|離《はな》れたところへ|退《しりぞ》き、ひざまずいて、|祈《いの》って|言《い》われた、[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]「|父《ちち》よ、みこころならば、どうぞ、この|杯《さかずき》をわたしから|取《と》りのけてください。しかし、わたしの|思《おも》いではなく、みこころが|成《な》るようにしてください」。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|御使《みつかい》が|天《てん》からあらわれてイエスを|力《ちから》づけた。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|苦《くる》しみもだえて、ますます|切《せつ》に|祈《いの》られた。そして、その|汗《あせ》が|血《ち》のしたたりのように|地《ち》に|落《お》ちた。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|祈《いのり》を|終《お》えて|立《た》ちあがり、|弟子《でし》たちのところへ|行《い》かれると、|彼《かれ》らが|悲《かな》しみのはて|寝入《ねい》っているのをごらんになって[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》われた、「なぜ|眠《ねむ》っているのか。|誘惑《ゆうわく》に|陥《おちい》らないように、|起《お》きて|祈《いの》っていなさい」。  [#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]イエスがまだそう|言《い》っておられるうちに、そこに|群衆《ぐんしゅう》が|現《あらわ》れ、十二|弟子《でし》のひとりでユダという|者《もの》が|先頭《せんとう》に|立《た》って、イエスに|接吻《せっぷん》しようとして|近《ちか》づいてきた。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|言《い》われた、「ユダ、あなたは|接吻《せっぷん》をもって|人《ひと》の|子《こ》を|裏切《うらぎ》るのか」。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]イエスのそばにいた|人《ひと》たちは、|事《こと》のなりゆきを|見《み》て、「|主《しゅ》よ、つるぎで|切《き》りつけてやりましょうか」と|言《い》って、[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]そのうちのひとりが、|祭司長《さいしちょう》の|僕《しもべ》に|切《き》りつけ、その|右《みぎ》の|耳《みみ》を|切《き》り|落《おと》した。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれに|対《たい》して|言《い》われた、「それだけでやめなさい」。そして、その|僕《しもべ》の|耳《みみ》に|手《て》を|触《ふれ》て、おいやしになった。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]それから、|自分《じぶん》にむかって|来《く》る|祭司長《さいしちょう》、|宮守《みやもり》がしら、|長老《ちょうろう》たちに|対《たい》して|言《い》われた、「あなたがたは、|強盗《ごうとう》にむかうように|剣《けん》や|棒《ぼう》を|持《も》って|出《で》てきたのか。[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]|毎日《まいにち》あなたがたと|一緒《いっしょ》に|宮《みや》にいた|時《とき》には、わたしに|手《て》をかけなかった。だが、|今《いま》はあなたがたの|時《とき》、また、やみの|支配《しはい》の|時《とき》である」。  [#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]それから|人々《ひとびと》はイエスを|捕《とら》え、ひっぱって|大祭司《だいさいし》の|邸宅《ていたく》へつれて|行《い》った。ペテロは|遠《とお》くからついて|行《い》った。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は|中庭《なかにわ》のまん|中《なか》に|火《ひ》をたいて、|一緒《いっしょ》にすわっていたので、ペテロもその|中《なか》にすわった。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]すると、ある|女中《じょちゅう》が、|彼《かれ》が|火《ひ》のそばにすわっているのを|見《み》、|彼《かれ》を|見《み》つめて、「この|人《ひと》もイエスと|一緒《いっしょ》にいました」と|言《い》った。[#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはそれを|打《う》ち|消《け》して、「わたしはその|人《ひと》を|知《し》らない」と|言《い》った。[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]しばらくして、ほかの|人《ひと》がペテロを|見《み》て|言《い》った、「あなたもあの|仲間《なかま》のひとりだ」。するとペテロは|言《い》った、「いや、それはちがう」。[#太字]五九[#「五九」は行右小書き][#太字終わり]|約《やく》一|時間《じかん》たってから、またほかの|者《もの》が|言《い》い|張《は》った、「たしかにこの|人《ひと》もイエスと|一緒《いっしょ》だった。この|人《ひと》もガリラヤ|人《びと》なのだから」。[#太字]六〇[#「六〇」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|言《い》った、「あなたの|言《い》っていることは、わたしにわからない」。すると、|彼《かれ》がまだ|言《い》い|終《おわ》らぬうちに、たちまち、|鶏《にわとり》が|鳴《な》いた。[#太字]六一[#「六一」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は|振《ふ》りむいてペテロを|見《み》つめられた。そのときペテロは、「きょう、|鶏《にわとり》が|鳴《な》く|前《まえ》に、三|度《ど》わたしを|知《し》らないと|言《い》うであろう」と|言《い》われた|主《しゅ》のお|言葉《ことば》を|思《おも》い|出《だ》した。[#太字]六二[#「六二」は行右小書き][#太字終わり]そして|外《そと》へ|出《で》て、|激《はげ》しく|泣《な》いた。  [#太字]六三[#「六三」は行右小書き][#太字終わり]イエスを|監視《かんし》していた|人《ひと》たちは、イエスを|嘲弄《ちょうろう》し、|打《う》ちたたき、[#太字]六四[#「六四」は行右小書き][#太字終わり]|目《め》かくしをして、「|言《い》いあててみよ。|打《う》ったのは、だれか」ときいたりした。[#太字]六五[#「六五」は行右小書き][#太字終わり]そのほか、いろいろな|事《こと》を|言《い》って、イエスを|愚弄《ぐろう》した。  [#太字]六六[#「六六」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けたとき、|人民《じんみん》の|長老《ちょうろう》、|祭司長《さいしちょう》たち、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちが|集《あつ》まり、イエスを|議会《ぎかい》に|引《ひ》き|出《だ》して|言《い》った、[#太字]六七[#「六七」は行右小書き][#太字終わり]「あなたがキリストなら、そう|言《い》ってもらいたい」。イエスは|言《い》われた、「わたしが|言《い》っても、あなたがたは|信《しん》じないだろう。[#太字]六八[#「六八」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしがたずねても、|答《こた》えないだろう。[#太字]六九[#「六九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|人《ひと》の|子《こ》は|今《いま》からのち、|全能《ぜんのう》の|神《かみ》の|右《みぎ》に|座《ざ》するであろう」。[#太字]七〇[#「七〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|言《い》った、「では、あなたは|神《かみ》の|子《こ》なのか」。イエスは|言《い》われた、「あなたがたの|言《い》うとおりである」。[#太字]七一[#「七一」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》らは|言《い》った、「これ|以上《いじょう》、なんの|証拠《しょうこ》がいるか。われわれは|直接《ちょくせつ》|彼《かれ》の|口《くち》から|聞《き》いたのだから」。 第二三章[#「第二三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》はみな|立《た》ちあがって、イエスをピラトのところへ|連《つ》れて|行《い》った。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして|訴《うった》え|出《で》て|言《い》った、「わたしたちは、この|人《ひと》が|国民《こくみん》を|惑《まど》わし、|貢《みつぎ》をカイザルに|納《おさ》めることを|禁《きん》じ、また|自分《じぶん》こそ|王《おう》なるキリストだと、となえているところを|目撃《もくげき》しました」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ピラトはイエスに|尋《たず》ねた、「あなたがユダヤ|人《じん》の|王《おう》であるか」。イエスは「そのとおりである」とお|答《こた》えになった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこでピラトは|祭司長《さいしちょう》たちと|群衆《ぐんしゅう》とにむかって|言《い》った、「わたしはこの|人《ひと》になんの|罪《つみ》もみとめない」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ところが|彼《かれ》らは、ますます|言《い》いつのってやまなかった、「|彼《かれ》は、ガリラヤからはじめてこの|所《ところ》まで、ユダヤ|全国《ぜんこく》にわたって|教《おし》え、|民衆《みんしゅう》を|煽動《せんどう》しているのです」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ピラトはこれを|聞《き》いて、この|人《ひと》はガリラヤ|人《びと》かと|尋《たず》ね、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そしてヘロデの|支配下《しはいか》のものであることを|確《たし》かめたので、ちょうどこのころ、ヘロデがエルサレムにいたのをさいわい、そちらへイエスを|送《おく》りとどけた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ヘロデはイエスを|見《み》て|非常《ひじょう》に|喜《よろこ》んだ。それは、かねてイエスのことを|聞《き》いていたので、|会《あ》って|見《み》たいと|長《なが》いあいだ|思《おも》っていたし、またイエスが|何《なに》か|奇跡《きせき》を|行《おこな》うのを|見《み》たいと|望《のぞ》んでいたからである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それで、いろいろと|質問《しつもん》を|試《こころ》みたが、イエスは|何《なに》もお|答《こた》えにならなかった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちと|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちとは|立《た》って、|激《はげ》しい|語調《ごちょう》でイエスを|訴《うった》えた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]またヘロデはその|兵卒《へいそつ》どもと|一緒《いっしょ》になって、イエスを|侮辱《ぶじょく》したり|嘲弄《ちょうろう》したりしたあげく、はなやかな|着物《きもの》を|着《き》せてピラトへ|送《おく》りかえした。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ヘロデとピラトとは|以前《いぜん》は|互《たがい》に|敵視《てきし》していたが、この|日《ひ》に|親《した》しい|仲《なか》になった。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは、|祭司長《さいしちょう》たちと|役人《やくにん》たちと|民衆《みんしゅう》とを、|呼《よ》び|集《あつ》めて|言《い》った、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]「おまえたちは、この|人《ひと》を|民衆《みんしゅう》を|惑《まど》わすものとしてわたしのところに|連《つ》れてきたので、おまえたちの|面前《めんぜん》でしらべたが、|訴《うった》え|出《で》ているような|罪《つみ》は、この|人《ひと》に|少《すこ》しもみとめられなかった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ヘロデもまたみとめなかった。|現《げん》に|彼《かれ》はイエスをわれわれに|送《おく》りかえしてきた。この|人《ひと》はなんら|死《し》に|当《あた》るようなことはしていないのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]だから、|彼《かれ》をむち|打《う》ってから、ゆるしてやることにしよう」。〔[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|祭《まつり》ごとにピラトがひとりの|囚人《しゅうじん》をゆるしてやることになっていた。〕[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|彼《かれ》らはいっせいに|叫《さけ》んで|言《い》った、「その|人《ひと》を|殺《ころ》せ。バラバをゆるしてくれ」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]このバラバは、|都《みやこ》で|起《おこ》った|暴動《ぼうどう》と|殺人《さつじん》とのかどで、|獄《ごく》に|投《とう》ぜられていた|者《もの》である。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ピラトはイエスをゆるしてやりたいと|思《おも》って、もう一|度《ど》かれらに|呼《よ》びかけた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]しかし|彼《かれ》らは、わめきたてて「|十字架《じゅうじか》につけよ、|彼《かれ》を|十字架《じゅうじか》につけよ」と|言《い》いつづけた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは三|度目《どめ》に|彼《かれ》らにむかって|言《い》った、「では、この|人《ひと》は、いったい、どんな|悪事《あくじ》をしたのか。|彼《かれ》には|死《し》に|当《あた》る|罪《つみ》は|全《まった》くみとめられなかった。だから、むち|打《う》ってから|彼《かれ》をゆるしてやることにしよう」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|彼《かれ》らは|大声《おおごえ》をあげて|詰《つ》め|寄《よ》り、イエスを|十字架《じゅうじか》につけるように|要求《ようきゅう》した。そして、その|声《こえ》が|勝《か》った。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ピラトはついに|彼《かれ》らの|願《ねが》いどおりにすることに|決定《けってい》した。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そして、|暴動《ぼうどう》と|殺人《さつじん》とのかどで|獄《ごく》に|投《とう》ぜられた|者《もの》の|方《ほう》を、|彼《かれ》らの|要求《ようきゅう》に|応《おう》じてゆるしてやり、イエスの|方《ほう》は|彼《かれ》らに|引《ひ》き|渡《わた》して、その|意《い》のままにまかせた。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがイエスをひいてゆく|途中《とちゅう》、シモンというクレネ|人《びと》が|郊外《こうがい》から|出《で》てきたのを|捕《とら》えて|十字架《じゅうじか》を|負《お》わせ、それをになってイエスのあとから|行《い》かせた。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|大《おお》ぜいの|民衆《みんしゅう》と、|悲《かな》しみ|嘆《なげ》いてやまない|女《おんな》たちの|群《む》れとが、イエスに|従《したが》って|行《い》った。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|女《おんな》たちの|方《ほう》に|振《ふ》りむいて|言《い》われた、「エルサレムの|娘《むすめ》たちよ、わたしのために|泣《な》くな。むしろ、あなたがた|自身《じしん》のため、また|自分《じぶん》の|子供《こども》たちのために|泣《な》くがよい。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]『|不妊《ふにん》の|女《おんな》と|子《こ》を|産《う》まなかった|胎《たい》と、ふくませなかった|乳房《ちぶさ》とは、さいわいだ』と|言《い》う|日《ひ》が、いまに|来《く》る。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|人々《ひとびと》は|山《やま》にむかって、われわれの|上《うえ》に|倒《たお》れかかれと|言《い》い、また|丘《おか》にむかって、われわれにおおいかぶされと|言《い》い|出《だ》すであろう。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]もし、|生木《なまき》でさえもそうされるなら、|枯木《かれき》はどうされることであろう」。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスと|共《とも》に|刑《けい》を|受《う》けるために、ほかにふたりの|犯罪《はんざい》|人《にん》も|引《ひ》かれていった。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]されこうべと|呼《よ》ばれている|所《ところ》に|着《つ》くと、|人々《ひとびと》はそこでイエスを|十字架《じゅうじか》につけ、|犯罪《はんざい》|人《にん》たちも、ひとりは|右《みぎ》に、ひとりは|左《ひだり》に、|十字架《じゅうじか》につけた。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスは|言《い》われた、「|父《ちち》よ、|彼《かれ》らをおゆるしください。|彼《かれ》らは|何《なに》をしているのか、わからずにいるのです」。|人々《ひとびと》はイエスの|着物《きもの》をくじ|引《ひ》きで|分《わ》け|合《あ》った。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|民衆《みんしゅう》は|立《た》って|見《み》ていた。|役人《やくにん》たちもあざ|笑《わら》って|言《い》った、「|彼《かれ》は|他人《たにん》を|救《すく》った。もし|彼《かれ》が|神《かみ》のキリスト、|選《えら》ばれた|者《もの》であるなら、|自分《じぶん》|自身《じしん》を|救《すく》うがよい」。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|兵卒《へいそつ》どももイエスをののしり、|近寄《ちかよ》ってきて|酢《す》いぶどう|酒《しゅ》をさし|出《だ》して|言《い》った、[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]「あなたがユダヤ|人《じん》の|王《おう》なら、|自分《じぶん》を|救《すく》いなさい」。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]イエスの|上《うえ》には、「これはユダヤ|人《じん》の|王《おう》」と|書《か》いた|札《ふだ》がかけてあった。  [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|十字架《じゅうじか》にかけられた|犯罪《はんざい》|人《にん》のひとりが、「あなたはキリストではないか。それなら、|自分《じぶん》を|救《すく》い、またわれわれも|救《すく》ってみよ」と、イエスに|悪口《わるくち》を|言《い》いつづけた。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]もうひとりは、それをたしなめて|言《い》った、「おまえは|同《おな》じ|刑《けい》を|受《う》けていながら、|神《かみ》を|恐《おそ》れないのか。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]お|互《たがい》は|自分《じぶん》のやった|事《こと》のむくいを|受《う》けているのだから、こうなったのは|当然《とうぜん》だ。しかし、このかたは|何《なに》も|悪《わる》いことをしたのではない」。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]そして|言《い》った、「イエスよ、あなたが|御国《みくに》の|権威《けんい》をもっておいでになる|時《とき》には、わたしを|思《おも》い|出《だ》してください」。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「よく|言《い》っておくが、あなたはきょう、わたしと|一緒《いっしょ》にパラダイスにいるであろう」。  [#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]|時《とき》はもう|昼《ひる》の十二|時《じ》ごろであったが、|太陽《たいよう》は|光《ひかり》を|失《うしな》い、|全《ぜん》|地《ち》は|暗《くら》くなって、三|時《じ》に|及《およ》んだ。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]そして|聖所《せいじょ》の|幕《まく》がまん|中《なか》から|裂《さ》けた。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、イエスは|声《こえ》|高《たか》く|叫《さけ》んで|言《い》われた、「|父《ちち》よ、わたしの|霊《れい》をみ|手《て》にゆだねます」。こう|言《い》ってついに|息《いき》を|引《ひ》きとられた。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]|百卒長《ひゃくそつちょう》はこの|有様《ありさま》を|見《み》て、|神《かみ》をあがめ、「ほんとうに、この|人《ひと》は|正《ただ》しい|人《ひと》であった」と|言《い》った。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]この|光景《こうけい》を|見《み》に|集《あつ》まってきた|群衆《ぐんしゅう》も、これらの|出来事《できごと》を|見《み》て、みな|胸《むね》を|打《う》ちながら|帰《かえ》って|行《い》った。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]すべてイエスを|知《し》っていた|者《もの》や、ガリラヤから|従《したが》ってきた|女《おんな》たちも、|遠《とお》い|所《ところ》に|立《た》って、これらのことを|見《み》ていた。  [#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]ここに、ヨセフという|議員《ぎいん》がいたが、|善良《ぜんりょう》で|正《ただ》しい|人《ひと》であった。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》はユダヤの|町《まち》アリマタヤの|出身《しゅっしん》で、|神《かみ》の|国《くに》を|待《ま》ち|望《のぞ》んでいた。|彼《かれ》は|議会《ぎかい》の|議決《ぎけつ》や|行動《こうどう》には|賛成《さんせい》していなかった。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》がピラトのところへ|行《い》って、イエスのからだの|引取《ひきと》り|方《かた》を|願《ねが》い|出《で》て、[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]それを|取《と》りおろして|亜麻布《あまぬの》に|包《つつ》み、まだだれも|葬《ほうむ》ったことのない、|岩《いわ》を|掘《ほ》って|造《つく》った|墓《はか》に|納《おさ》めた。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]この|日《ひ》は|準備《じゅんび》の|日《ひ》であって、|安息日《あんそくにち》が|始《はじ》まりかけていた。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]イエスと|一緒《いっしょ》にガリラヤからきた|女《おんな》たちは、あとについてきて、その|墓《はか》を|見《み》、またイエスのからだが|納《おさ》められる|様子《ようす》を|見《み》とどけた。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]そして|帰《かえ》って、|香料《こうりょう》と|香油《こうゆ》とを|用意《ようい》した。  それからおきてに|従《したが》って|安息日《あんそくにち》を|休《やす》んだ。 第二四章[#「第二四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|週《しゅう》の|初《はじ》めの|日《ひ》、|夜明《よあ》け|前《まえ》に、|女《おんな》たちは|用意《ようい》しておいた|香料《こうりょう》を|携《たずさ》えて、|墓《はか》に|行《い》った。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|石《いし》が|墓《はか》からころがしてあるので、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|中《なか》にはいってみると、|主《しゅ》イエスのからだが|見当《みあた》らなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そのため|途方《とほう》にくれていると、|見《み》よ、|輝《かがや》いた|衣《ころも》を|着《き》たふたりの|者《もの》が、|彼《かれ》らに|現《あらわ》れた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》たちは|驚《おどろ》き|恐《おそ》れて、|顔《かお》を|地《ち》に|伏《ふ》せていると、このふたりの|者《もの》が|言《い》った、「あなたがたは、なぜ|生《い》きた|方《ほう》を|死人《しにん》の|中《なか》にたずねているのか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そのかたは、ここにはおられない。よみがえられたのだ。まだガリラヤにおられたとき、あなたがたにお|話《はな》しになったことを|思《おも》い|出《だ》しなさい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|人《ひと》の|子《こ》は|必《かなら》ず|罪人《つみびと》らの|手《て》に|渡《わた》され、|十字架《じゅうじか》につけられ、そして三|日《か》|目《め》によみがえる、と|仰《おお》せられたではないか」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そこで|女《おんな》たちはその|言葉《ことば》を|思《おも》い|出《だ》し、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|墓《はか》から|帰《かえ》って、これらいっさいのことを、十一|弟子《でし》や、その|他《た》みんなの|人《ひと》に|報告《ほうこく》した。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》たちというのは、マグダラのマリヤ、ヨハンナ、およびヤコブの|母《はは》マリヤであった。|彼女《かのじょ》たちと|一緒《いっしょ》にいたほかの|女《おんな》たちも、このことを|使徒《しと》たちに|話《はな》した。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|使徒《しと》たちには、それが|愚《おろ》かな|話《はなし》のように|思《おも》われて、それを|信《しん》じなかった。〔[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|立《た》って|墓《はか》へ|走《はし》って|行《い》き、かがんで|中《なか》を|見《み》ると、|亜麻布《あまぬの》だけがそこにあったので、|事《こと》の|次第《しだい》を|不思議《ふしぎ》に|思《おも》いながら|帰《かえ》って|行《い》った。〕  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]この|日《ひ》、ふたりの|弟子《でし》が、エルサレムから七マイルばかり|離《はな》れたエマオという|村《むら》へ|行《い》きながら、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]このいっさいの|出来事《できごと》について|互《たがい》に|語《かた》り|合《あ》っていた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|語《かた》り|合《あ》い|論《ろん》じ|合《あ》っていると、イエスご|自身《じしん》が|近《ちか》づいてきて、|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》に|歩《ある》いて|行《い》かれた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らの|目《め》がさえぎられて、イエスを|認《みと》めることができなかった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|歩《ある》きながら|互《たがい》に|語《かた》り|合《あ》っているその|話《はなし》は、なんのことなのか」。|彼《かれ》らは|悲《かな》しそうな|顔《かお》をして|立《た》ちどまった。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そのひとりのクレオパという|者《もの》が、|答《こた》えて|言《い》った、「あなたはエルサレムに|泊《と》まっていながら、あなただけが、この|都《みやこ》でこのごろ|起《おこ》ったことをご|存《ぞん》じないのですか」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]「それは、どんなことか」と|言《い》われると、|彼《かれ》らは|言《い》った、「ナザレのイエスのことです。あのかたは、|神《かみ》とすべての|民衆《みんしゅう》との|前《まえ》で、わざにも|言葉《ことば》にも|力《ちから》ある|預言者《よげんしゃ》でしたが、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちや|役人《やくにん》たちが、|死刑《しけい》に|処《しょ》するために|引《ひ》き|渡《わた》し、|十字架《じゅうじか》につけたのです。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、イスラエルを|救《すく》うのはこの|人《ひと》であろうと、|望《のぞ》みをかけていました。しかもその|上《うえ》に、この|事《こと》が|起《おこ》ってから、きょうが三|日《か》|目《め》なのです。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、わたしたちの|仲間《なかま》である|数人《すうにん》の|女《おんな》が、わたしたちを|驚《おどろ》かせました。というのは、|彼《かれ》らが|朝《あさ》|早《はや》く|墓《はか》に|行《い》きますと、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスのからだが|見当《みあた》らないので、|帰《かえ》ってきましたが、そのとき|御使《みつかい》が|現《あらわ》れて、『イエスは|生《い》きておられる』と|告《つ》げたと|申《もう》すのです。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]それで、わたしたちの|仲間《なかま》が|数人《すうにん》、|墓《はか》に|行《い》って|見《み》ますと、|果《はた》して|女《おんな》たちが|言《い》ったとおりで、イエスは|見当《みあた》りませんでした」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスが|言《い》われた、「ああ、|愚《おろ》かで|心《こころ》のにぶいため、|預言者《よげんしゃ》たちが|説《と》いたすべての|事《こと》を|信《しん》じられない|者《もの》たちよ。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]キリストは|必《かなら》ず、これらの|苦難《くなん》を|受《う》けて、その|栄光《えいこう》に|入《はい》るはずではなかったのか」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》って、モーセやすべての|預言者《よげんしゃ》からはじめて、|聖書《せいしょ》|全体《ぜんたい》にわたり、ご|自身《じしん》についてしるしてある|事《こと》どもを、|説《と》きあかされた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》らは|行《い》こうとしていた|村《むら》に|近《ちか》づいたが、イエスがなお|先《さき》へ|進《すす》み|行《い》かれる|様子《ようす》であった。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、しいて|引《ひ》き|止《と》めて|言《い》った、「わたしたちと|一緒《いっしょ》にお|泊《と》まり|下《くだ》さい。もう|夕暮《ゆうぐれ》になっており、|日《ひ》もはや|傾《かたむ》いています」。イエスは、|彼《かれ》らと|共《とも》に|泊《と》まるために、|家《いえ》にはいられた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|一緒《いっしょ》に|食卓《しょくたく》につかれたとき、パンを|取《と》り、|祝福《しゅくふく》してさき、|彼《かれ》らに|渡《わた》しておられるうちに、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|目《め》が|開《ひら》けて、それがイエスであることがわかった。すると、み|姿《すがた》が|見《み》えなくなった。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|互《たがい》に|言《い》った、「|道々《みちみち》お|話《はな》しになったとき、また|聖書《せいしょ》を|説《と》き|明《めい》してくださったとき、お|互《たがい》の|心《こころ》が|内《うち》に|燃《も》えたではないか」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そして、すぐに|立《た》ってエルサレムに|帰《かえ》って|見《み》ると、十一|弟子《でし》とその|仲間《なかま》が|集《あつ》まっていて、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》は、ほんとうによみがえって、シモンに|現《あらわ》れなさった」と|言《い》っていた。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そこでふたりの|者《もの》は、|途中《とちゅう》であったことや、パンをおさきになる|様子《ようす》でイエスだとわかったことなどを|話《はな》した。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]こう|話《はな》していると、イエスが|彼《かれ》らの|中《なか》にお|立《た》ちになった。〔そして「やすかれ」と|言《い》われた。〕[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|恐《おそ》れ|驚《おどろ》いて、|霊《れい》を|見《み》ているのだと|思《おも》った。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスが|言《い》われた、「なぜおじ|惑《まど》っているのか。どうして|心《こころ》に|疑《うたが》いを|起《おこ》すのか。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|手《て》や|足《あし》を|見《み》なさい。まさしくわたしなのだ。さわって|見《み》なさい。|霊《れい》には|肉《にく》や|骨《ほね》はないが、あなたがたが|見《み》るとおり、わたしにはあるのだ」。〔[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》って、|手《て》と|足《あし》とをお|見《み》せになった。〕[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|喜《よろこ》びのあまり、まだ|信《しん》じられないで|不思議《ふしぎ》に|思《おも》っていると、イエスが「ここに|何《なに》か|食物《しょくもつ》があるか」と|言《い》われた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|焼《や》いた|魚《うお》の一きれをさしあげると、[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはそれを|取《と》って、みんなの|前《まえ》で|食《た》べられた。  [#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》らに|対《たい》して|言《い》われた、「わたしが|以前《いぜん》あなたがたと|一緒《いっしょ》にいた|時分《じぶん》に|話《はな》して|聞《き》かせた|言葉《ことば》は、こうであった。すなわち、モーセの|律法《りっぽう》と|預言《よげん》|書《しょ》と|詩篇《しへん》とに、わたしについて|書《か》いてあることは、|必《かなら》ずことごとく|成就《じょうじゅ》する」。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは、|聖書《せいしょ》を|悟《さと》らせるために|彼《かれ》らの|心《こころ》を|開《ひら》いて[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》われた、「こう、しるしてある。キリストは|苦《くる》しみを|受《う》けて、三|日《か》|目《め》に|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえる。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]そして、その|名《な》によって|罪《つみ》のゆるしを|得《え》させる|悔改《くいあらた》めが、エルサレムからはじまって、もろもろの|国民《こくみん》に|宣《の》べ|伝《つた》えられる。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、これらの|事《こと》の|証人《しょうにん》である。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、わたしの|父《ちち》が|約束《やくそく》されたものを、あなたがたに|贈《おく》る。だから、|上《うえ》から|力《ちから》を|授《さづ》けられるまでは、あなたがたは|都《みやこ》にとどまっていなさい」。  [#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスは|彼《かれ》らをベタニヤの|近《ちか》くまで|連《つ》れて|行《い》き、|手《て》をあげて|彼《かれ》らを|祝福《しゅくふく》された。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]|祝福《しゅくふく》しておられるうちに、|彼《かれ》らを|離《はな》れて、〔|天《てん》にあげられた。〕[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは〔イエスを|拝《はい》し、〕|非常《ひじょう》な|喜《よろこ》びをもってエルサレムに|帰《かえ》り、[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]|絶《た》えず|宮《みや》にいて、|神《かみ》をほめたたえていた。 [#改ページ] ヨハネによる福音書[#「ヨハネによる福音書」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|初《はじ》めに|言《ことば》があった。|言《ことば》は|神《かみ》と|共《とも》にあった。|言《ことば》は|神《かみ》であった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]この|言《ことば》は|初《はじ》めに|神《かみ》と|共《とも》にあった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すべてのものは、これによってできた。できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]この|言《ことば》に|命《いのち》があった。そしてこの|命《いのち》は|人《ひと》の|光《ひかり》であった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|光《ひかり》はやみの|中《なか》に|輝《かがや》いている。そして、やみはこれに|勝《か》たなかった。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ここにひとりの|人《ひと》があって、|神《かみ》からつかわされていた。その|名《な》をヨハネと|言《い》った。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》はあかしのためにきた。|光《ひかり》についてあかしをし、|彼《かれ》によってすべての|人《ひと》が|信《しん》じるためである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|光《ひかり》ではなく、ただ、|光《ひかり》についてあかしをするためにきたのである。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すべての|人《ひと》を|照《てら》すまことの|光《ひかり》があって、|世《よ》にきた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|世《よ》にいた。そして、|世《よ》は|彼《かれ》によってできたのであるが、|世《よ》は|彼《かれ》を|知《し》らずにいた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|自分《じぶん》のところにきたのに、|自分《じぶん》の|民《たみ》は|彼《かれ》を|受《う》けいれなかった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》を|受《う》けいれた|者《もの》、すなわち、その|名《な》を|信《しん》じた|人々《ひとびと》には、|彼《かれ》は|神《かみ》の|子《こ》となる|力《ちから》を|与《あた》えたのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それらの|人《ひと》は、|血《ち》すじによらず、|肉《にく》の|欲《よく》によらず、また、|人《ひと》の|欲《よく》にもよらず、ただ|神《かみ》によって|生《うま》れたのである。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして|言《ことば》は|肉体《にくたい》となり、わたしたちのうちに|宿《やど》った。わたしたちはその|栄光《えいこう》を|見《み》た。それは|父《ちち》のひとり|子《こ》としての|栄光《えいこう》であって、めぐみとまこととに|満《み》ちていた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネは|彼《かれ》についてあかしをし、|叫《さけ》んで|言《い》った、「『わたしのあとに|来《く》るかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりも|先《さき》におられたからである』とわたしが|言《い》ったのは、この|人《ひと》のことである」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちすべての|者《もの》は、その|満《み》ち|満《み》ちているものの|中《なか》から|受《う》けて、めぐみにめぐみを|加《くわ》えられた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》はモーセをとおして|与《あた》えられ、めぐみとまこととは、イエス・キリストをとおしてきたのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》を|見《み》た|者《もの》はまだひとりもいない。ただ|父《ちち》のふところにいるひとり|子《こ》なる|神《かみ》だけが、|神《かみ》をあらわしたのである。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]さて、ユダヤ|人《じん》たちが、エルサレムから|祭司《さいし》たちやレビ|人《ひと》たちをヨハネのもとにつかわして、「あなたはどなたですか」と|問《と》わせたが、その|時《とき》ヨハネが|立《た》てたあかしは、こうであった。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|彼《かれ》は|告白《こくはく》して|否《いな》まず、「わたしはキリストではない」と|告白《こくはく》した。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|問《と》うた、「それでは、どなたなのですか、あなたはエリヤですか」。|彼《かれ》は「いや、そうではない」と|言《い》った。「では、あの|預言者《よげんしゃ》ですか」。|彼《かれ》は「いいえ」と|答《こた》えた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|言《い》った、「あなたはどなたですか。わたしたちをつかわした|人々《ひとびと》に、|答《こたえ》を|持《も》って|行《い》けるようにしていただきたい。あなた|自身《じしん》をだれだと|考《かんが》えるのですか」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|言《い》った、「わたしは、|預言者《よげんしゃ》イザヤが|言《い》ったように、『|主《しゅ》の|道《みち》をまっすぐにせよと|荒野《あらの》で|呼《よ》ばわる|者《もの》の|声《こえ》』である」。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]つかわされた|人《ひと》たちは、パリサイ|人《びと》であった。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはヨハネに|問《と》うて|言《い》った、「では、あなたがキリストでもエリヤでもまたあの|預言者《よげんしゃ》でもないのなら、なぜバプテスマを|授《さづ》けるのですか」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネは|彼《かれ》らに|答《こた》えて|言《い》った、「わたしは|水《みず》でバプテスマを|授《さづ》けるが、あなたがたの|知《し》らないかたが、あなたがたの|中《なか》に|立《た》っておられる。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]それがわたしのあとにあとにおいでになる|方《かた》であって、わたしはその|人《ひと》のくつのひもを|解《と》く|値《ね》うちもない」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]これらのことは、ヨハネがバプテスマを|授《さづ》けていたヨルダンの|向《む》こうのベタニヤであったのである。  [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]その|翌日《よくじつ》、ヨハネはイエスが|自分《じぶん》の|方《ほう》にこられるのを|見《み》て|言《い》った、「|見《み》よ、|世《よ》の|罪《つみ》を|取《と》り|除《のぞ》く|神《かみ》の|小羊《こひつじ》。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]『わたしのあとに|来《く》るかたは、わたしよりもすぐれたかたである。わたしよりも|先《さき》におられたからである』とわたしが|言《い》ったのは、この|人《ひと》のことである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]わたしはこのかたを|知《し》らなかった。しかし、このかたがイスラエルに|現《あらわ》れてくださるそのことのために、わたしはきて、|水《みず》でバプテスマを|授《さづ》けているのである」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネはまたあかしをして|言《い》った、「わたしは、|御霊《みたま》がはとのように|天《てん》から|下《くだ》って、|彼《かれ》の|上《うえ》にとどまるのを|見《み》た。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]わたしはこの|人《ひと》を|知《し》らなかった。しかし、|水《みず》でバプテスマを|授《さづ》けるようにと、わたしをおつかわしになったそのかたが、わたしに|言《い》われた、『ある|人《ひと》の|上《うえ》に、|御霊《みたま》が|下《くだ》ってとどまるのを|見《み》たら、その|人《ひと》こそは、|御霊《みたま》によってバプテスマを|授《さづ》けるかたである』。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]わたしはそれを|見《み》たので、このかたこそ|神《かみ》の|子《こ》であると、あかしをしたのである」。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]その|翌日《よくじつ》、ヨハネはまたふたりの|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》に|立《た》っていたが、[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|歩《ある》いておられるのに|目《め》をとめて|言《い》った、「|見《み》よ、|神《かみ》の|小羊《こひつじ》」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そのふたりの|弟子《でし》は、ヨハネがそう|言《い》うのを|聞《き》いて、イエスについて|行《い》った。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]イエスはふり|向《む》き、|彼《かれ》らがついてくるのを|見《み》て|言《い》われた、「|何《なに》か|願《ねが》いがあるのか」。|彼《かれ》らは|言《い》った、「ラビ(|訳《やく》して|言《い》えば、|先生《せんせい》)どこにおとまりなのですか」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「きてごらんなさい。そうしたらわかるだろう」。そこで|彼《かれ》らはついて|行《い》って、イエスの|泊《と》まっておられる|所《ところ》を|見《み》た。そして、その|日《ひ》はイエスのところに|泊《と》まった。|時《とき》は|午後《ごご》四|時《じ》ごろであった。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネから|聞《き》いて、イエスについて|行《い》ったふたりのうちのひとりは、シモン・ペテロの|兄弟《きょうだい》アンデレであった。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はまず|自分《じぶん》の|兄弟《きょうだい》シモンに|出会《であ》って|言《い》った、「わたしたちはメシヤ(|訳《やく》せば、キリスト)にいま|出会《であ》った」。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]そしてシモンをイエスのもとにつれてきた。イエスは|彼《かれ》に|目《め》をとめて|言《い》われた、「あなたはヨハネの|子《こ》シモンである。あなたをケパ(|訳《やく》せば、ペテロ)と|呼《よ》ぶことにする」。  [#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]その|翌日《よくじつ》、イエスはガリラヤに|行《い》こうとされたが、ピリポに|出会《であ》って|言《い》われた、「わたしに|従《したが》ってきなさい」。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]ピリポは、アンデレとペテロとの|町《まち》ベツサイダの|人《ひと》であった。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]このピリポがナタナエルに|出会《であ》って|言《い》った、「わたしたちは、モーセが|律法《りっぽう》の|中《なか》にしるしており、|預言者《よげんしゃ》たちがしるしていた|人《ひと》、ヨセフの|子《こ》、ナザレのイエスにいま|出会《であ》った」。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]ナタナエルは|彼《かれ》に|言《い》った、「ナザレから、なんのよいものが|出《で》ようか」。ピリポは|彼《かれ》に|言《い》った、「きて|見《み》なさい」。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]イエスはナタナエルが|自分《じぶん》の|方《ほう》に|来《く》るのを|見《み》て、|彼《かれ》について|言《い》われた、「|見《み》よ、あの|人《ひと》こそ、ほんとうのイスラエル|人《びと》である。その|心《こころ》には|偽《いつわ》りがない」。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]ナタナエルは|言《い》った、「どうしてわたしをご|存《ぞん》じなのですか」。イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「ピリポがあなたを|呼《よ》ぶ|前《まえ》に、わたしはあなたが、いちじくの|木《き》の|下《した》にいるのを|見《み》た」。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]ナタナエルは|答《こた》えた、「|先生《せんせい》、あなたは|神《かみ》の|子《こ》です。あなたはイスラエルの|王《おう》です」。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「あなたが、いちじくの|木《き》の|下《した》にいるのを|見《み》たと、わたしが|言《い》ったので|信《しん》じるのか。これよりも、もっと|大《おお》きなことを、あなたは|見《み》るであろう」。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]また|言《い》われた、「よくよくあなたがたに|言《い》っておく。|天《てん》が|開《あ》けて、|神《かみ》の|御使《みつかい》たちが|人《ひと》の|子《こ》の|上《うえ》に|上《のぼ》り|下《くだ》りするのを、あなたがたは|見《み》るであろう」。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]三|日《か》|目《め》にガリラヤのカナに|婚礼《こんれい》があって、イエスの|母《はは》がそこにいた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]イエスも|弟子《でし》たちも、その|婚礼《こんれい》に|招《まね》かれた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ぶどう|酒《しゅ》がなくなったので、|母《はは》はイエスに|言《い》った、「ぶどう|酒《しゅ》がなくなってしまいました」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|母《はは》に|言《い》われた、「|婦人《ふじん》よ、あなたは、わたしと、なんの|係《かか》わりがありますか。わたしの|時《とき》は、まだきていません」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|母《はは》は|僕《しもべ》たちに|言《い》った、「このかたが、あなたがたに|言《い》いつけることは、なんでもして|下《くだ》さい」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこには、ユダヤ|人《じん》のきよめのならわしに|従《したが》って、それぞれ四、五|斗《と》もはいる|石《いし》の|水《みず》がめが、六つ|置《お》いてあった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに「かめに|水《みず》をいっぱい|入《い》れなさい」と|言《い》われたので、|彼《かれ》らは|口《くち》のところまでいっぱいに|入《い》れた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らに|言《い》われた、「さあ、くんで、|料理《りょうり》がしらのところに|持《も》って|行《い》きなさい」。すると、|彼《かれ》らは|持《も》って|行《い》った。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|料理《りょうり》がしらは、ぶどう|酒《しゅ》になった|水《みず》をなめてみたが、それがどこからきたのか|知《し》らなかったので、(|水《みず》をくんだ|僕《しもべ》たちは|知《し》っていた)|花婿《はなむこ》を|呼《よ》んで[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「どんな|人《ひと》でも、|初《はじ》めによいぶどう|酒《しゅ》を|出《だ》して、|酔《よ》いがまわったころにわるいのを|出《だ》すものだ。それだのに、あなたはよいぶどう|酒《しゅ》を|今《いま》までとっておかれました」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、この|最初《さいしょ》のしるしをガリラヤのカナで|行《おこな》い、その|栄光《えいこう》を|現《あらわ》された。そして|弟子《でし》たちはイエスを|信《しん》じた。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そののち、イエスは、その|母《はは》、|兄弟《きょうだい》たち、|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》に、カペナウムに|下《くだ》って、|幾日《いくにち》かそこにとどまられた。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]さて、ユダヤ|人《じん》の|過越《すぎこし》の|祭《まつり》が|近《ちか》づいたので、イエスはエルサレムに|上《のぼ》られた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして|牛《うし》、|羊《ひつじ》、はとを|売《う》る|者《もの》や|両替《りょうがえ》する|者《もの》などが|宮《みや》の|庭《にわ》にすわり|込《こ》んでいるのをごらんになって、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]なわでむちを|造《つく》り、|羊《ひつじ》も|牛《うし》もみな|宮《みや》から|追《お》いだし、|両替人《りょうがえにん》の|金《かね》を|散《ち》らし、その|台《だい》をひっくりかえし、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]はとを|売《う》る|人々《ひとびと》には「これらのものを|持《も》って、ここから|出《で》て|行《い》け。わたしの|父《ちち》の|家《いえ》を|商売《しょうばい》の|家《いえ》とするな」と|言《い》われた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは、「あなたの|家《いえ》を|思《おも》う|熱心《ねっしん》が、わたしを|食《く》いつくすであろう」と|書《か》いてあることを|思《おも》い|出《だ》した。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ユダヤ|人《じん》はイエスに|言《い》った、「こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちに|見《み》せてくれますか」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えて|言《い》われた、「この|神殿《しんでん》をこわしたら、わたしは三|日《か》のうちに、それを|起《おこ》すであろう」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ユダヤ|人《じん》たちは|言《い》った、「この|神殿《しんでん》を|建《た》てるのには、四十六|年《ねん》もかかっています。それだのに、あなたは三|日《か》のうちに、それを|建《た》てるのですか」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|自分《じぶん》のからだである|神殿《しんでん》のことを|言《い》われたのである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]それで、イエスが|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえったとき、|弟子《でし》たちはイエスがこう|言《い》われたことを|思《おも》い|出《だ》して、|聖書《せいしょ》とイエスのこの|言葉《ことば》とを|信《しん》じた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|過越《すぎこし》の|祭《まつり》の|間《あいだ》、イエスがエルサレムに|滞在《たいざい》しておられたとき、|多《おお》くの|人々《ひとびと》は、その|行《おこな》われたしるしを|見《み》て、イエスの|名《な》を|信《しん》じた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]しかしイエスご|自身《じしん》は、|彼《かれ》らに|自分《じぶん》をお|任《まか》せにならなかった。それは、すべての|人《ひと》を|知《し》っておられ、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]また|人《ひと》についてあかしする|者《もの》を、|必要《ひつよう》とされなかったからである。それは、ご|自身《じしん》|人《ひと》の|心《こころ》の|中《なか》にあることを|知《し》っておられたからである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》のひとりで、その|名《な》をニコデモというユダヤ|人《じん》の|指導者《しどうしゃ》があった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》が|夜《よる》イエスのもとにきて|言《い》った、「|先生《せんせい》、わたしたちはあなたが|神《かみ》からこられた|教師《きょうし》であることを|知《し》っています。|神《かみ》がご|一緒《いっしょ》でないなら、あなたがなさっておられるようなしるしは、だれにもできはしません」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「よくよくあなたに|言《い》っておく。だれでも|新《あたら》しく|生《うま》れなければ、|神《かみ》の|国《くに》を|見《み》ることはできない」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ニコデモは|言《い》った、「|人《ひと》は|年《とし》をとってから|生《うま》れることが、どうしてできますか。もう|一度《いちど》、|母《はは》の|胎《たい》にはいって|生《うま》れることができましょうか」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「よくよくあなたに|言《い》っておく。だれでも、|水《みず》と|霊《れい》とから|生《うま》れなければ、|神《かみ》の|国《くに》にはいることはできない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|肉《にく》から|生《うま》れる|者《もの》は|肉《にく》であり、|霊《れい》から|生《うま》れる|者《もの》は|霊《れい》である。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|新《あたら》しく|生《うま》れなければならないと、わたしが|言《い》ったからとて、|不思議《ふしぎ》に|思《おも》うには|及《およ》ばない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|風《かぜ》は|思《おも》いのままに|吹《ふ》く。あなたはその|音《おと》を|聞《き》くが、それがどこからきて、どこへ|行《い》くかは|知《し》らない。|霊《れい》から|生《うま》れる|者《もの》もみな、それと|同《おな》じである」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ニコデモはイエスに|答《こた》えて|言《い》った、「どうして、そんなことがあり|得《え》ましょうか」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|答《こた》えて|言《い》われた、「あなたはイスラエルの|教師《きょうし》でありながら、これぐらいのことがわからないのか。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]よくよく|言《い》っておく。わたしたちは|自分《じぶん》の|知《し》っていることを|語《かた》り、また|自分《じぶん》の|見《み》たことをあかししているのに、あなたがたはわたしたちのあかしを|受《う》けいれない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|地上《ちじょう》のことを|語《かた》っているのに、あなたがたが|信《しん》じないならば、|天上《てんじょう》のことを|語《かた》った|場合《ばあい》、どうしてそれを|信《しん》じるだろうか。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|天《てん》から|下《くだ》ってきた|者《もの》、すなわち|人《ひと》の|子《こ》のほかには、だれも|天《てん》に|上《のぼ》った|者《もの》はない。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして、ちょうどモーセが|荒野《あらの》でへびを|上《あ》げたように、|人《ひと》の|子《こ》もまた|上《あ》げられなければならない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それは|彼《かれ》を|信《しん》じる|者《もの》が、すべて|永遠《えいえん》の|命《いのち》を|得《え》るためである」。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はそのひとり|子《こ》を|賜《たま》わったほどに、この|世《よ》を|愛《あい》して|下《くだ》さった。それは|御子《みこ》を|信《しん》じる|者《もの》がひとりも|滅《ほろ》びないで、|永遠《えいえん》の|命《いのち》を|得《え》るためである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》が|御子《みこ》を|世《よ》につかわされたのは、|世《よ》をさばくためではなく、|御子《みこ》によって、この|世《よ》が|救《すく》われるためである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》を|信《しん》じる|者《もの》は、さばかれない。|信《しん》じない|者《もの》は、すでにさばかれている。|神《かみ》のひとり|子《こ》の|名《な》を|信《しん》じることをしないからである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そのさばきというのは、|光《ひかり》がこの|世《よ》にきたのに、|人々《ひとびと》はそのおこないが|悪《わる》いために、|光《ひかり》よりもやみの|方《ほう》を|愛《あい》したことである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|悪《あく》を|行《おこな》っている|者《もの》はみな|光《ひかり》を|憎《にく》む。そして、そのおこないが|明《あか》るみに|出《だ》されるのを|恐《おそ》れて、|光《ひかり》にこようとはしない。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|真理《しんり》を|行《おこな》っている|者《もの》は|光《ひかり》に|来《く》る。その|人《ひと》のおこないの、|神《かみ》にあってなされたということが、|明《あき》らかにされるためである。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]こののち、イエスは|弟子《でし》たちとユダヤの|地《ち》に|行《い》き、|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》にそこに|滞在《たいざい》して、バプテスマを|授《さづ》けておられた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネもサリムに|近《ちか》いアイノンで、バプテスマを|授《さづ》けていた。そこには|水《みず》がたくさんあったからである。|人々《ひとびと》がぞくぞくとやってきてバプテスマを|受《う》けていた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、ヨハネはまだ|獄《ごく》に|入《い》れられてはいなかった。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ヨハネの|弟子《でし》たちとひとりのユダヤ|人《じん》との|間《あいだ》に、きよめのことで|争論《そうろん》が|起《おこ》った。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らはヨハネのところにきて|言《い》った、「|先生《せんせい》、ごらん|下《くだ》さい。ヨルダンの|向《む》こうであなたと|一緒《いっしょ》にいたことがあり、そして、あなたがあかしをしておられたあのかたが、バプテスマを|授《さづ》けており、|皆《みな》の|者《もの》が、そのかたのところへ|出《で》かけています」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネは|答《こた》えて|言《い》った、「|人《ひと》は|天《てん》から|与《あた》えられなければ、|何《なに》ものも|受《う》けることはできない。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]『わたしはキリストではなく、そのかたよりも|先《さき》につかわされた|者《もの》である』と|言《い》ったことをあかししてくれるのは、あなたがた|自身《じしん》である。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|花嫁《はなよめ》をもつ|者《もの》は|花婿《はなむこ》である。|花婿《はなむこ》の|友人《ゆうじん》は|立《た》って|彼《かれ》の|声《こえ》を|聞《き》き、その|声《こえ》を|聞《き》いて|大《おお》いに|喜《よろこ》ぶ。こうして、この|喜《よろこ》びはわたしに|満《み》ち|足《た》りている。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|必《かなら》ず|栄《さか》え、わたしは|衰《おとろ》える。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|上《うえ》から|来《く》る|者《もの》は、すべてのものの|上《うえ》にある。|地《ち》から|出《で》る|者《もの》は、|地《ち》に|属《ぞく》する|者《もの》であって、|地《ち》のことを|語《かた》る。|天《てん》から|来《く》る|者《もの》は、すべてのものの|上《うえ》にある。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はその|見《み》たところ、|聞《き》いたところをあかししているが、だれもそのあかしを|受《う》けいれない。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、そのあかしを|受《う》けいれる|者《もの》は、|神《かみ》がまことであることを、たしかに|認《みと》めたのである。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》がおつかわしになったかたは、|神《かみ》の|言葉《ことば》を|語《かた》る。|神《かみ》は|聖霊《せいれい》を|限《かぎ》りなく|賜《たま》うからである。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》は|御子《みこ》を|愛《あい》して、|万物《ばんぶつ》をその|手《て》にお|与《あた》えになった。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|御子《みこ》を|信《しん》じる|者《もの》は|永遠《えいえん》の|命《いのち》をもつ。|御子《みこ》に|従《したが》わない|者《もの》は、|命《いのち》にあずかることがないばかりか、|神《かみ》の|怒《いか》りがその|上《うえ》にとどまるのである」。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスが、ヨハネよりも|多《おお》く|弟子《でし》をつくり、またバプテスマを|授《さづ》けておられるということを、パリサイ|人《びと》たちが|聞《き》き、それを|主《しゅ》が|知《し》られたとき、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり](しかし、イエスみずからが、バプテスマをお|授《さづ》けになったのではなく、その|弟子《でし》たちであった)[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤを|去《さ》って、またガリラヤへ|行《い》かれた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、イエスはサマリヤを|通過《つうか》しなければならなかった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスはサマリヤのスカルという|町《まち》においでになった。この|町《まち》は、ヤコブがその|子《こ》ヨセフに|与《あた》えた|土地《とち》の|近《ちか》くにあったが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこにヤコブの|井戸《いど》があった。イエスは|旅《たび》の|疲《つか》れを|覚《おぼ》えて、そのまま、この|井戸《いど》のそばにすわっておられた。|時《とき》は|昼《ひる》の十二|時《じ》ごろであった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ひとりのサマリヤの|女《おんな》が|水《みず》をくみにきたので、イエスはこの|女《おんな》に、「|水《みず》を|飲《の》ませて|下《くだ》さい」と|言《い》われた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|食物《しょくもつ》を|買《か》いに|町《まち》に|行《い》っていたのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すると、サマリヤの|女《おんな》はイエスに|言《い》った、「あなたはユダヤ|人《じん》でありながら、どうしてサマリヤの|女《おんな》のわたしに、|飲《の》ませてくれとおっしゃるのですか」。これは、ユダヤ|人《じん》はサマリヤ|人《びと》と|交際《こうさい》していなかったからである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「もしあなたが|神《かみ》の|賜物《たまもの》のことを|知《し》り、また、『|水《みず》を|飲《の》ませてくれ』と|言《い》った|者《もの》が、だれであるか|知《し》っていたならば、あなたの|方《ほう》から|願《ねが》い|出《で》て、その|人《ひと》から|生《い》ける|水《みず》をもらったことであろう」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》はイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、あなたは、くむ|物《もの》をお|持《も》ちにならず、その|上《うえ》、|井戸《いど》は|深《ふか》いのです。その|生《い》ける|水《みず》を、どこから|手《て》に|入《い》れるのですか。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、この|井戸《いど》を|下《くだ》さったわたしたちの|父《ちち》ヤコブよりも、|偉《えら》いかたなのですか。ヤコブ|自身《じしん》も|飲《の》み、その|子《こ》らも、その|家畜《かちく》も、この|井戸《いど》から|飲《の》んだのですが」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|女《おんな》に|答《こた》えて|言《い》われた、「この|水《みず》を|飲《の》む|者《もの》はだれでも、またかわくであろう。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしが|与《あた》える|水《みず》を|飲《の》む|者《もの》は、いつまでも、かわくことがないばかりか、わたしが|与《あた》える|水《みず》は、その|人《ひと》のうちで|泉《いずみ》となり、|永遠《えいえん》の|命《いのち》に|至《いた》る|水《みず》が、わきあがるであろう」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》はイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、わたしがかわくことがなく、また、ここにくみにこなくてもよいように、その|水《みず》をわたしに|下《くだ》さい」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|女《おんな》に|言《い》われた、「あなたの|夫《おっと》を|呼《よ》びに|行《い》って、ここに|連《つ》れてきなさい」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》は|答《こた》えて|言《い》った、「わたしには|夫《おっと》はありません」。イエスは|女《おんな》に|言《い》われた、「|夫《おっと》がないと|言《い》ったのは、もっともだ。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたには五|人《にん》の|夫《おっと》があったが、|今《いま》のはあなたの|夫《おっと》ではない。あなたの|言葉《ことば》のとおりである」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》はイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、わたしはあなたを|預言者《よげんしゃ》と|見《み》ます。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|先祖《せんぞ》は、この|山《やま》で|礼拝《れいはい》をしたのですが、あなたがたは|礼拝《れいはい》すべき|場所《ばしょ》は、エルサレムにあると|言《い》っています」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|女《おんな》に|言《い》われた、「|女《おんな》よ、わたしの|言《い》うことを|信《しん》じなさい。あなたがたが、この|山《やま》でも、またエルサレムでもない|所《ところ》で、|父《ちち》を|礼拝《れいはい》する|時《とき》が|来《く》る。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|自分《じぶん》の|知《し》らないものを|拝《おが》んでいるが、わたしたちは|知《し》っているかたを|礼拝《れいはい》している。|救《すくい》はユダヤ|人《じん》から|来《く》るからである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、まことの|礼拝《れいはい》をする|者《もの》たちが、|霊《れい》とまこととをもって|父《ちち》を|礼拝《れいはい》する|時《とき》が|来《く》る。そうだ、|今《いま》きている。|父《ちち》は、このような|礼拝《れいはい》をする|者《もの》たちを|求《もと》めておられるからである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|霊《れい》であるから、|礼拝《れいはい》をする|者《もの》も、|霊《れい》とまこととをもって|礼拝《れいはい》すべきである」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》はイエスに|言《い》った、「わたしは、キリストと|呼《よ》ばれるメシヤがこられることを|知《し》っています。そのかたがこられたならば、わたしたちに、いっさいのことを|知《し》らせて|下《くだ》さるでしょう」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|女《おんな》に|言《い》われた、「あなたと|話《はなし》をしているこのわたしが、それである」。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|弟子《でし》たちが|帰《かえ》って|来《き》て、イエスがひとりの|女《おんな》と|話《はな》しておられるのを|見《み》て|不思議《ふしぎ》に|思《おも》ったが、しかし、「|何《なに》を|求《もと》めておられますか」とも、「|何《なに》を|彼女《かのじょ》と|話《はな》しておられるのですか」とも、|尋《たず》ねる|者《もの》はひとりもなかった。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》は|水《みず》がめをそのままそこに|置《お》いて|町《まち》に|行《い》き、|人々《ひとびと》に|言《い》った、[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]「わたしのしたことを|何《なに》もかも、|言《い》いあてた|人《ひと》がいます。さあ、|見《み》にきてごらんなさい。もしかしたら、この|人《ひと》がキリストかも|知《し》れません」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は|町《まち》を|出《で》て、ぞくぞくとイエスのところへ|行《い》った。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]その|間《あいだ》に|弟子《でし》たちはイエスに、「|先生《せんせい》、|召《め》しあがってください」とすすめた。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、イエスは|言《い》われた、「わたしには、あなたがたの|知《し》らない|食物《しょくもつ》がある」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|弟子《でし》たちが|互《たがい》に|言《い》った、「だれかが、|何《なに》か|食《た》べるものを|持《も》ってきてさしあげたのであろうか」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしの|食物《しょくもつ》というのは、わたしをつかわされたかたのみこころを|行《おこな》い、そのみわざをなし|遂《と》げることである。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|刈入《かりい》れ|時《とき》が|来《く》るまでには、まだ四か|月《げつ》あると、|言《い》っているではないか。しかし、わたしはあなたがたに|言《い》う。|目《め》をあげて|畑《はたけ》を|見《み》なさい。はや|色《いろ》づいて|刈入《かりい》れを|待《ま》っている。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|刈《か》る|者《もの》は|報酬《ほうしゅう》を|受《う》けて、|永遠《えいえん》の|命《いのち》に|至《いた》る|実《み》を|集《あつ》めている。まく|者《もの》も|刈《か》る|者《もの》も、|共々《ともども》に|喜《よろこ》ぶためである。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、『ひとりがまき、ひとりが|刈《か》る』ということわざが、ほんとうのこととなる。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたをつかわして、あなたがたがそのために|労苦《ろうく》しなかったものを|刈《か》りとらせた。ほかの|人々《ひとびと》が|労苦《ろうく》し、あなたがたは、|彼《かれ》らの|労苦《ろうく》の|実《み》にあずかっているのである」。  [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]さて、この|町《まち》からきた|多《おお》くのサマリヤ|人《ひと》は、「この|人《ひと》は、わたしのしたことを|何《なに》もかも|言《い》いあてた」とあかしした|女《おんな》の|言葉《ことば》によって、イエスを|信《しん》じた。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、サマリヤ|人《ひと》たちはイエスのもとにきて、|自分《じぶん》たちのところに|滞在《たいざい》していただきたいと|願《ねが》ったので、イエスはそこにふつか|滞在《たいざい》された。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]そしてなお|多《おお》くの|人々《ひとびと》が、イエスの|言葉《ことば》を|聞《き》いて|信《しん》じた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|女《おんな》に|言《い》った、「わたしたちが|信《しん》じるのは、もうあなたが|話《はな》してくれたからではない。|自分《じぶん》|自身《じしん》で|親《した》しく|聞《き》いて、この|人《ひと》こそまことに|世《よ》の|救主《すくいぬし》であることが、わかったからである」。  [#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]ふつかの|後《のち》に、イエスはここを|去《さ》ってガリラヤへ|行《い》かれた。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]イエスはみずからはっきり、「|預言者《よげんしゃ》は|自分《じぶん》の|故郷《こきょう》では|敬《うやま》われないものだ」と|言《い》われたのである。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]ガリラヤに|着《つ》かれると、ガリラヤの|人《ひと》たちはイエスを|歓迎《かんげい》した。それは、|彼《かれ》らも|祭《まつり》に|行《い》っていたので、その|祭《まつり》の|時《とき》、イエスがエルサレムでなされたことをことごとく|見《み》ていたからである。  [#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、またガリラヤのカナに|行《い》かれた。そこは、かつて|水《みず》をぶどう|酒《しゅ》にかえられた|所《ところ》である。ところが、|病気《びょうき》をしているむすこを|持《も》つある|役人《やくにん》がカペナウムにいた。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》が、ユダヤからガリラヤにイエスのきておられることを|聞《き》き、みもとにきて、カペナウムに|下《くだ》って、|彼《かれ》の|子《こ》をなおしていただきたいと、|願《ねが》った。その|子《こ》が|死《し》にかかっていたからである。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「あなたがたは、しるしと|奇跡《きせき》とを|見《み》ない|限《かぎ》り、|決《けっ》して|信《しん》じないだろう」。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]この|役人《やくにん》はイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、どうぞ、|子供《こども》が|死《し》なないうちにきて|下《くだ》さい」。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「お|帰《かえ》りなさい。あなたのむすこは|助《たす》かるのだ」。|彼《かれ》は|自分《じぶん》に|言《い》われたイエスの|言葉《ことば》を|信《しん》じて|帰《かえ》って|行《い》った。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]その|下《くだ》って|行《い》く|途中《とちゅう》、|僕《しもべ》たちが|彼《かれ》に|出会《であ》い、その|子《こ》が|助《たす》かったことを|告《つ》げた。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》は|僕《しもべ》たちに、そのなおりはじめた|時刻《じこく》を|尋《たず》ねてみたら、「きのうの|午後《ごご》一|時《じ》に|熱《ねつ》が|引《ひ》きました」と|答《こた》えた。[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]それは、イエスが「あなたのむすこは|助《たす》かるのだ」と|言《い》われたのと|同《おな》じ|時刻《じこく》であったことを、この|父《ちち》は|知《し》って、|彼《かれ》|自身《じしん》もその|家族《かぞく》|一同《いちどう》も|信《しん》じた。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]これは、イエスがユダヤからガリラヤにきてなされた|第《だい》二のしるしである。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]こののち、ユダヤ|人《じん》の|祭《まつり》があったので、イエスはエルサレムに|上《のぼ》られた。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]エルサレムにある|羊《ひつじ》の|門《もん》のそばに、ヘブル|語《ご》でベテスダと|呼《よ》ばれる|池《いけ》があった。そこには五つの|廊《ろう》があった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]その|廊《ろう》の|中《なか》には、|病人《びょうにん》、|盲人《もうじん》、|足《あし》なえ、やせ|衰《おとろ》えた|者《もの》などが、|大《おお》ぜいからだを|横《よこ》たえていた。〔|彼《かれ》らは|水《みず》の|動《うご》くのを|待《ま》っていたのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]それは、|時々《ときどき》、|主《しゅ》の|御使《みつかい》がこの|池《いけ》に|降《お》りてきて|水《みず》を|動《うご》かすことがあるが、|水《みず》が|動《うご》いた|時《とき》まっ|先《さき》にはいる|者《もの》は、どんな|病気《びょうき》にかかっていても、いやされたからである。〕[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]さて、そこに三十八|年《ねん》のあいだ、|病気《びょうき》に|悩《なや》んでいる|人《ひと》があった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]イエスはその|人《ひと》が|横《よこ》になっているのを|見《み》、また|長《なが》い|間《あいだ》わずらっていたのを|知《し》って、その|人《ひと》に「なおりたいのか」と|言《い》われた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]この|病人《びょうにん》はイエスに|答《こた》えた、「|主《しゅ》よ、|水《みず》が|動《うご》く|時《とき》に、わたしを|池《いけ》の|中《なか》に|入《い》れてくれる|人《ひと》がいません。わたしがはいりかけると、ほかの|人《ひと》が|先《さき》に|降《お》りて|行《い》くのです」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「|起《お》きて、あなたの|床《とこ》を|取《と》りあげ、そして|歩《ある》きなさい」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すると、この|人《ひと》はすぐにいやされ、|床《とこ》をとりあげて|歩《ある》いて|行《い》った。  その|日《ひ》は|安息日《あんそくにち》であった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこでユダヤ|人《じん》たちは、そのいやされた|人《ひと》に|言《い》った、「きょうは|安息日《あんそくにち》だ。|床《とこ》を|取《と》りあげるのは、よろしくない」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|答《こた》えた、「わたしをなおして|下《くだ》さったかたが、|床《とこ》を|取《と》りあげて|歩《ある》けと、わたしに|言《い》われました」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|尋《たず》ねた、「|取《と》りあげて|歩《ある》けと|言《い》った|人《ひと》は、だれか」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、このいやされた|人《ひと》は、それがだれであるか|知《し》らなかった。|群衆《ぐんしゅう》がその|場《ば》にいたので、イエスはそっと|出《で》て|行《い》かれたからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そののち、イエスは|宮《みや》でその|人《ひと》に|出会《であ》ったので、|彼《かれ》に|言《い》われた、「ごらん、あなたはよくなった。もう|罪《つみ》を|犯《おか》してはいけない。|何《なに》かもっと|悪《わる》いことが、あなたの|身《み》に|起《おこ》るかも|知《し》れないから」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|出《で》て|行《い》って、|自分《じぶん》をいやしたのはイエスであったと、ユダヤ|人《じん》たちに|告《つ》げた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そのためユダヤ|人《じん》たちは、|安息日《あんそくにち》にこのようなことをしたと|言《い》って、イエスを|責《せ》めた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えられた、「わたしの|父《ちち》は|今《いま》に|至《いた》るまで|働《はたら》いておられる。わたしも|働《はたら》くのである」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]このためにユダヤ|人《じん》たちは、ますますイエスを|殺《ころ》そうと|計《はか》るようになった。それは、イエスが|安息日《あんそくにち》を|破《やぶ》られたばかりではなく、|神《かみ》を|自分《じぶん》の|父《ちち》と|呼《よ》んで、|自分《じぶん》を|神《かみ》と|等《ひと》しいものとされたからである。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えて|言《い》われた、「よくよくあなたがたに|言《い》っておく。|子《こ》は|父《ちち》のなさることを|見《み》てする|以外《いがい》に、|自分《じぶん》からは|何事《なにごと》もすることができない。|父《ちち》のなさることであればすべて、|子《こ》もそのとおりにするのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|父《ちち》は|子《こ》を|愛《あい》して、みずからなさることは、すべて|子《こ》にお|示《しめ》しになるからである。そして、それよりもなお|大《おお》きなわざを、お|示《しめ》しになるであろう。あなたがたが、それによって|不思議《ふしぎ》に|思《おも》うためである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|父《ちち》が|死人《しにん》を|起《おこ》して|命《いのち》をお|与《あた》えになるように、|子《こ》もまた、そのこころにかなう|人々《ひとびと》に|命《いのち》を|与《あた》えるであろう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》はだれをもさばかない。さばきのことはすべて、|子《こ》にゆだねられたからである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それは、すべての|人《ひと》が|父《ちち》を|敬《うやま》うと|同様《どうよう》に、|子《こ》を|敬《うやま》うためである。|子《こ》を|敬《うやま》わない|者《もの》は、|子《こ》をつかわされた|父《ちち》をも|敬《うやま》わない。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]よくよくあなたがたに|言《い》っておく。わたしの|言葉《ことば》を|聞《き》いて、わたしをつかわされたかたを|信《しん》じる|者《もの》は、|永遠《えいえん》の|命《いのち》を|受《う》け、またさばかれることがなく、|死《し》から|命《いのち》に|移《うつ》っているのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]よくよくあなたがたに|言《い》っておく。|死《し》んだ|人《ひと》たちが、|神《かみ》の|子《こ》の|声《こえ》を|聞《き》く|時《とき》が|来《く》る。|今《いま》すでにきている。そして|聞《き》く|人《ひと》は|生《い》きるであろう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]それは、|父《ちち》がご|自分《じぶん》のうちに|生命《せいめい》をお|持《も》ちになっていると|同様《どうよう》に、|子《こ》にもまた、|自分《じぶん》のうちに|生命《せいめい》を|持《も》つことをお|許《ゆる》しになったからである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そして|子《こ》は|人《ひと》の|子《こ》であるから、|子《こ》にさばきを|行《おこな》う|権威《けんい》をお|与《あた》えになった。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]このことを|驚《おどろ》くには|及《およ》ばない。|墓《はか》の|中《なか》にいる|者《もの》たちがみな|神《かみ》の|子《こ》の|声《こえ》を|聞《き》き、[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|善《ぜん》をおこなった|人々《ひとびと》は、|生命《せいめい》を|受《う》けるためによみがえり、|悪《あく》をおこなった|人々《ひとびと》は、さばきを|受《う》けるためによみがえって、それぞれ|出《で》てくる|時《とき》が|来《く》るであろう。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|自分《じぶん》からは|何事《なにごと》もすることができない。ただ|聞《き》くままにさばくのである。そして、わたしのこのさばきは|正《ただ》しい。それは、わたし|自身《じしん》の|考《かんが》えでするのではなく、わたしをつかわされたかたの、み|旨《むね》を|求《もと》めているからである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]もし、わたしが|自分《じぶん》|自身《じしん》についてあかしをするならば、わたしのあかしはほんとうではない。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]わたしについてあかしをするかたはほかにあり、そして、その|人《ひと》がするあかしがほんとうであることを、わたしは|知《し》っている。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはヨハネのもとへ|人《ひと》をつかわしたが、そのとき|彼《かれ》は|真理《しんり》についてあかしをした。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|人《ひと》からあかしを|受《う》けないが、このことを|言《い》うのは、あなたがたが|救《すく》われるためである。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネは|燃《も》えて|輝《かがや》くあかりであった。あなたがたは、しばらくの|間《あいだ》その|光《ひかり》を|喜《よろこ》び|楽《たの》しもうとした。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしには、ヨハネのあかしよりも、もっと|力《ちから》あるあかしがある。|父《ちち》がわたしに|成就《じょうじゅ》させようとしてお|与《あた》えになったわざ、すなわち、|今《いま》わたしがしているこのわざが、|父《ちち》のわたしをつかわされたことをあかししている。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしをつかわされた|父《ちち》も、ご|自分《じぶん》でわたしについてあかしをされた。あなたがたは、まだそのみ|声《こえ》を|聞《き》いたこともなく、そのみ|姿《すがた》を|見《み》たこともない。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]また、|神《かみ》がつかわされた|者《もの》を|信《しん》じないから、|神《かみ》の|御言《みことば》はあなたがたのうちにとどまっていない。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|聖書《せいしょ》の|中《なか》に|永遠《えいえん》の|命《いのち》があると|思《おも》って|調《しら》べているが、この|聖書《せいしょ》は、わたしについてあかしをするものである。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]しかも、あなたがたは、|命《いのち》を|得《え》るためにわたしのもとにこようともしない。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|人《ひと》からの|誉《ほまれ》を|受《う》けることはしない。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたのうちには|神《かみ》を|愛《あい》する|愛《あい》がないことを|知《し》っている。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|父《ちち》の|名《な》によってきたのに、あなたがたはわたしを|受《う》けいれない。もし、ほかの|人《ひと》が|彼《かれ》|自身《じしん》の|名《な》によって|来《く》るならば、その|人《ひと》を|受《う》けいれるのであろう。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》に|誉《ほまれ》を|受《う》けながら、ただひとりの|神《かみ》からの|誉《ほまれ》を|求《もと》めようとしないあなたがたは、どうして|信《しん》じることができようか。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあなたがたのことを|父《ちち》に|訴《うった》えると、|考《かんが》えてはいけない。あなたがたを|訴《うった》える|者《もの》は、あなたがたが|頼《たの》みとしているモーセその|人《ひと》である。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]もし、あなたがたがモーセを|信《しん》じたならば、わたしをも|信《しん》じたであろう。モーセは、わたしについて|書《か》いたのである。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、モーセの|書《か》いたものを|信《しん》じないならば、どうしてわたしの|言葉《ことば》を|信《しん》じるだろうか」。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そののち、イエスはガリラヤの|海《うみ》、すなわち、テベリヤ|湖《みずうみ》の|向《む》こう|岸《ぎし》へ|渡《わた》られた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すると、|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》がイエスについてきた。|病人《びょうにん》たちになさっていたしるしを|見《み》たからである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|山《やま》に|登《のぼ》って、|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》にそこで|座《ざ》につかれた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|時《とき》に、ユダヤ|人《じん》の|祭《まつり》である|過越《すぎこし》が|間近《まぢか》になっていた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|目《め》をあげ、|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》が|自分《じぶん》の|方《ほう》に|集《あつ》まって|来《く》るのを|見《み》て、ピリポに|言《い》われた、「どこからパンを|買《か》ってきて、この|人々《ひとびと》に|食《た》べさせようか」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]これはピリポをためそうとして|言《い》われたのであって、ご|自分《じぶん》ではしようとすることを、よくご|承知《しょうち》であった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]すると、ピリポはイエスに|答《こた》えた、「二百デナリのパンがあっても、めいめいが|少《すこ》しずついただくにも|足《た》りますまい」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》のひとり、シモン・ペテロの|兄弟《きょうだい》アンデレがイエスに|言《い》った、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]「ここに、|大麦《おおむぎ》のパン五つと、さかな二ひきとを|持《も》っている|子供《こども》がいます。しかし、こんなに|大《おお》ぜいの|人《ひと》では、それが|何《なに》になりましょう」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは「|人々《ひとびと》をすわらせなさい」と|言《い》われた。その|場所《ばしょ》には|草《くさ》が|多《おお》かった。そこにすわった|男《おとこ》の|数《かず》は五千|人《にん》ほどであった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスはパンを|取《と》り、|感謝《かんしゃ》してから、すわっている|人々《ひとびと》に|分《わ》け|与《あた》え、また、さかなをも|同様《どうよう》にして、|彼《かれ》らの|望《のぞ》むだけ|分《わ》け|与《あた》えられた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》がじゅうぶんに|食《た》べたのち、イエスは|弟子《でし》たちに|言《い》われた、「|少《すこ》しでもむだにならないように、パンくずのあまりを|集《あつ》めなさい」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らが|集《あつ》めると、五つの|大麦《おおむぎ》のパンを|食《た》べて|残《のこ》ったパンくずは、十二のかごにいっぱいになった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はイエスのなさったこのしるしを|見《み》て、「ほんとうに、この|人《ひと》こそ|世《よ》にきたるべき|預言者《よげんしゃ》である」と|言《い》った。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|人々《ひとびと》がきて、|自分《じぶん》をとらえて|王《おう》にしようとしていると|知《し》って、ただひとり、また|山《やま》に|退《しりぞ》かれた。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|夕方《ゆうがた》になったとき、|弟子《でし》たちは|海《うみ》べに|下《くだ》り、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|舟《ふね》に|乗《の》って|海《うみ》を|渡《わた》り、|向《む》こう|岸《ぎし》のカペナウムに|行《い》きかけた。すでに|暗《くら》くなっていたのに、イエスはまだ|彼《かれ》らのところにおいでにならなかった。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]その|上《うえ》、|強《つよ》い|風《かぜ》が|吹《ふ》いてきて、|海《うみ》は|荒《あ》れ|出《だ》した。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]四、五十|丁《ちょう》こぎ|出《だ》したとき、イエスが|海《うみ》の|上《うえ》を|歩《ある》いて|舟《ふね》に|近《ちか》づいてこられるのを|見《み》て、|彼《かれ》らは|恐《おそ》れた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしだ、|恐《おそ》れることはない」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|喜《よろこ》んでイエスを|舟《ふね》に|迎《むか》えようとした。すると|舟《ふね》は、すぐ、|彼《かれ》らが|行《い》こうとしていた|地《ち》に|着《つ》いた。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]その|翌日《よくじつ》、|海《うみ》の|向《む》こう|岸《ぎし》に|立《た》っていた|群衆《ぐんしゅう》は、そこに|小舟《こぶね》が一そうしかなく、またイエスは|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》に|小舟《こぶね》にお|乗《の》りにならず、ただ|弟子《でし》たちだけが|船出《ふなで》したのを|見《み》た。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|数《すう》そうの|小舟《こぶね》がテベリヤからきて、|主《しゅ》が|感謝《かんしゃ》されたのちパンを|人々《ひとびと》に|食《た》べさせた|場所《ばしょ》に|近《ちか》づいた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》は、イエスも|弟子《でし》たちもそこにいないと|知《し》って、それらの|小舟《こぶね》に|乗《の》り、イエスをたずねてカペナウムに|行《い》った。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そして、|海《うみ》の|向《む》こう|岸《ぎし》でイエスに|出会《であ》ったので|言《い》った、「|先生《せんせい》、いつ、ここにおいでになったのですか」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「よくよくあなたがたに|言《い》っておく。あなたがたがわたしを|尋《たず》ねてきているのは、しるしを|見《み》たためではなく、パンを|食《た》べて|満腹《まんぷく》したからである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|朽《く》ちる|食物《しょくもつ》のためではなく、|永遠《えいえん》の|命《いのち》に|至《いた》る|朽《く》ちない|食物《しょくもつ》のために|働《はたら》くがよい。これは|人《ひと》の|子《こ》があなたがたに|与《あた》えるものである。|父《ちち》なる|神《かみ》は、|人《ひと》の|子《こ》にそれをゆだねられたのである」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らはイエスに|言《い》った、「|神《かみ》のわざを|行《おこな》うために、わたしたちは|何《なに》をしたらよいでしょうか」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えて|言《い》われた、「|神《かみ》がつかわされた|者《もの》を|信《しん》じることが、|神《かみ》のわざである」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはイエスに|言《い》った、「わたしたちが|見《み》てあなたを|信《しん》じるために、どんなしるしを|行《おこな》って|下《くだ》さいますか。どんなことをして|下《くだ》さいますか。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|先祖《せんぞ》は|荒野《あらの》でマナを|食《た》べました。それは『|天《てん》よりのパンを|彼《かれ》らに|与《あた》えて|食《た》べさせた』と|書《か》いてあるとおりです」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「よくよく|言《い》っておく。|天《てん》からのパンをあなたがたに|与《あた》えたのは、モーセではない。|天《てん》からのまことのパンをあなたがたに|与《あた》えるのは、わたしの|父《ちち》なのである。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》のパンは、|天《てん》から|下《くだ》ってきて、この|世《よ》に|命《いのち》を|与《あた》えるものである」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、そのパンをいつもわたしたちに|下《くだ》さい」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしが|命《いのち》のパンである。わたしに|来《く》る|者《もの》は|決《けっ》して|飢《う》えることがなく、わたしを|信《しん》じる|者《もの》は|決《けっ》してかわくことがない。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたに|言《い》ったが、あなたがたはわたしを|見《み》たのに|信《しん》じようとはしない。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》がわたしに|与《あた》えて|下《くだ》さる|者《もの》は|皆《みな》、わたしに|来《く》るであろう。そして、わたしに|来《く》る|者《もの》を|決《けっ》して|拒《こば》みはしない。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|天《てん》から|下《くだ》ってきたのは、|自分《じぶん》のこころのままを|行《おこな》うためではなく、わたしをつかわされたかたのみこころを|行《おこな》うためである。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]わたしをつかわされたかたのみこころは、わたしに|与《あた》えて|下《くだ》さった|者《もの》を、わたしがひとりも|失《うしな》わずに、|終《おわ》りの|日《ひ》によみがえらせることである。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|父《ちち》のみこころは、|子《こ》を|見《み》て|信《しん》じる|者《もの》が、ことごとく|永遠《えいえん》の|命《いのち》を|得《え》ることなのである。そして、わたしはその|人々《ひとびと》を|終《おわ》りの|日《ひ》によみがえらせるであろう」。  [#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》らは、イエスが「わたしは|天《てん》から|下《くだ》ってきたパンである」と|言《い》われたので、イエスについてつぶやき|始《はじ》めた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]そして|言《い》った、「これはヨセフの|子《こ》イエスではないか。わたしたちはその|父母《ふぼ》を|知《し》っているではないか。わたしは|天《てん》から|下《くだ》ってきたと、どうして|今《いま》いうのか」。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えて|言《い》われた、「|互《たがい》につぶやいてはいけない。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]わたしをつかわされた|父《ちち》が|引《ひ》きよせて|下《くだ》さらなければ、だれもわたしに|来《く》ることはできない。わたしは、その|人々《ひとびと》を|終《おわ》りの|日《ひ》によみがえらせるであろう。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|預言者《よげんしゃ》の|書《しょ》に、『|彼《かれ》らはみな|神《かみ》に|教《おし》えられるであろう』と|書《か》いてある。|父《ちち》から|聞《き》いて|学《まな》んだ|者《もの》は、みなわたしに|来《く》るのである。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》から|出《で》た|者《もの》のほかに、だれかが|父《ちち》を|見《み》たのではない。その|者《もの》だけが|父《ちち》を|見《み》たのである。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]よくよくあなたがたに|言《い》っておく。|信《しん》じる|者《もの》には|永遠《えいえん》の|命《いのち》がある。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|命《いのち》のパンである。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|先祖《せんぞ》は|荒野《あらの》でマナを|食《た》べたが、|死《し》んでしまった。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|天《てん》から|下《くだ》ってきたパンを|食《た》べる|人《ひと》は、|決《けっ》して|死《し》ぬことはない。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|天《てん》から|下《くだ》ってきた|生《い》きたパンである。それを|食《た》べる|者《もの》は、いつまでも|生《い》きるであろう。わたしが|与《あた》えるパンは、|世《よ》の|命《いのち》のために|与《あた》えるわたしの|肉《にく》である」。  [#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ユダヤ|人《じん》らが|互《たがい》に|論《ろん》じて|言《い》った、「この|人《ひと》はどうして、|自分《じぶん》の|肉《にく》をわたしたちに|与《あた》えて|食《た》べさせることができようか」。[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「よくよく|言《い》っておく。|人《ひと》の|子《こ》の|肉《にく》を|食《た》べず、また、その|血《ち》を|飲《の》まなければ、あなたがたの|内《うち》に|命《いのち》はない。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|肉《にく》を|食《た》べ、わたしの|血《ち》を|飲《の》む|者《もの》には、|永遠《えいえん》の|命《いのち》があり、わたしはその|人《ひと》を|終《おわ》りの|日《ひ》によみがえらせるであろう。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|肉《にく》はまことの|食物《しょくもつ》、わたしの|血《ち》はまことの|飲《の》み|物《もの》である。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|肉《にく》を|食《た》べ、わたしの|血《ち》を|飲《の》む|者《もの》はわたしにおり、わたしもまたその|人《ひと》におる。[#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]|生《い》ける|父《ちち》がわたしをつかわされ、また、わたしが|父《ちち》によって|生《い》きているように、わたしを|食《た》べる|者《もの》もわたしによって|生《い》きるであろう。[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]|天《てん》から|下《くだ》ってきたパンは、|先祖《せんぞ》たちが|食《た》べたが|死《し》んでしまったようなものではない。このパンを|食《た》べる|者《もの》は、いつまでも|生《い》きるであろう」。[#太字]五九[#「五九」は行右小書き][#太字終わり]これらのことは、イエスがカペナウムの|会堂《かいどう》で|教《おし》えておられたときに|言《い》われたものである。  [#太字]六〇[#「六〇」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちのうちの|多《おお》くの|者《もの》は、これを|聞《き》いて|言《い》った、「これは、ひどい|言葉《ことば》だ。だれがそんなことを|聞《き》いておられようか」。[#太字]六一[#「六一」は行右小書き][#太字終わり]しかしイエスは、|弟子《でし》たちがそのことでつぶやいているのを|見破《みやぶ》って、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「このことがあなたがたのつまずきになるのか。[#太字]六二[#「六二」は行右小書き][#太字終わり]それでは、もし|人《ひと》の|子《こ》が|前《まえ》にいた|所《ところ》に|上《のぼ》るのを|見《み》たら、どうなるのか。[#太字]六三[#「六三」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》を|生《い》かすものは|霊《れい》であって、|肉《にく》はなんの|役《やく》にも|立《た》たない。わたしがあなたがたに|話《はな》した|言葉《ことば》は|霊《れい》であり、また|命《いのち》である。[#太字]六四[#「六四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたの|中《なか》には|信《しん》じない|者《もの》がいる」。イエスは、|初《はじ》めから、だれが|信《しん》じないか、また、だれが|彼《かれ》を|裏切《うらぎ》るかを|知《し》っておられたのである。[#太字]六五[#「六五」は行右小書き][#太字終わり]そしてイエスは|言《い》われた、「それだから、|父《ちち》が|与《あた》えて|下《くだ》さった|者《もの》でなければ、わたしに|来《く》ることはできないと、|言《い》ったのである」。  [#太字]六六[#「六六」は行右小書き][#太字終わり]それ|以来《いらい》、|多《おお》くの|弟子《でし》たちは|去《さ》っていって、もはやイエスと|行動《こうどう》を|共《とも》にしなかった。[#太字]六七[#「六七」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは十二|弟子《でし》に|言《い》われた、「あなたがたも|去《さ》ろうとするのか」。[#太字]六八[#「六八」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロが|答《こた》えた、「|主《しゅ》よ、わたしたちは、だれのところに|行《い》きましょう。|永遠《えいえん》の|命《いのち》の|言《ことば》をもっているのはあなたです。[#太字]六九[#「六九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、あなたが|神《かみ》の|聖者《せいじゃ》であることを|信《しん》じ、また|知《し》っています」。[#太字]七〇[#「七〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えられた、「あなたがた十二|人《にん》を|選《えら》んだのは、わたしではなかったか。それだのに、あなたがたのうちのひとりは|悪魔《あくま》である」。[#太字]七一[#「七一」は行右小書き][#太字終わり]これは、イスカリオテのシモンの|子《こ》ユダをさして|言《い》われたのである。このユダは、十二|弟子《でし》のひとりでありながら、イエスを|裏切《うらぎ》ろうとしていた。 第七章[#「第七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そののち、イエスはガリラヤを|巡回《じゅんかい》しておられた。ユダヤ|人《じん》たちが|自分《じぶん》を|殺《ころ》そうとしていたので、ユダヤを|巡回《じゅんかい》しようとはされなかった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|時《とき》に、ユダヤ|人《じん》の|仮庵《かりいお》の|祭《まつり》が|近《ちか》づいていた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスの|兄弟《きょうだい》たちがイエスに|言《い》った、「あなたがしておられるわざを|弟子《でし》たちにも|見《み》せるために、ここを|去《さ》りユダヤに|行《い》ってはいかがです。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》を|公《おおやけ》けにあらわそうと|思《おも》っている|人《ひと》で、|隠《かく》れて|仕事《しごと》をするものはありません。あなたがこれらのことをするからには、|自分《じぶん》をはっきりと|世《よ》にあらわしなさい」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》ったのは、|兄弟《きょうだい》たちもイエスを|信《しん》じていなかったからである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしの|時《とき》はまだきていない。しかし、あなたがたの|時《とき》はいつも|備《そな》わっている。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|世《よ》はあなたがたを|憎《にく》み|得《え》ないが、わたしを|憎《にく》んでいる。わたしが|世《よ》のおこないの|悪《わる》いことを、あかししているからである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたこそ|祭《まつり》に|行《い》きなさい。わたしはこの|祭《まつり》には|行《い》かない。わたしの|時《とき》はまだ|満《み》ちていないから」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らにこう|言《い》って、イエスはガリラヤにとどまっておられた。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|兄弟《きょうだい》たちが|祭《まつり》に|行《い》ったあとで、イエスも|人目《ひとめ》にたたぬように、ひそかに|行《い》かれた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》らは|祭《まつり》の|時《とき》に、「あの|人《ひと》はどこにいるのか」と|言《い》って、イエスを|捜《さが》していた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》に、イエスについていろいろとうわさが|立《た》った。ある|人々《ひとびと》は、「あれはよい|人《ひと》だ」と|言《い》い、|他《た》の|人々《ひとびと》は、「いや、あれは|群衆《ぐんしゅう》を|惑《まど》わしている」と|言《い》った。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、ユダヤ|人《じん》らを|恐《おそ》れて、イエスのことを|公然《こうぜん》と|口《くち》にする|者《もの》はいなかった。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|祭《まつり》も|半《なか》ばになってから、イエスは|宮《みや》に|上《のぼ》って|教《おし》え|始《はじ》められた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すると、ユダヤ|人《じん》たちは|驚《おどろ》いて|言《い》った、「この|人《ひと》は|学問《がくもん》をしたこともないのに、どうして|律法《りっぽう》の|知識《ちしき》をもっているのだろう」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えて|言《い》われた、「わたしの|教《おしえ》はわたし|自身《じしん》の|教《おしえ》ではなく、わたしをつかわされたかたの|教《おしえ》である。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》のみこころを|行《おこな》おうと|思《おも》う|者《もの》であれば、だれでも、わたしの|語《かた》っているこの|教《おしえ》が|神《かみ》からのものか、それとも、わたし|自身《じしん》から|出《で》たものか、わかるであろう。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》から|出《で》たことを|語《かた》る|者《もの》は、|自分《じぶん》の|栄光《えいこう》を|求《もと》めるが、|自分《じぶん》をつかわされたかたの|栄光《えいこう》を|求《もと》める|者《もの》は|真実《しんじつ》であって、その|人《ひと》の|内《うち》には|偽《いつわ》りがない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]モーセはあなたがたに|律法《りっぽう》を|与《あた》えたではないか。それだのに、あなたがたのうちには、その|律法《りっぽう》を|行《おこな》う|者《もの》がひとりもない。あなたがたは、なぜわたしを|殺《ころ》そうと|思《おも》っているのか」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》は|答《こた》えた、「あなたは|悪霊《あくれい》に|取《と》りつかれている。だれがあなたを|殺《ころ》そうと|思《おも》っているものか」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えて|言《い》われた、「わたしが一つのわざをしたところ、あなたがたは|皆《みな》それを|見《み》て|驚《おどろ》いている。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]モーセはあなたがたに|割礼《かつれい》を|命《めい》じたので、(これは、|実《じつ》は、モーセから|始《はじ》まったのではなく、|先祖《せんぞ》たちから|始《はじ》まったものである)あなたがたは|安息日《あんそくにち》にも|人《ひと》に|割礼《かつれい》を|施《ほどこ》している。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]もし、モーセの|律法《りっぽう》が|破《やぶ》られないように、|安息日《あんそくにち》であっても|割礼《かつれい》を|受《う》けるのなら、|安息日《あんそくにち》に|人《ひと》の|全身《ぜんしん》を|丈夫《じょうぶ》にしてやったからといって、どうして、そんなにおこるのか。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]うわべで|人《ひと》をさばかないで、|正《ただ》しいさばきをするがよい」。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]さて、エルサレムのある|人《ひと》たちが|言《い》った、「この|人《ひと》は|人々《ひとびと》が|殺《ころ》そうと|思《おも》っている|者《もの》ではないか。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、|彼《かれ》は|公然《こうぜん》と|語《かた》っているのに、|人々《ひとびと》はこれに|対《たい》して|何《なに》も|言《い》わない。|役人《やくにん》たちは、この|人《ひと》がキリストであることを、ほんとうに|知《し》っているのではなかろうか。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちはこの|人《ひと》がどこからきたのか|知《し》っている。しかし、キリストが|現《あらわ》れる|時《とき》には、どこから|来《く》るのか|知《し》っている|者《もの》は、ひとりもいない」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|宮《みや》の|内《うち》で|教《おし》えながら、|叫《さけ》んで|言《い》われた、「あなたがたは、わたしを|知《し》っており、また、わたしがどこからきたかも|知《し》っている。しかし、わたしは|自分《じぶん》からきたのではない。わたしをつかわされたかたは|真実《しんじつ》であるが、あなたがたは、そのかたを|知《し》らない。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、そのかたを|知《し》っている。わたしはそのかたのもとからきた|者《もの》で、そのかたがわたしをつかわされたのである」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|人々《ひとびと》はイエスを|捕《とら》えようと|計《はか》ったが、だれひとり|手《て》をかける|者《もの》はなかった。イエスの|時《とき》が、まだきていなかったからである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》の|多《おお》くの|者《もの》が、イエスを|信《しん》じて|言《い》った、「キリストがきても、この|人《ひと》が|行《おこな》ったよりも|多《おお》くのしるしを|行《おこな》うだろうか」。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》がイエスについてこのようなうわさをしているのを、パリサイ|人《びと》たちは|耳《みみ》にした。そこで、|祭司長《さいしちょう》たちやパリサイ|人《びと》たちは、イエスを|捕《とら》えようとして、|下役《したやく》どもをつかわした。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「|今《いま》しばらくの|間《あいだ》、わたしはあなたがたと|一緒《いっしょ》にいて、それから、わたしをおつかわしになったかたのみもとに|行《い》く。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはわたしを|捜《さが》すであろうが、|見《み》つけることはできない。そしてわたしのいる|所《ところ》に、あなたがたは|来《く》ることができない」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そこでユダヤ|人《じん》たちは|互《たがい》に|言《い》った、「わたしたちが|見《み》つけることができないというのは、どこへ|行《い》こうとしているのだろう。ギリシヤ|人《じん》の|中《なか》に|離散《りさん》している|人《ひと》たちのところにでも|行《い》って、ギリシヤ|人《じん》を|教《おし》えようというのだろうか。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]また、『わたしを|捜《さが》すが、|見《み》つけることはできない。そしてわたしのいる|所《ところ》には|来《く》ることができないだろう』と|言《い》ったその|言葉《ことば》は、どういう|意味《いみ》だろう」。  [#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|祭《まつり》の|終《おわ》りの|大事《だいじ》な|日《ひ》に、イエスは|立《た》って、|叫《さけ》んで|言《い》われた、「だれでもかわく|者《もの》は、わたしのところにきて|飲《の》むがよい。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]わたしを|信《しん》じる|者《もの》は、|聖書《せいしょ》に|書《か》いてあるとおり、その|腹《はら》から|生《い》ける|水《みず》が|川《かわ》となって|流《な》れ|出《で》るであろう」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]これは、イエスを|信《しん》じる|人々《ひとびと》が|受《う》けようとしている|御霊《みたま》をさして|言《い》われたのである。すなわち、イエスはまだ|栄光《えいこう》を|受《う》けておられなかったので、|御霊《みたま》がまだ|下《くだ》っていなかったのである。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》のある|者《もの》がこれらの|言葉《ことば》を|聞《き》いて、「このかたは、ほんとうに、あの|預言者《よげんしゃ》である」と|言《い》い、[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|人《ひと》たちは「このかたはキリストである」と|言《い》い、また、ある|人々《ひとびと》は、「キリストはまさか、ガリラヤからは|出《で》てこないだろう。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]キリストは、ダビデの|子孫《しそん》から、またダビデのいたベツレヘムの|村《むら》から|出《で》ると、|聖書《せいしょ》に|書《か》いてあるではないか」と|言《い》った。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|群衆《ぐんしゅう》の|間《あいだ》にイエスのことで|分争《ぶんそう》が|生《しょう》じた。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らのうちのある|人々《ひとびと》は、イエスを|捕《とら》えようと|思《おも》ったが、だれひとり|手《て》をかける|者《もの》はなかった。  [#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]さて、|下役《したやく》どもが|祭司長《さいしちょう》たちやパリサイ|人《びと》たちのところに|帰《かえ》ってきたので、|彼《かれ》らはその|下役《したやく》どもに|言《い》った、「なぜ、あの|人《ひと》を|連《つ》れてこなかったのか」。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|下役《したやく》どもは|答《こた》えた、「この|人《ひと》の|語《かた》るように|語《かた》った|者《もの》は、これまでにありませんでした」。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》たちが|彼《かれ》らに|答《こた》えた、「あなたがたまでが、だまされているのではないか。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]|役人《やくにん》たちやパリサイ|人《びと》たちの|中《なか》で、ひとりでも|彼《かれ》を|信《しん》じた|者《もの》があっただろうか。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》をわきまえないこの|群衆《ぐんしゅう》は、のろわれている」。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|中《なか》のひとりで、|以前《いぜん》にイエスに|会《あ》いにきたことのあるニコデモが、|彼《かれ》らに|言《い》った、[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]「わたしたちの|律法《りっぽう》によれば、まずその|人《ひと》の|言《い》い|分《ぶん》を|聞《き》き、その|人《ひと》のしたことを|知《し》った|上《うえ》でなければ、さばくことをしないのではないか」。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|答《こた》えて|言《い》った、「あなたもガリラヤ|出《で》なのか。よく|調《しら》べてみなさい、ガリラヤからは|預言者《よげんしゃ》が|出《で》るものではないことが、わかるだろう」。  〔[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]そして、|人々《ひとびと》はおのおの|家《いえ》に|帰《かえ》って|行《い》った。 第八章[#「第八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはオリブ|山《やま》に|行《い》かれた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|朝《あさ》|早《はや》くまた|宮《みや》にはいられると、|人々《ひとびと》が|皆《みな》みもとに|集《あつ》まってきたので、イエスはすわって|彼《かれ》らを|教《おし》えておられた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すると、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちやパリサイ|人《びと》たちが、|姦淫《かんいん》をしている|時《とき》につかまえられた|女《おんな》をひっぱってきて、|中《なか》に|立《た》たせた|上《うえ》、イエスに|言《い》った、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]「|先生《せんせい》、この|女《おんな》は|姦淫《かんいん》の|場《ば》でつかまえられました。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]モーセは|律法《りっぽう》の|中《なか》で、こういう|女《おんな》を|石《いし》で|打《う》ち|殺《ころ》せと|命《めい》じましたが、あなたはどう|思《おも》いますか」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがそう|言《い》ったのは、イエスをためして、|訴《うった》える|口実《こうじつ》を|得《え》るためであった。しかし、イエスは|身《み》をかがめて、|指《ゆび》で|地面《じめん》に|何《なに》か|書《か》いておられた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|問《と》い|続《つづ》けるので、イエスは|身《み》を|起《おこ》して|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたの|中《なか》で|罪《つみ》のない|者《もの》が、まずこの|女《おんな》に|石《いし》を|投《な》げつけるがよい」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そしてまた|身《み》をかがめて、|地面《じめん》に|物《もの》を|書《か》きつづけられた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]これを|聞《き》くと、|彼《かれ》らは|年寄《としより》から|始《はじ》めて、ひとりびとり|出《で》て|行《い》き、ついに、イエスだけになり、|女《おんな》は|中《なか》にいたまま|残《のこ》された。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|身《み》を|起《おこ》して|女《おんな》に|言《い》われた、「|女《おんな》よ、みんなはどこにいるか。あなたを|罰《ばっ》する|者《もの》はなかったのか」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》は|言《い》った、「|主《しゅ》よ、だれもございません」。イエスは|言《い》われた、「わたしもあなたを|罰《ばっ》しない。お|帰《かえ》りなさい。|今後《こんご》はもう|罪《つみ》を|犯《おか》さないように」。〕  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、また|人々《ひとびと》に|語《かた》ってこう|言《い》われた、「わたしは|世《よ》の|光《ひかり》である。わたしに|従《したが》って|来《く》る|者《もの》は、やみのうちを|歩《ある》くことがなく、|命《いのち》の|光《ひかり》をもつであろう」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]するとパリサイ|人《びと》たちがイエスに|言《い》った、「あなたは、|自分《じぶん》のことをあかししている。あなたのあかしは|真実《しんじつ》ではない」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えて|言《い》われた、「たとい、わたしが|自分《じぶん》のことをあかししても、わたしのあかしは|真実《しんじつ》である。それは、わたしがどこからきたのか、また、どこへ|行《い》くのかを|知《し》っているからである。しかし、あなたがたは、わたしがどこからきて、どこへ|行《い》くのかを|知《し》らない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|肉《にく》によって|人《ひと》をさばくが、わたしはだれもさばかない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もしわたしがさばくとすれば、わたしのさばきは|正《ただ》しい。なぜなら、わたしはひとりではなく、わたしをつかわされたかたが、わたしと|一緒《いっしょ》だからである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|律法《りっぽう》には、ふたりによる|証言《しょうげん》は|真実《しんじつ》だと、|書《か》いてある。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたし|自身《じしん》のことをあかしするのは、わたしであるし、わたしをつかわされた|父《ちち》も、わたしのことをあかしして|下《くだ》さるのである」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》らはイエスに|言《い》った、「あなたの|父《ちち》はどこにいるのか」。イエスは|答《こた》えられた、「あなたがたは、わたしをもわたしの|父《ちち》をも|知《し》っていない。もし、あなたがたがわたしを|知《し》っていたなら、わたしの|父《ちち》をも|知《し》っていたであろう」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|宮《みや》の|内《うち》で|教《おし》えていた|時《とき》、これらの|言葉《ことば》をさいせん|箱《はこ》のそばで|語《かた》られたのであるが、イエスの|時《とき》がまだきていなかったので、だれも|捕《とら》える|者《もの》がなかった。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]さて、また|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしは|去《さ》って|行《い》く。あなたがたはわたしを|捜《さが》し|求《もと》めるであろう。そして|自分《じぶん》の|罪《つみ》のうちに|死《し》ぬであろう。わたしの|行《い》く|所《ところ》には、あなたがたは|来《く》ることができない」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこでユダヤ|人《じん》たちは|言《い》った、「わたしの|行《い》く|所《ところ》に、あなたがたは|来《く》ることができないと、|言《い》ったのは、あるいは|自殺《じさつ》でもしようとするつもりか」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「あなたがたは|下《した》から|出《で》た|者《もの》だが、わたしは|上《うえ》からきた|者《もの》である。あなたがたはこの|世《よ》の|者《もの》であるが、わたしはこの|世《よ》の|者《もの》ではない。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]だからわたしは、あなたがたは|自分《じぶん》の|罪《つみ》のうちに|死《し》ぬであろうと、|言《い》ったのである。もしわたしがそういう|者《もの》であることをあなたがたが|信《しん》じなければ、|罪《つみ》のうちに|死《し》ぬことになるからである」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らはイエスに|言《い》った、「あなたは、いったい、どういうかたですか」。イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしがどういう|者《もの》であるかは、|初《はじ》めからあなたがたに|言《い》っているではないか。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたについて、わたしの|言《い》うべきこと、さばくべきことが、たくさんある。しかし、わたしをつかわされたかたは|真実《しんじつ》なかたである。わたしは、そのかたから|聞《き》いたままを|世《よ》にむかって|語《かた》るのである」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、イエスが|父《ちち》について|話《はな》しておられたことを|悟《さと》らなかった。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|言《い》われた、「あなたがたが|人《ひと》の|子《こ》を|上《あ》げてしまった|後《のち》はじめて、わたしがそういう|者《もの》であること、また、わたしは|自分《じぶん》からは|何《なに》もせず、ただ|父《ちち》が|教《おし》えて|下《くだ》さったままを|話《はな》していたことが、わかってくるであろう。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]わたしをつかわされたかたは、わたしと|一緒《いっしょ》におられる。わたしは、いつも|神《かみ》のみこころにかなうことをしているから、わたしをひとり|置《お》きざりになさることはない」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]これらのことを|語《かた》られたところ、|多《おお》くの|人々《ひとびと》がイエスを|信《しん》じた。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|自分《じぶん》を|信《しん》じたユダヤ|人《じん》たちに|言《い》われた、「もしわたしの|言葉《ことば》のうちにとどまっておるなら、あなたがたは、ほんとうにわたしの|弟子《でし》なのである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]また|真理《しんり》を|知《し》るであろう。そして|真理《しんり》は、あなたがたに|自由《じゆう》を|得《え》させるであろう」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らはイエスに|言《い》った、「わたしたちはアブラハムの|子孫《しそん》であって、|人《ひと》の|奴隷《どれい》になったことなどは、|一度《いちど》もない。どうして、あなたがたに|自由《じゆう》を|得《え》させるであろうと、|言《い》われるのか」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えられた、「よくよくあなたがたに|言《い》っておく。すべて|罪《つみ》を|犯《おか》す|者《もの》は|罪《つみ》の|奴隷《どれい》である。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そして、|奴隷《どれい》はいつまでも|家《いえ》にいる|者《もの》ではない。しかし、|子《こ》はいつまでもいる。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]だから、もし|子《こ》があなたがたに|自由《じゆう》を|得《え》させるならば、あなたがたは、ほんとうに|自由《じゆう》な|者《もの》となるのである。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたがアブラハムの|子孫《しそん》であることを|知《し》っている。それだのに、あなたがたはわたしを|殺《ころ》そうとしている。わたしの|言葉《ことば》が、あなたがたのうちに|根《ね》をおろしていないからである。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]わたしはわたしの|父《ちち》のもとで|見《み》たことを|語《かた》っているが、あなたがたは|自分《じぶん》の|父《ちち》から|聞《き》いたことを|行《おこな》っている」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはイエスに|答《こた》えて|言《い》った、「わたしたちの|父《ちち》はアブラハムである」。イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「もしアブラハムの|子《こ》であるなら、アブラハムのわざをするがよい。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが|今《いま》、|神《かみ》から|聞《き》いた|真理《しんり》をあなたがたに|語《かた》ってきたこのわたしを、|殺《ころ》そうとしている。そんなことをアブラハムはしなかった。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、あなたがたの|父《ちち》のわざを|行《おこな》っているのである」。|彼《かれ》らは|言《い》った、「わたしたちは、|不品行《ふひんこう》の|結果《けっか》うまれた|者《もの》ではない。わたしたちにはひとりの|父《ちち》がある。それは|神《かみ》である」。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|神《かみ》があなたがたの|父《ちち》であるならば、あなたがたはわたしを|愛《あい》するはずである。わたしは|神《かみ》から|出《で》た|者《もの》、また|神《かみ》からきている|者《もの》であるからだ。わたしは|自分《じぶん》からきたのではなく、|神《かみ》からつかわされたのである。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]どうしてあなたがたは、わたしの|話《はな》すことがわからないのか。あなたがたが、わたしの|言葉《ことば》を|悟《さと》ることができないからである。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|自分《じぶん》の|父《ちち》、すなわち、|悪魔《あくま》から|出《で》てきた|者《もの》であって、その|父《ちち》の|欲望《よくぼう》どおりを|行《おこな》おうと|思《おも》っている。|彼《かれ》は|初《はじ》めから、|人殺《ひとごろ》しであって、|真理《しんり》に|立《た》つ|者《もの》ではない。|彼《かれ》のうちには|真理《しんり》がないからである。|彼《かれ》が|偽《いつわ》りを|言《い》うとき、いつも|自分《じぶん》の|本音《ほんね》をはいているのである。|彼《かれ》は|偽《いつわ》り|者《もの》であり、|偽《いつわ》りの|父《ちち》であるからだ。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしが|真理《しんり》を|語《かた》っているので、あなたがたはわたしを|信《しん》じようとしない。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうち、だれがわたしに|罪《つみ》があると|責《せ》めうるのか。わたしは|真理《しんり》を|語《かた》っているのに、なぜあなたがたは、わたしを|信《しん》じないのか。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》からきた|者《もの》は|神《かみ》の|言葉《ことば》に|聞《き》き|従《したが》うが、あなたがたが|聞《き》き|従《したが》わないのは、|神《かみ》からきた|者《もの》でないからである」。  [#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》たちはイエスに|答《こた》えて|言《い》った、「あなたはサマリヤ|人《びと》で、|悪霊《あくれい》に|取《と》りつかれていると、わたしたちが|言《い》うのは、|当然《とうぜん》ではないか」。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「わたしは、|悪霊《あくれい》に|取《と》りつかれているのではなくて、わたしの|父《ちち》を|重《おも》んじているのだが、あなたがたはわたしを|軽《かろ》んじている。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|自分《じぶん》の|栄光《えいこう》を|求《もと》めてはいない。それを|求《もと》めるかたが|別《べつ》にある。そのかたは、またさばくかたである。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]よくよく|言《い》っておく。もし|人《ひと》がわたしの|言葉《ことば》を|守《まも》るならば、その|人《ひと》はいつまでも|死《し》を|見《み》ることがないであろう」。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》たちが|言《い》った、「あなたが|悪霊《あくれい》に|取《と》りつかれていることが、|今《いま》わかった。アブラハムは|死《し》に、|預言者《よげんしゃ》たちも|死《し》んでいる。それだのに、あなたは、わたしの|言葉《ことば》を|守《まも》る|者《もの》はいつまでも|死《し》を|味《あじ》わうことがないであろうと、|言《い》われる。[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、わたしたちの|父《ちち》アブラハムより|偉《えら》いのだろうか。|彼《かれ》も|死《し》に、|預言者《よげんしゃ》たちも|死《し》んだではないか。あなたは、いったい、|自分《じぶん》をだれと|思《おも》っているのか」。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「わたしがもし|自分《じぶん》に|栄光《えいこう》を|帰《き》するなら、わたしの|栄光《えいこう》は、むなしいものである。わたしに|栄光《えいこう》を|与《あた》えるかたは、わたしの|父《ちち》であって、あなたがたが|自分《じぶん》の|神《かみ》だと|言《い》っているのは、そのかたのことである。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはその|神《かみ》を|知《し》っていないが、わたしは|知《し》っている。もしわたしが|神《かみ》を|知《し》らないと|言《い》うならば、あなたがたと|同《おな》じような|偽《いつわ》り|者《もの》であろう。しかし、わたしはそのかたを|知《し》り、その|御言《みことば》を|守《まも》っている。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|父《ちち》アブラハムは、わたしのこの|日《ひ》を|見《み》ようとして|楽《たの》しんでいた。そしてそれを|見《み》て|喜《よろこ》んだ」。[#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]そこでユダヤ|人《じん》たちはイエスに|言《い》った、「あなたはまだ五十にもならないのに、アブラハムを|見《み》たのか」。[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「よくよくあなたがたに|言《い》っておく。アブラハムの|生《うま》れる|前《まえ》からわたしは、いるのである」。[#太字]五九[#「五九」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは|石《いし》をとって、イエスに|投《な》げつけようとした。しかし、イエスは|身《み》を|隠《かく》して、|宮《みや》から|出《で》て|行《い》かれた。 第九章[#「第九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|道《みち》をとおっておられるとき、|生《うま》れつきの|盲人《もうじん》を|見《み》られた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちはイエスに|尋《たず》ねて|言《い》った、「|先生《せんせい》、この|人《ひと》が|生《うま》れつき|盲人《もうじん》なのは、だれが|罪《つみ》を|犯《おか》したためですか。|本人《ほんにん》ですか、それともその|両親《りょうしん》ですか」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「|本人《ほんにん》が|罪《つみ》を|犯《おか》したのでもなく、また、その|両親《りょうしん》が|犯《おか》したのでもない。ただ|神《かみ》のみわざが、|彼《かれ》の|上《うえ》に|現《あらわ》れるためである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、わたしをつかわされたかたのわざを、|昼《ひる》の|間《あいだ》にしなければならない。|夜《よる》が|来《く》る。すると、だれも|働《はたら》けなくなる。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、この|世《よ》にいる|間《あいだ》は、|世《よ》の|光《ひかり》である」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]イエスはそう|言《い》って、|地《ち》につばきをし、そのつばきで、どろをつくり、そのどろを|盲人《もうじん》の|目《め》に|塗《ぬ》って|言《い》われた、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]「シロアム(つかわされた|者《もの》、の|意《い》)の|池《いけ》に|行《い》って|洗《あら》いなさい」。そこで|彼《かれ》は|行《い》って|洗《あら》った。そして|見《み》えるようになって、|帰《かえ》って|行《い》った。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|近所《きんじょ》の|人々《ひとびと》や、|彼《かれ》がもと、こじきであったのを|見知《みし》っていた|人々《ひとびと》が|言《い》った、「この|人《ひと》は、すわってこじきをしていた|者《もの》ではないか」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ある|人々《ひとびと》は「その|人《ひと》だ」と|言《い》い、|他《た》の|人々《ひとびと》は「いや、ただあの|人《ひと》に|似《に》ているだけだ」と|言《い》った。しかし、|本人《ほんにん》は「わたしがそれだ」と|言《い》った。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|人々《ひとびと》は|彼《かれ》に|言《い》った、「では、おまえの|目《め》はどうしてあいたのか」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|答《こた》えた、「イエスというかたが、どろをつくって、わたしの|目《め》に|塗《ぬ》り、『シロアムに|行《い》って|洗《あら》え』と|言《い》われました。それで、|行《い》って|洗《あら》うと、|見《み》えるようになりました」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は|彼《かれ》に|言《い》った、「その|人《ひと》はどこにいるのか」。|彼《かれ》は「|知《し》りません」と|答《こた》えた。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は、もと|盲人《もうじん》であったこの|人《ひと》を、パリサイ|人《びと》たちのところにつれて|行《い》った。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]イエスがどろをつくって|彼《かれ》の|目《め》をあけたのは、|安息日《あんそくにち》であった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]パリサイ|人《びと》たちもまた、「どうして|見《み》えるようになったのか」、と|彼《かれ》に|尋《たず》ねた。|彼《かれ》は|答《こた》えた、「あのかたがわたしの|目《め》にどろを|塗《ぬ》り、わたしがそれを|洗《あら》い、そして|見《み》えるようになりました」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あるパリサイ|人《びと》たちが|言《い》った、「その|人《ひと》は|神《かみ》からきた|人《ひと》ではない。|安息日《あんそくにち》を|守《まも》っていないのだから」。しかし、ほかの|人々《ひとびと》は|言《い》った、「|罪《つみ》のある|人《ひと》が、どうしてそのようなしるしを|行《おこな》うことができようか」。そして|彼《かれ》らの|間《あいだ》に|分争《ぶんそう》が|生《しょう》じた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは、もう一|度《ど》この|盲人《もうじん》に|聞《き》いた、「おまえの|目《め》をあけてくれたその|人《ひと》を、どう|思《おも》うか」。「|預言者《よげんしゃ》だと|思《おも》います」と|彼《かれ》は|言《い》った。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》たちは、|彼《かれ》がもと|盲人《もうじん》であったが|見《み》えるようになったことを、まだ|信《しん》じなかった。ついに|彼《かれ》らは、|目《め》が|見《み》えるようになったこの|人《ひと》の|両親《りょうしん》を|呼《よ》んで、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|尋《たず》ねて|言《い》った、「これが、|生《うま》れつき|盲人《もうじん》であったと、おまえたちの|言《い》っているむすこか。それではどうして、いま|目《め》が|見《み》えるのか」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|両親《りょうしん》は|答《こた》えて|言《い》った、「これがわたしどものむすこであること、また|生《うま》れつき|盲人《もうじん》であったことは|存《ぞん》じています。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、どうしていま|見《み》えるようになったのか、それは|知《し》りません。また、だれがその|目《め》をあけて|下《くだ》さったのかも|知《し》りません。あれに|聞《き》いて|下《くだ》さい。あれはもうおとなですから、|自分《じぶん》のことは|自分《じぶん》で|話《はな》せるでしょう」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|両親《りょうしん》はユダヤ|人《じん》たちを|恐《おそ》れていたので、こう|答《こた》えたのである。それは、もしイエスをキリストと|告白《こくはく》する|者《もの》があれば、|会堂《かいどう》から|追《お》い|出《だ》すことに、ユダヤ|人《じん》たちが|既《すで》に|決《き》めていたからである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》の|両親《りょうしん》が「おとなですから、あれに|聞《き》いて|下《くだ》さい」と|言《い》ったのは、そのためであった。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは、|盲人《もうじん》であった|人《ひと》をもう|一度《いちど》|呼《よ》んで|言《い》った、「|神《かみ》に|栄光《えいこう》を|帰《き》するがよい。あの|人《ひと》が|罪人《つみびと》であることは、わたしたちにはわかっている」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》は|言《い》った、「あのかたが|罪人《つみびと》であるかどうか、わたしは|知《し》りません。ただ一つのことだけ|知《し》っています。わたしは|盲《めくら》であったが、|今《いま》は|見《み》えるということです」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは|言《い》った、「その|人《ひと》はおまえに|何《なに》をしたのか。どんなにしておまえの|目《め》をあけたのか」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|答《こた》えた、「そのことはもう|話《はな》してあげたのに、|聞《き》いてくれませんでした。なぜまた|聞《き》こうとするのですか。あなたがたも、あの|人《ひと》の|弟子《でし》になりたいのですか」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは|彼《かれ》をののしって|言《い》った、「おまえはあれの|弟子《でし》だが、わたしたちはモーセの|弟子《でし》だ。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]モーセに|神《かみ》が|語《かた》られたということは|知《し》っている。だが、あの|人《ひと》がどこからきた|者《もの》か、わたしたちは|知《し》らぬ」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》が|答《こた》えて|言《い》った、「わたしの|目《め》をあけて|下《くだ》さったのに、そのかたがどこからきたか、ご|存《ぞん》じないとは、|不思議《ふしぎ》|千万《せんばん》です。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちはこのことを|知《し》っています。|神《かみ》は|罪人《つみびと》の|言《い》うことはお|聞《き》きいれになりませんが、|神《かみ》を|敬《うやま》い、そのみこころを|行《おこな》う|人《ひと》の|言《い》うことは、|聞《き》きいれて|下《くだ》さいます。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|生《うま》れつき|盲《めくら》であった|者《もの》の|目《め》をあけた|人《ひと》があるということは、|世界《せかい》が|始《はじ》まって|以来《いらい》、|聞《き》いたことがありません。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]もしあのかたが|神《かみ》からきた|人《ひと》でなかったら、|何一《なにひと》つできなかったはずです」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]これを|聞《き》いて|彼《かれ》らは|言《い》った、「おまえは|全《まった》く|罪《つみ》の|中《なか》に|生《うま》れていながら、わたしたちを|教《おし》えようとするのか」。そして|彼《かれ》を|外《そと》へ|追《お》い|出《だ》した。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、その|人《ひと》が|外《そと》へ|追《お》い|出《だ》されたことを|聞《き》かれた。そして|彼《かれ》に|会《あ》って|言《い》われた、「あなたは|人《ひと》の|子《こ》を|信《しん》じるか」。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|答《こた》えて|言《い》った、「|主《しゅ》よ、それはどなたですか。そのかたを|信《しん》じたいのですが」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「あなたは、もうその|人《ひと》に|会《あ》っている。|今《いま》あなたと|話《はな》しているのが、その|人《ひと》である」。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》は、「|主《しゅ》よ、|信《しん》じます」と|言《い》って、イエスを|拝《はい》した。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|言《い》われた、「わたしがこの|世《よ》にきたのは、さばくためである。すなわち、|見《み》えない|人《ひと》たちが|見《み》えるようになり、|見《み》える|人《ひと》たちが|見《み》えないようになるためである」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]そこにイエスと|一緒《いっしょ》にいたあるパリサイ|人《びと》たちが、それを|聞《き》いてイエスに|言《い》った、「それでは、わたしたちも|盲《めくら》なのでしょうか」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「もしあなたがたが|盲人《もうじん》であったなら、|罪《つみ》はなかったであろう。しかし、|今《いま》あなたがたが『|見《み》える』と|言《い》い|張《は》るところに、あなたがたの|罪《つみ》がある。 第一〇章[#「第一〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]よくよくあなたがたに|言《い》っておく。|羊《ひつじ》の|囲《かこ》いにはいるのに、|門《もん》からでなく、ほかの|所《ところ》からのりこえて|来《く》る|者《もの》は、|盗人《ぬすびと》であり、|強盗《ごうとう》である。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|門《もん》からはいる|者《もの》は、|羊《ひつじ》の|羊飼《ひつじかい》である。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|門番《もんばん》は|彼《かれ》のために|門《もん》を|開《ひら》き、|羊《ひつじ》は|彼《かれ》の|声《こえ》を|聞《き》く。そして|彼《かれ》は|自分《じぶん》の|羊《ひつじ》の|名《な》をよんで|連《つ》れ|出《だ》す。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|羊《ひつじ》をみな|出《だ》してしまうと、|彼《かれ》は|羊《ひつじ》の|先頭《せんとう》に|立《た》って|行《い》く。|羊《ひつじ》はその|声《こえ》を|知《し》っているので、|彼《かれ》について|行《い》くのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|人《ひと》には、ついて|行《い》かないで|逃《に》げ|去《さ》る。その|人《ひと》の|声《こえ》を|知《し》らないからである」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らにこの|比喩《ひゆ》を|話《はな》されたが、|彼《かれ》らは|自分《じぶん》たちにお|話《はな》しになっているのが|何《なに》のことだか、わからなかった。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスはまた|言《い》われた、「よくよくあなたがたに|言《い》っておく。わたしは|羊《ひつじ》の|門《もん》である。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしよりも|前《まえ》にきた|人《ひと》は、みな|盗人《ぬすびと》であり、|強盗《ごうとう》である。|羊《ひつじ》は|彼《かれ》らに|聞《き》き|従《したが》わなかった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|門《もん》である。わたしをとおってはいる|者《もの》は|救《すく》われ、また|出入《でい》りし、|牧草《ぼくそう》にありつくであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|盗人《ぬすびと》が|来《く》るのは、|盗《ぬす》んだり、|殺《ころ》したり、|滅《ほろ》ぼしたりするためにほかならない。わたしがきたのは、|羊《ひつじ》に|命《いのち》を|得《え》させ、|豊《ゆた》かに|得《え》させるためである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしはよい|羊飼《ひつじかい》である。よい|羊飼《ひつじかい》は、|羊《ひつじ》のために|命《いのち》を|捨《す》てる。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|羊飼《ひつじかい》ではなく、|羊《ひつじ》が|自分《じぶん》のものでもない|雇人《やといにん》は、おおかみが|来《く》るのを|見《み》ると、|羊《ひつじ》をすてて|逃《に》げ|去《さ》る。そして、おおかみは|羊《ひつじ》を|奪《うば》い、また|追《お》い|散《ち》らす。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|雇人《やといにん》であって、|羊《ひつじ》のことを|心《こころ》にかけていないからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしはよい|羊飼《ひつじかい》であって、わたしの|羊《ひつじ》を|知《し》り、わたしの|羊《ひつじ》はまた、わたしを|知《し》っている。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それはちょうど、|父《ちち》がわたしを|知《し》っておられ、わたしが|父《ちち》を|知《し》っているのと|同《おな》じである。そして、わたしは|羊《ひつじ》のために|命《いのち》を|捨《す》てるのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしにはまた、この|囲《かこ》いにいない|他《た》の|羊《ひつじ》がある。わたしは|彼《かれ》らをも|導《みちび》かねばならない。|彼《かれ》らも、わたしの|声《こえ》に|聞《き》き|従《したが》うであろう。そして、ついに一つの|群《む》れ、ひとりの|羊飼《ひつじかい》となるであろう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》は、わたしが|自分《じぶん》の|命《いのち》を|捨《す》てるから、わたしを|愛《あい》して|下《くだ》さるのである。|命《いのち》を|捨《す》てるのは、それを|再《ふたた》び|得《え》るためである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]だれかが、わたしからそれを|取《と》り|去《さ》るのではない。わたしが、|自分《じぶん》からそれを|捨《す》てるのである。わたしには、それを|捨《す》てる|力《ちから》があり、またそれを|受《う》ける|力《ちから》もある。これはわたしの|父《ちち》から|授《さず》かった|定《さだ》めである」。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]これらの|言葉《ことば》を|語《かた》られたため、ユダヤ|人《じん》の|間《あいだ》にまたも|分争《ぶんそう》が|生《しょう》じた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そのうちの|多《おお》くの|者《もの》が|言《い》った、「|彼《かれ》は|悪霊《あくれい》に|取《と》りつかれて、|気《き》が|狂《くる》っている。どうして、あなたがたはその|言《い》うことを|聞《き》くのか」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|他《た》の|人々《ひとびと》は|言《い》った、「それは|悪霊《あくれい》に|取《と》りつかれた|者《もの》の|言葉《ことば》ではない。|悪霊《あくれい》は|盲人《もうじん》の|目《め》をあけることができようか」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、エルサレムで|宮《みや》きよめの|祭《まつり》が|行《おこな》われた。|時《とき》は|冬《ふゆ》であった。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、|宮《みや》の|中《なか》にあるソロモンの|廊《ろう》を|歩《ある》いておられた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]するとユダヤ|人《じん》たちが、イエスを|取《と》り|囲《かこ》んで|言《い》った、「いつまでわたしたちを|不安《ふあん》のままにしておくのか。あなたがキリストであるなら、そうとはっきり|言《い》っていただきたい」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えられた、「わたしは|話《はな》したのだが、あなたがたは|信《しん》じようとしない。わたしの|父《ちち》の|名《な》によってしているすべてのわざが、わたしのことをあかししている。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|信《しん》じないのは、わたしの|羊《ひつじ》でないからである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|羊《ひつじ》はわたしの|声《こえ》に|聞《き》き|従《したが》う。わたしは|彼《かれ》らを|知《し》っており、|彼《かれ》らはわたしについて|来《く》る。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|彼《かれ》らに|永遠《えいえん》の|命《いのち》を|与《あた》える。だから、|彼《かれ》らはいつまでも|滅《ほろ》びることがなく、また、|彼《かれ》らをわたしの|手《て》から|奪《うば》い|去《さ》る|者《もの》はない。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|父《ちち》がわたしに|下《くだ》さったものは、すべてにまさるものである。そしてだれも|父《ちち》のみ|手《て》から、それを|奪《うば》い|取《と》ることはできない。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしと|父《ちち》とは一つである」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]そこでユダヤ|人《じん》たちは、イエスを|打《う》ち|殺《ころ》そうとして、また|石《いし》を|取《と》りあげた。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えられた、「わたしは、|父《ちち》による|多《おお》くのよいわざを、あなたがたに|示《しめ》した。その|中《なか》のどのわざのために、わたしを|石《いし》で|打《う》ち|殺《ころ》そうとするのか」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》たちは|答《こた》えた、「あなたを|石《いし》で|殺《ころ》そうとするのは、よいわざをしたからではなく、|神《かみ》を|汚《けが》したからである。また、あなたは|人間《にんげん》であるのに、|自分《じぶん》を|神《かみ》としているからである」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|答《こた》えられた、「あなたがたの|律法《りっぽう》に、『わたしは|言《い》う、あなたがたは|神々《かみがみ》である』と|書《か》いてあるではないか。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|言《ことば》を|託《たく》された|人々《ひとびと》が、|神々《かみがみ》といわれておるとすれば、(そして|聖書《せいしょ》の|言《ことば》は、すたることがあり|得《え》ない)[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》が|聖《せい》|別《べつ》して、|世《よ》につかわされた|者《もの》が、『わたしは|神《かみ》の|子《こ》である』と|言《い》ったからとて、どうして『あなたは|神《かみ》を|汚《けが》す|者《もの》だ』と|言《い》うのか。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしが|父《ちち》のわざを|行《おこな》わないとすれば、わたしを|信《しん》じなくてもよい。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もし|行《おこな》っているなら、たといわたしを|信《しん》じなくても、わたしのわざを|信《しん》じるがよい。そうすれば、|父《ちち》がわたしにおり、また、わたしが|父《ちち》におることを|知《し》って|悟《さと》るであろう」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らはまたイエスを|捕《とら》えようとしたが、イエスは|彼《かれ》らの|手《て》をのがれて、|去《さ》って|行《い》かれた。  [#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスはまたヨルダンの|向《む》こう|岸《ぎし》、すなわち、ヨハネが|初《はじ》めにバプテスマを|授《さづ》けていた|所《ところ》に|行《い》き、そこに|滞在《たいざい》しておられた。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|多《おお》くの|人々《ひとびと》がイエスのところにきて、|互《たがい》に|言《い》った、「ヨハネはなんのしるしも|行《おこな》わなかったが、ヨハネがこのかたについて|言《い》ったことは、|皆《みな》ほんとうであった」。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]そして、そこで|多《おお》くの|者《もの》がイエスを|信《しん》じた。 第一一章[#「第一一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、ひとりの|病人《びょうにん》がいた。ラザロといい、マリヤとその|姉妹《しまい》マルタの|村《むら》ベタニヤの|人《ひと》であった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]このマリヤは|主《しゅ》に|香油《こうゆ》をぬり、|自分《じぶん》の|髪《かみ》の|毛《け》で、|主《しゅ》の|足《あし》をふいた|女《おんな》であって、|病気《びょうき》であったのは、|彼女《かのじょ》の|兄弟《きょうだい》ラザロであった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|姉妹《しまい》たちは|人《ひと》をイエスのもとにつかわして、「|主《しゅ》よ、ただ|今《いま》、あなたが|愛《あい》しておられる|者《もの》が|病気《びょうき》をしています」と|言《い》わせた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]イエスはそれを|聞《き》いて|言《い》われた、「この|病気《びょうき》は|死《し》ぬほどのものではない。それは|神《かみ》の|栄光《えいこう》のため、また、|神《かみ》の|子《こ》がそれによって|栄光《えいこう》を|受《う》けるためのものである」。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、マルタとその|姉妹《しまい》とラザロとを|愛《あい》しておられた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ラザロが|病気《びょうき》であることを|聞《き》いてから、なおふつか、そのおられた|所《ところ》に|滞在《たいざい》された。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それから|弟子《でし》たちに、「もう一|度《ど》ユダヤに|行《い》こう」と|言《い》われた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|言《い》った、「|先生《せんせい》、ユダヤ|人《じん》らが、さきほどもあなたを|石《いし》で|殺《ころ》そうとしていましたのに、またそこに|行《い》かれるのですか」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「一|日《にち》には十二|時間《じかん》あるではないか。|昼間《ひるま》あるけば、|人《ひと》はつまずくことはない。この|世《よ》の|光《ひかり》を|見《み》ているからである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|夜《よる》あるけば、つまずく。その|人《ひと》のうちに、|光《ひかり》がないからである」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そう|言《い》われたが、それからまた、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしたちの|友《とも》ラザロが|眠《ねむ》っている。わたしは|彼《かれ》を|起《おこ》しに|行《い》く」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]すると|弟子《でし》たちは|言《い》った、「|主《しゅ》よ、|眠《ねむ》っているのでしたら、|助《たす》かるでしょう」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはラザロが|死《し》んだことを|言《い》われたのであるが、|弟子《でし》たちは、|眠《ねむ》って|休《やす》んでいることをさして|言《い》われたのだと|思《おも》った。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]するとイエスは、あからさまに|彼《かれ》らに|言《い》われた、「ラザロは|死《し》んだのだ。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そして、わたしがそこにいあわせなかったことを、あなたがたのために|喜《よろこ》ぶ。それは、あなたがたが|信《しん》じるようになるためである。では、|彼《かれ》のところに|行《い》こう」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]するとデドモと|呼《よ》ばれているトマスが、|仲間《なかま》の|弟子《でし》たちに|言《い》った、「わたしたちも|行《い》って、|先生《せんせい》と|一緒《いっしょ》に|死《し》のうではないか」。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスが|行《い》ってごらんになると、ラザロはすでに四|日間《かかん》も|墓《はか》の|中《なか》に|置《お》かれていた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]ベタニヤはエルサレムに|近《ちか》く、二十五|丁《ちょう》ばかり|離《はな》れたところにあった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|大《おお》ぜいのユダヤ|人《じん》が、その|兄弟《きょうだい》のことで、マルタとマリヤとを|慰《なぐさ》めようとしてきていた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]マルタはイエスがこられたと|聞《き》いて、|出迎《でむか》えに|行《い》ったが、マリヤは|家《いえ》ですわっていた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]マルタはイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、もしあなたがここにいて|下《くだ》さったなら、わたしの|兄弟《きょうだい》は|死《し》ななかったでしょう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがどんなことをお|願《ねが》いになっても、|神《かみ》はかなえて|下《くだ》さることを、わたしは|今《いま》でも|存《ぞん》じています」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはマルタに|言《い》われた、「あなたの|兄弟《きょうだい》はよみがえるであろう」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]マルタは|言《い》った、「|終《おわ》りの|日《ひ》のよみがえりの|時《とき》よみがえることは、|存《ぞん》じています」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼女《かのじょ》に|言《い》われた、「わたしはよみがえりであり、|命《いのち》である。わたしを|信《しん》じる|者《もの》は、たとい|死《し》んでも|生《い》きる。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]また、|生《い》きていて、わたしを|信《しん》じる|者《もの》は、いつまでも|死《し》なない。あなたはこれを|信《しん》じるか」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]マルタはイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、|信《しん》じます。あなたがこの|世《よ》にきたるべきキリスト、|神《かみ》の|御子《みこ》であると|信《しん》じております」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]マルタはこう|言《い》ってから、|帰《かえ》って|姉妹《しまい》のマリヤを|呼《よ》び、「|先生《せんせい》がおいでになって、あなたを|呼《よ》んでおられます」と|小声《こごえ》で|言《い》った。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]これを|聞《き》いたマリヤはすぐ|立《た》ち|上《あ》がって、イエスのもとに|行《い》った。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスはまだ|村《むら》に、はいってこられず、マルタがお|迎《むか》えしたその|場所《ばしょ》におられた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]マリヤと|一緒《いっしょ》に|家《いえ》にいて|彼女《かのじょ》を|慰《なぐさ》めていたユダヤ|人《じん》たちは、マリヤが|急《いそ》いで|立《た》ち|上《あ》がって|出《で》て|行《い》くのを|見《み》て、|彼女《かのじょ》は|墓《はか》に|泣《な》きに|行《い》くのであろうと|思《おも》い、そのあとからついて|行《い》った。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]マリヤは、イエスのおられる|所《ところ》に|行《い》ってお|目《め》にかかり、その|足《あし》もとにひれ|伏《ふ》して|言《い》った、「|主《しゅ》よ、もしあなたがここにいて|下《くだ》さったなら、わたしの|兄弟《きょうだい》は|死《し》ななかったでしょう」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、|彼女《かのじょ》が|泣《な》き、また、|彼女《かのじょ》と|一緒《いっしょ》にきたユダヤ|人《じん》たちも|泣《な》いているのをごらんになり、|激《はげ》しく|感動《かんどう》し、また|心《こころ》を|騒《さわ》がせ、そして|言《い》われた、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]「|彼《かれ》をどこに|置《お》いたのか」。|彼《かれ》らはイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、きて、ごらん|下《くだ》さい」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|涙《なみだ》を|流《なが》された。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]するとユダヤ|人《じん》たちは|言《い》った、「ああ、なんと|彼《かれ》を|愛《あい》しておられたことか」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らのある|人《ひと》たちは|言《い》った、「あの|盲人《もうじん》の|目《め》をあけたこの|人《ひと》でも、ラザロを|死《し》なせないようには、できなかったのか」。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]イエスはまた|激《はげ》しく|感動《かんどう》して、|墓《はか》にはいられた。それは|洞穴《ほらあな》であって、そこに|石《いし》がはめてあった。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「|石《いし》を|取《と》りのけなさい」。|死《し》んだラザロの|姉妹《しまい》マルタが|言《い》った、「|主《しゅ》よ、もう|臭《くさ》くなっております。四|日《か》もたっていますから」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼女《かのじょ》に|言《い》われた、「もし|信《しん》じるなら|神《かみ》の|栄光《えいこう》を|見《み》るであろうと、あなたに|言《い》ったではないか」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は|石《いし》を|取《と》りのけた。すると、イエスは|目《め》を|天《てん》にむけて|言《い》われた、「|父《ちち》よ、わたしの|願《ねが》いをお|聞《き》き|下《くだ》さったことを|感謝《かんしゃ》します。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがいつでもわたしの|願《ねが》いを|聞《き》きいれて|下《くだ》さることを、よく|知《し》っています。しかし、こう|申《もう》しますのは、そばに|立《た》っている|人々《ひとびと》に、あなたがわたしをつかわされたことを、|信《しん》じさせるためであります」。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》いながら、|大声《おおごえ》で「ラザロよ、|出《で》てきなさい」と|呼《よ》ばわれた。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]すると、|死人《しにん》は|手足《てあし》を|布《ぬの》でまかれ、|顔《かお》も|顔《かお》おおいで|包《つつ》まれたまま、|出《で》てきた。イエスは|人々《ひとびと》に|言《い》われた、「|彼《かれ》をほどいてやって、|帰《かえ》らせなさい」。  [#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]マリヤのところにきて、イエスのなさったことを|見《み》た|多《おお》くのユダヤ|人《じん》たちは、イエスを|信《しん》じた。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、そのうちの|数人《すうにん》がパリサイ|人《びと》たちのところに|行《い》って、イエスのされたことを|告《つ》げた。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|祭司長《さいしちょう》たちとパリサイ|人《びと》たちとは、|議会《ぎかい》を|召集《しょうしゅう》して|言《い》った、「この|人《ひと》が|多《おお》くのしるしを|行《おこな》っているのに、お|互《たがい》は|何《なに》をしているのだ。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]もしこのままにしておけば、みんなが|彼《かれ》を|信《しん》じるようになるだろう。そのうえ、ローマ|人《じん》がやってきて、わたしたちの|土地《とち》も|人民《じんみん》も|奪《うば》ってしまうであろう」。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らのうちのひとりで、その|年《とし》の|大祭司《だいさいし》であったカヤパが、|彼《かれ》らに|言《い》った、「あなたがたは、|何《なに》もわかっていないし、[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]ひとりの|人《ひと》が|人民《じんみん》に|代《かわ》って|死《し》んで、|全国民《ぜんこくみん》が|滅《ほろ》びないようになるのがわたしたちにとって|得《え》だということを、|考《かんが》えてもいない」。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]このことは|彼《かれ》が|自分《じぶん》から|言《い》ったのではない。|彼《かれ》はこの|年《とし》の|大祭司《だいさいし》であったので、|預言《よげん》をして、イエスが|国民《こくみん》のために、[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]ただ|国民《こくみん》のためだけではなく、また|散在《さんざい》している|神《かみ》の|子《こ》らを一つに|集《あつ》めるために、|死《し》ぬことになっていると、|言《い》ったのである。[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはこの|日《ひ》からイエスを|殺《ころ》そうと|相談《そうだん》した。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]そのためイエスは、もはや|公然《こうぜん》とユダヤ|人《じん》の|間《あいだ》を|歩《ある》かないで、そこを|出《で》て、|荒野《あらの》に|近《ちか》い|地方《ちほう》のエフライムという|町《まち》に|行《い》かれ、そこに|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》に|滞在《たいざい》しておられた。  [#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]さて、ユダヤ|人《じん》の|過越《すぎこし》の|祭《まつり》が|近《ちか》づいたので、|多《おお》くの|人々《ひとびと》は|身《み》をきよめるために、|祭《まつり》の|前《まえ》に、|地方《ちほう》からエルサレムへ|上《のぼ》った。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はイエスを|捜《さが》し|求《もと》め、|宮《みや》の|庭《にわ》に|立《た》って|互《たがい》に|言《い》った、「あなたがたはどう|思《おも》うか。イエスはこの|祭《まつり》にこないのだろうか」。[#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちとパリサイ|人《びと》たちとは、イエスを|捕《とら》えようとして、そのいどころを|知《し》っている|者《もの》があれば|申《もう》し|出《で》よ、という|指令《しれい》を|出《だ》していた。 第一二章[#「第一二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|過越《すぎこし》の|祭《まつり》の六|日《か》まえに、イエスはベタニヤに|行《い》かれた。そこは、イエスが|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせたラザロのいた|所《ところ》である。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]イエスのためにそこで|夕食《ゆうしょく》の|用意《ようい》がされ、マルタは|給仕《きゅうじ》をしていた。イエスと|一緒《いっしょ》に|食卓《しょくたく》についていた|者《もの》のうちに、ラザロも|加《くわ》わっていた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、マリヤは|高価《こうか》で|純粋《じゅんすい》なナルドの|香油《こうゆ》一|斤《きん》を|持《も》ってきて、イエスの|足《あし》にぬり、|自分《じぶん》の|髪《かみ》の|毛《け》でそれをふいた。すると、|香油《こうゆ》のかおりが|家《いえ》にいっぱいになった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》のひとりで、イエスを|裏切《うらぎ》ろうとしていたイスカリオテのユダが|言《い》った、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]「なぜこの|香油《こうゆ》を三百デナリに|売《う》って、|貧《まず》しい|人《ひと》たちに、|施《ほどこ》さなかったのか」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》がこう|言《い》ったのは、|貧《まず》しい|人《ひと》たちに|対《たい》する|思《おも》いやりがあったからではなく、|自分《じぶん》が|盗人《ぬすびと》であり、|財布《さいふ》を|預《あず》かっていて、その|中身《なかみ》をごまかしていたからであった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|言《い》われた、「この|女《おんな》のするままにさせておきなさい。わたしの|葬《ほうむ》りの|日《ひ》のために、それをとっておいたのだから。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|貧《まず》しい|人《ひと》たちはいつもあなたがたと|共《とも》にいるが、わたしはいつも|共《とも》にいるわけではない」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|大《おお》ぜいのユダヤ|人《じん》たちが、そこにイエスのおられるのを|知《し》って、|押《お》しよせてきた。それはイエスに|会《あ》うためだけではなく、イエスが|死人《しにん》のなかから、よみがえらせたラザロを|見《み》るためでもあった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで|祭司長《さいしちょう》たちは、ラザロも|殺《ころ》そうと|相談《そうだん》した。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]それは、ラザロのことで、|多《おお》くのユダヤ|人《じん》が|彼《かれ》らを|離《はな》れ|去《さ》って、イエスを|信《しん》じるに|至《いた》ったからである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]その|翌日《よくじつ》、|祭《まつり》にきていた|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》は、イエスがエルサレムにこられると|聞《き》いて、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しゅろの|枝《えだ》を|手《て》にとり、|迎《むか》えに|出《で》て|行《い》った。そして|叫《さけ》んだ、 [#ここから2字下げ] 「ホサナ、 |主《しゅ》の|御名《みな》によってきたる|者《もの》に|祝福《しゅくふく》あれ、 イスラエルの|王《おう》に」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、ろばの|子《こ》を|見《み》つけて、その|上《うえ》に|乗《の》られた。それは [#ここから2字下げ] [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]「シオンの|娘《むすめ》よ、|恐《おそ》れるな。 |見《み》よ、あなたの|王《おう》が ろばの|子《こ》に|乗《の》っておいでになる」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるとおりであった。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|初《はじ》めにはこのことを|悟《さと》らなかったが、イエスが|栄光《えいこう》を|受《う》けられた|時《とき》に、このことがイエスについて|書《か》かれてあり、またそのとおりに、|人々《ひとびと》がイエスに|対《たい》してしたのだということを、|思《おも》い|起《おこ》した。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また、イエスがラザロを|墓《はか》から|呼《よ》び|出《だ》して、|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせたとき、イエスと|一緒《いっしょ》にいた|群衆《ぐんしゅう》が、そのあかしをした。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》がイエスを|迎《むか》えに|出《で》たのは、イエスがこのようなしるしを|行《おこな》われたことを、|聞《き》いていたからである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、パリサイ|人《びと》たちは|互《たがい》に|言《い》った、「|何《なに》をしてもむだだった。|世《よ》をあげて|彼《かれ》のあとを|追《お》って|行《い》ったではないか」。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|祭《まつり》で|礼拝《れいはい》するために|上《のぼ》ってきた|人々《ひとびと》のうちに、|数人《すうにん》のギリシヤ|人《じん》がいた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはガリラヤのベツサイダ|出《で》であるピリポのところにきて、「|君《きみ》よ、イエスにお|目《め》にかかりたいのですが」と|言《い》って|頼《たの》んだ。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ピリポはアンデレのところに|行《い》ってそのことを|話《はな》し、アンデレとピリポは、イエスのもとに|行《い》って|伝《つた》えた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「|人《ひと》の|子《こ》が|栄光《えいこう》を|受《う》ける|時《とき》がきた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]よくよくあなたがたに|言《い》っておく。一|粒《つぶ》の|麦《むぎ》が|地《ち》に|落《お》ちて|死《し》ななければ、それはただ一|粒《つぶ》のままである。しかし、もし|死《し》んだなら、|豊《ゆた》かに|実《み》を|結《むす》ぶようになる。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|命《いのち》を|愛《あい》する|者《もの》はそれを|失《うしな》い、この|世《よ》で|自分《じぶん》の|命《いのち》を|憎《にく》む|者《もの》は、それを|保《たも》って|永遠《えいえん》の|命《いのち》に|至《いた》るであろう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしに|仕《つか》えようとする|人《ひと》があれば、その|人《ひと》はわたしに|従《したが》って|来《く》るがよい。そうすれば、わたしのおる|所《ところ》に、わたしに|仕《つか》える|者《もの》もまた、おるであろう。もしわたしに|仕《つか》えようとする|人《ひと》があれば、その|人《ひと》を|父《ちち》は|重《おも》んじて|下《くだ》さるであろう。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》わたしは|心《こころ》が|騒《さわ》いでいる。わたしはなんと|言《い》おうか。|父《ちち》よ、この|時《とき》からわたしをお|救《すく》い|下《くだ》さい。しかし、わたしはこのために、この|時《とき》に|至《いた》ったのです。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》よ、み|名《な》があがめられますように」。すると|天《てん》から|声《こえ》があった、「わたしはすでに|栄光《えいこう》をあらわした。そして、|更《さら》にそれをあらわすであろう」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]すると、そこに|立《た》っていた|群衆《ぐんしゅう》がこれを|聞《き》いて、「|雷《かみなり》がなったのだ」と|言《い》い、ほかの|人《ひと》たちは、「|御使《みつかい》が|彼《かれ》に|話《はな》しかけたのだ」と|言《い》った。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えて|言《い》われた、「この|声《こえ》があったのは、わたしのためではなく、あなたがたのためである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》はこの|世《よ》がさばかれる|時《とき》である。|今《いま》こそこの|世《よ》の|君《きみ》は|追《お》い|出《だ》されるであろう。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そして、わたしがこの|地《ち》から|上《あ》げられる|時《とき》には、すべての|人《ひと》をわたしのところに|引《ひ》きよせるであろう」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこう|言《い》って、|自分《じぶん》がどんな|死《し》に|方《ほう》で|死《し》のうとしていたかを、お|示《しめ》しになったのである。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]すると|群衆《ぐんしゅう》はイエスにむかって|言《い》った、「わたしたちは|律法《りっぽう》によって、キリストはいつまでも|生《い》きておいでになるのだ、と|聞《き》いていました。それだのに、どうして|人《ひと》の|子《こ》は|上《あ》げられねばならないと、|言《い》われるのですか。その|人《ひと》の|子《こ》とは、だれのことですか」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そこでイエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「もうしばらくの|間《あいだ》、|光《ひかり》はあなたがたと|一緒《いっしょ》にここにある。|光《ひかり》がある|間《あいだ》に|歩《ある》いて、やみに|追《お》いつかれないようにしなさい。やみの|中《なか》を|歩《ある》く|者《もの》は、|自分《じぶん》がどこへ|行《い》くのかわかっていない。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|光《ひかり》のある|間《あいだ》に、|光《ひかり》の|子《こ》となるために、|光《ひかり》を|信《しん》じなさい」。  イエスはこれらのことを|話《はな》してから、そこを|立《た》ち|去《さ》って、|彼《かれ》らから|身《み》をお|隠《かく》しになった。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]このように|多《おお》くのしるしを|彼《かれ》らの|前《まえ》でなさったが、|彼《かれ》らはイエスを|信《しん》じなかった。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]それは、|預言者《よげんしゃ》イザヤの|次《つぎ》の|言葉《ことば》が|成就《じょうじゅ》するためである、「|主《しゅ》よ、わたしたちの|説《と》くところを、だれが|信《しん》じたでしょうか。また、|主《しゅ》のみ|腕《うで》はだれに|示《しめ》されたでしょうか」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、|彼《かれ》らは|信《しん》じることができなかった。イザヤはまた、こうも|言《い》った、[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]「|神《かみ》は|彼《かれ》らの|目《め》をくらまし、|心《こころ》をかたくなになさった。それは、|彼《かれ》らが|目《め》で|見《み》ず、|心《こころ》で|悟《さと》らず、|悔《く》い|改《あらた》めていやされることがないためである」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]イザヤがこう|言《い》ったのは、イエスの|栄光《えいこう》を|見《み》たからであって、イエスのことを|語《かた》ったのである。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|役人《やくにん》たちの|中《なか》にも、イエスを|信《しん》じた|者《もの》が|多《おお》かったが、パリサイ|人《びと》をはばかって、|告白《こくはく》はしなかった。|会堂《かいどう》から|追《お》い|出《だ》されるのを|恐《おそ》れていたのである。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|神《かみ》のほまれよりも、|人《ひと》のほまれを|好《この》んだからである。  [#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|大声《おおごえ》で|言《い》われた、「わたしを|信《しん》じる|者《もの》は、わたしを|信《しん》じるのではなく、わたしをつかわされたかたを|信《しん》じるのであり、[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしを|見《み》る|者《もの》は、わたしをつかわされたかたを|見《み》るのである。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|光《ひかり》としてこの|世《よ》にきた。それは、わたしを|信《しん》じる|者《もの》が、やみのうちにとどまらないようになるためである。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]たとい、わたしの|言《い》うことを|聞《き》いてそれを|守《まも》らない|人《ひと》があっても、わたしはその|人《ひと》をさばかない。わたしがきたのは、この|世《よ》をさばくためではなく、この|世《よ》を|救《すく》うためである。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]わたしを|捨《す》てて、わたしの|言葉《ことば》を|受《う》けいれない|人《ひと》には、その|人《ひと》をさばくものがある。わたしの|語《かた》ったその|言葉《ことば》が、|終《おわ》りの|日《ひ》にその|人《ひと》をさばくであろう。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|自分《じぶん》から|語《かた》ったのではなく、わたしをつかわされた|父《ちち》ご|自身《じしん》が、わたしの|言《い》うべきこと、|語《かた》るべきことをお|命《めい》じになったのである。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、この|命令《めいれい》が|永遠《えいえん》の|命《いのち》であることを|知《し》っている。それゆえに、わたしが|語《かた》っていることは、わたしの|父《ちち》がわたしに|仰《おお》せになったことを、そのまま|語《かた》っているのである」。 第一三章[#「第一三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|過越《すぎこし》の|祭《まつり》の|前《まえ》に、イエスは、この|世《よ》を|去《さ》って|父《ちち》のみもとに|行《い》くべき|自分《じぶん》の|時《とき》がきたことを|知《し》り、|世《よ》にいる|自分《じぶん》の|者《もの》たちを|愛《あい》して、|彼《かれ》らを|最後《さいご》まで|愛《あい》し|通《とお》された。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|夕食《ゆうしょく》のとき、|悪魔《あくま》はすでにシモンの|子《こ》イスカリオテのユダの|心《こころ》に、イエスを|裏切《うらぎ》ろうとする|思《おも》いを|入《い》れていたが、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、|父《ちち》がすべてのものを|自分《じぶん》の|手《て》にお|与《あた》えになったこと、また、|自分《じぶん》は|神《かみ》から|出《で》てきて、|神《かみ》にかえろうとしていることを|思《おも》い、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|夕食《ゆうしょく》の|席《せき》から|立《た》ち|上《あ》がって、|上着《うわぎ》を|脱《ぬ》ぎ、|手《て》ぬぐいをとって|腰《こし》に|巻《ま》き、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それから|水《みず》をたらいに|入《い》れて、|弟子《でし》たちの|足《あし》を|洗《あら》い、|腰《こし》に|巻《ま》いた|手《て》ぬぐいでふき|始《はじ》められた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]こうして、シモン・ペテロの|番《ばん》になった。すると|彼《かれ》はイエスに、「|主《しゅ》よ、あなたがわたしの|足《あし》をお|洗《あら》いになるのですか」と|言《い》った。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|答《こた》えて|言《い》われた、「わたしのしていることは|今《いま》あなたにはわからないが、あとでわかるようになるだろう」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはイエスに|言《い》った、「わたしの|足《あし》を|決《けっ》して|洗《あら》わないで|下《くだ》さい」。イエスは|彼《かれ》に|答《こた》えられた、「もしわたしがあなたの|足《あし》を|洗《あら》わないなら、あなたはわたしとなんの|係《かか》わりもなくなる」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロはイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、では、|足《あし》だけではなく、どうぞ、|手《て》も|頭《あたま》も」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「すでにからだを|洗《あら》った|者《もの》は、|足《あし》のほかは|洗《あら》う|必要《ひつよう》がない。|全身《ぜんしん》がきれいなのだから。あなたがたはきれいなのだ。しかし、みんながそうなのではない」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|自分《じぶん》を|裏切《うらぎ》る|者《もの》を|知《し》っておられた。それで、「みんながきれいなのではない」と|言《い》われたのである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]こうして|彼《かれ》らの|足《あし》を|洗《あら》ってから、|上着《うわぎ》をつけ、ふたたび|席《せき》にもどって、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしがあなたがたにしたことがわかるか。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはわたしを|教師《きょうし》、また|主《しゅ》と|呼《よ》んでいる。そう|言《い》うのは|正《ただ》しい。わたしはそのとおりである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|主《しゅ》であり、また|教師《きょうし》であるわたしが、あなたがたの|足《あし》を|洗《あら》ったからには、あなたがたもまた、|互《たがい》に|足《あし》を|洗《あら》い|合《あ》うべきである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあなたがたにしたとおりに、あなたがたもするように、わたしは|手本《てほん》を|示《しめ》したのだ。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]よくよくあなたがたに|言《い》っておく。|僕《しもべ》はその|主人《しゅじん》にまさるものではなく、つかわされた|者《もの》はつかわした|者《もの》にまさるものではない。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]もしこれらのことがわかっていて、それを|行《おこな》うなら、あなたがたはさいわいである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがた|全部《ぜんぶ》の|者《もの》について、こう|言《い》っているのではない。わたしは|自分《じぶん》が|選《えら》んだ|人《ひと》たちを|知《し》っている。しかし、『わたしのパンを|食《た》べている|者《もの》が、わたしにむかってそのかかとをあげた』とある|聖書《せいしょ》は|成就《じょうじゅ》されなければならない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そのことがまだ|起《おこ》らない|今《いま》のうちに、あなたがたに|言《い》っておく。いよいよ|事《こと》が|起《おこ》ったとき、わたしがそれであることを、あなたがたが|信《しん》じるためである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]よくよくあなたがたに|言《い》っておく。わたしがつかわす|者《もの》を|受《う》けいれる|者《もの》は、わたしを|受《う》けいれるのである。わたしを|受《う》けいれる|者《もの》は、わたしをつかわされたかたを、|受《う》けいれるのである」。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエスがこれらのことを|言《い》われた|後《のち》、その|心《こころ》が|騒《さわ》ぎ、おごそかに|言《い》われた、「よくよくあなたがたに|言《い》っておく。あなたがたのうちのひとりが、わたしを|裏切《うらぎ》ろうとしている」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちはだれのことを|言《い》われたのか|察《さっ》しかねて、|互《たがい》に|顔《かお》を|見合《みあ》わせた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちのひとりで、イエスの|愛《あい》しておられた|者《もの》が、み|胸《むね》に|近《ちか》く|席《せき》についていた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、シモン・ペテロは|彼《かれ》に|合図《あいず》をして|言《い》った、「だれのことをおっしゃったのか、|知《し》らせてくれ」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]その|弟子《でし》はそのままイエスの|胸《むね》によりかかって、「|主《しゅ》よ、だれのことですか」と|尋《たず》ねると、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「わたしが一きれの|食物《しょくもつ》をひたして|与《あた》える|者《もの》が、それである」。そして、一きれの|食物《しょくもつ》をひたしてとり|上《あ》げ、シモンの|子《こ》イスカリオテのユダにお|与《あた》えになった。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]この一きれの|食物《しょくもつ》を|受《う》けるやいなや、サタンがユダにはいった。そこでイエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「しようとしていることを、|今《いま》すぐするがよい」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|席《せき》を|共《とも》にしていた|者《もの》のうち、なぜユダにこう|言《い》われたのか、わかっていた|者《もの》はひとりもなかった。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]ある|人々《ひとびと》は、ユダが|金入《かねい》れをあずかっていたので、イエスが|彼《かれ》に、「|祭《まつり》のために|必要《ひつよう》なものを|買《か》え」と|言《い》われたか、あるいは、|貧《まず》しい|者《もの》に|何《なに》か|施《ほどこ》させようとされたのだと|思《おも》っていた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]ユダは一きれの|食物《しょくもつ》を|受《う》けると、すぐに|出《で》て|行《い》った。|時《とき》は|夜《よる》であった。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|彼《かれ》が|出《で》て|行《い》くと、イエスは|言《い》われた、「|今《いま》や|人《ひと》の|子《こ》は|栄光《えいこう》を|受《う》けた。|神《かみ》もまた|彼《かれ》によって|栄光《えいこう》をお|受《う》けになった。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》によって|栄光《えいこう》をお|受《う》けになったのなら、|神《かみ》ご|自身《じしん》も|彼《かれ》に|栄光《えいこう》をお|授《さづ》けになるであろう。すぐにもお|授《さづ》けになるであろう。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|子《こ》たちよ、わたしはまだしばらく、あなたがたと|一緒《いっしょ》にいる。あなたがたはわたしを|捜《さが》すだろうが、すでにユダヤ|人《じん》たちに|言《い》ったとおり、|今《いま》あなたがたにも|言《い》う、『あなたがたはわたしの|行《い》く|所《ところ》に|来《く》ることはできない』。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|新《あたら》しいいましめをあなたがたに|与《あた》える、|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》いなさい。わたしがあなたがたを|愛《あい》したように、あなたがたも|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》いなさい。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》うならば、それによって、あなたがたがわたしの|弟子《でし》であることを、すべての|者《もの》が|認《みと》めるであろう」。  [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロがイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、どこへおいでになるのですか」。イエスは|答《こた》えられた、「あなたはわたしの|行《い》くところに、|今《いま》はついて|来《く》ることはできない。しかし、あとになってから、ついて|来《く》ることになろう」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、なぜ、|今《いま》あなたについて|行《い》くことができないのですか。あなたのためには、|命《いのち》も|捨《す》てます」。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「わたしのために|命《いのち》を|捨《す》てると|言《い》うのか。よくよくあなたに|言《い》っておく。|鶏《にわとり》が|鳴《な》く|前《まえ》に、あなたはわたしを三|度《ど》|知《し》らないと|言《い》うであろう」。 第一四章[#「第一四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]「あなたがたは、|心《こころ》を|騒《さわ》がせないがよい。|神《かみ》を|信《しん》じ、またわたしを|信《しん》じなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|父《ちち》の|家《いえ》には、すまいがたくさんある。もしなかったならば、わたしはそう|言《い》っておいたであろう。あなたがたのために、|場所《ばしょ》を|用意《ようい》しに|行《い》くのだから。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そして、|行《い》って、|場所《ばしょ》の|用意《ようい》ができたならば、またきて、あなたがたをわたしのところに|迎《むか》えよう。わたしのおる|所《ところ》にあなたがたもおらせるためである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしがどこへ|行《い》くのか、その|道《みち》はあなたがたにわかっている」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]トマスはイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、どこへおいでになるのか、わたしたちにはわかりません。どうしてその|道《みち》がわかるでしょう」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「わたしは|道《みち》であり、|真理《しんり》であり、|命《いのち》である。だれでもわたしによらないでは、|父《ちち》のみもとに|行《い》くことはできない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたがたがわたしを|知《し》っていたならば、わたしの|父《ちち》をも|知《し》ったであろう。しかし、|今《いま》は|父《ちち》を|知《し》っており、またすでに|父《ちち》を|見《み》たのである」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ピリポはイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、わたしたちに|父《ちち》を|示《しめ》して|下《くだ》さい。そうして|下《くだ》されば、わたしたちは|満足《まんぞく》します」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「ピリポよ、こんなに|長《なが》くあなたがたと|一緒《いっしょ》にいるのに、わたしがわかっていないのか。わたしを|見《み》た|者《もの》は、|父《ちち》を|見《み》たのである。どうして、わたしたちに|父《ちち》を|示《しめ》してほしいと、|言《い》うのか。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|父《ちち》におり、|父《ちち》がわたしにおられることをあなたは|信《しん》じないのか。わたしがあなたがたに|話《はな》している|言葉《ことば》は、|自分《じぶん》から|話《はな》しているのではない。|父《ちち》がわたしのうちにおられて、みわざをなさっているのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|父《ちち》におり、|父《ちち》がわたしにおられることを|信《しん》じなさい。もしそれが|信《しん》じられないならば、わざそのものによって|信《しん》じなさい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]よくよくあなたがたに|言《い》っておく。わたしを|信《しん》じる|者《もの》は、またわたしのしているわざをするであろう。そればかりか、もっと|大《おお》きいわざをするであろう。わたしが|父《ちち》のみもとに|行《い》くからである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|名《な》によって|願《ねが》うことは、なんでもかなえてあげよう。|父《ちち》が|子《こ》によって|栄光《えいこう》をお|受《う》けになるためである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|何事《なにごと》でもわたしの|名《な》によって|願《ねが》うならば、わたしはそれをかなえてあげよう。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたがたがわたしを|愛《あい》するならば、わたしのいましめを|守《まも》るべきである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|父《ちち》にお|願《ねが》いしよう。そうすれば、|父《ちち》は|別《べつ》に|助《たす》け|主《ぬし》を|送《おく》って、いつまでもあなたがたと|共《とも》におらせて|下《くだ》さるであろう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それは|真理《しんり》の|御霊《みたま》である。この|世《よ》はそれを|見《み》ようともせず、|知《し》ろうともしないので、それを|受《う》けることができない。あなたがたはそれを|知《し》っている。なぜなら、それはあなたがたと|共《とも》におり、またあなたがたのうちにいるからである。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしはあなたがたを|捨《す》てて|孤児《こじ》とはしない。あなたがたのところに|帰《かえ》って|来《く》る。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]もうしばらくしたら、|世《よ》はもはやわたしを|見《み》なくなるだろう。しかし、あなたがたはわたしを|見《み》る。わたしが|生《い》きるので、あなたがたも|生《い》きるからである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には、わたしはわたしの|父《ちち》におり、あなたがたはわたしにおり、また、わたしがあなたがたにおることが、わかるであろう。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしのいましめを|心《こころ》にいだいてこれを|守《まも》る|者《もの》は、わたしを|愛《あい》する|者《もの》である。わたしを|愛《あい》する|者《もの》は、わたしの|父《ちち》に|愛《あい》されるであろう。わたしもその|人《ひと》を|愛《あい》し、その|人《ひと》にわたし|自身《じしん》をあらわすであろう」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イスカリオテでない|方《ほう》のユダがイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、あなたご|自身《じしん》をわたしたちにあらわそうとして、|世《よ》にはあらわそうとされないのはなぜですか」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|答《こた》えて|言《い》われた、「もしだれでもわたしを|愛《あい》するならば、わたしの|言葉《ことば》を|守《まも》るであろう。そして、わたしの|父《ちち》はその|人《ひと》を|愛《あい》し、また、わたしたちはその|人《ひと》のところに|行《い》って、その|人《ひと》と|一緒《いっしょ》に|住《す》むであろう。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]わたしを|愛《あい》さない|者《もの》はわたしの|言葉《ことば》を|守《まも》らない。あなたがたが|聞《き》いている|言葉《ことば》は、わたしの|言葉《ことば》ではなく、わたしをつかわされた|父《ちち》の|言葉《ことば》である。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]これらのことは、あなたがたと|一緒《いっしょ》にいた|時《とき》、すでに|語《かた》ったことである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|助《たす》け|主《ぬし》、すなわち、|父《ちち》がわたしの|名《な》によってつかわされる|聖霊《せいれい》は、あなたがたにすべてのことを|教《おし》え、またわたしが|話《はな》しておいたことを、ことごとく|思《おも》い|起《おこ》させるであろう。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|平安《へいあん》をあなたがたに|残《のこ》して|行《い》く。わたしの|平安《へいあん》をあなたがたに|与《あた》える。わたしが|与《あた》えるのは、|世《よ》が|与《あた》えるようなものとは|異《こと》なる。あなたがたは|心《こころ》を|騒《さわ》がせるな、またおじけるな。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]『わたしは|去《さ》って|行《い》くが、またあなたがたのところに|帰《かえ》って|来《く》る』と、わたしが|言《い》ったのを、あなたがたは|聞《き》いている。もしわたしを|愛《あい》しているなら、わたしが|父《ちち》のもとに|行《い》くのを|喜《よろこ》んでくれるであろう。|父《ちち》がわたしより|大《おお》きいかたであるからである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》わたしは、そのことが|起《おこ》らない|先《さき》にあなたがたに|語《かた》った。それは、|事《こと》が|起《おこ》った|時《とき》にあなたがたが|信《しん》じるためである。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしはもはや、あなたがたに、|多《おお》くを|語《かた》るまい。この|世《よ》の|君《きみ》が|来《く》るからである。だが、|彼《かれ》はわたしに|対《たい》して、なんの|力《ちから》もない。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしが|父《ちち》を|愛《あい》していることを|世《よ》が|知《し》るように、わたしは|父《ちち》がお|命《めい》じになったとおりのことを|行《おこな》うのである。|立《た》て。さあ、ここから|出《で》かけて|行《い》こう。 第一五章[#「第一五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまことのぶどうの|木《き》、わたしの|父《ちち》は|農夫《のうふ》である。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしにつながっている|枝《えだ》で|実《み》を|結《むす》ばないものは、|父《ちち》がすべてこれをとりのぞき、|実《み》を|結《むす》ぶものは、もっと|豊《ゆた》かに|実《みの》らせるために、|手入《てい》れしてこれをきれいになさるのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わたしが|語《かた》った|言葉《ことば》によって|既《すで》にきよくされている。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしにつながっていなさい。そうすれば、わたしはあなたがたとつながっていよう。|枝《えだ》がぶどうの|木《き》につながっていなければ、|自分《じぶん》だけでは|実《み》を|結《むす》ぶことができないように、あなたがたもわたしにつながっていなければ|実《み》を|結《むす》ぶことができない。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしはぶどうの|木《き》、あなたがたはその|枝《えだ》である。もし|人《ひと》がわたしにつながっており、またわたしがその|人《ひと》とつながっておれば、その|人《ひと》は|実《み》を|豊《ゆた》かに|結《むす》ぶようになる。わたしから|離《はな》れては、あなたがたは|何一《なにひと》つできないからである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》がわたしにつながっていないならば、|枝《えだ》のように|外《そと》に|投《な》げすてられて|枯《か》れる。|人々《ひとびと》はそれをかき|集《あつ》め、|火《ひ》に|投《な》げ|入《い》れて、|焼《や》いてしまうのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたがわたしにつながっており、わたしの|言葉《ことば》があなたがたにとどまっているならば、なんでも|望《のぞ》むものを|求《もと》めるがよい。そうすれば、|与《あた》えられるであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|実《み》を|豊《ゆた》かに|結《むす》び、そしてわたしの|弟子《でし》となるならば、それによって、わたしの|父《ちち》は|栄光《えいこう》をお|受《う》けになるであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》がわたしを|愛《あい》されたように、わたしもあなたがたを|愛《あい》したのである。わたしの|愛《あい》のうちにいなさい。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしのいましめを|守《まも》るならば、あなたがたはわたしの|愛《あい》のうちにおるのである。それはわたしがわたしの|父《ちち》のいましめを|守《まも》ったので、その|愛《あい》のうちにおるのと|同《おな》じである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしがこれらのことを|話《はな》したのは、わたしの|喜《よろこ》びがあなたがたのうちにも|宿《やど》るため、また、あなたがたの|喜《よろこ》びが|満《み》ちあふれるためである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしのいましめは、これである。わたしがあなたがたを|愛《あい》したように、あなたがたも|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》いなさい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》がその|友《とも》のために|自分《じぶん》の|命《いのち》を|捨《す》てること、これよりも|大《おお》きな|愛《あい》はない。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたにわたしが|命《めい》じることを|行《おこな》うならば、あなたがたはわたしの|友《とも》である。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしはもう、あなたがたを|僕《しもべ》とは|呼《よ》ばない。|僕《しもべ》は|主人《しゅじん》のしていることを|知《し》らないからである。わたしはあなたがたを|友《とも》と|呼《よ》んだ。わたしの|父《ちち》から|聞《き》いたことを|皆《みな》、あなたがたに|知《し》らせたからである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたがわたしを|選《えら》んだのではない。わたしがあなたがたを|選《えら》んだのである。そして、あなたがたを|立《た》てた。それは、あなたがたが|行《い》って|実《み》をむすび、その|実《み》がいつまでも|残《のこ》るためであり、また、あなたがたがわたしの|名《な》によって|父《ちち》に|求《もと》めるものはなんでも、|父《ちち》が|与《あた》えて|下《くだ》さるためである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]これらのことを|命《めい》じるのは、あなたがたが|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》うためである。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]もしこの|世《よ》があなたがたを|憎《にく》むならば、あなたがたよりも|先《さき》にわたしを|憎《にく》んだことを、|知《し》っておくがよい。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたがたがこの|世《よ》から|出《で》たものであったなら、この|世《よ》は、あなたがたを|自分《じぶん》のものとして|愛《あい》したであろう。しかし、あなたがたはこの|世《よ》のものではない。かえって、わたしがあなたがたをこの|世《よ》から|選《えら》び|出《だ》したのである。だから、この|世《よ》はあなたがたを|憎《にく》むのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあなたがたに『|僕《しもべ》はその|主人《しゅじん》にまさるものではない』と|言《い》ったことを、おぼえていなさい。もし|人々《ひとびと》がわたしを|迫害《はくがい》したなら、あなたがたをも|迫害《はくがい》するであろう。また、もし|彼《かれ》らがわたしの|言葉《ことば》を|守《まも》っていたなら、あなたがたの|言葉《ことば》をも|守《まも》るであろう。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはわたしの|名《な》のゆえに、あなたがたに|対《たい》してすべてそれらのことをするであろう。それは、わたしをつかわされたかたを|彼《かれ》らが|知《し》らないからである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしがきて|彼《かれ》らに|語《かた》らなかったならば、|彼《かれ》らは|罪《つみ》を|犯《おか》さないですんだであろう。しかし|今《いま》となっては、|彼《かれ》らには、その|罪《つみ》について|言《い》いのがれる|道《みち》がない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]わたしを|憎《にく》む|者《もの》は、わたしの|父《ちち》をも|憎《にく》む。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]もし、ほかのだれもがしなかったようなわざを、わたしが|彼《かれ》らの|間《あいだ》でしなかったならば、|彼《かれ》らは|罪《つみ》を|犯《おか》さないですんだであろう。しかし|事実《じじつ》、|彼《かれ》らはわたしとわたしの|父《ちち》とを|見《み》て、|憎《にく》んだのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]それは、『|彼《かれ》らは|理由《りゆう》なしにわたしを|憎《にく》んだ』と|書《か》いてある|彼《かれ》らの|律法《りっぽう》の|言葉《ことば》が|成就《じょうじゅ》するためである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|父《ちち》のみもとからあなたがたにつかわそうとしている|助《たす》け|主《ぬし》、すなわち、|父《ちち》のみもとから|来《く》る|真理《しんり》の|御霊《みたま》が|下《くだ》る|時《とき》、それはわたしについてあかしをするであろう。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたも、|初《はじ》めからわたしと|一緒《いっしょ》にいたのであるから、あかしをするのである。 第一六章[#「第一六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしがこれらのことを|語《かた》ったのは、あなたがたがつまずくことのないためである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はあなたがたを|会堂《かいどう》から|追《お》い|出《だ》すであろう。|更《さら》にあなたがたを|殺《ころ》す|者《もの》がみな、それによって|自分《じぶん》たちは|神《かみ》に|仕《つか》えているのだと|思《おも》う|時《とき》が|来《く》るであろう。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがそのようなことをするのは、|父《ちち》をもわたしをも|知《し》らないからである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあなたがたにこれらのことを|言《い》ったのは、|彼《かれ》らの|時《とき》がきた|場合《ばあい》、わたしが|彼《かれ》らについて|言《い》ったことを、|思《おも》い|起《おこ》させるためである。これらのことを|初《はじ》めから|言《い》わなかったのは、わたしがあなたがたと|一緒《いっしょ》にいたからである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]けれども|今《いま》わたしは、わたしをつかわされたかたのところに|行《い》こうとしている。しかし、あなたがたのうち、だれも『どこへ|行《い》くのか』と|尋《たず》ねる|者《もの》はない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]かえって、わたしがこれらのことを|言《い》ったために、あなたがたの|心《こころ》は|憂《うれ》いで|満《み》たされている。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしはほんとうのことをあなたがたに|言《い》うが、わたしが|去《さ》って|行《い》くことは、あなたがたの|益《えき》になるのだ。わたしが|去《さ》って|行《い》かなければ、あなたがたのところに|助《たす》け|主《ぬし》はこないであろう。もし|行《い》けば、それをあなたがたにつかわそう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それがきたら、|罪《つみ》と|義《ぎ》とさばきとについて、|世《よ》の|人《ひと》の|目《め》を|開《ひら》くであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|罪《つみ》についてと|言《い》ったのは、|彼《かれ》らがわたしを|信《しん》じないからである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|義《ぎ》についてと|言《い》ったのは、わたしが|父《ちち》のみもとに|行《い》き、あなたがたは、もはやわたしを|見《み》なくなるからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]さばきについてと|言《い》ったのは、この|世《よ》の|君《きみ》がさばかれるからである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしには、あなたがたに|言《い》うべきことがまだ|多《おお》くあるが、あなたがたは|今《いま》はそれに|堪《た》えられない。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]けれども|真理《しんり》の|御霊《みたま》が|来《く》る|時《とき》には、あなたがたをあらゆる|真理《しんり》に|導《みちび》いてくれるであろう。それは|自分《じぶん》から|語《かた》るのではなく、その|聞《き》くところを|語《かた》り、きたるべき|事《こと》をあなたがたに|知《し》らせるであろう。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|御霊《みたま》はわたしに|栄光《えいこう》を|得《え》させるであろう。わたしのものを|受《う》けて、それをあなたがたに|知《し》らせるからである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》がお|持《も》ちになっているものはみな、わたしのものである。|御霊《みたま》はわたしのものを|受《う》けて、それをあなたがたに|知《し》らせるのだと、わたしが|言《い》ったのは、そのためである。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しばらくすれば、あなたがたはもうわたしを|見《み》なくなる。しかし、またしばらくすれば、わたしに|会《あ》えるであろう」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|弟子《でし》たちのうちのある|者《もの》は|互《たがい》に|言《い》い|合《あ》った、「『しばらくすれば、わたしを|見《み》なくなる。またしばらくすれば、わたしに|会《あ》えるであろう』と|言《い》われ、『わたしの|父《ちち》のところに|行《い》く』と|言《い》われたのは、いったい、どういうことなのであろう」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはまた|言《い》った、「『しばらくすれば』と|言《い》われるのは、どういうことか。わたしたちには、その|言葉《ことば》の|意味《いみ》がわからない」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、|彼《かれ》らが|尋《たず》ねたがっていることに|気《き》がついて、|彼《かれ》らに|言《い》われた、「しばらくすればわたしを|見《み》なくなる、またしばらくすればわたしに|会《あ》えるであろうと、わたしが|言《い》ったことで、|互《たがい》に|論《ろん》じ|合《あ》っているのか。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]よくよくあなたがたに|言《い》っておく。あなたがたは|泣《な》き|悲《かな》しむが、この|世《よ》は|喜《よろこ》ぶであろう。あなたがたは|憂《うれ》えているが、その|憂《うれ》いは|喜《よろこ》びに|変《かわ》るであろう。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》が|子《こ》を|産《う》む|場合《ばあい》には、その|時《とき》がきたというので、|不安《ふあん》を|感《かん》じる。しかし、|子《こ》を|産《う》んでしまえば、もはやその|苦《くる》しみをおぼえてはいない。ひとりの|人《ひと》がこの|世《よ》に|生《うま》れた、という|喜《よろこ》びがあるためである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]このように、あなたがたにも|今《いま》は|不安《ふあん》がある。しかし、わたしは|再《ふたた》びあなたがたと|会《あ》うであろう。そして、あなたがたの|心《こころ》は|喜《よろこ》びに|満《み》たされるであろう。その|喜《よろこ》びをあなたがたから|取《と》り|去《さ》る|者《もの》はいない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には、あなたがたがわたしに|問《と》うことは、|何《なに》もないであろう。よくよくあなたがたに|言《い》っておく。あなたがたが|父《ちち》に|求《もと》めるものはなんでも、わたしの|名《な》によって|下《くだ》さるであろう。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》までは、あなたがたはわたしの|名《な》によって|求《もと》めたことはなかった。|求《もと》めなさい、そうすれば、|与《あた》えられるであろう。そして、あなたがたの|喜《よろこ》びが|満《み》ちあふれるであろう。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]わたしはこれらのことを|比喩《ひゆ》で|話《はな》したが、もはや|比喩《ひゆ》では|話《はな》さないで、あからさまに、|父《ちち》のことをあなたがたに|話《はな》してきかせる|時《とき》が|来《く》るであろう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》には、あなたがたは、わたしの|名《な》によって|求《もと》めるであろう。わたしは、あなたがたのために|父《ちち》に|願《ねが》ってあげようとは|言《い》うまい。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》ご|自身《じしん》があなたがたを|愛《あい》しておいでになるからである。それは、あなたがたがわたしを|愛《あい》したため、また、わたしが|神《かみ》のみもとからきたことを|信《しん》じたためである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|父《ちち》から|出《で》てこの|世《よ》にきたが、またこの|世《よ》を|去《さ》って、|父《ちち》のみもとに|行《い》くのである」。  [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは|言《い》った、「|今《いま》はあからさまにお|話《はな》しになって、|少《すこ》しも|比喩《ひゆ》ではお|話《はな》しになりません。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたはすべてのことをご|存《ぞん》じであり、だれもあなたにお|尋《たず》ねする|必要《ひつよう》のないことが、|今《いま》わかりました。このことによって、わたしたちはあなたが|神《かみ》からこられたかたであると|信《しん》じます」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「あなたがたは|今《いま》|信《しん》じているのか。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、あなたがたは|散《ち》らされて、それぞれ|自分《じぶん》の|家《いえ》に|帰《かえ》り、わたしをひとりだけ|残《のこ》す|時《とき》が|来《く》るであろう。いや、すでにきている。しかし、わたしはひとりでいるのではない。|父《ちち》がわたしと|一緒《いっしょ》におられるのである。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]これらのことをあなたがたに|話《はな》したのは、わたしにあって|平安《へいあん》を|得《え》るためである。あなたがたは、この|世《よ》ではなやみがある。しかし、|勇気《ゆうき》を|出《だ》しなさい。わたしはすでに|世《よ》に|勝《か》っている」。 第一七章[#「第一七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]これらのことを|語《かた》り|終《お》えると、イエスは|天《てん》を|見《み》あげて|言《い》われた、「|父《ちち》よ、|時《とき》がきました。あなたの|子《こ》があなたの|栄光《えいこう》をあらわすように、|子《こ》の|栄光《えいこう》をあらわして|下《くだ》さい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、|子《こ》に|賜《たま》わったすべての|者《もの》に、|永遠《えいえん》の|命《いのち》を|授《さづ》けさせるため、|万民《ばんみん》を|支配《しはい》する|権威《けんい》を|子《こ》にお|与《あた》えになったのですから。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|永遠《えいえん》の|命《いのち》とは、|唯一《ゆいいつ》の、まことの|神《かみ》でいますあなたと、また、あなたがつかわされたイエス・キリストとを|知《し》ることであります。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、わたしにさせるためにお|授《さづ》けになったわざをなし|遂《と》げて、|地上《ちじょう》であなたの|栄光《えいこう》をあらわしました。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》よ、|世《よ》が|造《つく》られる|前《まえ》に、わたしがみそばで|持《も》っていた|栄光《えいこう》で、|今《いま》み|前《まえ》にわたしを|輝《かがや》かせて|下《くだ》さい。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたが|世《よ》から|選《えら》んでわたしに|賜《たま》わった|人々《ひとびと》に、み|名《な》をあらわしました。|彼《かれ》らはあなたのものでありましたが、わたしに|下《くだ》さいました。そして、|彼《かれ》らはあなたの|言葉《ことば》を|守《まも》りました。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]いま|彼《かれ》らは、わたしに|賜《たま》わったものはすべて、あなたから|出《で》たものであることを|知《し》りました。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、わたしはあなたからいただいた|言葉《ことば》を|彼《かれ》らに|与《あた》え、そして|彼《かれ》らはそれを|受《う》け、わたしがあなたから|出《で》たものであることをほんとうに|知《し》り、また、あなたがわたしをつかわされたことを|信《しん》じるに|至《いた》ったからです。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|彼《かれ》らのためにお|願《ねが》いします。わたしがお|願《ねが》いするのは、この|世《よ》のためにではなく、あなたがわたしに|賜《たま》わった|者《もの》たちのためです。|彼《かれ》らはあなたのものなのです。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしのものは|皆《みな》あなたのもの、あなたのものはわたしのものです。そして、わたしは|彼《かれ》らによって|栄光《えいこう》を|受《う》けました。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしはもうこの|世《よ》にはいなくなりますが、|彼《かれ》らはこの|世《よ》に|残《のこ》っており、わたしはみもとに|参《まい》ります。|聖《せい》なる|父《ちち》よ、わたしに|賜《たま》わった|御名《みな》によって|彼《かれ》らを|守《まも》って|下《くだ》さい。それはわたしたちが一つであるように、|彼《かれ》らも一つになるためであります。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》にいた|間《あいだ》は、あなたからいただいた|御名《みな》によって|彼《かれ》らを|守《まも》り、また|保護《ほご》してまいりました。|彼《かれ》らのうち、だれも|滅《ほろ》びず、ただ|滅《ほろ》びの|子《こ》だけが|滅《ほろ》びました。それは|聖書《せいしょ》が|成就《じょうじゅ》するためでした。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》わたしはみもとに|参《まい》ります。そして|世《よ》にいる|間《あいだ》にこれらのことを|語《かた》るのは、わたしの|喜《よろこ》びが|彼《かれ》らのうちに|満《み》ちあふれるためであります。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|彼《かれ》らに|御言《みことば》を|与《あた》えましたが、|世《よ》は|彼《かれ》らを|憎《にく》みました。わたしが|世《よ》のものでないように、|彼《かれ》らも|世《よ》のものではないからです。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしがお|願《ねが》いするのは、|彼《かれ》らを|世《よ》から|取《と》り|去《さ》ることではなく、|彼《かれ》らを|悪《あ》しき|者《もの》から|守《まも》って|下《くだ》さることであります。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|世《よ》のものでないように、|彼《かれ》らも|世《よ》のものではありません。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|真理《しんり》によって|彼《かれ》らを|聖《せい》|別《べつ》して|下《くだ》さい。あなたの|御言《みことば》は|真理《しんり》であります。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがわたしを|世《よ》につかわされたように、わたしも|彼《かれ》らを|世《よ》につかわしました。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また|彼《かれ》らが|真理《しんり》によって|聖《せい》|別《べつ》されるように、|彼《かれ》らのためわたし|自身《じしん》を|聖《せい》|別《べつ》いたします。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|彼《かれ》らのためばかりではなく、|彼《かれ》らの|言葉《ことば》を|聞《き》いてわたしを|信《しん》じている|人々《ひとびと》のためにも、お|願《ねが》いいたします。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》よ、それは、あなたがわたしのうちにおられ、わたしがあなたのうちにいるように、みんなの|者《もの》が一つとなるためであります。すなわち、|彼《かれ》らをもわたしたちのうちにおらせるためであり、それによって、あなたがわたしをおつかわしになったことを、|世《よ》が|信《しん》じるようになるためであります。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたからいただいた|栄光《えいこう》を|彼《かれ》らにも|与《あた》えました。それは、わたしたちが一つであるように、|彼《かれ》らも一つになるためであります。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|彼《かれ》らにおり、あなたがわたしにいますのは、|彼《かれ》らが|完全《かんぜん》に一つとなるためであり、また、あなたがわたしをつかわし、わたしを|愛《あい》されたように、|彼《かれ》らをお|愛《あい》しになったことを、|世《よ》が|知《し》るためであります。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》よ、あなたがわたしに|賜《たま》わった|人々《ひとびと》が、わたしのいる|所《ところ》に|一緒《いっしょ》にいるようにして|下《くだ》さい。|天地《てんち》が|造《つく》られる|前《まえ》からわたしを|愛《あい》して|下《くだ》さって、わたしに|賜《たま》わった|栄光《えいこう》を、|彼《かれ》らに|見《み》させて|下《くだ》さい。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|正《ただ》しい|父《ちち》よ、この|世《よ》はあなたを|知《し》っていません。しかし、わたしはあなたを|知《し》り、また|彼《かれ》らも、あなたがわたしをおつかわしになったことを|知《し》っています。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そしてわたしは|彼《かれ》らに|御名《みな》を|知《し》らせました。またこれからも|知《し》らせましょう。それは、あなたがわたしを|愛《あい》して|下《くだ》さったその|愛《あい》が|彼《かれ》らのうちにあり、またわたしも|彼《かれ》らのうちにおるためであります」。 第一八章[#「第一八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはこれらのことを|語《かた》り|終《お》えて、|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》にケデロンの|谷《たに》の|向《む》こうへ|行《い》かれた。そこには|園《その》があって、イエスは|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》にその|中《なか》にはいられた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]イエスを|裏切《うらぎ》ったユダは、その|所《ところ》をよく|知《し》っていた。イエスと|弟子《でし》たちとがたびたびそこで|集《あつ》まったことがあるからである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]さてユダは、|一隊《いったい》の|兵卒《へいそつ》と|祭司長《さいしちょう》やパリサイ|人《びと》たちの|送《おく》った|下役《したやく》どもを|引《ひ》き|連《つ》れ、たいまつやあかりや|武器《ぶき》を|持《も》って、そこへやってきた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかしイエスは、|自分《じぶん》の|身《み》に|起《おこ》ろうとすることをことごとく|承知《しょうち》しておられ、|進《すす》み|出《で》て|彼《かれ》らに|言《い》われた、「だれを|捜《さが》しているのか」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは「ナザレのイエスを」と|答《こた》えた。イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「わたしが、それである」。イエスを|裏切《うらぎ》ったユダも、|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》に|立《た》っていた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|彼《かれ》らに「わたしが、それである」と|言《い》われたとき、|彼《かれ》らはうしろに|引《ひ》きさがって|地《ち》に|倒《たお》れた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこでまた|彼《かれ》らに、「だれを|捜《さが》しているのか」とお|尋《たず》ねになると、|彼《かれ》らは「ナザレのイエスを」と|言《い》った。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「わたしがそれであると、|言《い》ったではないか。わたしを|捜《さが》しているのなら、この|人《ひと》たちを|去《さ》らせてもらいたい」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それは、「あなたが|与《あた》えて|下《くだ》さった|人《ひと》たちの|中《なか》のひとりも、わたしは|失《うしな》わなかった」とイエスの|言《い》われた|言葉《ことば》が、|成就《じょうじゅ》するためである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロは|剣《けん》を|持《も》っていたが、それを|抜《ぬ》いて、|大祭司《だいさいし》の|僕《しもべ》に|切《き》りかかり、その|右《みぎ》の|耳《みみ》を|切《き》り|落《おと》した。その|僕《しもべ》の|名《な》はマルコスであった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスはペテロに|言《い》われた、「|剣《けん》をさやに|納《おさ》めなさい。|父《ちち》がわたしに|下《くだ》さった|杯《さかずき》は、|飲《の》むべきではないか」。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それから|一隊《いったい》の|兵卒《へいそつ》やその|千卒長《せんそつちょう》やユダヤ|人《じん》の|下役《したやく》どもが、イエスを|捕《とら》え、|縛《しば》りあげて、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]まずアンナスのところに|引《ひ》き|連《つ》れて|行《い》った。|彼《かれ》はその|年《とし》の|大祭司《だいさいし》カヤパのしゅうとであった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]カヤパは|前《まえ》に、ひとりの|人《ひと》が|民《たみ》のために|死《し》ぬのはよいことだと、ユダヤ|人《じん》に|助言《じょげん》した|者《もの》であった。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロともうひとりの|弟子《でし》とが、イエスについて|行《い》った。この|弟子《でし》は|大祭司《だいさいし》の|知《し》り|合《あ》いであったので、イエスと|一緒《いっしょ》に|大祭司《だいさいし》の|中庭《なかにわ》にはいった。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、ペテロは|外《そと》で|戸口《とぐち》に|立《た》っていた。すると|大祭司《だいさいし》の|知《し》り|合《あ》いであるその|弟子《でし》が、|外《そと》に|出《で》て|行《い》って|門番《もんばん》の|女《おんな》に|話《はな》し、ペテロを|内《うち》に|入《い》れてやった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]すると、この|門番《もんばん》の|女《おんな》がペテロに|言《い》った、「あなたも、あの|人《ひと》の|弟子《でし》のひとりではありませんか」。ペテロは「いや、そうではない」と|答《こた》えた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|僕《しもべ》や|下役《したやく》どもは、|寒《さむ》い|時《とき》であったので、|炭火《すみび》をおこし、そこに|立《た》ってあたっていた。ペテロもまた|彼《かれ》らに|交《ま》じり、|立《た》ってあたっていた。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|大祭司《だいさいし》はイエスに、|弟子《でし》たちのことやイエスの|教《おしえ》のことを|尋《たず》ねた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「わたしはこの|世《よ》に|対《たい》して|公然《こうぜん》と|語《かた》ってきた。すべてのユダヤ|人《じん》が|集《あつ》まる|会堂《かいどう》や|宮《みや》で、いつも|教《おし》えていた。|何事《なにごと》も|隠《かく》れて|語《かた》ったことはない。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]なぜ、わたしに|尋《たず》ねるのか。わたしが|彼《かれ》らに|語《かた》ったことは、それを|聞《き》いた|人々《ひとびと》に|尋《たず》ねるがよい。わたしの|言《い》ったことは、|彼《かれ》らが|知《し》っているのだから」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イエスがこう|言《い》われると、そこに|立《た》っていた|下役《したやく》のひとりが、「|大祭司《だいさいし》にむかって、そのような|答《こたえ》をするのか」と|言《い》って、|平手《ひらて》でイエスを|打《う》った。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「もしわたしが|何《なに》か|悪《わる》いことを|言《い》ったのなら、その|悪《わる》い|理由《りゆう》を|言《い》いなさい。しかし、|正《ただ》しいことを|言《い》ったのなら、なぜわたしを|打《う》つのか」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]それからアンナスは、イエスを|縛《しば》ったまま|大祭司《だいさいし》カヤパのところへ|送《おく》った。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロは、|立《た》って|火《ひ》にあたっていた。すると|人々《ひとびと》が|彼《かれ》に|言《い》った、「あなたも、あの|人《ひと》の|弟子《でし》のひとりではないか」。|彼《かれ》はそれをうち|消《け》して、「いや、そうではない」と|言《い》った。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|大祭司《だいさいし》の|僕《しもべ》のひとりで、ペテロに|耳《みみ》を|切《き》りおとされた|人《ひと》の|親族《しんぞく》の|者《もの》が|言《い》った、「あなたが|園《その》であの|人《ひと》と|一緒《いっしょ》にいるのを、わたしは|見《み》たではないか」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはまたそれを|打《う》ち|消《け》した。するとすぐに、|鶏《にわとり》が|鳴《な》いた。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]それから|人々《ひとびと》は、イエスをカヤパのところから|官邸《かんてい》につれて|行《い》った。|時《とき》は|夜明《よあ》けであった。|彼《かれ》らは、けがれを|受《う》けないで|過越《すぎこし》の|食事《しょくじ》ができるように、|官邸《かんてい》にはいらなかった。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ピラトは|彼《かれ》らのところに|出《で》てきて|言《い》った、「あなたがたは、この|人《ひと》に|対《たい》してどんな|訴《うった》えを|起《おこ》すのか」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはピラトに|答《こた》えて|言《い》った、「もしこの|人《ひと》が|悪事《あくじ》をはたらかなかったなら、あなたに|引《ひ》き|渡《わた》すようなことはしなかったでしょう」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]そこでピラトは|彼《かれ》らに|言《い》った、「あなたがたは|彼《かれ》を|引《ひ》き|取《と》って、|自分《じぶん》たちの|律法《りっぽう》でさばくがよい」。ユダヤ|人《じん》らは|彼《かれ》に|言《い》った、「わたしたちには、|人《ひと》を|死刑《しけい》にする|権限《けんげん》がありません」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]これは、ご|自身《じしん》がどんな|死《し》にかたをしようとしているかを|示《しめ》すために|言《い》われたイエスの|言葉《ことば》が、|成就《じょうじゅ》するためである。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]さて、ピラトはまた|官邸《かんてい》にはいり、イエスを|呼《よ》び|出《だ》して|言《い》った、「あなたは、ユダヤ|人《じん》の|王《おう》であるか」。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「あなたがそう|言《い》うのは、|自分《じぶん》の|考《かんが》えからか。それともほかの|人々《ひとびと》が、わたしのことをあなたにそう|言《い》ったのか」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは|答《こた》えた、「わたしはユダヤ|人《じん》なのか。あなたの|同族《どうぞく》や|祭司長《さいしちょう》たちが、あなたをわたしに|引《ひ》き|渡《わた》したのだ。あなたは、いったい、|何《なに》をしたのか」。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「わたしの|国《くに》はこの|世《よ》のものではない。もしわたしの|国《くに》がこの|世《よ》のものであれば、わたしに|従《したが》っている|者《もの》たちは、わたしをユダヤ|人《じん》に|渡《わた》さないように|戦《たたか》ったであろう。しかし|事実《じじつ》、わたしの|国《くに》はこの|世《よ》のものではない」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そこでピラトはイエスに|言《い》った、「それでは、あなたは|王《おう》なのだな」。イエスは|答《こた》えられた、「あなたの|言《い》うとおり、わたしは|王《おう》である。わたしは|真理《しんり》についてあかしをするために|生《うま》れ、また、そのためにこの|世《よ》にきたのである。だれでも|真理《しんり》につく|者《もの》は、わたしの|声《こえ》に|耳《みみ》を|傾《かたむ》ける」。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]ピラトはイエスに|言《い》った、「|真理《しんり》とは|何《なに》か」。こう|言《い》って、|彼《かれ》はまたユダヤ|人《じん》の|所《ところ》に|出《で》て|行《い》き、|彼《かれ》らに|言《い》った、「わたしには、この|人《ひと》になんの|罪《つみ》も|見《み》いだせない。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|過越《すぎこし》の|時《とき》には、わたしがあなたがたのために、ひとりの|人《ひと》を|許《ゆる》してやるのが、あなたがたのしきたりになっている。ついては、あなたがたは、このユダヤ|人《じん》の|王《おう》を|許《ゆる》してもらいたいのか」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》らは、また|叫《さけ》んで「その|人《ひと》ではなく、バラバを」と|言《い》った。このバラバは|強盗《ごうとう》であった。 第一九章[#「第一九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこでピラトは、イエスを|捕《とら》え、むちで|打《う》たせた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|兵卒《へいそつ》たちは、いばらで|冠《かんむり》をあんで、イエスの|頭《あたま》にかぶらせ、|紫《むらさき》の|上着《うわぎ》を|着《き》せ、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]それから、その|前《まえ》に|進《すす》み|出《で》て、「ユダヤ|人《じん》の|王《おう》、ばんざい」と|言《い》った。そして|平手《ひらて》でイエスを|打《う》ちつづけた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]するとピラトは、また|出《で》て|行《い》ってユダヤ|人《じん》たちに|言《い》った、「|見《み》よ、わたしはこの|人《ひと》をあなたがたの|前《まえ》に|引《ひ》き|出《だ》すが、それはこの|人《ひと》になんの|罪《つみ》も|見《み》いだせないことを、あなたがたに|知《し》ってもらうためである」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]イエスはいばらの|冠《かんむり》をかぶり、|紫《むらさき》の|上着《うわぎ》を|着《き》たままで|外《そと》へ|出《で》られると、ピラトは|彼《かれ》らに|言《い》った、「|見《み》よ、この|人《ひと》だ」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちや|下役《したやく》どもはイエスを|見《み》ると、|叫《さけ》んで「|十字架《じゅうじか》につけよ、|十字架《じゅうじか》につけよ」と|言《い》った。ピラトは|彼《かれ》らに|言《い》った、「あなたがたが、この|人《ひと》を|引《ひ》き|取《と》って|十字架《じゅうじか》につけるがよい。わたしは、|彼《かれ》にはなんの|罪《つみ》も|見《み》いだせない」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》たちは|彼《かれ》に|答《こた》えた、「わたしたちには|律法《りっぽう》があります。その|律法《りっぽう》によれば、|彼《かれ》は|自分《じぶん》を|神《かみ》の|子《こ》としたのだから、|死罪《しざい》に|当《あた》る|者《もの》です」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ピラトがこの|言葉《ことば》を|聞《き》いたとき、ますますおそれ、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]もう一|度《ど》|官邸《かんてい》にはいってイエスに|言《い》った、「あなたは、もともと、どこからきたのか」。しかし、イエスはなんの|答《こたえ》もなさらなかった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこでピラトは|言《い》った、「|何《なに》も|答《こた》えないのか。わたしには、あなたを|許《ゆる》す|権威《けんい》があり、また|十字架《じゅうじか》につける|権威《けんい》があることを、|知《し》らないのか」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|答《こた》えられた、「あなたは、|上《うえ》から|賜《たま》わるのでなければ、わたしに|対《たい》してなんの|権威《けんい》もない。だから、わたしをあなたに|引《ひ》き|渡《わた》した|者《もの》の|罪《つみ》は、もっと|大《おお》きい」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]これを|聞《き》いて、ピラトはイエスを|許《ゆる》そうと|努《つと》めた。しかしユダヤ|人《じん》たちが|叫《さけ》んで|言《い》った、「もしこの|人《ひと》を|許《ゆる》したなら、あなたはカイザルの|味方《みかた》ではありません。|自分《じぶん》を|王《おう》とするものはすべて、カイザルにそむく|者《もの》です」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ピラトはこれらの|言葉《ことば》を|聞《き》いて、イエスを|外《そと》へ|引《ひ》き|出《だ》して|行《い》き、|敷石《しきいし》(ヘブル|語《ご》ではガバタ)という|場所《ばしょ》で|裁判《さいばん》の|席《せき》についた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》は|過越《すぎこし》の|準備《じゅんび》の|日《ひ》であって、|時《とき》は|昼《ひる》の十二|時《じ》ころであった。ピラトはユダヤ|人《じん》らに|言《い》った、「|見《み》よ、これがあなたがたの|王《おう》だ」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》らは|叫《さけ》んだ、「|殺《ころ》せ、|殺《ころ》せ、|彼《かれ》を|十字架《じゅうじか》につけよ」。ピラトは|彼《かれ》らに|言《い》った、「あなたがたの|王《おう》を、わたしが|十字架《じゅうじか》につけるのか」。|祭司長《さいしちょう》たちは|答《こた》えた、「わたしたちには、カイザル|以外《いがい》に|王《おう》はありません」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そこでピラトは、|十字架《じゅうじか》につけさせるために、イエスを|彼《かれ》らに|引《ひ》き|渡《わた》した。  |彼《かれ》らはイエスを|引《ひ》き|取《と》った。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスはみずから|十字架《じゅうじか》を|背負《せお》って、されこうべ(ヘブル|語《ご》ではゴルゴダ)という|場所《ばしょ》に|出《で》て|行《い》かれた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはそこで、イエスを|十字架《じゅうじか》につけた。イエスをまん|中《なか》にして、ほかのふたりの|者《もの》を|両側《りょうがわ》に、イエスと|一緒《いっしょ》に|十字架《じゅうじか》につけた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは|罪状《ざいじょう》|書《が》きを|書《か》いて、|十字架《じゅうじか》の|上《うえ》にかけさせた。それには「ユダヤ|人《じん》の|王《おう》、ナザレのイエス」と|書《か》いてあった。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|十字架《じゅうじか》につけられた|場所《ばしょ》は|都《みやこ》に|近《ちか》かったので、|多《おお》くのユダヤ|人《じん》がこの|罪状《ざいじょう》|書《が》きを|読《よ》んだ。それはヘブル、ローマ、ギリシヤの|国語《こくご》で|書《か》いてあった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》の|祭司長《さいしちょう》たちがピラトに|言《い》った、「『ユダヤ|人《じん》の|王《おう》』と|書《か》かずに、『この|人《ひと》はユダヤ|人《じん》の|王《おう》と|自《じ》|称《しょう》していた』と|書《か》いてほしい」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ピラトは|答《こた》えた、「わたしが|書《か》いたことは、|書《か》いたままにしておけ」。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]さて、|兵卒《へいそつ》たちはイエスを|十字架《じゅうじか》につけてから、その|上着《うわぎ》をとって四つに|分《わ》け、おのおの、その一つを|取《と》った。また|下着《したぎ》を|手《て》に|取《と》ってみたが、それには|縫《ぬ》い|目《め》がなく、|上《うえ》の|方《ほう》から|全部《ぜんぶ》一つに|織《お》ったものであった。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは|互《たがい》に|言《い》った、「それを|裂《さ》かないで、だれのものになるか、くじを|引《ひ》こう」。これは、「|彼《かれ》らは|互《たがい》にわたしの|上着《うわぎ》を|分《わ》け|合《あ》い、わたしの|衣《ころも》をくじ引にした」という|聖書《せいしょ》が|成就《じょうじゅ》するためで、|兵卒《へいそつ》たちはそのようにしたのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]さて、イエスの|十字架《じゅうじか》のそばには、イエスの|母《はは》と、|母《はは》の|姉妹《しまい》と、クロパの|妻《つま》マリヤと、マグダラのマリヤとが、たたずんでいた。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、その|母《はは》と|愛弟子《あいでし》とがそばに|立《た》っているのをごらんになって、|母《はは》にいわれた、「|婦人《ふじん》よ、ごらんなさい。これはあなたの|子《こ》です」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]それからこの|弟子《でし》に|言《い》われた、「ごらんなさい。これはあなたの|母《はは》です」。そのとき|以来《いらい》、この|弟子《でし》はイエスの|母《はは》を|自分《じぶん》の|家《いえ》に|引《ひ》きとった。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そののち、イエスは|今《いま》や|万事《ばんじ》が|終《おわ》ったことを|知《し》って、「わたしは、かわく」と|言《い》われた。それは、|聖書《せいしょ》が|全《まっと》うされるためであった。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこに、|酢《す》いぶどう|酒《しゅ》がいっぱい|入《い》れてある|器《うつわ》がおいてあったので、|人々《ひとびと》は、このぶどう|酒《しゅ》を|含《ふく》ませた|海綿《かいめん》をヒソプの|茎《くき》に|結《むす》びつけて、イエスの|口《くち》もとにさし|出《だ》した。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスはそのぶどう|酒《しゅ》を|受《う》けて、「すべてが|終《おわ》った」と|言《い》われ、|首《くび》をたれて|息《いき》をひきとられた。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]さてユダヤ|人《じん》たちは、その|日《ひ》が|準備《じゅんび》の|日《ひ》であったので、|安息日《あんそくにち》に|死体《したい》を|十字架《じゅうじか》の|上《うえ》に|残《のこ》しておくまいと、(|特《とく》にその|安息日《あんそくにち》は|大事《だいじ》な|日《ひ》であったから)、ピラトに|願《ねが》って、|足《あし》を|折《お》った|上《うえ》で、|死体《したい》を|取《と》りおろすことにした。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|兵卒《へいそつ》らがきて、イエスと|一緒《いっしょ》に|十字架《じゅうじか》につけられた|初《はじ》めの|者《もの》と、もうひとりの|者《もの》との|足《あし》を|折《お》った。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らがイエスのところにきた|時《とき》、イエスはもう|死《し》んでおられたのを|見《み》て、その|足《あし》を|折《お》ることはしなかった。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、ひとりの|兵卒《へいそつ》がやりでそのわきを|突《つ》きさすと、すぐ|血《ち》と|水《みず》とが|流《なが》れ|出《で》た。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]それを|見《み》た|者《もの》があかしをした。そして、そのあかしは|真実《しんじつ》である。その|人《ひと》は、|自分《じぶん》が|真実《しんじつ》を|語《かた》っていることを|知《し》っている。それは、あなたがたも|信《しん》ずるようになるためである。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]これらのことが|起《おこ》ったのは、「その|骨《ほね》はくだかれないであろう」との|聖書《せいしょ》の|言葉《ことば》が、|成就《じょうじゅ》するためである。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]また|聖書《せいしょ》のほかのところに、「|彼《かれ》らは|自分《じぶん》が|刺《さ》し|通《とお》した|者《もの》を|見《み》るであろう」とある。  [#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]そののち、ユダヤ|人《じん》をはばかって、ひそかにイエスの|弟子《でし》となったアリマタヤのヨセフという|人《ひと》が、イエスの|死体《したい》を|取《と》りおろしたいと、ピラトに|願《ねが》い|出《で》た。ピラトはそれを|許《ゆる》したので、|彼《かれ》はイエスの|死体《したい》を|取《と》りおろしに|行《い》った。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]また、|前《まえ》に、|夜《よる》、イエスのみもとに|行《い》ったニコデモも、|没薬《もつやく》と|沈香《ぢんこう》とをまぜたものを百|斤《きん》ほど|持《も》ってきた。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、イエスの|死体《したい》を|取《と》りおろし、ユダヤ|人《じん》の|埋葬《まいそう》の|習慣《しゅうかん》にしたがって、|香料《こうりょう》を|入《い》れて|亜麻布《あまぬの》で|巻《ま》いた。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|十字架《じゅうじか》にかけられた|所《ところ》には、一つの|園《その》があり、そこにはまだだれも|葬《ほうむ》られたことのない|新《あたら》しい|墓《はか》があった。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》はユダヤ|人《じん》の|準備《じゅんび》の|日《ひ》であったので、その|墓《はか》が|近《ちか》くにあったため、イエスをそこに|納《おさ》めた。 第二〇章[#「第二〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、一|週《しゅう》の|初《はじ》めの|日《ひ》に、|朝《あさ》|早《はや》くまだ|暗《くら》いうちに、マグダラのマリヤが|墓《はか》に|行《い》くと、|墓《はか》から|石《いし》がとりのけてあるのを|見《み》た。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|走《はし》って、シモン・ペテロとイエスが|愛《あい》しておられた、もうひとりの|弟子《でし》のところへ|行《い》って、|彼《かれ》らに|言《い》った、「だれかが、|主《しゅ》を|墓《はか》から|取《と》り|去《さ》りました。どこへ|置《お》いたのか、わかりません」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこでペテロともうひとりの|弟子《でし》は|出《で》かけて、|墓《はか》へむかって|行《い》った。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ふたりは|一緒《いっしょ》に|走《はし》り|出《だ》したが、そのもうひとりの|弟子《でし》の|方《ほう》が、ペテロよりも|早《はや》く|走《はし》って|先《さき》に|墓《はか》に|着《つ》き、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そして|身《み》をかがめてみると、|亜麻布《あまぬの》がそこに|置《お》いてあるのを|見《み》たが、|中《なか》へははいらなかった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロも|続《つづ》いてきて、|墓《はか》の|中《なか》にはいった。|彼《かれ》は|亜麻布《あまぬの》がそこに|置《お》いてあるのを|見《み》たが、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]イエスの|頭《あたま》に|巻《ま》いてあった|布《ぬの》は|亜麻布《あまぬの》のそばにはなくて、はなれた|別《べつ》の|場所《ばしょ》にくるめてあった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すると、|先《さき》に|墓《はか》に|着《つ》いたもうひとりの|弟子《でし》もはいってきて、これを|見《み》て|信《しん》じた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らは|死人《しにん》のうちからイエスがよみがえるべきことをしるした|聖《せい》|句《く》を、まだ|悟《さと》っていなかった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それから、ふたりの|弟子《でし》たちは|自分《じぶん》の|家《いえ》に|帰《かえ》って|行《い》った。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、マリヤは|墓《はか》の|外《そと》に|立《た》って|泣《な》いていた。そして|泣《な》きながら、|身《み》をかがめて|墓《はか》の|中《なか》をのぞくと、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|白《しろ》い|衣《ころも》を|着《き》たふたりの|御使《みつかい》が、イエスの|死体《したい》のおかれていた|場所《ばしょ》に、ひとりは|頭《あたま》の|方《ほう》に、ひとりは|足《あし》の|方《ほう》に、すわっているのを|見《み》た。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》らはマリヤに、「|女《おんな》よ、なぜ|泣《な》いているのか」と|言《い》った。マリヤは|彼《かれ》らに|言《い》った、「だれかが、わたしの|主《しゅ》を|取《と》り|去《さ》りました。そして、どこに|置《お》いたのか、わからないのです」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そう|言《い》って、うしろをふり|向《む》くと、そこにイエスが|立《た》っておられるのを|見《み》た。しかし、それがイエスであることに|気《き》がつかなかった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|女《おんな》に|言《い》われた、「|女《おんな》よ、なぜ|泣《な》いているのか。だれを|捜《さが》しているのか」。マリヤは、その|人《ひと》が|園《その》の|番人《ばんにん》だと|思《おも》って|言《い》った、「もしあなたが、あのかたを|移《うつ》したのでしたら、どこへ|置《お》いたのか、どうぞ、おっしゃって|下《くだ》さい。わたしがそのかたを|引《ひ》き|取《と》ります」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼女《かのじょ》に「マリヤよ」と|言《い》われた。マリヤはふり|返《かえ》って、イエスにむかってヘブル|語《ご》で「ラボニ」と|言《い》った。それは、|先生《せんせい》という|意味《いみ》である。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼女《かのじょ》に|言《い》われた、「わたしにさわってはいけない。わたしは、まだ|父《ちち》のみもとに|上《のぼ》っていないのだから。ただ、わたしの|兄弟《きょうだい》たちの|所《ところ》に|行《い》って、『わたしは、わたしの|父《ちち》またあなたがたの|父《ちち》であって、わたしの|神《かみ》またあなたがたの|神《かみ》であられるかたのみもとへ|上《のぼ》って|行《い》く』と、|彼《かれ》らに|伝《つた》えなさい」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]マグダラのマリヤは|弟子《でし》たちのところに|行《い》って、|自分《じぶん》が|主《しゅ》に|会《あ》ったこと、またイエスがこれこれのことを|自分《じぶん》に|仰《おお》せになったことを、|報告《ほうこく》した。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》、すなわち、一|週《しゅう》の|初《はじ》めの|日《ひ》の|夕方《ゆうがた》、|弟子《でし》たちはユダヤ|人《じん》をおそれて、|自分《じぶん》たちのおる|所《ところ》の|戸《と》をみなしめていると、イエスがはいってきて、|彼《かれ》らの|中《なか》に|立《た》ち、「|安《やす》かれ」と|言《い》われた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そう|言《い》って、|手《て》とわきとを、|彼《かれ》らにお|見《み》せになった。|弟子《でし》たちは|主《しゅ》を|見《み》て|喜《よろこ》んだ。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエスはまた|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|安《やす》かれ。|父《ちち》がわたしをおつかわしになったように、わたしもまたあなたがたをつかわす」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そう|言《い》って、|彼《かれ》らに|息《いき》を|吹《ふ》きかけて|仰《おお》せになった、「|聖霊《せいれい》を|受《う》けよ。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたがゆるす|罪《つみ》は、だれの|罪《つみ》でもゆるされ、あなたがたがゆるさずにおく|罪《つみ》は、そのまま|残《のこ》るであろう」。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]十二|弟子《でし》のひとりで、デドモと|呼《よ》ばれているトマスは、イエスがこられたとき、|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》にいなかった。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|弟子《でし》たちが、|彼《かれ》に「わたしたちは|主《しゅ》にお|目《め》にかかった」と|言《い》うと、トマスは|彼《かれ》らに|言《い》った、「わたしは、その|手《て》に|釘《くぎ》あとを|見《み》、わたしの|指《ゆび》をその|釘《くぎ》あとにさし|入《い》れ、また、わたしの|手《て》をそのわきにさし|入《い》れてみなければ、|決《けっ》して|信《しん》じない」。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]八|日《か》ののち、イエスの|弟子《でし》たちはまた|家《いえ》の|内《うち》におり、トマスも|一緒《いっしょ》にいた。|戸《と》はみな|閉《と》ざされていたが、イエスがはいってこられ、|中《なか》に|立《た》って「|安《やす》かれ」と|言《い》われた。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]それからトマスに|言《い》われた、「あなたの|指《ゆび》をここにつけて、わたしの|手《て》を|見《み》なさい。|手《て》をのばしてわたしのわきにさし|入《い》れてみなさい。|信《しん》じない|者《もの》にならないで、|信《しん》じる|者《もの》になりなさい」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]トマスはイエスに|答《こた》えて|言《い》った、「わが|主《しゅ》よ、わが|神《かみ》よ」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「あなたはわたしを|見《み》たので|信《しん》じたのか。|見《み》ないで|信《しん》ずる|者《もの》は、さいわいである」。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、この|書《しょ》に|書《か》かれていないしるしを、ほかにも|多《おお》く、|弟子《でし》たちの|前《まえ》で|行《おこな》われた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、これらのことを|書《か》いたのは、あなたがたがイエスは|神《かみ》の|子《こ》キリストであると|信《しん》じるためであり、また、そう|信《しん》じて、イエスの|名《な》によって|命《いのち》を|得《え》るためである。 第二一章[#「第二一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そののち、イエスはテベリヤの|海《うみ》べで、ご|自身《じしん》をまた|弟子《でし》たちにあらわされた。そのあらわされた|次第《しだい》は、こうである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロが、デドモと|呼《よ》ばれているトマス、ガリラヤのカナのナタナエル、ゼベダイの|子《こ》らや、ほかのふたりの|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》にいた|時《とき》のことである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロは|彼《かれ》らに「わたしは|漁《りょう》に|行《い》くのだ」と|言《い》うと、|彼《かれ》らは「わたしたちも|一緒《いっしょ》に|行《い》こう」と|言《い》った。|彼《かれ》らは|出《で》て|行《い》って|舟《ふね》に|乗《の》った。しかし、その|夜《よ》はなんの|獲物《えもの》もなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けたころ、イエスが|岸《きし》に|立《た》っておられた。しかし|弟子《でし》たちはそれがイエスだとは|知《し》らなかった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|子《こ》たちよ、|何《なに》か|食《た》べるものがあるか」。|彼《かれ》らは「ありません」と|答《こた》えた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]すると、イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|舟《ふね》の|右《みぎ》の|方《ほう》に|網《あみ》をおろして|見《み》なさい。そうすれば、|何《なに》かとれるだろう」。|彼《かれ》らは|網《あみ》をおろすと、|魚《うお》が|多《おお》くとれたので、それを|引《ひ》き|上《あ》げることができなかった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]イエスの|愛《あい》しておられた|弟子《でし》が、ペテロに「あれは|主《しゅ》だ」と|言《い》った。シモン・ペテロは|主《しゅ》であると|聞《き》いて、|裸《はだか》になっていたため、|上着《うわぎ》をまとって|海《うみ》にとびこんだ。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、ほかの|弟子《でし》たちは|舟《ふね》に|乗《の》ったまま、|魚《うお》のはいっている|網《あみ》を|引《ひ》きながら|帰《かえ》って|行《い》った。|陸《りく》からはあまり|遠《とお》くない五十|間《けん》ほどの|所《ところ》にいたからである。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|陸《りく》に|上《のぼ》って|見《み》ると、|炭火《すみび》がおこしてあって、その|上《うえ》に|魚《うお》がのせてあり、またそこにパンがあった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|今《いま》とった|魚《うお》を|少《すこ》し|持《も》ってきなさい」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]シモン・ペテロが|行《い》って、|網《あみ》を|陸《りく》へ|引《ひ》き|上《あ》げると、百五十三びきの|大《おお》きな|魚《うお》でいっぱいになっていた。そんなに|多《おお》かったが、|網《あみ》はさけないでいた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》らに|言《い》われた、「さあ、|朝《あさ》の|食事《しょくじ》をしなさい」。|弟子《でし》たちは、|主《しゅ》であることがわかっていたので、だれも「あなたはどなたですか」と|進《すす》んで|尋《たず》ねる|者《もの》がなかった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]イエスはそこにきて、パンをとり|彼《かれ》らに|与《あた》え、また|魚《うお》も|同《おな》じようにされた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]イエスが|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえったのち、|弟子《でし》たちにあらわれたのは、これで|既《すで》に三|度目《どめ》である。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|食事《しょくじ》をすませると、イエスはシモン・ペテロに|言《い》われた、「ヨハネの|子《こ》シモンよ、あなたはこの|人《ひと》たちが|愛《あい》する|以上《いじょう》に、わたしを|愛《あい》するか」。ペテロは|言《い》った、「|主《しゅ》よ、そうです。わたしがあなたを|愛《あい》することは、あなたがご|存《ぞん》じです」。イエスは|彼《かれ》に「わたしの|小羊《こひつじ》を|養《やしな》いなさい」と|言《い》われた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]またもう|一度《いちど》|彼《かれ》に|言《い》われた、「ヨハネの|子《こ》シモンよ、わたしを|愛《あい》するか」。|彼《かれ》はイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、そうです。わたしがあなたを|愛《あい》することは、あなたがご|存《ぞん》じです」。イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「わたしの|羊《ひつじ》を|飼《か》いなさい」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは三|度目《どめ》に|言《い》われた、「ヨハネの|子《こ》シモンよ、わたしを|愛《あい》するか」。ペテロは「わたしを|愛《あい》するか」とイエスが三|度《ど》も|言《い》われたので、|心《こころ》をいためてイエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、あなたはすべてをご|存《ぞん》じです。わたしがあなたを|愛《あい》していることは、おわかりになっています」。イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「わたしの|羊《ひつじ》を|養《やしな》いなさい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]よくよくあなたに|言《い》っておく。あなたが|若《わか》かった|時《とき》には、|自分《じぶん》で|帯《おび》をしめて、|思《おも》いのままに|歩《ある》きまわっていた。しかし|年《とし》をとってからは、|自分《じぶん》の|手《て》をのばすことになろう。そして、ほかの|人《ひと》があなたに|帯《おび》を|結《むす》びつけ、|行《い》きたくない|所《ところ》へ|連《つ》れて|行《い》くであろう」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]これは、ペテロがどんな|死《し》に|方《かた》で、|神《かみ》の|栄光《えいこう》をあらわすかを|示《しめ》すために、お|話《はな》しになったのである。こう|話《はな》してから、「わたしに|従《したが》ってきなさい」と|言《い》われた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはふり|返《かえ》ると、イエスの|愛《あい》しておられた|弟子《でし》がついて|来《く》るのを|見《み》た。この|弟子《でし》は、あの|夕食《ゆうしょく》のときイエスの|胸《むね》|近《ちか》くに|寄《よ》りかかって、「|主《しゅ》よ、あなたを|裏切《うらぎ》る|者《もの》は、だれなのですか」と|尋《たず》ねた|人《ひと》である。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはこの|弟子《でし》を|見《み》て、イエスに|言《い》った、「|主《しゅ》よ、この|人《ひと》はどうなのですか」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|彼《かれ》に|言《い》われた、「たとい、わたしの|来《く》る|時《とき》まで|彼《かれ》が|生《い》き|残《のこ》っていることを、わたしが|望《のぞ》んだとしても、あなたにはなんの|係《かか》わりがあるか。あなたは、わたしに|従《したが》ってきなさい」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、この|弟子《でし》は|死《し》ぬことがないといううわさが、|兄弟《きょうだい》たちの|間《あいだ》にひろまった。しかし、イエスは|彼《かれ》が|死《し》ぬことはないと|言《い》われたのではなく、ただ「たとい、わたしの|来《く》る|時《とき》まで|彼《かれ》が|生《い》き|残《のこ》っていることを、わたしが|望《のぞ》んだとしても、あなたにはなんの|係《かか》わりがあるか」と|言《い》われただけである。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]これらの|事《こと》についてあかしをし、またこれらの|事《こと》を|書《か》いたのは、この|弟子《でし》である。そして|彼《かれ》のあかしが|真実《しんじつ》であることを、わたしたちは|知《し》っている。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]イエスのなさったことは、このほかにまだ|数多《かずおお》くある。もしいちいち|書《か》きつけるならば、|世界《せかい》もその|書《か》かれた|文書《ぶんしょ》を|収《おさ》めきれないであろうと|思《おも》う。 [#改ページ] 使徒行伝[#「使徒行伝」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]テオピロよ、わたしは|先《さき》に|第《だい》一|巻《かん》を|著《あら》わして、イエスが|行《おこな》い、また|教《おし》えはじめてから、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]お|選《えら》びになった|使徒《しと》たちに、|聖霊《せいれい》によって|命《めい》じたのち、|天《てん》に|上《あ》げられた|日《ひ》までのことを、ことごとくしるした。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|苦難《くなん》を|受《う》けたのち、|自分《じぶん》の|生《い》きていることを|数々《かずかず》の|確《たし》かな|証拠《しょうこ》によって|示《しめ》し、四十|日《にち》にわたってたびたび|彼《かれ》らに|現《あらわ》れて、|神《かみ》の|国《くに》のことを|語《かた》られた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そして|食事《しょくじ》を|共《とも》にしているとき、|彼《かれ》らにお|命《めい》じになった、「エルサレムから|離《はな》れないで、かねてわたしから|聞《き》いていた|父《ちち》の|約束《やくそく》を|待《ま》っているがよい。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、ヨハネは|水《みず》でバプテスマを|授《さづ》けたが、あなたがたは|間《ま》もなく|聖霊《せいれい》によって、バプテスマを|授《さづ》けられるであろう」。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]さて、|弟子《でし》たちが|一緒《いっしょ》に|集《あつ》まったとき、イエスに|問《と》うて|言《い》った、「|主《しゅ》よ、イスラエルのために|国《くに》を|復興《ふっこう》なさるのは、この|時《とき》なのですか」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らに|言《い》われた、「|時期《じき》や|場合《ばあい》は、|父《ちち》がご|自分《じぶん》の|権威《けんい》によって|定《さだ》めておられるのであって、あなたがたの|知《し》る|限《かぎ》りではない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|聖霊《せいれい》があなたがたにくだる|時《とき》、あなたがたは|力《ちから》を|受《う》けて、エルサレム、ユダヤとサマリヤの|全土《ぜんど》、さらに|地《ち》のはてまで、わたしの|証人《しょうにん》となるであろう」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》い|終《おわ》ると、イエスは|彼《かれ》らの|見《み》ている|前《まえ》で|天《てん》に|上《あ》げられ、|雲《くも》に|迎《むか》えられて、その|姿《すがた》が|見《み》えなくなった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]イエスの|上《のぼ》って|行《い》かれるとき、|彼《かれ》らが|天《てん》を|見《み》つめていると、|見《み》よ、|白《しろ》い|衣《ころも》を|着《き》たふたりの|人《ひと》が、|彼《かれ》らのそばに|立《た》っていて[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「ガリラヤの|人《ひと》たちよ、なぜ|天《てん》を|仰《あお》いで|立《た》っているのか。あなたがたを|離《はな》れて|天《てん》に|上《あ》げられたこのイエスは、|天《てん》に|上《のぼ》って|行《い》かれるのをあなたがたが|見《み》たのと|同《おな》じ|有様《ありさま》で、またおいでになるであろう」。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》らは、オリブという|山《やま》を|下《くだ》ってエルサレムに|帰《かえ》った。この|山《やま》はエルサレムに|近《ちか》く、|安息日《あんそくにち》に|許《ゆる》されている|距離《きょり》のところにある。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|市内《しない》に|行《い》って、その|泊《と》まっていた|屋上《おくじょう》の|間《ま》にあがった。その|人《ひと》たちは、ペテロ、ヨハネ、ヤコブ、アンデレ、ピリポとトマス、バルトロマイとマタイ、アルパヨの|子《こ》ヤコブと|熱心《ねっしん》|党《とう》のシモンとヤコブの|子《こ》ユダとであった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはみな、|婦人《ふじん》たち、|特《とく》にイエスの|母《はは》マリヤ、およびイエスの|兄弟《きょうだい》たちと|共《とも》に、|心《こころ》を|合《あ》わせて、ひたすら|祈《いのり》をしていた。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、百二十|名《めい》ばかりの|人々《ひとびと》が、|一団《いちだん》となって|集《あつ》まっていたが、ペテロはこれらの|兄弟《きょうだい》たちの|中《なか》に|立《た》って|言《い》った、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]「|兄弟《きょうだい》たちよ、イエスを|捕《とら》えた|者《もの》たちの|手《て》びきになったユダについては、|聖霊《せいれい》がダビデの|口《くち》をとおして|預言《よげん》したその|言葉《ことば》は、|成就《じょうじゅ》しなければならなかった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はわたしたちの|仲間《なかま》に|加《くわ》えられ、この|務《つとめ》を|授《さず》かっていた|者《もの》であった。([#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|不義《ふぎ》の|報酬《ほうしゅう》で、ある|地所《じしょ》を|手《て》に|入《い》れたが、そこへまっさかさまに|落《お》ちて、|腹《はら》がまん|中《なか》から|引《ひ》き|裂《さ》け、はらわたがみな|流《なが》れ|出《で》てしまった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そして、この|事《こと》はエルサレムの|全《ぜん》|住民《じゅうみん》に|知《し》れわたり、そこで、この|地所《じしょ》が|彼《かれ》らの|国語《こくご》でアケルダマと|呼《よ》ばれるようになった。「|血《ち》の|地所《じしょ》」との|意《い》である。)[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|詩篇《しへん》に、 [#ここから2字下げ] 『その|屋敷《やしき》は|荒《あ》れ|果《は》てよ、 そこにはひとりも|住《す》む|者《もの》がいなくなれ』 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあり、また [#ここから2字下げ] 『その|職《しょく》は、ほかの|者《もの》に|取《と》らせよ』 [#ここで字下げ終わり] とあるとおりである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そういうわけで、|主《しゅ》イエスがわたしたちの|間《あいだ》にゆききされた|期間中《きかんちゅう》、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、ヨハネのバプテスマの|時《とき》から|始《はじ》まって、わたしたちを|離《はな》れて|天《てん》に|上《あ》げられた|日《ひ》に|至《いた》るまで、|始終《しじゅう》わたしたちと|行動《こうどう》を|共《とも》にした|人《ひと》たちのうち、だれかひとりが、わたしたちに|加《くわ》わって|主《しゅ》の|復活《ふっかつ》の|証人《しょうにん》にならねばならない」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そこで|一同《いちどう》は、バルサバと|呼《よ》ばれ、またの|名《な》をユストというヨセフと、マッテヤとのふたりを|立《た》て、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|祈《いの》って|言《い》った、「すべての|人《ひと》の|心《こころ》をご|存《ぞん》じである|主《しゅ》よ。このふたりのうちのどちらを|選《えら》んで、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ユダがこの|使徒《しと》の|職務《しょくむ》から|落《お》ちて、|自分《じぶん》の|行《い》くべきところへ|行《い》ったそのあとを|継《つ》がせなさいますか、お|示《しめ》し|下《くだ》さい」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]それから、ふたりのためにくじを|引《ひ》いたところ、マッテヤに|当《あた》ったので、この|人《ひと》が十一|人《にん》の|使徒《しと》たちに|加《くわ》えられることになった。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|五旬節《ごじゅんせつ》の|日《ひ》がきて、みんなの|者《もの》が|一緒《いっしょ》に|集《あつ》まっていると、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|突然《とつぜん》、|激《はげ》しい|風《かぜ》が|吹《ふ》いてきたような|音《おと》が|天《てん》から|起《おこ》ってきて、|一同《いちどう》がすわっていた|家《いえ》いっぱいに|響《ひび》きわたった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]また、|舌《した》のようなものが、|炎《ほのお》のように|分《わか》れて|現《あらわ》れ、ひとりびとりの|上《うえ》にとどまった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すると、|一同《いちどう》は|聖霊《せいれい》に|満《み》たされ、|御霊《みたま》が|語《かた》らせるままに、いろいろの|他国《たこく》の|言葉《ことば》で|語《かた》り|出《だ》した。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]さて、エルサレムには、|天下《てんか》のあらゆる|国々《くにぐに》から、|信仰《しんこう》|深《ぶか》いユダヤ|人《じん》たちがきて|住《す》んでいたが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]この|物音《ものおと》に|大《おお》ぜいの|人《ひと》が|集《あつ》まってきて、|彼《かれ》らの|生《うま》れ|故郷《こきょう》の|国語《こくご》で、|使徒《しと》たちが|話《はな》しているのを、だれもかれも|聞《き》いてあっけに|取《と》られた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そして|驚《おどろ》き|怪《あや》しんで|言《い》った、「|見《み》よ、いま|話《はな》しているこの|人《ひと》たちは、|皆《みな》ガリラヤ|人《びと》ではないか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それだのに、わたしたちがそれぞれ、|生《うま》れ|故郷《こきょう》の|国語《こくご》を|彼《かれ》らから|聞《き》かされるとは、いったい、どうしたことか。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|中《なか》には、パルテヤ|人《びと》、メジヤ|人《びと》、エラム|人《びと》もおれば、メソポタミヤ、ユダヤ、カパドキヤ、ポントとアジヤ、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]フルギヤとパンフリヤ、エジプトとクレネに|近《ちか》いリビヤ|地方《ちほう》などに|住《す》む|者《もの》もいるし、またローマ|人《じん》で|旅《たび》にきている|者《もの》、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》と|改宗者《かいしゅうしゃ》、クレテ|人《びと》とアラビヤ|人《じん》もいるのだが、あの|人々《ひとびと》がわたしたちの|国語《こくご》で、|神《かみ》の|大《おお》きな|働《はたら》きを|述《の》べるのを|聞《き》くとは、どうしたことか」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》は|驚《おどろ》き|惑《まど》って、|互《たがい》に|言《い》い|合《あ》った、「これは、いったい、どういうわけなのだろう」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、ほかの|人《ひと》たちはあざ|笑《わら》って、「あの|人《ひと》たちは|新《あたら》しい|酒《さけ》で|酔《よ》っているのだ」と|言《い》った。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ペテロが十一|人《にん》の|者《もの》と|共《とも》に|立《た》ちあがり、|声《こえ》をあげて|人々《ひとびと》に|語《かた》りかけた。  「ユダヤの|人《ひと》たち、ならびにエルサレムに|住《す》むすべてのかたがた、どうか、この|事《こと》を|知《し》っていただきたい。わたしの|言《い》うことに|耳《みみ》を|傾《かたむ》けていただきたい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》は|朝《あさ》の九|時《じ》であるから、この|人《ひと》たちは、あなたがたが|思《おも》っているように、|酒《さけ》に|酔《よ》っているのではない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そうではなく、これは|預言者《よげんしゃ》ヨエルが|預言《よげん》していたことに|外《ほか》ならないのである。すなわち、 [#ここから2字下げ] [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]『|神《かみ》がこう|仰《おお》せになる。 |終《おわ》りの|時《とき》には、 わたしの|霊《れい》をすべての|人《ひと》に|注《そそ》ごう。 そして、あなたがたのむすこ|娘《むすめ》は|預言《よげん》をし、 |若者《わかもの》たちは|幻《まぼろし》を|見《み》、 |老人《ろうじん》たちは|夢《ゆめ》を|見《み》るであろう。 [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》には、わたしの|男女《だんじょ》の|僕《しもべ》たちにも わたしの|霊《れい》を|注《そそ》ごう。 そして|彼《かれ》らも|預言《よげん》をするであろう。 [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また、|上《うえ》では、|天《てん》に|奇跡《きせき》を|見《み》せ、 |下《した》では、|地《ち》にしるしを、 すなわち、|血《ち》と|火《ひ》と|立《た》ちこめる|煙《けむり》とを、 |見《み》せるであろう。 [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》の|大《おお》いなる|輝《かがや》かしい|日《ひ》が|来《く》る|前《まえ》に、 |日《ひ》はやみに |月《つき》は|血《ち》に|変《かわ》るであろう。 [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|主《しゅ》の|名《な》を|呼《よ》び|求《もと》める|者《もの》は、 みな|救《すく》われるであろう』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]イスラエルの|人《ひと》たちよ、|今《いま》わたしの|語《かた》ることを|聞《き》きなさい。あなたがたがよく|知《し》っているとおり、ナザレ|人《びと》イエスは、|神《かみ》が|彼《かれ》をとおして、あなたがたの|中《なか》で|行《おこな》われた|数々《かずかず》の|力《ちから》あるわざと|奇跡《きせき》としるしとにより、|神《かみ》からつかわされた|者《もの》であることを、あなたがたに|示《しめ》されたかたであった。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]このイエスが|渡《わた》されたのは|神《かみ》の|定《さだ》めた|計画《けいかく》と|予知《よち》とによるのであるが、あなたがたは|彼《かれ》を|不法《ふほう》の|人々《ひとびと》の|手《て》で|十字架《じゅうじか》につけて|殺《ころ》した。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はこのイエスを|死《し》の|苦《くる》しみから|解《と》き|放《はな》って、よみがえらせたのである。イエスが|死《し》に|支配《しはい》されているはずはなかったからである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ダビデはイエスについてこう|言《い》っている、 [#ここから2字下げ] 『わたしは|常《つね》に|目《め》の|前《まえ》に|主《しゅ》を|見《み》た。 |主《しゅ》は、わたしが|動《うご》かされないため、 わたしの|右《みぎ》にいて|下《くだ》さるからである。 [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]それゆえ、わたしの|心《こころ》は|楽《たの》しみ、 わたしの|舌《した》はよろこび|歌《うた》った。 わたしの|肉体《にくたい》もまた、|望《のぞ》みに|生《い》きるであろう。 [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、わたしの|魂《たましい》を|黄泉《よみ》に|捨《す》ておくことをせず、 あなたの|聖者《せいじゃ》が|朽《く》ち|果《は》てるのを、お|許《ゆる》しにならないであろう。 [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、いのちの|道《みち》をわたしに|示《しめ》し、 み|前《まえ》にあって、わたしを|喜《よろこ》びで|満《み》たして|下《くだ》さるであろう』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ、|族長《ぞくちょう》ダビデについては、わたしはあなたがたにむかって|大胆《だいたん》に|言《い》うことができる。|彼《かれ》は|死《し》んで|葬《ほうむ》られ、|現《げん》にその|墓《はか》が|今日《きょう》に|至《いた》るまで、わたしたちの|間《あいだ》に|残《のこ》っている。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|預言者《よげんしゃ》であって、『その|子孫《しそん》のひとりを|王位《おうい》につかせよう』と、|神《かみ》が|堅《かた》く|彼《かれ》に|誓《ちか》われたことを|認《みと》めていたので、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]キリストの|復活《ふっかつ》をあらかじめ|知《し》って、『|彼《かれ》は|黄泉《よみ》に|捨《す》ておかれることがなく、またその|肉体《にくたい》が|朽《く》ち|果《は》てることもない』と|語《かた》ったのである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]このイエスを、|神《かみ》はよみがえらせた。そして、わたしたちは|皆《みな》その|証人《しょうにん》なのである。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]それで、イエスは|神《かみ》の|右《みぎ》に|上《あ》げられ、|父《ちち》から|約束《やくそく》の|聖霊《せいれい》を|受《う》けて、それをわたしたちに|注《そそ》がれたのである。このことは、あなたがたが|現《げん》に|見聞《みき》きしているとおりである。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]ダビデが|天《てん》に|上《のぼ》ったのではない。|彼《かれ》|自身《じしん》こう|言《い》っている、 [#ここから2字下げ] 『|主《しゅ》はわが|主《しゅ》に|仰《おお》せになった、 [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|敵《てき》をあなたの|足《あし》|台《だい》にするまでは、 わたしの|右《みぎ》に|座《ざ》していなさい』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]だから、イスラエルの|全《ぜん》|家《か》は、この|事《こと》をしかと|知《し》っておくがよい。あなたがたが|十字架《じゅうじか》につけたこのイエスを、|神《かみ》は、|主《しゅ》またキリストとしてお|立《た》てになったのである」。  [#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はこれを|聞《き》いて、|強《つよ》く|心《こころ》を|刺《さ》され、ペテロやほかの|使徒《しと》たちに、「|兄弟《きょうだい》たちよ、わたしたちは、どうしたらよいのでしょうか」と|言《い》った。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]すると、ペテロが|答《こた》えた、「|悔《く》い|改《あらた》めなさい。そして、あなたがたひとりびとりが|罪《つみ》のゆるしを|得《え》るために、イエス・キリストの|名《な》によって、バプテスマを|受《う》けなさい。そうすれば、あなたがたは|聖霊《せいれい》の|賜物《たまもの》を|受《う》けるであろう。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]この|約束《やくそく》は、われらの|主《しゅ》なる|神《かみ》の|召《め》しにあずかるすべての|者《もの》、すなわちあなたがたと、あなたがたの|子《こ》らと、|遠《とお》くの|者《もの》|一同《いちどう》とに、|与《あた》えられているものである」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは、ほかになお|多《おお》くの|言葉《ことば》であかしをなし、|人々《ひとびと》に「この|曲《まが》った|時代《じだい》から|救《すく》われよ」と|言《い》って|勧《すす》めた。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》の|勧《すす》めの|言葉《ことば》を|受《う》けいれた|者《もの》たちは、バプテスマを|受《う》けたが、その|日《ひ》、|仲間《なかま》に|加《くわ》わったものが三千|人《にん》ほどあった。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]そして|一同《いちどう》はひたすら、|使徒《しと》たちの|教《おしえ》を|守《まも》り、|信徒《しんと》の|交《まじ》わりをなし、|共《とも》にパンをさき、|祈《いのり》をしていた。  [#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》におそれの|念《ねん》が|生《しょう》じ、|多《おお》くの|奇跡《きせき》としるしとが、|使徒《しと》たちによって、|次々《つぎつぎ》に|行《おこな》われた。[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]|信者《しんじゃ》たちはみな|一緒《いっしょ》にいて、いっさいの|物《もの》を|共有《きょうゆう》にし、[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|資産《しさん》や|持《も》ち|物《もの》を|売《う》っては、|必要《ひつよう》に|応《おう》じてみんなの|者《もの》に|分《わ》け|与《あた》えた。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]そして|日々《ひび》|心《こころ》を一つにして、|絶《た》えず|宮《みや》もうでをなし、|家《いえ》ではパンをさき、よろこびと、まごころとをもって、|食事《しょくじ》を|共《とも》にし、[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》をさんびし、すべての|人《ひと》に|好意《こうい》を|持《も》たれていた。そして|主《しゅ》は、|救《すく》われる|者《もの》を|日々《ひび》|仲間《なかま》に|加《くわ》えて|下《くだ》さったのである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、ペテロとヨハネとが、|午後《ごご》三|時《じ》の|祈《いのり》のときに|宮《みや》に|上《のぼ》ろうとしていると、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|生《うま》れながら|足《あし》のきかない|男《おとこ》が、かかえられてきた。この|男《おとこ》は、|宮《みや》もうでに|来《く》る|人々《ひとびと》に|施《ほどこ》しをこうため、|毎日《まいにち》、「|美《うつく》しの|門《もん》」と|呼《よ》ばれる|宮《みや》の|門《もん》のところに、|置《お》かれていた|者《もの》である。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、ペテロとヨハネとが、|宮《みや》にはいって|行《い》こうとしているのを|見《み》て、|施《ほどこ》しをこうた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ペテロとヨハネとは|彼《かれ》をじっと|見《み》て、「わたしたちを|見《み》なさい」と|言《い》った。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|何《なに》かもらえるのだろうと|期待《きたい》して、ふたりに|注目《ちゅうもく》していると、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ペテロが|言《い》った、「|金銀《きんぎん》はわたしには|無《な》い。しかし、わたしにあるものをあげよう。ナザレ|人《びと》イエス・キリストの|名《な》によって|歩《ある》きなさい」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》って|彼《かれ》の|右手《みぎて》を|取《と》って|起《おこ》してやると、|足《あし》と、くるぶしとが、|立《た》ちどころに|強《つよ》くなって、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|踊《おど》りあがって|立《た》ち、|歩《ある》き|出《だ》した。そして、|歩《ある》き|回《まわ》ったり|踊《おど》ったりして|神《かみ》をさんびしながら、|彼《かれ》らと|共《とも》に|宮《みや》にはいって|行《い》った。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|民衆《みんしゅう》はみな、|彼《かれ》が|歩《ある》き|回《まわ》り、また|神《かみ》をさんびしているのを|見《み》、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]これが|宮《みや》の「|美《うつく》しの|門《もん》」のそばにすわって、|施《ほどこ》しをこうていた|者《もの》であると|知《し》り、|彼《かれ》の|身《み》に|起《おこ》ったことについて、|驚《おどろ》き|怪《あや》しんだ。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》がなおもペテロとヨハネとにつきまとっているとき、|人々《ひとびと》は|皆《みな》ひどく|驚《おどろ》いて、「ソロモンの|廊《ろう》」と|呼《よ》ばれる|柱廊《ちゅうろう》にいた|彼《かれ》らのところに|駆《か》け|集《あつ》まってきた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはこれを|見《み》て、|人々《ひとびと》にむかって|言《い》った、「イスラエルの|人《ひと》たちよ、なぜこの|事《こと》を|不思議《ふしぎ》に|思《おも》うのか。また、わたしたちが|自分《じぶん》の|力《ちから》や|信心《しんじん》で、あの|人《ひと》を|歩《ある》かせたかのように、なぜわたしたちを|見《み》つめているのか。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]アブラハム、イサク、ヤコブの|神《かみ》、わたしたちの|先祖《せんぞ》の|神《かみ》は、その|僕《しもべ》イエスに|栄光《えいこう》を|賜《たま》わったのであるが、あなたがたは、このイエスを|引《ひ》き|渡《わた》し、ピラトがゆるすことに|決《き》めていたのに、それを|彼《かれ》の|面前《めんぜん》で|拒《こば》んだ。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、この|聖《せい》なる|正《ただ》しいかたを|拒《こば》んで、|人殺《ひとごろ》しの|男《おとこ》をゆるすように|要求《ようきゅう》し、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]いのちの|君《きみ》を|殺《ころ》してしまった。しかし、|神《かみ》はこのイエスを|死人《しにん》の|中《なか》から、よみがえらせた。わたしたちは、その|事《こと》の|証人《しょうにん》である。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして、イエスの|名《な》が、それを|信《しん》じる|信仰《しんこう》のゆえに、あなたがたのいま|見《み》て|知《し》っているこの|人《ひと》を、|強《つよ》くしたのであり、イエスによる|信仰《しんこう》が、|彼《かれ》をあなたがた|一同《いちどう》の|前《まえ》で、このとおり|完全《かんぜん》にいやしたのである。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]さて、|兄弟《きょうだい》たちよ、あなたがたは|知《し》らずにあのような|事《こと》をしたのであり、あなたがたの|指導者《しどうしゃ》たちとても|同様《どうよう》であったことは、わたしにわかっている。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はあらゆる|預言者《よげんしゃ》の|口《くち》をとおして、キリストの|受難《じゅなん》を|予告《よこく》しておられたが、それをこのように|成就《じょうじゅ》なさったのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]だから、|自分《じぶん》の|罪《つみ》をぬぐい|去《さ》っていただくために、|悔《く》い|改《あらた》めて|本心《ほんしん》に|立《た》ちかえりなさい。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]それは、|主《しゅ》のみ|前《まえ》から|慰《なぐさ》めの|時《とき》がきて、あなたがたのためにあらかじめ|定《さだ》めてあったキリストなるイエスを、|神《かみ》がつかわして|下《くだ》さるためである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]このイエスは、|神《かみ》が|聖《せい》なる|預言者《よげんしゃ》たちの|口《くち》をとおして、|昔《むかし》から|預言《よげん》しておられた|万物《ばんぶつ》|更新《こうしん》の|時《とき》まで、|天《てん》にとどめておかれねばならなかった。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]モーセは|言《い》った、『|主《しゅ》なる|神《かみ》は、わたしをお|立《た》てになったように、あなたがたの|兄弟《きょうだい》の|中《なか》から、ひとりの|預言者《よげんしゃ》をお|立《た》てになるであろう。その|預言者《よげんしゃ》があなたがたに|語《かた》ることには、ことごとく|聞《き》きしたがいなさい。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》に|聞《き》きしたがわない|者《もの》は、みな|民《たみ》の|中《なか》から|滅《ほろ》ぼし|去《さ》られるであろう』。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]サムエルをはじめ、その|後《のち》つづいて|語《かた》ったほどの|預言者《よげんしゃ》はみな、この|時《とき》のことを|予告《よこく》した。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|預言者《よげんしゃ》の|子《こ》であり、|神《かみ》があなたがたの|先祖《せんぞ》たちと|結《むす》ばれた|契約《けいやく》の|子《こ》である。|神《かみ》はアブラハムに|対《たい》して、『|地上《ちじょう》の|諸《しょ》|民族《みんぞく》は、あなたの|子孫《しそん》によって|祝福《しゅくふく》を|受《う》けるであろう』と|仰《おお》せられた。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》がまずあなたがたのために、その|僕《しもべ》を|立《た》てて、おつかわしになったのは、あなたがたひとりびとりを、|悪《あく》から|立《た》ちかえらせて、|祝福《しゅくふく》にあずからせるためなのである」。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|人々《ひとびと》にこのように|語《かた》っているあいだに、|祭司《さいし》たち、|宮守《みやもり》がしら、サドカイ|人《びと》たちが|近寄《ちかよ》ってきて、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|人々《ひとびと》に|教《おしえ》を|説《と》き、イエス|自身《じしん》に|起《おこ》った|死人《しにん》の|復活《ふっかつ》を|宣伝《せんでん》しているのに|気《き》をいら|立《た》て、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らに|手《て》をかけて|捕《とら》え、はや|日《ひ》が|暮《く》れていたので、|翌《よく》|朝《あさ》まで|留置《りゅうち》しておいた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らの|話《はなし》を|聞《き》いた|多《おお》くの|人《ひと》たちは|信《しん》じた。そして、その|男《おとこ》の|数《かず》が五千|人《にん》ほどになった。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|明《あ》くる|日《ひ》、|役人《やくにん》、|長老《ちょうろう》、|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちが、エルサレムに|召集《しょうしゅう》された。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|大祭司《だいさいし》アンナスをはじめ、カヤパ、ヨハネ、アレキサンデル、そのほか|大祭司《だいさいし》の|一族《いちぞく》もみな|集《あつ》まった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そして、そのまん|中《なか》に|使徒《しと》たちを|立《た》たせて|尋問《じんもん》した、「あなたがたは、いったい、なんの|権威《けんい》、また、だれの|名《な》によって、このことをしたのか」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、ペテロが|聖霊《せいれい》に|満《み》たされて|言《い》った、「|民《たみ》の|役人《やくにん》たち、ならびに|長老《ちょうろう》たちよ、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが、きょう、|取調《とりしら》べを|受《う》けているのは、|病人《びょうにん》に|対《たい》してした|良《よ》いわざについてであり、この|人《ひと》がどうしていやされたかについてであるなら、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたご|一同《いちどう》も、またイスラエルの|人々《ひとびと》|全体《ぜんたい》も、|知《し》っていてもらいたい。この|人《ひと》が|元気《げんき》になってみんなの|前《まえ》に|立《た》っているのは、ひとえに、あなたがたが|十字架《じゅうじか》につけて|殺《ころ》したのを、|神《かみ》が|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせたナザレ|人《びと》イエス・キリストの|御名《みな》によるのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]このイエスこそは『あなたがた|家《いえ》|造《つく》りらに|捨《す》てられたが、|隅《すみ》のかしら|石《いし》となった|石《いし》』なのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》による|以外《いがい》に|救《すくい》はない。わたしたちを|救《すく》いうる|名《な》は、これを|別《べつ》にしては、|天下《てんか》のだれにも|与《あた》えられていないからである」。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はペテロとヨハネとの|大胆《だいたん》な|話《はな》しぶりを|見《み》、また|同時《どうじ》に、ふたりが|無学《むがく》な、ただの|人《ひと》たちであることを|知《し》って、|不思議《ふしぎ》に|思《おも》った。そして|彼《かれ》らがイエスと|共《とも》にいた|者《もの》であることを|認《みと》め、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]かつ、|彼《かれ》らにいやされた|者《もの》がそのそばに|立《た》っているのを|見《み》ては、まったく|返《かえ》す|言葉《ことば》がなかった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ふたりに|議会《ぎかい》から|退場《たいじょう》するように|命《めい》じてから、|互《たがい》に|協議《きょうぎ》をつづけて[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「あの|人《ひと》たちを、どうしたらよかろうか。|彼《かれ》らによって|著《いちじる》しいしるしが|行《おこな》われたことは、エルサレムの|住民《じゅうみん》|全体《ぜんたい》に|知《し》れわたっているので、|否定《ひてい》しようもない。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]ただ、これ|以上《いじょう》このことが|民衆《みんしゅう》の|間《あいだ》にひろまらないように、|今後《こんご》はこの|名《な》によって、いっさいだれにも|語《かた》ってはいけないと、おどしてやろうではないか」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ふたりを|呼《よ》び|入《い》れて、イエスの|名《な》によって|語《かた》ることも|説《と》くことも、いっさい|相成《あいな》らぬと|言《い》いわたした。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ペテロとヨハネとは、これに|対《たい》して|言《い》った、「|神《かみ》に|聞《き》き|従《したが》うよりも、あなたがたに|聞《き》き|従《したが》う|方《ほう》が、|神《かみ》の|前《まえ》に|正《ただ》しいかどうか、|判断《はんだん》してもらいたい。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちとしては、|自分《じぶん》の|見《み》たこと|聞《き》いたことを、|語《かた》らないわけにはいかない」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らはふたりを|更《さら》におどしたうえ、ゆるしてやった。みんなの|者《もの》が、この|出来事《できごと》のために、|神《かみ》をあがめていたので、その|人々《ひとびと》の|手前《てまえ》、ふたりを|罰《ばっ》するすべがなかったからである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そのしるしによっていやされたのは、四十|歳《さい》あまりの|人《ひと》であった。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ふたりはゆるされてから、|仲間《なかま》の|者《もの》たちのところに|帰《かえ》って、|祭司長《さいしちょう》たちや|長老《ちょうろう》たちが|言《い》ったいっさいのことを|報告《ほうこく》した。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|一同《いちどう》はこれを|聞《き》くと、|口《くち》をそろえて、|神《かみ》にむかい|声《こえ》をあげて|言《い》った、「|天《てん》と|地《ち》と|海《うみ》と、その|中《なか》のすべてのものとの|造《つく》りぬしなる|主《しゅ》よ。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、わたしたちの|先祖《せんぞ》、あなたの|僕《しもべ》ダビデの|口《くち》をとおして、|聖霊《せいれい》によって、こう|仰《おお》せになりました、 [#ここから2字下げ] 『なぜ、|異邦人《いほうじん》らは、|騒《さわ》ぎ|立《た》ち、 もろもろの|民《たみ》は、むなしいことを|図《はか》り、 [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|地上《ちじょう》の|王《おう》たちは、|立《た》ちかまえ、 |支配者《しはいしゃ》たちは、|党《とう》を|組《く》んで、 |主《しゅ》とそのキリストとに|逆《さか》らったのか』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]まことに、ヘロデとポンテオ・ピラトとは、|異邦人《いほうじん》らやイスラエルの|民《たみ》と|一緒《いっしょ》になって、この|都《みやこ》に|集《あつ》まり、あなたから|油《あぶら》を|注《そそ》がれた|聖《せい》なる|僕《しもべ》イエスに|逆《さか》らい、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]み|手《て》とみ|旨《むね》とによって、あらかじめ|定《さだ》められていたことを、なし|遂《と》げたのです。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》よ、いま、|彼《かれ》らの|脅迫《きょうはく》に|目《め》をとめ、|僕《しもべ》たちに、|思《おも》い|切《き》って|大胆《だいたん》に|御言葉《みことば》を|語《かた》らせて|下《くだ》さい。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そしてみ|手《て》を|伸《の》ばしていやしをなし、|聖《せい》なる|僕《しもべ》イエスの|名《な》によって、しるしと|奇跡《きせき》とを|行《おこな》わせて|下《くだ》さい」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|祈《いの》り|終《お》えると、その|集《あつ》まっていた|場所《ばしょ》が|揺《ゆ》れ|動《うご》き、|一同《いちどう》は|聖霊《せいれい》に|満《み》たされて、|大胆《だいたん》に|神《かみ》の|言《ことば》を|語《かた》り|出《だ》した。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|信《しん》じた|者《もの》の|群《む》れは、|心《こころ》を一つにし|思《おも》いを一つにして、だれひとりその|持《も》ち|物《もの》を|自分《じぶん》のものだと|主張《しゅちょう》する|者《もの》がなく、いっさいの|物《もの》を|共有《きょうゆう》にしていた。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|使徒《しと》たちは|主《しゅ》イエスの|復活《ふっかつ》について、|非常《ひじょう》に|力強《ちからづよ》くあかしをした。そして|大《おお》きなめぐみが、|彼《かれ》ら|一同《いちどう》に|注《そそ》がれた。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|中《なか》に|乏《とぼ》しい|者《もの》は、ひとりもいなかった。|地所《じしょ》や|家屋《かおく》を|持《も》っている|人《ひと》たちは、それを|売《う》り、|売《う》った|物《もの》の|代金《だいきん》をもってきて、[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|使徒《しと》たちの|足《あし》もとに|置《お》いた。そしてそれぞれの|必要《ひつよう》に|応《おう》じて、だれにでも|分《わ》け|与《あた》えられた。  [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]クプロ|生《うま》れのレビ|人《びと》で、|使徒《しと》たちにバルナバ(「|慰《なぐさ》めの|子《こ》」との|意《い》)と|呼《よ》ばれていたヨセフは、[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|所有《しょゆう》する|畑《はたけ》を|売《う》り、その|代金《だいきん》をもってきて、|使徒《しと》たちの|足《あし》もとに|置《お》いた。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]ところが、アナニヤという|人《ひと》とその|妻《つま》サッピラとは|共《とも》に|資産《しさん》を|売《う》ったが、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|共謀《きょうぼう》して、その|代金《だいきん》をごまかし、|一部《いちぶ》だけを|持《も》ってきて、|使徒《しと》たちの|足《あし》もとに|置《お》いた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ペテロが|言《い》った、「アナニヤよ、どうしてあなたは、|自分《じぶん》の|心《こころ》をサタンに|奪《うば》われて、|聖霊《せいれい》を|欺《あざむ》き、|地所《じしょ》の|代金《だいきん》をごまかしたのか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|売《う》らずに|残《のこ》しておけば、あなたのものであり、|売《う》ってしまっても、あなたの|自由《じゆう》になったはずではないか。どうして、こんなことをする|気《き》になったのか。あなたは|人《ひと》を|欺《あざむ》いたのではなくて、|神《かみ》を|欺《あざむ》いたのだ」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]アナニヤはこの|言葉《ことば》を|聞《き》いているうちに、|倒《たお》れて|息《いき》が|絶《た》えた。このことを|伝《つた》え|聞《き》いた|人々《ひとびと》は、みな|非常《ひじょう》なおそれを|感《かん》じた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]それから、|若者《わかもの》たちが|立《た》って、その|死体《したい》を|包《つつ》み、|運《はこ》び|出《だ》して|葬《ほうむ》った。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]三|時間《じかん》ばかりたってから、たまたま|彼《かれ》の|妻《つま》が、この|出来事《できごと》を|知《し》らずに、はいってきた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ペテロが|彼女《かのじょ》にむかって|言《い》った、「あの|地所《じしょ》は、これこれの|値段《ねだん》で|売《う》ったのか。そのとおりか」。|彼女《かのじょ》は「そうです、その|値段《ねだん》です」と|答《こた》えた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|言《い》った、「あなたがたふたりが、|心《こころ》を|合《あ》わせて|主《しゅ》の|御霊《みたま》を|試《こころ》みるとは、|何事《なにごと》であるか。|見《み》よ、あなたの|夫《おっと》を|葬《ほうむ》った|人《ひと》たちの|足《あし》が、そこの|門口《かどぐち》にきている。あなたも|運《はこ》び|出《だ》されるであろう」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]すると|女《おんな》は、たちまち|彼《かれ》の|足《あし》もとに|倒《たお》れて、|息《いき》が|絶《た》えた。そこに|若者《わかもの》たちがはいってきて、|女《おんな》が|死《し》んでしまっているのを|見《み》、それを|運《はこ》び|出《だ》してその|夫《おっと》のそばに|葬《ほうむ》った。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|教会《きょうかい》|全体《ぜんたい》ならびにこれを|伝《つた》え|聞《き》いた|人《ひと》たちは、みな|非常《ひじょう》なおそれを|感《かん》じた。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、|多《おお》くのしるしと|奇跡《きせき》とが、|次々《つぎつぎ》に|使徒《しと》たちの|手《て》により|人々《ひとびと》の|中《なか》で|行《おこな》われた。そして、|一同《いちどう》は|心《こころ》を一つにして、ソロモンの|廊《ろう》に|集《あつ》まっていた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|者《もの》たちは、だれひとり、その|交《まじ》わりに|入《い》ろうとはしなかったが、|民衆《みんしゅう》は|彼《かれ》らを|尊敬《そんけい》していた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|主《しゅ》を|信《しん》じて|仲間《なかま》に|加《くわ》わる|者《もの》が、|男女《だんじょ》とも、ますます|多《おお》くなってきた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ついには、|病人《びょうにん》を|大通《おおどお》りに|運《はこ》び|出《だ》し、|寝台《しんだい》や|寝床《ねどこ》の|上《うえ》に|置《お》いて、ペテロが|通《とお》るとき、|彼《かれ》の|影《かげ》なりと、そのうちのだれかにかかるようにしたほどであった。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]またエルサレム|附近《ふきん》の|町々《まちまち》からも、|大《おお》ぜいの|人《ひと》が、|病人《びょうにん》や|汚《けが》れた|霊《れい》に|苦《くる》しめられている|人《ひと》たちを|引《ひ》き|連《つ》れて、|集《あつ》まってきたが、その|全部《ぜんぶ》の|者《もの》が、ひとり|残《のこ》らずいやされた。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|大祭司《だいさいし》とその|仲間《なかま》の|者《もの》、すなわち、サドカイ|派《は》の|人《ひと》たちが、みな|嫉妬《しっと》の|念《ねん》に|満《み》たされて|立《た》ちあがり、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|使徒《しと》たちに|手《て》をかけて|捕《とら》え、|公共《こうきょう》の|留置場《りゅうちじょう》に|入《い》れた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ところが|夜《よる》、|主《しゅ》の|使《つかい》が|獄《ごく》の|戸《と》を|開《ひら》き、|彼《かれ》らを|連《つ》れ|出《だ》して|言《い》った、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]「さあ|行《い》きなさい。そして、|宮《みや》の|庭《にわ》に|立《た》ち、この|命《いのち》の|言葉《ことば》を|漏《も》れなく、|人々《ひとびと》に|語《かた》りなさい」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはこれを|聞《き》き、|夜明《よあ》けごろ|宮《みや》にはいって|教《おし》えはじめた。  |一方《いっぽう》では、|大祭司《だいさいし》とその|仲間《なかま》の|者《もの》とが、|集《あつ》まってきて、|議会《ぎかい》とイスラエル|人《びと》の|長老《ちょうろう》|一同《いちどう》とを|召集《しょうしゅう》し、|使徒《しと》たちを|引《ひ》き|出《だ》してこさせるために、|人《ひと》を|獄《ごく》につかわした。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|下役《したやく》どもが|行《い》って|見《み》ると、|使徒《しと》たちが|獄《ごく》にいないので、|引《ひ》き|返《かえ》して|報告《ほうこく》した、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]「|獄《ごく》には、しっかりと|錠《じょう》がかけてあり、|戸口《とぐち》には、|番人《ばんにん》が|立《た》っていました。ところが、あけて|見《み》たら、|中《なか》にはだれもいませんでした」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|宮守《みやもり》がしらと|祭司長《さいしちょう》たちとは、この|報告《ほうこく》を|聞《き》いて、これは、いったい、どんな|事《こと》になるのだろうと、あわて|惑《まど》っていた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこへ、ある|人《ひと》がきて|知《し》らせた、「|行《い》ってごらんなさい。あなたがたが|獄《ごく》に|入《い》れたあの|人《ひと》たちが、|宮《みや》の|庭《にわ》に|立《た》って、|民衆《みんしゅう》を|教《おし》えています」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこで|宮守《みやもり》がしらが、|下役《したやく》どもと|一緒《いっしょ》に|出《で》かけて|行《い》って、|使徒《しと》たちを|連《つ》れてきた。しかし、|人々《ひとびと》に|石《いし》で|打《う》ち|殺《ころ》されるのを|恐《おそ》れて、|手荒《てあら》なことはせず、[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らを|連《つ》れてきて、|議会《ぎかい》の|中《なか》に|立《た》たせた。すると、|大祭司《だいさいし》が|問《と》うて[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「あの|名《な》を|使《つか》って|教《おし》えてはならないと、きびしく|命《めい》じておいたではないか。それだのに、なんという|事《こと》だ。エルサレム|中《なか》にあなたがたの|教《おしえ》を、はんらんさせている。あなたがたは|確《たし》かに、あの|人《ひと》の|血《ち》の|責任《せきにん》をわたしたちに|負《お》わせようと、たくらんでいるのだ」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]これに|対《たい》して、ペテロをはじめ|使徒《しと》たちは|言《い》った、「|人間《にんげん》に|従《したが》うよりは、|神《かみ》に|従《したが》うべきである。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|先祖《せんぞ》の|神《かみ》は、あなたがたが|木《き》にかけて|殺《ころ》したイエスをよみがえらせ、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]そして、イスラエルを|悔《く》い|改《あらた》めさせてこれに|罪《つみ》のゆるしを|与《あた》えるために、このイエスを|導《みちび》き|手《て》とし|救主《すくいぬし》として、ご|自身《じしん》の|右《みぎ》に|上《あ》げられたのである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちはこれらの|事《こと》の|証人《しょうにん》である。|神《かみ》がご|自身《じしん》に|従《したが》う|者《もの》に|賜《たま》わった|聖霊《せいれい》もまた、その|証人《しょうにん》である」。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]これを|聞《き》いた|者《もの》たちは、|激《はげ》しい|怒《いか》りのあまり、|使徒《しと》たちを|殺《ころ》そうと|思《おも》った。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|国民《こくみん》|全体《ぜんたい》に|尊敬《そんけい》されていた|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》ガマリエルというパリサイ|人《びと》が、|議会《ぎかい》で|立《た》って、|使徒《しと》たちをしばらくのあいだ|外《そと》に|出《だ》すように|要求《ようきゅう》してから、[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|一同《いちどう》にむかって|言《い》った、「イスラエルの|諸君《しょくん》、あの|人《ひと》たちをどう|扱《あつか》うか、よく|気《き》をつけるがよい。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|先《さき》ごろ、チゥダが|起《おこ》って、|自分《じぶん》を|何《なに》か|偉《えら》い|者《もの》のように|言《い》いふらしたため、|彼《かれ》に|従《したが》った|男《おとこ》の|数《かず》が、四百|人《にん》ほどもあったが、|結局《けっきょく》、|彼《かれ》は|殺《ころ》されてしまい、|従《したが》った|者《もの》もみな|四散《しさん》して、|全《まった》く|跡《あと》|方《ほう》もなくなっている。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そののち、|人口《じんこう》|調査《ちょうさ》の|時《とき》に、ガリラヤ|人《ひと》ユダが|民衆《みんしゅう》を|率《ひき》いて|反乱《はんらん》を|起《おこ》したが、この|人《ひと》も|滅《ほろ》び、|従《したが》った|者《もの》もみな|散《ち》らされてしまった。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、この|際《さい》、|諸君《しょくん》に|申《もう》し|上《あ》げる。あの|人《ひと》たちから|手《て》を|引《ひ》いて、そのなすままにしておきなさい。その|企《くわだ》てや、しわざが、|人間《にんげん》から|出《で》たものなら、|自滅《じめつ》するだろう。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もし|神《かみ》から|出《で》たものなら、あの|人《ひと》たちを|滅《ほろ》ぼすことはできまい。まかり|違《ちが》えば、|諸君《しょくん》は|神《かみ》を|敵《てき》にまわすことになるかも|知《し》れない」。そこで|彼《かれ》らはその|勧告《かんこく》にしたがい、[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|使徒《しと》たちを|呼《よ》び|入《い》れて、むち|打《う》ったのち、|今後《こんご》イエスの|名《な》によって|語《かた》ることは|相成《あいな》らぬと|言《い》いわたして、ゆるしてやった。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|使徒《しと》たちは、|御名《みな》のために|恥《はじ》を|加《くわ》えられるに|足《た》る|者《もの》とされたことを|喜《よろこ》びながら、|議会《ぎかい》から|出《で》てきた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]そして、|毎日《まいにち》、|宮《みや》や|家《いえ》で、イエスがキリストであることを、|引《ひ》きつづき|教《おし》えたり|宣《の》べ|伝《つた》えたりした。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、|弟子《でし》の|数《かず》がふえてくるにつれて、ギリシヤ|語《ご》を|使《つか》うユダヤ|人《じん》たちから、ヘブル|語《ご》を|使《つか》うユダヤ|人《じん》たちに|対《たい》して、|自分《じぶん》たちのやもめらが、|日々《ひび》の|配給《はいきゅう》で、おろそかにされがちだと、|苦情《くじょう》を|申《もう》し|立《た》てた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、十二|使徒《しと》は|弟子《でし》|全体《ぜんたい》を|呼《よ》び|集《あつ》めて|言《い》った、「わたしたちが|神《かみ》の|言《ことば》をさしおいて、|食卓《しょくたく》のことに|携《たずさ》わるのはおもしろくない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|兄弟《きょうだい》たちよ、あなたがたの|中《なか》から、|御霊《みたま》と|知恵《ちえ》とに|満《み》ちた、|評判《ひょうばん》のよい|人《ひと》たち七|人《にん》を|捜《さが》し|出《だ》してほしい。その|人《ひと》たちにこの|仕事《しごと》をまかせ、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、もっぱら|祈《いのり》と|御言《みことば》のご|用《よう》に|当《あた》ることにしよう」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]この|提案《ていあん》は|会衆《かいしゅう》|一同《いちどう》の|賛成《さんせい》するところとなった。そして|信仰《しんこう》と|聖霊《せいれい》とに|満《み》ちた|人《ひと》ステパノ、それからピリポ、プロコロ、ニカノル、テモン、パルメナ、およびアンテオケの|改宗者《かいしゅうしゃ》ニコラオを|選《えら》び|出《だ》して、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|使徒《しと》たちの|前《まえ》に|立《た》たせた。すると、|使徒《しと》たちは|祈《いの》って|手《て》を|彼《かれ》らの|上《うえ》においた。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]こうして|神《かみ》の|言《ことば》は、ますますひろまり、エルサレムにおける|弟子《でし》の|数《かず》が、|非常《ひじょう》にふえていき、|祭司《さいし》たちも|多数《たすう》、|信仰《しんこう》を|受《う》けいれるようになった。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]さて、ステパノは|恵《めぐ》みと|力《ちから》とに|満《み》ちて、|民衆《みんしゅう》の|中《なか》で、めざましい|奇跡《きせき》としるしとを|行《おこな》っていた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すると、いわゆる「リベルテン」の|会堂《かいどう》に|属《ぞく》する|人々《ひとびと》、クレネ|人《びと》、アレキサンドリヤ|人《びと》、キリキヤやアジヤからきた|人々《ひとびと》などが|立《た》って、ステパノと|議論《ぎろん》したが、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|知恵《ちえ》と|御霊《みたま》とで|語《かた》っていたので、それに|対抗《たいこう》できなかった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らは|人々《ひとびと》をそそのかして、「わたしたちは、|彼《かれ》がモーセと|神《かみ》とを|汚《けが》す|言葉《ことば》を|吐《は》くのを|聞《き》いた」と|言《い》わせた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]その|上《うえ》、|民衆《みんしゅう》や|長老《ちょうろう》たちや|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちを|煽動《せんどう》し、|彼《かれ》を|襲《おそ》って|捕《とら》えさせ、|議会《ぎかい》にひっぱってこさせた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それから、|偽《いつわ》りの|証人《しょうにん》たちを|立《た》てて|言《い》わせた、「この|人《ひと》は、この|聖所《せいじょ》と|律法《りっぽう》とに|逆《さか》らう|言葉《ことば》を|吐《は》いて、どうしても、やめようとはしません。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]『あのナザレ|人《びと》イエスは、この|聖所《せいじょ》を|打《う》ちこわし、モーセがわたしたちに|伝《つた》えた|慣例《かんれい》を|変《か》えてしまうだろう』などと、|彼《かれ》が|言《い》うのを、わたしたちは|聞《き》きました」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|議会《ぎかい》で|席《せき》についていた|人《ひと》たちは|皆《みな》、ステパノに|目《め》を|注《そそ》いだが、|彼《かれ》の|顔《かお》は、ちょうど|天使《てんし》の|顔《かお》のように|見《み》えた。 第七章[#「第七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|大祭司《だいさいし》は「そのとおりか」と|尋《たず》ねた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ステパノが|言《い》った、  「|兄弟《きょうだい》たち、|父《ちち》たちよ、お|聞《き》き|下《くだ》さい。わたしたちの|父祖《ふそ》アブラハムが、カランに|住《す》む|前《まえ》、まだメソポタミヤにいたとき、|栄光《えいこう》の|神《かみ》が|彼《かれ》に|現《あらわ》れて[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|仰《おお》せになった、『あなたの|土地《とち》と|親族《しんぞく》から|離《はな》れて、あなたにさし|示《しめ》す|地《ち》に|行《い》きなさい』。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、アブラハムはカルデヤ|人《びと》の|地《ち》を|出《で》て、カランに|住《す》んだ。そして、|彼《かれ》の|父《ちち》が|死《し》んだのち、|神《かみ》は|彼《かれ》をそこから、|今《いま》あなたがたの|住《す》んでいるこの|地《ち》に|移住《いじゅう》させたが、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこでは、|遺産《いさん》となるものは|何《なに》一つ、|一歩《いっぽ》の|幅《はば》の|土地《とち》すらも、|与《あた》えられなかった。ただ、その|地《ち》を|所領《しょりょう》として|授《さづ》けようとの|約束《やくそく》を、|彼《かれ》と、そして|彼《かれ》にはまだ|子《こ》がなかったのに、その|子孫《しそん》とに|与《あた》えられたのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はこう|仰《おお》せになった、『|彼《かれ》の|子孫《しそん》は|他国《たこく》に|身《み》を|寄《よ》せるであろう。そして、そこで四百|年《ねん》のあいだ、|奴隷《どれい》にされて|虐待《ぎゃくたい》を|受《う》けるであろう』。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それから、さらに|仰《おお》せになった、『|彼《かれ》らを|奴隷《どれい》にする|国民《こくみん》を、わたしはさばくであろう。その|後《のち》、|彼《かれ》らはそこからのがれ|出《で》て、この|場所《ばしょ》でわたしを|礼拝《れいはい》するであろう』。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そして、|神《かみ》はアブラハムに、|割礼《かつれい》の|契約《けいやく》をお|与《あた》えになった。こうして、|彼《かれ》はイサクの|父《ちち》となり、これに八|日目《かめ》に|割礼《かつれい》を|施《ほどこ》し、それから、イサクはヤコブの|父《ちち》となり、ヤコブは十二|人《にん》の|族長《ぞくちょう》たちの|父《ちち》となった。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|族長《ぞくちょう》たちは、ヨセフをねたんで、エジプトに|売《う》りとばした。しかし、|神《かみ》は|彼《かれ》と|共《とも》にいまして、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あらゆる|苦難《くなん》から|彼《かれ》を|救《すく》い|出《だ》し、エジプト|王《おう》パロの|前《まえ》で|恵《めぐ》みを|与《あた》え、|知恵《ちえ》をあらわさせた。そこで、パロは|彼《かれ》を|宰相《さいしょう》の|任《にん》につかせ、エジプトならびに|王家《おうけ》|全体《ぜんたい》の|支配《しはい》に|当《あた》らせた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|時《とき》に、エジプトとカナンとの|全土《ぜんど》にわたって、ききんが|起《おこ》り、|大《おお》きな|苦難《くなん》が|襲《おそ》ってきて、わたしたちの|先祖《せんぞ》たちは、|食物《しょくもつ》が|得《え》られなくなった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ヤコブは、エジプトには|食糧《しょくりょう》があると|聞《き》いて、|初《はじ》めに|先祖《せんぞ》たちをつかわしたが、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]二|回《かい》|目《め》の|時《とき》に、ヨセフが|兄弟《きょうだい》たちに、|自分《じぶん》の|身《み》の|上《うえ》を|打《う》ち|明《あ》けたので、|彼《かれ》の|親族《しんぞく》|関係《かんけい》がパロに|知《し》れてきた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ヨセフは|使《つかい》をやって、|父《ちち》ヤコブと七十五|人《にん》にのぼる|親族《しんぞく》|一同《いちどう》とを|招《まね》いた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]こうして、ヤコブはエジプトに|下《くだ》り、|彼《かれ》|自身《じしん》も|先祖《せんぞ》たちもそこで|死《し》に、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》らは、シケムに|移《うつ》されて、かねてアブラハムがいくらかの|金《かね》を|出《だ》してこの|地《ち》のハモルの|子《こ》らから|買《か》っておいた|墓《はか》に、|葬《ほうむ》られた。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》がアブラハムに|対《たい》して|立《た》てられた|約束《やくそく》の|時期《じき》が|近《ちか》づくにつれ、|民《たみ》はふえてエジプト|全土《ぜんど》にひろがった。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]やがて、ヨセフのことを|知《し》らない|別《べつ》な|王《おう》が、エジプトに|起《おこ》った。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]この|王《おう》は、わたしたちの|同族《どうぞく》に|対《たい》し|策略《さくりゃく》をめぐらして、|先祖《せんぞ》たちを|虐待《ぎゃくたい》し、その|幼《おさ》な|子《ご》らを|生《い》かしておかないように|捨《す》てさせた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]モーセが|生《うま》れたのは、ちょうどこのころのことである。|彼《かれ》はまれに|見《み》る|美《うつく》しい|子《こ》であった。三か|月《げつ》の|間《あいだ》は、|父《ちち》の|家《いえ》で|育《そだ》てられたが、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そののち|捨《す》てられたのを、パロの|娘《むすめ》が|拾《ひろ》いあげて、|自分《じぶん》の|子《こ》として|育《そだ》てた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]モーセはエジプト|人《じん》のあらゆる|学問《がくもん》を|教《おし》え|込《こ》まれ、|言葉《ことば》にもわざにも、|力《ちから》があった。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]四十|歳《さい》になった|時《とき》、モーセは|自分《じぶん》の|兄弟《きょうだい》であるイスラエル|人《びと》たちのために|尽《つく》すことを、|思《おも》い|立《た》った。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、そのひとりがいじめられているのを|見《み》て、これをかばい、|虐待《ぎゃくたい》されているその|人《ひと》のために、|相手《あいて》のエジプト|人《じん》を|撃《う》って|仕返《しかえ》しをした。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、|自分《じぶん》の|手《て》によって|神《かみ》が|兄弟《きょうだい》たちを|救《すく》って|下《くだ》さることを、みんなが|悟《さと》るものと|思《おも》っていたが、|実際《じっさい》はそれを|悟《さと》らなかったのである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|翌日《よくじつ》モーセは、|彼《かれ》らが|争《あらそ》い|合《あ》っているところに|現《あらわ》れ、|仲裁《ちゅうさい》しようとして|言《い》った、『まて、|君《きみ》たちは|兄弟《きょうだい》|同志《どうし》ではないか。どうして|互《たがい》に|傷《きず》つけ|合《あ》っているのか』。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]すると、|仲間《なかま》をいじめていた|者《もの》が、モーセを|突《つ》き|飛《と》ばして|言《い》った、『だれが、|君《きみ》をわれわれの|支配者《しはいしゃ》や|裁判人《さいばんにん》にしたのか。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|君《きみ》は、きのう、エジプト|人《じん》を|殺《ころ》したように、わたしも|殺《ころ》そうと|思《おも》っているのか』。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]モーセは、この|言葉《ことば》を|聞《き》いて|逃《に》げ、ミデアンの|地《ち》に|身《み》を|寄《よ》せ、そこで|男《おとこ》の|子《こ》ふたりをもうけた。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]四十|年《ねん》たった|時《とき》、シナイ|山《ざん》の|荒野《あらの》において、|御使《みつかい》が|柴《しば》の|燃《も》える|炎《ほのお》の|中《なか》でモーセに|現《あらわ》れた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はこの|光景《こうけい》を|見《み》て|不思議《ふしぎ》に|思《おも》い、それを|見《み》きわめるために|近寄《ちかよ》ったところ、|主《しゅ》の|声《こえ》が|聞《きこ》えてきた、[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]『わたしは、あなたの|先祖《せんぞ》たちの|神《かみ》、アブラハム、イサク、ヤコブの|神《かみ》である』。モーセは|恐《おそ》れおののいて、もうそれを|見《み》る|勇気《ゆうき》もなくなった。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]すると、|主《しゅ》が|彼《かれ》に|言《い》われた、『あなたの|足《あし》から、くつを|脱《ぬ》ぎなさい。あなたの|立《た》っているこの|場所《ばしょ》は、|聖《せい》なる|地《ち》である。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、エジプトにいるわたしの|民《たみ》が|虐待《ぎゃくたい》されている|有様《ありさま》を|確《たし》かに|見《み》とどけ、その|苦悩《くのう》のうめき|声《ごえ》を|聞《き》いたので、|彼《かれ》らを|救《すく》い|出《だ》すために|下《くだ》ってきたのである。さあ、|今《いま》あなたをエジプトにつかわそう』。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]こうして、『だれが、|君《きみ》を|支配者《しはいしゃ》や|裁判人《さいばんにん》にしたのか』と|言《い》って|排斥《はいせき》されたこのモーセを、|神《かみ》は、|柴《しば》の|中《なか》で|彼《かれ》に|現《あらわ》れた|御使《みつかい》の|手《て》によって、|支配者《しはいしゃ》、|解放者《かいほうしゃ》として、おつかわしになったのである。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》が、|人々《ひとびと》を|導《みちび》き|出《だ》して、エジプトの|地《ち》においても、|紅海《こうかい》においても、また四十|年《ねん》のあいだ|荒野《あらの》においても、|奇跡《きせき》としるしとを|行《おこな》ったのである。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》が、イスラエル|人《ひと》たちに、『|神《かみ》はわたしをお|立《た》てになったように、あなたがたの|兄弟《きょうだい》たちの|中《なか》から、ひとりの|預言者《よげんしゃ》をお|立《た》てになるであろう』と|言《い》ったモーセである。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》が、シナイ|山《ざん》で、|彼《かれ》に|語《かた》りかけた|御使《みつかい》や|先祖《せんぞ》たちと|共《とも》に、|荒野《あらの》における|集会《しゅうかい》にいて、|生《い》ける|御言葉《みことば》を|授《さず》かり、それをあなたがたに|伝《つた》えたのである。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|先祖《せんぞ》たちは|彼《かれ》に|従《したが》おうとはせず、かえって|彼《かれ》を|退《しりぞ》け、|心《こころ》の|中《なか》でエジプトにあこがれて、[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]『わたしたちを|導《みちび》いてくれる|神々《かみがみ》を|造《つく》って|下《くだ》さい。わたしたちをエジプトの|地《ち》から|導《みちび》いてきたあのモーセがどうなったのか、わかりませんから』とアロンに|言《い》った。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、|彼《かれ》らは|子《こ》|牛《うし》の|像《ぞう》を|造《つく》り、その|偶像《ぐうぞう》に|供《そな》え|物《もの》をささげ、|自分《じぶん》たちの|手《て》で|造《つく》ったものを|祭《まつ》ってうち興じていた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|神《かみ》は|顔《かお》をそむけ、|彼《かれ》らを|天《てん》の|星《ほし》を|拝《おが》むままに|任《まか》せられた。|預言者《よげんしゃ》の|書《しょ》にこう|書《か》いてあるとおりである、 [#ここから2字下げ] 『イスラエルの|家《いえ》よ、 四十|年《ねん》のあいだ|荒野《あらの》にいた|時《とき》に、 いけにえと|供《そな》え|物《もの》とを、わたしにささげたことがあったか。 [#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、モロクの|幕屋《まくや》やロンパの|星《ほし》の|神《かみ》を、かつぎ|回《まわ》った。 それらは、|拝《おが》むために|自分《じぶん》で|造《つく》った|偶像《ぐうぞう》に|過《す》ぎぬ。 だからわたしは、あなたがたをバビロンのかなたへ、|移《うつ》してしまうであろう』。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|先祖《せんぞ》には、|荒野《あらの》にあかしの|幕屋《まくや》があった。それは、|見《み》たままの|型《かた》にしたがって|造《つく》るようにと、モーセに|語《かた》ったかたのご|命令《めいれい》どおりに|造《つく》ったものである。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]この|幕屋《まくや》は、わたしたちの|先祖《せんぞ》が、ヨシュアに|率《ひき》いられ、|神《かみ》によって|諸《しょ》|民族《みんぞく》を|彼《かれ》らの|前《まえ》から|追《お》い|払《はら》い、その|所領《しょりょう》をのり|取《と》ったときに、そこに|持《も》ち|込《こ》まれ、|次々《つぎつぎ》に|受《う》け|継《つ》がれて、ダビデの|時代《じだい》に|及《およ》んだものである。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]ダビデは、|神《かみ》の|恵《めぐ》みをこうむり、そして、ヤコブの|神《かみ》のために|宮《みや》を|造営《ぞうえい》したいと|願《ねが》った。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]けれども、じっさいにその|宮《みや》を|建《た》てたのは、ソロモンであった。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、いと|高《たか》き|者《もの》は、|手《て》で|造《つく》った|家《いえ》の|内《うち》にはお|住《す》みにならない。|預言者《よげんしゃ》が|言《い》っているとおりである、 [#ここから2字下げ] [#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]『|主《しゅ》が|仰《おお》せられる、 どんな|家《いえ》をわたしのために|建《た》てるのか。 わたしのいこいの|場所《ばしょ》は、どれか。 |天《てん》はわたしの|王座《おうざ》、 |地《ち》はわたしの|足《あし》|台《だい》である。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]これは|皆《みな》わたしの|手《て》が|造《つく》ったものではないか』。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]ああ、|強情《ごうじょう》で、|心《こころ》にも|耳《みみ》にも|割礼《かつれい》のない|人《ひと》たちよ。あなたがたは、いつも|聖霊《せいれい》に|逆《さか》らっている。それは、あなたがたの|先祖《せんぞ》たちと|同《おな》じである。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]いったい、あなたがたの|先祖《せんぞ》が|迫害《はくがい》しなかった|預言者《よげんしゃ》が、ひとりでもいたか。|彼《かれ》らは|正《ただ》しいかたの|来《く》ることを|予告《よこく》した|人《ひと》たちを|殺《ころ》し、|今《いま》やあなたがたは、その|正《ただ》しいかたを|裏切《うらぎ》る|者《もの》、また|殺《ころ》す|者《もの》となった。[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|御使《みつかい》たちによって|伝《つた》えられた|律法《りっぽう》を|受《う》けたのに、それを|守《まも》ることをしなかった」。  [#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はこれを|聞《き》いて、|心《こころ》の|底《そこ》から|激《はげ》しく|怒《いか》り、ステパノにむかって、|歯《は》ぎしりをした。[#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》は|聖霊《せいれい》に|満《み》たされて、|天《てん》を|見《み》つめていると、|神《かみ》の|栄光《えいこう》が|現《あらわ》れ、イエスが|神《かみ》の|右《みぎ》に|立《た》っておられるのが|見《み》えた。[#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》は「ああ、|天《てん》が|開《ひら》けて、|人《ひと》の|子《こ》が|神《かみ》の|右《みぎ》に|立《た》っておいでになるのが|見《み》える」と|言《い》った。[#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は|大声《おおごえ》で|叫《さけ》びながら、|耳《みみ》をおおい、ステパノを|目《め》がけて、いっせいに|殺到《さっとう》し、[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》を|市外《しがい》に|引《ひ》き|出《だ》して、|石《いし》で|打《う》った。これに|立《た》ち|合《あ》った|人《ひと》たちは、|自分《じぶん》の|上着《うわぎ》を|脱《ぬ》いで、サウロという|若者《わかもの》の|足《あし》もとに|置《お》いた。[#太字]五九[#「五九」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|彼《かれ》らがステパノに|石《いし》を|投《な》げつけている|間《あいだ》、ステパノは|祈《いの》りつづけて|言《い》った、「|主《しゅ》イエスよ、わたしの|霊《れい》をお|受《う》け|下《くだ》さい」。[#太字]六〇[#「六〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、ひざまずいて、|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んだ、「|主《しゅ》よ、どうぞ、この|罪《つみ》を|彼《かれ》らに|負《お》わせないで|下《くだ》さい」。こう|言《い》って、|彼《かれ》は|眠《ねむ》りについた。 第八章[#「第八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]サウロは、ステパノを|殺《ころ》すことに|賛成《さんせい》していた。  その|日《ひ》、エルサレムの|教会《きょうかい》に|対《たい》して|大《おお》|迫害《はくがい》が|起《おこ》り、|使徒《しと》|以外《いがい》の|者《もの》はことごとく、ユダヤとサマリヤとの|地方《ちほう》に|散《ち》らされて|行《い》った。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》|深《ぶか》い|人《ひと》たちはステパノを|葬《ほうむ》り、|彼《かれ》のために|胸《むね》を|打《う》って、|非常《ひじょう》に|悲《かな》しんだ。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ところが、サウロは|家々《いえいえ》に|押《お》し|入《い》って、|男《おとこ》や|女《おんな》を|引《ひ》きずり|出《だ》し、|次々《つぎつぎ》に|獄《ごく》に|渡《わた》して、|教会《きょうかい》を|荒《あら》し|回《まわ》った。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]さて、|散《ち》らされて|行《い》った|人《ひと》たちは、|御言《みことば》を|宣《の》べ|伝《つた》えながら、めぐり|歩《ある》いた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ピリポはサマリヤの|町《まち》に|下《くだ》って|行《い》き、|人々《ひとびと》にキリストを|宣《の》べはじめた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》はピリポの|話《はなし》を|聞《き》き、その|行《おこな》っていたしるしを|見《み》て、こぞって|彼《かれ》の|語《かた》ることに|耳《みみ》を|傾《かたむ》けた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|汚《けが》れた|霊《れい》につかれた|多《おお》くの|人々《ひとびと》からは、その|霊《れい》が|大声《おおごえ》でわめきながら|出《で》て|行《い》くし、また、|多《おお》くの|中風《ちゅうぶ》をわずらっている|者《もの》や、|足《あし》のきかない|者《もの》がいやされたからである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それで、この|町《まち》では|人々《ひとびと》が、|大変《たいへん》なよろこびかたであった。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]さて、この|町《まち》に|以前《いぜん》からシモンという|人《ひと》がいた。|彼《かれ》は|魔術《まじゅつ》を|行《おこな》ってサマリヤの|人《ひと》たちを|驚《おどろ》かし、|自分《じぶん》をさも|偉《えら》い|者《もの》のように|言《い》いふらしていた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それで、|小《ちい》さい|者《もの》から|大《おお》きい|者《もの》にいたるまで|皆《みな》、|彼《かれ》について|行《い》き、「この|人《ひと》こそは『|大能《たいのう》』と|呼《よ》ばれる|神《かみ》の|力《ちから》である」と|言《い》っていた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがこの|人《ひと》について|行《い》ったのは、ながい|間《あいだ》その|魔術《まじゅつ》に|驚《おどろ》かされていたためであった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ピリポが|神《かみ》の|国《くに》とイエス・キリストの|名《な》について|宣《の》べ|伝《つた》えるに|及《およ》んで、|男《おとこ》も|女《おんな》も|信《しん》じて、ぞくぞくとバプテスマを|受《う》けた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]シモン|自身《じしん》も|信《しん》じて、バプテスマを|受《う》け、それから、|引《ひ》きつづきピリポについて|行《い》った。そして、|数々《かずかず》のしるしやめざましい|奇跡《きせき》が|行《おこな》われるのを|見《み》て、|驚《おどろ》いていた。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]エルサレムにいる|使徒《しと》たちは、サマリヤの|人々《ひとびと》が、|神《かみ》の|言《ことば》を|受《う》け|入《い》れたと|聞《き》いて、ペテロとヨハネとを、そこにつかわした。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ふたりはサマリヤに|下《くだ》って|行《い》って、みんなが|聖霊《せいれい》を|受《う》けるようにと、|彼《かれ》らのために|祈《いの》った。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それは、|彼《かれ》らはただ|主《しゅ》イエスの|名《な》によってバプテスマを|受《う》けていただけで、|聖霊《せいれい》はまだだれにも|下《くだ》っていなかったからである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ふたりが|手《て》を|彼《かれ》らの|上《うえ》においたところ、|彼《かれ》らは|聖霊《せいれい》を|受《う》けた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]シモンは、|使徒《しと》たちが|手《て》をおいたために、|御霊《みたま》が|人々《ひとびと》に|授《さづ》けられたのを|見《み》て、|金《かね》をさし|出《だ》し、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]「わたしが|手《て》をおけばだれにでも|聖霊《せいれい》が|授《さづ》けられるように、その|力《ちから》をわたしにも|下《くだ》さい」と|言《い》った。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ペテロが|彼《かれ》に|言《い》った、「おまえの|金《かね》は、おまえもろとも、うせてしまえ。|神《かみ》の|賜物《たまもの》が、|金《かね》で|得《え》られるなどと|思《おも》っているのか。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]おまえの|心《こころ》が|神《かみ》の|前《まえ》に|正《ただ》しくないから、おまえは、とうてい、この|事《こと》にあずかることができない。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]だから、この|悪事《あくじ》を|悔《く》いて、|主《しゅ》に|祈《いの》れ。そうすればあるいはそんな|思《おも》いを|心《こころ》にいだいたことが、ゆるされるかも|知《し》れない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]おまえには、まだ|苦《にが》い|胆汁《たんじゅう》があり、|不義《ふぎ》のなわ|目《め》がからみついている。それが、わたしにわかっている」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]シモンはこれを|聞《き》いて|言《い》った、「|仰《おお》せのような|事《こと》が、わたしの|身《み》に|起《おこ》らないように、どうぞ、わたしのために|主《しゅ》に|祈《いの》って|下《くだ》さい」。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|使徒《しと》たちは|力強《ちからづよ》くあかしをなし、また|主《しゅ》の|言《ことば》を|語《かた》った|後《のち》、サマリヤ|人《ひと》の|多《おお》くの|村々《むらむら》に|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えて、エルサレムに|帰《かえ》った。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|主《しゅ》の|使《つかい》がピリポにむかって|言《い》った、「|立《た》って|南方《なんぽう》に|行《い》き、エルサレムからガザへ|下《くだ》る|道《みち》に|出《で》なさい」(このガザは、|今《いま》は|荒《あ》れはてている)。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》は|立《た》って|出《で》かけた。すると、ちょうど、エチオピヤ|人《じん》の|女王《じょおう》カンダケの|高官《こうかん》で、|女王《じょおう》の|財宝《ざいほう》|全部《ぜんぶ》を|管理《かんり》していた|宦官《かんがん》であるエチオピヤ|人《じん》が、|礼拝《れいはい》のためエルサレムに|上《のぼ》り、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]その|帰途《きと》についていたところであった。|彼《かれ》は|自分《じぶん》の|馬車《ばしゃ》に|乗《の》って、|預言者《よげんしゃ》イザヤの|書《しょ》を|読《よ》んでいた。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|御霊《みたま》がピリポに「|進《すす》み|寄《よ》って、あの|馬車《ばしゃ》に|並《なら》んで|行《い》きなさい」と|言《い》った。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そこでピリポが|駆《か》けて|行《い》くと、|預言者《よげんしゃ》イザヤの|書《しょ》を|読《よ》んでいるその|人《ひと》の|声《こえ》が|聞《きこ》えたので、「あなたは、|読《よ》んでいることが、おわかりですか」と|尋《たず》ねた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は「だれかが、|手《て》びきをしてくれなければ、どうしてわかりましょう」と|答《こた》えた。そして、|馬車《ばしゃ》に|乗《の》って|一緒《いっしょ》にすわるようにと、ピリポにすすめた。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》が|読《よ》んでいた|聖書《せいしょ》の|箇所《かしょ》は、これであった、 [#ここから2字下げ] 「|彼《かれ》は、ほふり|場《ば》に|引《ひ》かれて|行《い》く|羊《ひつじ》のように、 また、|黙々《もくもく》として、 |毛《け》を|刈《か》る|者《もの》の|前《まえ》に|立《た》つ|小羊《こひつじ》のように、 |口《くち》を|開《ひら》かない。 [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、いやしめられて、 そのさばきも|行《おこな》われなかった。 だれが、|彼《かれ》の|子孫《しそん》のことを|語《かた》ることができようか、 |彼《かれ》の|命《いのち》が|地上《ちじょう》から|取《と》り|去《さ》られているからには」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|宦官《かんがん》はピリポにむかって|言《い》った、「お|尋《たず》ねしますが、ここで|預言者《よげんしゃ》はだれのことを|言《い》っているのですか。|自分《じぶん》のことですか、それとも、だれかほかの|人《ひと》のことですか」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]そこでピリポは|口《くち》を|開《ひら》き、この|聖《せい》|句《く》から|説《と》き|起《おこ》して、イエスのことを|宣《の》べ|伝《つた》えた。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|道《みち》を|進《すす》んで|行《い》くうちに、|水《みず》のある|所《ところ》にきたので、|宦官《かんがん》が|言《い》った、「ここに|水《みず》があります。わたしがバプテスマを|受《う》けるのに、なんのさしつかえがありますか」。〔[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]これに|対《たい》して、ピリポは、「あなたがまごころから|信《しん》じるなら、|受《う》けてさしつかえはありません」と|言《い》った。すると、|彼《かれ》は「わたしは、イエス・キリストを|神《かみ》の|子《こ》と|信《しん》じます」と|答《こた》えた。〕[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]そこで|車《くるま》をとめさせ、ピリポと|宦官《かんがん》と、ふたりとも、|水《みず》の|中《なか》に|降《お》りて|行《い》き、ピリポが|宦官《かんがん》にバプテスマを|授《さづ》けた。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]ふたりが|水《みず》から|上《あ》がると、|主《しゅ》の|霊《れい》がピリポをさらって|行《い》ったので、|宦官《かんがん》はもう|彼《かれ》を|見《み》ることができなかった。|宦官《かんがん》はよろこびながら|旅《たび》をつづけた。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》、ピリポはアゾトに|姿《すがた》をあらわして、|町々《まちまち》をめぐり|歩《ある》き、いたるところで|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えて、ついにカイザリヤに|着《つ》いた。 第九章[#「第九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さてサウロは、なおも|主《しゅ》の|弟子《でし》たちに|対《たい》する|脅迫《きょうはく》、|殺害《さつがい》の|息《いき》をはずませながら、|大祭司《だいさいし》のところに|行《い》って、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ダマスコの|諸《しょ》|会堂《かいどう》あての|添書《てんしょ》を|求《もと》めた。それは、この|道《みち》の|者《もの》を|見《み》つけ|次第《しだい》、|男女《だんじょ》の|別《べつ》なく|縛《しば》りあげて、エルサレムにひっぱって|来《く》るためであった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|道《みち》を|急《いそ》いでダマスコの|近《ちか》くにきたとき、|突然《とつぜん》、|天《てん》から|光《ひかり》がさして、|彼《かれ》をめぐり|照《てら》した。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|地《ち》に|倒《たお》れたが、その|時《とき》「サウロ、サウロ、なぜわたしを|迫害《はくがい》するのか」と|呼《よ》びかける|声《こえ》を|聞《き》いた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》は「|主《しゅ》よ、あなたは、どなたですか」と|尋《たず》ねた。すると|答《こたえ》があった、「わたしは、あなたが|迫害《はくがい》しているイエスである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]さあ|立《た》って、|町《まち》にはいって|行《い》きなさい。そうすれば、そこであなたのなすべき|事《こと》が|告《つ》げられるであろう」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]サウロの|同行者《どうこうしゃ》たちは|物《もの》も|言《い》えずに|立《た》っていて、|声《こえ》だけは|聞《きこ》えたが、だれも|見《み》えなかった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]サウロは|地《ち》から|起《お》き|上《あ》がって|目《め》を|開《ひら》いてみたが、|何《なに》も|見《み》えなかった。そこで|人々《ひとびと》は、|彼《かれ》の|手《て》を|引《ひ》いてダマスコへ|連《つ》れて|行《い》った。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は三|日間《かかん》、|目《め》が|見《み》えず、また|食《た》べることも|飲《の》むこともしなかった。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]さて、ダマスコにアナニヤというひとりの|弟子《でし》がいた。この|人《ひと》に|主《しゅ》が|幻《まぼろし》の|中《なか》に|現《あらわ》れて、「アナニヤよ」とお|呼《よ》びになった。|彼《かれ》は「|主《しゅ》よ、わたしでございます」と|答《こた》えた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで|主《しゅ》が|彼《かれ》に|言《い》われた、「|立《た》って、『|真《ま》すぐ』という|名《な》の|路地《ろじ》に|行《い》き、ユダの|家《いえ》でサウロというタルソ|人《びと》を|尋《たず》ねなさい。|彼《かれ》はいま|祈《いの》っている。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はアナニヤという|人《ひと》がはいってきて、|手《て》を|自分《じぶん》の|上《うえ》において|再《ふたた》び|見《み》えるようにしてくれるのを、|幻《まぼろし》で|見《み》たのである」。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]アナニヤは|答《こた》えた、「|主《しゅ》よ、あの|人《ひと》がエルサレムで、どんなにひどい|事《こと》をあなたの|聖徒《せいと》たちにしたかについては、|多《おお》くの|人《ひと》たちから|聞《き》いています。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》はここでも、|御名《みな》をとなえる|者《もの》たちをみな|捕縛《ほばく》する|権《けん》を、|祭司長《さいしちょう》たちから|得《え》てきているのです」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|主《しゅ》は|仰《おお》せになった、「さあ、|行《い》きなさい。あの|人《ひと》は、|異邦人《いほうじん》たち、|王《おう》たち、またイスラエルの|子《こ》らにも、わたしの|名《な》を|伝《つた》える|器《うつわ》として、わたしが|選《えら》んだ|者《もの》である。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|名《な》のために|彼《かれ》がどんなに|苦《くる》しまなければならないかを、|彼《かれ》に|知《し》らせよう」。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこでアナニヤは、|出《で》かけて|行《い》ってその|家《いえ》にはいり、|手《て》をサウロの|上《うえ》において|言《い》った、「|兄弟《きょうだい》サウロよ、あなたが|来《く》る|途中《とちゅう》で|現《あらわ》れた|主《しゅ》イエスは、あなたが|再《ふたた》び|見《み》えるようになるため、そして|聖霊《せいれい》に|満《み》たされるために、わたしをここにおつかわしになったのです」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]するとたちどころに、サウロの|目《め》から、うろこのようなものが|落《お》ちて、|元《もと》どおり|見《み》えるようになった。そこで|彼《かれ》は|立《た》ってバプテスマを|受《う》け、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また|食事《しょくじ》をとって|元気《げんき》を|取《と》りもどした。  サウロは、ダマスコにいる|弟子《でし》たちと|共《とも》に|数日間《すうじつかん》を|過《す》ごしてから、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ただちに|諸《しょ》|会堂《かいどう》でイエスのことを|宣《の》べ|伝《つた》え、このイエスこそ|神《かみ》の|子《こ》であると|説《と》きはじめた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]これを|聞《き》いた|人《ひと》たちはみな|非常《ひじょう》に|驚《おどろ》いて|言《い》った、「あれは、エルサレムでこの|名《な》をとなえる|者《もの》たちを|苦《くる》しめた|男《おとこ》ではないか。その|上《うえ》ここにやってきたのも、|彼《かれ》らを|縛《しば》りあげて、|祭司長《さいしちょう》たちのところへひっぱって|行《い》くためではなかったか」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、サウロはますます|力《ちから》が|加《くわ》わり、このイエスがキリストであることを|論証《ろんしょう》して、ダマスコに|住《す》むユダヤ|人《じん》たちを|言《い》い|伏《ふ》せた。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|相当《そうとう》の|日数《にっすう》がたったころ、ユダヤ|人《じん》たちはサウロを|殺《ころ》す|相談《そうだん》をした。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、その|陰謀《いんぼう》が|彼《かれ》の|知《し》るところとなった。|彼《かれ》らはサウロを|殺《ころ》そうとして、|夜昼《よるひる》、|町《まち》の|門《もん》を|見守《みまも》っていたのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》の|弟子《でし》たちが、|夜《よる》の|間《あいだ》に|彼《かれ》をかごに|乗《の》せて、|町《まち》の|城壁《じょうへき》づたいにつりおろした。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]サウロはエルサレムに|着《つ》いて、|弟子《でし》たちの|仲間《なかま》に|加《くわ》わろうと|努《つと》めたが、みんなの|者《もの》は|彼《かれ》を|弟子《でし》だとは|信《しん》じないで、|恐《おそ》れていた。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]ところが、バルナバは|彼《かれ》の|世話《せわ》をして|使徒《しと》たちのところへ|連《つ》れて|行《い》き、|途中《とちゅう》で|主《しゅ》が|彼《かれ》に|現《あらわ》れて|語《かた》りかけたことや、|彼《かれ》がダマスコでイエスの|名《な》で|大胆《だいたん》に|宣《の》べ|伝《つた》えた|次第《しだい》を、|彼《かれ》らに|説明《せつめい》して|聞《き》かせた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]それ|以来《いらい》、|彼《かれ》は|使徒《しと》たちの|仲間《なかま》に|加《くわ》わり、エルサレムに|出入《でい》りし、|主《しゅ》の|名《な》によって|大胆《だいたん》に|語《かた》り、[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]ギリシヤ|語《ご》を|使《つか》うユダヤ|人《じん》たちとしばしば|語《かた》り|合《あ》い、また|論《ろん》じ|合《あ》った。しかし、|彼《かれ》らは|彼《かれ》を|殺《ころ》そうとねらっていた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちはそれと|知《し》って、|彼《かれ》をカイザリヤに|連《つ》れてくだり、タルソへ|送《おく》り|出《だ》した。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]こうして|教会《きょうかい》は、ユダヤ、ガリラヤ、サマリヤ|全《ぜん》|地方《ちほう》にわたって|平安《へいあん》を|保《たも》ち、|基礎《きそ》がかたまり、|主《しゅ》をおそれ|聖霊《せいれい》にはげまされて|歩《あゆ》み、|次第《しだい》に|信徒《しんと》の|数《かず》を|増《ま》して|行《い》った。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|方々《ほうぼう》をめぐり|歩《ある》いたが、ルダに|住《す》む|聖徒《せいと》たちのところへも|下《くだ》って|行《い》った。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そして、そこで、八|年間《ねんかん》も|床《とこ》についているアイネヤという|人《ひと》に|会《あ》った。この|人《ひと》は|中風《ちゅうぶ》であった。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]ペテロが|彼《かれ》に|言《い》った、「アイネヤよ、イエス・キリストがあなたをいやして|下《くだ》さるのだ。|起《お》きなさい。そして|床《とこ》を|取《と》りあげなさい」。すると、|彼《かれ》はただちに|起《お》きあがった。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]ルダとサロンに|住《す》む|人《ひと》たちは、みなそれを|見《み》て、|主《しゅ》に|帰依《きえ》した。  [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]ヨッパにタビタ(これを|訳《やく》すと、ドルカス、すなわち、かもしか)という|女《おんな》|弟子《でし》がいた。|数々《かずかず》のよい|働《はたら》きや|施《ほどこ》しをしていた|婦人《ふじん》であった。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]ところが、そのころ|病気《びょうき》になって|死《し》んだので、|人々《ひとびと》はそのからだを|洗《あら》って、|屋上《おくじょう》の|間《ま》に|安置《あんち》した。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]ルダはヨッパに|近《ちか》かったので、|弟子《でし》たちはペテロがルダにきていると|聞《き》き、ふたりの|者《もの》を|彼《かれ》のもとにやって、「どうぞ、|早《はや》くこちらにおいで|下《くだ》さい」と|頼《たの》んだ。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]そこでペテロは|立《た》って、ふたりの|者《もの》に|連《つ》れられてきた。|彼《かれ》が|着《つ》くとすぐ、|屋上《おくじょう》の|間《ま》に|案内《あんない》された。すると、やもめたちがみんな|彼《かれ》のそばに|寄《よ》ってきて、ドルカスが|生前《せいぜん》つくった|下着《したぎ》や|上着《うわぎ》の|数々《かずかず》を、|泣《な》きながら|見《み》せるのであった。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはみんなの|者《もの》を|外《そと》に|出《だ》し、ひざまずいて|祈《いの》った。それから|死体《したい》の|方《ほう》に|向《む》いて、「タビタよ、|起《お》きなさい」と|言《い》った。すると|彼女《かのじょ》は|目《め》をあけ、ペテロを|見《み》て|起《お》きなおった。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|彼女《かのじょ》に|手《て》をかして|立《た》たせた。それから、|聖徒《せいと》たちや、やもめたちを|呼《よ》び|入《い》れて、|彼女《かのじょ》が|生《い》きかえっているのを|見《み》せた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]このことがヨッパ|中《ちゅう》に|知《し》れわたり、|多《おお》くの|人々《ひとびと》が|主《しゅ》を|信《しん》じた。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは、|皮《かわ》なめしシモンという|人《ひと》の|家《いえ》に|泊《と》まり、しばらくの|間《あいだ》ヨッパに|滞在《たいざい》した。 第一〇章[#「第一〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、カイザリヤにコルネリオという|名《な》の|人《ひと》がいた。イタリヤ|隊《たい》と|呼《よ》ばれた|部隊《ぶたい》の|百卒長《ひゃくそつちょう》で、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|信心《しんじん》|深《ぶか》く、|家族《かぞく》|一同《いちどう》と|共《とも》に|神《かみ》を|敬《うやま》い、|民《たみ》に|数々《かずかず》の|施《ほどこ》しをなし、|絶《た》えず|神《かみ》に|祈《いのり》をしていた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ある|日《ひ》の|午後《ごご》三|時《じ》ごろ、|神《かみ》の|使《つかい》が|彼《かれ》のところにきて、「コルネリオよ」と|呼《よ》ぶのを、|幻《まぼろし》ではっきり|見《み》た。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|御使《みつかい》を|見《み》つめていたが、|恐《おそ》ろしくなって、「|主《しゅ》よ、なんでございますか」と|言《い》った。すると|御使《みつかい》が|言《い》った、「あなたの|祈《いのり》や|施《ほどこ》しは|神《かみ》のみ|前《まえ》にとどいて、おぼえられている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ついては|今《いま》、ヨッパに|人《ひと》をやって、ペテロと|呼《よ》ばれるシモンという|人《ひと》を|招《まね》きなさい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》は、|海《うみ》べに|家《いえ》をもつ|皮《かわ》なめしシモンという|者《もの》の|客《きゃく》となっている」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]このお|告《つ》げをした|御使《みつかい》が|立《た》ち|去《さ》ったのち、コルネリオは、|僕《しもべ》ふたりと、|部下《ぶか》の|中《なか》で|信心《しんじん》|深《ぶか》い|兵卒《へいそつ》ひとりとを|呼《よ》び、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]いっさいの|事《こと》を|説明《せつめい》して|聞《き》かせ、ヨッパへ|送《おく》り|出《だ》した。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|翌日《よくじつ》、この三|人《にん》が|旅《たび》をつづけて|町《まち》の|近《ちか》くにきたころ、ペテロは|祈《いのり》をするため|屋上《おくじょう》にのぼった。|時《とき》は|昼《ひる》の十二|時《じ》ごろであった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|空腹《くうふく》をおぼえて、|何《なに》か|食《た》べたいと|思《おも》った。そして、|人々《ひとびと》が|食事《しょくじ》の|用意《ようい》をしている|間《あいだ》に、|夢心地《ゆめごこち》になった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]すると、|天《てん》が|開《ひら》け、|大《おお》きな|布《ぬの》のような|入《い》れ|物《もの》が、|四《よ》すみをつるされて、|地上《ちじょう》に|降《お》りて|来《く》るのを|見《み》た。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]その|中《なか》には、|地上《ちじょう》の四つ|足《あし》や|這《は》うもの、また|空《そら》の|鳥《とり》など、|各種《かくしゅ》の|生《い》きものがはいっていた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そして|声《こえ》が|彼《かれ》に|聞《きこ》えてきた、「ペテロよ。|立《た》って、それらをほふって|食《た》べなさい」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|言《い》った、「|主《しゅ》よ、それはできません。わたしは|今《いま》までに、|清《きよ》くないもの、|汚《けが》れたものは、|何一《なにひと》つ|食《た》べたことがありません」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すると、|声《こえ》が二|度目《どめ》にかかってきた、「|神《かみ》がきよめたものを、|清《きよ》くないなどと|言《い》ってはならない」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]こんなことが三|度《ど》もあってから、その|入《い》れ|物《もの》はすぐ|天《てん》に|引《ひ》き|上《あ》げられた。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]ペテロが、いま|見《み》た|幻《まぼろし》はなんの|事《こと》だろうかと、ひとり|思案《しあん》にくれていると、ちょうどその|時《とき》、コルネリオから|送《おく》られた|人《ひと》たちが、シモンの|家《いえ》を|尋《たず》ね|当《あ》てて、その|門口《かどぐち》に|立《た》っていた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そして|声《こえ》をかけて、「ペテロと|呼《よ》ばれるシモンというかたが、こちらにお|泊《と》まりではございませんか」と|尋《たず》ねた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはなおも|幻《まぼろし》について、|思《おも》いめぐらしていると、|御霊《みたま》が|言《い》った、「ごらんなさい、三|人《にん》の|人《ひと》たちが、あなたを|尋《たず》ねてきている。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]さあ、|立《た》って|下《した》に|降《お》り、ためらわないで、|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》に|出《で》かけるがよい。わたしが|彼《かれ》らをよこしたのである」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこでペテロは、その|人《ひと》たちのところに|降《お》りて|行《い》って|言《い》った、「わたしがお|尋《たず》ねのペテロです。どんなご|用《よう》でおいでになったのですか」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|答《こた》えた、「|正《ただ》しい|人《ひと》で、|神《かみ》を|敬《うやま》い、ユダヤの|全国民《ぜんこくみん》に|好感《こうかん》を|持《も》たれている|百卒長《ひゃくそつちょう》コルネリオが、あなたを|家《いえ》に|招《まね》いてお|話《はなし》を|伺《うかが》うようにとのお|告《つ》げを、|聖《せい》なる|御使《みつかい》から|受《う》けましたので、|参《まい》りました」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ペテロは、|彼《かれ》らを|迎《むか》えて|泊《と》まらせた。  |翌日《よくじつ》、ペテロは|立《た》って、|彼《かれ》らと|連《つ》れだって|出《で》|発《はっ》した。ヨッパの|兄弟《きょうだい》たち|数人《すうにん》も|一緒《いっしょ》に|行《い》った。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]その|次《つぎ》の|日《ひ》に、|一行《いっこう》はカイザリヤに|着《つ》いた。コルネリオは|親族《しんぞく》や|親《した》しい|友人《ゆうじん》たちを|呼《よ》び|集《あつ》めて、|待《ま》っていた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ペテロがいよいよ|到着《とうちゃく》すると、コルネリオは|出迎《でむか》えて、|彼《かれ》の|足《あし》もとにひれ|伏《ふ》して|拝《はい》した。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]するとペテロは、|彼《かれ》を|引《ひ》き|起《おこ》して|言《い》った、「お|立《た》ちなさい。わたしも|同《おな》じ|人間《にんげん》です」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]それから|共《とも》に|話《はな》しながら、へやにはいって|行《い》くと、そこには、すでに|大《おお》ぜいの|人《ひと》が|集《あつ》まっていた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|彼《かれ》らに|言《い》った、「あなたがたが|知《し》っているとおり、ユダヤ|人《じん》が|他国《たこく》の|人《ひと》と|交際《こうさい》したり、|出入《でい》りしたりすることは、|禁《きん》じられています。ところが、|神《かみ》は、どんな|人間《にんげん》をも|清《きよ》くないとか、|汚《けが》れているとか|言《い》ってはならないと、わたしにお|示《しめ》しになりました。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]お|招《まね》きにあずかった|時《とき》、|少《すこ》しもためらわずに|参《まい》ったのは、そのためなのです。そこで|伺《うかが》いますが、どういうわけで、わたしを|招《まね》いてくださったのですか」。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]これに|対《たい》してコルネリオが|答《こた》えた、「四|日《か》|前《まえ》、ちょうどこの|時刻《じこく》に、わたしが|自宅《じたく》で|午後《ごご》三|時《じ》の|祈《いのり》をしていますと、|突然《とつぜん》、|輝《かがや》いた|衣《ころも》を|着《き》た|人《ひと》が、|前《まえ》に|立《た》って|申《もう》しました、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]『コルネリオよ、あなたの|祈《いのり》は|聞《き》きいれられ、あなたの|施《ほどこ》しは|神《かみ》のみ|前《まえ》におぼえられている。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこでヨッパに|人《ひと》を|送《おく》ってペテロと|呼《よ》ばれるシモンを|招《まね》きなさい。その|人《ひと》は|皮《かわ》なめしシモンの|海沿《うみぞ》いの|家《いえ》に|泊《と》まっている』。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]それで、|早速《さっそく》あなたをお|呼《よ》びしたのです。ようこそおいで|下《くだ》さいました。|今《いま》わたしたちは、|主《しゅ》があなたにお|告《つ》げになったことを|残《のこ》らず|伺《うかが》おうとして、みな|神《かみ》のみ|前《まえ》にまかり|出《で》ているのです」。  [#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]そこでペテロは|口《くち》を|開《ひら》いて|言《い》った、「|神《かみ》は|人《ひと》をかたよりみないかたで、[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》を|敬《うやま》い|義《ぎ》を|行《おこな》う|者《もの》はどの|国民《こくみん》でも|受《う》けいれて|下《くだ》さることが、ほんとうによくわかってきました。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|神《かみ》がすべての|者《もの》の|主《しゅ》なるイエス・キリストによって|平和《へいわ》の|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えて、イスラエルの|子《こ》らにお|送《おく》り|下《くだ》さった|御言《みことば》をご|存《ぞん》じでしょう。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]それは、ヨハネがバプテスマを|説《と》いた|後《のち》、ガリラヤから|始《はじ》まってユダヤ|全土《ぜんど》にひろまった|福音《ふくいん》を|述《の》べたものです。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はナザレのイエスに|聖霊《せいれい》と|力《ちから》とを|注《そそ》がれました。このイエスは、|神《かみ》が|共《とも》におられるので、よい|働《はたら》きをしながら、また|悪魔《あくま》に|押《おさ》えつけられている|人々《ひとびと》をことごとくいやしながら、|巡回《じゅんかい》されました。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、イエスがこうしてユダヤ|人《じん》の|地《ち》やエルサレムでなさったすべてのことの|証人《しょうにん》であります。|人々《ひとびと》はこのイエスを|木《き》にかけて|殺《ころ》したのです。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし|神《かみ》はイエスを三|日《か》|目《め》によみがえらせ、[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|全部《ぜんぶ》の|人々《ひとびと》にではなかったが、わたしたち|証人《しょうにん》としてあらかじめ|選《えら》ばれた|者《もの》たちに|現《あらわ》れるようにして|下《くだ》さいました。わたしたちは、イエスが|死人《しにん》の|中《なか》から|復活《ふっかつ》された|後《のち》、|共《とも》に|飲食《いんしょく》しました。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]それから、イエスご|自身《じしん》が|生者《せいじゃ》と|死者《ししゃ》との|審判者《しんぱんしゃ》として|神《かみ》に|定《さだ》められたかたであることを、|人々《ひとびと》に|宣《の》べ|伝《つた》え、またあかしするようにと、|神《かみ》はわたしたちにお|命《めい》じになったのです。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|預言者《よげんしゃ》たちもみな、イエスを|信《しん》じる|者《もの》はことごとく、その|名《な》によって|罪《つみ》のゆるしが|受《う》けられると、あかしをしています」。  [#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]ペテロがこれらの|言葉《ことば》をまだ|語《かた》り|終《お》えないうちに、それを|聞《き》いていたみんなの|人《ひと》たちに、|聖霊《せいれい》がくだった。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|割礼《かつれい》を|受《う》けている|信者《しんじゃ》で、ペテロについてきた|人《ひと》たちは、|異邦人《いほうじん》たちにも|聖霊《せいれい》の|賜物《たまもの》が|注《そそ》がれたのを|見《み》て、|驚《おどろ》いた。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]それは、|彼《かれ》らが|異言《いげん》を|語《かた》って|神《かみ》をさんびしているのを|聞《き》いたからである。そこで、ペテロが|言《い》い|出《だ》した、[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]「この|人《ひと》たちがわたしたちと|同《おな》じように|聖霊《せいれい》を|受《う》けたからには、|彼《かれ》らに|水《みず》でバプテスマを|授《さづ》けるのを、だれがこばみ|得《え》ようか」。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》って、ペテロはその|人々《ひとびと》に|命《めい》じて、イエス・キリストの|名《な》によってバプテスマを|受《う》けさせた。それから、|彼《かれ》らはペテロに|願《ねが》って、なお|数日《すうじつ》のあいだ|滞在《たいざい》してもらった。 第一一章[#「第一一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|異邦人《いほうじん》たちも|神《かみ》の|言《ことば》を|受《う》けいれたということが、|使徒《しと》たちやユダヤにいる|兄弟《きょうだい》たちに|聞《きこ》えてきた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこでペテロがエルサレムに|上《のぼ》ったとき、|割礼《かつれい》を|重《おも》んじる|者《もの》たちが|彼《かれ》をとがめて|言《い》った、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]「あなたは、|割礼《かつれい》のない|人《ひと》たちのところに|行《い》って、|食事《しょくじ》を|共《とも》にしたということだが」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこでペテロは|口《くち》を|開《ひら》いて、|順序《じゅんじょ》|正《ただ》しく|説明《せつめい》して|言《い》った、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]「わたしがヨッパの|町《まち》で|祈《いの》っていると、|夢心地《ゆめごこち》になって|幻《まぼろし》を|見《み》た。|大《おお》きな|布《ぬの》のような|入《い》れ|物《もの》が、|四《よ》すみをつるされて、|天《てん》から|降《お》りてきて、わたしのところにとどいた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|注意《ちゅうい》して|見《み》つめていると、|地上《ちじょう》の四つ|足《あし》、|野《の》の|獣《けもの》、|這《は》うもの、|空《そら》の|鳥《とり》などが、はいっていた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それから|声《こえ》がして、『ペテロよ、|立《た》って、それらをほふって|食《た》べなさい』と、わたしに|言《い》うのが|聞《きこ》えた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|言《い》った、『|主《しゅ》よ、それはできません。わたしは|今《いま》までに、|清《きよ》くないものや|汚《けが》れたものを|口《くち》に|入《い》れたことが|一度《いちど》もございません』。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すると、二|度目《どめ》に|天《てん》から|声《こえ》がかかってきた、『|神《かみ》がきよめたものを、|清《きよ》くないなどと|言《い》ってはならない』。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]こんなことが三|度《ど》もあってから、|全部《ぜんぶ》のものがまた|天《てん》に|引《ひ》き|上《あ》げられてしまった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ちょうどその|時《とき》、カイザリヤからつかわされてきた三|人《にん》の|人《ひと》が、わたしたちの|泊《と》まっていた|家《いえ》に|着《つ》いた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|御霊《みたま》がわたしに、ためらわずに|彼《かれ》らと|共《とも》に|行《い》けと|言《い》ったので、ここにいる六|人《にん》の|兄弟《きょうだい》たちも、わたしと|一緒《いっしょ》に|出《で》かけて|行《い》き、|一同《いちどう》がその|人《ひと》の|家《いえ》にはいった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]すると|彼《かれ》はわたしたちに、|御使《みつかい》が|彼《かれ》の|家《いえ》に|現《あらわ》れて、『ヨッパに|人《ひと》をやって、ペテロと|呼《よ》ばれるシモンを|招《まね》きなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》は、あなたとあなたの|全《ぜん》|家族《かぞく》とが|救《すく》われる|言葉《ことば》を|語《かた》って|下《くだ》さるであろう』と|告《つ》げた|次第《しだい》を、|話《はな》してくれた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしが|語《かた》り|出《だ》したところ、|聖霊《せいれい》が、ちょうど|最初《さいしょ》わたしたちの|上《うえ》にくだったと|同《おな》じように、|彼《かれ》らの|上《うえ》にくだった。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》わたしは、|主《しゅ》が『ヨハネは|水《みず》でバプテスマを|授《さづ》けたが、あなたがたは|聖霊《せいれい》によってバプテスマを|受《う》けるであろう』と|仰《おお》せになった|言葉《ことば》を|思《おも》い|出《だ》した。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]このように、わたしたちが|主《しゅ》イエス・キリストを|信《しん》じた|時《とき》に|下《くだ》さったのと|同《おな》じ|賜物《たまもの》を、|神《かみ》が|彼《かれ》らにもお|与《あた》えになったとすれば、わたしのような|者《もの》が、どうして|神《かみ》を|妨《さまた》げることができようか」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はこれを|聞《き》いて|黙《だま》ってしまった。それから|神《かみ》をさんびして、「それでは|神《かみ》は、|異邦人《いほうじん》にも|命《いのち》にいたる|悔改《くいあらた》めをお|与《あた》えになったのだ」と|言《い》った。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]さて、ステパノのことで|起《おこ》った|迫害《はくがい》のために|散《ち》らされた|人々《ひとびと》は、ピニケ、クプロ、アンテオケまでも|進《すす》んで|行《い》ったが、ユダヤ|人《じん》|以外《いがい》の|者《もの》には、だれにも|御言《みことば》を|語《かた》っていなかった。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが、その|中《なか》に|数人《すうにん》のクプロ|人《びと》とクレネ|人《びと》がいて、アンテオケに|行《い》ってからギリシヤ|人《じん》にも|呼《よ》びかけ、|主《しゅ》イエスを|宣《の》べ|伝《つた》えていた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そして、|主《しゅ》のみ|手《て》が|彼《かれ》らと|共《とも》にあったため、|信《しん》じて|主《しゅ》に|帰依《きえ》するものの|数《かず》が|多《おお》かった。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]このうわさがエルサレムにある|教会《きょうかい》に|伝《つた》わってきたので、|教会《きょうかい》はバルナバをアンテオケにつかわした。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、そこに|着《つ》いて、|神《かみ》のめぐみを|見《み》てよろこび、|主《しゅ》に|対《たい》する|信仰《しんこう》を|揺《ゆ》るがない|心《こころ》で|持《も》ちつづけるようにと、みんなの|者《もの》を|励《はげ》ました。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|聖霊《せいれい》と|信仰《しんこう》とに|満《み》ちた|立派《りっぱ》な|人《ひと》であったからである。こうして|主《しゅ》に|加《くわ》わる|人々《ひとびと》が、|大《おお》ぜいになった。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこでバルナバはサウロを|捜《さが》しにタルソへ|出《で》かけて|行《い》き、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》を|見《み》つけたうえ、アンテオケに|連《つ》れて|帰《かえ》った。ふたりは、まる一|年《ねん》、ともどもに|教会《きょうかい》で|集《あつ》まりをし、|大《おお》ぜいの|人々《ひとびと》を|教《おし》えた。このアンテオケで|初《はじ》めて、|弟子《でし》たちがクリスチャンと|呼《よ》ばれるようになった。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、|預言者《よげんしゃ》たちがエルサレムからアンテオケにくだってきた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]その|中《なか》のひとりであるアガボという|者《もの》が|立《た》って、|世界中《せかいじゅう》に|大《だい》ききんが|起《おこ》るだろうと、|御霊《みたま》によって|預言《よげん》したところ、|果《はた》してそれがクラウデオ|帝《てい》の|時《とき》に|起《おこ》った。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこで|弟子《でし》たちは、それぞれの|力《ちから》に|応《おう》じて、ユダヤに|住《す》んでいる|兄弟《きょうだい》たちに|援助《えんじょ》を|送《おく》ることに|決《き》めた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、それをバルナバとサウロとの|手《て》に|託《たく》して、|長老《ちょうろう》たちに|送《おく》りとどけた。 第一二章[#「第一二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、ヘロデ|王《おう》は|教会《きょうかい》のある|者《もの》たちに|圧迫《あっぱく》の|手《て》をのばし、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネの|兄弟《きょうだい》ヤコブをつるぎで|切《き》り|殺《ころ》した。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そして、それがユダヤ|人《じん》たちの|意《い》にかなったのを|見《み》て、さらにペテロをも|捕《とら》えにかかった。それは|除酵祭《じょこうさい》の|時《とき》のことであった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ヘロデはペテロを|捕《とら》えて|獄《ごく》に|投《とう》じ、四|人《にん》一|組《くみ》の|兵卒《へいそつ》四|組《くみ》に|引《ひ》き|渡《わた》して、|見張《みは》りをさせておいた。|過越《すぎこし》の|祭《まつり》のあとで、|彼《かれ》を|民衆《みんしゅう》の|前《まえ》に|引《ひ》き|出《だ》すつもりであったのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]こうして、ペテロは|獄《ごく》に|入《い》れられていた。|教会《きょうかい》では、|彼《かれ》のために|熱心《ねっしん》な|祈《いのり》が|神《かみ》にささげられた。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ヘロデが|彼《かれ》を|引《ひ》き|出《だ》そうとしていたその|夜《よる》、ペテロは|二重《にじゅう》の|鎖《くさり》につながれ、ふたりの|兵卒《へいそつ》の|間《あいだ》に|置《お》かれて|眠《ねむ》っていた。|番兵《ばんぺい》たちは|戸口《とぐち》で|獄《ごく》を|見張《みは》っていた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]すると、|突然《とつぜん》、|主《しゅ》の|使《つかい》がそばに|立《た》ち、|光《ひかり》が|獄内《ごくない》を|照《てら》した。そして|御使《みつかい》はペテロのわき|腹《ばら》をつついて|起《おこ》し、「|早《はや》く|起《お》きあがりなさい」と|言《い》った。すると|鎖《くさり》が|彼《かれ》の|両手《りょうて》から、はずれ|落《お》ちた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》が「|帯《おび》をしめ、くつをはきなさい」と|言《い》ったので、|彼《かれ》はそのとおりにした。それから「|上着《うわぎ》を|着《き》て、ついてきなさい」と|言《い》われたので、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはついて|出《で》て|行《い》った。|彼《かれ》には|御使《みつかい》のしわざが|現実《げんじつ》のこととは|考《かんが》えられず、ただ|幻《まぼろし》を|見《み》ているように|思《おも》われた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|第《だい》一、|第《だい》二の|衛所《えいしょ》を|通《とお》りすぎて、|町《まち》に|抜《ぬ》ける|鉄《てつ》|門《もん》のところに|来《く》ると、それがひとりでに|開《ひら》いたので、そこを|出《で》て一つの|通路《つうろ》に|進《すす》んだとたんに、|御使《みつかい》は|彼《かれ》を|離《はな》れ|去《さ》った。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》ペテロはわれにかえって|言《い》った、「|今《いま》はじめて、ほんとうのことがわかった。|主《しゅ》が|御使《みつかい》をつかわして、ヘロデの|手《て》から、またユダヤ|人《じん》たちの|待《ま》ちもうけていたあらゆる|災《わざわい》から、わたしを|救《すく》い|出《だ》して|下《くだ》さったのだ」。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ペテロはこうとわかってから、マルコと|呼《よ》ばれているヨハネの|母《はは》マリヤの|家《いえ》に|行《い》った。その|家《いえ》には|大《おお》ぜいの|人《ひと》が|集《あつ》まって|祈《いの》っていた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》が|門《もん》の|戸《と》をたたいたところ、ロダという|女中《じょちゅう》が|取次《とりつ》ぎに|出《で》てきたが、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ペテロの|声《こえ》だとわかると、|喜《よろこ》びのあまり、|門《もん》をあけもしないで|家《いえ》に|駆《か》け|込《こ》み、ペテロが|門口《かどぐち》に|立《た》っていると|報告《ほうこく》した。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は「あなたは|気《き》が|狂《くる》っている」と|言《い》ったが、|彼女《かのじょ》は|自分《じぶん》の|言《い》うことに|間違《まちが》いはないと、|言《い》い|張《は》った。そこで|彼《かれ》らは「それでは、ペテロの|御使《みつかい》だろう」と|言《い》った。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、ペテロが|門《もん》をたたきつづけるので、|彼《かれ》らがあけると、そこにペテロがいたのを|見《み》て|驚《おどろ》いた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]ペテロは|手《て》を|振《ふ》って|彼《かれ》らを|静《しず》め、|主《しゅ》が|獄《ごく》から|彼《かれ》を|連《つ》れ|出《だ》して|下《くだ》さった|次第《しだい》を|説明《せつめい》し、「このことを、ヤコブやほかの|兄弟《きょうだい》たちに|伝《つた》えて|下《くだ》さい」と|言《い》い|残《のこ》して、どこかほかの|所《ところ》へ|出《で》て|行《い》った。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けると、|兵卒《へいそつ》たちの|間《あいだ》に、ペテロはいったいどうなったのだろうと、|大《たい》へんな|騒《さわ》ぎが|起《おこ》った。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ヘロデはペテロを|捜《さが》しても|見《み》つからないので、|番兵《ばんぺい》たちを|取《と》り|調《しら》べたうえ、|彼《かれ》らを|死刑《しけい》に|処《しょ》するように|命《めい》じ、そして、ユダヤからカイザリヤにくだって|行《い》って、そこに|滞在《たいざい》した。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]さて、ツロとシドンとの|人々《ひとびと》は、ヘロデの|怒《いか》りに|触《ふれ》ていたので、|一同《いちどう》うちそろって|王《おう》をおとずれ、|王《おう》の|侍従《じじゅう》|官《かん》ブラストに|取《と》りいって、|和解《わかい》かたを|依頼《いらい》した。|彼《かれ》らの|地方《ちほう》が、|王《おう》の|国《くに》から|食糧《しょくりょう》を|得《え》ていたからである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|定《さだ》められた|日《ひ》に、ヘロデは|王《おう》|服《ふく》をまとって|王座《おうざ》にすわり、|彼《かれ》らにむかって|演説《えんぜつ》をした。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|集《あつ》まった|人々《ひとびと》は、「これは|神《かみ》の|声《こえ》だ、|人間《にんげん》の|声《こえ》ではない」と|叫《さけ》びつづけた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]するとたちまち、|主《しゅ》の|使《つかい》が|彼《かれ》を|打《う》った。|神《かみ》に|栄光《えいこう》を|帰《き》することをしなかったからである。|彼《かれ》は|虫《むし》にかまれて|息《いき》が|絶《た》えてしまった。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|主《しゅ》の|言《ことば》はますます|盛《さか》んにひろまって|行《い》った。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]バルナバとサウロとは、その|任務《にんむ》を|果《はた》したのち、マルコと|呼《よ》ばれていたヨハネを|連《つ》れて、エルサレムから|帰《かえ》ってきた。 第一三章[#「第一三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、アンテオケにある|教会《きょうかい》には、バルナバ、ニゲルと|呼《よ》ばれるシメオン、クレネ|人《びと》ルキオ、|領主《りょうしゅ》ヘロデの|乳兄弟《ちきょうだい》マナエン、およびサウロなどの|預言者《よげんしゃ》や|教師《きょうし》がいた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|一同《いちどう》が|主《しゅ》に|礼拝《れいはい》をささげ、|断食《だんじき》をしていると、|聖霊《せいれい》が「さあ、バルナバとサウロとを、わたしのために|聖《せい》|別《べつ》して、|彼《かれ》らに|授《さづ》けておいた|仕事《しごと》に|当《あた》らせなさい」と|告《つ》げた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこで|一同《いちどう》は、|断食《だんじき》と|祈《いのり》とをして、|手《て》をふたりの|上《うえ》においた|後《のち》、|出発《しゅっぱつ》させた。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ふたりは|聖霊《せいれい》に|送《おく》り|出《だ》されて、セルキヤにくだり、そこから|舟《ふね》でクプロに|渡《わた》った。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そしてサラミスに|着《つ》くと、ユダヤ|人《じん》の|諸《しょ》|会堂《かいどう》で|神《かみ》の|言《ことば》を|宣《の》べはじめた。|彼《かれ》らはヨハネを|助《たす》け|手《て》として|連《つ》れていた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|島《しま》|全体《ぜんたい》を|巡回《じゅんかい》して、パポスまで|行《い》ったところ、そこでユダヤ|人《じん》の|魔術《まじゅつ》|師《し》、バルイエスというにせ|預言者《よげんしゃ》に|出会《であ》った。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|地方《ちほう》|総督《そうとく》セルギオ・パウロのところに|出入《でい》りをしていた。この|総督《そうとく》は|賢明《けんめい》な|人《ひと》であって、バルナバとサウロとを|招《まね》いて、|神《かみ》の|言《ことば》を|聞《き》こうとした。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ところが|魔術《まじゅつ》|師《し》エルマ(|彼《かれ》の|名《な》は「|魔術《まじゅつ》|師《し》」との|意《い》)は、|総督《そうとく》を|信仰《しんこう》からそらそうとして、しきりにふたりの|邪魔《じゃま》をした。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]サウロ、またの|名《な》はパウロ、は|聖霊《せいれい》に|満《み》たされ、|彼《かれ》をにらみつけて[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「ああ、あらゆる|偽《いつわ》りと|邪悪《じゃあく》とでかたまっている|悪魔《あくま》の|子《こ》よ、すべて|正《ただ》しいものの|敵《てき》よ。|主《しゅ》のまっすぐな|道《みち》を|曲《ま》げることを|止《や》めないのか。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、|主《しゅ》のみ|手《て》がおまえの|上《うえ》に|及《およ》んでいる。おまえは|盲《めくら》になって、|当分《とうぶん》、|日《ひ》の|光《ひかり》が|見《み》えなくなるのだ」。たちまち、かすみとやみとが|彼《かれ》にかかったため、|彼《かれ》は|手《て》さぐりしながら、|手《て》を|引《ひ》いてくれる|人《ひと》を|捜《さが》しまわった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|総督《そうとく》はこの|出来事《できごと》を|見《み》て、|主《しゅ》の|教《おしえ》にすっかり|驚《おどろ》き、そして|信《しん》じた。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]パウロとその|一行《いっこう》は、パポスから|船出《ふなで》して、パンフリヤのペルガに|渡《わた》った。ここでヨハネは|一行《いっこう》から|身《み》を|引《ひ》いて、エルサレムに|帰《かえ》ってしまった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかしふたりは、ペルガからさらに|進《すす》んで、ピシデヤのアンテオケに|行《い》き、|安息日《あんそくにち》に|会堂《かいどう》にはいって|席《せき》に|着《つ》いた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》と|預言《よげん》|書《しょ》の|朗読《ろうどく》があったのち、|会堂司《かいどうづかさ》たちが|彼《かれ》らのところに|人《ひと》をつかわして、「|兄弟《きょうだい》たちよ、もしあなたがたのうち、どなたか、この|人々《ひとびと》に|何《なに》か|奨励《しょうれい》の|言葉《ことば》がありましたら、どうぞお|話《はな》し|下《くだ》さい」と|言《い》わせた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そこでパウロが|立《た》ちあがり、|手《て》を|振《ふ》りながら|言《い》った。  「イスラエルの|人《ひと》たち、ならびに|神《かみ》を|敬《うやま》うかたがたよ、お|聞《き》き|下《くだ》さい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]この|民《たみ》イスラエルの|神《かみ》は、わたしたちの|先祖《せんぞ》を|選《えら》び、エジプトの|地《ち》に|滞在《たいざい》|中《ちゅう》、この|民《たみ》を|大《おお》いなるものとし、み|腕《うで》を|高《たか》くさし|上《あ》げて、|彼《かれ》らをその|地《ち》から|導《みちび》き|出《だ》された。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そして|約《やく》四十|年《ねん》にわたって、|荒野《あらの》で|彼《かれ》らをはぐくみ、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]カナンの|地《ち》では七つの|異《い》|民族《みんぞく》を|打《う》ち|滅《ほろ》ぼし、その|地《ち》を|彼《かれ》らに|譲《ゆず》り|与《あた》えられた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]それらのことが|約《やく》四百五十|年《ねん》の|年月《ねんげつ》にわたった。その|後《のち》、|神《かみ》はさばき|人《ひと》たちをおつかわしになり、|預言者《よげんしゃ》サムエルの|時《とき》に|及《およ》んだ。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、|人々《ひとびと》が|王《おう》を|要求《ようきゅう》したので、|神《かみ》はベニヤミン|族《ぞく》の|人《ひと》、キスの|子《こ》サウロを四十|年間《ねんかん》、|彼《かれ》らにおつかわしになった。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]それから|神《かみ》はサウロを|退《しりぞ》け、ダビデを|立《た》てて|王《おう》とされたが、|彼《かれ》についてあかしをして、『わたしはエッサイの|子《こ》ダビデを|見《み》つけた。|彼《かれ》はわたしの|心《こころ》にかなった|人《ひと》で、わたしの|思《おも》うところを、ことごとく|実行《じっこう》してくれるであろう』と|言《い》われた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|約束《やくそく》にしたがって、このダビデの|子孫《しそん》の|中《なか》から|救主《すくいぬし》イエスをイスラエルに|送《おく》られたが、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そのこられる|前《まえ》に、ヨハネがイスラエルのすべての|民《たみ》に|悔改《くいあらた》めのバプテスマを、あらかじめ|宣《の》べ|伝《つた》えていた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネはその|一生《いっしょう》の|行程《こうてい》を|終《おわ》ろうとするに|当《あた》って|言《い》った、『わたしは、あなたがたが|考《かんが》えているような|者《もの》ではない。しかし、わたしのあとから|来《く》るかたがいる。わたしはそのくつを|脱《ぬ》がせてあげる|値《ね》うちもない』。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たち、アブラハムの|子孫《しそん》のかたがた、ならびに|皆《みな》さんの|中《なか》の|神《かみ》を|敬《うやま》う|人《ひと》たちよ。この|救《すくい》の|言葉《ことば》はわたしたちに|送《おく》られたのである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]エルサレムに|住《す》む|人々《ひとびと》やその|指導者《しどうしゃ》たちは、イエスを|認《みと》めずに|刑《けい》に|処《しょ》し、それによって、|安息日《あんそくにち》ごとに|読《よ》む|預言者《よげんしゃ》の|言葉《ことば》が|成就《じょうじゅ》した。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]また、なんら|死《し》に|当《あた》る|理由《りゆう》が|見《み》いだせなかったのに、ピラトに|強要《きょうよう》してイエスを|殺《ころ》してしまった。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そして、イエスについて|書《か》いてあることを、|皆《みな》なし|遂《と》げてから、|人々《ひとびと》はイエスを|木《き》から|取《と》りおろして|墓《はか》に|葬《ほうむ》った。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|神《かみ》はイエスを|死人《しにん》の|中《なか》から、よみがえらせたのである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]イエスは、ガリラヤからエルサレムへ|一緒《いっしょ》に|上《のぼ》った|人《ひと》たちに、|幾日《いくにち》ものあいだ|現《あらわ》れ、そして、|彼《かれ》らは|今《いま》や、|人々《ひとびと》に|対《たい》してイエスの|証人《しょうにん》となっている。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|神《かみ》が|先祖《せんぞ》たちに|対《たい》してなされた|約束《やくそく》を、ここに|宣《の》べ|伝《つた》えているのである。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、イエスをよみがえらせて、わたしたち|子孫《しそん》にこの|約束《やくそく》を、お|果《はた》しになった。それは|詩篇《しへん》の|第《だい》二|篇《へん》にも、『あなたこそは、わたしの|子《こ》。きょう、わたしはあなたを|生《う》んだ』と|書《か》いてあるとおりである。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]また、|神《かみ》がイエスを|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせて、いつまでも|朽《く》ち|果《は》てることのないものとされたことについては、『わたしは、ダビデに|約束《やくそく》した|確《たし》かな|聖《せい》なる|祝福《しゅくふく》を、あなたがたに|授《さづ》けよう』と|言《い》われた。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]だから、ほかの|箇所《かしょ》でもこう|言《い》っておられる、『あなたの|聖者《せいじゃ》が|朽《く》ち|果《は》てるようなことは、お|許《ゆる》しにならないであろう』。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|事実《じじつ》、ダビデは、その|時代《じだい》の|人々《ひとびと》に|神《かみ》のみ|旨《むね》にしたがって|仕《つか》えたが、やがて|眠《ねむ》りにつき、|先祖《せんぞ》たちの|中《なか》に|加《くわ》えられて、ついに|朽《く》ち|果《は》ててしまった。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|神《かみ》がよみがえらせたかたは、|朽《く》ち|果《は》てることがなかったのである。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]だから、|兄弟《きょうだい》たちよ、この|事《こと》を|承知《しょうち》しておくがよい。すなわち、このイエスによる|罪《つみ》のゆるしの|福音《ふくいん》が、|今《いま》やあなたがたに|宣《の》べ|伝《つた》えられている。そして、モーセの|律法《りっぽう》では|義《ぎ》とされることができなかったすべての|事《こと》についても、[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|信《しん》じる|者《もの》はもれなく、イエスによって|義《ぎ》とされるのである。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]だから|預言者《よげんしゃ》たちの|書《しょ》にかいてある|次《つぎ》のようなことが、あなたがたの|身《み》に|起《おこ》らないように|気《き》をつけなさい。 [#ここから2字下げ] [#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]『|見《み》よ、|侮《あなど》る|者《もの》たちよ。|驚《おどろ》け、そして|滅《ほろ》び|去《さ》れ。 わたしは、あなたがたの|時代《じだい》に一つの|事《こと》をする。 それは、|人《ひと》がどんなに|説明《せつめい》して|聞《き》かせても、 あなたがたのとうてい|信《しん》じないような|事《こと》なのである』」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]ふたりが|会堂《かいどう》を|出《で》る|時《とき》、|人々《ひとびと》は|次《つぎ》の|安息日《あんそくにち》にも、これと|同《おな》じ|話《はなし》をしてくれるようにと、しきりに|願《ねが》った。[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]そして|集会《しゅうかい》が|終《おわ》ってからも、|大《おお》ぜいのユダヤ|人《じん》や|信心《しんじん》|深《ぶか》い|改宗者《かいしゅうしゃ》たちが、パウロとバルナバとについてきたので、ふたりは、|彼《かれ》らが|引《ひ》きつづき|神《かみ》のめぐみにとどまっているようにと、|説《と》きすすめた。  [#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]|次《つぎ》の|安息日《あんそくにち》には、ほとんど|全市《ぜんし》をあげて、|神《かみ》の|言《ことば》を|聞《き》きに|集《あつ》まってきた。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]するとユダヤ|人《じん》たちは、その|群衆《ぐんしゅう》を|見《み》てねたましく|思《おも》い、パウロの|語《かた》ることに|口《くち》ぎたなく|反対《はんたい》した。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]パウロとバルナバとは|大胆《だいたん》に|語《かた》った、「|神《かみ》の|言《ことば》は、まず、あなたがたに|語《かた》り|伝《つた》えられなければならなかった。しかし、あなたがたはそれを|退《しりぞ》け、|自分《じぶん》|自身《じしん》を|永遠《えいえん》の|命《いのち》にふさわしからぬ|者《もの》にしてしまったから、さあ、わたしたちはこれから|方向《ほうこう》をかえて、|異邦人《いほうじん》たちの|方《ほう》に|行《い》くのだ。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》はわたしたちに、こう|命《めい》じておられる、 [#ここから2字下げ] 『わたしは、あなたを|立《た》てて|異邦人《いほうじん》の|光《ひかり》とした。 あなたが|地《ち》の|果《はて》までも|救《すくい》をもたらすためである』」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]|異邦人《いほうじん》たちはこれを|聞《き》いてよろこび、|主《しゅ》の|御言《みことば》をほめたたえてやまなかった。そして、|永遠《えいえん》の|命《いのち》にあずかるように|定《さだ》められていた|者《もの》は、みな|信《しん》じた。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|主《しゅ》の|御言《みことば》はこの|地方《ちほう》|全体《ぜんたい》にひろまって|行《い》った。[#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ユダヤ|人《じん》たちは、|信心《しんじん》|深《ぶか》い|貴婦人《きふじん》たちや|町《まち》の|有力《ゆうりょく》|者《しゃ》たちを|煽動《せんどう》して、パウロとバルナバを|迫害《はくがい》させ、ふたりをその|地方《ちほう》から|追《お》い|出《だ》させた。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]ふたりは、|彼《かれ》らに|向《む》けて|足《あし》のちりを|払《はら》い|落《おと》して、イコニオムへ|行《い》った。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちは、ますます|喜《よろこ》びと|聖霊《せいれい》とに|満《み》たされていた。 第一四章[#「第一四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]ふたりは、イコニオムでも|同《おな》じようにユダヤ|人《じん》の|会堂《かいどう》にはいって|語《かた》った|結果《けっか》、ユダヤ|人《じん》やギリシヤ|人《じん》が|大《おお》ぜい|信《しん》じた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|信《しん》じなかったユダヤ|人《じん》たちは|異邦人《いほうじん》たちをそそのかして、|兄弟《きょうだい》たちに|対《たい》して|悪意《あくい》をいだかせた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]それにもかかわらず、ふたりは|長《なが》い|期間《きかん》をそこで|過《す》ごして、|大胆《だいたん》に|主《しゅ》のことを|語《かた》った。|主《しゅ》は、|彼《かれ》らの|手《て》によってしるしと|奇跡《きせき》とを|行《おこな》わせ、そのめぐみの|言葉《ことば》をあかしされた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこで|町《まち》の|人々《ひとびと》が二|派《は》に|分《わか》れ、ある|人《ひと》たちはユダヤ|人《じん》の|側《がわ》につき、ある|人《ひと》たちは|使徒《しと》の|側《がわ》についた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、|異邦人《いほうじん》やユダヤ|人《じん》が|役人《やくにん》たちと|一緒《いっしょ》になって|反対《はんたい》|運動《うんどう》を|起《おこ》し、|使徒《しと》たちをはずかしめ、|石《いし》で|打《う》とうとしたので、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ふたりはそれと|気《き》づいて、ルカオニヤの|町々《まちまち》、ルステラ、デルベおよびその|附近《ふきん》の|地《ち》へのがれ、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|引《ひ》きつづき|福音《ふくいん》を|伝《つた》えた。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ルステラに|足《あし》のきかない|人《ひと》が、すわっていた。|彼《かれ》は|生《うま》れながらの|足《あし》なえで、|歩《ある》いた|経験《けいけん》が|全《まった》くなかった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》がパウロの|語《かた》るのを|聞《き》いていたが、パウロは|彼《かれ》をじっと|見《み》て、いやされるほどの|信仰《しんこう》が|彼《かれ》にあるのを|認《みと》め、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|大声《おおごえ》で「|自分《じぶん》の|足《あし》で、まっすぐに|立《た》ちなさい」と|言《い》った。すると|彼《かれ》は|踊《おど》り|上《あ》がって|歩《ある》き|出《だ》した。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》はパウロのしたことを|見《み》て、|声《こえ》を|張《は》りあげ、ルカオニヤの|地方《ちほう》|語《ご》で、「|神々《かみがみ》が|人間《にんげん》の|姿《すがた》をとって、わたしたちのところにお|下《くだ》りになったのだ」と|叫《さけ》んだ。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはバルナバをゼウスと|呼《よ》び、パウロはおもに|語《かた》る|人《ひと》なので、|彼《かれ》をヘルメスと|呼《よ》んだ。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そして、|郊外《こうがい》にあるゼウス|神殿《しんでん》の|祭司《さいし》が、|群衆《ぐんしゅう》と|共《とも》に、ふたりに|犠牲《ぎせい》をささげようと|思《おも》って、|雄《お》|牛《うし》|数頭《すうとう》と|花輪《はなわ》とを|門前《もんぜん》に|持《も》ってきた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ふたりの|使徒《しと》バルナバとパウロとは、これを|聞《き》いて|自分《じぶん》の|上着《うわぎ》を|引《ひ》き|裂《さ》き、|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》に|飛《と》び|込《こ》んで|行《い》き、|叫《さけ》んで[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》った、「|皆《みな》さん、なぜこんな|事《こと》をするのか。わたしたちとても、あなたがたと|同《おな》じような|人間《にんげん》である。そして、あなたがたがこのような|愚《ぐ》にもつかぬものを|捨《す》てて、|天《てん》と|地《ち》と|海《うみ》と、その|中《なか》のすべてのものをお|造《つく》りになった|生《い》ける|神《かみ》に|立《た》ち|帰《かえ》るようにと、|福音《ふくいん》を|説《と》いているものである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|過《す》ぎ|去《さ》った|時代《じだい》には、すべての|国々《くにぐに》の|人《ひと》が、それぞれの|道《みち》を|行《い》くままにしておかれたが、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それでも、ご|自分《じぶん》のことをあかししないでおられたわけではない。すなわち、あなたがたのために|天《てん》から|雨《あめ》を|降《ふ》らせ、|実《みの》りの|季節《きせつ》を|与《あた》え、|食物《しょくもつ》と|喜《よろこ》びとで、あなたがたの|心《こころ》を|満《み》たすなど、いろいろのめぐみをお|与《あた》えになっているのである」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》って、ふたりは、やっとのことで、|群衆《ぐんしゅう》が|自分《じぶん》たちに|犠牲《ぎせい》をささげるのを、|思《おも》い|止《とど》まらせた。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ところが、あるユダヤ|人《じん》たちはアンテオケやイコニオムから|押《お》しかけてきて、|群衆《ぐんしゅう》を|仲間《なかま》に|引《ひ》き|入《い》れたうえ、パウロを|石《いし》で|打《う》ち、|死《し》んでしまったと|思《おも》って、|彼《かれ》を|町《まち》の|外《そと》に|引《ひ》きずり|出《だ》した。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|弟子《でし》たちがパウロを|取《と》り|囲《かこ》んでいる|間《あいだ》に、|彼《かれ》は|起《お》きあがって|町《まち》にはいって|行《い》った。そして|翌日《よくじつ》には、バルナバと|一緒《いっしょ》にデルベにむかって|出《で》かけた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]その|町《まち》で|福音《ふくいん》を|伝《つた》えて、|大《おお》ぜいの|人《ひと》を|弟子《でし》とした|後《のち》、ルステラ、イコニオム、アンテオケの|町々《まちまち》に|帰《かえ》って|行《い》き、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|弟子《でし》たちを|力《ちから》づけ、|信仰《しんこう》を|持《も》ちつづけるようにと|奨励《しょうれい》し、「わたしたちが|神《かみ》の|国《くに》にはいるのには、|多《おお》くの|苦難《くなん》を|経《へ》なければならない」と|語《かた》った。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]また|教会《きょうかい》ごとに|彼《かれ》らのために|長老《ちょうろう》たちを|任命《にんめい》し、|断食《だんじき》をして|祈《いの》り、|彼《かれ》らをその|信《しん》じている|主《しゅ》にゆだねた。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]それから、ふたりはピシデヤを|通過《つうか》してパンフリヤにきたが、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ペルガで|御言《みことば》を|語《かた》った|後《のち》、アタリヤにくだり、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこから|舟《ふね》でアンテオケに|帰《かえ》った。|彼《かれ》らが|今《いま》なし|終《おわ》った|働《はたら》きのために、|神《かみ》の|祝福《しゅくふく》を|受《う》けて|送《おく》り|出《だ》されたのは、このアンテオケからであった。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|到着《とうちゃく》|早々《そうそう》、|教会《きょうかい》の|人々《ひとびと》を|呼《よ》び|集《あつ》めて、|神《かみ》が|彼《かれ》らと|共《とも》にいてして|下《くだ》さった|数々《かずかず》のこと、また|信仰《しんこう》の|門《もん》を|異邦人《いほうじん》に|開《ひら》いて|下《くだ》さったことなどを、|報告《ほうこく》した。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そして、ふたりはしばらくの|間《あいだ》、|弟子《でし》たちと|一緒《いっしょ》に|過《す》ごした。 第一五章[#「第一五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、ある|人《ひと》たちがユダヤから|下《くだ》ってきて、|兄弟《きょうだい》たちに「あなたがたも、モーセの|慣例《かんれい》にしたがって|割礼《かつれい》を|受《う》けなければ、|救《すく》われない」と、|説《と》いていた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、パウロやバルナバと|彼《かれ》らとの|間《あいだ》に、|少《すく》なからぬ|紛糾《ふんきゅう》と|争論《そうろん》とが|生《しょう》じたので、パウロ、バルナバそのほか|数人《すうにん》の|者《もの》がエルサレムに|上《のぼ》り、|使徒《しと》たちや|長老《ちょうろう》たちと、この|問題《もんだい》について|協議《きょうぎ》することになった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|教会《きょうかい》の|人々《ひとびと》に|見送《みおく》られ、ピニケ、サマリヤをとおって、|道《みち》すがら、|異邦人《いほうじん》たちの|改宗《かいしゅう》の|模様《もよう》をくわしく|説明《せつめい》し、すべての|兄弟《きょうだい》たちを|大《おお》いに|喜《よろこ》ばせた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]エルサレムに|着《つ》くと、|彼《かれ》らは|教会《きょうかい》と|使徒《しと》たち、|長老《ちょうろう》たちに|迎《むか》えられて、|神《かみ》が|彼《かれ》らと|共《とも》にいてなされたことを、ことごとく|報告《ほうこく》した。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ところが、パリサイ|派《は》から|信仰《しんこう》にはいってきた|人《ひと》たちが|立《た》って、「|異邦人《いほうじん》にも|割礼《かつれい》を|施《ほどこ》し、またモーセの|律法《りっぽう》を|守《まも》らせるべきである」と|主張《しゅちょう》した。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|使徒《しと》たちや|長老《ちょうろう》たちが、この|問題《もんだい》について|審議《しんぎ》するために|集《あつ》まった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|激《はげ》しい|争論《そうろん》があった|後《のち》、ペテロが|立《た》って|言《い》った、「|兄弟《きょうだい》たちよ、ご|承知《しょうち》のとおり、|異邦人《いほうじん》がわたしの|口《くち》から|福音《ふくいん》の|言葉《ことば》を|聞《き》いて|信《しん》じるようにと、|神《かみ》は|初《はじ》めのころに、|諸君《しょくん》の|中《なか》からわたしをお|選《えら》びになったのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そして、|人《ひと》の|心《こころ》をご|存《ぞん》じである|神《かみ》は、|聖霊《せいれい》をわれわれに|賜《たま》わったと|同様《どうよう》に|彼《かれ》らにも|賜《たま》わって、|彼《かれ》らに|対《たい》してあかしをなし、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]また、その|信仰《しんこう》によって|彼《かれ》らの|心《こころ》をきよめ、われわれと|彼《かれ》らとの|間《あいだ》に、なんの|分《わ》けへだてもなさらなかった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]しかるに、|諸君《しょくん》はなぜ、|今《いま》われわれの|先祖《せんぞ》もわれわれ|自身《じしん》も、|負《お》いきれなかったくびきをあの|弟子《でし》たちの|首《くび》にかけて、|神《かみ》を|試《こころ》みるのか。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|確《たし》かに、|主《しゅ》イエスのめぐみによって、われわれは|救《すく》われるのだと|信《しん》じるが、|彼《かれ》らとても|同様《どうよう》である」。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]すると、|全《ぜん》|会衆《かいしゅう》は|黙《だま》ってしまった。それから、バルナバとパウロとが、|彼《かれ》らをとおして|異邦人《いほうじん》の|間《あいだ》に|神《かみ》が|行《おこな》われた|数々《かずかず》のしるしと|奇跡《きせき》のことを、|説明《せつめい》するのを|聞《き》いた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ふたりが|語《かた》り|終《お》えた|後《のち》、ヤコブはそれに|応《おう》じて|述《の》べた、「|兄弟《きょうだい》たちよ、わたしの|意見《いけん》を|聞《き》いていただきたい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》が|初《はじ》めに|異邦人《いほうじん》たちを|顧《かえり》みて、その|中《なか》から|御名《みな》を|負《お》う|民《たみ》を|選《えら》び|出《だ》された|次第《しだい》は、シメオンがすでに|説明《せつめい》した。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|預言者《よげんしゃ》たちの|言葉《ことば》も、それと|一致《いっち》している。すなわち、こう|書《か》いてある、 [#ここから2字下げ] [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]『その|後《のち》、わたしは|帰《かえ》ってきて、 |倒《たお》れたダビデの|幕屋《まくや》を|建《た》てかえ、 くずれた|箇所《かしょ》を|修理《しゅうり》し、 それを|立《た》て|直《なお》そう。 [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|残《のこ》っている|人々《ひとびと》も、 わたしの|名《な》を|唱《とな》えているすべての|異邦人《いほうじん》も、 |主《しゅ》を|尋《たず》ね|求《もと》めるようになるためである。 [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|世《よ》の|初《はじ》めからこれらの|事《こと》を|知《し》らせておられる|主《しゅ》が、こう|仰《おお》せになった』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしの|意見《いけん》では、|異邦人《いほうじん》の|中《なか》から|神《かみ》に|帰依《きえ》している|人《ひと》たちに、わずらいをかけてはいけない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|偶像《ぐうぞう》に|供《そな》えて|汚《けが》れた|物《もの》と、|不品行《ふひんこう》と、|絞《し》め|殺《ころ》したものと、|血《ち》とを、|避《さ》けるようにと、|彼《かれ》らに|書《か》き|送《おく》ることにしたい。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|古《ふる》い|時代《じだい》から、どの|町《まち》にもモーセの|律法《りっぽう》を|宣《の》べ|伝《つた》える|者《もの》がいて、|安息日《あんそくにち》ごとにそれを|諸《しょ》|会堂《かいどう》で|朗読《ろうどく》するならわしであるから」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|使徒《しと》たちや|長老《ちょうろう》たちは、|全《ぜん》|教会《きょうかい》と|協議《きょうぎ》した|末《すえ》、お|互《たがい》の|中《なか》から|人々《ひとびと》を|選《えら》んで、パウロやバルナバと|共《とも》に、アンテオケに|派遣《はけん》することに|決《き》めた。|選《えら》ばれたのは、バルサバというユダとシラスとであったが、いずれも|兄弟《きょうだい》たちの|間《あいだ》で|重《おも》んじられていた|人《ひと》たちであった。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》たちに|託《たく》された|書面《しょめん》はこうである。  「あなたがたの|兄弟《きょうだい》である|使徒《しと》および|長老《ちょうろう》たちから、アンテオケ、シリヤ、キリキヤにいる|異邦人《いほうじん》の|兄弟《きょうだい》がたに、あいさつを|送《おく》る。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]こちらから|行《い》ったある|者《もの》たちが、わたしたちからの|指示《しじ》もないのに、いろいろなことを|言《い》って、あなたがたを|騒《さわ》がせ、あなたがたの|心《こころ》を|乱《みだ》したと|伝《つた》え|聞《き》いた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしたちは|人々《ひとびと》を|選《えら》んで、|愛《あい》するバルナバおよびパウロと|共《とも》に、あなたがたのもとに|派遣《はけん》することに、|衆議《しゅうぎ》|一決《いっけつ》した。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]このふたりは、われらの|主《しゅ》イエス・キリストの|名《な》のために、その|命《いのち》を|投《な》げ|出《だ》した|人々《ひとびと》であるが、[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らと|共《とも》に、ユダとシラスとを|派遣《はけん》する|次第《しだい》である。この|人《ひと》たちは、あなたがたに、|同《おな》じ|趣旨《しゅし》のことを、|口頭《こうとう》でも|伝《つた》えるであろう。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|聖霊《せいれい》とわたしたちとは、|次《つぎ》の|必要《ひつよう》|事項《じこう》のほかは、どんな|負担《ふたん》をも、あなたがたに|負《お》わせないことに|決《き》めた。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それは、|偶像《ぐうぞう》に|供《そな》えたものと、|血《ち》と、|絞《し》め|殺《ころ》したものと、|不品行《ふひんこう》とを、|避《さ》けるということである。これらのものから|遠《とお》ざかっておれば、それでよろしい。|以上《いじょう》」。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]さて、|一行《いっこう》は|人々《ひとびと》に|見送《みおく》られて、アンテオケに|下《くだ》って|行《い》き、|会衆《かいしゅう》を|集《あつ》めて、その|書面《しょめん》を|手渡《てわた》した。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はそれを|読《よ》んで、その|勧《すす》めの|言葉《ことば》をよろこんだ。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ユダとシラスとは|共《とも》に|預言者《よげんしゃ》であったので、|多《おお》くの|言葉《ことば》をもって|兄弟《きょうだい》たちを|励《はげ》まし、また|力《ちから》づけた。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]ふたりは、しばらくの|時《とき》を、そこで|過《す》ごした|後《のち》、|兄弟《きょうだい》たちから、|旅《たび》の|平安《へいあん》を|祈《いの》られて、|見送《みおく》りを|受《う》け、|自分《じぶん》らを|派遣《はけん》した|人々《ひとびと》のところに|帰《かえ》って|行《い》った。〔[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、シラスだけは、|引《ひ》きつづきとどまることにした。〕[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]パウロとバルナバとはアンテオケに|滞在《たいざい》をつづけて、ほかの|多《おお》くの|人《ひと》たちと|共《とも》に、|主《しゅ》の|言葉《ことば》を|教《おし》えかつ|宣《の》べ|伝《つた》えた。  [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|幾日《いくにち》かの|後《のち》、パウロはバルナバに|言《い》った、「さあ、|前《まえ》に|主《しゅ》の|言葉《ことば》を|伝《つた》えたすべての|町々《まちまち》にいる|兄弟《きょうだい》たちを、また|訪問《ほうもん》して、みんながどうしているかを|見《み》てこようではないか」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、バルナバはマルコというヨハネも|一緒《いっしょ》に|連《つ》れて|行《い》くつもりでいた。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、パウロは、|前《まえ》にパンフリヤで|一行《いっこう》から|離《はな》れて、|働《はたら》きを|共《とも》にしなかったような|者《もの》は、|連《つ》れて|行《い》かないがよいと|考《かんが》えた。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]こうして|激論《げきろん》が|起《おこ》り、その|結果《けっか》ふたりは|互《たがい》に|別《わか》れ|別《わか》れになり、バルナバはマルコを|連《つ》れてクプロに|渡《わた》って|行《い》き、[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]パウロはシラスを|選《えら》び、|兄弟《きょうだい》たちから|主《しゅ》の|恵《めぐ》みにゆだねられて、|出《で》|発《はっ》した。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]そしてパウロは、シリヤ、キリキヤの|地方《ちほう》をとおって、|諸《しょ》|教会《きょうかい》を|力《ちから》づけた。 第一六章[#「第一六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》はデルベに|行《い》き、|次《つぎ》にルステラに|行《い》った。そこにテモテという|名《な》の|弟子《でし》がいた。|信者《しんじゃ》のユダヤ|婦人《ふじん》を|母《はは》とし、ギリシヤ|人《じん》を|父《ちち》としており、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ルステラとイコニオムの|兄弟《きょうだい》たちの|間《あいだ》で、|評判《ひょうばん》のよい|人物《じんぶつ》であった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]パウロはこのテモテを|連《つ》れて|行《い》きたかったので、その|地方《ちほう》にいるユダヤ|人《じん》の|手前《てまえ》、まず|彼《かれ》に|割礼《かつれい》を|受《う》けさせた。|彼《かれ》の|父《ちち》がギリシヤ|人《じん》であることは、みんな|知《し》っていたからである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》らは|通《とお》る|町々《まちまち》で、エルサレムの|使徒《しと》たちや|長老《ちょうろう》たちの|取《と》り|決《き》めた|事項《じこう》を|守《まも》るようにと、|人々《ひとびと》にそれを|渡《わた》した。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|諸《しょ》|教会《きょうかい》はその|信仰《しんこう》を|強《つよ》められ、|日《ひ》ごとに|数《かず》を|増《ま》していった。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》らは、アジヤで|御言《みことば》を|語《かた》ることを|聖霊《せいれい》に|禁《きん》じられたので、フルギヤ・ガラテヤ|地方《ちほう》をとおって|行《い》った。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そして、ムシヤのあたりにきてから、ビテニヤに|進《すす》んで|行《い》こうとしたところ、イエスの|御霊《みたま》がこれを|許《ゆる》さなかった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それで、ムシヤを|通過《つうか》して、トロアスに|下《くだ》って|行《い》った。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ここで|夜《よる》、パウロは一つの|幻《まぼろし》を|見《み》た。ひとりのマケドニヤ|人《びと》が|立《た》って、「マケドニヤに|渡《わた》ってきて、わたしたちを|助《たす》けて|下《くだ》さい」と、|彼《かれ》に|懇願《こんがん》するのであった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]パウロがこの|幻《まぼろし》を|見《み》た|時《とき》、これは|彼《かれ》らに|福音《ふくいん》を|伝《つた》えるために、|神《かみ》がわたしたちをお|招《まね》きになったのだと|確信《かくしん》して、わたしたちは、ただちにマケドニヤに|渡《わた》って|行《い》くことにした。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしたちはトロアスから|船出《ふなで》して、サモトラケに|直航《ちょっこう》し、|翌日《よくじつ》ネアポリスに|着《つ》いた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そこからピリピへ|行《い》った。これはマケドニヤのこの|地方《ちほう》|第《だい》一の|町《まち》で、|植民《しょくみん》|都市《とし》であった。わたしたちは、この|町《まち》に|数日間《すうじつかん》|滞在《たいざい》した。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ある|安息日《あんそくにち》に、わたしたちは|町《まち》の|門《もん》を|出《で》て、|祈《いの》り|場《ば》があると|思《おも》って、|川《かわ》のほとりに|行《い》った。そして、そこにすわり、|集《あつ》まってきた|婦人《ふじん》たちに|話《はなし》をした。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、テアテラ|市《し》の|紫《むらさき》|布《ぬの》の|商人《しょうにん》で、|神《かみ》を|敬《うやま》うルデヤという|婦人《ふじん》が|聞《き》いていた。|主《しゅ》は|彼女《かのじょ》の|心《こころ》を|開《ひら》いて、パウロの|語《かた》ることに|耳《みみ》を|傾《かたむ》けさせた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そして、この|婦人《ふじん》もその|家族《かぞく》も、|共《とも》にバプテスマを|受《う》けたが、その|時《とき》、|彼女《かのじょ》は「もし、わたしを|主《しゅ》を|信《しん》じる|者《もの》とお|思《おも》いでしたら、どうぞ、わたしの|家《いえ》にきて|泊《と》まって|下《くだ》さい」と|懇望《こんもう》し、しいてわたしたちをつれて|行《い》った。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]ある|時《とき》、わたしたちが、|祈《いの》り|場《ば》に|行《い》く|途中《とちゅう》、|占《うらな》いの|霊《れい》につかれた|女《おんな》|奴隷《どれい》に|出会《であ》った。|彼女《かのじょ》は|占《うらな》いをして、その|主人《しゅじん》たちに|多《おお》くの|利益《りえき》を|得《え》させていた|者《もの》である。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》が、パウロやわたしたちのあとを|追《お》ってきては、「この|人《ひと》たちは、いと|高《たか》き|神《かみ》の|僕《しもべ》たちで、あなたがたに|救《すくい》の|道《みち》を|伝《つた》えるかただ」と、|叫《さけ》び|出《だ》すのであった。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そして、そんなことを|幾《いく》|日間《にちかん》もつづけていた。パウロは|困《こま》りはてて、その|霊《れい》にむかい「イエス・キリストの|名《な》によって|命《めい》じる。その|女《おんな》から|出《で》て|行《い》け」と|言《い》った。すると、その|瞬間《しゅんかん》に|霊《れい》が|女《おんな》から|出《で》て|行《い》った。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》の|主人《しゅじん》たちは、|自分《じぶん》らの|利益《りえき》を|得《え》る|望《のぞ》みが|絶《た》えたのを|見《み》て、パウロとシラスとを|捕《とら》え、|役人《やくにん》に|引《ひ》き|渡《わた》すため|広場《ひろば》に|引《ひ》きずって|行《い》った。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]それから、ふたりを|長官《ちょうかん》たちの|前《まえ》に|引《ひ》き|出《だ》して|訴《うった》えた、「この|人《ひと》たちはユダヤ|人《じん》でありまして、わたしたちの|町《まち》をかき|乱《みだ》し、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちローマ|人《じん》が、|採用《さいよう》も|実行《じっこう》もしてはならない|風習《ふうしゅう》を|宣伝《せんでん》しているのです」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|群衆《ぐんしゅう》もいっせいに|立《た》って、ふたりを|責《せ》めたてたので、|長官《ちょうかん》たちはふたりの|上着《うわぎ》をはぎ|取《と》り、むちで|打《う》つことを|命《めい》じた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それで、ふたりに|何《なに》|度《ど》もむちを|加《くわ》えさせたのち、|獄《ごく》に|入《い》れ、|獄吏《ごくり》にしっかり|番《ばん》をするようにと|命《めい》じた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|獄吏《ごくり》はこの|厳命《げんめい》を|受《う》けたので、ふたりを|奥《おく》の|獄屋《ごくや》に|入《い》れ、その|足《あし》に|足《あし》かせをしっかとかけておいた。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|真夜中《まよなか》ごろ、パウロとシラスとは、|神《かみ》に|祈《いの》り、さんびを|歌《うた》いつづけたが、|囚人《しゅうじん》たちは|耳《みみ》をすまして|聞《き》きいっていた。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]ところが|突然《とつぜん》、|大《おお》|地震《じしん》が|起《おこ》って、|獄《ごく》の|土台《どだい》が|揺《ゆ》れ|動《うご》き、|戸《と》は|全部《ぜんぶ》たちまち|開《ひら》いて、みんなの|者《もの》の|鎖《くさり》が|解《と》けてしまった。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|獄吏《ごくり》は|目《め》をさまし、|獄《ごく》の|戸《と》が|開《ひら》いてしまっているのを|見《み》て、|囚人《しゅうじん》たちが|逃《に》げ|出《だ》したものと|思《おも》い、つるぎを|抜《ぬ》いて|自殺《じさつ》しかけた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そこでパウロは|大声《おおごえ》をあげて|言《い》った、「|自害《じがい》してはいけない。われわれは|皆《みな》ひとり|残《のこ》らず、ここにいる」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]すると、|獄吏《ごくり》は、あかりを|手《て》に|入《い》れた|上《うえ》、|獄《ごく》に|駆《か》け|込《こ》んできて、おののきながらパウロとシラスの|前《まえ》にひれ|伏《ふ》した。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]それから、ふたりを|外《そと》に|連《つ》れ|出《だ》して|言《い》った、「|先生《せんせい》がた、わたしは|救《すく》われるために、|何《なに》をすべきでしょうか」。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]ふたりが|言《い》った、「|主《しゅ》イエスを|信《しん》じなさい。そうしたら、あなたもあなたの|家族《かぞく》も|救《すく》われます」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》とその|家族《かぞく》|一同《いちどう》とに、|神《かみ》の|言《ことば》を|語《かた》って|聞《き》かせた。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|真夜中《まよなか》にもかかわらず、ふたりを|引《ひ》き|取《と》って、その|打《う》ち|傷《きず》を|洗《あら》ってやった。そして、その|場《ば》で|自分《じぶん》も|家族《かぞく》も、ひとり|残《のこ》らずバプテスマを|受《う》け、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]さらに、ふたりを|自分《じぶん》の|家《いえ》に|案内《あんない》して|食事《しょくじ》のもてなしをし、|神《かみ》を|信《しん》じる|者《もの》となったことを、|全《ぜん》|家族《かぞく》と|共《とも》に|心《こころ》から|喜《よろこ》んだ。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けると、|長官《ちょうかん》たちは|警《けい》|吏《り》らをつかわして、「あの|人《ひと》たちを|釈放《しゃくほう》せよ」と|言《い》わせた。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|獄吏《ごくり》はこの|言葉《ことば》をパウロに|伝《つた》えて|言《い》った、「|長官《ちょうかん》たちが、あなたがたを|釈放《しゃくほう》させるようにと、|使《つかい》をよこしました。さあ、|出《で》てきて、|無事《ぶじ》にお|帰《かえ》りなさい」。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]ところが、パウロは|警《けい》|吏《り》らに|言《い》った、「|彼《かれ》らは、ローマ|人《じん》であるわれわれを、|裁判《さいばん》にかけもせずに、|公衆《こうしゅう》の|前《まえ》でむち|打《う》ったあげく、|獄《ごく》に|入《い》れてしまった。しかるに|今《いま》になって、ひそかに、われわれを|出《だ》そうとするのか。それは、いけない。|彼《かれ》ら|自身《じしん》がここにきて、われわれを|連《つ》れ|出《だ》すべきである」。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]|警《けい》|吏《り》らはこの|言葉《ことば》を|長官《ちょうかん》たちに|報告《ほうこく》した。すると|長官《ちょうかん》たちは、ふたりがローマ|人《じん》だと|聞《き》いて|恐《おそ》れ、[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》でやってきてわびた|上《うえ》、ふたりを|獄《ごく》から|連《つ》れ|出《だ》し、|町《まち》から|立《た》ち|去《さ》るようにと|頼《たの》んだ。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]ふたりは|獄《ごく》を|出《で》て、ルデヤの|家《いえ》に|行《い》った。そして、|兄弟《きょうだい》たちに|会《あ》って|勧《すす》めをなし、それから|出《で》かけた。 第一七章[#「第一七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|一行《いっこう》は、アムピポリスとアポロニヤとをとおって、テサロニケに|行《い》った。ここにはユダヤ|人《じん》の|会堂《かいどう》があった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]パウロは|例《れい》によって、その|会堂《かいどう》にはいって|行《い》って、三つの|安息日《あんそくにち》にわたり、|聖書《せいしょ》に|基《もとづ》いて|彼《かれ》らと|論《ろん》じ、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]キリストは|必《かなら》ず|苦難《くなん》を|受《う》け、そして|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえるべきこと、また「わたしがあなたがたに|伝《つた》えているこのイエスこそは、キリストである」とのことを、|説明《せつめい》もし|論証《ろんしょう》もした。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ある|人《ひと》たちは|納得《なっとく》がいって、パウロとシラスにしたがった。その|中《なか》には、|信心《しんじん》|深《ぶか》いギリシヤ|人《じん》が|多数《たすう》あり、|貴婦人《きふじん》たちも|少《すく》なくなかった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ユダヤ|人《じん》たちは、それをねたんで、|町《まち》をぶらついているならず|者《もの》らを|集《あつ》めて|暴動《ぼうどう》を|起《おこ》し、|町《まち》を|騒《さわ》がせた。それからヤソンの|家《いえ》を|襲《おそ》い、ふたりを|民衆《みんしゅう》の|前《まえ》にひっぱり|出《だ》そうと、しきりに|捜《さが》した。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、ふたりが|見《み》つからないので、ヤソンと|兄弟《きょうだい》たち|数人《すうにん》を、|市《し》の|当局者《とうきょくしゃ》のところに|引《ひ》きずって|行《い》き、|叫《さけ》んで|言《い》った、「|天下《てんか》をかき|回《まわ》してきたこの|人《ひと》たちが、ここにもはいり|込《こ》んでいます。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]その|人《ひと》たちをヤソンが|自分《じぶん》の|家《いえ》に|迎《むか》え|入《い》れました。この|連中《れんちゅう》は、みなカイザルの|詔勅《しょうちょく》にそむいて|行動《こうどう》し、イエスという|別《べつ》の|王《おう》がいるなどと|言《い》っています」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]これを|聞《き》いて、|群衆《ぐんしゅう》と|市《し》の|当局者《とうきょくしゃ》は|不安《ふあん》に|感《かん》じた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そして、ヤソンやほかの|者《もの》たちから、|保証《ほしょう》|金《きん》を|取《と》った|上《うえ》、|彼《かれ》らを|釈放《しゃくほう》した。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|兄弟《きょうだい》たちはただちに、パウロとシラスとを、|夜《よる》の|間《あいだ》にベレヤへ|送《おく》り|出《だ》した。ふたりはベレヤに|到着《とうちゃく》すると、ユダヤ|人《じん》の|会堂《かいどう》に|行《い》った。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ここにいるユダヤ|人《じん》はテサロニケの|者《もの》たちよりも|素直《すなお》であって、|心《こころ》から|教《おしえ》を|受《う》けいれ、|果《はた》してそのとおりかどうかを|知《し》ろうとして、|日々《ひび》|聖書《せいしょ》を|調《しら》べていた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そういうわけで、|彼《かれ》らのうちの|多《おお》くの|者《もの》が|信者《しんじゃ》になった。また、ギリシヤの|貴婦人《きふじん》や|男子《だんし》で|信《しん》じた|者《もの》も、|少《すく》なくなかった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]テサロニケのユダヤ|人《じん》たちは、パウロがベレヤでも|神《かみ》の|言《ことば》を|伝《つた》えていることを|知《し》り、そこにも|押《お》しかけてきて、|群衆《ぐんしゅう》を|煽動《せんどう》して|騒《さわ》がせた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|兄弟《きょうだい》たちは、ただちにパウロを|送《おく》り|出《だ》して、|海《うみ》べまで|行《い》かせ、シラスとテモテとはベレヤに|居残《いのこ》った。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]パウロを|案内《あんない》した|人《ひと》たちは、|彼《かれ》をアテネまで|連《つ》れて|行《い》き、テモテとシラスとになるべく|早《はや》く|来《く》るようにとのパウロの|伝言《でんごん》を|受《う》けて、|帰《かえ》った。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]さて、パウロはアテネで|彼《かれ》らを|待《ま》っている|間《あいだ》に、|市内《しない》に|偶像《ぐうぞう》がおびただしくあるのを|見《み》て、|心《こころ》に|憤《いきどお》りを|感《かん》じた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》は、|会堂《かいどう》ではユダヤ|人《じん》や|信心《しんじん》|深《ぶか》い|人《ひと》たちと|論《ろん》じ、|広場《ひろば》では|毎日《まいにち》そこで|出会《であ》う|人々《ひとびと》を|相手《あいて》に|論《ろん》じた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]また、エピクロス|派《は》やストア|派《は》の|哲学者《てつがくしゃ》|数人《すうにん》も、パウロと|議論《ぎろん》を|戦《たたか》わせていたが、その|中《なか》のある|者《もの》たちが|言《い》った、「このおしゃべりは、いったい、|何《なに》を|言《い》おうとしているのか」。また、ほかの|者《もの》たちは、「あれは、|異国《いこく》の|神々《かみがみ》を|伝《つた》えようとしているらしい」と|言《い》った。パウロが、イエスと|復活《ふっかつ》とを、|宣《の》べ|伝《つた》えていたからであった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》らはパウロをアレオパゴスの|評議所《ひょうぎしょ》に|連《つ》れて|行《い》って、「|君《きみ》の|語《かた》っている|新《あたら》しい|教《おしえ》がどんなものか、|知《し》らせてもらえまいか。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|君《きみ》がなんだか|珍《めず》らしいことをわれわれに|聞《き》かせているので、それがなんの|事《こと》なのか|知《し》りたいと|思《おも》うのだ」と|言《い》った。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]いったい、アテネ|人《びと》もそこに|滞在《たいざい》している|外国《がいこく》|人《じん》もみな、|何《なに》か|耳新《みみあたら》しいことを|話《はな》したり|聞《き》いたりすることのみに、|時《とき》を|過《す》ごしていたのである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこでパウロは、アレオパゴスの|評議所《ひょうぎしょ》のまん|中《なか》に|立《た》って|言《い》った。  「アテネの|人《ひと》たちよ、あなたがたは、あらゆる|点《てん》において、すこぶる|宗教《しゅうきょう》|心《こころ》に|富《と》んでおられると、わたしは|見《み》ている。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|実《じつ》は、わたしが|道《みち》を|通《とお》りながら、あなたがたの|拝《おが》むいろいろなものを、よく|見《み》ているうちに、『|知《し》られない|神《かみ》に』と|刻《きざ》まれた|祭壇《さいだん》もあるのに|気《き》がついた。そこで、あなたがたが|知《し》らずに|拝《おが》んでいるものを、いま|知《し》らせてあげよう。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]この|世界《せかい》と、その|中《なか》にある|万物《ばんぶつ》とを|造《つく》った|神《かみ》は、|天地《てんち》の|主《しゅ》であるのだから、|手《て》で|造《つく》った|宮《みや》などにはお|住《す》みにならない。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]また、|何《なに》か|不足《ふそく》でもしておるかのように、|人《ひと》の|手《て》によって|仕《つか》えられる|必要《ひつよう》もない。|神《かみ》は、すべての|人々《ひとびと》に|命《いのち》と|息《いき》と|万物《ばんぶつ》とを|与《あた》え、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]また、ひとりの|人《ひと》から、あらゆる|民族《みんぞく》を|造《つく》り|出《りだ》して、|地《ち》の|全面《ぜんめん》に|住《す》まわせ、それぞれに|時代《じだい》を|区分《くぶん》し、|国土《こくど》の|境界《きょうかい》を|定《さだ》めて|下《くだ》さったのである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|人々《ひとびと》が|熱心《ねっしん》に|追《お》い|求《もと》めて|捜《さが》しさえすれば、|神《かみ》を|見《み》いだせるようにして|下《くだ》さった。|事実《じじつ》、|神《かみ》はわれわれひとりびとりから|遠《とお》く|離《はな》れておいでになるのではない。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]われわれは|神《かみ》のうちに|生《い》き、|動《うご》き、|存在《そんざい》しているからである。あなたがたのある|詩人《しじん》たちも|言《い》ったように、 [#ここから2字下げ] 『われわれも、|確《たし》かにその|子孫《しそん》である』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]このように、われわれは|神《かみ》の|子孫《しそん》なのであるから、|神《かみ》たる|者《もの》を、|人間《にんげん》の|技巧《ぎこう》や|空想《くうそう》で|金《きん》や|銀《ぎん》や|石《いし》などに|彫《ほ》り|付《つ》けたものと|同《おな》じと、|見《み》なすべきではない。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、このような|無知《むち》の|時代《じだい》を、これまでは|見過《みす》ごしにされていたが、|今《いま》はどこにおる|人《ひと》でも、みな|悔《く》い|改《あらた》めなければならないことを|命《めい》じておられる。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、|義《ぎ》をもってこの|世界《せかい》をさばくためその|日《ひ》を|定《さだ》め、お|選《えら》びになったかたによってそれをなし|遂《と》げようとされている。すなわち、このかたを|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせ、その|確証《かくしょう》をすべての|人《ひと》に|示《しめ》されたのである」。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|死人《しにん》のよみがえりのことを|聞《き》くと、ある|者《もの》たちはあざ|笑《わら》い、またある|者《もの》たちは、「この|事《こと》については、いずれまた|聞《き》くことにする」と|言《い》った。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]こうして、パウロは|彼《かれ》らの|中《なか》から|出《で》て|行《い》った。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》にしたがって|信《しん》じた|者《もの》も、|幾人《いくにん》かあった。その|中《なか》には、アレオパゴスの|裁判人《さいばんにん》デオヌシオとダマリスという|女《おんな》、また、その|他《た》の|人々《ひとびと》もいた。 第一八章[#「第一八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》、パウロはアテネを|去《さ》ってコリントへ|行《い》った。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、アクラというポント|生《うま》れのユダヤ|人《じん》と、その|妻《つま》プリスキラとに|出会《であ》った。クラウデオ|帝《てい》が、すべてのユダヤ|人《じん》をローマから|退去《たいきょ》させるようにと、|命令《めいれい》したため、|彼《かれ》らは|近《ちか》ごろイタリヤから|出《で》てきたのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]パウロは|彼《かれ》らのところに|行《い》ったが、|互《たがい》に|同業《どうぎょう》であったので、その|家《いえ》に|住《す》み|込《こ》んで、|一緒《いっしょ》に|仕事《しごと》をした。|天幕《てんまく》|造《つく》りがその|職業《しょくぎょう》であった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]パウロは|安息日《あんそくにち》ごとに|会堂《かいどう》で|論《ろん》じては、ユダヤ|人《じん》やギリシヤ|人《じん》の|説得《せっとく》に|努《つと》めた。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]シラスとテモテが、マケドニヤから|下《くだ》ってきてからは、パウロは|御言《みことば》を|伝《つた》えることに|専念《せんねん》し、イエスがキリストであることを、ユダヤ|人《じん》たちに|力強《ちからづよ》くあかしした。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らがこれに|反抗《はんこう》してののしり|続《つづ》けたので、パウロは|自分《じぶん》の|上着《うわぎ》を|振《ふ》りはらって、|彼《かれ》らに|言《い》った、「あなたがたの|血《ち》は、あなたがた|自身《じしん》にかえれ。わたしには|責任《せきにん》がない。|今《いま》からわたしは|異邦人《いほうじん》の|方《ほう》に|行《い》く」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》って、|彼《かれ》はそこを|去《さ》り、テテオ・ユストという|神《かみ》を|敬《うやま》う|人《ひと》の|家《いえ》に|行《い》った。その|家《いえ》は|会堂《かいどう》と|隣《とな》り|合《あ》っていた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|会堂司《かいどうづかさ》クリスポは、その|家族《かぞく》|一同《いちどう》と|共《とも》に|主《しゅ》を|信《しん》じた。また|多《おお》くのコリント|人《びと》も、パウロの|話《はなし》を|聞《き》いて|信《しん》じ、ぞくぞくとバプテスマを|受《う》けた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すると、ある|夜《よ》、|幻《まぼろし》のうちに|主《しゅ》がパウロに|言《い》われた、「|恐《おそ》れるな。|語《かた》りつづけよ、|黙《だま》っているな。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたには、わたしがついている。だれもあなたを|襲《おそ》って、|危害《きがい》を|加《くわ》えるようなことはない。この|町《まち》には、わたしの|民《たみ》が|大《おお》ぜいいる」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]パウロは一|年《ねん》六か|月《げつ》の|間《あいだ》ここに|腰《こし》をすえて、|神《かみ》の|言《ことば》を|彼《かれ》らの|間《あいだ》に|教《おし》えつづけた。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ガリオがアカヤの|総督《そうとく》であった|時《とき》、ユダヤ|人《じん》たちは|一緒《いっしょ》になってパウロを|襲《おそ》い、|彼《かれ》を|法廷《ほうてい》にひっぱって|行《い》って|訴《うった》えた、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]「この|人《ひと》は、|律法《りっぽう》にそむいて|神《かみ》を|拝《おが》むように、|人々《ひとびと》をそそのかしています」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]パウロが|口《くち》を|開《ひら》こうとすると、ガリオはユダヤ|人《じん》たちに|言《い》った、「ユダヤ|人《じん》|諸君《しょくん》、|何《なに》か|不法《ふほう》|行為《こうい》とか、|悪質《あくしつ》の|犯罪《はんざい》とかのことなら、わたしは|当然《とうぜん》、|諸君《しょくん》の|訴《うった》えを|取《と》り|上《あ》げもしようが、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]これは|諸君《しょくん》の|言葉《ことば》や|名称《めいしょう》や|律法《りっぽう》に|関《かん》する|問題《もんだい》なのだから、|諸君《しょくん》みずから|始末《しまつ》するがよかろう。わたしはそんな|事《こと》の|裁判人《さいばんにん》にはなりたくない」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》って、|彼《かれ》らを|法廷《ほうてい》から|追《お》いはらった。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、みんなの|者《もの》は、|会堂司《かいどうづかさ》ソステネを|引《ひ》き|捕《とら》え、|法廷《ほうてい》の|前《まえ》で|打《う》ちたたいた。ガリオはそれに|対《たい》して、そ|知《し》らぬ|顔《かお》をしていた。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]さてパウロは、なお|幾日《いくにち》ものあいだ|滞在《たいざい》した|後《のち》、|兄弟《きょうだい》たちに|別《わか》れを|告《つ》げて、シリヤへ|向《む》け|出帆《しゅっぱん》した。プリスキラとアクラも|同行《どうこう》した。パウロは、かねてから、ある|誓願《せいがん》を|立《た》てていたので、ケンクレヤで|頭《あたま》をそった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|一行《いっこう》がエペソに|着《つ》くと、パウロはふたりをそこに|残《のこ》しておき、|自分《じぶん》だけ|会堂《かいどう》にはいって、ユダヤ|人《じん》たちと|論《ろん》じた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は、パウロにもっと|長《なが》いあいだ|滞在《たいざい》するように|願《ねが》ったが、|彼《かれ》は|聞《き》きいれないで、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]「|神《かみ》のみこころなら、またあなたがたのところに|帰《かえ》ってこよう」と|言《い》って、|別《わか》れを|告《つ》げ、エペソから|船出《ふなで》した。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]それから、カイザリヤで|上陸《じょうりく》してエルサレムに|上《のぼ》り、|教会《きょうかい》にあいさつしてから、アンテオケに|下《くだ》って|行《い》った。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そこにしばらくいてから、|彼《かれ》はまた|出《で》かけ、ガラテヤおよびフルギヤの|地方《ちほう》を|歴訪《れきほう》して、すべての|弟子《でし》たちを|力《ちから》づけた。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]さて、アレキサンデリヤ|生《うま》れで、|聖書《せいしょ》に|精通《せいつう》し、しかも、|雄弁《ゆうべん》なアポロというユダヤ|人《じん》が、エペソにきた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》は|主《しゅ》の|道《みち》に|通《つう》じており、また、|霊《れい》に|燃《も》えてイエスのことを|詳《くわ》しく|語《かた》ったり|教《おし》えたりしていたが、ただヨハネのバプテスマしか|知《し》っていなかった。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|会堂《かいどう》で|大胆《だいたん》に|語《かた》り|始《はじ》めた。それをプリスキラとアクラとが|聞《き》いて、|彼《かれ》を|招《まね》きいれ、さらに|詳《くわ》しく|神《かみ》の|道《みち》を|解《と》き|聞《き》かせた。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]それから、アポロがアカヤに|渡《わた》りたいと|思《おも》っていたので、|兄弟《きょうだい》たちは|彼《かれ》を|励《はげ》まし、|先方《せんぽう》の|弟子《でし》たちに、|彼《かれ》をよく|迎《むか》えるようにと、|手紙《てがみ》を|書《か》き|送《おく》った。|彼《かれ》は|到着《とうちゃく》して、すでにめぐみによって|信者《しんじゃ》になっていた|人《ひと》たちに、|大《おお》いに|力《ちから》になった。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はイエスがキリストであることを、|聖書《せいしょ》に|基《もとづ》いて|示《しめ》し、|公然《こうぜん》と、ユダヤ|人《じん》たちを|激《はげ》しい|語調《ごちょう》で|論破《ろんぱ》したからである。 第一九章[#「第一九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]アポロがコリントにいた|時《とき》、パウロは|奥地《おくち》をとおってエペソにきた。そして、ある|弟子《でし》たちに|出会《であ》って、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らに「あなたがたは、|信仰《しんこう》にはいった|時《とき》に、|聖霊《せいれい》を|受《う》けたのか」と|尋《たず》ねたところ、「いいえ、|聖霊《せいれい》なるものがあることさえ、|聞《き》いたことがありません」と|答《こた》えた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]「では、だれの|名《な》によってバプテスマを|受《う》けたのか」と|彼《かれ》がきくと、|彼《かれ》らは「ヨハネの|名《な》によるバプテスマを|受《う》けました」と|答《こた》えた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、パウロが|言《い》った、「ヨハネは|悔改《くいあらた》めのバプテスマを|授《さづ》けたが、それによって、|自分《じぶん》のあとに|来《く》るかた、すなわち、イエスを|信《しん》じるように、|人々《ひとびと》に|勧《すす》めたのである」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》はこれを|聞《き》いて、|主《しゅ》イエスの|名《な》によるバプテスマを|受《う》けた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そして、パウロが|彼《かれ》らの|上《うえ》に|手《て》をおくと、|聖霊《せいれい》が|彼《かれ》らにくだり、それから|彼《かれ》らは|異言《いげん》を|語《かた》ったり、|預言《よげん》をしたりし|出《だ》した。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]その|人《ひと》たちはみんなで十二|人《にん》ほどであった。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それから、パウロは|会堂《かいどう》にはいって、三か|月《げつ》のあいだ、|大胆《だいたん》に|神《かみ》の|国《くに》について|論《ろん》じ、また|勧《すす》めをした。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ある|人《ひと》たちは|心《こころ》をかたくなにして、|信《しん》じようとせず、|会衆《かいしゅう》の|前《まえ》でこの|道《みち》をあしざまに|言《い》ったので、|彼《かれ》は|弟子《でし》たちを|引《ひ》き|連《つ》れて、その|人《ひと》たちから|離《はな》れ、ツラノの|講堂《こうどう》で|毎日《まいにち》|論《ろん》じた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それが二|年間《ねんかん》も|続《つづ》いたので、アジヤに|住《す》んでいる|者《もの》は、ユダヤ|人《じん》もギリシヤ|人《じん》も|皆《みな》、|主《しゅ》の|言《ことば》を|聞《き》いた。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、パウロの|手《て》によって、|異常《いじょう》な|力《ちから》あるわざを|次々《つぎつぎ》になされた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]たとえば、|人々《ひとびと》が、|彼《かれ》の|身《み》につけている|手《て》ぬぐいや|前掛《まえか》けを|取《と》って|病人《びょうにん》にあてると、その|病気《びょうき》が|除《のぞ》かれ、|悪霊《あくれい》が|出《で》て|行《い》くのであった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ユダヤ|人《じん》のまじない|師《し》で、|遍歴《へんれき》している|者《もの》たちが、|悪霊《あくれい》につかれている|者《もの》にむかって、|主《しゅ》イエスの|名《な》をとなえ、「パウロの|宣《の》べ|伝《つた》えているイエスによって|命《めい》じる。|出《で》て|行《い》け」と、ためしに|言《い》ってみた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤの|祭司長《さいしちょう》スケワという|者《もの》の七|人《にん》のむすこたちも、そんなことをしていた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すると|悪霊《あくれい》がこれに|対《たい》して|言《い》った、「イエスなら|自分《じぶん》は|知《し》っている。パウロもわかっている。だが、おまえたちは、いったい|何者《なにもの》だ」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして、|悪霊《あくれい》につかれている|人《ひと》が、|彼《かれ》らに|飛《と》びかかり、みんなを|押《おさ》えつけて|負《ま》かしたので、|彼《かれ》らは|傷《きず》を|負《お》ったまま|裸《はだか》になって、その|家《いえ》を|逃《に》げ|出《だ》した。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]このことがエペソに|住《す》むすべてのユダヤ|人《じん》やギリシヤ|人《じん》に|知《し》れわたって、みんな|恐怖《きょうふ》に|襲《おそ》われ、そして、|主《しゅ》イエスの|名《な》があがめられた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]また|信者《しんじゃ》になった|者《もの》が|大《おお》ぜいきて、|自分《じぶん》の|行為《こうい》を|打《う》ちあけて|告白《こくはく》した。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]それから、|魔術《まじゅつ》を|行《おこな》っていた|多《おお》くの|者《もの》が、|魔術《まじゅつ》の|本《ほん》を|持《も》ち|出《だ》してきては、みんなの|前《まえ》で|焼《や》き|捨《す》てた。その|値段《ねだん》を|総計《そうけい》したところ、|銀《ぎん》五万にも|上《のぼ》ることがわかった。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]このようにして、|主《しゅ》の|言《ことば》はますます|盛《さか》んにひろまり、また|力《ちから》を|増《ま》し|加《くわ》えていった。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]これらの|事《こと》があった|後《のち》、パウロは|御霊《みたま》に|感《かん》じて、マケドニヤ、アカヤをとおって、エルサレムへ|行《い》く|決心《けっしん》をした。そして|言《い》った、「わたしは、そこに|行《い》ったのち、ぜひローマをも|見《み》なければならない」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|自分《じぶん》に|仕《つか》えている|者《もの》の|中《なか》から、テモテとエラストとのふたりを、まずマケドニヤに|送《おく》り|出《だ》し、パウロ|自身《じしん》は、なおしばらくアジヤにとどまった。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そのころ、この|道《みち》について|容易《ようい》ならぬ|騒動《そうどう》が|起《おこ》った。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そのいきさつは、こうである。デメテリオという|銀細工人《ぎんざいくにん》が、|銀《ぎん》でアルテミス|神殿《しんでん》の|模型《もけい》を|造《つく》って、|職人《しょくにん》たちに|少《すく》なからぬ|利益《りえき》を|得《え》させていた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]この|男《おとこ》がその|職人《しょくにん》たちや、|同類《どうるい》の|仕事《しごと》をしていた|者《もの》たちを|集《あつ》めて|言《い》った、「|諸君《しょくん》、われわれがこの|仕事《しごと》で、|金《かね》もうけをしていることは、ご|承知《しょうち》のとおりだ。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]しかるに、|諸君《しょくん》の|見聞《みき》きしているように、あのパウロが、|手《て》で|造《つく》られたものは|神様《かみさま》ではないなどと|言《い》って、エペソばかりか、ほとんどアジヤ|全体《ぜんたい》にわたって、|大《おお》ぜいの|人々《ひとびと》を|説《と》きつけて|誤《あやま》らせた。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]これでは、お|互《たがい》の|仕事《しごと》に|悪評《あくひょう》が|立《た》つおそれがあるばかりか、|大《おお》|女神《めがみ》アルテミスの|宮《みや》も|軽《かろ》んじられ、ひいては|全《ぜん》アジヤ、いや|全《ぜん》|世界《せかい》が|拝《おが》んでいるこの|大《おお》|女神《めがみ》のご|威光《いこう》さえも、|消《き》えてしまいそうである」。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]これを|聞《き》くと、|人々《ひとびと》は|怒《いか》りに|燃《も》え、|大声《おおごえ》で「|大《おお》いなるかな、エペソ|人《びと》のアルテミス」と|叫《さけ》びつづけた。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そして、|町中《まちじゅう》が|大《だい》|混乱《こんらん》に|陥《おちい》り、|人々《ひとびと》はパウロの|道連《みちづ》れであるマケドニヤ|人《びと》ガイオとアリスタルコとを|捕《とら》えて、いっせいに|劇場《げきじょう》へなだれ|込《こ》んだ。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]パウロは|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》にはいって|行《い》こうとしたが、|弟子《でし》たちがそれをさせなかった。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]アジヤ|州《しゅう》の|議員《ぎいん》で、パウロの|友人《ゆうじん》であった|人《ひと》たちも、|彼《かれ》に|使《つかい》をよこして、|劇場《げきじょう》にはいって|行《い》かないようにと、しきりに|頼《たの》んだ。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|中《なか》では、|集会《しゅうかい》が|混乱《こんらん》に|陥《おちい》ってしまって、ある|者《もの》はこのことを、ほかの|者《もの》はあのことを、どなりつづけていたので、|大多数《だいたすう》の|者《もの》は、なんのために|集《あつ》まったのかも、わからないでいた。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、ユダヤ|人《じん》たちが、|前《まえ》に|押《お》し|出《だ》したアレキサンデルなる|者《もの》を、|群衆《ぐんしゅう》の|中《なか》のある|人《ひと》たちが|促《うなが》したため、|彼《かれ》は|手《て》を|振《ふ》って、|人々《ひとびと》に|弁明《べんめい》を|試《こころ》みようとした。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|彼《かれ》がユダヤ|人《じん》だとわかると、みんなの|者《もの》がいっせいに「|大《おお》いなるかな、エペソ|人《びと》のアルテミス」と二|時間《じかん》ばかりも|叫《さけ》びつづけた。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]ついに、|市《し》の|書記《しょき》|役《やく》が|群衆《ぐんしゅう》を|押《お》し|静《しず》めて|言《い》った、「エペソの|諸君《しょくん》、エペソ|市《し》が|大《おお》|女神《めがみ》アルテミスと、|天《あま》くだったご|神体《しんたい》との|守護《しゅご》|役《やく》であることを|知《し》らない|者《もの》が、ひとりでもいるだろうか。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]これは|否定《ひてい》のできない|事実《じじつ》であるから、|諸君《しょくん》はよろしく|静《しず》かにしているべきで、|乱暴《らんぼう》な|行動《こうどう》は、いっさいしてはならない。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|諸君《しょくん》はこの|人《ひと》たちをここにひっぱってきたが、|彼《かれ》らは|宮《みや》を|荒《あら》す|者《もの》でも、われわれの|女神《めがみ》をそしる|者《もの》でもない。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]だから、もしデメテリオなりその|職人《しょくにん》|仲間《なかま》なりが、だれかに|対《たい》して|訴《うった》え|事《こと》があるなら、|裁判《さいばん》の|日《ひ》はあるし、|総督《そうとく》もいるのだから、それぞれ|訴《うった》え|出《で》るがよい。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|何《なに》かもっと|要求《ようきゅう》したい|事《こと》があれば、それは|正式《せいしき》の|議会《ぎかい》で|解決《かいけつ》してもらうべきだ。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]きょうの|事件《じけん》については、この|騒《さわ》ぎを|弁護《べんご》できるような|理由《りゆう》が|全《まった》くないのだから、われわれは|治安《ちあん》をみだす|罪《つみ》に|問《と》われるおそれがある」。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》って、|彼《かれ》はこの|集会《しゅうかい》を|解散《かいさん》させた。 第二〇章[#「第二〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|騒《さわ》ぎがやんだ|後《のち》、パウロは|弟子《でし》たちを|呼《よ》び|集《あつ》めて|激励《げきれい》を|与《あた》えた|上《うえ》、|別《わか》れのあいさつを|述《の》べ、マケドニヤへ|向《む》かって|出発《しゅっぱつ》した。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして、その|地方《ちほう》をとおり、|多《おお》くの|言葉《ことば》で|人々《ひとびと》を|励《はげ》ましたのち、ギリシヤにきた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はそこで三か|月《げつ》を|過《す》ごした。それからシリヤへ|向《む》かって、|船出《ふなで》しようとしていた|矢先《やさき》、|彼《かれ》に|対《たい》するユダヤ|人《じん》の|陰謀《いんぼう》が|起《おこ》ったので、マケドニヤを|経由《けいゆ》して|帰《かえ》ることに|決《けっ》した。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]プロの|子《こ》であるエペソ|人《びと》ソパテロ、テサロニケ|人《びと》アリスタルコとセクンド、デルベ|人《びと》ガイオ、それからテモテ、またアジヤ|人《びと》テキコとトロピモがパウロの|同行者《どうこうしゃ》であった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》たちは|先《せん》|発《ぱつ》して、トロアスでわたしたちを|待《ま》っていた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|除酵祭《じょこうさい》が|終《おわ》ったのちに、ピリピから|出帆《しゅっぱん》し、五|日《か》かかってトロアスに|到着《とうちゃく》して、|彼《かれ》らと|落《お》ち|合《あ》い、そこに|七日間《なぬかかん》|滞在《たいざい》した。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|週《しゅう》の|初《はじ》めの|日《ひ》に、わたしたちがパンをさくために|集《あつ》まった|時《とき》、パウロは|翌日《よくじつ》|出発《しゅっぱつ》することにしていたので、しきりに|人々《ひとびと》と|語《かた》り|合《あ》い、|夜中《よなか》まで|語《かた》りつづけた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|集《あつ》まっていた|屋上《おくじょう》の|間《ま》には、あかりがたくさんともしてあった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ユテコという|若者《わかもの》が|窓《まど》に|腰《こし》をかけていたところ、パウロの|話《はなし》がながながと|続《つづ》くので、ひどく|眠《ねむ》けがさしてきて、とうとうぐっすり|寝入《ねい》ってしまい、三|階《かい》から|下《した》に|落《お》ちた。|抱《いだ》き|起《おこ》してみたら、もう|死《し》んでいた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこでパウロは|降《お》りてきて、|若者《わかもの》の|上《うえ》に|身《み》をかがめ、|彼《かれ》を|抱《いだ》きあげて、「|騒《さわ》ぐことはない。まだ|命《いのち》がある」と|言《い》った。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そして、また|上《あ》がって|行《い》って、パンをさいて|食《た》べてから、|明《あ》けがたまで|長《なが》いあいだ|人々《ひとびと》と|語《かた》り|合《あ》って、ついに|出発《しゅっぱつ》した。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は|生《い》きかえった|若者《わかもの》を|連《つ》れかえり、ひとかたならず|慰《なぐさ》められた。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしたちは|先《さき》に|舟《ふね》に|乗《の》り|込《こ》み、アソスへ|向《む》かって|出帆《しゅっぱん》した。そこからパウロを|舟《ふね》に|乗《の》せて|行《い》くことにしていた。|彼《かれ》だけは|陸路《りくろ》をとることに|決《き》めていたからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]パウロがアソスで、わたしたちと|落《お》ち|合《あ》った|時《とき》、わたしたちは|彼《かれ》を|舟《ふね》に|乗《の》せてミテレネに|行《い》った。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこから|出帆《しゅっぱん》して、|翌日《よくじつ》キヨスの|沖合《おきあい》にいたり、|次《つぎ》の|日《ひ》にサモスに|寄《よ》り、その|翌日《よくじつ》ミレトに|着《つ》いた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それは、パウロがアジヤで|時間《じかん》をとられないため、エペソには|寄《よ》らないで|続《ぞっ》|航《こう》することに|決《き》めていたからである。|彼《かれ》は、できればペンテコステの|日《ひ》には、エルサレムに|着《つ》いていたかったので、|旅《たび》を|急《いそ》いだわけである。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこでパウロは、ミレトからエペソに|使《つかい》をやって、|教会《きょうかい》の|長老《ちょうろう》たちを|呼《よ》び|寄《よ》せた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》のところに|寄《よ》り|集《あつ》まってきた|時《とき》、|彼《かれ》らに|言《い》った。  「わたしが、アジヤの|地《ち》に|足《あし》を|踏《ふ》み|入《い》れた|最初《さいしょ》の|日《ひ》|以来《いらい》、いつもあなたがたとどんなふうに|過《す》ごしてきたか、よくご|存《ぞん》じである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|謙遜《けんそん》の|限《かぎ》りをつくし、|涙《なみだ》を|流《なが》し、ユダヤ|人《じん》の|陰謀《いんぼう》によってわたしの|身《み》に|及《およ》んだ|数々《かずかず》の|試練《しれん》の|中《なか》にあって、|主《しゅ》に|仕《つか》えてきた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがたの|益《えき》になることは、|公衆《こうしゅう》の|前《まえ》でも、また|家々《いえいえ》でも、すべてあますところなく|話《はな》して|聞《き》かせ、また|教《おし》え、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》にもギリシヤ|人《じん》にも、|神《かみ》に|対《たい》する|悔改《くいあらた》めと、わたしたちの|主《しゅ》イエスに|対《たい》する|信仰《しんこう》とを、|強《つよ》く|勧《すす》めてきたのである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》や、わたしは|御霊《みたま》に|迫《せま》られてエルサレムへ|行《い》く。あの|都《みやこ》で、どんな|事《こと》がわたしの|身《み》にふりかかって|来《く》るか、わたしにはわからない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|聖霊《せいれい》が|至《いた》るところの|町々《まちまち》で、わたしにはっきり|告《つ》げているのは、|投獄《とうごく》と|患難《かんなん》とが、わたしを|待《ま》ちうけているということだ。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしは|自分《じぶん》の|行程《こうてい》を|走《はし》り|終《お》え、|主《しゅ》イエスから|賜《たま》わった、|神《かみ》のめぐみの|福音《ふくいん》をあかしする|任務《にんむ》を|果《はた》し|得《え》さえしたら、このいのちは|自分《じぶん》にとって、|少《すこ》しも|惜《お》しいとは|思《おも》わない。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]わたしはいま|信《しん》じている、あなたがたの|間《あいだ》を|歩《ある》き|回《まわ》って|御国《みくに》を|宣《の》べ|伝《つた》えたこのわたしの|顔《かお》を、みんなが|今後《こんご》二|度《ど》と|見《み》ることはあるまい。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]だから、きょう、この|日《ひ》にあなたがたに|断言《だんげん》しておく。わたしは、すべての|人《ひと》の|血《ち》について、なんら|責任《せきにん》がない。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》のみ|旨《むね》を|皆《みな》あますところなく、あなたがたに|伝《つた》えておいたからである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]どうか、あなたがた|自身《じしん》に|気《き》をつけ、また、すべての|群《む》れに|気《き》をくばっていただきたい。|聖霊《せいれい》は、|神《かみ》が|御子《みこ》の|血《ち》であがない|取《と》られた|神《かみ》の|教会《きょうかい》を|牧《ぼく》させるために、あなたがたをその|群《む》れの|監督者《かんとくしゃ》にお|立《た》てになったのである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|去《さ》った|後《のち》、|狂暴《きょうぼう》なおおかみが、あなたがたの|中《なか》にはいり|込《こ》んできて、|容赦《ようしゃ》なく|群《む》れを|荒《あら》すようになることを、わたしは|知《し》っている。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがた|自身《じしん》の|中《なか》からも、いろいろ|曲《まが》ったことを|言《い》って、|弟子《でし》たちを|自分《じぶん》の|方《ほう》に、ひっぱり|込《こ》もうとする|者《もの》らが|起《おこ》るであろう。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]だから、|目《め》をさましていなさい。そして、わたしが三|年《ねん》の|間《あいだ》、|夜《よる》も|昼《ひる》も|涙《なみだ》をもって、あなたがたひとりびとりを|絶《た》えずさとしてきたことを、|忘《わす》れないでほしい。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》わたしは、|主《しゅ》とその|恵《めぐ》みの|言《ことば》とに、あなたがたをゆだねる。|御言《みことば》には、あなたがたの|徳《とく》をたて、|聖《せい》|別《べつ》されたすべての|人々《ひとびと》と|共《とも》に、|御国《みくに》をつがせる|力《ちから》がある。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|人《ひと》の|金《きん》や|銀《ぎん》や|衣服《いふく》をほしがったことはない。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがた|自身《じしん》が|知《し》っているとおり、わたしのこの|両手《りょうて》は、|自分《じぶん》の|生活《せいかつ》のためにも、また|一緒《いっしょ》にいた|人《ひと》たちのためにも、|働《はたら》いてきたのだ。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたもこのように|働《はたら》いて、|弱《よわ》い|者《もの》を|助《たす》けなければならないこと、また『|受《う》けるよりは|与《あた》える|方《ほう》が、さいわいである』と|言《い》われた|主《しゅ》イエスの|言葉《ことば》を|記憶《きおく》しているべきことを、|万事《ばんじ》について|教《おし》え|示《しめ》したのである」。  [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》って、パウロは|一同《いちどう》と|共《とも》にひざまずいて|祈《いの》った。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》は、はげしく|泣《な》き|悲《かな》しみ、パウロの|首《くび》を|抱《いだ》いて、|幾度《いくど》も|接吻《せっぷん》し、[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]もう二|度《ど》と|自分《じぶん》の|顔《かお》を|見《み》ることはあるまいと|彼《かれ》が|言《い》ったので、|特《とく》に|心《こころ》を|痛《いた》めた。それから|彼《かれ》を|舟《ふね》まで|見送《みおく》った。 第二一章[#「第二一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしたちは|人々《ひとびと》と|別《わか》れて|船出《ふなで》してから、コスに|直航《ちょっこう》し、|次《つぎ》の|日《ひ》はロドスに、そこからパタラに|着《つ》いた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ここでピニケ|行《い》きの|舟《ふね》を|見《み》つけたので、それに|乗《の》り|込《こ》んで|出帆《しゅっぱん》した。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]やがてクプロが|見《み》えてきたが、それを|左手《ひだりて》にして|通《とお》りすぎ、シリヤへ|航行《こうこう》をつづけ、ツロに|入港《にゅうこう》した。ここで|積荷《つみに》が|陸上《りくあ》げされることになっていたからである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|弟子《でし》たちを|捜《さが》し|出《だ》して、そこに|七日間《なぬかかん》|泊《と》まった。ところが|彼《かれ》らは、|御霊《みたま》の|示《しめ》しを|受《う》けて、エルサレムには|上《のぼ》って|行《い》かないようにと、しきりにパウロに|注意《ちゅうい》した。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|滞在《たいざい》|期間《きかん》が|終《おわ》った|時《とき》、わたしたちはまた|旅立《たびだ》つことにしたので、みんなの|者《もの》は、|妻《つま》や|子供《こども》を|引《ひ》き|連《つ》れて、|町《まち》はずれまで、わたしたちを|見送《みおく》りにきてくれた。そこで、|共《とも》に|海岸《かいがん》にひざまずいて|祈《いの》り、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》に|別《わか》れを|告《つ》げた。それから、わたしたちは|舟《ふね》に|乗《の》り|込《こ》み、|彼《かれ》らはそれぞれ|自分《じぶん》の|家《いえ》に|帰《かえ》った。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、ツロからの|航行《こうこう》を|終《おわ》ってトレマイに|着《つ》き、そこの|兄弟《きょうだい》たちにあいさつをし、|彼《かれ》らのところに一|日《にち》|滞在《たいざい》した。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|翌日《よくじつ》そこをたって、カイザリヤに|着《つ》き、かの七|人《にん》のひとりである|伝道者《でんどうしゃ》ピリポの|家《いえ》に|行《い》き、そこに|泊《と》まった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》に四|人《にん》の|娘《むすめ》があったが、いずれも|処女《しょじょ》であって、|預言《よげん》をしていた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|幾日《いくにち》か|滞在《たいざい》している|間《あいだ》に、アガボという|預言者《よげんしゃ》がユダヤから|下《くだ》ってきた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そして、わたしたちのところにきて、パウロの|帯《おび》を|取《と》り、それで|自分《じぶん》の|手足《てあし》を|縛《しば》って|言《い》った、「|聖霊《せいれい》がこうお|告《つ》げになっている、『この|帯《おび》の|持《も》ち|主《ぬし》を、ユダヤ|人《じん》たちがエルサレムでこのように|縛《しば》って、|異邦人《いほうじん》の|手《て》に|渡《わた》すであろう』」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちはこれを|聞《き》いて、|土地《とち》の|人《ひと》たちと|一緒《いっしょ》になって、エルサレムには|上《のぼ》って|行《い》かないようにと、パウロに|願《ねが》い|続《つづ》けた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》パウロは|答《こた》えた、「あなたがたは、|泣《な》いたり、わたしの|心《こころ》をくじいたりして、いったい、どうしようとするのか。わたしは、|主《しゅ》イエスの|名《な》のためなら、エルサレムで|縛《しば》られるだけでなく、|死《し》ぬことをも|覚悟《かくご》しているのだ」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]こうして、パウロが|勧告《かんこく》を|聞《き》きいれてくれないので、わたしたちは「|主《しゅ》のみこころが|行《おこな》われますように」と|言《い》っただけで、それ|以上《いじょう》、|何《なに》も|言《い》わなかった。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|数日後《すうじつご》、わたしたちは|旅装《りょそう》を|整《ととの》えてエルサレムへ|上《のぼ》って|行《い》った。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]カイザリヤの|弟子《でし》たちも|数人《すうにん》、わたしたちと|同行《どうこう》して、|古《ふる》くからの|弟子《でし》であるクプロ|人《びと》マナソンの|家《いえ》に|案内《あんない》してくれた。わたしたちはその|家《いえ》に|泊《と》まることになっていたのである。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちがエルサレムに|到着《とうちゃく》すると、|兄弟《きょうだい》たちは|喜《よろこ》んで|迎《むか》えてくれた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|翌日《よくじつ》パウロはわたしたちを|連《つ》れて、ヤコブを|訪問《ほうもん》しに|行《い》った。そこに|長老《ちょうろう》たちがみな|集《あつ》まっていた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]パウロは|彼《かれ》らにあいさつをした|後《のち》、|神《かみ》が|自分《じぶん》の|働《はたら》きをとおして、|異邦人《いほうじん》の|間《あいだ》になさった|事《こと》どもを|一々《いちいち》|説明《せつめい》した。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|一同《いちどう》はこれを|聞《き》いて|神《かみ》をほめたたえ、そして|彼《かれ》に|言《い》った、「|兄弟《きょうだい》よ、ご|承知《しょうち》のように、ユダヤ|人《じん》の|中《なか》で|信者《しんじゃ》になった|者《もの》が、|数万《すうまん》にものぼっているが、みんな|律法《りっぽう》に|熱心《ねっしん》な|人《ひと》たちである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|彼《かれ》らが|伝《つた》え|聞《き》いているところによれば、あなたは|異邦人《いほうじん》の|中《なか》にいるユダヤ|人《じん》|一同《いちどう》に|対《たい》して、|子供《こども》に|割礼《かつれい》を|施《ほどこ》すな、またユダヤの|慣例《かんれい》にしたがうなと|言《い》って、モーセにそむくことを|教《おし》えている、ということである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]どうしたらよいか。あなたがここにきていることは、|彼《かれ》らもきっと|聞《き》き|込《こ》むに|違《ちが》いない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ついては、|今《いま》わたしたちが|言《い》うとおりのことをしなさい。わたしたちの|中《なか》に、|誓願《せいがん》を|立《た》てている|者《もの》が四|人《にん》いる。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》たちを|連《つ》れて|行《い》って、|彼《かれ》らと|共《とも》にきよめを|行《おこな》い、また|彼《かれ》らの|頭《あたま》をそる|費用《ひよう》を|引《ひ》き|受《う》けてやりなさい。そうすれば、あなたについて、うわさされていることは、|根《ね》も|葉《は》もないことで、あなたは|律法《りっぽう》を|守《まも》って、|正《ただ》しい|生活《せいかつ》をしていることが、みんなにわかるであろう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|異邦人《いほうじん》で|信者《しんじゃ》になった|人《ひと》たちには、すでに|手紙《てがみ》で、|偶像《ぐうぞう》に|供《そな》えたものと、|血《ち》と、|絞《し》め|殺《ころ》したものと、|不品行《ふひんこう》とを、|慎《つつし》むようにとの|決議《けつぎ》が、わたしたちから|知《し》らせてある」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこでパウロは、その|次《つぎ》の|日《ひ》に四|人《にん》の|者《もの》を|連《つ》れて、|彼《かれ》らと|共《とも》にきよめを|受《う》けてから|宮《みや》にはいった。そしてきよめの|期間《きかん》が|終《おわ》って、ひとりびとりのために|供《そな》え|物《もの》をささげる|時《とき》を|報告《ほうこく》しておいた。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|七日《なぬか》の|期間《きかん》が|終《おわ》ろうとしていた|時《とき》、アジヤからきたユダヤ|人《じん》たちが、|宮《みや》の|内《うち》でパウロを|見《み》かけて、|群衆《ぐんしゅう》|全体《ぜんたい》を|煽動《せんどう》しはじめ、パウロに|手《て》をかけて|叫《さけ》び|立《た》てた、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]「イスラエルの|人々《ひとびと》よ、|加勢《かせい》にきてくれ。この|人《ひと》は、いたるところで|民《たみ》と|律法《りっぽう》とこの|場所《ばしょ》にそむくことを、みんなに|教《おし》えている。その|上《うえ》に、ギリシヤ|人《じん》を|宮《みや》の|内《うち》に|連《つ》れ|込《こ》んで、この|神聖《しんせい》な|場所《ばしょ》を|汚《けが》したのだ」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|前《まえ》にエペソ|人《びと》トロピモが、パウロと|一緒《いっしょ》に|町《まち》を|歩《ある》いていたのを|見《み》かけて、その|人《ひと》をパウロが|宮《みや》の|内《うち》に|連《つ》れ|込《こ》んだのだと|思《おも》ったのである。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|市《し》|全体《ぜんたい》が|騒《さわ》ぎ|出《だ》し、|民衆《みんしゅう》が|駆《か》け|集《あつ》まってきて、パウロを|捕《とら》え、|宮《みや》の|外《そと》に|引《ひ》きずり|出《だ》した。そして、すぐそのあとに|宮《みや》の|門《もん》が|閉《と》ざされた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがパウロを|殺《ころ》そうとしていた|時《とき》に、エルサレム|全体《ぜんたい》が|混乱《こんらん》|状態《じょうたい》に|陥《おちい》っているとの|情報《じょうほう》が、|守備《しゅび》|隊《たい》の|千卒長《せんそつちょう》にとどいた。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》はさっそく、|兵卒《へいそつ》や|百卒長《ひゃくそつちょう》たちを|率《ひき》いて、その|場《ば》に|駆《か》けつけた。|人々《ひとびと》は|千卒長《せんそつちょう》や|兵卒《へいそつ》たちを|見《み》て、パウロを|打《う》ちたたくのをやめた。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|千卒長《せんそつちょう》は|近寄《ちかよ》ってきてパウロを|捕《とら》え、|彼《かれ》を|二重《にじゅう》の|鎖《くさり》で|縛《しば》っておくように|命《めい》じた|上《うえ》、パウロは|何者《なにもの》か、また|何《なに》をしたのか、と|尋《たず》ねた。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|群衆《ぐんしゅう》がそれぞれ|違《ちが》ったことを|叫《さけ》びつづけるため、|騒《さわ》がしくて、|確《たし》かなことがわからないので、|彼《かれ》はパウロを|兵営《へいえい》に|連《つ》れて|行《い》くように|命《めい》じた。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]パウロが|階段《かいだん》にさしかかった|時《とき》には、|群衆《ぐんしゅう》の|暴行《ぼうこう》を|避《さ》けるため、|兵卒《へいそつ》たちにかつがれて|行《い》くという|始末《しまつ》であった。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|大《おお》ぜいの|民衆《みんしゅう》が「あれをやっつけてしまえ」と|叫《さけ》びながら、ついてきたからである。  [#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]パウロが|兵営《へいえい》の|中《なか》に|連《つ》れて|行《い》かれようとした|時《とき》、|千卒長《せんそつちょう》に、「ひと|言《こと》あなたにお|話《はな》してもよろしいですか」と|尋《たず》ねると、|千卒長《せんそつちょう》が|言《い》った、「おまえはギリシヤ|語《ご》が|話《はな》せるのか。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]では、もしかおまえは、|先《さき》ごろ|反乱《はんらん》を|起《おこ》した|後《のち》、四千|人《にん》の|刺客《しかく》を|引《ひ》き|連《つ》れて|荒野《あらの》へ|逃《に》げて|行《い》ったあのエジプト|人《じん》ではないのか」。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]パウロは|答《こた》えた、「わたしはタルソ|生《うま》れのユダヤ|人《じん》で、キリキヤのれっきとした|都市《とし》の|市民《しみん》です。お|願《ねが》いですが、|民衆《みんしゅう》に|話《はなし》をさせて|下《くだ》さい」。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|千卒長《せんそつちょう》が|許《ゆる》してくれたので、パウロは|階段《かいだん》の|上《うえ》に|立《た》ち、|民衆《みんしゅう》にむかって|手《て》を|振《ふ》った。すると、|一同《いちどう》がすっかり|静粛《せいしゅく》になったので、パウロはヘブル|語《ご》で|話《はな》し|出《だ》した。 第二二章[#「第二二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]「|兄弟《きょうだい》たち、|父《ちち》たちよ、いま|申《もう》し|上《あ》げるわたしの|弁明《べんめい》を|聞《き》いていただきたい」。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]パウロが、ヘブル|語《ご》でこう|語《かた》りかけるのを|聞《き》いて、|人々《ひとびと》はますます|静粛《せいしゅく》になった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》は|言葉《ことば》をついで|言《い》った、「わたしはキリキヤのタルソで|生《うま》れたユダヤ|人《じん》であるが、この|都《みやこ》で|育《そだ》てられ、ガマリエルのひざもとで|先祖《せんぞ》|伝来《でんらい》の|律法《りっぽう》について、きびしい|薫陶《くんとう》を|受《う》け、|今日《きょう》の|皆《みな》さんと|同《おな》じく|神《かみ》に|対《たい》して|熱心《ねっしん》な|者《もの》であった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そして、この|道《みち》を|迫害《はくがい》し、|男《おとこ》であれ|女《おんな》であれ、|縛《しば》りあげて|獄《ごく》に|投《とう》じ、|彼《かれ》らを|死《し》に|至《いた》らせた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]このことは、|大祭司《だいさいし》も|長老《ちょうろう》たち|一同《いちどう》も、|証明《しょうめい》するところである。さらにわたしは、この|人《ひと》たちからダマスコの|同志《どうし》たちへあてた|手紙《てがみ》をもらって、その|地《ち》にいる|者《もの》たちを|縛《しば》りあげ、エルサレムにひっぱってきて、|処罰《しょばつ》するため、|出《で》かけて|行《い》った。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|旅《たび》をつづけてダマスコの|近《ちか》くにきた|時《とき》に、|真昼《まひる》ごろ、|突然《とつぜん》、つよい|光《ひかり》が|天《てん》からわたしをめぐり|照《てら》した。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|地《ち》に|倒《たお》れた。そして、『サウロ、サウロ、なぜわたしを|迫害《はくがい》するのか』と、|呼《よ》びかける|声《こえ》を|聞《き》いた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]これに|対《たい》してわたしは、『|主《しゅ》よ、あなたはどなたですか』と|言《い》った。すると、その|声《こえ》が、『わたしは、あなたが|迫害《はくがい》しているナザレ|人《びと》イエスである』と|答《こた》えた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしと|一緒《いっしょ》にいた|者《もの》たちは、その|光《ひかり》は|見《み》たが、わたしに|語《かた》りかけたかたの|声《こえ》は|聞《き》かなかった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしが『|主《しゅ》よ、わたしは|何《なに》をしたらよいでしょうか』と|尋《たず》ねたところ、|主《しゅ》は|言《い》われた、『|起《お》きあがってダマスコに|行《い》きなさい。そうすれば、あなたがするように|決《き》めてある|事《こと》が、すべてそこで|告《つ》げられるであろう』。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|光《ひかり》の|輝《かがや》きで|目《め》がくらみ、|何《なに》も|見《み》えなくなっていたので、|連《つ》れの|者《もの》たちに|手《て》を|引《ひ》かれながら、ダマスコに|行《い》った。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]すると、|律法《りっぽう》に|忠実《ちゅうじつ》で、ダマスコ|在住《ざいじゅう》のユダヤ|人《じん》|全体《ぜんたい》に|評判《ひょうばん》のよいアナニヤという|人《ひと》が、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしのところにきて、そばに|立《た》ち、『|兄弟《きょうだい》サウロよ、|見《み》えるようになりなさい』と|言《い》った。するとその|瞬間《しゅんかん》に、わたしの|目《め》が|開《ひら》いて、|彼《かれ》の|姿《すがた》が|見《み》えた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|言《い》った、『わたしたちの|先祖《せんぞ》の|神《かみ》が、あなたを|選《えら》んでみ|旨《むね》を|知《し》らせ、かの|義人《ぎじん》を|見《み》させ、その|口《くち》から|声《こえ》をお|聞《き》かせになった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それはあなたが、その|見聞《みき》きした|事《こと》につき、すべての|人《ひと》に|対《たい》して、|彼《かれ》の|証人《しょうにん》になるためである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そこで|今《いま》、なんのためらうことがあろうか。すぐ|立《た》って、み|名《な》をとなえてバプテスマを|受《う》け、あなたの|罪《つみ》を|洗《あら》い|落《おと》しなさい』。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それからわたしは、エルサレムに|帰《かえ》って|宮《みや》で|祈《いの》っているうちに、|夢《ゆめ》うつつになり、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》にまみえたが、|主《しゅ》は|言《い》われた、『|急《いそ》いで、すぐにエルサレムを|出《で》て|行《い》きなさい。わたしについてのあなたのあかしを、|人々《ひとびと》が|受《う》けいれないから』。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしが|言《い》った、『|主《しゅ》よ、|彼《かれ》らは、わたしがいたるところの|会堂《かいどう》で、あなたを|信《しん》じる|人々《ひとびと》を|獄《ごく》に|投《とう》じたり、むち|打《う》ったりしていたことを、|知《し》っています。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたの|証人《しょうにん》ステパノの|血《ち》が|流《なが》された|時《とき》も、わたしは|立《た》ち|合《あ》っていてそれに|賛成《さんせい》し、また|彼《かれ》を|殺《ころ》した|人《ひと》たちの|上着《うわぎ》の|番《ばん》をしていたのです』。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]すると、|主《しゅ》がわたしに|言《い》われた、『|行《い》きなさい。わたしが、あなたを|遠《とお》く|異邦《いほう》の|民《たみ》へつかわすのだ』」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》の|言葉《ことば》をここまで|聞《き》いていた|人々《ひとびと》は、このとき、|声《こえ》を|張《は》りあげて|言《い》った、「こんな|男《おとこ》は|地上《ちじょう》から|取《と》り|除《のぞ》いてしまえ。|生《い》かしおくべきではない」。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》がこうわめき|立《た》てて、|空中《くうちゅう》に|上着《うわぎ》を|投《な》げ、ちりをまき|散《ち》らす|始末《しまつ》であったので、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|千卒長《せんそつちょう》はパウロを|兵営《へいえい》に|引《ひ》き|入《い》れるように|命《めい》じ、どういうわけで、|彼《かれ》に|対《たい》してこんなにわめき|立《た》てているのかを|確《たし》かめるため、|彼《かれ》をむちの|拷問《ごうもん》にかけて、|取《と》り|調《しら》べるように|言《い》いわたした。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがむちを|当《あ》てるため、|彼《かれ》を|縛《しば》りつけていた|時《とき》、パウロはそばに|立《た》っている|百卒長《ひゃくそつちょう》に|言《い》った、「ローマの|市民《しみん》たる|者《もの》を、|裁判《さいばん》にかけもしないで、むち|打《う》ってよいのか」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|百卒長《ひゃくそつちょう》はこれを|聞《き》き、|千卒長《せんそつちょう》のところに|行《い》って|報告《ほうこく》し、そして|言《い》った、「どうなさいますか。あの|人《ひと》はローマの|市民《しみん》なのです」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|千卒長《せんそつちょう》がパウロのところにきて|言《い》った、「わたしに|言《い》ってくれ。あなたはローマの|市民《しみん》なのか」。パウロは「そうです」と|言《い》った。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]これに|対《たい》して|千卒長《せんそつちょう》が|言《い》った、「わたしはこの|市民《しみん》|権《けん》を、|多額《たがく》の|金《かね》で|買《か》い|取《と》ったのだ」。するとパウロは|言《い》った、「わたしは|生《うま》れながらの|市民《しみん》です」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、パウロを|取《と》り|調《しら》べようとしていた|人《ひと》たちは、ただちに|彼《かれ》から|身《み》を|引《ひ》いた。|千卒長《せんそつちょう》も、パウロがローマの|市民《しみん》であること、また、そういう|人《ひと》を|縛《しば》っていたことがわかって、|恐《おそ》れた。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|翌日《よくじつ》、|彼《かれ》は、ユダヤ|人《じん》がなぜパウロを|訴《うった》え|出《で》たのか、その|真相《しんそう》を|知《し》ろうと|思《おも》って|彼《かれ》を|解《と》いてやり、|同時《どうじ》に|祭司長《さいしちょう》たちと|全《ぜん》|議会《ぎかい》とを|召集《しょうしゅう》させ、そこに|彼《かれ》を|引《ひ》き|出《だ》して、|彼《かれ》らの|前《まえ》に|立《た》たせた。 第二三章[#「第二三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]パウロは|議会《ぎかい》を|見《み》つめて|言《い》った、「|兄弟《きょうだい》たちよ、わたしは|今日《きょう》まで、|神《かみ》の|前《まえ》に、ひたすら|明《あき》らかな|良心《りょうしん》にしたがって|行動《こうどう》してきた」。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すると、|大祭司《だいさいし》アナニヤが、パウロのそばに|立《た》っている|者《もの》たちに、|彼《かれ》の|口《くち》を|打《う》てと|命《めい》じた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、パウロはアナニヤにむかって|言《い》った、「|白《しろ》く|塗《ぬ》られた|壁《かべ》よ、|神《かみ》があなたを|打《う》つであろう。あなたは、|律法《りっぽう》にしたがって、わたしをさばくために|座《ざ》についているのに、|律法《りっぽう》にそむいて、わたしを|打《う》つことを|命《めい》じるのか」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すると、そばに|立《た》っている|者《もの》たちが|言《い》った、「|神《かみ》の|大祭司《だいさいし》に|対《たい》して|無礼《ぶれい》なことを|言《い》うのか」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]パウロは|言《い》った、「|兄弟《きょうだい》たちよ、|彼《かれ》が|大祭司《だいさいし》だとは|知《し》らなかった。|聖書《せいしょ》に『|民《たみ》のかしらを|悪《わる》く|言《い》ってはいけない』と、|書《か》いてあるのだった」。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]パウロは、|議員《ぎいん》の|一部《いちぶ》がサドカイ|人《びと》であり、|一部《いちぶ》はパリサイ|人《びと》であるのを|見《み》て、|議会《ぎかい》の|中《なか》で|声《こえ》を|高《たか》めて|言《い》った、「|兄弟《きょうだい》たちよ、わたしはパリサイ|人《びと》であり、パリサイ|人《びと》の|子《こ》である。わたしは、|死人《しにん》の|復活《ふっかつ》の|望《のぞ》みをいだいていることで、|裁判《さいばん》を|受《う》けているのである」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》がこう|言《い》ったところ、パリサイ|人《びと》とサドカイ|人《びと》との|間《あいだ》に|争論《そうろん》が|生《しょう》じ、|会衆《かいしゅう》が|相《あい》|分《わか》れた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|元来《がんらい》、サドカイ|人《びと》は、|復活《ふっかつ》とか|天使《てんし》とか|霊《れい》とかは、いっさい|存在《そんざい》しないと|言《い》い、パリサイ|人《びと》は、それらは、みな|存在《そんざい》すると|主張《しゅちょう》している。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|大騒《おおさわ》ぎとなった。パリサイ|派《は》のある|律法《りっぽう》|学者《がくしゃ》たちが|立《た》って、|強《つよ》く|主張《しゅちょう》して|言《い》った、「われわれは、この|人《ひと》には|何《なに》も|悪《わる》いことがないと|思《おも》う。あるいは、|霊《れい》か|天使《てんし》かが、|彼《かれ》に|告《つ》げたのかも|知《し》れない」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|争論《そうろん》が|激《はげ》しくなったので、|千卒長《せんそつちょう》は、パウロが|彼《かれ》らに|引《ひ》き|裂《さ》かれるのを|気《き》づかって、|兵卒《へいそつ》どもに、|降《お》りて|行《い》ってパウロを|彼《かれ》らの|中《なか》から|力《ちから》づくで|引《ひ》き|出《だ》し、|兵営《へいえい》に|連《つ》れて|来《く》るように、|命《めい》じた。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]その|夜《よ》、|主《しゅ》がパウロに|臨《のぞ》んで|言《い》われた、「しっかりせよ。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように、ローマでもあかしをしなくてはならない」。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けると、ユダヤ|人《じん》らは|申《もう》し|合《あ》わせをして、パウロを|殺《ころ》すまでは|飲食《いんしょく》をいっさい|断《た》つと、|誓《ちか》い|合《あ》った。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]この|陰謀《いんぼう》に|加《くわ》わった|者《もの》は、四十|人《にん》あまりであった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|祭司長《さいしちょう》たちや|長老《ちょうろう》たちのところに|行《い》って、こう|言《い》った。「われわれは、パウロを|殺《ころ》すまでは|何《なに》も|食《た》べないと、|堅《かた》く|誓《ちか》い|合《あ》いました。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ついては、あなたがたは|議会《ぎかい》と|組《く》んで、|彼《かれ》のことでなお|詳《くわ》しく|取調《とりしら》べをするように|見《み》せかけ、パウロをあなたがたのところに|連《つ》れ|出《だ》すように、|千卒長《せんそつちょう》に|頼《たの》んで|下《くだ》さい。われわれとしては、パウロがそこにこないうちに|殺《ころ》してしまう|手《て》はずをしています」。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]ところが、パウロの|姉妹《しまい》の|子《こ》が、この|待伏《まちぶ》せのことを|耳《みみ》にし、|兵営《へいえい》にはいって|行《い》って、パウロにそれを|知《し》らせた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこでパウロは、|百卒長《ひゃくそつちょう》のひとりを|呼《よ》んで|言《い》った、「この|若者《わかもの》を|千卒長《せんそつちょう》のところに|連《つ》れて|行《い》ってください。|何《なに》か|報告《ほうこく》することがあるようですから」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]この|百卒長《ひゃくそつちょう》は|若者《わかもの》を|連《つ》れて|行《い》き、|千卒長《せんそつちょう》に|引《ひ》きあわせて|言《い》った、「|囚人《しゅうじん》のパウロが、この|若者《わかもの》があなたに|話《はな》したいことがあるので、あなたのところに|連《つ》れて|行《い》ってくれるようにと、わたしを|呼《よ》んで|頼《たの》みました」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこで|千卒長《せんそつちょう》は、|若者《わかもの》の|手《て》を|取《と》り、|人《ひと》のいないところへ|連《つ》れて|行《い》って|尋《たず》ねた、「わたしに|話《はな》したいことというのは、|何《なに》か」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|若者《わかもの》が|言《い》った、「ユダヤ|人《じん》たちが、パウロのことをもっと|詳《くわ》しく|取調《とりしら》べをすると|見《み》せかけて、あす|議会《ぎかい》に|彼《かれ》を|連《つ》れ|出《だ》すように、あなたに|頼《たの》むことに|決《き》めています。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]どうぞ、|彼《かれ》らの|頼《たの》みを|取《と》り|上《あ》げないで|下《くだ》さい。四十|人《にん》あまりの|者《もの》が、パウロを|待伏《まちぶ》せしているのです。|彼《かれ》らは、パウロを|殺《ころ》すまでは|飲食《いんしょく》をいっさい|断《た》つと、|堅《かた》く|誓《ちか》い|合《あ》っています。そして、いま|手《て》はずをととのえて、あなたの|許可《きょか》を|待《ま》っているところなのです」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|千卒長《せんそつちょう》は、「このことをわたしに|知《し》らせたことは、だれにも|口外《こうがい》するな」と|命《めい》じて、|若者《わかもの》を|帰《かえ》した。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》は、|百卒長《ひゃくそつちょう》ふたりを|呼《よ》んで|言《い》った、「|歩兵《ほへい》二百|名《めい》、|騎兵《きへい》七十|名《めい》、|槍《そう》|兵《へい》二百|名《めい》を、カイザリヤに|向《む》け|出発《しゅっぱつ》できるように、|今夜《こんや》九|時《じ》までに|用意《ようい》せよ。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]また、パウロを|乗《の》せるために|馬《うま》を|用意《ようい》して、|彼《かれ》を|総督《そうとく》ペリクスのもとへ|無事《ぶじ》に|連《つ》れて|行《い》け」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]さらに|彼《かれ》は、|次《つぎ》のような|文面《ぶんめん》の|手紙《てがみ》を|書《か》いた。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]「クラウデオ・ルシヤ、つつしんで|総督《そうとく》ペリクス|閣下《かっか》の|平安《へいあん》を|祈《いの》ります。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|本人《ほんにん》のパウロが、ユダヤ|人《じん》らに|捕《とら》えられ、まさに|殺《ころ》されようとしていたのを、|彼《かれ》のローマ|市民《しみん》であることを|知《し》ったので、わたしは|兵卒《へいそつ》たちを|率《ひき》いて|行《い》って、|彼《かれ》を|救《すく》い|出《だ》しました。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]それから、|彼《かれ》が|訴《うった》えられた|理由《りゆう》を|知《し》ろうと|思《おも》い、|彼《かれ》を|議会《ぎかい》に|連《つ》れて|行《い》きました。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|彼《かれ》はユダヤ|人《じん》の|律法《りっぽう》の|問題《もんだい》で|訴《うった》えられたものであり、なんら|死刑《しけい》または|投獄《とうごく》に|当《あた》る|罪《つみ》のないことがわかりました。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、この|人《ひと》に|対《たい》して|陰謀《いんぼう》がめぐらされているとの|報告《ほうこく》がありましたので、わたしは|取《と》りあえず、|彼《かれ》を|閣下《かっか》のもとにお|送《おく》りすることにし、|訴《うった》える|者《もの》たちには、|閣下《かっか》の|前《まえ》で、|彼《かれ》に|対《たい》する|申《もうし》|立《た》てをするようにと、|命《めい》じておきました」。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]そこで|歩兵《ほへい》たちは、|命《めい》じられたとおりパウロを|引《ひ》き|取《と》って、|夜《よる》の|間《あいだ》にアンテパトリスまで|連《つ》れて|行《い》き、[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|翌日《よくじつ》は、|騎兵《きへい》たちにパウロを|護送《ごそう》させることにして、|兵営《へいえい》に|帰《かえ》って|行《い》った。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|騎兵《きへい》たちは、カイザリヤに|着《つ》くと、|手紙《てがみ》を|総督《そうとく》に|手渡《てわた》し、さらにパウロを|彼《かれ》に|引《ひ》きあわせた。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|総督《そうとく》は|手紙《てがみ》を|読《よ》んでから、パウロに、どの|州《しゅう》の|者《もの》かと|尋《たず》ね、キリキヤの|出《で》だと|知《し》って、[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]「|訴《うった》え|人《ひと》たちがきた|時《とき》に、おまえを|調《しら》べることにする」と|言《い》った。そして、ヘロデの|官邸《かんてい》に|彼《かれ》を|守《まも》っておくように|命《めい》じた。 第二四章[#「第二四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]五|日《か》の|後《のち》、|大祭司《だいさいし》アナニヤは、|長老《ちょうろう》|数名《すうめい》と、テルトロという|弁護人《べんごにん》とを|連《つ》れて|下《くだ》り、|総督《そうとく》にパウロを|訴《うった》え|出《で》た。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]パウロが|呼《よ》び|出《だ》されたので、テルトロは|論告《ろんこく》を|始《はじ》めた。  「ペリクス|閣下《かっか》、わたしたちが、|閣下《かっか》のお|陰《かげ》でじゅうぶんに|平和《へいわ》を|楽《たの》しみ、またこの|国《くに》が、ご|配慮《はいりょ》によって、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あらゆる|方面《ほうめん》に、またいたるところで|改善《かいぜん》されていることは、わたしたちの|感謝《かんしゃ》してやまないところであります。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、ご|迷惑《めいわく》をかけないように、くどくどと|述《の》べずに、|手短《てみじか》かに|申《もう》し|上《あ》げますから、どうぞ、|忍《しの》んでお|聞《き》き|取《と》りのほど、お|願《ねが》いいたします。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]さて、この|男《おとこ》は、|疫病《えきびょう》のような|人間《にんげん》で、|世界中《せかいじゅう》のすべてのユダヤ|人《じん》の|中《なか》に|騒《さわ》ぎを|起《おこ》している|者《もの》であり、また、ナザレ|人《びと》らの|異端《いたん》のかしらであります。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]この|者《もの》が|宮《みや》までも|汚《けが》そうとしていたので、わたしたちは|彼《かれ》を|捕縛《ほばく》したのです。〔そして、|律法《りっぽう》にしたがって、さばこうとしていたところ、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|千卒長《せんそつちょう》ルシヤが|干渉《かんしょう》して、|彼《かれ》を|無理《むり》にわたしたちの|手《て》から|引《ひ》き|離《はな》してしまい、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》を|訴《うった》えた|人《ひと》たちには、|閣下《かっか》のところに|来《く》るようにと|命《めい》じました。〕それで、|閣下《かっか》ご|自身《じしん》でお|調《しら》べになれば、わたしたちが|彼《かれ》を|訴《うった》え|出《で》た|理由《りゆう》が、|全部《ぜんぶ》おわかりになるでしょう」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》たちも、この|訴《うった》えに|同調《どうちょう》して、|全《まった》くそのとおりだと|言《い》った。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|総督《そうとく》が|合図《あいず》をして|発言《はつげん》を|促《うなが》したので、パウロは|答弁《とうべん》して|言《い》った。  「|閣下《かっか》が、|多年《たねん》にわたり、この|国民《こくみん》の|裁判《さいばん》をつかさどっておられることを、よく|承知《しょうち》していますので、わたしは|喜《よろこ》んで、|自分《じぶん》のことを|弁明《べんめい》いたします。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]お|調《しら》べになればわかるはずですが、わたしが|礼拝《れいはい》をしにエルサレムに|上《のぼ》ってから、まだ十二|日《にち》そこそこにしかなりません。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そして、|宮《みや》の|内《うち》でも、|会堂《かいどう》|内《うち》でも、あるいは|市内《しない》でも、わたしがだれかと|争論《そうろん》したり、|群衆《ぐんしゅう》を|煽動《せんどう》したりするのを|見《み》たものはありませんし、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》わたしを|訴《うった》え|出《で》ていることについて、|閣下《かっか》の|前《まえ》に、その|証拠《しょうこ》をあげうるものはありません。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ただ、わたしはこの|事《こと》は|認《みと》めます。わたしは、|彼《かれ》らが|異端《いたん》だとしている|道《みち》にしたがって、わたしたちの|先祖《せんぞ》の|神《かみ》に|仕《つか》え、|律法《りっぽう》の|教《おし》えるところ、また|預言者《よげんしゃ》の|書《しょ》に|書《か》いてあることを、ことごとく|信《しん》じ、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]また、|正《ただ》しい|者《もの》も|正《ただ》しくない|者《もの》も、やがてよみがえるとの|希望《きぼう》を、|神《かみ》を|仰《あお》いでいだいているものです。この|希望《きぼう》は、|彼《かれ》ら|自身《じしん》も|持《も》っているのです。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまた、|神《かみ》に|対《たい》しまた|人《ひと》に|対《たい》して、|良心《りょうしん》に|責《せ》められることのないように、|常《つね》に|努《つと》めています。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]さてわたしは、|幾年《いくねん》ぶりかに|帰《かえ》ってきて、|同胞《どうほう》に|施《ほどこ》しをし、また、|供《そな》え|物《もの》をしていました。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、|彼《かれ》らはわたしが|宮《みや》できよめを|行《おこな》っているのを|見《み》ただけであって、|群衆《ぐんしゅう》もいず、|騒動《そうどう》もなかったのです。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ところが、アジヤからきた|数人《すうにん》のユダヤ|人《じん》が――|彼《かれ》らが、わたしに|対《たい》して、|何《なに》かとがめ|立《た》てをすることがあったなら、よろしく|閣下《かっか》の|前《まえ》にきて、|訴《うった》えるべきでした。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]あるいは、|何《なに》かわたしに|不正《ふせい》なことがあったなら、わたしが|議会《ぎかい》の|前《まえ》に|立《た》っていた|時《とき》、|彼《かれ》らみずから、それを|指摘《してき》すべきでした。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]ただ、わたしは、|彼《かれ》らの|中《なか》に|立《た》って、『わたしは、|死人《しにん》のよみがえりのことで、きょう、あなたがたの|前《まえ》でさばきを|受《う》けているのだ』と|叫《さけ》んだだけのことです」。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ここでペリクスは、この|道《みち》のことを|相当《そうとう》わきまえていたので、「|千卒長《せんそつちょう》ルシヤが|下《くだ》って|来《く》るのを|待《ま》って、おまえたちの|事件《じけん》を|判決《はんけつ》することにする」と|言《い》って、|裁判《さいばん》を|延期《えんき》した。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そして|百卒長《ひゃくそつちょう》に、パウロを|監禁《かんきん》するように、しかし|彼《かれ》を|寛大《かんだい》に|取《と》り|扱《あつか》い、|友人《ゆうじん》らが|世話《せわ》をするのを|止《と》めないようにと、|命《めい》じた。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|数日《すうじつ》たってから、ペリクスは、ユダヤ|人《じん》である|妻《つま》ドルシラと|一緒《いっしょ》にきて、パウロを|呼《よ》び|出《だ》し、キリスト・イエスに|対《たい》する|信仰《しんこう》のことを、|彼《かれ》から|聞《き》いた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、パウロが、|正義《せいぎ》、|節制《せっせい》、|未来《みらい》の|審判《しんぱん》などについて|論《ろん》じていると、ペリクスは|不安《ふあん》を|感《かん》じてきて、|言《い》った、「きょうはこれで|帰《かえ》るがよい。また、よい|機会《きかい》を|得《え》たら、|呼《よ》び|出《だ》すことにする」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、それと|同時《どうじ》に、パウロから|金《かね》をもらいたい|下《した》ごころがあったので、たびたびパウロを|呼《よ》び|出《だ》しては|語《かた》り|合《あ》った。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]さて、二か|年《ねん》たった|時《とき》、ポルキオ・フェストが、ペリクスと|交代《こうたい》して|任《にん》についた。ペリクスは、ユダヤ|人《じん》の|歓心《かんしん》を|買《か》おうと|思《おも》って、パウロを|監禁《かんきん》したままにしておいた。 第二五章[#「第二五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、フェストは、|任地《にんち》に|着《つ》いてから三|日《か》の|後《のち》、カイザリヤからエルサレムに|上《のぼ》ったところ、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|祭司長《さいしちょう》たちやユダヤ|人《じん》の|重立《おもだ》った|者《もの》たちが、パウロを|訴《うった》え|出《で》て、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》をエルサレムに|呼《よ》び|出《だ》すよう|取《と》り|計《はか》らっていただきたいと、しきりに|願《ねが》った。|彼《かれ》らは|途中《とちゅう》で|待《ま》ち|伏《ぶ》せして、|彼《かれ》を|殺《ころ》す|考《かんが》えであった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ところがフェストは、パウロがカイザリヤに|監禁《かんきん》してあり、|自分《じぶん》もすぐそこへ|帰《かえ》ることになっていると|答《こた》え、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そして|言《い》った、「では、もしあの|男《おとこ》に|何《なに》か|不都合《ふつごう》なことがあるなら、おまえたちのうちの|有力《ゆうりょく》|者《しゃ》らが、わたしと|一緒《いっしょ》に|下《くだ》って|行《い》って、|訴《うった》えるがよかろう」。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]フェストは、|彼《かれ》らのあいだに八|日《か》か十|日《か》ほど|滞在《たいざい》した|後《のち》、カイザリヤに|下《くだ》って|行《い》き、その|翌日《よくじつ》、|裁判《さいばん》の|席《せき》について、パウロを|引《ひ》き|出《だ》すように|命《めい》じた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]パウロが|姿《すがた》をあらわすと、エルサレムから|下《くだ》ってきたユダヤ|人《じん》たちが、|彼《かれ》を|取《と》りかこみ、|彼《かれ》に|対《たい》してさまざまの|重《おも》い|罪状《ざいじょう》を|申《もう》し|立《た》てたが、いずれもその|証拠《しょうこ》をあげることはできなかった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]パウロは「わたしは、ユダヤ|人《じん》の|律法《りっぽう》に|対《たい》しても、|宮《みや》に|対《たい》しても、またカイザルに|対《たい》しても、なんら|罪《つみ》を|犯《おか》したことはない」と|弁明《べんめい》した。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ところが、フェストはユダヤ|人《じん》の|歓心《かんしん》を|買《か》おうと|思《おも》って、パウロにむかって|言《い》った、「おまえはエルサレムに|上《のぼ》り、この|事件《じけん》に|関《かん》し、わたしからそこで|裁判《さいばん》を|受《う》けることを|承知《しょうち》するか」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]パウロは|言《い》った、「わたしは|今《いま》、カイザルの|法廷《ほうてい》に|立《た》っています。わたしはこの|法廷《ほうてい》で|裁判《さいばん》されるべきです。よくご|承知《しょうち》のとおり、わたしはユダヤ|人《じん》たちに、|何《なに》も|悪《わる》いことをしてはいません。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしが|悪《わる》いことをし、|死《し》に|当《あた》るようなことをしているのなら、|死《し》を|免《まぬか》れようとはしません。しかし、もし|彼《かれ》らの|訴《うった》えることに、なんの|根拠《こんきょ》もないとすれば、だれもわたしを|彼《かれ》らに|引《ひ》き|渡《わた》す|権利《けんり》はありません。わたしはカイザルに|上訴《じょうそ》します」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そこでフェストは、|陪席《ばいせき》の|者《もの》たちと|協議《きょうぎ》したうえ|答《こた》えた、「おまえはカイザルに|上訴《じょうそ》を|申《もう》し|出《で》た。カイザルのところに|行《い》くがよい」。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|数日《すうじつ》たった|後《のち》、アグリッパ|王《おう》とベルニケとが、フェストに|敬意《けいい》を|表《ひょう》するため、カイザリヤにきた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ふたりは、そこに|何《なに》|日間《にちかん》も|滞在《たいざい》していたので、フェストは、パウロのことを|王《おう》に|話《はな》して|言《い》った、「ここに、ペリクスが|囚人《しゅうじん》として|残《のこ》して|行《い》ったひとりの|男《おとこ》がいる。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしがエルサレムに|行《い》った|時《とき》、この|男《おとこ》のことを、|祭司長《さいしちょう》たちやユダヤ|人《じん》の|長老《ちょうろう》たちが、わたしに|報告《ほうこく》し、|彼《かれ》を|罪《つみ》に|定《さだ》めるようにと|要求《ようきゅう》した。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしは、|彼《かれ》らに|答《こた》えた、『|訴《うった》えられた|者《もの》が、|訴《うった》えた|者《もの》の|前《まえ》に|立《た》って、|告訴《こくそ》に|対《たい》し|弁明《べんめい》する|機会《きかい》を|与《あた》えられない|前《まえ》に、その|人《ひと》を|見放《みはな》してしまうのは、ローマ|人《じん》の|慣例《かんれい》にはないことである』。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それで、|彼《かれ》らがここに|集《あつ》まってきた|時《とき》、わたしは|時《とき》をうつさず、|次《つぎ》の|日《ひ》に|裁判《さいばん》の|席《せき》について、その|男《おとこ》を|引《ひ》き|出《だ》させた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|訴《うった》えた|者《もの》たちは|立《た》ち|上《あ》がったが、わたしが|推測《すいそく》していたような|悪事《あくじ》は、|彼《かれ》について|何一《なにひと》つ|申《もう》し|立《た》てはしなかった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|彼《かれ》と|争《あらそ》い|合《あ》っているのは、|彼《かれ》ら|自身《じしん》の|宗教《しゅうきょう》に|関《かん》し、また、|死《し》んでしまったのに|生《い》きているとパウロが|主張《しゅちょう》しているイエスなる|者《もの》に|関《かん》する|問題《もんだい》に|過《す》ぎない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]これらの|問題《もんだい》を、どう|取《と》り|扱《あつか》ってよいかわからなかったので、わたしは|彼《かれ》に、『エルサレムに|行《い》って、これらの|問題《もんだい》について、そこでさばいてもらいたくはないか』と|尋《たず》ねてみた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]ところがパウロは、|皇帝《こうてい》の|判決《はんけつ》を|受《う》ける|時《とき》まで、このまま|自分《じぶん》をとどめておいてほしいと|言《い》うので、カイザルに|彼《かれ》を|送《おく》りとどける|時《とき》までとどめておくようにと、|命《めい》じておいた」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、アグリッパがフェストに「わたしも、その|人《ひと》の|言《い》い|分《ぶん》を|聞《き》いて|見《み》たい」と|言《い》ったので、フェストは、「では、あす|彼《かれ》から|聞《き》きとるようにしてあげよう」と|答《こた》えた。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|翌日《よくじつ》、アグリッパとベルニケとは、|大《おお》いに|威儀《いぎ》をととのえて、|千卒長《せんそつちょう》たちや|市《し》の|重立《おもだ》った|人《ひと》たちと|共《とも》に、|引見所《いんけんじょ》にはいってきた。すると、フェストの|命《めい》によって、パウロがそこに|引《ひ》き|出《だ》された。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、フェストが|言《い》った、「アグリッパ|王《おう》、ならびにご|臨席《りんせき》の|諸君《しょくん》。ごらんになっているこの|人物《じんぶつ》は、ユダヤ|人《じん》たちがこぞって、エルサレムにおいても、また、この|地《ち》においても、これ|以上《いじょう》、|生《い》かしておくべきでないと|叫《さけ》んで、わたしに|訴《うった》え|出《で》ている|者《もの》である。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》は|死《し》に|当《あた》ることは|何《なに》もしていないと、わたしは|見《み》ているのだが、|彼《かれ》|自身《じしん》が|皇帝《こうてい》に|上訴《じょうそ》すると|言《い》い|出《だ》したので、|彼《かれ》をそちらへ|送《おく》ることに|決《き》めた。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|彼《かれ》について、|主君《しゅくん》に|書《か》きおくる|確《たし》かなものが|何《なに》もないので、わたしは、|彼《かれ》を|諸君《しょくん》の|前《まえ》に、|特《とく》に、アグリッパ|王《おう》よ、あなたの|前《まえ》に|引《ひ》き|出《だ》して、|取調《とりしら》べをしたのち、|上書《じょうしょ》すべき|材料《ざいりょう》を|得《え》ようと|思《おも》う。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|囚人《しゅうじん》を|送《おく》るのに、その|告訴《こくそ》の|理由《りゆう》を|示《しめ》さないということは、|不合理《ふごうり》だと|思《おも》えるからである」。 第二六章[#「第二六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]アグリッパはパウロに、「おまえ|自身《じしん》のことを|話《はな》してもよい」と|言《い》った。そこでパウロは、|手《て》をさし|伸《の》べて、|弁明《べんめい》をし|始《はじ》めた。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「アグリッパ|王《おう》よ、ユダヤ|人《じん》たちから|訴《うった》えられているすべての|事《こと》に|関《かん》して、きょう、あなたの|前《まえ》で|弁明《べんめい》することになったのは、わたしのしあわせに|思《おも》うところであります。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、ユダヤ|人《じん》のあらゆる|慣例《かんれい》や|問題《もんだい》を、よく|知《し》り|抜《ぬ》いておられるかたですから、わたしの|申《もう》すことを、|寛大《かんだい》なお|心《こころ》で|聞《き》いていただきたいのです。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしは|若《わか》い|時代《じだい》には、|初《はじ》めから|自《じ》|国民《こくみん》の|中《なか》で、またエルサレムで|過《す》ごしたのですが、そのころのわたしの|生活《せいかつ》ぶりは、ユダヤ|人《じん》がみんなよく|知《し》っているところです。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはわたしを|初《はじ》めから|知《し》っているので、|証言《しょうげん》しようと|思《おも》えばできるのですが、わたしは、わたしたちの|宗教《しゅうきょう》の|最《もっと》も|厳格《げんかく》な|派《は》にしたがって、パリサイ|人《びと》としての|生活《せいかつ》をしていたのです。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》わたしは、|神《かみ》がわたしたちの|先祖《せんぞ》に|約束《やくそく》なさった|希望《きぼう》をいだいているために、|裁判《さいばん》を|受《う》けているのであります。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの十二の|部族《ぶぞく》は、|夜昼《よるひる》、|熱心《ねっしん》に|神《かみ》に|仕《つか》えて、その|約束《やくそく》を|得《え》ようと|望《のぞ》んでいるのです。|王《おう》よ、この|希望《きぼう》のために、わたしはユダヤ|人《じん》から|訴《うった》えられています。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》が|死人《しにん》をよみがえらせるということが、あなたがたには、どうして|信《しん》じられないことと|思《おも》えるのでしょうか。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたし|自身《じしん》も、|以前《いぜん》には、ナザレ|人《びと》イエスの|名《な》に|逆《さか》らって|反対《はんたい》の|行動《こうどう》をすべきだと、|思《おも》っていました。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そしてわたしは、それをエルサレムで|敢行《かんこう》し、|祭司長《さいしちょう》たちから|権限《けんげん》を|与《あた》えられて、|多《おお》くの|聖徒《せいと》たちを|獄《ごく》に|閉《と》じ|込《こ》め、|彼《かれ》らが|殺《ころ》される|時《とき》には、それに|賛成《さんせい》の|意《い》を|表《あらわ》しました。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]それから、いたるところの|会堂《かいどう》で、しばしば|彼《かれ》らを|罰《ばっ》して、|無理《むり》やりに|神《かみ》をけがす|言葉《ことば》を|言《い》わせようとし、|彼《かれ》らに|対《たい》してひどく|荒《あ》れ|狂《くる》い、ついに|外国《がいこく》の|町々《まちまち》にまで、|迫害《はくがい》の|手《て》をのばすに|至《いた》りました。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]こうして、わたしは、|祭司長《さいしちょう》たちから|権限《けんげん》と|委任《いにん》とを|受《う》けて、ダマスコに|行《い》ったのですが、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|王《おう》よ、その|途中《とちゅう》、|真昼《まひる》に、|光《ひかり》が|天《てん》からさして|来《く》るのを|見《み》ました。それは、|太陽《たいよう》よりも、もっと|光《ひか》り|輝《かがや》いて、わたしと|同行者《どうこうしゃ》たちとをめぐり|照《てら》しました。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちはみな|地《ち》に|倒《たお》れましたが、その|時《とき》ヘブル|語《ご》でわたしにこう|呼《よ》びかける|声《こえ》を|聞《き》きました、『サウロ、サウロ、なぜわたしを|迫害《はくがい》するのか。とげのあるむちをければ、|傷《きず》を|負《お》うだけである』。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしが『|主《しゅ》よ、あなたはどなたですか』と|尋《たず》ねると、|主《しゅ》は|言《い》われた、『わたしは、あなたが|迫害《はくがい》しているイエスである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]さあ、|起《お》きあがって、|自分《じぶん》の|足《あし》で|立《た》ちなさい。わたしがあなたに|現《あらわ》れたのは、あなたがわたしに|会《あ》った|事《こと》と、あなたに|現《あらわ》れて|示《しめ》そうとしている|事《こと》とをあかしし、これを|伝《つた》える|務《つとめ》に、あなたを|任《にん》じるためである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、この|国民《こくみん》と|異邦人《いほうじん》との|中《なか》から、あなたを|救《すく》い|出《だ》し、あらためてあなたを|彼《かれ》らにつかわすが、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]それは、|彼《かれ》らの|目《め》を|開《ひら》き、|彼《かれ》らをやみから|光《ひかり》へ、|悪魔《あくま》の|支配《しはい》から|神《かみ》のみもとへ|帰《かえ》らせ、また、|彼《かれ》らが|罪《つみ》のゆるしを|得《え》、わたしを|信《しん》じる|信仰《しんこう》によって、|聖《せい》|別《べつ》された|人々《ひとびと》に|加《くわ》わるためである』。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]それですから、アグリッパ|王《おう》よ、わたしは|天《てん》よりの|啓示《けいじ》にそむかず、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]まず|初《はじ》めにダマスコにいる|人々《ひとびと》に、それからエルサレムにいる|人々《ひとびと》、さらにユダヤ|全土《ぜんど》、ならびに|異邦人《いほうじん》たちに、|悔《く》い|改《あらた》めて|神《かみ》に|立《た》ち|帰《かえ》り、|悔改《くいあらた》めにふさわしいわざを|行《おこな》うようにと、|説《と》き|勧《すす》めました。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そのために、ユダヤ|人《じん》は、わたしを|宮《みや》で|引《ひ》き|捕《とら》えて|殺《ころ》そうとしたのです。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしは|今日《こんにち》に|至《いた》るまで|神《かみ》の|加護《かご》を|受《う》け、このように|立《た》って、|小《ちい》さい|者《もの》にも|大《おお》きい|者《もの》にもあかしをなし、|預言者《よげんしゃ》たちやモーセが、|今後《こんご》|起《おこ》るべきだと|語《かた》ったことを、そのまま|述《の》べてきました。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、キリストが|苦難《くなん》を|受《う》けること、また、|死人《しにん》の|中《なか》から|最初《さいしょ》によみがえって、この|国民《こくみん》と|異邦人《いほうじん》とに、|光《ひかり》を|宣《の》べ|伝《つた》えるに|至《いた》ることを、あかししたのです」。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]パウロがこのように|弁明《べんめい》をしていると、フェストは|大声《おおごえ》で|言《い》った、「パウロよ、おまえは|気《き》が|狂《くる》っている。|博学《はくがく》が、おまえを|狂《くる》わせている」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]パウロが|言《い》った、「フェスト|閣下《かっか》よ、わたしは|気《き》が|狂《くる》ってはいません。わたしは、まじめな|真実《しんじつ》の|言葉《ことば》を|語《かた》っているだけです。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|王《おう》はこれらのことをよく|知《し》っておられるので、|王《おう》に|対《たい》しても、|率直《そっちょく》に|申《もう》し|上《あ》げているのです。それは、|片《かた》すみで|行《おこな》われたのではないのですから、一つとして、|王《おう》が|見《み》のがされたことはないと|信《しん》じます。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]アグリッパ|王《おう》よ、あなたは|預言者《よげんしゃ》を|信《しん》じますか。|信《しん》じておられると|思《おも》います」。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]アグリッパがパウロに|言《い》った、「おまえは|少《すこ》し|説《と》いただけで、わたしをクリスチャンにしようとしている」。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]パウロが|言《い》った、「|説《と》くことが|少《すこ》しであろうと、|多《おお》くであろうと、わたしが|神《かみ》に|祈《いの》るのは、ただあなただけでなく、きょう、わたしの|言葉《ことば》を|聞《き》いた|人《ひと》もみな、わたしのようになって|下《くだ》さることです。このような|鎖《くさり》は|別《べつ》ですが」。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]それから、|王《おう》も|総督《そうとく》もベルニケも、また|列席《れっせき》の|人々《ひとびと》も、みな|立《た》ちあがった。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|退場《たいじょう》してから、|互《たがい》に|語《かた》り|合《あ》って|言《い》った、「あの|人《ひと》は、|死《し》や|投獄《とうごく》に|当《あた》るようなことをしてはいない」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そして、アグリッパがフェストに|言《い》った、「あの|人《ひと》は、カイザルに|上訴《じょうそ》していなかったら、ゆるされたであろうに」。 第二七章[#「第二七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしたちが、|舟《ふね》でイタリヤに|行《い》くことが|決《き》まった|時《とき》、パウロとそのほか|数人《すうにん》の|囚人《しゅうじん》とは、|近衛《このえ》|隊《たい》の|百卒長《ひゃくそつちょう》ユリアスに|託《たく》された。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そしてわたしたちは、アジヤ|沿岸《えんがん》の|各所《かくしょ》に|寄港《きこう》することになっているアドラミテオの|舟《ふね》に|乗《の》り|込《こ》んで、|出帆《しゅっぱん》した。テサロニケのマケドニヤ|人《びと》アリスタルコも|同行《どうこう》した。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|次《つぎ》の|日《ひ》、シドンに|入港《にゅうこう》したが、ユリアスは、パウロを|親切《しんせつ》に|取《と》り|扱《あつか》い、|友人《ゆうじん》をおとずれてかんたいを|受《う》けることを、|許《ゆる》した。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]それからわたしたちは、ここから|船出《ふなで》したが、|逆風《ぎゃくふう》にあったので、クプロの|島《しま》かげを|航行《こうこう》し、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]キリキヤとパンフリヤの|沖《おき》を|過《す》ぎて、ルキヤのミラに|入港《にゅうこう》した。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこに、イタリヤ|行《い》きのアレキサンドリヤの|舟《ふね》があったので、|百卒長《ひゃくそつちょう》は、わたしたちをその|舟《ふね》に|乗《の》り|込《こ》ませた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|幾日《いくにち》ものあいだ、|舟《ふね》の|進《すす》みがおそくて、わたしたちは、かろうじてクニドの|沖合《おきあい》にきたが、|風《かぜ》がわたしたちの|行《ゆ》く|手《て》をはばむので、サルモネの|沖《おき》、クレテの|島《しま》かげを|航行《こうこう》し、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]その|岸《きし》に|沿《そ》って|進《すす》み、かろうじて「|良《よ》き|港《みなと》」と|呼《よ》ばれる|所《ところ》に|着《つ》いた。その|近《ちか》くにラサヤの|町《まち》があった。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|長《なが》い|時《とき》が|経過《けいか》し、|断食《だんじき》|期《き》も|過《す》ぎてしまい、すでに|航海《こうかい》が|危険《きけん》な|季節《きせつ》になったので、パウロは|人々《ひとびと》に|警告《けいこく》して|言《い》った、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]「|皆《みな》さん、わたしの|見《み》るところでは、この|航海《こうかい》では、|積荷《つみに》や|船体《せんたい》ばかりでなく、われわれの|生命《せいめい》にも、|危害《きがい》と|大《おお》きな|損失《そんしつ》が|及《およ》ぶであろう」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]しかし|百卒長《ひゃくそつちょう》は、パウロの|意《い》|見《み》よりも、|船長《せんちょう》や|船主《せんしゅ》の|方《ほう》を|信頼《しんらい》した。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]なお、この|港《みなと》は|冬《ふゆ》を|過《す》ごすのに|適《てき》しないので、|大多数《だいたすう》の|者《もの》は、ここから|出《で》て、できればなんとかして、|南西《なんせい》と|北西《ほくせい》とに|面《めん》しているクレテのピニクス|港《こう》に|行《い》って、そこで|冬《ふゆ》を|過《す》ごしたいと|主張《しゅちょう》した。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|時《とき》に、|南風《なんぷう》が|静《しず》かに|吹《ふ》いてきたので、|彼《かれ》らは、この|時《とき》とばかりにいかりを|上《あ》げて、クレテの|岸《きし》に|沿《そ》って|航行《こうこう》した。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]すると|間《ま》もなく、ユーラクロンと|呼《よ》ばれる|暴風《ぼうふう》が、|島《しま》から|吹《ふ》きおろしてきた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そのために、|舟《ふね》が|流《なが》されて|風《かぜ》に|逆《さか》らうことができないので、わたしたちは|吹《ふ》き|流《なが》されるままに|任《まか》せた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それから、クラウダという|小島《こじま》の|陰《かげ》に、はいり|込《こ》んだので、わたしたちは、やっとのことで|小舟《こぶね》を|処置《しょち》することができ、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それを|舟《ふね》に|引《ひ》き|上《あ》げてから、|綱《つな》で|船体《せんたい》を|巻《ま》きつけた。また、スルテスの|洲《す》に|乗《の》り|上《あ》げるのを|恐《おそ》れ、|帆《ほ》をおろして|流《なが》れるままにした。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|暴風《ぼうふう》にひどく|悩《なや》まされつづけたので、|次《つぎ》の|日《ひ》に、|人々《ひとびと》は|積荷《つみに》を|捨《す》てはじめ、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]三|日《か》|目《め》には、|船具《ふなぐ》までも、てずから|投《な》げすてた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|幾日《いくにち》ものあいだ、|太陽《たいよう》も|星《ほし》も|見《み》えず、|暴風《ぼうふう》は|激《はげ》しく|吹《ふ》きすさぶので、わたしたちの|助《たす》かる|最後《さいご》の|望《のぞ》みもなくなった。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》は、|長《なが》いあいだ|食事《しょくじ》もしないでいたが、その|時《とき》、パウロが|彼《かれ》らの|中《なか》に|立《た》って|言《い》った、「|皆《みな》さん、あなたがたが、わたしの|忠告《ちゅうこく》を|聞《き》きいれて、クレテから|出《で》なかったら、このような|危害《きがい》や|損失《そんしつ》を|被《こうむ》らなくてすんだはずであった。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]だが、この|際《さい》、お|勧《すす》めする。|元気《げんき》を|出《だ》しなさい。|舟《ふね》が|失《うしな》われるだけで、あなたがたの|中《なか》で|生命《せいめい》を|失《うしな》うものは、ひとりもいないであろう。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|昨夜《さくや》、わたしが|仕《つか》え、また|拝《おが》んでいる|神《かみ》からの|御使《みつかい》が、わたしのそばに|立《た》って|言《い》った、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]『パウロよ、|恐《おそ》れるな。あなたは|必《かなら》ずカイザルの|前《まえ》に|立《た》たなければならない。たしかに|神《かみ》は、あなたと|同船《どうせん》の|者《もの》を、ことごとくあなたに|賜《たま》わっている』。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]だから、|皆《みな》さん、|元気《げんき》を|出《だ》しなさい。|万事《ばんじ》はわたしに|告《つ》げられたとおりに|成《な》って|行《い》くと、わたしは、|神《かみ》かけて|信《しん》じている。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]われわれは、どこかの|島《しま》に|打《う》ちあげられるに|相違《そうい》ない」。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちがアドリヤ|海《うみ》に|漂《ただよ》ってから十四|日《か》|目《め》の|夜《よる》になった|時《とき》、|真夜中《まよなか》ごろ、|水夫《すいふ》らはどこかの|陸地《りくち》に|近《ちか》づいたように|感《かん》じた。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|水《みず》の|深《ふか》さを|測《はか》ってみたところ、二十ひろであることがわかった。それから|少《すこ》し|進《すす》んで、もう|一度《いちど》|測《はか》ってみたら、十五ひろであった。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが、|万一《まんいち》|暗礁《あんしょう》に|乗《の》り|上《あ》げては|大変《たいへん》だと、|人々《ひとびと》は|気《き》づかって、ともから四つのいかりを|投《な》げおろし、|夜《よ》の|明《あ》けるのを|待《ま》ちわびていた。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、|水夫《すいふ》らが|舟《ふね》から|逃《に》げ|出《だ》そうと|思《おも》って、へさきからいかりを|投《な》げおろすと|見《み》せかけ、|小舟《こぶね》を|海《うみ》におろしていたので、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]パウロは、|百卒長《ひゃくそつちょう》や|兵卒《へいそつ》たちに|言《い》った、「あの|人《ひと》たちが、|舟《ふね》に|残《のこ》っていなければ、あなたがたは|助《たす》からない」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]そこで|兵卒《へいそつ》たちは、|小舟《こぶね》の|綱《つな》を|断《た》ち|切《き》って、その|流《なが》れて|行《い》くままに|任《まか》せた。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けかけたころ、パウロは|一同《いちどう》の|者《もの》に、|食事《しょくじ》をするように|勧《すす》めて|言《い》った、「あなたがたが|食事《しょくじ》もせずに、|見張《みは》りを|続《つづ》けてから、|何《なに》も|食《た》べないで、きょうが十四|日《か》|目《め》に|当《あた》る。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]だから、いま|食事《しょくじ》を|取《と》ることをお|勧《すす》めする。それが、あなたがたを|救《すく》うことになるのだから。たしかに|髪《かみ》の|毛《け》ひとすじでも、あなたがたの|頭《あたま》から|失《うしな》われることはないであろう」。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はこう|言《い》って、パンを|取《と》り、みんなの|前《まえ》で|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》し、それをさいて|食《た》べはじめた。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、みんなの|者《もの》も|元《もと》|気《き》づいて|食事《しょくじ》をした。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]|舟《ふね》にいたわたしたちは、|合《あ》わせて二百七十六|人《にん》であった。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]みんなの|者《もの》は、じゅうぶんに|食事《しょくじ》をした|後《のち》、|穀物《こくもつ》を|海《うみ》に|投《な》げすてて|舟《ふね》を|軽《かろ》くした。  [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》が|明《あ》けて、どこの|土地《とち》かよくわからなかったが、|砂浜《すなはま》のある|入江《いりえ》が|見《み》えたので、できれば、それに|舟《ふね》を|乗《の》り|入《い》れようということになった。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、いかりを|切《き》り|離《はな》して|海《うみ》に|捨《す》て、|同時《どうじ》にかじの|綱《つな》をゆるめ、|風《かぜ》に|前《まえ》の|帆《ほ》をあげて、|砂浜《すなはま》にむかって|進《すす》んだ。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|潮流《ちょうりゅう》の|流《なが》れ|合《あ》う|所《ところ》に|突《つ》き|進《すす》んだため、|舟《ふね》を|浅瀬《あさせ》に|乗《の》りあげてしまって、へさきがめり|込《こ》んで|動《うご》かなくなり、ともの|方《ほう》は|激浪《げきろう》のためにこわされた。[#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|兵卒《へいそつ》たちは、|囚人《しゅうじん》らが|泳《およ》いで|逃《に》げるおそれがあるので、|殺《ころ》してしまおうと|図《はか》ったが、[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|百卒長《ひゃくそつちょう》は、パウロを|救《すく》いたいと|思《おも》うところから、その|意図《いと》をしりぞけ、|泳《およ》げる|者《もの》はまず|海《うみ》に|飛《と》び|込《こ》んで|陸《りく》に|行《い》き、[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]その|他《た》の|者《もの》は、|板《いた》や|舟《ふね》の|破片《はへん》に|乗《の》って|行《い》くように|命《めい》じた。こうして、|全部《ぜんぶ》の|者《もの》が|上陸《じょうりく》して|救《すく》われたのであった。 第二八章[#「第二八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが、こうして|救《すく》われてからわかったが、これはマルタと|呼《よ》ばれる|島《しま》であった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|土地《とち》の|人々《ひとびと》は、わたしたちに|並々《なみなみ》ならぬ|親切《しんせつ》をあらわしてくれた。すなわち、|降《ふ》りしきる|雨《あめ》や|寒《さむ》さをしのぐために、|火《ひ》をたいてわたしたち|一同《いちどう》をねぎらってくれたのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そのとき、パウロはひとかかえの|柴《しば》をたばねて|火《ひ》にくべたところ、|熱気《ねっき》のためにまむしが|出《で》てきて、|彼《かれ》の|手《て》にかみついた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|土地《とち》の|人々《ひとびと》は、この|生《い》きものがパウロの|手《て》からぶら|下《さ》がっているのを|見《み》て、|互《たがい》に|言《い》った、「この|人《ひと》は、きっと|人殺《ひとごろ》しに|違《ちが》いない。|海《うみ》からはのがれたが、ディケーの|神様《かみさま》が|彼《かれ》を|生《い》かしてはおかないのだ」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ところがパウロは、まむしを|火《ひ》の|中《なか》に|振《ふ》り|落《おと》して、なんの|害《がい》も|被《こうむ》らなかった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|彼《かれ》が|間《ま》もなくはれ|上《あ》がるか、あるいは、たちまち|倒《たお》れて|死《し》ぬだろうと、|様子《ようす》をうかがっていた。しかし、|長《なが》い|間《あいだ》うかがっていても、|彼《かれ》の|身《み》になんの|変《かわ》ったことも|起《おこ》らないのを|見《み》て、|彼《かれ》らは|考《かんが》えを|変《か》えて、「この|人《ひと》は|神様《かみさま》だ」と|言《い》い|出《だ》した。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]さて、その|場所《ばしょ》の|近《ちか》くに、|島《しま》の|首長《しゅちょう》、ポプリオという|人《ひと》の|所有《しょゆう》|地《ち》があった。|彼《かれ》は、そこにわたしたちを|招待《しょうたい》して、三|日《か》のあいだ|親切《しんせつ》にもてなしてくれた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]たまたま、ポプリオの|父《ちち》が|赤痢《せきり》をわずらい、|高熱《こうねつ》で|床《とこ》についていた。そこでパウロは、その|人《ひと》のところにはいって|行《い》って|祈《いの》り、|手《て》を|彼《かれ》の|上《うえ》においていやしてやった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]このことがあってから、ほかに|病気《びょうき》をしている|島《しま》の|人《ひと》たちが、ぞくぞくとやってきて、みないやされた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはわたしたちを|非常《ひじょう》に|尊敬《そんけい》し、|出帆《しゅっぱん》の|時《とき》には、|必要《ひつよう》な|品々《しなじな》を|持《も》ってきてくれた。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]三か|月《げつ》たった|後《のち》、わたしたちは、この|島《しま》に|冬《ふゆ》ごもりをしていたデオスクリの|船《ふね》|飾《かざ》りのあるアレキサンドリヤの|舟《ふね》で、|出帆《しゅっぱん》した。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そして、シラクサに|寄港《きこう》して三|日《か》のあいだ|停泊《ていはく》し、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そこから|進《すす》んでレギオンに|行《い》った。それから一|日《にち》おいて、|南風《なんぷう》が|吹《ふ》いてきたのに|乗《じょう》じ、ふつか|目《め》にポテオリに|着《つ》いた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そこで|兄弟《きょうだい》たちに|会《あ》い、|勧《すす》められるまま、|彼《かれ》らのところに|七日間《なぬかかん》も|滞在《たいざい》した。それからわたしたちは、ついにローマに|到着《とうちゃく》した。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|兄弟《きょうだい》たちは、わたしたちのことを|聞《き》いて、アピオ・ポロおよびトレス・タベルネまで|出迎《でむか》えてくれた。パウロは|彼《かれ》らに|会《あ》って、|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》し|勇《いさ》み|立《た》った。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちがローマに|着《つ》いた|後《のち》、パウロは、ひとりの|番兵《ばんぺい》をつけられ、ひとりで|住《す》むことを|許《ゆる》された。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]三|日《か》たってから、パウロは、|重立《おもだ》ったユダヤ|人《じん》たちを|招《まね》いた。みんなの|者《もの》が|集《あつ》まったとき、|彼《かれ》らに|言《い》った、「|兄弟《きょうだい》たちよ、わたしは、わが|国民《こくみん》に|対《たい》しても、あるいは|先祖《せんぞ》|伝来《でんらい》の|慣例《かんれい》に|対《たい》しても、|何一《なにひと》つそむく|行為《こうい》がなかったのに、エルサレムで|囚人《しゅうじん》としてローマ|人《じん》たちの|手《て》に|引《ひ》き|渡《わた》された。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはわたしを|取《と》り|調《しら》べた|結果《けっか》、なんら|死《し》に|当《あた》る|罪状《ざいじょう》もないので、わたしを|釈放《しゃくほう》しようと|思《おも》ったのであるが、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》たちがこれに|反対《はんたい》したため、わたしはやむを|得《え》ず、カイザルに|上訴《じょうそ》するに|至《いた》ったのである。しかしわたしは、わが|同胞《どうほう》を|訴《うった》えようなどとしているのではない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、あなたがたに|会《あ》って|語《かた》り|合《あ》いたいと|願《ねが》っていた。|事実《じじつ》、わたしは、イスラエルのいだいている|希望《きぼう》のゆえに、この|鎖《くさり》につながれているのである」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこで|彼《かれ》らは、パウロに|言《い》った、「わたしたちは、ユダヤ|人《じん》たちから、あなたについて、なんの|文書《ぶんしょ》も|受《う》け|取《と》っていないし、また、|兄弟《きょうだい》たちの|中《なか》からここにきて、あなたについて|不利《ふり》な|報告《ほうこく》をしたり、|悪口《あっこう》を|言《い》ったりした|者《もの》もなかった。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、あなたの|考《かんが》えていることを、|直接《ちょくせつ》あなたから|聞《き》くのが、|正《ただ》しいことだと|思《おも》っている。|実《じつ》は、この|宗派《しゅうは》については、いたるところで|反対《はんたい》のあることが、わたしたちの|耳《みみ》にもはいっている」。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|日《ひ》を|定《さだ》めて、|大《おお》ぜいの|人《ひと》が、パウロの|宿《やど》につめかけてきたので、|朝《あさ》から|晩《ばん》まで、パウロは|語《かた》り|続《つづ》け、|神《かみ》の|国《くに》のことをあかしし、またモーセの|律法《りっぽう》や|預言者《よげんしゃ》の|書《しょ》を|引《ひ》いて、イエスについて|彼《かれ》らの|説得《せっとく》につとめた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ある|者《もの》はパウロの|言《い》うことを|受《う》けいれ、ある|者《もの》は|信《しん》じようともしなかった。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》に|意見《いけん》が|合《あ》わなくて、みんなの|者《もの》が|帰《かえ》ろうとしていた|時《とき》、パウロはひとこと|述《の》べて|言《い》った、「|聖霊《せいれい》はよくも|預言者《よげんしゃ》イザヤによって、あなたがたの|先祖《せんぞ》に|語《かた》ったものである。 [#ここから2字下げ] [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]『この|民《たみ》に|行《い》って|言《い》え、 あなたがたは|聞《き》くには|聞《き》くが、|決《けっ》して|悟《さと》らない。 |見《み》るには|見《み》るが、|決《けっ》して|認《みと》めない。 [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]この|民《たみ》の|心《こころ》は|鈍《にぶ》くなり、 その|耳《みみ》は|聞《きこ》えにくく、 その|目《め》は|閉《と》じている。 それは、|彼《かれ》らが|目《め》で|見《み》ず、 |耳《みみ》で|聞《き》かず、 |心《こころ》で|悟《さと》らず、|悔《く》い|改《あらた》めて いやされることがないためである』。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたがたは|知《し》っておくがよい。|神《かみ》のこの|救《すくい》の|言葉《ことば》は、|異邦人《いほうじん》に|送《おく》られたのだ。|彼《かれ》らは、これに|聞《き》きしたがうであろう」。〔[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]パウロがこれらのことを|述《の》べ|終《おわ》ると、ユダヤ|人《じん》らは、|互《たがい》に|論《ろん》じ|合《あ》いながら|帰《かえ》って|行《い》った。〕  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]パウロは、|自分《じぶん》の|借《か》りた|家《いえ》に|満《まん》二|年《ねん》のあいだ|住《す》んで、たずねて|来《く》る|人々《ひとびと》をみな|迎《むか》え|入《い》れ、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]はばからず、また|妨《さまた》げられることもなく、|神《かみ》の|国《くに》を|宣《の》べ|伝《つた》え、|主《しゅ》イエス・キリストのことを|教《おし》えつづけた。 [#改ページ] ローマ人への手紙[#「ローマ人への手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスの|僕《しもべ》、|神《かみ》の|福音《ふくいん》のために|選《えら》び|別《わか》たれ、|召《め》されて|使徒《しと》となったパウロから――[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]この|福音《ふくいん》は、|神《かみ》が、|預言者《よげんしゃ》たちにより、|聖書《せいしょ》の|中《なか》で、あらかじめ|約束《やくそく》されたものであって、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|御子《みこ》に|関《かん》するものである。|御子《みこ》は、|肉《にく》によればダビデの|子孫《しそん》から|生《うま》れ、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|聖《せい》なる|霊《れい》によれば、|死人《しにん》からの|復活《ふっかつ》により、|御《み》|力《ちから》をもって|神《かみ》の|御子《みこ》と|定《さだ》められた。これがわたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、その|御名《みな》のために、すべての|異邦人《いほうじん》を|信仰《しんこう》の|従順《じゅうじゅん》に|至《いた》らせるようにと、|彼《かれ》によって|恵《めぐ》みと|使徒《しと》の|務《つとめ》とを|受《う》けたのであり、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたもまた、|彼《かれ》らの|中《なか》にあって、|召《め》されてイエス・キリストに|属《ぞく》する|者《もの》となったのである――[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ローマにいる、|神《かみ》に|愛《あい》され、|召《め》された|聖徒《せいと》|一同《いちどう》へ。  わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》および|主《しゅ》イエス・キリストから、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]まず|第《だい》一に、わたしは、あなたがたの|信仰《しんこう》が|全《ぜん》|世界《せかい》に|言《い》い|伝《つた》えられていることを、イエス・キリストによって、あなたがた|一同《いちどう》のために、わたしの|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》する。[#太字]九 一〇[#「九 一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|祈《いのり》のたびごとに、|絶《た》えずあなたがたを|覚《おぼ》え、いつかは|御旨《みむね》にかなって|道《みち》が|開《ひら》かれ、どうにかして、あなたがたの|所《ところ》に|行《い》けるようにと|願《ねが》っている。このことについて、わたしのためにあかしをして|下《くだ》さるのは、わたしが|霊《れい》により、|御子《みこ》の|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えて|仕《つか》えている|神《かみ》である。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたに|会《あ》うことを|熱望《ねつぼう》している。あなたがたに|霊《れい》の|賜物《たまもの》を|幾分《いくぶん》でも|分《わ》け|与《あた》えて、|力《ちから》づけたいからである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それは、あなたがたの|中《なか》にいて、あなたがたとわたしとのお|互《たがい》の|信仰《しんこう》によって、|共《とも》に|励《はげ》まし|合《あ》うためにほかならない。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。このことを|知《し》らずにいてもらいたくない。わたしはほかの|異邦人《いほうじん》の|間《あいだ》で|得《え》たように、あなたがたの|間《あいだ》でも|幾分《いくぶん》かの|実《み》を|得《え》るために、あなたがたの|所《ところ》に|行《い》こうとしばしば|企《くわだ》てたが、|今《いま》まで|妨《さまた》げられてきた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしには、ギリシヤ|人《じん》にも|未開《みかい》の|人《ひと》にも、|賢《かしこ》い|者《もの》にも|無知《むち》な|者《もの》にも、|果《はた》すべき|責任《せきにん》がある。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしとしての|切《せつ》なる|願《ねが》いは、ローマにいるあなたがたにも、|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えることなのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|福音《ふくいん》を|恥《はじ》としない。それは、ユダヤ|人《じん》をはじめ、ギリシヤ|人《じん》にも、すべて|信《しん》じる|者《もの》に、|救《すくい》を|得《え》させる|神《かみ》の|力《ちから》である。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|義《ぎ》は、その|福音《ふくいん》の|中《なか》に|啓示《けいじ》され、|信仰《しんこう》に|始《はじ》まり|信仰《しんこう》に|至《いた》らせる。これは、「|信仰《しんこう》による|義人《ぎじん》は|生《い》きる」と|書《か》いてあるとおりである。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|怒《いか》りは、|不義《ふぎ》をもって|真理《しんり》をはばもうとする|人間《にんげん》のあらゆる|不信心《ふしんじん》と|不義《ふぎ》とに|対《たい》して、|天《てん》から|啓示《けいじ》される。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|神《かみ》について|知《し》りうる|事《こと》がらは、|彼《かれ》らには|明《あき》らかであり、|神《かみ》がそれを|彼《かれ》らに|明《あき》らかにされたのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|見《み》えない|性質《せいしつ》、すなわち、|神《かみ》の|永遠《えいえん》の|力《ちから》と|神性《しんせい》とは、|天地《てんち》|創造《そうぞう》このかた、|被《ひ》|造物《ぞうぶつ》において|知《し》られていて、|明《あき》らかに|認《みと》められるからである。したがって、|彼《かれ》らには|弁解《べんかい》の|余地《よち》がない。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|彼《かれ》らは|神《かみ》を|知《し》っていながら、|神《かみ》としてあがめず、|感謝《かんしゃ》もせず、かえってその|思《おも》いはむなしくなり、その|無知《むち》な|心《こころ》は|暗《くら》くなったからである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|自《みずか》ら|知者《ちしゃ》と|称《しょう》しながら、|愚《おろ》かになり、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|不朽《ふきゅう》の|神《かみ》の|栄光《えいこう》を|変《か》えて、|朽《く》ちる|人間《にんげん》や|鳥《とり》や|獣《けもの》や|這《は》うものの|像《ぞう》に|似《に》せたのである。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ゆえに、|神《かみ》は、|彼《かれ》らが|心《こころ》の|欲情《よくじょう》にかられ、|自分《じぶん》のからだを|互《たがい》にはずかしめて、|汚《けが》すままに|任《まか》せられた。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|神《かみ》の|真理《しんり》を|変《か》えて|虚偽《きょぎ》とし、|創造者《そうぞうしゃ》の|代《かわ》りに|被《ひ》|造物《ぞうぶつ》を|拝《おが》み、これに|仕《つか》えたのである。|創造者《そうぞうしゃ》こそ|永遠《えいえん》にほむべきものである、アァメン。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]それゆえ、|神《かみ》は|彼《かれ》らを|恥《は》ずべき|情欲《じょうよく》に|任《まか》せられた。すなわち、|彼《かれ》らの|中《なか》の|女《おんな》は、その|自然《しぜん》の|関係《かんけい》を|不自然《ふしぜん》なものに|代《か》え、[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|男《おとこ》もまた|同《おな》じように|女《おんな》との|自然《しぜん》の|関係《かんけい》を|捨《す》てて、|互《たがい》にその|情欲《じょうよく》の|炎《ほのお》を|燃《も》やし、|男《おとこ》は|男《おとこ》に|対《たい》して|恥《は》ずべきことをなし、そしてその|乱行《らんぎょう》の|当然《とうぜん》の|報《むく》いを、|身《み》に|受《う》けたのである。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》らは|神《かみ》を|認《みと》めることを|正《ただ》しいとしなかったので、|神《かみ》は|彼《かれ》らを|正《ただ》しからぬ|思《おも》いにわたし、なすべからざる|事《こと》をなすに|任《まか》せられた。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|彼《かれ》らは、あらゆる|不義《ふぎ》と|悪《あく》と|貪欲《どんよく》と|悪意《あくい》とにあふれ、ねたみと|殺意《さつい》と|争《あらそ》いと|詐欺《さぎ》と|悪念《あくねん》とに|満《み》ち、また、ざん|言《げん》する|者《もの》、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そしる|者《もの》、|神《かみ》を|憎《にく》む|者《もの》、|不遜《ふそん》な|者《もの》、|高慢《こうまん》な|者《もの》、|大言壮語《たいげんそうご》する|者《もの》、|悪事《あくじ》をたくらむ|者《もの》、|親《おや》に|逆《さか》らう|者《もの》となり、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|無知《むち》、|不誠実《ふせいじつ》、|無情《むじょう》、|無慈悲《むじひ》な|者《もの》となっている。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、こうした|事《こと》を|行《おこな》う|者《もの》どもが|死《し》に|価《あたい》するという|神《かみ》の|定《さだ》めをよく|知《し》りながら、|自《みずか》らそれを|行《おこな》うばかりではなく、それを|行《おこな》う|者《もの》どもを|是認《ぜにん》さえしている。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]だから、ああ、すべて|人《ひと》をさばく|者《もの》よ。あなたには|弁解《べんかい》の|余地《よち》がない。あなたは、|他人《たにん》をさばくことによって、|自分《じぶん》|自身《じしん》を|罪《つみ》に|定《さだ》めている。さばくあなたも、|同《おな》じことを|行《おこな》っているからである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|神《かみ》のさばきが、このような|事《こと》を|行《おこな》う|者《もの》どもの|上《うえ》に|正《ただ》しく|下《くだ》ることを、|知《し》っている。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ああ、このような|事《こと》を|行《おこな》う|者《もの》どもをさばきながら、しかも|自《みずか》ら|同《おな》じことを|行《おこな》う|人《ひと》よ。あなたは、|神《かみ》のさばきをのがれうると|思《おも》うのか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]それとも、|神《かみ》の|慈愛《じあい》があなたを|悔改《くいあらた》めに|導《みちび》くことも|知《し》らないで、その|慈愛《じあい》と|忍耐《にんたい》と|寛容《かんよう》との|富《とみ》を|軽《かろ》んじるのか。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたのかたくなな、|悔改《くいあらた》めのない|心《こころ》のゆえに、あなたは、|神《かみ》の|正《ただ》しいさばきの|現《あらわ》れる|怒《いか》りの|日《ひ》のために|神《かみ》の|怒《いか》りを、|自分《じぶん》の|身《み》に|積《つ》んでいるのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、おのおのに、そのわざにしたがって|報《むく》いられる。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|一方《いっぽう》では、|耐《た》え|忍《しの》んで|善《ぜん》を|行《おこな》って、|光栄《こうえい》とほまれと|朽《く》ちぬものとを|求《もと》める|人《ひと》に、|永遠《えいえん》のいのちが|与《あた》えられ、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|他方《たほう》では、|党派心《とうはしん》をいだき、|真理《しんり》に|従《したが》わないで|不義《ふぎ》に|従《したが》う|人《ひと》に、|怒《いか》りと|激《はげ》しい|憤《いきどお》りとが|加《くわ》えられる。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|悪《あく》を|行《おこな》うすべての|人《ひと》には、ユダヤ|人《じん》をはじめギリシヤ|人《じん》にも、|患難《かんなん》と|苦悩《くのう》とが|与《あた》えられ、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|善《ぜん》を|行《おこな》うすべての|人《ひと》には、ユダヤ|人《じん》をはじめギリシヤ|人《じん》にも、|光栄《こうえい》とほまれと|平安《へいあん》とが|与《あた》えられる。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|神《かみ》には、かたより|見《み》ることがないからである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そのわけは、|律法《りっぽう》なしに|罪《つみ》を|犯《おか》した|者《もの》は、また|律法《りっぽう》なしに|滅《ほろ》び、|律法《りっぽう》のもとで|罪《つみ》を|犯《おか》した|者《もの》は、|律法《りっぽう》によってさばかれる。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|律法《りっぽう》を|聞《き》く|者《もの》が、|神《かみ》の|前《まえ》に|義《ぎ》なるものではなく、|律法《りっぽう》を|行《おこな》う|者《もの》が、|義《ぎ》とされるからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|律法《りっぽう》を|持《も》たない|異邦人《いほうじん》が、|自然《しぜん》のままで、|律法《りっぽう》の|命《めい》じる|事《こと》を|行《おこな》うなら、たとい|律法《りっぽう》を|持《も》たなくても、|彼《かれ》らにとっては|自分《じぶん》|自身《じしん》が|律法《りっぽう》なのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|律法《りっぽう》の|要求《ようきゅう》がその|心《こころ》にしるされていることを|現《あらわ》し、そのことを|彼《かれ》らの|良心《りょうしん》も|共《とも》にあかしをして、その|判断《はんだん》が|互《たがい》にあるいは|訴《うった》え、あるいは|弁明《べんめい》し|合《あ》うのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして、これらのことは、わたしの|福音《ふくいん》によれば、|神《かみ》がキリスト・イエスによって|人々《ひとびと》の|隠《かく》れた|事《こと》がらをさばかれるその|日《ひ》に、|明《あき》らかにされるであろう。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたが、|自《みずか》らユダヤ|人《じん》と|称《しょう》し、|律法《りっぽう》に|安《やす》んじ、|神《かみ》を|誇《ほこり》とし、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|御旨《みむね》を|知《し》り、|律法《りっぽう》に|教《おし》えられて、なすべきことをわきまえており、[#太字]一九 二〇[#「一九 二〇」は行右小書き][#太字終わり]さらに、|知識《ちしき》と|真理《しんり》とが|律法《りっぽう》の|中《なか》に|形《かたち》をとっているとして、|自《みずか》ら|盲人《もうじん》の|手引《てび》き、やみにおる|者《もの》の|光《ひかり》、|愚《おろ》かな|者《もの》の|導《みちび》き|手《て》、|幼《おさ》な|子《ご》の|教師《きょうし》をもって|任《にん》じているのなら、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]なぜ、|人《ひと》を|教《おし》えて|自分《じぶん》を|教《おし》えないのか。|盗《ぬす》むなと|人《ひと》に|説《と》いて、|自《みずか》らは|盗《ぬす》むのか。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|姦淫《かんいん》するなと|言《い》って、|自《みずか》らは|姦淫《かんいん》するのか。|偶像《ぐうぞう》を|忌《い》みきらいながら、|自《みずか》らは|宮《みや》の|物《もの》をかすめるのか。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》を|誇《ほこり》としながら、|自《みずか》らは|律法《りっぽう》に|違反《いはん》して、|神《かみ》を|侮《あなど》っているのか。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》に|書《か》いてあるとおり、「|神《かみ》の|御名《みな》は、あなたがたのゆえに、|異邦人《いほうじん》の|間《あいだ》で|汚《けが》されている」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]もし、あなたが|律法《りっぽう》を|行《おこな》うなら、なるほど、|割礼《かつれい》は|役《やく》に|立《た》とう。しかし、もし|律法《りっぽう》を|犯《おか》すなら、あなたの|割礼《かつれい》は|無《む》|割礼《かつれい》となってしまう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]だから、もし|無《む》|割礼《かつれい》の|者《もの》が|律法《りっぽう》の|規定《きてい》を|守《まも》るなら、その|無《む》|割礼《かつれい》は|割礼《かつれい》と|見《み》なされるではないか。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]かつ、|生《うま》れながら|無《む》|割礼《かつれい》の|者《もの》であって|律法《りっぽう》を|全《まっと》うする|者《もの》は、|律法《りっぽう》の|文字《もんじ》と|割礼《かつれい》とを|持《も》ちながら|律法《りっぽう》を|犯《おか》しているあなたを、さばくのである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|外見《がいけん》|上《うえ》のユダヤ|人《じん》がユダヤ|人《じん》ではなく、また、|外見《がいけん》|上《うえ》の|肉《にく》における|割礼《かつれい》が|割礼《かつれい》でもない。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]かえって、|隠《かく》れたユダヤ|人《じん》がユダヤ|人《じん》であり、また、|文字《もんじ》によらず|霊《れい》による|心《こころ》の|割礼《かつれい》こそ|割礼《かつれい》であって、そのほまれは|人《ひと》からではなく、|神《かみ》から|来《く》るのである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]では、ユダヤ|人《じん》のすぐれている|点《てん》は|何《なに》か。また|割礼《かつれい》の|益《えき》は|何《なに》か。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それは、いろいろの|点《てん》で|数多《かずおお》くある。まず|第《だい》一に、|神《かみ》の|言《ことば》が|彼《かれ》らにゆだねられたことである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すると、どうなるのか。もし、|彼《かれ》らのうちに|不《ふ》|真実《しんじつ》の|者《もの》があったとしたら、その|不《ふ》|真実《しんじつ》によって、|神《かみ》の|真実《しんじつ》は|無《む》になるであろうか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|断《だん》じてそうではない。あらゆる|人《ひと》を|偽《いつわ》り|者《もの》としても、|神《かみ》を|真実《しんじつ》なものとすべきである。それは、 [#ここから2字下げ] 「あなたが|言葉《ことば》を|述《の》べるときは、|義《ぎ》とせられ、 あなたがさばきを|受《う》けるとき、|勝利《しょうり》を|得《え》るため」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるとおりである。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もしわたしたちの|不義《ふぎ》が、|神《かみ》の|義《ぎ》を|明《あき》らかにするとしたら、なんと|言《い》うべきか。|怒《いか》りを|下《くだ》す|神《かみ》は、|不義《ふぎ》であると|言《い》うのか(これは|人間《にんげん》|的《てき》な|言《い》い|方《かた》ではある)。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|断《だん》じてそうではない。もしそうであったら、|神《かみ》はこの|世《よ》を、どうさばかれるだろうか。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もし|神《かみ》の|真実《しんじつ》が、わたしの|偽《いつわ》りによりいっそう|明《あき》らかにされて、|神《かみ》の|栄光《えいこう》となるなら、どうして、わたしはなおも|罪人《つみびと》としてさばかれるのだろうか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、「|善《ぜん》をきたらせるために、わたしたちは|悪《あく》をしようではないか」(わたしたちがそう|言《い》っていると、ある|人々《ひとびと》はそしっている)。|彼《かれ》らが|罰《ばっ》せられるのは|当然《とうぜん》である。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すると、どうなるのか。わたしたちには|何《なに》かまさったところがあるのか。|絶対《ぜったい》にない。ユダヤ|人《じん》もギリシヤ|人《じん》も、ことごとく|罪《つみ》の|下《もと》にあることを、わたしたちはすでに|指摘《してき》した。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|次《つぎ》のように|書《か》いてある、 [#ここから2字下げ] 「|義人《ぎじん》はいない、ひとりもいない。 [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|悟《さと》りのある|人《ひと》はいない、 |神《かみ》を|求《もと》める|人《ひと》はいない。 [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]すべての|人《ひと》は|迷《まよ》い|出《で》て、 ことごとく|無益《むえき》なものになっている。 |善《ぜん》を|行《おこな》う|者《もの》はいない、 ひとりもいない。 [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らののどは、|開《ひら》いた|墓《はか》であり、 |彼《かれ》らは、その|舌《した》で|人《ひと》を|欺《あざむ》き、 |彼《かれ》らのくちびるには、まむしの|毒《どく》があり、 [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|口《くち》は、のろいと|苦《にが》い|言葉《ことば》とで|満《み》ちている。 [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|足《あし》は、|血《ち》を|流《なが》すのに|速《はや》く、 [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|道《みち》には、|破壊《はかい》と|悲惨《ひさん》とがある。 [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》らは|平和《へいわ》の|道《みち》を|知《し》らない。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|目《め》の|前《まえ》には、|神《かみ》に|対《たい》する|恐《おそ》れがない」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしたちが|知《し》っているように、すべて|律法《りっぽう》の|言《い》うところは、|律法《りっぽう》のもとにある|者《もの》たちに|対《たい》して|語《かた》られている。それは、すべての|口《くち》がふさがれ、|全《ぜん》|世界《せかい》が|神《かみ》のさばきに|服《ふく》するためである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|律法《りっぽう》を|行《おこな》うことによっては、すべての|人間《にんげん》は|神《かみ》の|前《まえ》に|義《ぎ》とせられないからである。|律法《りっぽう》によっては、|罪《つみ》の|自覚《じかく》が|生《しょう》じるのみである。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]しかし|今《いま》や、|神《かみ》の|義《ぎ》が、|律法《りっぽう》とは|別《べつ》に、しかも|律法《りっぽう》と|預言者《よげんしゃ》とによってあかしされて、|現《あらわ》された。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]それは、イエス・キリストを|信《しん》じる|信仰《しんこう》による|神《かみ》の|義《ぎ》であって、すべて|信《しん》じる|人《ひと》に|与《あた》えられるものである。そこにはなんらの|差別《さべつ》もない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、すべての|人《ひと》は|罪《つみ》を|犯《おか》したため、|神《かみ》の|栄光《えいこう》を|受《う》けられなくなっており、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|価《あたい》なしに、|神《かみ》の|恵《めぐ》みにより、キリスト・イエスによるあがないによって|義《ぎ》とされるのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はこのキリストを|立《た》てて、その|血《ち》による、|信仰《しんこう》をもって|受《う》くべきあがないの|供《そな》え|物《もの》とされた。それは|神《かみ》の|義《ぎ》を|示《しめ》すためであった。すなわち、|今《いま》までに|犯《おか》された|罪《つみ》を、|神《かみ》は|忍耐《にんたい》をもって|見《み》のがしておられたが、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]それは、|今《いま》の|時《とき》に、|神《かみ》の|義《ぎ》を|示《しめ》すためであった。こうして、|神《かみ》みずからが|義《ぎ》となり、さらに、イエスを|信《しん》じる|者《もの》を|義《ぎ》とされるのである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]すると、どこにわたしたちの|誇《ほこり》があるのか。|全《まった》くない。なんの|法則《ほうそく》によってか。|行《おこな》いの|法則《ほうそく》によってか。そうではなく、|信仰《しんこう》の|法則《ほうそく》によってである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、こう|思《おも》う。|人《ひと》が|義《ぎ》とされるのは、|律法《りっぽう》の|行《おこな》いによるのではなく、|信仰《しんこう》によるのである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それとも、|神《かみ》はユダヤ|人《じん》だけの|神《かみ》であろうか。また、|異邦人《いほうじん》の|神《かみ》であるのではないか。|確《たし》かに、|異邦人《いほうじん》の|神《かみ》でもある。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]まことに、|神《かみ》は|唯一《ゆいいつ》であって、|割礼《かつれい》のある|者《もの》を|信仰《しんこう》によって|義《ぎ》とし、また、|無《む》|割礼《かつれい》の|者《もの》をも|信仰《しんこう》のゆえに|義《ぎ》とされるのである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]すると、|信仰《しんこう》のゆえに、わたしたちは|律法《りっぽう》を|無効《むこう》にするのであるか。|断《だん》じてそうではない。かえって、それによって|律法《りっぽう》を|確立《かくりつ》するのである。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]それでは、|肉《にく》によるわたしたちの|先祖《せんぞ》アブラハムの|場合《ばあい》については、なんと|言《い》ったらよいか。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]もしアブラハムが、その|行《おこな》いによって|義《ぎ》とされたのであれば、|彼《かれ》は|誇《ほこ》ることができよう。しかし、|神《かみ》のみまえでは、できない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|聖書《せいしょ》はなんと|言《い》っているか、「アブラハムは|神《かみ》を|信《しん》じた。それによって、|彼《かれ》は|義《ぎ》と|認《みと》められた」とある。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|働《はたら》く|人《ひと》に|対《たい》する|報酬《ほうしゅう》は、|恩恵《おんけい》としてではなく、|当然《とうぜん》の|支払《しはら》いとして|認《みと》められる。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|働《はたら》きはなくても、|不信心《ふしんじん》な|者《もの》を|義《ぎ》とするかたを|信《しん》じる|人《ひと》は、その|信仰《しんこう》が|義《ぎ》と|認《みと》められるのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ダビデもまた、|行《おこな》いがなくても|神《かみ》に|義《ぎ》と|認《みと》められた|人《ひと》の|幸福《こうふく》について、|次《つぎ》のように|言《い》っている、 [#ここから2字下げ] [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]「|不法《ふほう》をゆるされ、|罪《つみ》をおおわれた|人《ひと》たちは、 さいわいである。 [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|罪《つみ》を|主《しゅ》に|認《みと》められない|人《ひと》は、さいわいである」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]さて、この|幸福《こうふく》は、|割礼《かつれい》の|者《もの》だけが|受《う》けるのか。それとも、|無《む》|割礼《かつれい》の|者《もの》にも|及《およ》ぶのか。わたしたちは|言《い》う、「アブラハムには、その|信仰《しんこう》が|義《ぎ》と|認《みと》められた」のである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それでは、どういう|場合《ばあい》にそう|認《みと》められたのか。|割礼《かつれい》を|受《う》けてからか、それとも|受《う》ける|前《まえ》か。|割礼《かつれい》を|受《う》けてからではなく、|無《む》|割礼《かつれい》の|時《とき》であった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そして、アブラハムは|割礼《かつれい》というしるしを|受《う》けたが、それは、|無《む》|割礼《かつれい》のままで|信仰《しんこう》によって|受《う》けた|義《ぎ》の|証印《しょういん》であって、|彼《かれ》が、|無《む》|割礼《かつれい》のままで|信《しん》じて|義《ぎ》とされるに|至《いた》るすべての|人《ひと》の|父《ちち》となり、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]かつ、|割礼《かつれい》の|者《もの》の|父《ちち》となるためなのである。|割礼《かつれい》の|者《もの》というのは、|割礼《かつれい》を|受《う》けた|者《もの》ばかりではなく、われらの|父《ちち》アブラハムが|無《む》|割礼《かつれい》の|時《とき》に|持《も》っていた|信仰《しんこう》の|足跡《あしあと》を|踏《ふ》む|人々《ひとびと》をもさすのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|世界《せかい》を|相続《そうぞく》させるとの|約束《やくそく》が、アブラハムとその|子孫《しそん》とに|対《たい》してなされたのは、|律法《りっぽう》によるのではなく、|信仰《しんこう》の|義《ぎ》によるからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]もし、|律法《りっぽう》に|立《た》つ|人々《ひとびと》が|相続人《そうぞくにん》であるとすれば、|信仰《しんこう》はむなしくなり、|約束《やくそく》もまた|無効《むこう》になってしまう。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|律法《りっぽう》は|怒《いか》りを|招《まね》くものであって、|律法《りっぽう》のないところには|違反《いはん》なるものはない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]このようなわけで、すべては|信仰《しんこう》によるのである。それは|恵《めぐ》みによるのであって、すべての|子孫《しそん》に、すなわち、|律法《りっぽう》に|立《た》つ|者《もの》だけにではなく、アブラハムの|信仰《しんこう》に|従《したが》う|者《もの》にも、この|約束《やくそく》が|保証《ほしょう》されるのである。アブラハムは、|神《かみ》の|前《まえ》で、わたしたちすべての|者《もの》の|父《ちち》であって、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]「わたしは、あなたを|立《た》てて|多《おお》くの|国民《こくみん》の|父《ちち》とした」と|書《か》いてあるとおりである。|彼《かれ》はこの|神《かみ》、すなわち、|死人《しにん》を|生《い》かし、|無《む》から|有《ゆう》を|呼《よ》び|出《だ》される|神《かみ》を|信《しん》じたのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|望《のぞ》み|得《え》ないのに、なおも|望《のぞ》みつつ|信《しん》じた。そのために、「あなたの|子孫《しそん》はこうなるであろう」と|言《い》われているとおり、|多《おお》くの|国民《こくみん》の|父《ちち》となったのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、およそ百|歳《さい》となって、|彼《かれ》|自身《じしん》のからだが|死《し》んだ|状態《じょうたい》であり、また、サラの|胎《たい》が|不妊《ふにん》であるのを|認《みと》めながらも、なお|彼《かれ》の|信仰《しんこう》は|弱《よわ》らなかった。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、|神《かみ》の|約束《やくそく》を|不《ふ》|信仰《しんこう》のゆえに|疑《うたが》うようなことはせず、かえって|信仰《しんこう》によって|強《つよ》められ、|栄光《えいこう》を|神《かみ》に|帰《き》し、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はその|約束《やくそく》されたことを、また|成就《じょうじゅ》することができると|確信《かくしん》した。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]だから、|彼《かれ》は|義《ぎ》と|認《みと》められたのである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかし「|義《ぎ》と|認《みと》められた」と|書《か》いてあるのは、アブラハムのためだけではなく、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちのためでもあって、わたしたちの|主《しゅ》イエスを|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせたかたを|信《しん》じるわたしたちも、|義《ぎ》と|認《みと》められるのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は、わたしたちの|罪過《ざいか》のために|死《し》に|渡《わた》され、わたしたちが|義《ぎ》とされるために、よみがえらされたのである。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]このように、わたしたちは、|信仰《しんこう》によって|義《ぎ》とされたのだから、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストにより、|神《かみ》に|対《たい》して|平和《へいわ》を|得《え》ている。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、さらに|彼《かれ》により、いま|立《た》っているこの|恵《めぐ》みに|信仰《しんこう》によって|導《みちび》き|入《い》れられ、そして、|神《かみ》の|栄光《えいこう》にあずかる|希望《きぼう》をもって|喜《よろこ》んでいる。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]それだけではなく、|患難《かんなん》をも|喜《よろこ》んでいる。なぜなら、|患難《かんなん》は|忍耐《にんたい》を|生《う》み|出《だ》し、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|忍耐《にんたい》は|錬達《れんたつ》を|生《う》み|出《だ》し、|錬達《れんたつ》は|希望《きぼう》を|生《う》み|出《だ》すことを、|知《し》っているからである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そして、|希望《きぼう》は|失望《しつぼう》に|終《おわ》ることはない。なぜなら、わたしたちに|賜《たま》わっている|聖霊《せいれい》によって、|神《かみ》の|愛《あい》がわたしたちの|心《こころ》に|注《そそ》がれているからである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちがまだ|弱《よわ》かったころ、キリストは、|時《とき》いたって、|不信心《ふしんじん》な|者《もの》たちのために|死《し》んで|下《くだ》さったのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|正《ただ》しい|人《ひと》のために|死《し》ぬ|者《もの》は、ほとんどいないであろう。|善人《ぜんにん》のためには、|進《すす》んで|死《し》ぬ|者《もの》もあるいはいるであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、まだ|罪人《つみびと》であった|時《とき》、わたしたちのためにキリストが|死《し》んで|下《くだ》さったことによって、|神《かみ》はわたしたちに|対《たい》する|愛《あい》を|示《しめ》されたのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、キリストの|血《ち》によって|今《いま》は|義《ぎ》とされているのだから、なおさら、|彼《かれ》によって|神《かみ》の|怒《いか》りから|救《すく》われるであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]もし、わたしたちが|敵《てき》であった|時《とき》でさえ、|御子《みこ》の|死《し》によって|神《かみ》との|和解《わかい》を|受《う》けたとすれば、|和解《わかい》を|受《う》けている|今《いま》は、なおさら、|彼《かれ》のいのちによって|救《すく》われるであろう。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そればかりではなく、わたしたちは、|今《いま》や|和解《わかい》を|得《え》させて|下《くだ》さったわたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストによって、|神《かみ》を|喜《よろこ》ぶのである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]このようなわけで、ひとりの|人《ひと》によって、|罪《つみ》がこの|世《よ》にはいり、また|罪《つみ》によって|死《し》がはいってきたように、こうして、すべての|人《ひと》が|罪《つみ》を|犯《おか》したので、|死《し》が|全《ぜん》|人類《じんるい》にはいり|込《こ》んだのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|律法《りっぽう》|以前《いぜん》にも|罪《つみ》は|世《よ》にあったが、|律法《りっぽう》がなければ、|罪《つみ》は|罪《つみ》として|認《みと》められないのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、アダムからモーセまでの|間《あいだ》においても、アダムの|違反《いはん》と|同《おな》じような|罪《つみ》を|犯《おか》さなかった|者《もの》も、|死《し》の|支配《しはい》を|免《まぬが》れなかった。このアダムは、きたるべき|者《もの》の|型《かた》である。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|恵《めぐ》みの|賜物《たまもの》は|罪過《ざいか》の|場合《ばあい》とは|異《こと》なっている。すなわち、もしひとりの|罪過《ざいか》のために|多《おお》くの|人《ひと》が|死《し》んだとすれば、まして、|神《かみ》の|恵《めぐ》みと、ひとりの|人《ひと》イエス・キリストの|恵《めぐ》みによる|賜物《たまもの》とは、さらに|豊《ゆた》かに|多《おお》くの|人々《ひとびと》に|満《み》ちあふれたはずではないか。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]かつ、この|賜物《たまもの》は、ひとりの|犯《おか》した|罪《つみ》の|結果《けっか》とは|異《こと》なっている。なぜなら、さばきの|場合《ばあい》は、ひとりの|罪過《ざいか》から、|罪《つみ》に|定《さだ》めることになったが、|恵《めぐ》みの|場合《ばあい》には、|多《おお》くの|人《ひと》の|罪過《ざいか》から、|義《ぎ》とする|結果《けっか》になるからである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]もし、ひとりの|罪過《ざいか》によって、そのひとりをとおして|死《し》が|支配《しはい》するに|至《いた》ったとすれば、まして、あふれるばかりの|恵《めぐ》みと|義《ぎ》の|賜物《たまもの》とを|受《う》けている|者《もの》たちは、ひとりのイエス・キリストをとおし、いのちにあって、さらに|力強《ちからづよ》く|支配《しはい》するはずではないか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]このようなわけで、ひとりの|罪過《ざいか》によってすべての|人《ひと》が|罪《つみ》に|定《さだ》められたように、ひとりの|義《ぎ》なる|行為《こうい》によって、いのちを|得《え》させる|義《ぎ》がすべての|人《ひと》に|及《およ》ぶのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、ひとりの|人《ひと》の|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》によって、|多《おお》くの|人《ひと》が|罪人《つみびと》とされたと|同《おな》じように、ひとりの|従順《じゅうじゅん》によって、|多《おお》くの|人《ひと》が|義人《ぎじん》とされるのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》がはいり|込《こ》んできたのは、|罪過《ざいか》の|増《ま》し|加《くわ》わるためである。しかし、|罪《つみ》の|増《ま》し|加《くわ》わったところには、|恵《めぐ》みもますます|満《み》ちあふれた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]それは、|罪《つみ》が|死《し》によって|支配《しはい》するに|至《いた》ったように、|恵《めぐ》みもまた|義《ぎ》によって|支配《しはい》し、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストにより、|永遠《えいえん》のいのちを|得《え》させるためである。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]では、わたしたちは、なんと|言《い》おうか。|恵《めぐ》みが|増《ま》し|加《くわ》わるために、|罪《つみ》にとどまるべきであろうか。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|断《だん》じてそうではない。|罪《つみ》に|対《たい》して|死《し》んだわたしたちが、どうして、なお、その|中《なか》に|生《い》きておれるだろうか。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]それとも、あなたがたは|知《し》らないのか。キリスト・イエスにあずかるバプテスマを|受《う》けたわたしたちは、|彼《かれ》の|死《し》にあずかるバプテスマを|受《う》けたのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、わたしたちは、その|死《し》にあずかるバプテスマによって、|彼《かれ》と|共《とも》に|葬《ほうむ》られたのである。それは、キリストが|父《ちち》の|栄光《えいこう》によって、|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらされたように、わたしたちもまた、|新《あたら》しいいのちに|生《い》きるためである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしたちが、|彼《かれ》に|結《むす》びついてその|死《し》の|様《さま》にひとしくなるなら、さらに、|彼《かれ》の|復活《ふっかつ》の|様《さま》にもひとしくなるであろう。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、この|事《こと》を|知《し》っている。わたしたちの|内《うち》の|古《ふる》き|人《ひと》はキリストと|共《とも》に|十字架《じゅうじか》につけられた。それは、この|罪《つみ》のからだが|滅《ほろ》び、わたしたちがもはや、|罪《つみ》の|奴隷《どれい》となることがないためである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それは、すでに|死《し》んだ|者《もの》は、|罪《つみ》から|解放《かいほう》されているからである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしたちが、キリストと|共《とも》に|死《し》んだなら、また|彼《かれ》と|共《とも》に|生《い》きることを|信《しん》じる。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]キリストは|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらされて、もはや|死《し》ぬことがなく、|死《し》はもはや|彼《かれ》を|支配《しはい》しないことを、|知《し》っているからである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、キリストが|死《し》んだのは、ただ一|度《ど》|罪《つみ》に|対《たい》して|死《し》んだのであり、キリストが|生《い》きるのは、|神《かみ》に|生《い》きるのだからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]このように、あなたがた|自身《じしん》も、|罪《つみ》に|対《たい》して|死《し》んだ|者《もの》であり、キリスト・イエスにあって|神《かみ》に|生《い》きている|者《もの》であることを、|認《みと》むべきである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたの|死《し》ぬべきからだを|罪《つみ》の|支配《しはい》にゆだねて、その|情欲《じょうよく》に|従《したが》わせることをせず、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがたの|肢体《したい》を|不義《ふぎ》の|武器《ぶき》として|罪《つみ》にささげてはならない。むしろ、|死人《しにん》の|中《なか》から|生《い》かされた|者《もの》として、|自分《じぶん》|自身《じしん》を|神《かみ》にささげ、|自分《じぶん》の|肢体《したい》を|義《ぎ》の|武器《ぶき》として|神《かみ》にささげるがよい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、あなたがたは|律法《りっぽう》の|下《もと》にあるのではなく、|恵《めぐ》みの|下《もと》にあるので、|罪《つみ》に|支配《しはい》されることはないからである。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それでは、どうなのか。|律法《りっぽう》の|下《もと》にではなく、|恵《めぐ》みの|下《もと》にあるからといって、わたしたちは|罪《つみ》を|犯《おか》すべきであろうか。|断《だん》じてそうではない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|知《し》らないのか。あなたがた|自身《じしん》が、だれかの|僕《しもべ》になって|服従《ふくじゅう》するなら、あなたがたは|自分《じぶん》の|服従《ふくじゅう》するその|者《もの》の|僕《しもべ》であって、|死《し》に|至《いた》る|罪《つみ》の|僕《しもべ》ともなり、あるいは、|義《ぎ》にいたる|従順《じゅうじゅん》の|僕《しもべ》ともなるのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|神《かみ》は|感謝《かんしゃ》すべきかな。あなたがたは|罪《つみ》の|僕《しもべ》であったが、|伝《つた》えられた|教《おしえ》の|基準《きじゅん》に|心《こころ》から|服従《ふくじゅう》して、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|罪《つみ》から|解放《かいほう》され、|義《ぎ》の|僕《しもべ》となった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|人間《にんげん》|的《てき》な|言《い》い|方《かた》をするが、それは、あなたがたの|肉《にく》の|弱《よわ》さのゆえである。あなたがたは、かつて|自分《じぶん》の|肢体《したい》を|汚《けが》れと|不法《ふほう》との|僕《しもべ》としてささげて|不法《ふほう》に|陥《おちい》ったように、|今《いま》や|自分《じぶん》の|肢体《したい》を|義《ぎ》の|僕《しもべ》としてささげて、きよくならねばならない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|罪《つみ》の|僕《しもべ》であった|時《とき》は、|義《ぎ》とは|縁《えん》のない|者《もの》であった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》あなたがたは、どんな|実《み》を|結《むす》んだのか。それは、|今《いま》では|恥《はじ》とするようなものであった。それらのものの|終極《しゅうきょく》は、|死《し》である。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし|今《いま》や、あなたがたは|罪《つみ》から|解放《かいほう》されて|神《かみ》に|仕《つか》え、きよきに|至《いた》る|実《み》を|結《むす》んでいる。その|終極《しゅうきょく》は|永遠《えいえん》のいのちである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|罪《つみ》の|支払《しはら》う|報酬《ほうしゅう》は|死《し》である。しかし|神《かみ》の|賜物《たまもの》は、わたしたちの|主《しゅ》キリスト・イエスにおける|永遠《えいえん》のいのちである。 第七章[#「第七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]それとも、|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたは|知《し》らないのか。わたしは|律法《りっぽう》を|知《し》っている|人々《ひとびと》に|語《かた》るのであるが、|律法《りっぽう》は|人《ひと》をその|生《い》きている|期間《きかん》だけ|支配《しはい》するものである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|夫《おっと》のある|女《おんな》は、|夫《おっと》が|生《い》きている|間《あいだ》は、|律法《りっぽう》によって|彼《かれ》につながれている。しかし、|夫《おっと》が|死《し》ねば、|夫《おっと》の|律法《りっぽう》から|解放《かいほう》される。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]であるから、|夫《おっと》の|生存《せいぞん》|中《ちゅう》に|他《た》の|男《おとこ》に|行《い》けば、その|女《おんな》は|淫婦《いんぷ》と|呼《よ》ばれるが、もし|夫《おっと》が|死《し》ねば、その|律法《りっぽう》から|解《と》かれるので、|他《た》の|男《おとこ》に|行《い》っても、|淫婦《いんぷ》とはならない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。このように、あなたがたも、キリストのからだをとおして、|律法《りっぽう》に|対《たい》して|死《し》んだのである。それは、あなたがたが|他《た》の|人《ひと》、すなわち、|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえられたかたのものとなり、こうして、わたしたちが|神《かみ》のために|実《み》を|結《むす》ぶに|至《いた》るためなのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]というのは、わたしたちが|肉《にく》にあった|時《とき》には、|律法《りっぽう》による|罪《つみ》の|欲情《よくじょう》が、|死《し》のために|実《み》を|結《むす》ばせようとして、わたしたちの|肢体《したい》のうちに|働《はたら》いていた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし|今《いま》は、わたしたちをつないでいたものに|対《たい》して|死《し》んだので、わたしたちは|律法《りっぽう》から|解放《かいほう》され、その|結果《けっか》、|古《ふる》い|文字《もんじ》によってではなく、|新《あたら》しい|霊《れい》によって|仕《つか》えているのである。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それでは、わたしたちは、なんと|言《い》おうか。|律法《りっぽう》は|罪《つみ》なのか。|断《だん》じてそうではない。しかし、|律法《りっぽう》によらなければ、わたしは|罪《つみ》を|知《し》らなかったであろう。すなわち、もし|律法《りっぽう》が「むさぼるな」と|言《い》わなかったら、わたしはむさぼりなるものを|知《し》らなかったであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかるに、|罪《つみ》は|戒《いまし》めによって|機会《きかい》を|捕《とら》え、わたしの|内《うち》に|働《はたら》いて、あらゆるむさぼりを|起《おこ》させた。すなわち、|律法《りっぽう》がなかったら、|罪《つみ》は|死《し》んでいるのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしはかつては、|律法《りっぽう》なしに|生《い》きていたが、|戒《いまし》めが|来《く》るに|及《およ》んで、|罪《つみ》は|生《い》き|返《かえ》り、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|死《し》んだ。そして、いのちに|導《みちび》くべき|戒《いまし》めそのものが、かえってわたしを|死《し》に|導《みちび》いて|行《い》くことがわかった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|罪《つみ》は|戒《いまし》めによって|機会《きかい》を|捕《とら》え、わたしを|欺《あざむ》き、|戒《いまし》めによってわたしを|殺《ころ》したからである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]このようなわけで、|律法《りっぽう》そのものは|聖《せい》なるものであり、|戒《いまし》めも|聖《せい》であって、|正《ただ》しく、かつ|善《ぜん》なるものである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]では、|善《ぜん》なるものが、わたしにとって|死《し》となったのか。|断《だん》じてそうではない。それはむしろ、|罪《つみ》の|罪《つみ》たることが|現《あらわ》れるための、|罪《つみ》のしわざである。すなわち、|罪《つみ》は、|戒《いまし》めによって、はなはだしく|悪性《あくせい》なものとなるために、|善《ぜん》なるものによってわたしを|死《し》に|至《いた》らせたのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|律法《りっぽう》は|霊的《れいてき》なものであると|知《し》っている。しかし、わたしは|肉《にく》につける|者《もの》であって、|罪《つみ》の|下《もと》に|売《う》られているのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|自分《じぶん》のしていることが、わからない。なぜなら、わたしは|自分《じぶん》の|欲《ほっ》する|事《こと》は|行《おこな》わず、かえって|自分《じぶん》の|憎《にく》む|事《こと》をしているからである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]もし、|自分《じぶん》の|欲《ほっ》しない|事《こと》をしているとすれば、わたしは|律法《りっぽう》が|良《よ》いものであることを|承認《しょうにん》していることになる。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、この|事《こと》をしているのは、もはやわたしではなく、わたしの|内《うち》に|宿《やど》っている|罪《つみ》である。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|内《うち》に、すなわち、わたしの|肉《にく》の|内《うち》には、|善《ぜん》なるものが|宿《やど》っていないことを、わたしは|知《し》っている。なぜなら、|善《ぜん》をしようとする|意志《いし》は、|自分《じぶん》にあるが、それをする|力《ちから》がないからである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、わたしの|欲《ほっ》している|善《ぜん》はしないで、|欲《ほっ》していない|悪《あく》は、これを|行《おこな》っている。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]もし、|欲《ほっ》しないことをしているとすれば、それをしているのは、もはやわたしではなく、わたしの|内《うち》に|宿《やど》っている|罪《つみ》である。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|善《ぜん》をしようと|欲《ほっ》しているわたしに、|悪《あく》がはいり|込《こ》んでいるという|法則《ほうそく》があるのを|見《み》る。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、わたしは、|内《うち》なる|人《ひと》としては|神《かみ》の|律法《りっぽう》を|喜《よろこ》んでいるが、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|肢体《したい》には|別《べつ》の|律法《りっぽう》があって、わたしの|心《こころ》の|法則《ほうそく》に|対《たい》して|戦《たたか》いをいどみ、そして、|肢体《したい》に|存在《そんざい》する|罪《つみ》の|法則《ほうそく》の|中《なか》に、わたしをとりこにしているのを|見《み》る。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、なんというみじめな|人間《にんげん》なのだろう。だれが、この|死《し》のからだから、わたしを|救《すく》ってくれるだろうか。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストによって、|神《かみ》は|感謝《かんしゃ》すべきかな。このようにして、わたし|自身《じしん》は、|心《こころ》では|神《かみ》の|律法《りっぽう》に|仕《つか》えているが、|肉《にく》では|罪《つみ》の|律法《りっぽう》に|仕《つか》えているのである。 第八章[#「第八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、|今《いま》やキリスト・イエスにある|者《もの》は|罪《つみ》に|定《さだ》められることがない。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、キリスト・イエスにあるいのちの|御霊《みたま》の|法則《ほうそく》は、|罪《つみ》と|死《し》との|法則《ほうそく》からあなたを|解放《かいほう》したからである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》が|肉《にく》により|無力《むりょく》になっているためになし|得《え》なかった|事《こと》を、|神《かみ》はなし|遂《と》げて|下《くだ》さった。すなわち、|御子《みこ》を、|罪《つみ》の|肉《にく》の|様《さま》で|罪《つみ》のためにつかわし、|肉《にく》において|罪《つみ》を|罰《ばっ》せられたのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]これは|律法《りっぽう》の|要求《ようきゅう》が、|肉《にく》によらず|霊《れい》によって|歩《ある》くわたしたちにおいて、|満《み》たされるためである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|肉《にく》に|従《したが》う|者《もの》は|肉《にく》のことを|思《おも》い、|霊《れい》に|従《したが》う|者《もの》は|霊《れい》のことを|思《おも》うからである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|肉《にく》の|思《おも》いは|死《し》であるが、|霊《れい》の|思《おも》いは、いのちと|平安《へいあん》とである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|肉《にく》の|思《おも》いは|神《かみ》に|敵《てき》するからである。すなわち、それは|神《かみ》の|律法《りっぽう》に|従《したが》わず、|否《いな》、|従《したが》い|得《え》ないのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]また、|肉《にく》にある|者《もの》は、|神《かみ》を|喜《よろこ》ばせることができない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|神《かみ》の|御霊《みたま》があなたがたの|内《うち》に|宿《やど》っているなら、あなたがたは|肉《にく》におるのではなく、|霊《れい》におるのである。もし、キリストの|霊《れい》を|持《も》たない|人《ひと》がいるなら、その|人《ひと》はキリストのものではない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]もし、キリストがあなたがたの|内《うち》におられるなら、からだは|罪《つみ》のゆえに|死《し》んでいても、|霊《れい》は|義《ぎ》のゆえに|生《い》きているのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]もし、イエスを|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせたかたの|御霊《みたま》が、あなたがたの|内《うち》に|宿《やど》っているなら、キリスト・イエスを|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせたかたは、あなたがたの|内《うち》に|宿《やど》っている|御霊《みたま》によって、あなたがたの|死《し》ぬべきからだをも、|生《い》かしてくださるであろう。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それゆえに、|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちは、|果《はた》すべき|責任《せきにん》を|負《お》っている|者《もの》であるが、|肉《にく》に|従《したが》って|生《い》きる|責任《せきにん》を|肉《にく》に|対《たい》して|負《お》っているのではない。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、もし、|肉《にく》に|従《したが》って|生《い》きるなら、あなたがたは|死《し》ぬ|外《ほか》はないからである。しかし、|霊《れい》によってからだの|働《はたら》きを|殺《ころ》すなら、あなたがたは|生《い》きるであろう。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]すべて|神《かみ》の|御霊《みたま》に|導《みちび》かれている|者《もの》は、すなわち、|神《かみ》の|子《こ》である。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|再《ふたた》び|恐《おそ》れをいだかせる|奴隷《どれい》の|霊《れい》を|受《う》けたのではなく、|子《こ》たる|身分《みぶん》を|授《さづ》ける|霊《れい》を|受《う》けたのである。その|霊《れい》によって、わたしたちは「アバ、|父《ちち》よ」と|呼《よ》ぶのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|御霊《みたま》みずから、わたしたちの|霊《れい》と|共《とも》に、わたしたちが|神《かみ》の|子《こ》であることをあかしして|下《くだ》さる。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]もし|子《こ》であれば、|相続人《そうぞくにん》でもある。|神《かみ》の|相続人《そうぞくにん》であって、キリストと|栄光《えいこう》を|共《とも》にするために|苦難《くなん》をも|共《とも》にしている|以上《いじょう》、キリストと|共同《きょうどう》の|相続人《そうぞくにん》なのである。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|思《おも》う。|今《いま》のこの|時《とき》の|苦《くる》しみは、やがてわたしたちに|現《あらわ》されようとする|栄光《えいこう》に|比《くら》べると、|言《い》うに|足《た》りない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|被《ひ》|造物《ぞうぶつ》は、|実《じつ》に、|切《せつ》なる|思《おも》いで|神《かみ》の|子《こ》たちの|出現《しゅつげん》を|待《ま》ち|望《のぞ》んでいる。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|被《ひ》|造物《ぞうぶつ》が|虚無《きょむ》に|服《ふく》したのは、|自分《じぶん》の|意志《いし》によるのではなく、|服従《ふくじゅう》させたかたによるのであり、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]かつ、|被《ひ》|造物《ぞうぶつ》|自身《じしん》にも、|滅《ほろ》びのなわめから|解放《かいほう》されて、|神《かみ》の|子《こ》たちの|栄光《えいこう》の|自由《じゆう》に|入《はい》る|望《のぞ》みが|残《のこ》されているからである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|実《じつ》に、|被《ひ》|造物《ぞうぶつ》|全体《ぜんたい》が、|今《いま》に|至《いた》るまで、|共《とも》にうめき|共《とも》に|産《う》みの|苦《くる》しみを|続《つづ》けていることを、わたしたちは|知《し》っている。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]それだけではなく、|御霊《みたま》の|最初《さいしょ》の|実《み》を|持《も》っているわたしたち|自身《じしん》も、|心《こころ》の|内《うち》でうめきながら、|子《こ》たる|身分《みぶん》を|授《さづ》けられること、すなわち、からだのあがなわれることを|待《ま》ち|望《のぞ》んでいる。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、この|望《のぞ》みによって|救《すく》われているのである。しかし、|目《め》に|見《み》える|望《のぞ》みは|望《のぞ》みではない。なぜなら、|現《げん》に|見《み》ている|事《こと》を、どうして、なお|望《のぞ》む|人《ひと》があろうか。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]もし、わたしたちが|見《み》ないことを|望《のぞ》むなら、わたしたちは|忍耐《にんたい》して、それを|待《ま》ち|望《のぞ》むのである。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|御霊《みたま》もまた|同《おな》じように、|弱《よわ》いわたしたちを|助《たす》けて|下《くだ》さる。なぜなら、わたしたちはどう|祈《いの》ったらよいかわからないが、|御霊《みたま》みずから、|言葉《ことば》にあらわせない|切《せつ》なるうめきをもって、わたしたちのためにとりなして|下《くだ》さるからである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そして、|人《ひと》の|心《こころ》を|探《さぐ》り|知《し》るかたは、|御霊《みたま》の|思《おも》うところがなんであるかを|知《し》っておられる。なぜなら、|御霊《みたま》は、|聖徒《せいと》のために、|神《かみ》の|御旨《みむね》にかなうとりなしをして|下《くだ》さるからである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、|神《かみ》を|愛《あい》する|者《もの》たち、すなわち、ご|計画《けいかく》に|従《したが》って|召《め》された|者《もの》たちと|共《とも》に|働《はたら》いて、|万事《ばんじ》を|益《えき》となるようにして|下《くだ》さることを、わたしたちは|知《し》っている。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はあらかじめ|知《し》っておられる|者《もの》たちを、|更《さら》に|御子《みこ》のかたちに|似《に》たものとしようとして、あらかじめ|定《さだ》めて|下《くだ》さった。それは、|御子《みこ》を|多《おお》くの|兄弟《きょうだい》の|中《なか》で|長子《ちょうし》とならせるためであった。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、あらかじめ|定《さだ》めた|者《もの》たちを|更《さら》に|召《め》し、|召《め》した|者《もの》たちを|更《さら》に|義《ぎ》とし、|義《ぎ》とした|者《もの》たちには、|更《さら》に|栄光《えいこう》を|与《あた》えて|下《くだ》さったのである。  [#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]それでは、これらの|事《こと》について、なんと|言《い》おうか。もし、|神《かみ》がわたしたちの|味方《みかた》であるなら、だれがわたしたちに|敵《てき》し|得《え》ようか。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ご|自身《じしん》の|御子《みこ》をさえ|惜《お》しまないで、わたしたちすべての|者《もの》のために|死《し》に|渡《わた》されたかたが、どうして、|御子《みこ》のみならず|万物《ばんぶつ》をも|賜《たま》わらないことがあろうか。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]だれが、|神《かみ》の|選《えら》ばれた|者《もの》たちを|訴《うった》えるのか。|神《かみ》は|彼《かれ》らを|義《ぎ》とされるのである。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]だれが、わたしたちを|罪《つみ》に|定《さだ》めるのか。キリスト・イエスは、|死《し》んで、|否《いな》、よみがえって、|神《かみ》の|右《みぎ》に|座《ざ》し、また、わたしたちのためにとりなして|下《くだ》さるのである。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]だれが、キリストの|愛《あい》からわたしたちを|離《はな》れさせるのか。|患難《かんなん》か、|苦悩《くのう》か、|迫害《はくがい》か、|飢《う》えか、|裸《はだか》か、|危難《きなん》か、|剣《つるぎ》か。 [#ここから2字下げ] [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]「わたしたちはあなたのために|終日《しゅうじつ》、 |死《し》に|定《さだ》められており、 ほふられる|羊《ひつじ》のように|見《み》られている」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるとおりである。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしたちを|愛《あい》して|下《くだ》さったかたによって、わたしたちは、これらすべての|事《こと》において|勝《か》ち|得《え》て|余《あま》りがある。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|確信《かくしん》する。|死《し》も|生《せい》も、|天使《てんし》も|支配者《しはいしゃ》も、|現在《げんざい》のものも|将来《しょうらい》のものも、|力《ちから》あるものも、[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|高《たか》いものも|深《ふか》いものも、その|他《た》どんな|被《ひ》|造物《ぞうぶつ》も、わたしたちの|主《しゅ》キリスト・イエスにおける|神《かみ》の|愛《あい》から、わたしたちを|引《ひ》き|離《はな》すことはできないのである。 第九章[#「第九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしはキリストにあって|真実《しんじつ》を|語《かた》る。|偽《いつわ》りは|言《い》わない。わたしの|良心《りょうしん》も|聖霊《せいれい》によって、わたしにこうあかしをしている。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、わたしに|大《おお》きな|悲《かな》しみがあり、わたしの|心《こころ》に|絶《た》えざる|痛《いた》みがある。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|実際《じっさい》、わたしの|兄弟《きょうだい》、|肉《にく》による|同族《どうぞく》のためなら、わたしのこの|身《み》がのろわれて、キリストから|離《はな》されてもいとわない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはイスラエル|人《びと》であって、|子《こ》たる|身分《みぶん》を|授《さづ》けられることも、|栄光《えいこう》も、もろもろの|契約《けいやく》も、|律法《りっぽう》を|授《さづ》けられることも、|礼拝《れいはい》も、|数々《かずかず》の|約束《やくそく》も|彼《かれ》らのもの、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また|父祖《ふそ》たちも|彼《かれ》らのものであり、|肉《にく》によればキリストもまた|彼《かれ》らから|出《で》られたのである。|万物《ばんぶつ》の|上《うえ》にいます|神《かみ》は、|永遠《えいえん》にほむべきかな、アァメン。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|神《かみ》の|言《ことば》が|無効《むこう》になったというわけではない。なぜなら、イスラエルから|出《で》た|者《もの》が|全部《ぜんぶ》イスラエルなのではなく、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]また、アブラハムの|子孫《しそん》だからといって、その|全部《ぜんぶ》が|子《こ》であるのではないからである。かえって「イサクから|出《で》る|者《もの》が、あなたの|子孫《しそん》と|呼《よ》ばれるであろう」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|肉《にく》の|子《こ》がそのまま|神《かみ》の|子《こ》なのではなく、むしろ|約束《やくそく》の|子《こ》が|子孫《しそん》として|認《みと》められるのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|約束《やくそく》の|言葉《ことば》はこうである。「|来年《らいねん》の|今《いま》ごろ、わたしはまた|来《く》る。そして、サラに|男子《だんし》が|与《あた》えられるであろう」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そればかりではなく、ひとりの|人《ひと》、すなわち、わたしたちの|父祖《ふそ》イサクによって|受胎《じゅたい》したリベカの|場合《ばあい》も、また|同様《どうよう》である。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]まだ|子供《こども》らが|生《うま》れもせず、|善《ぜん》も|悪《あく》もしない|先《さき》に、|神《かみ》の|選《えら》びの|計画《けいかく》が、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わざによらず、|召《め》したかたによって|行《おこな》われるために、「|兄《あに》は|弟《おとうと》に|仕《つか》えるであろう」と、|彼女《かのじょ》に|仰《おお》せられたのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]「わたしはヤコブを|愛《あい》しエサウを|憎《にく》んだ」と|書《か》いてあるとおりである。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]では、わたしたちはなんと|言《い》おうか。|神《かみ》の|側《がわ》に|不正《ふせい》があるのか。|断《だん》じてそうではない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はモーセに|言《い》われた、「わたしは|自分《じぶん》のあわれもうとする|者《もの》をあわれみ、いつくしもうとする|者《もの》を、いつくしむ」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]ゆえに、それは|人間《にんげん》の|意志《いし》や|努力《どりょく》によるのではなく、ただ|神《かみ》のあわれみによるのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》はパロにこう|言《い》っている、「わたしがあなたを|立《た》てたのは、この|事《こと》のためである。すなわち、あなたによってわたしの|力《ちから》をあらわし、また、わたしの|名《な》が|全《ぜん》|世界《せかい》に|言《い》いひろめられるためである」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]だから、|神《かみ》はそのあわれもうと|思《おも》う|者《もの》をあわれみ、かたくなにしようと|思《おも》う|者《もの》を、かたくなになさるのである。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたは|言《い》うであろう、「なぜ|神《かみ》は、なおも|人《ひと》を|責《せ》められるのか。だれが、|神《かみ》の|意図《いと》に|逆《さか》らい|得《え》ようか」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ああ|人《ひと》よ。あなたは、|神《かみ》に|言《い》い|逆《さか》らうとは、いったい、|何者《なにもの》なのか。|造《つく》られたものが|造《つく》った|者《もの》に|向《む》かって、「なぜ、わたしをこのように|造《つく》ったのか」と|言《い》うことがあろうか。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|陶器《とうき》を|造《つく》る|者《もの》は、|同《おな》じ|土《つち》くれから、一つを|尊《たっと》い|器《うつわ》に、|他《ほか》を|卑《いや》しい|器《うつわ》に|造《つく》りあげる|権能《けんのう》がないのであろうか。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]もし、|神《かみ》が|怒《いか》りをあらわし、かつ、ご|自身《じしん》の|力《ちから》を|知《し》らせようと|思《おも》われつつも、|滅《ほろ》びることになっている|怒《いか》りの|器《うつわ》を、|大《おお》いなる|寛容《かんよう》をもって|忍《しの》ばれたとすれば、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]かつ、|栄光《えいこう》にあずからせるために、あらかじめ|用意《ようい》されたあわれみの|器《うつわ》にご|自身《じしん》の|栄光《えいこう》の|富《とみ》を|知《し》らせようとされたとすれば、どうであろうか。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、このあわれみの|器《うつわ》として、またわたしたちをも、ユダヤ|人《じん》の|中《なか》からだけではなく、|異邦人《いほうじん》の|中《なか》からも|召《め》されたのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]それは、ホセアの|書《しょ》でも|言《い》われているとおりである、 [#ここから2字下げ] 「わたしは、わたしの|民《たみ》でない|者《もの》を、 わたしの|民《たみ》と|呼《よ》び、 |愛《あい》されなかった|者《もの》を、|愛《あい》される|者《もの》と|呼《よ》ぶであろう。 [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはわたしの|民《たみ》ではないと、 |彼《かれ》らに|言《い》ったその|場所《ばしょ》で、 |彼《かれ》らは|生《い》ける|神《かみ》の|子《こ》らであると、 |呼《よ》ばれるであろう」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]また、イザヤはイスラエルについて|叫《さけ》んでいる、 [#ここから2字下げ] 「たとい、イスラエルの|子《こ》らの|数《かず》は、 |浜《はま》の|砂《すな》のようであっても、 |救《すく》われるのは、|残《のこ》された|者《もの》だけであろう。 [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は、|御言《みことば》をきびしくまたすみやかに、 |地上《ちじょう》になしとげられるであろう」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]さらに、イザヤは|預言《よげん》した、 [#ここから2字下げ] 「もし、|万軍《ばんぐん》の|主《しゅ》がわたしたちに |子孫《しそん》を|残《のこ》されなかったなら、 わたしたちはソドムのようになり、 ゴモラと|同《おな》じようになったであろう」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]では、わたしたちはなんと|言《い》おうか。|義《ぎ》を|追《お》い|求《もと》めなかった|異邦人《いほうじん》は、|義《ぎ》、すなわち、|信仰《しんこう》による|義《ぎ》を|得《え》た。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|義《ぎ》の|律法《りっぽう》を|追《お》い|求《もと》めていたイスラエルは、その|律法《りっぽう》に|達《たっ》しなかった。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]なぜであるか。|信仰《しんこう》によらないで、|行《おこな》いによって|得《え》られるかのように、|追《お》い|求《もと》めたからである。|彼《かれ》らは、つまずきの|石《いし》につまずいたのである。 [#ここから2字下げ] [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]「|見《み》よ、わたしはシオンに、 つまずきの|石《いし》、さまたげの|岩《いわ》を|置《お》く。 それにより|頼《たの》む|者《もの》は、|失望《しつぼう》に|終《おわ》ることがない」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるとおりである。 第一〇章[#「第一〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしの|心《こころ》の|願《ねが》い、|彼《かれ》らのために|神《かみ》にささげる|祈《いのり》は、|彼《かれ》らが|救《すく》われることである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|彼《かれ》らが|神《かみ》に|対《たい》して|熱心《ねっしん》であることはあかしするが、その|熱心《ねっしん》は|深《ふか》い|知識《ちしき》によるものではない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|彼《かれ》らは|神《かみ》の|義《ぎ》を|知《し》らないで、|自分《じぶん》の|義《ぎ》を|立《た》てようと|努《つと》め、|神《かみ》の|義《ぎ》に|従《したが》わなかったからである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]キリストは、すべて|信《しん》じる|者《もの》に|義《ぎ》を|得《え》させるために、|律法《りっぽう》の|終《おわ》りとなられたのである。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]モーセは、|律法《りっぽう》による|義《ぎ》を|行《おこな》う|人《ひと》は、その|義《ぎ》によって|生《い》きる、と|書《か》いている。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|信仰《しんこう》による|義《ぎ》は、こう|言《い》っている、「あなたは|心《こころ》のうちで、だれが|天《てん》に|上《のぼ》るであろうかと|言《い》うな」。それは、キリストを|引《ひ》き|降《お》ろすことである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]また、「だれが|底《そこ》|知《し》れぬ|所《ところ》に|下《くだ》るであろうかと|言《い》うな」。それは、キリストを|死人《しにん》の|中《なか》から|引《ひ》き|上《あ》げることである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]では、なんと|言《い》っているか。「|言葉《ことば》はあなたの|近《ちか》くにある。あなたの|口《くち》にあり、|心《こころ》にある」。この|言葉《ことば》とは、わたしたちが|宣《の》べ|伝《つた》えている|信仰《しんこう》の|言葉《ことば》である。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|自分《じぶん》の|口《くち》で、イエスは|主《しゅ》であると|告白《こくはく》し、|自分《じぶん》の|心《こころ》で、|神《かみ》が|死人《しにん》の|中《なか》からイエスをよみがえらせたと|信《しん》じるなら、あなたは|救《すく》われる。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|人《ひと》は|心《こころ》に|信《しん》じて|義《ぎ》とされ、|口《くち》で|告白《こくはく》して|救《すく》われるからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》は、「すべて|彼《かれ》を|信《しん》じる|者《もの》は、|失望《しつぼう》に|終《おわ》ることがない」と|言《い》っている。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》とギリシヤ|人《じん》との|差別《さべつ》はない。|同一《どういつ》の|主《しゅ》が|万民《ばんみん》の|主《しゅ》であって、|彼《かれ》を|呼《よ》び|求《もと》めるすべての|人《ひと》を|豊《ゆた》かに|恵《めぐ》んで|下《くだ》さるからである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、「|主《しゅ》の|御名《みな》を|呼《よ》び|求《もと》める|者《もの》は、すべて|救《すく》われる」とあるからである。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|信《しん》じたことのない|者《もの》を、どうして|呼《よ》び|求《もと》めることがあろうか。|聞《き》いたことのない|者《もの》を、どうして|信《しん》じることがあろうか。|宣《の》べ|伝《つた》える|者《もの》がいなくては、どうして|聞《き》くことがあろうか。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]つかわされなくては、どうして|宣《の》べ|伝《つた》えることがあろうか。「ああ、|麗《うるわ》しいかな、|良《よ》きおとずれを|告《つ》げる|者《もの》の|足《あし》は」と|書《か》いてあるとおりである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、すべての|人《ひと》が|福音《ふくいん》に|聞《き》き|従《したが》ったのではない。イザヤは、「|主《しゅ》よ、だれがわたしたちから|聞《き》いたことを|信《しん》じましたか」と|言《い》っている。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]したがって、|信仰《しんこう》は|聞《き》くことによるのであり、|聞《き》くことはキリストの|言葉《ことば》から|来《く》るのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]しかしわたしは|言《い》う、|彼《かれ》らには|聞《きこ》えなかったのであろうか。|否《いな》、むしろ [#ここから2字下げ] 「その|声《こえ》は|全《ぜん》|地《ち》にひびきわたり、 その|言葉《ことば》は|世界《せかい》のはてにまで|及《およ》んだ」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]なお、わたしは|言《い》う、イスラエルは|知《し》らなかったのであろうか。まずモーセは|言《い》っている、 [#ここから2字下げ] 「わたしはあなたがたに、 |国民《こくみん》でない|者《もの》に|対《たい》してねたみを|起《おこ》させ、 |無知《むち》な|国民《こくみん》に|対《たい》して、 |怒《いか》りをいだかせるであろう」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]イザヤも|大胆《だいたん》に|言《い》っている、 [#ここから2字下げ] 「わたしは、わたしを|求《もと》めない|者《もの》たちに|見《み》いだされ、 わたしを|尋《たず》ねない|者《もの》に、|自分《じぶん》を|現《あらわ》した」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]そして、イスラエルについては、 [#ここから2字下げ] 「わたしは|服従《ふくじゅう》せずに|反抗《はんこう》する|民《たみ》に、 |終日《しゅうじつ》わたしの|手《て》をさし|伸《の》べていた」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》っている。 第一一章[#「第一一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしは|問《と》う、「|神《かみ》はその|民《たみ》を|捨《す》てたのであろうか」。|断《だん》じてそうではない。わたしもイスラエル|人《ひと》であり、アブラハムの|子孫《しそん》、ベニヤミン|族《ぞく》の|者《もの》である。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、あらかじめ|知《し》っておられたその|民《たみ》を、|捨《す》てることはされなかった。|聖書《せいしょ》がエリヤについてなんと|言《い》っているか、あなたがたは|知《し》らないのか。すなわち、|彼《かれ》はイスラエルを|神《かみ》に|訴《うった》えてこう|言《い》った。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》よ、|彼《かれ》らはあなたの|預言者《よげんしゃ》たちを|殺《ころ》し、あなたの|祭壇《さいだん》をこぼち、そして、わたしひとりが|取《と》り|残《のこ》されたのに、|彼《かれ》らはわたしのいのちをも|求《もと》めています」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》に|対《たい》する|御《み》|告《つ》げはなんであったか、「バアルにひざをかがめなかった七千|人《にん》を、わたしのために|残《のこ》しておいた」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それと|同《おな》じように、|今《いま》の|時《とき》にも、|恵《めぐ》みの|選《えら》びによって|残《のこ》された|者《もの》がいる。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|恵《めぐ》みによるのであれば、もはや|行《おこな》いによるのではない。そうでないと、|恵《めぐ》みはもはや|恵《めぐ》みでなくなるからである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]では、どうなるのか。イスラエルはその|追《お》い|求《もと》めているものを|得《え》ないで、ただ|選《えら》ばれた|者《もの》が、それを|得《え》た。そして、|他《た》の|者《もの》たちはかたくなになった。 [#ここから2字下げ] [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]「|神《かみ》は、|彼《かれ》らに|鈍《にぶ》い|心《こころ》と、 |見《み》えない|目《め》と、|聞《きこ》えない|耳《みみ》とを|与《あた》えて、 きょう、この|日《ひ》に|及《およ》んでいる」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるとおりである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ダビデもまた|言《い》っている、 [#ここから2字下げ] 「|彼《かれ》らの|食卓《しょくたく》は、|彼《かれ》らのわなとなれ、|網《あみ》となれ、 つまずきとなれ、|報復《ほうふく》となれ。 [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|目《め》は、くらんで|見《み》えなくなれ、 |彼《かれ》らの|背《せ》は、いつまでも|曲《まが》っておれ」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしは|問《と》う、「|彼《かれ》らがつまずいたのは、|倒《たお》れるためであったのか」。|断《だん》じてそうではない。かえって、|彼《かれ》らの|罪過《ざいか》によって、|救《すくい》が|異邦人《いほうじん》に|及《およ》び、それによってイスラエルを|奮起《ふんき》させるためである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もし、|彼《かれ》らの|罪過《ざいか》が|世《よ》の|富《とみ》となり、|彼《かれ》らの|失敗《しっぱい》が|異邦人《いほうじん》の|富《とみ》となったとすれば、まして|彼《かれ》らが|全部《ぜんぶ》|救《すく》われたなら、どんなにかすばらしいことであろう。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしは、あなたがた|異邦人《いほうじん》に|言《い》う。わたし|自身《じしん》は|異邦人《いほうじん》の|使徒《しと》なのであるから、わたしの|務《つとめ》を|光栄《こうえい》とし、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]どうにかしてわたしの|骨肉《こつにく》を|奮起《ふんき》させ、|彼《かれ》らの|幾人《いくにん》かを|救《すく》おうと|願《ねが》っている。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]もし|彼《かれ》らの|捨《す》てられたことが|世《よ》の|和解《わかい》となったとすれば、|彼《かれ》らの|受《う》けいれられることは、|死人《しにん》の|中《なか》から|生《い》き|返《かえ》ることではないか。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]もし、|麦粉《むぎこ》の|初穂《はつほ》がきよければ、そのかたまりもきよい。もし|根《ね》がきよければ、その|枝《えだ》もきよい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もしある|枝《えだ》が|切《き》り|去《さ》られて、|野生《やせい》のオリブであるあなたがそれにつがれ、オリブの|根《ね》の|豊《ゆた》かな|養分《ようぶん》にあずかっているとすれば、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたはその|枝《えだ》に|対《たい》して|誇《ほこ》ってはならない。たとえ|誇《ほこ》るとしても、あなたが|根《ね》をささえているのではなく、|根《ね》があなたをささえているのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すると、あなたは、「|枝《えだ》が|切《き》り|去《さ》られたのは、わたしがつがれるためであった」と|言《い》うであろう。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]まさに、そのとおりである。|彼《かれ》らは|不《ふ》|信仰《しんこう》のゆえに|切《き》り|去《さ》られ、あなたは|信仰《しんこう》のゆえに|立《た》っているのである。|高《たか》ぶった|思《おも》いをいだかないで、むしろ|恐《おそ》れなさい。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]もし|神《かみ》が|元木《もとき》の|枝《えだ》を|惜《お》しまなかったとすれば、あなたを|惜《お》しむようなことはないであろう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|慈愛《じあい》と|峻厳《しゅんげん》とを|見《み》よ。|神《かみ》の|峻厳《しゅんげん》は|倒《たお》れた|者《もの》たちに|向《む》けられ、|神《かみ》の|慈愛《じあい》は、もしあなたがその|慈愛《じあい》にとどまっているなら、あなたに|向《む》けられる。そうでないと、あなたも|切《き》り|取《と》られるであろう。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかし|彼《かれ》らも、|不《ふ》|信仰《しんこう》を|続《つづ》けなければ、つがれるであろう。|神《かみ》には|彼《かれ》らを|再《ふたた》びつぐ|力《ちから》がある。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、もしあなたが|自然《しぜん》のままの|野生《やせい》のオリブから|切《き》り|取《と》られ、|自然《しぜん》の|性質《せいしつ》に|反《はん》して|良《よ》いオリブにつがれたとすれば、まして、これら|自然《しぜん》のままの|良《よ》い|枝《えだ》は、もっとたやすく、|元《もと》のオリブにつがれないであろうか。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたが|知者《ちしゃ》だと|自負《じふ》することのないために、この|奥義《おくぎ》を|知《し》らないでいてもらいたくない。|一部《いちぶ》のイスラエル|人《びと》がかたくなになったのは、|異邦人《いほうじん》が|全部《ぜんぶ》|救《すく》われるに|至《いた》る|時《とき》までのことであって、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]こうして、イスラエル|人《びと》は、すべて|救《すく》われるであろう。すなわち、|次《つぎ》のように|書《か》いてある、 [#ここから2字下げ] 「|救《すく》う|者《もの》がシオンからきて、 ヤコブから|不信心《ふしんじん》を|追《お》い|払《はら》うであろう。 [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そして、これが、|彼《かれ》らの|罪《つみ》を|除《のぞ》き|去《さ》る|時《とき》に、 |彼《かれ》らに|対《たい》して|立《た》てるわたしの|契約《けいやく》である」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|福音《ふくいん》について|言《い》えば、|彼《かれ》らは、あなたがたのゆえに、|神《かみ》の|敵《てき》とされているが、|選《えら》びについて|言《い》えば、|父祖《ふそ》たちのゆえに、|神《かみ》に|愛《あい》せられる|者《もの》である。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|賜物《たまもの》と|召《め》しとは、|変《か》えられることがない。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが、かつては|神《かみ》に|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》であったが、|今《いま》は|彼《かれ》らの|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》によってあわれみを|受《う》けたように、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らも|今《いま》は|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》になっているが、それは、あなたがたの|受《う》けたあわれみによって、|彼《かれ》ら|自身《じしん》も|今《いま》あわれみを|受《う》けるためなのである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|神《かみ》はすべての|人《ひと》をあわれむために、すべての|人《ひと》を|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》のなかに|閉《と》じ|込《こ》めたのである。  [#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]ああ|深《ふか》いかな、|神《かみ》の|知恵《ちえ》と|知識《ちしき》との|富《とみ》は。そのさばきは|窮《きわ》めがたく、その|道《みち》は|測《はか》りがたい。 [#ここから2字下げ] [#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]「だれが、|主《しゅ》の|心《こころ》を|知《し》っていたか。 だれが、|主《しゅ》の|計画《けいかく》にあずかったか。 [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]また、だれが、まず|主《しゅ》に|与《あた》えて、 その|報《むく》いを|受《う》けるであろうか」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|万物《ばんぶつ》は、|神《かみ》からいで、|神《かみ》によって|成《な》り、|神《かみ》に|帰《き》するのである。|栄光《えいこう》がとこしえに|神《かみ》にあるように、アァメン。 第一二章[#「第一二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。そういうわけで、|神《かみ》のあわれみによってあなたがたに|勧《すす》める。あなたがたのからだを、|神《かみ》に|喜《よろこ》ばれる、|生《い》きた、|聖《せい》なる|供《そな》え|物《もの》としてささげなさい。それが、あなたがたのなすべき|霊的《れいてき》な|礼拝《れいはい》である。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、この|世《よ》と|妥協《だきょう》してはならない。むしろ、|心《こころ》を|新《あら》たにすることによって、|造《つく》りかえられ、|何《なに》が|神《かみ》の|御旨《みむね》であるか、|何《なに》が|善《ぜん》であって、|神《かみ》に|喜《よろこ》ばれ、かつ|全《まった》きことであるかを、わきまえ|知《し》るべきである。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|自分《じぶん》に|与《あた》えられた|恵《めぐ》みによって、あなたがたひとりびとりに|言《い》う。|思《おも》うべき|限度《げんど》を|越《こ》えて|思《おも》いあがることなく、むしろ、|神《かみ》が|各自《かくじ》に|分《わ》け|与《あた》えられた|信仰《しんこう》の|量《はか》りにしたがって、|慎《つつし》み|深《ふか》く|思《おも》うべきである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、一つのからだにたくさんの|肢体《したい》があるが、それらの|肢体《したい》がみな|同《おな》じ|働《はたら》きをしてはいないように、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちも|数《かず》は|多《おお》いが、キリストにあって一つのからだであり、また|各自《かくじ》は|互《たがい》に|肢体《したい》だからである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]このように、わたしたちは|与《あた》えられた|恵《めぐ》みによって、それぞれ|異《こと》なった|賜物《たまもの》を|持《も》っているので、もし、それが|預言《よげん》であれば、|信仰《しんこう》の|程度《ていど》に|応《おう》じて|預言《よげん》をし、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|奉仕《ほうし》であれば|奉仕《ほうし》をし、また|教《おし》える|者《もの》であれば|教《おし》え、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|勧《すす》めをする|者《もの》であれば|勧《すす》め、|寄附《きふ》する|者《もの》は|惜《お》しみなく|寄附《きふ》し、|指導《しどう》する|者《もの》は|熱心《ねっしん》に|指導《しどう》し、|慈善《じぜん》をする|者《もの》は|快《こころよ》く|慈善《じぜん》をすべきである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》には|偽《いつわ》りがあってはならない。|悪《あく》は|憎《にく》み|退《しりぞ》け、|善《ぜん》には|親《した》しみ|結《むす》び、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》の|愛《あい》をもって|互《たがい》にいつくしみ、|進《すす》んで|互《たがい》に|尊敬《そんけい》し|合《あ》いなさい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|熱心《ねっしん》で、うむことなく、|霊《れい》に|燃《も》え、|主《しゅ》に|仕《つか》え、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|望《のぞ》みをいだいて|喜《よろこ》び、|患難《かんなん》に|耐《た》え、|常《つね》に|祈《いの》りなさい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|貧《まず》しい|聖徒《せいと》を|助《たす》け、|努《つと》めて|旅人《たびびと》をもてなしなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたを|迫害《はくがい》する|者《もの》を|祝福《しゅくふく》しなさい。|祝福《しゅくふく》して、のろってはならない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|喜《よろこ》ぶ|者《もの》と|共《とも》に|喜《よろこ》び、|泣《な》く|者《もの》と|共《とも》に|泣《な》きなさい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》に|思《おも》うことをひとつにし、|高《たか》ぶった|思《おも》いをいだかず、かえって|低《ひく》い|者《もの》たちと|交《まじ》わるがよい。|自分《じぶん》が|知者《ちしゃ》だと|思《おも》いあがってはならない。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]だれに|対《たい》しても|悪《あく》をもって|悪《あく》に|報《むく》いず、すべての|人《ひと》に|対《たい》して|善《ぜん》を|図《はか》りなさい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、できる|限《かぎ》りすべての|人《ひと》と|平和《へいわ》に|過《す》ごしなさい。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。|自分《じぶん》で|復讐《ふくしゅう》をしないで、むしろ、|神《かみ》の|怒《いか》りに|任《まか》せなさい。なぜなら、「|主《しゅ》が|言《い》われる。|復讐《ふくしゅう》はわたしのすることである。わたし|自身《じしん》が|報復《ほうふく》する」と|書《か》いてあるからである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、「もしあなたの|敵《てき》が|飢《う》えるなら、|彼《かれ》に|食《く》わせ、かわくなら、|彼《かれ》に|飲《の》ませなさい。そうすることによって、あなたは|彼《かれ》の|頭《あたま》に|燃《も》えさかる|炭火《すみび》を|積《つ》むことになるのである」。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|悪《あく》に|負《ま》けてはいけない。かえって、|善《ぜん》をもって|悪《あく》に|勝《か》ちなさい。 第一三章[#「第一三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]すべての|人《ひと》は、|上《うえ》に|立《た》つ|権威《けんい》に|従《したが》うべきである。なぜなら、|神《かみ》によらない|権威《けんい》はなく、おおよそ|存在《そんざい》している|権威《けんい》は、すべて|神《かみ》によって|立《た》てられたものだからである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]したがって、|権威《けんい》に|逆《さか》らう|者《もの》は、|神《かみ》の|定《さだ》めにそむく|者《もの》である。そむく|者《もの》は、|自分《じぶん》の|身《み》にさばきを|招《まね》くことになる。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|支配者《しはいしゃ》たちは、|善事《ぜんじ》をする|者《もの》には|恐怖《きょうふ》でなく、|悪事《あくじ》をする|者《もの》にこそ|恐怖《きょうふ》である。あなたは|権威《けんい》を|恐《おそ》れないことを|願《ねが》うのか。それでは、|善事《ぜんじ》をするがよい。そうすれば、|彼《かれ》からほめられるであろう。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、あなたに|益《えき》を|与《あた》えるための|神《かみ》の|僕《しもべ》なのである。しかし、もしあなたが|悪事《あくじ》をすれば、|恐《おそ》れなければならない。|彼《かれ》はいたずらに|剣《けん》を|帯《お》びているのではない。|彼《かれ》は|神《かみ》の|僕《しもべ》であって、|悪事《あくじ》を|行《おこな》う|者《もの》に|対《たい》しては、|怒《いか》りをもって|報《むく》いるからである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]だから、ただ|怒《いか》りをのがれるためだけではなく、|良心《りょうしん》のためにも|従《したが》うべきである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|貢《みつぎ》を|納《おさ》めるのも、また|同《おな》じ|理由《りゆう》からである。|彼《かれ》らは|神《かみ》に|仕《つか》える|者《もの》として、もっぱらこの|務《つとめ》に|携《たずさ》わっているのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|彼《かれ》らすべてに|対《たい》して、|義務《ぎむ》を|果《はた》しなさい。すなわち、|貢《みつぎ》を|納《おさめ》むべき|者《もの》には|貢《みつぎ》を|納《おさ》め、|税《ぜい》を|納《おさめ》むべき|者《もの》には|税《ぜい》を|納《おさ》め、|恐《おそ》るべき|者《もの》は|恐《おそ》れ、|敬《うやま》うべき|者《もの》は|敬《うやま》いなさい。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》うことの|外《そと》は、|何人《なにびと》にも|借《か》りがあってはならない。|人《ひと》を|愛《あい》する|者《もの》は、|律法《りっぽう》を|全《まっと》うするのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]「|姦淫《かんいん》するな、|殺《ころ》すな、|盗《ぬす》むな、むさぼるな」など、そのほかに、どんな|戒《いまし》めがあっても、|結局《けっきょく》「|自分《じぶん》を|愛《あい》するようにあなたの|隣《とな》り|人《ひと》を|愛《あい》せよ」というこの|言葉《ことば》に|帰《き》する。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》は|隣《とな》り|人《ひと》に|害《がい》を|加《くわ》えることはない。だから、|愛《あい》は|律法《りっぽう》を|完成《かんせい》するものである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]なお、あなたがたは|時《とき》を|知《し》っているのだから、|特《とく》に、この|事《こと》を|励《はげ》まねばならない。すなわち、あなたがたの|眠《ねむ》りからさめるべき|時《とき》が、すでにきている。なぜなら|今《いま》は、わたしたちの|救《すくい》が、|初《はじ》め|信《しん》じた|時《とき》よりも、もっと|近《ちか》づいているからである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よ》はふけ、|日《ひ》が|近《ちか》づいている。それだから、わたしたちは、やみのわざを|捨《す》てて、|光《ひかり》の|武具《ぶぐ》を|着《つ》けようではないか。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そして、|宴楽《えんらく》と|泥酔《でいすい》、|淫乱《いんらん》と|好色《こうしょく》、|争《あらそ》いとねたみを|捨《す》てて、|昼《ひる》|歩《ある》くように、つつましく|歩《ある》こうではないか。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|主《しゅ》イエス・キリストを|着《き》なさい。|肉《にく》の|欲《よく》を|満《み》たすことに|心《こころ》を|向《む》けてはならない。 第一四章[#「第一四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》の|弱《よわ》い|者《もの》を|受《う》けいれなさい。ただ、|意見《いけん》を|批評《ひひょう》するためであってはならない。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ある|人《ひと》は、|何《なに》を|食《た》べてもさしつかえないと|信《しん》じているが、|弱《よわ》い|人《ひと》は|野菜《やさい》だけを|食《た》べる。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|食《た》べる|者《もの》は|食《た》べない|者《もの》を|軽《かろ》んじてはならず、|食《た》べない|者《もの》も|食《た》べる|者《もの》をさばいてはならない。|神《かみ》は|彼《かれ》を|受《う》けいれて|下《くだ》さったのであるから。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|他人《たにん》の|僕《しもべ》をさばくあなたは、いったい、|何者《なにもの》であるか。|彼《かれ》が|立《た》つのも|倒《たお》れるのも、その|主人《しゅじん》によるのである。しかし、|彼《かれ》は|立《た》つようになる。|主《しゅ》は|彼《かれ》を|立《た》たせることができるからである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また、ある|人《ひと》は、この|日《ひ》がかの|日《ひ》よりも|大事《だいじ》であると|考《かんが》え、ほかの|人《ひと》はどの|日《ひ》も|同《おな》じだと|考《かんが》える。|各自《かくじ》はそれぞれ|心《こころ》の|中《なか》で、|確信《かくしん》を|持《も》っておるべきである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|日《ひ》を|重《おも》んじる|者《もの》は、|主《しゅ》のために|重《おも》んじる。また|食《た》べる|者《もの》も|主《しゅ》のために|食《た》べる。|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》して|食《た》べるからである。|食《た》べない|者《もの》も|主《しゅ》のために|食《た》べない。そして、|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》する。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、わたしたちのうち、だれひとり|自分《じぶん》のために|生《い》きる|者《もの》はなく、だれひとり|自分《じぶん》のために|死《し》ぬ|者《もの》はない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|生《い》きるのも|主《しゅ》のために|生《い》き、|死《し》ぬのも|主《しゅ》のために|死《し》ぬ。だから、|生《い》きるにしても|死《し》ぬにしても、わたしたちは|主《しゅ》のものなのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、キリストは、|死者《ししゃ》と|生者《せいしゃ》との|主《しゅ》となるために、|死《し》んで|生《い》き|返《かえ》られたからである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それだのに、あなたは、なぜ|兄弟《きょうだい》をさばくのか。あなたは、なぜ|兄弟《きょうだい》を|軽《かろ》んじるのか。わたしたちはみな、|神《かみ》のさばきの|座《ざ》の|前《まえ》に|立《た》つのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、 [#ここから2字下げ] 「|主《しゅ》が|言《い》われる。わたしは|生《い》きている。 すべてのひざは、わたしに|対《たい》してかがみ、 すべての|舌《した》は、|神《かみ》にさんびをささげるであろう」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてある。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしたちひとりびとりは、|神《かみ》に|対《たい》して|自分《じぶん》の|言《い》いひらきをすべきである。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それゆえ、|今後《こんご》わたしたちは、|互《たがい》にさばき|合《あ》うことをやめよう。むしろ、あなたがたは、|妨《さまた》げとなる|物《もの》や、つまずきとなる|物《もの》を|兄弟《きょうだい》の|前《まえ》に|置《お》かないことに、|決《き》めるがよい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|主《しゅ》イエスにあって|知《し》りかつ|確信《かくしん》している。それ|自体《じたい》、|汚《けが》れているものは一つもない。ただ、それが|汚《けが》れていると|考《かんが》える|人《ひと》にだけ、|汚《けが》れているのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]もし|食物《しょくもつ》のゆえに|兄弟《きょうだい》を|苦《くる》しめるなら、あなたは、もはや|愛《あい》によって|歩《ある》いているのではない。あなたの|食物《しょくもつ》によって、|兄弟《きょうだい》を|滅《ほろ》ぼしてはならない。キリストは|彼《かれ》のためにも、|死《し》なれたのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それだから、あなたがたにとって|良《よ》い|事《こと》が、そしりの|種《たね》にならぬようにしなさい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|国《くに》は|飲食《いんしょく》ではなく、|義《ぎ》と、|平和《へいわ》と、|聖霊《せいれい》における|喜《よろこ》びとである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]こうしてキリストに|仕《つか》える|者《もの》は、|神《かみ》に|喜《よろこ》ばれ、かつ、|人《ひと》にも|受《う》けいれられるのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、|平和《へいわ》に|役立《やくだ》つことや、|互《たがい》の|徳《とく》を|高《たか》めることを、|追《お》い|求《もと》めようではないか。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|食物《しょくもつ》のことで、|神《かみ》のみわざを|破壊《はかい》してはならない。すべての|物《もの》はきよい。ただ、それを|食《た》べて|人《ひと》をつまずかせる|者《もの》には、|悪《あく》となる。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|肉《にく》を|食《く》わず、|酒《さけ》を|飲《の》まず、そのほか|兄弟《きょうだい》をつまずかせないのは、|良《よ》いことである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|持《も》っている|信仰《しんこう》を、|神《かみ》のみまえに、|自分《じぶん》|自身《じしん》に|持《も》っていなさい。|自《みずか》ら|良《よ》いと|定《さだ》めたことについて、やましいと|思《おも》わない|人《ひと》は、さいわいである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|疑《うたが》いながら|食《た》べる|者《もの》は、|信仰《しんこう》によらないから、|罪《つみ》に|定《さだ》められる。すべて|信仰《しんこう》によらないことは、|罪《つみ》である。 第一五章[#「第一五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたち|強《つよ》い|者《もの》は、|強《つよ》くない|者《もの》たちの|弱《よわ》さをになうべきであって、|自分《じぶん》だけを|喜《よろこ》ばせることをしてはならない。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちひとりびとりは、|隣《とな》り|人《ひと》の|徳《とく》を|高《たか》めるために、その|益《えき》を|図《はか》って|彼《かれ》らを|喜《よろこ》ばすべきである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]キリストさえ、ご|自身《じしん》を|喜《よろこ》ばせることはなさらなかった。むしろ「あなたをそしる|者《もの》のそしりが、わたしに|降《ふ》りかかった」と|書《か》いてあるとおりであった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]これまでに|書《か》かれた|事《こと》がらは、すべてわたしたちの|教《おしえ》のために|書《か》かれたのであって、それは|聖書《せいしょ》の|与《あた》える|忍耐《にんたい》と|慰《なぐさ》めとによって、|望《のぞ》みをいだかせるためである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|忍耐《にんたい》と|慰《なぐさ》めとの|神《かみ》が、あなたがたに、キリスト・イエスにならって|互《たがい》に|同《おな》じ|思《おも》いをいだかせ、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|心《こころ》を|一《ひと》つにし、|声《こえ》を|合《あ》わせて、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|父《ちち》なる|神《かみ》をあがめさせて|下《くだ》さるように。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、キリストもわたしたちを|受《う》けいれて|下《くだ》さったように、あなたがたも|互《たがい》に|受《う》けいれて、|神《かみ》の|栄光《えいこう》をあらわすべきである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|言《い》う、キリストは|神《かみ》の|真実《しんじつ》を|明《あき》らかにするために、|割礼《かつれい》のある|者《もの》の|僕《しもべ》となられた。それは|父祖《ふそ》たちの|受《う》けた|約束《やくそく》を|保証《ほしょう》すると|共《とも》に、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|異邦人《いほうじん》もあわれみを|受《う》けて|神《かみ》をあがめるようになるためである、 [#ここから2字下げ] 「それゆえ、わたしは、|異邦人《いほうじん》の|中《なか》で あなたにさんびをささげ、 また、|御名《みな》をほめ|歌《うた》う」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるとおりである。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]また、こう|言《い》っている、 [#ここから2字下げ] 「|異邦人《いほうじん》よ、|主《しゅ》の|民《たみ》と|共《とも》に|喜《よろこ》べ」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また、 [#ここから2字下げ] 「すべての|異邦人《いほうじん》よ、|主《しゅ》をほめまつれ。 もろもろの|民《たみ》よ、|主《しゅ》をほめたたえよ」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]またイザヤは|言《い》っている、 [#ここから2字下げ] 「エッサイの|根《ね》から|芽《め》が|出《で》て、 |異邦人《いほうじん》を|治《おさ》めるために|立《た》ち|上《あ》がる|者《もの》が|来《く》る。 |異邦人《いほうじん》は|彼《かれ》に|望《のぞ》みをおくであろう」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|望《のぞ》みの|神《かみ》が、|信仰《しんこう》から|来《く》るあらゆる|喜《よろこ》びと|平安《へいあん》とを、あなたがたに|満《み》たし、|聖霊《せいれい》の|力《ちから》によって、あなたがたを、|望《のぞ》みにあふれさせて|下《くだ》さるように。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがた|自身《じしん》が、|善意《ぜんい》にあふれ、あらゆる|知恵《ちえ》に|満《み》たされ、そして|互《たがい》に|訓戒《くんかい》し|合《あ》う|力《ちから》のあることを、わたしは|堅《かた》く|信《しん》じている。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしはあなたがたの|記憶《きおく》を|新《あら》たにするために、ところどころ、かなり|思《おも》いきって|書《か》いた。それは、|神《かみ》からわたしに|賜《たま》わった|恵《めぐ》みによって、|書《か》いたのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]このように|恵《めぐ》みを|受《う》けたのは、わたしが|異邦人《いほうじん》のためにキリスト・イエスに|仕《つか》える|者《もの》となり、|神《かみ》の|福音《ふくいん》のために|祭司《さいし》の|役《やく》を|勤《つと》め、こうして|異邦人《いほうじん》を、|聖霊《せいれい》によってきよめられた、|御旨《みむね》にかなうささげ|物《もの》とするためである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしは|神《かみ》への|奉仕《ほうし》については、キリスト・イエスにあって|誇《ほこ》りうるのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|異邦人《いほうじん》を|従順《じゅうじゅん》にするために、キリストがわたしを|用《もち》いて、|言葉《ことば》とわざ、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]しるしと|不思議《ふしぎ》との|力《ちから》、|聖霊《せいれい》の|力《ちから》によって、|働《はたら》かせて|下《くだ》さったことの|外《ほか》には、あえて|何《なに》も|語《かた》ろうとは|思《おも》わない。こうして、わたしはエルサレムから|始《はじ》まり、|巡《めぐ》りめぐってイルリコに|至《いた》るまで、キリストの|福音《ふくいん》を|満《み》たしてきた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]その|際《さい》、わたしの|切《せつ》に|望《のぞ》んだところは、|他人《たにん》の|土台《どだい》の|上《うえ》に|建《た》てることをしないで、キリストの|御名《みな》がまだ|唱《とな》えられていない|所《ところ》に|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えることであった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、 [#ここから2字下げ] 「|彼《かれ》のことを|宣《の》べ|伝《つた》えられていなかった|人々《ひとびと》が|見《み》、 |聞《き》いていなかった|人々《ひとびと》が|悟《さと》るであろう」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるとおりである。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、わたしはあなたがたの|所《ところ》に|行《い》くことを、たびたび|妨《さまた》げられてきた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかし|今《いま》では、この|地方《ちほう》にはもはや|働《はたら》く|余地《よち》がなく、かつイスパニヤに|赴《おもむ》く|場合《ばあい》、あなたがたの|所《ところ》に|行《い》くことを、|多年《たねん》、|熱望《ねつぼう》していたので、――[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]その|途中《とちゅう》あなたがたに|会《あ》い、まず|幾分《いくぶん》でもわたしの|願《ねが》いがあなたがたによって|満《み》たされたら、あなたがたに|送《おく》られてそこへ|行《い》くことを、|望《のぞ》んでいるのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]しかし|今《いま》の|場合《ばあい》、|聖徒《せいと》たちに|仕《つか》えるために、わたしはエルサレムに|行《い》こうとしている。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、マケドニヤとアカヤとの|人々《ひとびと》は、エルサレムにおる|聖徒《せいと》の|中《なか》の|貧《まず》しい|人々《ひとびと》を|援助《えんじょ》することに|賛成《さんせい》したからである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]たしかに、|彼《かれ》らは|賛成《さんせい》した。しかし|同時《どうじ》に、|彼《かれ》らはかの|人々《ひとびと》に|負債《ふさい》がある。というのは、もし|異邦人《いほうじん》が|彼《かれ》らの|霊《れい》の|物《もの》にあずかったとすれば、|肉《にく》の|物《もの》をもって|彼《かれ》らに|仕《つか》えるのは、|当然《とうぜん》だからである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしは、この|仕事《しごと》を|済《す》ませて|彼《かれ》らにこの|実《み》を|手渡《てわた》した|後《のち》、あなたがたの|所《ところ》をとおって、イスパニヤに|行《い》こうと|思《おも》う。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そしてあなたがたの|所《ところ》に|行《ゆ》く|時《とき》には、キリストの|満《み》ちあふれる|祝福《しゅくふく》をもって|行《ゆ》くことと、|信《しん》じている。  [#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストにより、かつ|御霊《みたま》の|愛《あい》によって、あなたがたにお|願《ねが》いする。どうか、|共《とも》に|力《ちから》をつくして、わたしのために|神《かみ》に|祈《いの》ってほしい。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、わたしがユダヤにおる|不信《ふしん》の|徒《と》から|救《すく》われ、そしてエルサレムに|対《たい》するわたしの|奉仕《ほうし》が|聖徒《せいと》たちに|受《う》けいれられるものとなるように、[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]また、|神《かみ》の|御旨《みむね》により、|喜《よろこ》びをもってあなたがたの|所《ところ》に|行《い》き、|共《とも》になぐさめ|合《あ》うことができるように|祈《いの》ってもらいたい。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|平和《へいわ》の|神《かみ》があなたがた|一同《いちどう》と|共《とも》にいますように、アァメン。 第一六章[#「第一六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]ケンクレヤにある|教会《きょうかい》の|執事《しつじ》、わたしたちの|姉妹《しまい》フィベを、あなたがたに|紹介《しょうかい》する。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|聖徒《せいと》たるにふさわしく、|主《しゅ》にあって|彼女《かのじょ》を|迎《むか》え、そして、|彼女《かのじょ》があなたがたにしてもらいたいことがあれば、|何事《なにごと》でも、|助《たす》けてあげてほしい。|彼女《かのじょ》は|多《おお》くの|人《ひと》の|援助者《えんじょしゃ》であり、またわたし|自身《じしん》の|援助者《えんじょしゃ》でもあった。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスにあるわたしの|同労者《どうろうしゃ》プリスカとアクラとに、よろしく|言《い》ってほしい。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、わたしのいのちを|救《すく》うために、|自分《じぶん》の|首《くび》をさえ|差《さ》し|出《だ》してくれたのである。|彼《かれ》らに|対《たい》しては、わたしだけではなく、|異邦人《いほうじん》のすべての|教会《きょうかい》も、|感謝《かんしゃ》している。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また、|彼《かれ》らの|家《いえ》の|教会《きょうかい》にも、よろしく。わたしの|愛《あい》するエパネトに、よろしく|言《い》ってほしい。|彼《かれ》は、キリストにささげられたアジヤの|初穂《はつほ》である。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのために|一方《ひとかた》ならず|労苦《ろうく》したマリヤに、よろしく|言《い》ってほしい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|同族《どうぞく》であって、わたしと|一緒《いっしょ》に|投獄《とうごく》されたことのあるアンデロニコとユニアスとに、よろしく。|彼《かれ》らは|使徒《しと》たちの|間《あいだ》で|評判《ひょうばん》がよく、かつ、わたしよりも|先《さき》にキリストを|信《しん》じた|人々《ひとびと》である。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》にあって|愛《あい》するアムプリアトに、よろしく。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]キリストにあるわたしたちの|同労者《どうろうしゃ》ウルバノと、|愛《あい》するスタキスとに、よろしく。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]キリストにあって|錬達《れんたつ》なアペレに、よろしく。アリストブロの|家《いえ》の|人《ひと》たちに、よろしく。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|同族《どうぞく》のヘロデオンに、よろしく。ナルキソの|家《いえ》の、|主《しゅ》にある|人《ひと》たちに、よろしく。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》にあって|労苦《ろうく》しているツルパナとツルポサとに、よろしく。|主《しゅ》にあって|一方《ひとかた》ならず|労苦《ろうく》した|愛《あい》するペルシスに、よろしく。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》にあって|選《えら》ばれたルポスと、|彼《かれ》の|母《はは》とに、よろしく。|彼《かれ》の|母《はは》は、わたしの|母《はは》でもある。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]アスンクリト、フレゴン、ヘルメス、パトロバ、ヘルマスおよび|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》にいる|兄弟《きょうだい》たちに、よろしく。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ピロロゴとユリヤとに、またネレオとその|姉妹《しまい》とに、オルンパに、また|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》にいるすべての|聖徒《せいと》たちに、よろしく|言《い》ってほしい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]きよい|接吻《せっぷん》をもって、|互《たがい》にあいさつをかわしなさい。キリストのすべての|教会《きょうかい》から、あなたがたによろしく。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]さて|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたに|勧告《かんこく》する。あなたがたが|学《まな》んだ|教《おしえ》にそむいて|分裂《ぶんれつ》を|引《ひ》き|起《おこ》し、つまずきを|与《あた》える|人々《ひとびと》を|警戒《けいかい》し、かつ|彼《かれ》らから|遠《とお》ざかるがよい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、こうした|人々《ひとびと》は、わたしたちの|主《しゅ》キリストに|仕《つか》えないで、|自分《じぶん》の|腹《はら》に|仕《つか》え、そして|甘言《かんげん》と|美辞《びじ》とをもって、|純朴《じゅんぼく》な|人々《ひとびと》の|心《こころ》を|欺《あざむ》く|者《もの》どもだからである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|従順《じゅうじゅん》は、すべての|人々《ひとびと》の|耳《みみ》に|達《たっ》しており、それをあなたがたのために|喜《よろこ》んでいる。しかし、わたしの|願《ねが》うところは、あなたがたが|善《ぜん》にさとく、|悪《あく》には、うとくあってほしいことである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|平和《へいわ》の|神《かみ》は、サタンをすみやかにあなたがたの|足《あし》の|下《した》に|踏《ふ》み|砕《くだ》くであろう。  どうか、わたしたちの|主《しゅ》イエスの|恵《めぐ》みが、あなたがたと|共《とも》にあるように。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|同労者《どうろうしゃ》テモテおよび|同族《どうぞく》のルキオ、ヤソン、ソシパテロから、あなたがたによろしく。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり](この|手紙《てがみ》を|筆記《ひっき》したわたしテルテオも、|主《しゅ》にあってあなたがたにあいさつの|言葉《ことば》をおくる。)[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]わたしと|全《ぜん》|教会《きょうかい》との|家主《やぬし》ガイオから、あなたがたによろしく。|市《し》の|会計《かいけい》|係《がかり》エラストと|兄弟《きょうだい》クワルトから、あなたがたによろしく。  〔[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|恵《めぐ》みが、あなたがた|一同《いちどう》と|共《とも》にあるように、アァメン。〕  [#太字]二五 二六[#「二五 二六」は行右小書き][#太字終わり]|願《ねが》わくは、わたしの|福音《ふくいん》とイエス・キリストの|宣教《せんきょう》とにより、かつ、|長《なが》き|世々《よよ》にわたって、|隠《かく》されていたが、|今《いま》やあらわされ、|預言《よげん》の|書《しょ》をとおして、|永遠《えいえん》の|神《かみ》の|命令《めいれい》に|従《したが》い、|信仰《しんこう》の|従順《じゅうじゅん》に|至《いた》らせるために、もろもろの|国《くに》|人《ひと》に|告《つ》げ|知《し》らされた|奥義《おくぎ》の|啓示《けいじ》によって、あなたがたを|力《ちから》づけることのできるかた、[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|唯一《ゆいいつ》の|知恵《ちえ》|深《ふか》き|神《かみ》に、イエス・キリストにより、|栄光《えいこう》が|永遠《えいえん》より|永遠《えいえん》にあるように、アァメン。 [#改ページ] コリント人への第一の手紙[#「コリント人への第一の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|御旨《みむね》により|召《め》されてキリスト・イエスの|使徒《しと》となったパウロと、|兄弟《きょうだい》ソステネから、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]コリントにある|神《かみ》の|教会《きょうかい》、すなわち、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|御名《みな》を|至《いた》る|所《ところ》で|呼《よ》び|求《もと》めているすべての|人々《ひとびと》と|共《とも》に、キリスト・イエスにあってきよめられ、|聖徒《せいと》として|召《め》されたかたがたへ。このキリストは、わたしたちの|主《しゅ》であり、また|彼《かれ》らの|主《しゅ》であられる。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストから、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたがキリスト・イエスにあって|与《あた》えられた|神《かみ》の|恵《めぐ》みを|思《おも》って、いつも|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》している。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはキリストにあって、すべてのことに、すなわち、すべての|言葉《ことば》にもすべての|知識《ちしき》にも|恵《めぐ》まれ、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]キリストのためのあかしが、あなたがたのうちに|確《たし》かなものとされ、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]こうして、あなたがたは|恵《めぐ》みの|賜物《たまもの》にいささかも|欠《か》けることがなく、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|現《あらわ》れるのを|待《ま》ち|望《のぞ》んでいる。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》もまた、あなたがたを|最後《さいご》まで|堅《かた》くささえて、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|日《ひ》に、|責《せ》められるところのない|者《もの》にして|下《くだ》さるであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|真実《しんじつ》なかたである。あなたがたは|神《かみ》によって|召《め》され、|御子《みこ》、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストとの|交《まじ》わりに、はいらせていただいたのである。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]さて|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|名《な》によって、あなたがたに|勧《すす》める。みな|語《かた》ることを一つにし、お|互《たがい》の|間《あいだ》に|分争《ぶんそう》がないようにし、|同《おな》じ|心《こころ》、|同《おな》じ|思《おも》いになって、|堅《かた》く|結《むす》び|合《あ》っていてほしい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。|実《じつ》は、クロエの|家《いえ》の|者《もの》たちから、あなたがたの|間《あいだ》に|争《あらそ》いがあると|聞《き》かされている。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]はっきり|言《い》うと、あなたがたがそれぞれ、「わたしはパウロにつく」「わたしはアポロに」「わたしはケパに」「わたしはキリストに」と|言《い》い|合《あ》っていることである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]キリストは、いくつにも|分《わ》けられたのか。パウロは、あなたがたのために|十字架《じゅうじか》につけられたことがあるのか。それとも、あなたがたは、パウロの|名《な》によってバプテスマを|受《う》けたのか。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|感謝《かんしゃ》しているが、クリスポとガイオ|以外《いがい》には、あなたがたのうちのだれにも、バプテスマを|授《さづ》けたことがない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それはあなたがたがわたしの|名《な》によってバプテスマを|受《う》けたのだと、だれにも|言《い》われることのないためである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]もっとも、ステパナの|家《いえ》の|者《もの》たちには、バプテスマを|授《さづ》けたことがある。しかし、そのほかには、だれにも|授《さづ》けた|覚《おぼ》えがない。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]いったい、キリストがわたしをつかわされたのは、バプテスマを|授《さづ》けるためではなく、|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えるためであり、しかも|知恵《ちえ》の|言葉《ことば》を|用《もち》いずに|宣《の》べ|伝《つた》えるためであった。それは、キリストの|十字架《じゅうじか》が|無力《むりょく》なものになってしまわないためなのである。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|十字架《じゅうじか》の|言《ことば》は、|滅《ほろ》び|行《い》く|者《もの》には|愚《おろ》かであるが、|救《すくい》にあずかるわたしたちには、|神《かみ》の|力《ちから》である。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|聖書《せいしょ》に、 [#ここから2字下げ] 「わたしは|知者《ちしゃ》の|知恵《ちえ》を|滅《ほろ》ぼし、 |賢《かしこ》い|者《もの》の|賢《かしこ》さをむなしいものにする」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてある。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|知者《ちしゃ》はどこにいるか。|学者《がくしゃ》はどこにいるか。この|世《よ》の|論者《ろんしゃ》はどこにいるか。|神《かみ》はこの|世《よ》の|知恵《ちえ》を、|愚《おろ》かにされたではないか。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]この|世《よ》は、|自分《じぶん》の|知恵《ちえ》によって|神《かみ》を|認《みと》めるに|至《いた》らなかった。それは、|神《かみ》の|知恵《ちえ》にかなっている。そこで|神《かみ》は、|宣教《せんきょう》の|愚《おろ》かさによって、|信《しん》じる|者《もの》を|救《すく》うこととされたのである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》はしるしを|請《こ》い、ギリシヤ|人《じん》は|知恵《ちえ》を|求《もと》める。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかしわたしたちは、|十字架《じゅうじか》につけられたキリストを|宣《の》べ|伝《つた》える。このキリストは、ユダヤ|人《じん》にはつまずかせるもの、|異邦人《いほうじん》には|愚《おろ》かなものであるが、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|召《め》された|者《もの》|自身《じしん》にとっては、ユダヤ|人《じん》にもギリシヤ|人《じん》にも、|神《かみ》の|力《ちから》、|神《かみ》の|知恵《ちえ》たるキリストなのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|愚《おろ》かさは|人《ひと》よりも|賢《かしこ》く、|神《かみ》の|弱《よわ》さは|人《ひと》よりも|強《つよ》いからである。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたが|召《め》された|時《とき》のことを|考《かんが》えてみるがよい。|人間《にんげん》|的《てき》には、|知恵《ちえ》のある|者《もの》が|多《おお》くはなく、|権力《けんりょく》のある|者《もの》も|多《おお》くはなく、|身分《みぶん》の|高《たか》い|者《もの》も|多《おお》くはいない。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]それだのに|神《かみ》は、|知者《ちしゃ》をはずかしめるために、この|世《よ》の|愚《おろ》かな|者《もの》を|選《えら》び、|強《つよ》い|者《もの》をはずかしめるために、この|世《よ》の|弱《よわ》い|者《もの》を|選《えら》び、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|有力《ゆうりょく》な|者《もの》を|無力《むりょく》な|者《もの》にするために、この|世《よ》で|身分《みぶん》の|低《ひく》い|者《もの》や|軽《かろ》んじられている|者《もの》、すなわち、|無《な》きに|等《ひと》しい|者《もの》を、あえて|選《えら》ばれたのである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]それは、どんな|人間《にんげん》でも、|神《かみ》のみまえに|誇《ほこ》ることがないためである。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたがキリスト・イエスにあるのは、|神《かみ》によるのである。キリストは|神《かみ》に|立《た》てられて、わたしたちの|知恵《ちえ》となり、|義《ぎ》と|聖《せい》とあがないとになられたのである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]それは、「|誇《ほこ》る|者《もの》は|主《しゅ》を|誇《ほこ》れ」と|書《か》いてあるとおりである。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしもまた、あなたがたの|所《ところ》に|行《い》ったとき、|神《かみ》のあかしを|宣《の》べ|伝《つた》えるのに、すぐれた|言葉《ことば》や|知恵《ちえ》を|用《もち》いなかった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、わたしはイエス・キリスト、しかも|十字架《じゅうじか》につけられたキリスト|以外《いがい》のことは、あなたがたの|間《あいだ》では|何《なに》も|知《し》るまいと、|決心《けっしん》したからである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあなたがたの|所《ところ》に|行《い》った|時《とき》には、|弱《よわ》くかつ|恐《おそ》れ、ひどく|不安《ふあん》であった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そして、わたしの|言葉《ことば》もわたしの|宣教《せんきょう》も、|巧《たく》みな|知恵《ちえ》の|言葉《ことば》によらないで、|霊《れい》と|力《ちから》との|証明《しょうめい》によったのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それは、あなたがたの|信仰《しんこう》が|人《ひと》の|知恵《ちえ》によらないで、|神《かみ》の|力《ちから》によるものとなるためであった。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかしわたしたちは、|円熟《えんじゅく》している|者《もの》の|間《あいだ》では、|知恵《ちえ》を|語《かた》る。この|知恵《ちえ》は、この|世《よ》の|者《もの》の|知恵《ちえ》ではなく、この|世《よ》の|滅《ほろ》び|行《い》く|支配者《しはいしゃ》たちの|知恵《ちえ》でもない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、わたしたちが|語《かた》るのは、|隠《かく》された|奥義《おくぎ》としての|神《かみ》の|知恵《ちえ》である。それは|神《かみ》が、わたしたちの|受《う》ける|栄光《えいこう》のために、|世《よ》の|始《はじ》まらぬ|先《さき》から、あらかじめ|定《さだ》めておかれたものである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]この|世《よ》の|支配者《しはいしゃ》たちのうちで、この|知恵《ちえ》を|知《し》っていた|者《もの》は、ひとりもいなかった。もし|知《し》っていたなら、|栄光《えいこう》の|主《しゅ》を|十字架《じゅうじか》につけはしなかったであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|聖書《せいしょ》に|書《か》いてあるとおり、 [#ここから2字下げ] 「|目《め》がまだ|見《み》ず、|耳《みみ》がまだ|聞《き》かず、 |人《ひと》の|心《こころ》に|思《おも》い|浮《うか》びもしなかったことを、 |神《かみ》は、ご|自分《じぶん》を|愛《あい》する|者《もの》たちのために|備《そな》えられた」 [#ここで字下げ終わり] のである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、それを|神《かみ》は、|御霊《みたま》によってわたしたちに|啓示《けいじ》して|下《くだ》さったのである。|御霊《みたま》はすべてのものをきわめ、|神《かみ》の|深《ふか》みまでもきわめるのだからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|人間《にんげん》の|思《おも》いは、その|内《うち》にある|人間《にんげん》の|霊《れい》|以外《いがい》に、だれが|知《し》っていようか。それと|同《おな》じように|神《かみ》の|思《おも》いも、|神《かみ》の|御霊《みたま》|以外《いがい》には、|知《し》るものはない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ところが、わたしたちが|受《う》けたのは、この|世《よ》の|霊《れい》ではなく、|神《かみ》からの|霊《れい》である。それによって、|神《かみ》から|賜《たま》わった|恵《めぐ》みを|悟《さと》るためである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]この|賜物《たまもの》について|語《かた》るにも、わたしたちは|人間《にんげん》の|知恵《ちえ》が|教《おし》える|言葉《ことば》を|用《もち》いないで、|御霊《みたま》の|教《おし》える|言葉《ことば》を|用《もち》い、|霊《れい》によって|霊《れい》のことを|解釈《かいしゃく》するのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|生《うま》れながらの|人《ひと》は、|神《かみ》の|御霊《みたま》の|賜物《たまもの》を|受《う》けいれない。それは|彼《かれ》には|愚《おろ》かなものだからである。また、|御霊《みたま》によって|判断《はんだん》されるべきであるから、|彼《かれ》はそれを|理解《りかい》することができない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|霊《れい》の|人《ひと》は、すべてのものを|判断《はんだん》するが、|自分《じぶん》|自身《じしん》はだれからも|判断《はんだん》されることはない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]「だれが|主《しゅ》の|思《おも》いを|知《し》って、|彼《かれ》を|教《おし》えることができようか」。しかし、わたしたちはキリストの|思《おも》いを|持《も》っている。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしはあなたがたには、|霊《れい》の|人《ひと》に|対《たい》するように|話《はな》すことができず、むしろ、|肉《にく》に|属《ぞく》する|者《もの》、すなわち、キリストにある|幼《おさ》な|子《ご》に|話《はな》すように|話《はな》した。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|乳《ちち》を|飲《の》ませて、|堅《かた》い|食物《しょくもつ》は|与《あた》えなかった。|食《た》べる|力《ちから》が、まだあなたがたになかったからである。|今《いま》になってもその|力《ちから》がない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはまだ、|肉《にく》の|人《ひと》だからである。あなたがたの|間《あいだ》に、ねたみや|争《あらそ》いがあるのは、あなたがたが|肉《にく》の|人《ひと》であって、|普通《ふつう》の|人間《にんげん》のように|歩《ある》いているためではないか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、ある|人《ひと》は「わたしはパウロに」と|言《い》い、ほかの|人《ひと》は「わたしはアポロに」と|言《い》っているようでは、あなたがたは|普通《ふつう》の|人間《にんげん》ではないか。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]アポロは、いったい、|何者《なにもの》か。また、パウロは|何者《なにもの》か。あなたがたを|信仰《しんこう》に|導《みちび》いた|人《ひと》にすぎない。しかもそれぞれ、|主《しゅ》から|与《あた》えられた|分《ぶん》に|応《おう》じて|仕《つか》えているのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|植《う》え、アポロは|水《みず》をそそいだ。しかし|成長《せいちょう》させて|下《くだ》さるのは、|神《かみ》である。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]だから、|植《う》える|者《もの》も|水《みず》をそそぐ|者《もの》も、ともに|取《と》るに|足《た》りない。|大事《だいじ》なのは、|成長《せいちょう》させて|下《くだ》さる|神《かみ》のみである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|植《う》える|者《もの》と|水《みず》をそそぐ|者《もの》とは一つであって、それぞれその|働《はたら》きに|応《おう》じて|報酬《ほうしゅう》を|得《え》るであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは|神《かみ》の|同労者《どうろうしゃ》である。あなたがたは|神《かみ》の|畑《はたけ》であり、|神《かみ》の|建物《たてもの》である。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》から|賜《たま》わった|恵《めぐ》みによって、わたしは|熟練《じゅくれん》した|建築《けんちく》|師《し》のように、|土台《どだい》をすえた。そして|他《た》の|人《ひと》がその|上《うえ》に|家《いえ》を|建《た》てるのである。しかし、どういうふうに|建《た》てるか、それぞれ|気《き》をつけるがよい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、すでにすえられている|土台《どだい》|以外《いがい》のものをすえることは、だれにもできない。そして、この|土台《どだい》はイエス・キリストである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]この|土台《どだい》の|上《うえ》に、だれかが|金《きん》、|銀《ぎん》、|宝石《ほうせき》、|木《き》、|草《くさ》、または、わらを|用《もち》いて|建《た》てるならば、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それぞれの|仕事《しごと》は、はっきりとわかってくる。すなわち、かの|日《ひ》は|火《ひ》の|中《なか》に|現《あらわ》れて、それを|明《あき》らかにし、またその|火《ひ》は、それぞれの|仕事《しごと》がどんなものであるかを、ためすであろう。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]もしある|人《ひと》の|建《た》てた|仕事《しごと》がそのまま残れば、その|人《ひと》は|報酬《ほうしゅう》を|受《う》けるが、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]その|仕事《しごと》が|焼《や》けてしまえば、|損失《そんしつ》を|被《こうむ》るであろう。しかし|彼《かれ》|自身《じしん》は、|火《ひ》の|中《なか》をくぐってきた|者《もの》のようにではあるが、|救《すく》われるであろう。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|神《かみ》の|宮《みや》であって、|神《かみ》の|御霊《みたま》が|自分《じぶん》のうちに|宿《やど》っていることを|知《し》らないのか。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]もし|人《ひと》が、|神《かみ》の|宮《みや》を|破壊《はかい》するなら、|神《かみ》はその|人《ひと》を|滅《ほろ》ぼすであろう。なぜなら、|神《かみ》の|宮《みや》は|聖《せい》なるものであり、そして、あなたがたはその|宮《みや》なのだからである。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]だれも|自分《じぶん》を|欺《あざむ》いてはならない。もしあなたがたのうちに、|自分《じぶん》がこの|世《よ》の|知者《ちしゃ》だと|思《おも》う|人《ひと》がいるなら、その|人《ひと》は|知者《ちしゃ》になるために|愚《おろ》かになるがよい。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、この|世《よ》の|知恵《ちえ》は、|神《かみ》の|前《まえ》では|愚《おろ》かなものだからである。「|神《かみ》は、|知者《ちしゃ》たちをその|悪知恵《わるぢえ》によって|捕《とら》える」と|書《か》いてあり、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|更《さら》にまた、「|主《しゅ》は、|知者《ちしゃ》たちの|論議《ろんぎ》のむなしいことをご|存《ぞん》じである」と|書《か》いてある。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]だから、だれも|人間《にんげん》を|誇《ほこ》ってはいけない。すべては、あなたがたのものなのである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]パウロも、アポロも、ケパも、|世界《せかい》も、|生《せい》も、|死《し》も、|現在《げんざい》のものも、|将来《しょうらい》のものも、ことごとく、あなたがたのものである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたがたはキリストのもの、キリストは|神《かみ》のものである。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]このようなわけだから、|人《ひと》はわたしたちを、キリストに|仕《つか》える|者《もの》、|神《かみ》の|奥義《おくぎ》を|管理《かんり》している|者《もの》と|見《み》るがよい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]この|場合《ばあい》、|管理者《かんりしゃ》に|要求《ようきゅう》されているのは、|忠実《ちゅうじつ》であることである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしはあなたがたにさばかれたり、|人間《にんげん》の|裁判《さいばん》にかけられたりしても、なんら|意《い》に|介《かい》しない。いや、わたしは|自分《じぶん》をさばくこともしない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|自《みずか》ら|省《かえり》みて、なんらやましいことはないが、それで|義《ぎ》とされているわけではない。わたしをさばくかたは、|主《しゅ》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]だから、|主《しゅ》がこられるまでは、|何事《なにごと》についても、|先《さき》|走《ばし》りをしてさばいてはいけない。|主《しゅ》は|暗《くら》い|中《なか》に|隠《かく》れていることを|明《あか》るみに|出《だ》し、|心《こころ》の|中《なか》で|企《くわだ》てられていることを、あらわにされるであろう。その|時《とき》には、|神《かみ》からそれぞれほまれを|受《う》けるであろう。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。これらのことをわたし|自身《じしん》とアポロとに|当《あ》てはめて|言《い》って|聞《き》かせたが、それはあなたがたが、わたしたちを|例《れい》にとって、「しるされている|定《さだ》めを|越《こ》えない」ことを|学《まな》び、ひとりの|人《ひと》をあがめ、ほかの|人《ひと》を|見《み》さげて|高《たか》ぶることのないためである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]いったい、あなたを|偉《えら》くしているのは、だれなのか。あなたの|持《も》っているもので、もらっていないものがあるか。もしもらっているなら、なぜもらっていないもののように|誇《ほこ》るのか。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、すでに|満腹《まんぷく》しているのだ。すでに|富《と》み|栄《さか》えているのだ。わたしたちを|差《さ》しおいて、|王《おう》になっているのだ。ああ、|王《おう》になっていてくれたらと|思《おも》う。そうであったなら、わたしたちも、あなたがたと|共《とも》に|王《おう》になれたであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしはこう|考《かんが》える。|神《かみ》はわたしたち|使徒《しと》を|死刑囚《しけいしゅう》のように、|最後《さいご》に|出場《しゅつじょう》する|者《もの》として|引《ひ》き|出《だ》し、こうしてわたしたちは、|全《ぜん》|世界《せかい》に、|天使《てんし》にも|人々《ひとびと》にも|見《み》せ|物《もの》にされたのだ。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちはキリストのゆえに|愚《おろ》かな|者《もの》となり、あなたがたはキリストにあって|賢《かしこ》い|者《もの》となっている。わたしたちは|弱《よわ》いが、あなたがたは|強《つよ》い。あなたがたは|尊《たっと》ばれ、わたしたちは|卑《いや》しめられている。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》の|今《いま》まで、わたしたちは|飢《う》え、かわき、|裸《はだか》にされ、|打《う》たれ、|宿《やど》なしであり、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|苦労《くろう》して|自分《じぶん》の|手《て》で|働《はたら》いている。はずかしめられては|祝福《しゅくふく》し、|迫害《はくがい》されては|耐《た》え|忍《しの》び、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ののしられては|優《やさ》しい|言葉《ことば》をかけている。わたしたちは|今《いま》に|至《いた》るまで、この|世《よ》のちりのように、|人間《にんげん》のくずのようにされている。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしがこのようなことを|書《か》くのは、あなたがたをはずかしめるためではなく、むしろ、わたしの|愛児《あいじ》としてさとすためである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]たといあなたがたに、キリストにある|養育掛《よういくがかり》が一万|人《にん》あったとしても、|父《ちち》が|多《おお》くあるのではない。キリスト・イエスにあって、|福音《ふくいん》によりあなたがたを|生《う》んだのは、わたしなのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたがたに|勧《すす》める。わたしにならう|者《もの》となりなさい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]このことのために、わたしは|主《しゅ》にあって|愛《あい》する|忠実《ちゅうじつ》なわたしの|子《こ》テモテを、あなたがたの|所《ところ》につかわした。|彼《かれ》は、キリスト・イエスにおけるわたしの|生活《せいかつ》のしかたを、わたしが|至《いた》る|所《ところ》の|教会《きょうかい》で|教《おし》えているとおりに、あなたがたに|思《おも》い|起《おこ》させてくれるであろう。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]しかしある|人々《ひとびと》は、わたしがあなたがたの|所《ところ》に|来《く》ることはあるまいとみて、|高《たか》ぶっているということである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]しかし|主《しゅ》のみこころであれば、わたしはすぐにでもあなたがたの|所《ところ》に|行《い》って、|高《たか》ぶっている|者《もの》たちの|言葉《ことば》ではなく、その|力《ちから》を|見《み》せてもらおう。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|国《くに》は|言葉《ことば》ではなく、|力《ちから》である。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、どちらを|望《のぞ》むのか。わたしがむちをもって、あなたがたの|所《ところ》に|行《ゆ》くことか、それとも、|愛《あい》と|柔和《にゅうわ》な|心《こころ》とをもって|行《ゆ》くことであるか。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|現《げん》に|聞《き》くところによると、あなたがたの|間《あいだ》に|不品行《ふひんこう》な|者《もの》があり、しかもその|不品行《ふひんこう》は、|異邦人《いほうじん》の|間《あいだ》にもないほどのもので、ある|人《ひと》がその|父《ちち》の|妻《つま》と|一緒《いっしょ》に|住《す》んでいるということである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それだのに、なお、あなたがたは|高《たか》ぶっている。むしろ、そんな|行《おこな》いをしている|者《もの》が、あなたがたの|中《なか》から|除《のぞ》かれねばならないことを|思《おも》って、|悲《かな》しむべきではないか。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたし|自身《じしん》としては、からだは|離《はな》れていても、|霊《れい》では|一緒《いっしょ》にいて、その|場《ば》にいる|者《もの》のように、そんな|行《おこな》いをした|者《もの》を、すでにさばいてしまっている。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|主《しゅ》イエスの|名《な》によって、あなたがたもわたしの|霊《れい》も|共《とも》に、わたしたちの|主《しゅ》イエスの|権威《けんい》のもとに|集《あつ》まって、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》の|肉《にく》が|滅《ほろ》ぼされても、その|霊《れい》が|主《しゅ》のさばきの|日《ひ》に|救《すく》われるように、|彼《かれ》をサタンに|引《ひ》き|渡《わた》してしまったのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|誇《ほこ》っているのは、よろしくない。あなたがたは、|少《すこ》しのパン|種《だね》が|粉《こな》のかたまり|全体《ぜんたい》をふくらませることを、|知《し》らないのか。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|新《あたら》しい|粉《こな》のかたまりになるために、|古《ふる》いパン|種《だね》を|取《と》り|除《のぞ》きなさい。あなたがたは、|事実《じじつ》パン|種《だね》のない|者《もの》なのだから。わたしたちの|過越《すぎこし》の|小羊《こひつじ》であるキリストは、すでにほふられたのだ。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ゆえに、わたしたちは、|古《ふる》いパン|種《だね》や、また|悪意《あくい》と|邪悪《じゃあく》とのパン|種《だね》を|用《もち》いずに、パン|種《だね》のはいっていない|純粋《じゅんすい》で|真実《しんじつ》なパンをもって、|祭《まつり》をしようではないか。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|前《まえ》の|手紙《てがみ》で、|不品行《ふひんこう》な|者《もの》たちと|交際《こうさい》してはいけないと|書《か》いたが、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それは、この|世《よ》の|不品行《ふひんこう》な|者《もの》、|貪欲《どんよく》な|者《もの》、|略奪《りゃくだつ》をする|者《もの》、|偶像《ぐうぞう》|礼拝《れいはい》をする|者《もの》などと|全然《ぜんぜん》|交際《こうさい》してはいけないと、|言《い》ったのではない。もしそうだとしたら、あなたがたはこの|世《よ》から|出《で》て|行《い》かねばならないことになる。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしが|実際《じっさい》に|書《か》いたのは、|兄弟《きょうだい》と|呼《よ》ばれる|人《ひと》で、|不品行《ふひんこう》な|者《もの》、|貪欲《どんよく》な|者《もの》、|偶像《ぐうぞう》|礼拝《れいはい》をする|者《もの》、|人《ひと》をそしる|者《もの》、|酒《さけ》に|酔《よ》う|者《もの》、|略奪《りゃくだつ》をする|者《もの》があれば、そんな|人《ひと》と|交際《こうさい》をしてはいけない、|食事《しょくじ》を|共《とも》にしてもいけない、ということであった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|外《そと》の|人《ひと》たちをさばくのは、わたしのすることであろうか。あなたがたのさばくべき|者《もの》は、|内《うち》の|人《ひと》たちではないか。|外《そと》の|人《ひと》たちは、|神《かみ》がさばくのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]その|悪人《あくにん》を、あなたがたの|中《なか》から|除《のぞ》いてしまいなさい。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|中《なか》のひとりが、|仲間《なかま》の|者《もの》と|何《なに》か|争《あらそ》いを|起《おこ》した|場合《ばあい》、それを|聖徒《せいと》に|訴《うった》えないで、|正《ただ》しくない|者《もの》に|訴《うった》え|出《で》るようなことをするのか。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それとも、|聖徒《せいと》は|世《よ》をさばくものであることを、あなたがたは|知《し》らないのか。そして、|世《よ》があなたがたによってさばかれるべきであるのに、きわめて|小《ちい》さい|事件《じけん》でもさばく|力《ちから》がないのか。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|知《し》らないのか、わたしたちは|御使《みつかい》をさえさばく|者《もの》である。ましてこの|世《よ》の|事件《じけん》などは、いうまでもないではないか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]それだのに、この|世《よ》の|事件《じけん》が|起《おこ》ると、|教会《きょうかい》で|軽《かろ》んじられている|人《ひと》たちを、|裁判《さいばん》の|席《せき》につかせるのか。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしがこう|言《い》うのは、あなたがたをはずかしめるためである。いったい、あなたがたの|中《なか》には、|兄弟《きょうだい》の|間《あいだ》の|争《あらそ》いを|仲裁《ちゅうさい》することができるほどの|知者《ちしゃ》は、ひとりもいないのか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかるに、|兄弟《きょうだい》が|兄弟《きょうだい》を|訴《うった》え、しかもそれを|不信者《ふしんじゃ》の|前《まえ》に|持《も》ち|出《だ》すのか。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そもそも、|互《たがい》に|訴《うった》え|合《あ》うこと|自体《じたい》が、すでにあなたがたの|敗北《はいぼく》なのだ。なぜ、むしろ|不義《ふぎ》を|受《う》けないのか。なぜ、むしろだまされていないのか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかるに、あなたがたは|不義《ふぎ》を|働《はたら》き、だまし|取《と》り、しかも|兄弟《きょうだい》に|対《たい》してそうしているのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それとも、|正《ただ》しくない|者《もの》が|神《かみ》の|国《くに》をつぐことはないのを、|知《し》らないのか。まちがってはいけない。|不品行《ふひんこう》な|者《もの》、|偶像《ぐうぞう》を|礼拝《れいはい》する|者《もの》、|姦淫《かんいん》をする|者《もの》、|男娼《だんしょう》となる|者《もの》、|男色《なんしょく》をする|者《もの》、|盗《ぬす》む|者《もの》、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|貪欲《どんよく》な|者《もの》、|酒《さけ》に|酔《よ》う|者《もの》、そしる|者《もの》、|略奪《りゃくだつ》する|者《もの》は、いずれも|神《かみ》の|国《くに》をつぐことはないのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|中《なか》には、|以前《いぜん》はそんな|人《ひと》もいた。しかし、あなたがたは、|主《しゅ》イエス・キリストの|名《な》によって、またわたしたちの|神《かみ》の|霊《れい》によって、|洗《あら》われ、きよめられ、|義《ぎ》とされたのである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]すべてのことは、わたしに|許《ゆる》されている。しかし、すべてのことが|益《えき》になるわけではない。すべてのことは、わたしに|許《ゆる》されている。しかし、わたしは|何《なに》ものにも|支配《しはい》されることはない。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|食物《しょくもつ》は|腹《はら》のため、|腹《はら》は|食物《しょくもつ》のためである。しかし|神《かみ》は、それもこれも|滅《ほろ》ぼすであろう。からだは|不品行《ふひんこう》のためではなく、|主《しゅ》のためであり、|主《しゅ》はからだのためである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして、|神《かみ》は|主《しゅ》をよみがえらせたが、その|力《ちから》で、わたしたちをもよみがえらせて|下《くだ》さるであろう。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|自分《じぶん》のからだがキリストの|肢体《したい》であることを、|知《し》らないのか。それだのに、キリストの|肢体《したい》を|取《と》って|遊女《ゆうじょ》の|肢体《したい》としてよいのか。|断《だん》じていけない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それとも、|遊女《ゆうじょ》につく|者《もの》はそれと一つのからだになることを、|知《し》らないのか。「ふたりの|者《もの》は|一体《いったい》となるべきである」とあるからである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]しかし|主《しゅ》につく|者《もの》は、|主《しゅ》と一つの|霊《れい》になるのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|不品行《ふひんこう》を|避《さ》けなさい。|人《ひと》の|犯《おか》すすべての|罪《つみ》は、からだの|外《そと》にある。しかし|不品行《ふひんこう》をする|者《もの》は、|自分《じぶん》のからだに|対《たい》して|罪《つみ》を|犯《おか》すのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|知《し》らないのか。|自分《じぶん》のからだは、|神《かみ》から|受《う》けて|自分《じぶん》の|内《うち》に|宿《やど》っている|聖霊《せいれい》の|宮《みや》であって、あなたがたは、もはや|自分《じぶん》|自身《じしん》のものではないのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|代価《だいか》を|払《はら》って|買《か》いとられたのだ。それだから、|自分《じぶん》のからだをもって、|神《かみ》の|栄光《えいこう》をあらわしなさい。 第七章[#「第七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、あなたがたが|書《か》いてよこした|事《こと》について|答《こた》えると、|男子《だんし》は|婦人《ふじん》にふれないがよい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|不品行《ふひんこう》に|陥《おちい》ることのないために、|男子《だんし》はそれぞれ|自分《じぶん》の|妻《つま》を|持《も》ち、|婦人《ふじん》もそれぞれ|自分《じぶん》の|夫《おっと》を|持《も》つがよい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|夫《おっと》は|妻《つま》にその|分《ぶん》を|果《はた》し、|妻《つま》も|同様《どうよう》に|夫《おっと》にその|分《ぶん》を|果《はた》すべきである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|妻《つま》は|自分《じぶん》のからだを|自由《じゆう》にすることはできない。それができるのは|夫《おっと》である。|夫《おっと》も|同様《どうよう》に|自分《じぶん》のからだを|自由《じゆう》にすることはできない。それができるのは|妻《つま》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》に|拒《こば》んではいけない。ただし、|合意《ごうい》の|上《うえ》で|祈《いのり》に|専心《せんしん》するために、しばらく|相別《あいわか》れ、それからまた|一緒《いっしょ》になることは、さしつかえない。そうでないと、|自制力《じせいりょく》のないのに|乗《じょう》じて、サタンがあなたがたを|誘惑《ゆうわく》するかも|知《し》れない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|以上《いじょう》のことは、|譲歩《じょうほ》のつもりで|言《い》うのであって、|命令《めいれい》するのではない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしとしては、みんなの|者《もの》がわたし|自身《じしん》のようになってほしい。しかし、ひとりびとり|神《かみ》からそれぞれの|賜物《たまもの》をいただいていて、ある|人《ひと》はこうしており、|他《た》の|人《ひと》はそうしている。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|次《つぎ》に、|未婚者《みこんしゃ》たちとやもめたちとに|言《い》うが、わたしのように、ひとりでおれば、それがいちばんよい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もし|自《じ》|制《せい》することができないなら、|結婚《けっこん》するがよい。|情《じょう》の|燃《も》えるよりは、|結婚《けっこん》する|方《ほう》が、よいからである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|更《さら》に、|結婚《けっこん》している|者《もの》たちに|命《めい》じる。|命《めい》じるのは、わたしではなく|主《しゅ》であるが、|妻《つま》は|夫《おっと》から|別《わか》れてはいけない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり](しかし、|万一《まんいち》|別《わか》れているなら、|結婚《けっこん》しないでいるか、それとも|夫《おっと》と|和解《わかい》するかしなさい)。また|夫《おっと》も|妻《つま》と|離婚《りこん》してはならない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そのほかの|人々《ひとびと》に|言《い》う。これを|言《い》うのは、|主《しゅ》ではなく、わたしである。ある|兄弟《きょうだい》に|不信者《ふしんじゃ》の|妻《つま》があり、そして|共《とも》にいることを|喜《よろこ》んでいる|場合《ばあい》には、|離婚《りこん》してはいけない。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]また、ある|婦人《ふじん》の|夫《おっと》が|不信者《ふしんじゃ》であり、そして|共《とも》にいることを|喜《よろこ》んでいる|場合《ばあい》には、|離婚《りこん》してはいけない。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|不信者《ふしんじゃ》の|夫《おっと》は|妻《つま》によってきよめられており、また、|不信者《ふしんじゃ》の|妻《つま》も|夫《おっと》によってきよめられているからである。もしそうでなければ、あなたがたの|子《こ》は|汚《けが》れていることになるが、|実際《じっさい》はきよいではないか。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もし|不信者《ふしんじゃ》の|方《ほう》が|離《はな》れて|行《い》くのなら、|離《はな》れるままにしておくがよい。|兄弟《きょうだい》も|姉妹《しまい》も、こうした|場合《ばあい》には、|束縛《そくばく》されてはいない。|神《かみ》は、あなたがたを|平和《へいわ》に|暮《くら》させるために、|召《め》されたのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|妻《つま》よ、あなたが|夫《おっと》を|救《すく》いうるかどうか、どうしてわかるか。また、|夫《おっと》よ、あなたも|妻《つま》を|救《すく》いうるかどうか、どうしてわかるか。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|各自《かくじ》は、|主《しゅ》から|賜《たま》わった|分《ぶん》に|応《おう》じ、また|神《かみ》に|召《め》されたままの|状態《じょうたい》にしたがって、|歩《あゆ》むべきである。これが、すべての|教会《きょうかい》に|対《たい》してわたしの|命《めい》じるところである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|召《め》されたとき|割礼《かつれい》を|受《う》けていたら、その|跡《あと》をなくそうとしないがよい。また、|召《め》されたとき|割礼《かつれい》を|受《う》けていなかったら、|割礼《かつれい》を|受《う》けようとしないがよい。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|割礼《かつれい》があってもなくても、それは|問題《もんだい》ではない。|大事《だいじ》なのは、ただ|神《かみ》の|戒《いまし》めを|守《まも》ることである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|各自《かくじ》は、|召《め》されたままの|状態《じょうたい》にとどまっているべきである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|召《め》されたとき|奴隷《どれい》であっても、それを|気《き》にしないがよい。しかし、もし|自由《じゆう》の|身《み》になりうるなら、むしろ|自由《じゆう》になりなさい。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》にあって|召《め》された|奴隷《どれい》は、|主《しゅ》によって|自由人《じゆうじん》とされた|者《もの》であり、また、|召《め》された|自由人《じゆうじん》はキリストの|奴隷《どれい》なのである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|代価《だいか》を|払《はら》って|買《か》いとられたのだ。|人《ひと》の|奴隷《どれい》となってはいけない。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|各自《かくじ》は、その|召《め》されたままの|状態《じょうたい》で、|神《かみ》のみまえにいるべきである。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]おとめのことについては、わたしは|主《しゅ》の|命令《めいれい》を|受《う》けてはいないが、|主《しゅ》のあわれみにより|信《しん》|任《にん》を|受《う》けている|者《もの》として、|意見《いけん》を|述《の》べよう。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]わたしはこう|考《かんが》える。|現在《げんざい》|迫《せま》っている|危機《きき》のゆえに、|人《ひと》は|現状《げんじょう》にとどまっているがよい。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]もし|妻《つま》に|結《むす》ばれているなら、|解《と》こうとするな。|妻《つま》に|結《むす》ばれていないなら、|妻《つま》を|迎《むか》えようとするな。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、たとい|結婚《けっこん》しても、|罪《つみ》を|犯《おか》すのではない。また、おとめが|結婚《けっこん》しても、|罪《つみ》を|犯《おか》すのではない。ただ、それらの|人々《ひとびと》はその|身《み》に|苦難《くなん》を|受《う》けるであろう。わたしは、あなたがたを、それからのがれさせたいのだ。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしの|言《い》うことを|聞《き》いてほしい。|時《とき》は|縮《ちぢ》まっている。|今《いま》からは|妻《つま》のある|者《もの》はないもののように、[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|泣《な》く|者《もの》は|泣《な》かないもののように、|喜《よろこ》ぶ|者《もの》は|喜《よろこ》ばないもののように、|買《か》う|者《もの》は|持《も》たないもののように、[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|世《よ》と|交渉《こうしょう》のある|者《もの》は、それに|深《ふか》|入《い》りしないようにすべきである。なぜなら、この|世《よ》の|有様《ありさま》は|過《す》ぎ|去《さ》るからである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]わたしはあなたがたが、|思《おも》い|煩《わずら》わないようにしていてほしい。|未婚《みこん》の|男子《だんし》は|主《しゅ》のことに|心《こころ》をくばって、どうかして|主《しゅ》を|喜《よろこ》ばせようとするが、[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|結婚《けっこん》している|男子《だんし》はこの|世《よ》のことに|心《こころ》をくばって、どうかして|妻《つま》を|喜《よろこ》ばせようとして、その|心《こころ》が|分《わか》れるのである。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|未婚《みこん》の|婦人《ふじん》とおとめとは、|主《しゅ》のことに|心《こころ》をくばって、|身《み》も|魂《たましい》もきよくなろうとするが、|結婚《けっこん》した|婦人《ふじん》はこの|世《よ》のことに|心《こころ》をくばって、どうかして|夫《おっと》を|喜《よろこ》ばせようとする。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]わたしがこう|言《い》うのは、あなたがたの|利益《りえき》になると|思《おも》うからであって、あなたがたを|束縛《そくばく》するためではない。そうではなく、|正《ただ》しい|生活《せいかつ》を|送《おく》って、|余念《よねん》なく|主《しゅ》に|奉仕《ほうし》させたいからである。  [#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]もしある|人《ひと》が、|相手《あいて》のおとめに|対《たい》して、|情《じょう》|熱《ねつ》をいだくようになった|場合《ばあい》、それは|適当《てきとう》でないと|思《おも》いつつも、やむを|得《え》なければ、|望《のぞ》みどおりにしてもよい。それは|罪《つみ》を|犯《おか》すことではない。ふたりは|結婚《けっこん》するがよい。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》が|心《こころ》の|内《うち》で|堅《かた》く|決心《けっしん》していて、|無理《むり》をしないで|自分《じぶん》の|思《おも》いを|制《せい》することができ、その|上《うえ》で、|相手《あいて》のおとめをそのままにしておこうと、|心《こころ》の|中《なか》で|決《き》めたなら、そうしてもよい。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]だから、|相手《あいて》のおとめと|結婚《けっこん》することはさしつかえないが、|結婚《けっこん》しない|方《ほう》がもっとよい。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]|妻《つま》は|夫《おっと》が|生《い》きている|間《あいだ》は、その|夫《おっと》につながれている。|夫《おっと》が|死《し》ねば、|望《のぞ》む|人《ひと》と|結婚《けっこん》してもさしつかえないが、それは|主《しゅ》にある|者《もの》とに|限《かぎ》る。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしの|意見《いけん》では、そのままでいたなら、もっと|幸福《こうふく》である。わたしも|神《かみ》の|霊《れい》を|受《う》けていると|思《おも》う。 第八章[#「第八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|偶像《ぐうぞう》への|供《そな》え|物《もの》について|答《こた》えると、「わたしたちはみな|知識《ちしき》を|持《も》っている」ことは、わかっている。しかし、|知識《ちしき》は|人《ひと》を|誇《ほこ》らせ、|愛《あい》は|人《ひと》の|徳《とく》を|高《たか》める。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]もし|人《ひと》が、|自分《じぶん》は|何《なに》か|知《し》っていると|思《おも》うなら、その|人《ひと》は、|知《し》らなければならないほどの|事《こと》すら、まだ|知《し》っていない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|人《ひと》が|神《かみ》を|愛《あい》するなら、その|人《ひと》は|神《かみ》に|知《し》られているのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]さて、|偶像《ぐうぞう》への|供《そな》え|物《もの》を|食《た》べることについては、わたしたちは、|偶像《ぐうぞう》なるものは|実際《じっさい》は|世《よ》に|存在《そんざい》しないこと、また、|唯一《ゆいいつ》の|神《かみ》のほかには|神《かみ》がないことを、|知《し》っている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]というのは、たとい|神々《かみがみ》といわれるものが、あるいは|天《てん》に、あるいは|地《ち》にあるとしても、そして、|多《おお》くの|神《かみ》、|多《おお》くの|主《しゅ》があるようではあるが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちには、|父《ちち》なる|唯一《ゆいいつ》の|神《かみ》のみがいますのである。|万物《ばんぶつ》はこの|神《かみ》から|出《で》て、わたしたちもこの|神《かみ》に|帰《き》する。また、|唯一《ゆいいつ》の|主《しゅ》イエス・キリストのみがいますのである。|万物《ばんぶつ》はこの|主《しゅ》により、わたしたちもこの|主《しゅ》によっている。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、この|知識《ちしき》をすべての|人《ひと》が|持《も》っているのではない。ある|人々《ひとびと》は、|偶像《ぐうぞう》についての、これまでの|習慣上《しゅうかんじょう》、|偶像《ぐうぞう》への|供《そな》え|物《もの》として、それを|食《た》べるが、|彼《かれ》らの|良心《りょうしん》が、|弱《よわ》いために|汚《けが》されるのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|食物《しょくもつ》は、わたしたちを|神《かみ》に|導《みちび》くものではない。|食《た》べなくても|損《そん》はないし、|食《た》べても|益《えき》にはならない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたのこの|自由《じゆう》が、|弱《よわ》い|者《もの》たちのつまずきにならないように、|気《き》をつけなさい。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、ある|人《ひと》が、|知識《ちしき》のあるあなたが|偶像《ぐうぞう》の|宮《みや》で|食事《しょくじ》をしているのを|見《み》た|場合《ばあい》、その|人《ひと》の|良心《りょうしん》が|弱《よわ》いため、それに「|教育《きょういく》されて」、|偶像《ぐうぞう》への|供《そな》え|物《もの》を|食《た》べるようにならないだろうか。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]するとその|弱《よわ》い|人《ひと》は、あなたの|知識《ちしき》によって|滅《ほろ》びることになる。この|弱《よわ》い|兄弟《きょうだい》のためにも、キリストは|死《し》なれたのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]このようにあなたがたが、|兄弟《きょうだい》たちに|対《たい》して|罪《つみ》を|犯《おか》し、その|弱《よわ》い|良心《りょうしん》を|痛《いた》めるのは、キリストに|対《たい》して|罪《つみ》を|犯《おか》すことなのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]だから、もし|食物《しょくもつ》がわたしの|兄弟《きょうだい》をつまずかせるなら、|兄弟《きょうだい》をつまずかせないために、わたしは|永久《えいきゅう》に、|断《だん》じて|肉《にく》を|食《た》べることはしない。 第九章[#「第九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|自由《じゆう》な|者《もの》ではないか。|使徒《しと》ではないか。わたしたちの|主《しゅ》イエスを|見《み》たではないか。あなたがたは、|主《しゅ》にあるわたしの|働《はたら》きの|実《み》ではないか。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、ほかの|人《ひと》に|対《たい》しては|使徒《しと》でないとしても、あなたがたには|使徒《しと》である。あなたがたが|主《しゅ》にあることは、わたしの|使徒《しと》|職《しょく》の|印《しるし》なのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|批判者《ひはんしゃ》たちに|対《たい》する|弁明《べんめい》は、これである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちには、|飲《の》み|食《く》いをする|権利《けんり》がないのか。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちには、ほかの|使徒《しと》たちや|主《しゅ》の|兄弟《きょうだい》たちやケパのように、|信者《しんじゃ》である|妻《つま》を|連《つ》れて|歩《ある》く|権利《けんり》がないのか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]それとも、わたしとバルナバとだけには、|労働《ろうどう》をせずにいる|権利《けんり》がないのか。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|自分《じぶん》で|費用《ひよう》を|出《だ》して|軍隊《ぐんたい》に|加《くわ》わる|者《もの》があろうか。ぶどう|畑《はたけ》を|作《つく》っていて、その|実《み》を|食《た》べない|者《もの》があろうか。また、|羊《ひつじ》を|飼《か》っていて、その|乳《ちち》を|飲《の》まない|者《もの》があろうか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|人間《にんげん》の|考《かんが》えでこう|言《い》うのではない。|律法《りっぽう》もまた、そのように|言《い》っているではないか。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、モーセの|律法《りっぽう》に、「|穀物《こくもつ》をこなしている|牛《うし》に、くつこをかけてはならない」と|書《か》いてある。|神《かみ》は、|牛《うし》のことを|心《こころ》にかけておられるのだろうか。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それとも、もっぱら、わたしたちのために|言《い》っておられるのか。もちろん、それはわたしたちのためにしるされたのである。すなわち、|耕《たがや》す|者《もの》は|望《のぞ》みをもって|耕《たがや》し、|穀物《こくもつ》をこなす|者《もの》は、その|分《わ》け|前《まえ》をもらう|望《のぞ》みをもってこなすのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしたちが、あなたがたのために|霊《れい》のものをまいたのなら、|肉《にく》のものをあなたがたから|刈《か》りとるのは、|行《ゆ》き|過《す》ぎだろうか。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]もしほかの|人々《ひとびと》が、あなたがたに|対《たい》するこの|権利《けんり》にあずかっているとすれば、わたしたちはなおさらのことではないか。しかしわたしたちは、この|権利《けんり》を|利《り》|用《よう》せず、かえってキリストの|福音《ふくいん》の|妨《さまた》げにならないようにと、すべてのことを|忍《しの》んでいる。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|宮仕《みやづか》えをしている|人《ひと》たちは|宮《みや》から|下《さ》がる|物《もの》を|食《た》べ、|祭壇《さいだん》に|奉仕《ほうし》している|人《ひと》たちは|祭壇《さいだん》の|供《そな》え|物《もの》の|分《わ》け|前《まえ》にあずかることを、|知《し》らないのか。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]それと|同様《どうよう》に、|主《しゅ》は、|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えている|者《もの》たちが|福音《ふくいん》によって|生活《せいかつ》すべきことを、|定《さだ》められたのである。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかしわたしは、これらの|権利《けんり》を一つも|利《り》|用《よう》しなかった。また、|自分《じぶん》がそうしてもらいたいから、このように|書《か》くのではない。そうされるよりは、|死《し》ぬ|方《ほう》がましである。わたしのこの|誇《ほこり》は、|何者《なにもの》にも|奪《うば》い|去《さ》られてはならないのだ。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えても、それは|誇《ほこり》にはならない。なぜなら、わたしは、そうせずにはおれないからである。もし|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えないなら、わたしはわざわいである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|進《すす》んでそれをすれば、|報酬《ほうしゅう》を|受《う》けるであろう。しかし、|進《すす》んでしないとしても、それは、わたしにゆだねられた|務《つとめ》なのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]それでは、その|報酬《ほうしゅう》はなんであるか。|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えるのにそれを|無《む》|代価《だいか》で|提供《ていきょう》し、わたしが|宣教者《せんきょうしゃ》として|持《も》つ|権利《けんり》を|利《り》|用《よう》しないことである。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、すべての|人《ひと》に|対《たい》して|自由《じゆう》であるが、できるだけ|多《おお》くの|人《ひと》を|得《え》るために、|自《みずか》ら|進《すす》んですべての|人《ひと》の|奴隷《どれい》になった。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》には、ユダヤ|人《じん》のようになった。ユダヤ|人《じん》を|得《え》るためである。|律法《りっぽう》の|下《もと》にある|人《ひと》には、わたし|自身《じしん》は|律法《りっぽう》の|下《もと》にはないが、|律法《りっぽう》の|下《もと》にある|者《もの》のようになった。|律法《りっぽう》の|下《もと》にある|人《ひと》を|得《え》るためである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》のない|人《ひと》には――わたしは|神《かみ》の|律法《りっぽう》の|外《そと》にあるのではなく、キリストの|律法《りっぽう》の|中《なか》にあるのだが――|律法《りっぽう》のない|人《ひと》のようになった。|律法《りっぽう》のない|人《ひと》を|得《え》るためである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|弱《よわ》い|人《ひと》には|弱《よわ》い|者《もの》になった。|弱《よわ》い|人《ひと》を|得《え》るためである。すべての|人《ひと》に|対《たい》しては、すべての|人《ひと》のようになった。なんとかして|幾人《いくにん》かを|救《すく》うためである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|福音《ふくいん》のために、わたしはどんな|事《こと》でもする。わたしも|共《とも》に|福音《ふくいん》にあずかるためである。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|知《し》らないのか。|競技場《きょうぎじょう》で|走《はし》る|者《もの》は、みな|走《はし》りはするが、|賞《しょう》を|得《え》る|者《もの》はひとりだけである。あなたがたも、|賞《しょう》を|得《え》るように|走《はし》りなさい。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、すべて|競技《きょうぎ》をする|者《もの》は、|何《なに》ごとにも|節制《せっせい》をする。|彼《かれ》らは|朽《く》ちる|冠《かんむり》を|得《え》るためにそうするが、わたしたちは|朽《く》ちない|冠《かんむり》を|得《え》るためにそうするのである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしは|目標《もくひょう》のはっきりしないような|走《はし》り|方《かた》をせず、|空《くう》を|打《う》つような|拳闘《けんとう》はしない。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|自分《じぶん》のからだを|打《う》ちたたいて|服従《ふくじゅう》させるのである。そうしないと、ほかの|人《ひと》に|宣《の》べ|伝《つた》えておきながら、|自分《じぶん》は|失格者《しっかくしゃ》になるかも|知《し》れない。 第一〇章[#「第一〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。このことを|知《し》らずにいてもらいたくない。わたしたちの|先祖《せんぞ》はみな|雲《くも》の|下《した》におり、みな|海《うみ》を|通《とお》り、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]みな|雲《くも》の|中《なか》、|海《うみ》の|中《なか》で、モーセにつくバプテスマを|受《う》けた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]また、みな|同《おな》じ|霊《れい》の|食物《しょくもつ》を|食《た》べ、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]みな|同《おな》じ|霊《れい》の|飲《の》み|物《もの》を|飲《の》んだ。すなわち、|彼《かれ》らについてきた|霊《れい》の|岩《いわ》から|飲《の》んだのであるが、この|岩《いわ》はキリストにほかならない。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らの|中《なか》の|大多数《だいたすう》は、|神《かみ》のみこころにかなわなかったので、|荒野《あらの》で|滅《ほろ》ぼされてしまった。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]これらの|出来事《できごと》は、わたしたちに|対《たい》する|警告《けいこく》であって、|彼《かれ》らが|悪《あく》をむさぼったように、わたしたちも|悪《あく》をむさぼることのないためなのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]だから、|彼《かれ》らの|中《なか》のある|者《もの》たちのように、|偶像《ぐうぞう》|礼拝者《れいはいしゃ》になってはならない。すなわち、「|民《たみ》は|座《ざ》して|飲《の》み|食《く》いをし、また|立《た》って|踊《おど》り|戯《たわむ》れた」と|書《か》いてある。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]また、ある|者《もの》たちがしたように、わたしたちは|不品行《ふひんこう》をしてはならない。|不品行《ふひんこう》をしたため|倒《たお》された|者《もの》が、一|日《にち》に二万三千|人《にん》もあった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]また、ある|者《もの》たちがしたように、わたしたちは|主《しゅ》を|試《こころ》みてはならない。|主《しゅ》を|試《こころ》みた|者《もの》は、へびに|殺《ころ》された。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]また、ある|者《もの》たちがつぶやいたように、つぶやいてはならない。つぶやいた|者《もの》は、「|死《し》の|使《つかい》」に|滅《ほろ》ぼされた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]これらの|事《こと》が|彼《かれ》らに|起《おこ》ったのは、|他《ほか》に|対《たい》する|警告《けいこく》としてであって、それが|書《か》かれたのは、|世《よ》の|終《おわ》りに|臨《のぞ》んでいるわたしたちに|対《たい》する|訓戒《くんかい》のためである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]だから、|立《た》っていると|思《おも》う|者《もの》は、|倒《たお》れないように|気《き》をつけるがよい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|会《あ》った|試錬《しれん》で、|世《よ》の|常《つね》でないものはない。|神《かみ》は|真実《しんじつ》である。あなたがたを|耐《た》えられないような|試錬《しれん》に|会《あ》わせることはないばかりか、|試錬《しれん》と|同時《どうじ》に、それに|耐《た》えられるように、のがれる|道《みち》も|備《そな》えて|下《くだ》さるのである。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]それだから、|愛《あい》する|者《もの》たちよ。|偶像《ぐうぞう》|礼拝《れいはい》を|避《さ》けなさい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|賢明《けんめい》なあなたがたに|訴《うった》える。わたしの|言《い》うことを、|自《みずか》ら|判断《はんだん》してみるがよい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|祝福《しゅくふく》する|祝福《しゅくふく》の|杯《さかずき》、それはキリストの|血《ち》にあずかることではないか。わたしたちがさくパン、それはキリストのからだにあずかることではないか。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]パンが一つであるから、わたしたちは|多《おお》くいても、一つのからだなのである。みんなの|者《もの》が一つのパンを|共《とも》にいただくからである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|肉《にく》によるイスラエルを|見《み》るがよい。|供《そな》え|物《もの》を|食《た》べる|人《ひと》たちは、|祭壇《さいだん》にあずかるのではないか。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すると、なんと|言《い》ったらよいか。|偶像《ぐうぞう》にささげる|供《そな》え|物《もの》は、|何《なに》か|意味《いみ》があるのか。また、|偶像《ぐうぞう》は|何《なに》かほんとうにあるものか。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そうではない。|人々《ひとびと》が|供《そな》える|物《もの》は、|悪霊《あくれい》ども、すなわち、|神《かみ》ならぬ|者《もの》に|供《そな》えるのである。わたしは、あなたがたが|悪霊《あくれい》の|仲間《なかま》になることを|望《のぞ》まない。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》の|杯《さかずき》と|悪霊《あくれい》どもの|杯《さかずき》とを、|同時《どうじ》に|飲《の》むことはできない。|主《しゅ》の|食卓《しょくたく》と|悪霊《あくれい》どもの|食卓《しょくたく》とに、|同時《どうじ》にあずかることはできない。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]それとも、わたしたちは|主《しゅ》のねたみを|起《おこし》そうとするのか。わたしたちは、|主《しゅ》よりも|強《つよ》いのだろうか。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]すべてのことは|許《ゆる》されている。しかし、すべてのことが|益《えき》になるわけではない。すべてのことは|許《ゆる》されている。しかし、すべてのことが|人《ひと》の|徳《とく》を|高《たか》めるのではない。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]だれでも、|自分《じぶん》の|益《えき》を|求《もと》めないで、ほかの|人《ひと》の|益《えき》を|求《もと》めるべきである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]すべて|市場《いちば》で|売《う》られている|物《もの》は、いちいち|良心《りょうしん》に|問《と》うことをしないで、|食《た》べるがよい。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|地《ち》とそれに|満《み》ちている|物《もの》とは、|主《しゅ》のものだからである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたがたが、|不信者《ふしんじゃ》のだれかに|招《まね》かれて、そこに|行《い》こうと|思《おも》う|場合《ばあい》、|自分《じぶん》の|前《まえ》に|出《だ》される|物《もの》はなんでも、いちいち|良心《りょうしん》に|問《と》うことをしないで、|食《た》べるがよい。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、だれかがあなたがたに、これはささげ|物《もの》の|肉《にく》だと|言《い》ったなら、それを|知《し》らせてくれた|人《ひと》のために、また|良心《りょうしん》のために、|食《た》べないがよい。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|良心《りょうしん》と|言《い》ったのは、|自分《じぶん》の|良心《りょうしん》ではなく、|他人《たにん》の|良心《りょうしん》のことである。なぜなら、わたしの|自由《じゆう》が、どうして|他人《たにん》の|良心《りょうしん》によって|左右《さゆう》されることがあろうか。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしが|感謝《かんしゃ》して|食《た》べる|場合《ばあい》、その|感謝《かんしゃ》する|物《もの》について、どうして|人《ひと》のそしりを|受《う》けるわけがあろうか。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]だから、|飲《の》むにも|食《た》べるにも、また|何事《なにごと》をするにも、すべて|神《かみ》の|栄光《えいこう》のためにすべきである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》にもギリシヤ|人《じん》にも|神《かみ》の|教会《きょうかい》にも、つまずきになってはいけない。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]わたしもまた、|何事《なにごと》にもすべての|人《ひと》に|喜《よろこ》ばれるように|努《つと》め、|多《おお》くの|人《ひと》が|救《すく》われるために、|自分《じぶん》の|益《えき》ではなく|彼《かれ》らの|益《えき》を|求《もと》めている。 第一一章[#「第一一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしがキリストにならう|者《もの》であるように、あなたがたもわたしにならう|者《もの》になりなさい。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが、|何《なに》かにつけわたしを|覚《おぼ》えていて、あなたがたに|伝《つた》えたとおりに|言伝《いいつた》えを|守《まも》っているので、わたしは|満足《まんぞく》に|思《おも》う。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたに|知《し》っていてもらいたい。すべての|男《おとこ》のかしらはキリストであり、|女《おんな》のかしらは|男《おとこ》であり、キリストのかしらは|神《かみ》である。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|祈《いのり》をしたり|預言《よげん》をしたりする|時《とき》、かしらに|物《もの》をかぶる|男《おとこ》は、そのかしらをはずかしめる|者《もの》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|祈《いのり》をしたり|預言《よげん》をしたりする|時《とき》、かしらにおおいをかけない|女《おんな》は、そのかしらをはずかしめる|者《もの》である。それは、|髪《かみ》をそったのとまったく|同《おな》じだからである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]もし|女《おんな》がおおいをかけないなら、|髪《かみ》を|切《き》ってしまうがよい。|髪《かみ》を|切《き》ったりそったりするのが、|女《おんな》にとって|恥《は》ずべきことであるなら、おおいをかけるべきである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|男《おとこ》は、|神《かみ》のかたちであり|栄光《えいこう》であるから、かしらに|物《もの》をかぶるべきではない。|女《おんな》は、また|男《おとこ》の|光栄《こうえい》である。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|男《おとこ》が|女《おんな》から|出《で》たのではなく、|女《おんな》が|男《おとこ》から|出《で》たのだからである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]また、|男《おとこ》は|女《おんな》のために|造《つく》られたのではなく、|女《おんな》が|男《おとこ》のために|造《つく》られたのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それだから、|女《おんな》は、かしらに|権威《けんい》のしるしをかぶるべきである。それは|天使《てんし》たちのためでもある。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|主《しゅ》にあっては、|男《おとこ》なしには|女《おんな》はないし、|女《おんな》なしには|男《おとこ》はない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それは、|女《おんな》が|男《おとこ》から|出《で》たように、|男《おとこ》もまた|女《おんな》から|生《うま》れたからである。そして、すべてのものは|神《かみ》から|出《で》たのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがた|自身《じしん》で|判断《はんだん》してみるがよい。|女《おんな》がおおいをかけずに|神《かみ》に|祈《いの》るのは、ふさわしいことだろうか。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|自然《しぜん》そのものが|教《おし》えているではないか。|男《おとこ》に|長《なが》い|髪《かみ》があれば|彼《かれ》の|恥《はじ》になり、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》に|長《なが》い|髪《かみ》があれば|彼女《かのじょ》の|光栄《こうえい》になるのである。|長《なが》い|髪《かみ》はおおいの|代《かわ》りに|女《おんな》に|与《あた》えられているものだからである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、だれかがそれに|反対《はんたい》の|意見《いけん》を|持《も》っていても、そんな|風習《ふうしゅう》はわたしたちにはなく、|神《かみ》の|諸《しょ》|教会《きょうかい》にもない。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]ところで、|次《つぎ》のことを|命《めい》じるについては、あなたがたをほめるわけにはいかない。というのは、あなたがたの|集《あつ》まりが|利益《りえき》にならないで、かえって|損失《そんしつ》になっているからである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]まず、あなたがたが|教会《きょうかい》に|集《あつ》まる|時《とき》、お|互《たがい》の|間《あいだ》に|分争《ぶんそう》があることを、わたしは|耳《みみ》にしており、そしていくぶんか、それを|信《しん》じている。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]たしかに、あなたがたの|中《なか》でほんとうの|者《もの》が|明《あき》らかにされるためには、|分派《ぶんぱ》もなければなるまい。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたがたが|一緒《いっしょ》に|集《あつ》まるとき、|主《しゅ》の|晩餐《ばんさん》を|守《まも》ることができないでいる。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|食事《しょくじ》の|際《さい》、|各自《かくじ》が|自分《じぶん》の|晩餐《ばんさん》をかってに|先《さき》に|食《た》べるので、|飢《う》えている|人《ひと》があるかと|思《おも》えば、|酔《よ》っている|人《ひと》がある|始末《しまつ》である。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたには、|飲《の》み|食《く》いをする|家《いえ》がないのか。それとも、|神《かみ》の|教会《きょうかい》を|軽《かろ》んじ、|貧《まず》しい|人々《ひとびと》をはずかしめるのか。わたしはあなたがたに|対《たい》して、なんと|言《い》おうか。あなたがたを、ほめようか。この|事《こと》では、ほめるわけにはいかない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|主《しゅ》から|受《う》けたことを、また、あなたがたに|伝《つた》えたのである。すなわち、|主《しゅ》イエスは、|渡《わた》される|夜《よ》、パンをとり、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|感謝《かんしゃ》してこれをさき、そして|言《い》われた、「これはあなたがたのための、わたしのからだである。わたしを|記念《きねん》するため、このように|行《おこな》いなさい」。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|食事《しょくじ》ののち、|杯《さかずき》をも|同《おな》じようにして|言《い》われた、「この|杯《さかずき》は、わたしの|血《ち》による|新《あたら》しい|契約《けいやく》である。|飲《の》むたびに、わたしの|記念《きねん》として、このように|行《おこな》いなさい」。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたは、このパンを|食《しょく》し、この|杯《さかずき》を|飲《の》むごとに、それによって、|主《しゅ》がこられる|時《とき》に|至《いた》るまで、|主《しゅ》の|死《し》を|告《つ》げ|知《し》らせるのである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]だから、ふさわしくないままでパンを|食《しょく》し|主《しゅ》の|杯《さかずき》を|飲《の》む|者《もの》は、|主《しゅ》のからだと|血《ち》とを|犯《おか》すのである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]だれでもまず|自分《じぶん》を|吟味《ぎんみ》し、それからパンを|食《た》べ|杯《さかずき》を|飲《の》むべきである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》のからだをわきまえないで|飲《の》み|食《く》いする|者《もの》は、その|飲《の》み|食《く》いによって|自分《じぶん》にさばきを|招《まね》くからである。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|中《なか》に、|弱《よわ》い|者《もの》や|病人《びょうにん》が|大《おお》ぜいおり、また|眠《ねむ》った|者《もの》も|少《すく》なくないのは、そのためである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|自分《じぶん》をよくわきまえておくならば、わたしたちはさばかれることはないであろう。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、さばかれるとすれば、それは、この|世《よ》と|共《とも》に|罪《つみ》に|定《さだ》められないために、|主《しゅ》の|懲《こ》らしめを|受《う》けることなのである。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]それだから、|兄弟《きょうだい》たちよ。|食事《しょくじ》のために|集《あつ》まる|時《とき》には、|互《たがい》に|待《ま》ち|合《あ》わせなさい。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]もし|空腹《くうふく》であったら、さばきを|受《う》けに|集《あつ》まることにならないため、|家《いえ》で|食《た》べるがよい。そのほかの|事《こと》は、わたしが|行《い》った|時《とき》に、|定《さだ》めることにしよう。 第一二章[#「第一二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|霊《れい》の|賜物《たまもの》については、|次《つぎ》のことを|知《し》らずにいてもらいたくない。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたがまだ|異邦人《いほうじん》であった|時《とき》、|誘《さそ》われるまま、|物《もの》の|言《い》えない|偶像《ぐうぞう》のところに|引《ひ》かれて|行《い》ったことは、あなたがたの|承知《しょうち》しているとおりである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたがたに|言《い》っておくが、|神《かみ》の|霊《れい》によって|語《かた》る|者《もの》はだれも「イエスはのろわれよ」とは|言《い》わないし、また、|聖霊《せいれい》によらなければ、だれも「イエスは|主《しゅ》である」と|言《い》うことができない。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|霊《れい》の|賜物《たまもの》は|種々《しゅじゅ》あるが、|御霊《みたま》は|同《おな》じである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|務《つとめ》は|種々《しゅじゅ》あるが、|主《しゅ》は|同《おな》じである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|働《はたら》きは|種々《しゅじゅ》あるが、すべてのものの|中《なか》に|働《はたら》いてすべてのことをなさる|神《かみ》は、|同《おな》じである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|各自《かくじ》が|御霊《みたま》の|現《あらわ》れを|賜《たま》わっているのは、|全体《ぜんたい》の|益《えき》になるためである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、ある|人《ひと》には|御霊《みたま》によって|知恵《ちえ》の|言葉《ことば》が|与《あた》えられ、ほかの|人《ひと》には、|同《おな》じ|御霊《みたま》によって|知識《ちしき》の|言《ことば》、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]またほかの|人《ひと》には、|同《おな》じ|御霊《みたま》によって|信仰《しんこう》、またほかの|人《ひと》には、一つの|御霊《みたま》によっていやしの|賜物《たまもの》、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]またほかの|人《ひと》には|力《ちから》あるわざ、またほかの|人《ひと》には|預言《よげん》、またほかの|人《ひと》には|霊《れい》を|見《み》わける|力《ちから》、またほかの|人《ひと》には|種々《しゅじゅ》の|異言《いげん》、またほかの|人《ひと》には|異言《いげん》を|解《と》く|力《ちから》が、|与《あた》えられている。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]すべてこれらのものは、一つの|同《おな》じ|御霊《みたま》の|働《はたら》きであって、|御霊《みたま》は|思《おも》いのままに、それらを|各自《かくじ》に|分《わ》け|与《あた》えられるのである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]からだが一つであっても|肢体《したい》は|多《おお》くあり、また、からだのすべての|肢体《したい》が|多《おお》くあっても、からだは一つであるように、キリストの|場合《ばあい》も|同様《どうよう》である。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、わたしたちは|皆《みな》、ユダヤ|人《じん》もギリシヤ|人《じん》も、|奴隷《どれい》も|自由人《じゆうじん》も、一つの|御霊《みたま》によって、一つのからだとなるようにバプテスマを|受《う》け、そして|皆《みな》一つの|御霊《みたま》を|飲《の》んだからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|実際《じっさい》、からだは一つの|肢体《したい》だけではなく、|多《おお》くのものからできている。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]もし|足《あし》が、わたしは|手《て》ではないから、からだに|属《ぞく》していないと|言《い》っても、それで、からだに|属《ぞく》さないわけではない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]また、もし|耳《みみ》が、わたしは|目《め》ではないから、からだに|属《ぞく》していないと|言《い》っても、それで、からだに|属《ぞく》さないわけではない。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]もしからだ|全体《ぜんたい》が|目《め》だとすれば、どこで|聞《き》くのか。もし、からだ|全体《ぜんたい》が|耳《みみ》だとすれば、どこでかぐのか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そこで|神《かみ》は|御旨《みむね》のままに、|肢体《したい》をそれぞれ、からだに|備《そな》えられたのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]もし、すべてのものが一つの|肢体《したい》なら、どこにからだがあるのか。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが|実際《じっさい》、|肢体《したい》は|多《おお》くあるが、からだは一つなのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|目《め》は|手《て》にむかって、「おまえはいらない」とは|言《い》えず、また|頭《あたま》は|足《あし》にむかって、「おまえはいらない」とも|言《い》えない。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そうではなく、むしろ、からだのうちで|他《ほか》よりも|弱《よわ》く|見《み》える|肢体《したい》が、かえって|必要《ひつよう》なのであり、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]からだのうちで、|他《ほか》よりも|見《み》|劣《おと》りがすると|思《おも》えるところに、ものを|着《き》せていっそう|見《み》よくする。|麗《うるわ》しくない|部分《ぶぶん》はいっそう|麗《うるわ》しくするが、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|麗《うるわ》しい|部分《ぶぶん》はそうする|必要《ひつよう》がない。|神《かみ》は|劣《おと》っている|部分《ぶぶん》をいっそう|見《み》よくして、からだに|調和《ちょうわ》をお|与《あた》えになったのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]それは、からだの|中《なか》に|分裂《ぶんれつ》がなく、それぞれの|肢体《したい》が|互《たがい》にいたわり|合《あ》うためなのである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]もし一つの|肢体《したい》が|悩《なや》めば、ほかの|肢体《したい》もみな|共《とも》に|悩《なや》み、一つの|肢体《したい》が|尊《たっと》ばれると、ほかの|肢体《したい》もみな|共《とも》に|喜《よろこ》ぶ。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはキリストのからだであり、ひとりびとりはその|肢体《したい》である。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そして、|神《かみ》は|教会《きょうかい》の|中《なか》で、|人々《ひとびと》を|立《た》てて、|第《だい》一に|使徒《しと》、|第《だい》二に|預言者《よげんしゃ》、|第《だい》三に|教師《きょうし》とし、|次《つぎ》に|力《ちから》あるわざを|行《おこな》う|者《もの》、|次《つぎ》にいやしの|賜物《たまもの》を|持《も》つ|者《もの》、また|補助者《ほじょしゃ》、|管理者《かんりしゃ》、|種々《しゅじゅ》の|異言《いげん》を|語《かた》る|者《もの》をおかれた。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]みんなが|使徒《しと》だろうか。みんなが|預言者《よげんしゃ》だろうか。みんなが|教師《きょうし》だろうか。みんなが|力《ちから》あるわざを|行《おこな》う|者《もの》だろうか。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]みんながいやしの|賜物《たまもの》を|持《も》っているのだろうか。みんなが|異言《いげん》を|語《かた》るのだろうか。みんなが|異言《いげん》を|解《と》くのだろうか。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]だが、あなたがたは、|更《さら》に|大《おお》いなる|賜物《たまもの》を|得《え》ようと|熱心《ねっしん》に|努《つと》めなさい。そこで、わたしは|最《もっと》もすぐれた|道《みち》をあなたがたに|示《しめ》そう。 第一三章[#「第一三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]たといわたしが、|人々《ひとびと》の|言葉《ことば》や|御使《みつかい》たちの|言葉《ことば》を|語《かた》っても、もし|愛《あい》がなければ、わたしは、やかましい|鐘《かね》や|騒《さわ》がしい|鐃鉢《にょうはち》と|同《おな》じである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]たといまた、わたしに|預言《よげん》をする|力《ちから》があり、あらゆる|奥義《おくぎ》とあらゆる|知識《ちしき》とに|通《つう》じていても、また、|山《やま》を|移《うつ》すほどの|強《つよ》い|信仰《しんこう》があっても、もし|愛《あい》がなければ、わたしは|無《む》に|等《ひと》しい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]たといまた、わたしが|自分《じぶん》の|全《ぜん》|財産《ざいさん》を|人《ひと》に|施《ほどこ》しても、また、|自分《じぶん》のからだを|焼《や》かれるために|渡《わた》しても、もし|愛《あい》がなければ、いっさいは|無益《むえき》である。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》は|寛容《かんよう》であり、|愛《あい》は|情深《なさけぶか》い。また、ねたむことをしない。|愛《あい》は|高《たか》ぶらない、|誇《ほこ》らない、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|不作法《ぶさほう》をしない、|自分《じぶん》の|利益《りえき》を|求《もと》めない、いらだたない、|恨《うら》みをいだかない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|不義《ふぎ》を|喜《よろこ》ばないで|真理《しんり》を|喜《よろこ》ぶ。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そして、すべてを|忍《しの》び、すべてを|信《しん》じ、すべてを|望《のぞ》み、すべてを|耐《た》える。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》はいつまでも|絶《た》えることがない。しかし、|預言《よげん》はすたれ、|異言《いげん》はやみ、|知識《ちしき》はすたれるであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、わたしたちの|知《し》るところは一|部分《ぶぶん》であり、|預言《よげん》するところも一|部分《ぶぶん》にすぎない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|全《まった》きものが|来《く》る|時《とき》には、|部分《ぶぶん》|的《てき》なものはすたれる。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|幼《おさ》な|子《ご》であった|時《とき》には、|幼《おさ》な|子《ご》らしく|語《かた》り、|幼《おさ》な|子《ご》らしく|感《かん》じ、また、|幼《おさ》な|子《ご》らしく|考《かんが》えていた。しかし、おとなとなった|今《いま》は、|幼《おさ》な|子《ご》らしいことを|捨《す》ててしまった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|今《いま》は、|鏡《かがみ》に|映《うつ》して|見《み》るようにおぼろげに|見《み》ている。しかしその|時《とき》には、|顔《かお》と|顔《かお》とを|合《あ》わせて、|見《み》るであろう。わたしの|知《し》るところは、|今《いま》は一|部分《ぶぶん》にすぎない。しかしその|時《とき》には、わたしが|完全《かんぜん》に|知《し》られているように、|完全《かんぜん》に|知《し》るであろう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]このように、いつまでも|存続《そんぞく》するものは、|信仰《しんこう》と|希望《きぼう》と|愛《あい》と、この三つである。このうちで|最《もっと》も|大《おお》いなるものは、|愛《あい》である。 第一四章[#「第一四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》を|追《お》い|求《もと》めなさい。また、|霊《れい》の|賜物《たまもの》を、ことに|預言《よげん》することを、|熱心《ねっしん》に|求《もと》めなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|異言《いげん》を|語《かた》る|者《もの》は、|人《ひと》にむかって|語《かた》るのではなく、|神《かみ》にむかって|語《かた》るのである。それはだれにもわからない。|彼《かれ》はただ、|霊《れい》によって|奥義《おくぎ》を|語《かた》っているだけである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]しかし|預言《よげん》をする|者《もの》は、|人《ひと》に|語《かた》ってその|徳《とく》を|高《たか》め、|彼《かれ》を|励《はげ》まし、|慰《なぐさ》めるのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|異言《いげん》を|語《かた》る|者《もの》は|自分《じぶん》だけの|徳《とく》を|高《たか》めるが、|預言《よげん》をする|者《もの》は|教会《きょうかい》の|徳《とく》を|高《たか》める。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|実際《じっさい》、あなたがたがひとり|残《のこ》らず|異言《いげん》を|語《かた》ることを|望《のぞ》むが、|特《とく》に|預言《よげん》をしてもらいたい。|教会《きょうかい》の|徳《とく》を|高《たか》めるように|異言《いげん》を|解《と》かない|限《かぎ》り、|異言《いげん》を|語《かた》る|者《もの》よりも、|預言《よげん》をする|者《もの》の|方《ほう》がまさっている。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]だから、|兄弟《きょうだい》たちよ。たといわたしがあなたがたの|所《ところ》に|行《い》って|異言《いげん》を|語《かた》るとしても、|啓示《けいじ》か|知識《ちしき》か|預言《よげん》か|教《おしえ》かを|語《かた》らなければ、あなたがたに、なんの|役《やく》に|立《た》つだろうか。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]また、|笛《ふえ》や|立琴《たてごと》のような|楽器《がっき》でも、もしその|音《おと》に|変化《へんか》がなければ、|何《なに》を|吹《ふ》いているのか、|弾《ひ》いているのか、どうして|知《し》ることができようか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]また、もしラッパがはっきりした|音《おと》を|出《だ》さないなら、だれが|戦闘《せんとう》の|準備《じゅんび》をするだろうか。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それと|同様《どうよう》に、もしあなたがたが|異言《いげん》ではっきりしない|言葉《ことば》を|語《かた》れば、どうしてその|語《かた》ることがわかるだろうか。それでは、|空《くう》にむかって|語《かた》っていることになる。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|世《よ》には|多種《たしゅ》|多様《たよう》の|言葉《ことば》があるだろうが、|意味《いみ》のないものは一つもない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]もしその|言葉《ことば》の|意味《いみ》がわからないなら、|語《かた》っている|人《ひと》にとっては、わたしは|異国人《いこくじん》であり、|語《かた》っている|人《ひと》も、わたしにとっては|異国人《いこくじん》である。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたも、|霊《れい》の|賜物《たまもの》を|熱心《ねっしん》に|求《もと》めている|以上《いじょう》は、|教会《きょうかい》の|徳《とく》を|高《たか》めるために、それを|豊《ゆた》かにいただくように|励《はげ》むがよい。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]このようなわけであるから、|異言《いげん》を|語《かた》る|者《もの》は、|自分《じぶん》でそれを|解《と》くことができるように|祈《いの》りなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしが|異言《いげん》をもって|祈《いの》るなら、わたしの|霊《れい》は|祈《いの》るが、|知性《ちせい》は|実《み》を|結《むす》ばないからである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すると、どうしたらよいのか。わたしは|霊《れい》で|祈《いの》ると|共《とも》に、|知性《ちせい》でも|祈《いのり》ろう。|霊《れい》でさんびを|歌《うた》うと|共《とも》に、|知性《ちせい》でも|歌《うた》おう。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そうでないと、もしあなたが|霊《れい》で|祝福《しゅくふく》の|言葉《ことば》を|唱《とな》えても、|初心者《しょしんじゃ》の|席《せき》にいる|者《もの》は、あなたの|感謝《かんしゃ》に|対《たい》して、どうしてアァメンと|言《い》えようか。あなたが|何《なに》を|言《い》っているのか、|彼《かれ》には|通《つう》じない。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|感謝《かんしゃ》するのは|結構《けっこう》だが、それで、ほかの|人《ひと》の|徳《とく》を|高《たか》めることにはならない。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたのうちのだれよりも|多《おお》く|異言《いげん》が|語《かた》れることを、|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》する。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]しかし|教会《きょうかい》では、一万の|言葉《ことば》を|異言《いげん》で|語《かた》るよりも、ほかの|人《ひと》たちをも|教《おし》えるために、むしろ五つの|言葉《ことば》を|知性《ちせい》によって|語《かた》る|方《ほう》が|願《ねが》わしい。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|物《もの》の|考《かんが》えかたでは、|子供《こども》となってはいけない。|悪事《あくじ》については|幼《おさ》な|子《ご》となるのはよいが、|考《かんが》えかたでは、おとなとなりなさい。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》にこう|書《か》いてある、「わたしは、|異国《いこく》の|舌《した》と|異国《いこく》のくちびるとで、この|民《たみ》に|語《かた》るが、それでも、|彼《かれ》らはわたしに|耳《みみ》を|傾《かたむ》けない、と|主《しゅ》が|仰《おお》せになる」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]このように、|異言《いげん》は|信者《しんじゃ》のためではなく|未信者《みしんじゃ》のためのしるしであるが、|預言《よげん》は|未信者《みしんじゃ》のためではなく|信者《しんじゃ》のためのしるしである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]もし|全《ぜん》|教会《きょうかい》が|一緒《いっしょ》に|集《あつ》まって、|全員《ぜんいん》が|異言《いげん》を|語《かた》っているところに、|初心者《しょしんじゃ》か|不信者《ふしんじゃ》かがはいってきたら、|彼《かれ》らはあなたがたを|気違《きちが》いだと|言《い》うだろう。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|全員《ぜんいん》が|預言《よげん》をしているところに、|不信者《ふしんじゃ》か|初心者《しょしんじゃ》がはいってきたら、|彼《かれ》の|良心《りょうしん》はみんなの|者《もの》に|責《せ》められ、みんなの|者《もの》にさばかれ、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]その|心《こころ》の|秘密《ひみつ》があばかれ、その|結果《けっか》、ひれ|伏《ふ》して|神《かみ》を|拝《おが》み、「まことに、|神《かみ》があなたがたのうちにいます」と|告白《こくはく》するに|至《いた》るであろう。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]すると、|兄弟《きょうだい》たちよ。どうしたらよいのか。あなたがたが|一緒《いっしょ》に|集《あつ》まる|時《とき》、|各自《かくじ》はさんびを|歌《うた》い、|教《おしえ》をなし、|啓示《けいじ》を|告《つ》げ、|異言《いげん》を|語《かた》り、それを|解《と》くのであるが、すべては|徳《とく》を|高《たか》めるためにすべきである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]もし|異言《いげん》を|語《かた》る|者《もの》があれば、ふたりか、|多《おお》くて三|人《にん》の|者《もの》が、|順々《じゅんじゅん》に|語《かた》り、そして、ひとりがそれを|解《と》くべきである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]もし|解《と》く|者《もの》がいない|時《とき》には、|教会《きょうかい》では|黙《だま》っていて、|自分《じぶん》に|対《たい》しまた|神《かみ》に|対《たい》して|語《かた》っているべきである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|預言《よげん》をする|者《もの》の|場合《ばあい》にも、ふたりか三|人《にん》かが|語《かた》り、ほかの|者《もの》はそれを|吟味《ぎんみ》すべきである。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|席《せき》にいる|他《た》の|者《もの》が|啓示《けいじ》を|受《う》けた|場合《ばあい》には、|初《はじ》めの|者《もの》は|黙《だま》るがよい。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、みんなが|学《まな》びみんなが|勧《すす》めを|受《う》けるために、ひとりずつ|残《のこ》らず|預言《よげん》をすることができるのだから。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]かつ、|預言者《よげんしゃ》の|霊《れい》は|預言者《よげんしゃ》に|服従《ふくじゅう》するものである。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|無《む》|秩序《ちつじょ》の|神《かみ》ではなく、|平和《へいわ》の|神《かみ》である。  |聖徒《せいと》たちのすべての|教会《きょうかい》で|行《おこな》われているように、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|婦人《ふじん》たちは|教会《きょうかい》では|黙《だま》っていなければならない。|彼《かれ》らは|語《かた》ることが|許《ゆる》されていない。だから、|律法《りっぽう》も|命《めい》じているように、|服従《ふくじゅう》すべきである。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]もし|何《なに》か|学《まな》びたいことがあれば、|家《いえ》で|自分《じぶん》の|夫《おっと》に|尋《たず》ねるがよい。|教会《きょうかい》で|語《かた》るのは、|婦人《ふじん》にとっては|恥《は》ずべきことである。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]それとも、|神《かみ》の|言《ことば》はあなたがたのところから|出《で》たのか。あるいは、あなたがただけにきたのか。  [#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]もしある|人《ひと》が、|自分《じぶん》は|預言者《よげんしゃ》か|霊《れい》の|人《ひと》であると|思《おも》っているなら、わたしがあなたがたに|書《か》いていることは、|主《しゅ》の|命令《めいれい》だと|認《みと》めるべきである。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]もしそれを|無視《むし》する|者《もの》があれば、その|人《ひと》もまた|無視《むし》される。  [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。このようなわけだから、|預言《よげん》することを|熱心《ねっしん》に|求《もと》めなさい。また、|異言《いげん》を|語《かた》ることを|妨《さまた》げてはならない。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、すべてのことを|適宜《てきぎ》に、かつ|秩序《ちつじょ》を|正《ただ》して|行《おこな》うがよい。 第一五章[#「第一五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしが|以前《いぜん》あなたがたに|伝《つた》えた|福音《ふくいん》、あなたがたが|受《う》けいれ、それによって|立《た》ってきたあの|福音《ふくいん》を、|思《おも》い|起《おこ》してもらいたい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたがたが、いたずらに|信《しん》じないで、わたしの|宣《の》べ|伝《つた》えたとおりの|言葉《ことば》を|固《かた》く|守《まも》っておれば、この|福音《ふくいん》によって|救《すく》われるのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|最《もっと》も|大事《だいじ》なこととしてあなたがたに|伝《つた》えたのは、わたし|自身《じしん》も|受《う》けたことであった。すなわちキリストが、|聖書《せいしょ》に|書《か》いてあるとおり、わたしたちの|罪《つみ》のために|死《し》んだこと、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そして|葬《ほうむ》られたこと、|聖書《せいしょ》に|書《か》いてあるとおり、三|日《か》|目《め》によみがえったこと、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ケパに|現《あらわ》れ、|次《つぎ》に、十二|人《にん》に|現《あらわ》れたことである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そののち、五百|人《にん》|以上《いじょう》の|兄弟《きょうだい》たちに、|同時《どうじ》に|現《あらわ》れた。その|中《なか》にはすでに|眠《ねむ》った|者《もの》たちもいるが、|大多数《だいたすう》はいまなお|生存《せいぞん》している。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そののち、ヤコブに|現《あらわ》れ、|次《つぎ》に、すべての|使徒《しと》たちに|現《あらわ》れ、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そして|最後《さいご》に、いわば、|月《つき》|足《た》らずに|生《うま》れたようなわたしにも、|現《あらわ》れたのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|実際《じっさい》わたしは、|神《かみ》の|教会《きょうかい》を|迫害《はくがい》したのであるから、|使徒《しと》たちの|中《なか》でいちばん|小《ちい》さい|者《もの》であって、|使徒《しと》と|呼《よ》ばれる|値《ね》うちのない|者《もの》である。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|神《かみ》の|恵《めぐ》みによって、わたしは|今日《こんにち》あるを|得《え》ているのである。そして、わたしに|賜《たま》わった|神《かみ》の|恵《めぐ》みはむだにならず、むしろ、わたしは|彼《かれ》らの|中《なか》のだれよりも|多《おお》く|働《はたら》いてきた。しかしそれは、わたし|自身《じしん》ではなく、わたしと|共《とも》にあった|神《かみ》の|恵《めぐ》みである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]とにかく、わたしにせよ|彼《かれ》らにせよ、そのように、わたしたちは|宣《の》べ|伝《つた》えており、そのように、あなたがたは|信《しん》じたのである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]さて、キリストは|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえったのだと|宣《の》べ|伝《つた》えられているのに、あなたがたの|中《なか》のある|者《もの》が、|死人《しにん》の|復活《ふっかつ》などはないと|言《い》っているのは、どうしたことか。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]もし|死人《しにん》の|復活《ふっかつ》がないならば、キリストもよみがえらなかったであろう。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]もしキリストがよみがえらなかったとしたら、わたしたちの|宣教《せんきょう》はむなしく、あなたがたの|信仰《しんこう》もまたむなしい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すると、わたしたちは|神《かみ》にそむく|偽証人《ぎしょうにん》にさえなるわけだ。なぜなら、|万一《まんいち》|死人《しにん》がよみがえらないとしたら、わたしたちは|神《かみ》が|実際《じっさい》よみがえらせなかったはずのキリストを、よみがえらせたと|言《い》って、|神《かみ》に|反《はん》するあかしを|立《た》てたことになるからである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]もし|死人《しにん》がよみがえらないなら、キリストもよみがえらなかったであろう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]もしキリストがよみがえらなかったとすれば、あなたがたの|信仰《しんこう》は|空虚《くうきょ》なものとなり、あなたがたは、いまなお|罪《つみ》の|中《なか》にいることになろう。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そうだとすると、キリストにあって|眠《ねむ》った|者《もの》たちは、|滅《ほろ》んでしまったのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしたちが、この|世《よ》の|生活《せいかつ》でキリストにあって|単《たん》なる|望《のぞ》みをいだいているだけだとすれば、わたしたちは、すべての|人《ひと》の|中《なか》で|最《もっと》もあわれむべき|存在《そんざい》となる。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし|事実《じじつ》、キリストは|眠《ねむ》っている|者《もの》の|初穂《はつほ》として、|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえったのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]それは、|死《し》がひとりの|人《ひと》によってきたのだから、|死人《しにん》の|復活《ふっかつ》もまた、ひとりの|人《ひと》によってこなければならない。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]アダムにあってすべての|人《ひと》が|死《し》んでいるのと|同《おな》じように、キリストにあってすべての|人《ひと》が|生《い》かされるのである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|各自《かくじ》はそれぞれの|順序《じゅんじょ》に|従《したが》わねばならない。|最初《さいしょ》はキリスト、|次《つぎ》に、|主《しゅ》の|来臨《らいりん》に|際《さい》してキリストに|属《ぞく》する|者《もの》たち、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]それから|終末《しゅうまつ》となって、その|時《とき》に、キリストはすべての|君《きみ》たち、すべての|権威《けんい》と|権力《けんりょく》とを|打《う》ち|滅《ほろ》ぼして、|国《くに》を|父《ちち》なる|神《かみ》に|渡《わた》されるのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、キリストはあらゆる|敵《てき》をその|足《あし》もとに|置《お》く|時《とき》までは、|支配《しはい》を|続《つづ》けることになっているからである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|最後《さいご》の|敵《てき》として|滅《ほろ》ぼされるのが、|死《し》である。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]「|神《かみ》は|万物《ばんぶつ》を|彼《かれ》の|足《あし》もとに|従《したが》わせた」からである。ところが、|万物《ばんぶつ》を|従《したが》わせたと|言《い》われる|時《とき》、|万物《ばんぶつ》を|従《したが》わせたかたがそれに|含《ふく》まれていないことは、|明《あき》らかである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そして、|万物《ばんぶつ》が|神《かみ》に|従《したが》う|時《とき》には、|御子《みこ》|自身《じしん》もまた、|万物《ばんぶつ》を|従《したが》わせたそのかたに|従《したが》うであろう。それは、|神《かみ》がすべての|者《もの》にあって、すべてとなられるためである。  [#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]そうでないとすれば、|死者《ししゃ》のためにバプテスマを|受《う》ける|人々《ひとびと》は、なぜそれをするのだろうか。もし|死者《ししゃ》が|全《まった》くよみがえらないとすれば、なぜ|人々《ひとびと》が|死者《ししゃ》のためにバプテスマを|受《う》けるのか。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]また、なんのために、わたしたちはいつも|危険《きけん》を|冒《おか》しているのか。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちの|主《しゅ》キリスト・イエスにあって、わたしがあなたがたにつき|持《も》っている|誇《ほこり》にかけて|言《い》うが、わたしは|日々《ひび》|死《し》んでいるのである。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]もし、わたしが|人間《にんげん》の|考《かんが》えによってエペソで|獣《けもの》と|戦《たたか》ったとすれば、それはなんの|役《やく》に|立《た》つのか。もし|死人《しにん》がよみがえらないのなら、「わたしたちは|飲《の》み|食《く》いしようではないか。あすもわからぬいのちなのだ」。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]まちがってはいけない。 [#ここから2字下げ] 「|悪《わる》い|交《まじ》わりは、|良《よ》いならわしをそこなう」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|目《め》ざめて|身《み》を|正《ただ》し、|罪《つみ》を|犯《おか》さないようにしなさい。あなたがたのうちには、|神《かみ》について|無知《むち》な|人々《ひとびと》がいる。あなたがたをはずかしめるために、わたしはこう|言《い》うのだ。  [#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、ある|人《ひと》は|言《い》うだろう。「どんなふうにして、|死人《しにん》がよみがえるのか。どんなからだをして|来《く》るのか」。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]おろかな|人《ひと》である。あなたのまくものは、|死《し》ななければ、|生《い》かされないではないか。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたのまくのは、やがて|成《な》るべきからだをまくのではない。|麦《むぎ》であっても、ほかの|種《たね》であっても、ただの|種《たね》|粒《つぶ》にすぎない。[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|神《かみ》はみこころのままに、これにからだを|与《あた》え、その一つ一つの|種《たね》にそれぞれのからだをお|与《あた》えになる。[#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]すべての|肉《にく》が、|同《おな》じ|肉《にく》なのではない。|人《ひと》の|肉《にく》があり、|獣《けもの》の|肉《にく》があり、|鳥《とり》の|肉《にく》があり、|魚《さかな》の|肉《にく》がある。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|天《てん》に|属《ぞく》するからだもあれば、|地《ち》に|属《ぞく》するからだもある。|天《てん》に|属《ぞく》するものの|栄光《えいこう》は、|地《ち》に|属《ぞく》するものの|栄光《えいこう》と|違《ちが》っている。[#太字]四一[#「四一」は行右小書き][#太字終わり]|日《ひ》の|栄光《えいこう》があり、|月《つき》の|栄光《えいこう》があり、|星《ほし》の|栄光《えいこう》がある。また、この|星《ほし》とあの|星《ほし》との|間《あいだ》に、|栄光《えいこう》の|差《さ》がある。  [#太字]四二[#「四二」は行右小書き][#太字終わり]|死人《しにん》の|復活《ふっかつ》も、また|同様《どうよう》である。|朽《く》ちるものでまかれ、|朽《く》ちないものによみがえり、[#太字]四三[#「四三」は行右小書き][#太字終わり]|卑《いや》しいものでまかれ、|栄光《えいこう》あるものによみがえり、|弱《よわ》いものでまかれ、|強《つよ》いものによみがえり、[#太字]四四[#「四四」は行右小書き][#太字終わり]|肉《にく》のからだでまかれ、|霊《れい》のからだによみがえるのである。|肉《にく》のからだがあるのだから、|霊《れい》のからだもあるわけである。[#太字]四五[#「四五」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》に「|最初《さいしょ》の|人《ひと》アダムは|生《い》きたものとなった」と|書《か》いてあるとおりである。しかし|最後《さいご》のアダムは|命《いのち》を|与《あた》える|霊《れい》となった。[#太字]四六[#「四六」は行右小書き][#太字終わり]|最初《さいしょ》にあったのは、|霊《れい》のものではなく|肉《にく》のものであって、その|後《のち》に|霊《れい》のものが|来《く》るのである。[#太字]四七[#「四七」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》一の|人《ひと》は|地《ち》から|出《で》て|土《つち》に|属《ぞく》し、|第《だい》二の|人《ひと》は|天《てん》から|来《く》る。[#太字]四八[#「四八」は行右小書き][#太字終わり]この|土《つち》に|属《ぞく》する|人《ひと》に、|土《つち》に|属《ぞく》している|人々《ひとびと》は|等《ひと》しく、この|天《てん》に|属《ぞく》する|人《ひと》に、|天《てん》に|属《ぞく》している|人々《ひとびと》は|等《ひと》しいのである。[#太字]四九[#「四九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、わたしたちは、|土《つち》に|属《ぞく》している|形《かたち》をとっているのと|同様《どうよう》に、また|天《てん》に|属《ぞく》している|形《かたち》をとるであろう。  [#太字]五〇[#「五〇」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしはこの|事《こと》を|言《い》っておく。|肉《にく》と|血《ち》とは|神《かみ》の|国《くに》を|継《つ》ぐことができないし、|朽《く》ちるものは|朽《く》ちないものを|継《つ》ぐことがない。[#太字]五一[#「五一」は行右小書き][#太字終わり]ここで、あなたがたに|奥義《おくぎ》を|告《つ》げよう。わたしたちすべては、|眠《ねむ》り|続《つづ》けるのではない。|終《おわ》りのラッパの|響《ひび》きと|共《とも》に、またたく|間《あいだ》に、|一瞬《いっしゅん》にして|変《か》えられる。[#太字]五二[#「五二」は行右小書き][#太字終わり]というのは、ラッパが|響《ひび》いて、|死人《しにん》は|朽《く》ちない|者《もの》によみがえらされ、わたしたちは|変《か》えられるのである。[#太字]五三[#「五三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、この|朽《く》ちるものは|必《かなら》ず|朽《く》ちないものを|着《き》、この|死《し》ぬものは|必《かなら》ず|死《し》なないものを|着《き》ることになるからである。[#太字]五四[#「五四」は行右小書き][#太字終わり]この|朽《く》ちるものが|朽《く》ちないものを|着《き》、この|死《し》ぬものが|死《し》なないものを|着《き》るとき、|聖書《せいしょ》に|書《か》いてある|言葉《ことば》が|成就《じょうじゅ》するのである。 [#ここから2字下げ] [#太字]五五[#「五五」は行右小書き][#太字終わり]「|死《し》は|勝利《しょうり》にのまれてしまった。 |死《し》よ、おまえの|勝利《しょうり》は、どこにあるのか。 |死《し》よ、おまえのとげは、どこにあるのか」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]五六[#「五六」は行右小書き][#太字終わり]|死《し》のとげは|罪《つみ》である。|罪《つみ》の|力《ちから》は|律法《りっぽう》である。[#太字]五七[#「五七」は行右小書き][#太字終わり]しかし|感謝《かんしゃ》すべきことには、|神《かみ》はわたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストによって、わたしたちに|勝利《しょうり》を|賜《たま》わったのである。[#太字]五八[#「五八」は行右小書き][#太字終わり]だから、|愛《あい》する|兄弟《きょうだい》たちよ。|堅《かた》く|立《た》って|動《うご》かされず、いつも|全《ぜん》|力《りょく》を|注《そそ》いで|主《しゅ》のわざに|励《はげ》みなさい。|主《しゅ》にあっては、あなたがたの|労苦《ろうく》がむだになることはないと、あなたがたは|知《し》っているからである。 第一六章[#「第一六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|聖徒《せいと》たちへの|献金《けんきん》については、わたしはガラテヤの|諸《しょ》|教会《きょうかい》に|命《めい》じておいたが、あなたがたもそのとおりにしなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]一|週《しゅう》の|初《はじ》めの|日《ひ》ごとに、あなたがたはそれぞれ、いくらでも|収入《しゅうにゅう》に|応《おう》じて|手《て》もとにたくわえておき、わたしが|着《つ》いた|時《とき》になって|初《はじ》めて|集《あつ》めることのないようにしなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|到着《とうちゃく》したら、あなたがたが|選《えら》んだ|人々《ひとびと》に|手紙《てがみ》をつけ、あなたがたの|贈《おく》り|物《もの》を|持《も》たせて、エルサレムに|送《おく》り|出《だ》すことにしよう。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしも|行《ゆ》く|方《ほう》がよければ、|一緒《いっしょ》に|行《ゆ》くことになろう。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、マケドニヤを|通過《つうか》してから、あなたがたのところに|行《ゆ》くことになろう。マケドニヤは|通過《つうか》するだけだが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|所《ところ》では、たぶん|滞在《たいざい》するようになり、あるいは|冬《ふゆ》を|過《す》ごすかも|知《し》れない。そうなれば、わたしがどこへ|ゆ《い》くにしても、あなたがたに|送《おく》ってもらえるだろう。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|今《いま》、あなたがたに|旅《たび》のついでに|会《あ》うことは|好《この》まない。もし|主《しゅ》のお|許《ゆる》しがあれば、しばらくあなたがたの|所《ところ》に|滞在《たいざい》したいと|望《のぞ》んでいる。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし|五旬節《ごじゅんせつ》までは、エペソに|滞在《たいざい》するつもりだ。というのは、|有力《ゆうりょく》な|働《はたら》きの|門《もん》がわたしのために|大《おお》きく|開《ひら》かれているし、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]また|敵対《てきたい》する|者《もの》も|多《おお》いからである。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]もしテモテが|着《つ》いたら、あなたがたの|所《ところ》で|不安《ふあん》なしに|過《す》ごせるようにしてあげてほしい。|彼《かれ》はわたしと|同様《どうよう》に、|主《しゅ》のご|用《よう》にあたっているのだから。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]だれも|彼《かれ》を|軽《かろ》んじてはいけない。そして、わたしの|所《ところ》に|来《く》るように、どうか|彼《かれ》を|安《やす》らかに|送《おく》り|出《だ》してほしい。わたしは|彼《かれ》が|兄弟《きょうだい》たちと|一緒《いっしょ》に|来《く》るのを|待《ま》っている。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》アポロについては、|兄弟《きょうだい》たちと|一緒《いっしょ》にあなたがたの|所《ところ》に|行《い》くように、たびたび|勧《すす》めてみた。しかし|彼《かれ》には、|今《いま》|行《ゆ》く|意志《いし》は、|全《まった》くない。|適当《てきとう》な|機会《きかい》があれば、|行《い》くだろう。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|目《め》をさましていなさい。|信仰《しんこう》に|立《た》ちなさい。|男《おとこ》らしく、|強《つよ》くあってほしい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]いっさいのことを、|愛《あい》をもって|行《おこな》いなさい。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたに|勧《すす》める。あなたがたが|知《し》っているように、ステパナの|家《いえ》はアカヤの|初穂《はつほ》であって、|彼《かれ》らは|身《み》をもって|聖徒《せいと》に|奉仕《ほうし》してくれた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]どうか、このような|人々《ひとびと》と、またすべて|彼《かれ》らと|共《とも》に|働《はたら》き|共《とも》に|労《ろう》する|人々《ひとびと》とに、|従《したが》ってほしい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、ステパナとポルトナトとアカイコとがきてくれたのを|喜《よろこ》んでいる。|彼《かれ》らはあなたがたの|足《た》りない|所《ところ》を|満《み》たし、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|心《こころ》とあなたがたの|心《こころ》とを、|安《やす》らかにしてくれた。こうした|人々《ひとびと》は、|重《おも》んじなければならない。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]アジヤの|諸《しょ》|教会《きょうかい》から、あなたがたによろしく。アクラとプリスカとその|家《いえ》の|教会《きょうかい》から、|主《しゅ》にあって|心《こころ》からよろしく。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]すべての|兄弟《きょうだい》たちから、よろしく。あなたがたも|互《たがい》に、きよい|接吻《せっぷん》をもってあいさつをかわしなさい。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]ここでパウロが、|手《て》ずからあいさつをしるす。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]もし|主《しゅ》を|愛《あい》さない|者《もの》があれば、のろわれよ。マラナ・タ(われらの|主《しゅ》よ、きたりませ)。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》イエスの|恵《めぐ》みが、あなたがたと|共《とも》にあるように。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|愛《あい》が、キリスト・イエスにあって、あなたがた|一同《いちどう》と|共《とも》にあるように。 [#改ページ] コリント人への第二の手紙[#「コリント人への第二の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|御旨《みむね》によりキリスト・イエスの|使徒《しと》となったパウロと、|兄弟《きょうだい》テモテとから、コリントにある|神《かみ》の|教会《きょうかい》、ならびにアカヤ|全土《ぜんど》にいるすべての|聖徒《せいと》たちへ。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストから、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ほむべきかな、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|父《ちち》なる|神《かみ》、あわれみ|深《ぶか》き|父《ちち》、|慰《なぐさ》めに|満《み》ちたる|神《かみ》。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、いかなる|患難《かんなん》の|中《なか》にいる|時《とき》でもわたしたちを|慰《なぐさ》めて|下《くだ》さり、また、わたしたち|自身《じしん》も、|神《かみ》に|慰《なぐさ》めていただくその|慰《なぐさ》めをもって、あらゆる|患難《かんなん》の|中《なか》にある|人々《ひとびと》を|慰《なぐさ》めることができるようにして|下《くだ》さるのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それは、キリストの|苦難《くなん》がわたしたちに|満《み》ちあふれているように、わたしたちの|受《う》ける|慰《なぐさ》めもまた、キリストによって|満《み》ちあふれているからである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|患難《かんなん》に|会《あ》うなら、それはあなたがたの|慰《なぐさ》めと|救《すくい》とのためであり、|慰《なぐさ》めを|受《う》けるなら、それはあなたがたの|慰《なぐさ》めのためであって、その|慰《なぐさ》めは、わたしたちが|受《う》けているのと|同《おな》じ|苦難《くなん》に|耐《た》えさせる|力《ちから》となるのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたに|対《たい》していだいているわたしたちの|望《のぞ》みは、|動《うご》くことがない。あなたがたが、わたしたちと|共《とも》に|苦難《くなん》にあずかっているように、|慰《なぐさ》めにも|共《とも》にあずかっていることを|知《し》っているからである。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちがアジヤで|会《あ》った|患難《かんなん》を、|知《し》らずにいてもらいたくない。わたしたちは|極度《きょくど》に、|耐《た》えられないほど|圧迫《あっぱく》されて、|生《い》きる|望《のぞ》みをさえ|失《うしな》ってしまい、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|心《こころ》のうちで|死《し》を|覚悟《かくご》し、|自分《じぶん》|自身《じしん》を|頼《たの》みとしないで、|死人《しにん》をよみがえらせて|下《くだ》さる|神《かみ》を|頼《たの》みとするに|至《いた》った。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はこのような|死《し》の|危険《きけん》から、わたしたちを|救《すく》い|出《だ》して|下《くだ》さった、また|救《すく》い|出《だ》して|下《くだ》さるであろう。わたしたちは、|神《かみ》が|今後《こんご》も|救《すく》い|出《だ》して|下《くだ》さることを|望《のぞ》んでいる。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたがたもまた|祈《いのり》をもって、ともどもに、わたしたちを|助《たす》けてくれるであろう。これは|多《おお》くの|人々《ひとびと》の|願《ねが》いによりわたしたちに|賜《たま》わった|恵《めぐ》みについて、|多《おお》くの|人《ひと》が|感謝《かんしゃ》をささげるようになるためである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしたちがこの|世《よ》で、ことにあなたがたに|対《たい》し、|人間《にんげん》の|知恵《ちえ》によってではなく|神《かみ》の|恵《めぐ》みによって、|神《かみ》の|神聖《しんせい》と|真実《しんじつ》とによって|行動《こうどう》してきたことは、|実《じつ》にわたしたちの|誇《ほこり》であって、|良心《りょうしん》のあかしするところである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|書《か》いていることは、あなたがたが|読《よ》んで|理解《りかい》できないことではない。それを|完全《かんぜん》に|理解《りかい》してくれるように、わたしは|希望《きぼう》する。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]すでにある|程度《ていど》わたしたちを|理解《りかい》してくれているとおり、わたしたちの|主《しゅ》イエスの|日《ひ》には、あなたがたがわたしたちの|誇《ほこり》であるように、わたしたちもあなたがたの|誇《ほこり》なのである。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]この|確信《かくしん》をもって、わたしたちはもう|一度《いちど》|恵《めぐ》みを|得《え》させたいので、まずあなたがたの|所《ところ》に|行《い》き、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それからそちらを|通《とお》ってマケドニヤにおもむき、そして|再《ふたた》びマケドニヤからあなたがたの|所《ところ》に|帰《かえ》り、あなたがたの|見送《みおく》りを|受《う》けてユダヤに|行《ゆ》く|計画《けいかく》を|立《た》てたのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]この|計画《けいかく》を|立《た》てたのは、|軽率《けいそつ》なことであったであろうか。それとも、|自分《じぶん》の|計画《けいかく》を|肉《にく》の|思《おも》いによって|計画《けいかく》したため、わたしの「しかり、しかり」が|同時《どうじ》に「|否《いな》、|否《いな》」であったのだろうか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|真実《しんじつ》にかけて|言《い》うが、あなたがたに|対《たい》するわたしの|言葉《ことば》は、「しかり」と|同時《どうじ》に「|否《いな》」というようなものではない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、わたしたち、すなわち、わたしとシルワノとテモテとが、あなたがたに|宣《の》べ|伝《つた》えた|神《かみ》の|子《こ》キリスト・イエスは、「しかり」となると|同時《どうじ》に「|否《いな》」となったのではない。そうではなく、「しかり」がイエスにおいて|実現《じつげん》されたのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|神《かみ》の|約束《やくそく》はことごとく、|彼《かれ》において「しかり」となったからである。だから、わたしたちは、|彼《かれ》によって「アァメン」と|唱《とな》えて、|神《かみ》に|栄光《えいこう》を|帰《き》するのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたと|共《とも》にわたしたちを、キリストのうちに|堅《かた》くささえ、|油《あぶら》をそそいで|下《くだ》さったのは、|神《かみ》である。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はまた、わたしたちに|証印《しょういん》をおし、その|保証《ほしょう》として、わたしたちの|心《こころ》に|御霊《みたま》を|賜《たま》わったのである。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|自分《じぶん》の|魂《たましい》をかけ、|神《かみ》を|証人《しょうにん》に|呼《よ》び|求《もと》めて|言《い》うが、わたしがコリントに|行《い》かないでいるのは、あなたがたに|対《たい》して|寛大《かんだい》でありたいためである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、あなたがたの|信仰《しんこう》を|支配《しはい》する|者《もの》ではなく、あなたがたの|喜《よろこ》びのために|共《とも》に|働《はたら》いている|者《もの》にすぎない。あなたがたは、|信仰《しんこう》に|堅《かた》く|立《た》っているからである。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしは、あなたがたの|所《ところ》に|再《ふたた》び|悲《かな》しみをもって|行《ゆ》くことはすまいと、|決心《けっしん》したのである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたがたを|悲《かな》しませるとすれば、わたしが|悲《かな》しませているその|人《ひと》|以外《いがい》に、だれがわたしを|喜《よろこ》ばせてくれるのか。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]このような|事《こと》を|書《か》いたのは、わたしが|行《ゆ》く|時《とき》、わたしを|喜《よろこ》ばせてくれるはずの|人々《ひとびと》から、|悲《かな》しい|思《おも》いをさせられたくないためである。わたし|自身《じしん》の|喜《よろこ》びはあなたがた|全体《ぜんたい》の|喜《よろこ》びであることを、あなたがたすべてについて|確信《かくしん》しているからである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|大《おお》きな|患難《かんなん》と|心《こころ》の|憂《うれ》いの|中《なか》から、|多《おお》くの|涙《なみだ》をもってあなたがたに|書《か》きおくった。それは、あなたがたを|悲《かな》しませるためではなく、あなたがたに|対《たい》してあふれるばかりにいだいているわたしの|愛《あい》を、|知《し》ってもらうためであった。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もしだれかが|人《ひと》を|悲《かな》しませたとすれば、それはわたしを|悲《かな》しませたのではなく、|控《ひか》え|目《め》に|言《い》うが、ある|程度《ていど》、あなたがた|一同《いちどう》を|悲《かな》しませたのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]その|人《ひと》にとっては、|多数《たすう》の|者《もの》から|受《う》けたあの|処罰《しょばつ》でもう|十分《じゅうぶん》なのだから、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはむしろ|彼《かれ》をゆるし、また|慰《なぐさ》めてやるべきである。そうしないと、その|人《ひと》はますます|深《ぶか》い|悲《かな》しみに|沈《しず》むかも|知《し》れない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしは、|彼《かれ》に|対《たい》して|愛《あい》を|示《しめ》すように、あなたがたに|勧《すす》める。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|書《か》きおくったのも、あなたがたがすべての|事《こと》について|従順《じゅうじゅん》であるかどうかを、ためすためにほかならなかった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたがたが、|何《なに》かのことについて|人《ひと》をゆるすなら、わたしもまたゆるそう。そして、もしわたしが|何《なに》かのことでゆるしたとすれば、それは、あなたがたのためにキリストのみまえでゆるしたのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そうするのは、サタンに|欺《あざむ》かれることのないためである。わたしたちは、|彼《かれ》の|策略《さくりゃく》を|知《し》らないわけではない。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]さて、キリストの|福音《ふくいん》のためにトロアスに|行《い》ったとき、わたしのために|主《しゅ》の|門《もん》が|開《ひら》かれたにもかかわらず、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》テトスに|会《あ》えなかったので、わたしは|気《き》が|気《き》でなく、|人々《ひとびと》に|別《わか》れて、マケドニヤに|出《で》かけて|行《い》った。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかるに、|神《かみ》は|感謝《かんしゃ》すべきかな。|神《かみ》はいつもわたしたちをキリストの|凱旋《がいせん》に|伴《ともな》い|行《ゆ》き、わたしたちをとおしてキリストを|知《し》る|知識《ちしき》のかおりを、|至《いた》る|所《ところ》に|放《はな》って|下《くだ》さるのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|救《すく》われる|者《もの》にとっても|滅《ほろ》びる|者《もの》にとっても、|神《かみ》に|対《たい》するキリストのかおりである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|後者《こうしゃ》にとっては、|死《し》から|死《し》に|至《いた》らせるかおりであり、|前者《ぜんしゃ》にとっては、いのちからいのちに|至《いた》らせるかおりである。いったい、このような|任務《にんむ》に、だれが|耐《た》え|得《え》ようか。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしたちは、|多《おお》くの|人《ひと》のように|神《かみ》の|言《ことば》を|売物《うりもの》にせず、|真心《まごころ》をこめて、|神《かみ》につかわされた|者《もの》として|神《かみ》のみまえで、キリストにあって|語《かた》るのである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、またもや、|自己《じこ》|推薦《すいせん》をし|始《はじ》めているのだろうか。それとも、ある|人々《ひとびと》のように、あなたがたにあてた、あるいは、あなたがたからの|推薦《すいせん》|状《じょう》が|必要《ひつよう》なのだろうか。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|推薦《すいせん》|状《じょう》は、あなたがたなのである。それは、わたしたちの|心《こころ》にしるされていて、すべての|人《ひと》に|知《し》られ、かつ|読《よ》まれている。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたがたは|自分《じぶん》|自身《じしん》が、わたしたちから|送《おく》られたキリストの|手紙《てがみ》であって、|墨《すみ》によらず|生《い》ける|神《かみ》の|霊《れい》によって|書《か》かれ、|石《いし》の|板《いた》にではなく|人《ひと》の|心《こころ》の|板《いた》に|書《か》かれたものであることを、はっきりとあらわしている。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]こうした|確信《かくしん》を、わたしたちはキリストにより|神《かみ》に|対《たい》していだいている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]もちろん、|自分《じぶん》|自身《じしん》で|事《こと》を|定《さだ》める|力《ちから》が|自分《じぶん》にある、と|言《い》うのではない。わたしたちのこうした|力《ちから》は、|神《かみ》からきている。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はわたしたちに|力《ちから》を|与《あた》えて、|新《あたら》しい|契約《けいやく》に|仕《つか》える|者《もの》とされたのである。それは、|文字《もんじ》に|仕《つか》える|者《もの》ではなく、|霊《れい》に|仕《つか》える|者《もの》である。|文字《もんじ》は|人《ひと》を|殺《ころ》し、|霊《れい》は|人《ひと》を|生《い》かす。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]もし|石《いし》に|彫《ほ》りつけた|文字《もんじ》による|死《し》の|務《つとめ》が|栄光《えいこう》のうちに|行《おこな》われ、そのためイスラエルの|子《こ》らは、モーセの|顔《かお》の|消《き》え|去《さ》るべき|栄光《えいこう》のゆえに、その|顔《かお》を|見《み》つめることができなかったとすれば、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]まして|霊《れい》の|務《つとめ》は、はるかに|栄光《えいこう》あるものではなかろうか。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]もし|罪《つみ》を|宣告《せんこく》する|務《つとめ》が|栄光《えいこう》あるものだとすれば、|義《ぎ》を|宣告《せんこく》する|務《つとめ》は、はるかに|栄光《えいこう》に|満《み》ちたものである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、すでに|栄光《えいこう》を|受《う》けたものも、この|場合《ばあい》、はるかにまさった|栄光《えいこう》のまえに、その|栄光《えいこう》を|失《うしな》ったのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]もし|消《き》え|去《さ》るべきものが|栄光《えいこう》をもって|現《あらわ》れたのなら、まして|永存《えいぞん》すべきものは、もっと|栄光《えいこう》のあるべきものである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]こうした|望《のぞ》みをいだいているので、わたしたちは|思《おも》いきって|大胆《だいたん》に|語《かた》り、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そしてモーセが、|消《き》え|去《さ》っていくものの|最後《さいご》をイスラエルの|子《こ》らに|見《み》られまいとして、|顔《かお》におおいをかけたようなことはしない。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|実際《じっさい》、|彼《かれ》らの|思《おも》いは|鈍《にぶ》くなっていた。|今日《こんにち》に|至《いた》るまで、|彼《かれ》らが|古《ふる》い|契約《けいやく》を|朗読《ろうどく》する|場合《ばあい》、その|同《おな》じおおいが|取《と》り|去《さ》られないままで|残《のこ》っている。それは、キリストにあってはじめて|取《と》り|除《のぞ》かれるのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|今日《こんにち》に|至《いた》るもなお、モーセの|書《しょ》が|朗読《ろうどく》されるたびに、おおいが|彼《かれ》らの|心《こころ》にかかっている。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし|主《しゅ》に|向《む》く|時《とき》には、そのおおいは|取《と》り|除《のぞ》かれる。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は|霊《れい》である。そして、|主《しゅ》の|霊《れい》のあるところには、|自由《じゆう》がある。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちはみな、|顔《かお》おおいなしに、|主《しゅ》の|栄光《えいこう》を|鏡《かがみ》に|映《うつ》すように|見《み》つつ、|栄光《えいこう》から|栄光《えいこう》へと、|主《しゅ》と|同《おな》じ|姿《すがた》に|変《か》えられていく。これは|霊《れい》なる|主《しゅ》の|働《はたら》きによるのである。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]このようにわたしたちは、あわれみを|受《う》けてこの|務《つとめ》についているのだから、|落胆《らくたん》せずに、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|恥《は》ずべき|隠《かく》れたことを|捨《す》て|去《さ》り、|悪巧《わるだく》みによって|歩《ある》かず、|神《かみ》の|言《ことば》を|曲《ま》げず、|真理《しんり》を|明《あき》らかにし、|神《かみ》のみまえに、すべての|人《ひと》の|良心《りょうしん》に|自分《じぶん》を|推薦《すいせん》するのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしたちの|福音《ふくいん》がおおわれているなら、|滅《ほろ》びる|者《もの》どもにとっておおわれているのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|場合《ばあい》、この|世《よ》の|神《かみ》が|不信《ふしん》の|者《もの》たちの|思《おも》いをくらませて、|神《かみ》のかたちであるキリストの|栄光《えいこう》の|福音《ふくいん》の|輝《かがや》きを、|見《み》えなくしているのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしたちは|自分《じぶん》|自身《じしん》を|宣《の》べ|伝《つた》えるのではなく、|主《しゅ》なるキリスト・イエスを|宣《の》べ|伝《つた》える。わたしたち|自身《じしん》は、ただイエスのために|働《はたら》くあなたがたの|僕《しもべ》にすぎない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]「やみの|中《なか》から|光《ひかり》が|照《て》りいでよ」と|仰《おお》せになった|神《かみ》は、キリストの|顔《かお》に|輝《かがや》く|神《かみ》の|栄光《えいこう》の|知識《ちしき》を|明《あき》らかにするために、わたしたちの|心《こころ》を|照《てら》して|下《くだ》さったのである。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]しかしわたしたちは、この|宝《たから》を|土《つち》の|器《うつわ》の|中《なか》に|持《も》っている。その|測《はか》り|知《し》れない|力《ちから》は|神《かみ》のものであって、わたしたちから|出《で》たものでないことが、あらわれるためである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|四方《しほう》から|患難《かんなん》を|受《う》けても|窮《きゅう》しない。|途方《とほう》にくれても|行《ゆ》き|詰《づ》まらない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|迫害《はくがい》に|会《あ》っても|見捨《みす》てられない。|倒《たお》されても|滅《ほろ》びない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]いつもイエスの|死《し》をこの|身《み》に|負《お》うている。それはまた、イエスのいのちが、この|身《み》に|現《あらわ》れるためである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたち|生《い》きている|者《もの》は、イエスのために|絶《た》えず|死《し》に|渡《わた》されているのである。それはイエスのいのちが、わたしたちの|死《し》ぬべき|肉体《にくたい》に|現《あらわ》れるためである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|死《し》はわたしたちのうちに|働《はたら》き、いのちはあなたがたのうちに|働《はたら》くのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]「わたしは|信《しん》じた。それゆえに|語《かた》った」としるしてあるとおり、それと|同《おな》じ|信仰《しんこう》の|霊《れい》を|持《も》っているので、わたしたちも|信《しん》じている。それゆえに|語《かた》るのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]それは、|主《しゅ》イエスをよみがえらせたかたが、わたしたちをもイエスと|共《とも》によみがえらせ、そして、あなたがたと|共《とも》にみまえに|立《た》たせて|下《くだ》さることを、|知《し》っているからである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すべてのことは、あなたがたの|益《えき》であって、|恵《めぐ》みがますます|多《おお》くの|人《ひと》に|増《ま》し|加《くわ》わるにつれ、|感謝《かんしゃ》が|満《み》ちあふれて、|神《かみ》の|栄光《えいこう》となるのである。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしたちは|落胆《らくたん》しない。たといわたしたちの|外《そと》なる|人《ひと》は|滅《ほろ》びても、|内《うち》なる|人《ひと》は|日《ひ》ごとに|新《あたら》しくされていく。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、このしばらくの|軽《かる》い|患難《かんなん》は|働《はたら》いて、|永遠《えいえん》の|重《おも》い|栄光《えいこう》を、あふれるばかりにわたしたちに|得《え》させるからである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|見《み》えるものにではなく、|見《み》えないものに|目《め》を|注《そそ》ぐ。|見《み》えるものは|一時《いちじ》|的《てき》であり、|見《み》えないものは|永遠《えいえん》につづくのである。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|住《す》んでいる|地上《ちじょう》の|幕屋《まくや》がこわれると、|神《かみ》からいただく|建物《たてもの》、すなわち|天《てん》にある、|人《ひと》の|手《て》によらない|永遠《えいえん》の|家《いえ》が|備《そな》えてあることを、わたしたちは|知《し》っている。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして、|天《てん》から|賜《たま》わるそのすみかを、|上《うえ》に|着《き》ようと|切《せつ》に|望《のぞ》みながら、この|幕屋《まくや》の|中《なか》で|苦《くる》しみもだえている。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]それを|着《き》たなら、|裸《はだか》のままではいないことになろう。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]この|幕屋《まくや》の|中《なか》にいるわたしたちは、|重荷《おもに》を|負《お》って|苦《くる》しみもだえている。それを|脱《ぬ》ごうと|願《ねが》うからではなく、その|上《うえ》に|着《き》ようと|願《ねが》うからであり、それによって、|死《し》ぬべきものがいのちにのまれてしまうためである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちを、この|事《こと》にかなう|者《もの》にして|下《くだ》さったのは、|神《かみ》である。そして、|神《かみ》はその|保証《ほしょう》として|御霊《みたま》をわたしたちに|賜《たま》わったのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしたちはいつも|心《こころ》|強《づよ》い。そして、|肉体《にくたい》を|宿《やど》としている|間《あいだ》は|主《しゅ》から|離《はな》れていることを、よく|知《し》っている。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|見《み》えるものによらないで、|信仰《しんこう》によって|歩《ある》いているのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それで、わたしたちは|心《こころ》|強《づよ》い。そして、むしろ|肉体《にくたい》から|離《はな》れて|主《しゅ》と|共《とも》に|住《す》むことが、|願《ねが》わしいと|思《おも》っている。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そういうわけだから、|肉体《にくたい》を|宿《やど》としているにしても、それから|離《はな》れているにしても、ただ|主《しゅ》に|喜《よろこ》ばれる|者《もの》となるのが、|心《こころ》からの|願《ねが》いである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、わたしたちは|皆《みな》、キリストのさばきの|座《ざ》の|前《まえ》にあらわれ、|善《ぜん》であれ|悪《あく》であれ、|自分《じぶん》の|行《おこな》ったことに|応《おう》じて、それぞれ|報《むく》いを|受《う》けねばならないからである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]このようにわたしたちは、|主《しゅ》の|恐《おそ》るべきことを|知《し》っているので、|人々《ひとびと》に|説《と》き|勧《すす》める。わたしたちのことは、|神《かみ》のみまえには|明《あき》らかになっている。さらに、あなたがたの|良心《りょうしん》にも|明《あき》らかになるようにと|望《のぞ》む。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、あなたがたに|対《たい》して、またもや|自己《じこ》|推薦《すいせん》をしようとするのではない。ただわたしたちを|誇《ほこ》る|機会《きかい》を、あなたがたに|持《も》たせ、|心《こころ》を|誇《ほこ》るのではなくうわべだけを|誇《ほこ》る|人々《ひとびと》に|答《こた》えうるようにさせたいのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしたちが、|気《き》が|狂《くる》っているのなら、それは|神《かみ》のためであり、|気《き》が|確《たし》かであるのなら、それはあなたがたのためである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、キリストの|愛《あい》がわたしたちに|強《つよ》く|迫《せま》っているからである。わたしたちはこう|考《かんが》えている。ひとりの|人《ひと》がすべての|人《ひと》のために|死《し》んだ|以上《いじょう》、すべての|人《ひと》が|死《し》んだのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》がすべての|人《ひと》のために|死《し》んだのは、|生《い》きている|者《もの》がもはや|自分《じぶん》のためにではなく、|自分《じぶん》のために|死《し》んでよみがえったかたのために、|生《い》きるためである。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それだから、わたしたちは|今後《こんご》、だれをも|肉《にく》によって|知《し》ることはすまい。かつてはキリストを|肉《にく》によって|知《し》っていたとしても、|今《いま》はもうそのような|知《し》り|方《かた》をすまい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]だれでもキリストにあるならば、その|人《ひと》は|新《あたら》しく|造《つく》られた|者《もの》である。|古《ふる》いものは|過《す》ぎ|去《さ》った、|見《み》よ、すべてが|新《あたら》しくなったのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、すべてこれらの|事《こと》は、|神《かみ》から|出《で》ている。|神《かみ》はキリストによって、わたしたちをご|自分《じぶん》に|和解《わかい》させ、かつ|和解《わかい》の|務《つとめ》をわたしたちに|授《さづ》けて|下《くだ》さった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|神《かみ》はキリストにおいて|世《よ》をご|自分《じぶん》に|和解《わかい》させ、その|罪過《ざいか》の|責任《せきにん》をこれに|負《お》わせることをしないで、わたしたちに|和解《わかい》の|福音《ふくいん》をゆだねられたのである。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》がわたしたちをとおして|勧《すす》めをなさるのであるから、わたしたちはキリストの|使者《ししゃ》なのである。そこで、キリストに|代《かわ》って|願《ねが》う、|神《かみ》の|和解《わかい》を|受《う》けなさい。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はわたしたちの|罪《つみ》のために、|罪《つみ》を|知《し》らないかたを|罪《つみ》とされた。それは、わたしたちが、|彼《かれ》にあって|神《かみ》の|義《ぎ》となるためなのである。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちはまた、|神《かみ》と|共《とも》に|働《はたら》く|者《もの》として、あなたがたに|勧《すす》める。|神《かみ》の|恵《めぐ》みをいたずらに|受《う》けてはならない。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はこう|言《い》われる、 [#ここから2字下げ] 「わたしは、|恵《めぐ》みの|時《とき》にあなたの|願《ねが》いを|聞《き》きいれ、 |救《すくい》の|日《ひ》にあなたを|助《たす》けた」。 [#ここで字下げ終わり] |見《み》よ、|今《いま》は|恵《めぐ》みの|時《とき》、|見《み》よ、|今《いま》は|救《すくい》の|日《ひ》である。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]この|務《つとめ》がそしりを|招《まね》かないために、わたしたちはどんな|事《こと》にも、|人《ひと》につまずきを|与《あた》えないようにし、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]かえって、あらゆる|場合《ばあい》に、|神《かみ》の|僕《しもべ》として、|自分《じぶん》を|人々《ひとびと》にあらわしている。すなわち、|極度《きょくど》の|忍苦《にんく》にも、|患難《かんなん》にも、|危機《きき》にも、|行《ゆ》き|詰《づ》まりにも、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]むち|打《う》たれることにも、|入獄《にゅうごく》にも、|騒乱《そうらん》にも、|労苦《ろうく》にも、|徹夜《てつや》にも、|飢餓《きが》にも、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|真実《しんじつ》と|知識《ちしき》と|寛容《かんよう》と、|慈愛《じあい》と|聖霊《せいれい》と|偽《いつわ》りのない|愛《あい》と、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|真理《しんり》の|言葉《ことば》と|神《かみ》の|力《ちから》とにより、|左右《さゆう》に|持《も》っている|義《ぎ》の|武器《ぶき》により、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ほめられても、そしられても、|悪評《あくひょう》を|受《う》けても、|好評《こうひょう》を|博《はく》しても、|神《かみ》の|僕《しもべ》として|自分《じぶん》をあらわしている。わたしたちは、|人《ひと》を|惑《まど》わしているようであるが、しかも|真実《しんじつ》であり、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》に|知《し》られていないようであるが、|認《みと》められ、|死《し》にかかっているようであるが、|見《み》よ、|生《い》きており、|懲《こ》らしめられているようであるが、|殺《ころ》されず、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|悲《かな》しんでいるようであるが、|常《つね》に|喜《よろこ》んでおり、|貧《まず》しいようであるが、|多《おお》くの|人《ひと》を|富《と》ませ、|何《なに》も|持《も》たないようであるが、すべての|物《もの》を|持《も》っている。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]コリントの|人々《ひとびと》よ。あなたがたに|向《む》かってわたしたちの|口《くち》は|開《ひら》かれており、わたしたちの|心《こころ》は|広《ひろ》くなっている。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わたしたちに|心《こころ》をせばめられていたのではなく、|自分《じぶん》で|心《こころ》をせばめていたのだ。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|子供《こども》たちに|対《たい》するように|言《い》うが、どうかあなたがたの|方《ほう》でも|心《こころ》を|広《ひろ》くして、わたしに|応《おう》じてほしい。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|不信者《ふしんじゃ》と、つり|合《あ》わないくびきを|共《とも》にするな。|義《ぎ》と|不義《ふぎ》となんの|係《かか》わりがあるか。|光《ひかり》とやみとなんの|交《まじ》わりがあるか。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]キリストとベリアルとなんの|調和《ちょうわ》があるか。|信仰《しんこう》と|不《ふ》|信仰《しんこう》となんの|関係《かんけい》があるか。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|宮《みや》と|偶像《ぐうぞう》となんの|一致《いっち》があるか。わたしたちは、|生《い》ける|神《かみ》の|宮《みや》である。|神《かみ》がこう|仰《おお》せになっている、 [#ここから2字下げ] 「わたしは|彼《かれ》らの|間《あいだ》に|住《す》み、 かつ|出入《でい》りをするであろう。 そして、わたしは|彼《かれ》らの|神《かみ》となり、 |彼《かれ》らはわたしの|民《たみ》となるであろう」。 [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]だから、「|彼《かれ》らの|間《あいだ》から|出《で》て|行《い》き、 |彼《かれ》らと|分離《ぶんり》せよ、と|主《しゅ》は|言《い》われる。 そして、|汚《けが》れたものに|触《ふれ》てはならない。 |触《ふれ》なければ、わたしはあなたがたを|受《う》けいれよう。 [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そしてわたしは、あなたがたの|父《ちち》となり、 あなたがたは、 わたしのむすこ、むすめとなるであろう。 |全能《ぜんのう》の|主《しゅ》が、こう|言《い》われる」。 [#ここで字下げ終わり] 第七章[#「第七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。わたしたちは、このような|約束《やくそく》を|与《あた》えられているのだから、|肉《にく》と|霊《れい》とのいっさいの|汚《けが》れから|自分《じぶん》をきよめ、|神《かみ》をおそれて|全《まった》く|清《きよ》くなろうではないか。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]どうか、わたしたちに|心《こころ》を|開《ひら》いてほしい。わたしたちは、だれにも|不義《ふぎ》をしたことがなく、だれをも|破滅《はめつ》におとしいれたことがなく、だれからもだまし|取《と》ったことがない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|責《せ》めるつもりでこう|言《い》うのではない。|前《まえ》にも|言《い》ったように、あなたがたはわたしの|心《こころ》のうちにいて、わたしたちと|生《せい》|死《し》を|共《とも》にしているのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしはあなたがたを|大《おお》いに|信頼《しんらい》し、|大《おお》いに|誇《ほこ》っている。また、あふれるばかり|慰《なぐさ》めを|受《う》け、あらゆる|患難《かんなん》の|中《なか》にあって|喜《よろこ》びに|満《み》ちあふれている。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]さて、マケドニヤに|着《つ》いたとき、わたしたちの|身《み》に|少《すこ》しの|休《やす》みもなく、さまざまの|患難《かんなん》に|会《あ》い、|外《そと》には|戦《たたか》い、|内《うち》には|恐《おそ》れがあった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかるに、うちしおれている|者《もの》を|慰《なぐさ》める|神《かみ》は、テトスの|到来《とうらい》によって、わたしたちを|慰《なぐさ》めて|下《くだ》さった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ただ|彼《かれ》の|到来《とうらい》によるばかりではなく、|彼《かれ》があなたがたから|受《う》けたその|慰《なぐさ》めをもって、|慰《なぐさ》めて|下《くだ》さった。すなわち、あなたがたがわたしを|慕《した》っていること、|嘆《なげ》いていること、またわたしに|対《たい》して|熱心《ねっしん》であることを|知《し》らせてくれたので、わたしの|喜《よろこ》びはいよいよ|増《ま》し|加《くわ》わったのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、たとい、あの|手紙《てがみ》であなたがたを|悲《かな》しませたとしても、わたしはそれを|悔《く》いていない。あの|手紙《てがみ》がしばらくの|間《あいだ》ではあるが、あなたがたを|悲《かな》しませたのを|見《み》て|悔《く》いたとしても、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》は|喜《よろこ》んでいる。それは、あなたがたが|悲《かな》しんだからではなく、|悲《かな》しんで|悔《く》い|改《あらた》めるに|至《いた》ったからである。あなたがたがそのように|悲《かな》しんだのは、|神《かみ》のみこころに|添《そ》うたことであって、わたしたちからはなんの|損《そん》|害《がい》も|受《う》けなかったのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》のみこころに|添《そ》うた|悲《かな》しみは、|悔《く》いのない|救《すくい》を|得《え》させる|悔改《くいあらた》めに|導《みちび》き、この|世《よ》の|悲《かな》しみは|死《し》をきたらせる。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、|神《かみ》のみこころに|添《そ》うたその|悲《かな》しみが、どんなにか|熱《ねつ》|情《じょう》をあなたがたに|起《おこ》させたことか。また、|弁明《べんめい》、|義憤《ぎふん》、|恐《おそ》れ、|愛慕《あいぼ》、|熱意《ねつい》、それから|処罰《しょばつ》に|至《いた》らせたことか。あなたがたはあの|問題《もんだい》については、すべての|点《てん》において|潔白《けっぱく》であることを|証明《しょうめい》したのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしがあなたがたに|書《か》きおくったのは、|不義《ふぎ》をした|人《ひと》のためでも、|不義《ふぎ》を|受《う》けた|人《ひと》のためでもなく、わたしたちに|対《たい》するあなたがたの|熱《ねつ》|情《じょう》が、|神《かみ》の|前《まえ》にあなたがたの|間《あいだ》で|明《あき》らかになるためである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、わたしたちは|慰《なぐさ》められたのである。これらの|慰《なぐさ》めの|上《うえ》にテトスの|喜《よろこ》びが|加《くわ》わって、わたしたちはなおいっそう|喜《よろこ》んだ。|彼《かれ》があなたがた|一同《いちどう》によって|安心《あんしん》させられたからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして、わたしは|彼《かれ》に|対《たい》してあなたがたのことを|少《すこ》しく|誇《ほこ》ったが、それはわたしの|恥《はじ》にならないですんだ。あなたがたにいっさいのことを|真実《しんじつ》に|語《かた》ったように、テトスに|対《たい》して|誇《ほこ》ったことも|真実《しんじつ》となってきたのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]また|彼《かれ》は、あなたがた|一同《いちどう》が|従順《じゅうじゅん》であって、おそれおののきつつ|自分《じぶん》を|迎《むか》えてくれたことを|思《おも》い|出《だ》して、ますます|心《こころ》をあなたがたの|方《ほう》に|寄《よ》せている。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたに|全《まった》く|信頼《しんらい》することができて、|喜《よろこ》んでいる。 第八章[#「第八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちはここで、マケドニヤの|諸《しょ》|教会《きょうかい》に|与《あた》えられた|神《かみ》の|恵《めぐ》みを、あなたがたに|知《し》らせよう。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|彼《かれ》らは、|患難《かんなん》のために|激《はげ》しい|試錬《しれん》をうけたが、その|満《み》ちあふれる|喜《よろこ》びは、|極度《きょくど》の|貧《まず》しさにもかかわらず、あふれ|出《で》て|惜《お》しみなく|施《ほどこ》す|富《とみ》となったのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしはあかしするが、|彼《かれ》らは|力《ちから》に|応《おう》じて、|否《いな》、|力《ちから》|以上《いじょう》に|施《ほどこ》しをした。すなわち、|自《みずか》ら|進《すす》んで、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|聖徒《せいと》たちへの|奉仕《ほうし》に|加《くわ》わる|恵《めぐ》みにあずかりたいと、わたしたちに|熱心《ねっしん》に|願《ねが》い|出《で》て、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|希望《きぼう》どおりにしたばかりか、|自分《じぶん》|自身《じしん》をまず、|神《かみ》のみこころにしたがって、|主《しゅ》にささげ、また、わたしたちにもささげたのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、この|募金《ぼきん》をテトスがあなたがたの|所《ところ》で、すでに|始《はじ》めた|以上《いじょう》、またそれを|完成《かんせい》するようにと、わたしたちは|彼《かれ》に|勧《すす》めたのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]さて、あなたがたがあらゆる|事《こと》がらについて|富《と》んでいるように、すなわち、|信仰《しんこう》にも|言葉《ことば》にも|知識《ちしき》にも、あらゆる|熱《ねつ》|情《じょう》にも、また、あなたがたに|対《たい》するわたしたちの|愛《あい》にも|富《と》んでいるように、この|恵《めぐ》みのわざにも|富《と》んでほしい。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]こう|言《い》っても、わたしは|命令《めいれい》するのではない。ただ、|他《た》の|人《ひと》たちの|熱《ねつ》|情《じょう》によって、あなたがたの|愛《あい》の|純真《じゅんしん》さをためそうとするのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|恵《めぐ》みを|知《し》っている。すなわち、|主《しゅ》は|富《と》んでおられたのに、あなたがたのために|貧《まず》しくなられた。それは、あなたがたが、|彼《かれ》の|貧《まず》しさによって|富《と》む|者《もの》になるためである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしは、この|恵《めぐ》みのわざについて|意見《いけん》を|述《の》べよう。それがあなたがたの|益《えき》になるからである。あなたがたはこの|事《こと》を、|昨年《さくねん》|以来《いらい》、|他《ほか》に|先《さき》んじて|実行《じっこう》したばかりではなく、それを|願《ねが》っていた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]だから|今《いま》、それをやりとげなさい。あなたがたが|心《こころ》から|願《ねが》っているように、|持《も》っているところに|応《おう》じて、それをやりとげなさい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]もし|心《こころ》から|願《ねが》ってそうするなら、|持《も》たないところによらず、|持《も》っているところによって、|神《かみ》に|受《う》けいれられるのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それは、ほかの|人々《ひとびと》に|楽《らく》をさせて、あなたがたに|苦労《くろう》をさせようとするのではなく、|持《も》ち|物《もの》を|等《ひと》しくするためである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|今《いま》の|場合《ばあい》は、あなたがたの|余裕《よゆう》があの|人《ひと》たちの|欠乏《けつぼう》を|補《おぎな》い、|後《のち》には、|彼《かれ》らの|余裕《よゆう》があなたがたの|欠乏《けつぼう》を|補《おぎな》い、こうして|等《ひと》しくなるようにするのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それは「|多《おお》く|得《え》た|者《もの》も|余《あま》ることがなく、|少《すこ》ししか|得《え》なかった|者《もの》も|足《た》りないことはなかった」と|書《か》いてあるとおりである。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあなたがたに|対《たい》して|持《も》っている|同《おな》じ|熱《ねつ》|情《じょう》を、テトスの|心《こころ》にも|与《あた》えて|下《くだ》さった|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》する。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はわたしの|勧《すす》めを|受《う》けいれ、そして|更《さら》に|熱心《ねっしん》になって、|自分《じぶん》から|進《すす》んであなたがたのところに|行《い》った。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちはまた、テトスと|一緒《いっしょ》に、ひとりの|兄弟《きょうだい》を|送《おく》る。この|兄弟《きょうだい》が|福音《ふくいん》|宣伝《せんでん》の|上《うえ》で|得《え》たほまれは、すべての|教会《きょうかい》に|聞《きこ》えているが、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そのうえ、|彼《かれ》は、|主《しゅ》ご|自身《じしん》の|栄光《えいこう》があらわれるため、また、わたしたちの|好意《こうい》を|示《しめ》すために、|骨《ほね》を|折《お》って|贈《おく》り|物《もの》を|集《あつ》めているわたしたちの|同伴者《どうはんしゃ》として、|諸《しょ》|教会《きょうかい》から|選《えら》ばれたのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そうしたのは、わたしたちが|集《あつ》めているこの|寄附《きふ》|金《きん》のことについて、|人《ひと》にかれこれ|言《い》われるのを|避《さ》けるためである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|主《しゅ》のみまえばかりではなく、|人《ひと》の|前《まえ》でも|公正《こうせい》であるように、|気《き》を|配《くば》っているのである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]また、もうひとりの|兄弟《きょうだい》を|彼《かれ》らと|一緒《いっしょ》に|送《おく》る。わたしたちは、|多《おお》くの|事《こと》について|彼《かれ》が|熱心《ねっしん》であったことを、たびたび|認《みと》めた。|彼《かれ》は|今《いま》、あなたがたを|非常《ひじょう》に|信頼《しんらい》して、ますます|熱心《ねっしん》になっている。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]テトスについて|言《い》えば、|彼《かれ》はわたしの|仲間《なかま》であり、あなたがたに|対《たい》するわたしの|協力者《きょうりょくしゃ》である。この|兄弟《きょうだい》たちについて|言《い》えば、|彼《かれ》らは|諸《しょ》|教会《きょうかい》の|使者《ししゃ》、キリストの|栄光《えいこう》である。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたの|愛《あい》と、また、あなたがたについてわたしたちがいだいている|誇《ほこり》とが、|真実《しんじつ》であることを、|諸《しょ》|教会《きょうかい》の|前《まえ》で|彼《かれ》らにあかししていただきたい。 第九章[#「第九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|聖徒《せいと》たちに|対《たい》する|援助《えんじょ》については、いまさら、あなたがたに|書《か》きおくる|必要《ひつよう》はない。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたの|好意《こうい》を|知《し》っており、そのために、あなたがたのことをマケドニヤの|人々《ひとびと》に|誇《ほこ》って、アカヤでは|昨年《さくねん》|以来《いらい》、すでに|準備《じゅんび》をしているのだと|言《い》った。そして、あなたがたの|熱心《ねっしん》は、|多《おお》くの|人《ひと》を|奮起《ふんき》させたのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|兄弟《きょうだい》たちを|送《おく》ることにしたのは、あなたがたについてわたしたちの|誇《ほこ》ったことが、この|場合《ばあい》むなしくならないで、わたしが|言《い》ったとおり|準備《じゅんび》していてもらいたいからである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そうでないと、|万一《まんいち》マケドニヤ|人《びと》がわたしと|一緒《いっしょ》に|行《い》って、|準備《じゅんび》ができていないのを|見《み》たら、あなたがたはもちろん、わたしたちも、かように|信《しん》じきっていただけに、|恥《はじ》をかくことになろう。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしは|兄弟《きょうだい》たちを|促《うなが》して、あなたがたの|所《ところ》へ|先《さき》に|行《い》かせ、|以前《いぜん》あなたがたが|約束《やくそく》していた|贈《おく》り|物《もの》の|準備《じゅんび》をさせておくことが|必要《ひつよう》だと|思《おも》った。それをしぶりながらではなく、|心《こころ》をこめて|用意《ようい》していてほしい。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|考《かんが》えはこうである。|少《すこ》ししかまかない|者《もの》は、|少《すこ》ししか|刈《か》り|取《と》らず、|豊《ゆた》かにまく|者《もの》は、|豊《ゆた》かに|刈《か》り|取《と》ることになる。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|各自《かくじ》は|惜《お》しむ|心《こころ》からでなく、また、しいられてでもなく、|自《みずか》ら|心《こころ》で|決《き》めたとおりにすべきである。|神《かみ》は|喜《よろこ》んで|施《ほどこ》す|人《ひと》を|愛《あい》して|下《くだ》さるのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はあなたがたにあらゆる|恵《めぐ》みを|豊《ゆた》かに|与《あた》え、あなたがたを|常《つね》にすべてのことに|満《み》ち|足《た》らせ、すべての|良《よ》いわざに|富《と》ませる|力《ちから》のあるかたなのである。 [#ここから2字下げ] [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]「|彼《かれ》は|貧《まず》しい|人《ひと》たちに|散《ち》らして|与《あた》えた。 その|義《ぎ》は|永遠《えいえん》に|続《つづ》くであろう」 [#ここで字下げ終わり] と|書《か》いてあるとおりである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|種《たね》まく|人《ひと》に|種《たね》と|食《た》べるためのパンとを|備《そな》えて|下《くだ》さるかたは、あなたがたにも|種《たね》を|備《そな》え、それをふやし、そしてあなたがたの|義《ぎ》の|実《み》を|増《ま》して|下《くだ》さるのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]こうして、あなたがたはすべてのことに|豊《ゆた》かになって、|惜《お》しみなく|施《ほどこ》し、その|施《ほどこ》しはわたしたちの|手《て》によって|行《おこな》われ、|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》するに|至《いた》るのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、この|援助《えんじょ》の|働《はたら》きは、|聖徒《せいと》たちの|欠乏《けつぼう》を|補《おぎな》えだけではなく、|神《かみ》に|対《たい》する|多《おお》くの|感謝《かんしゃ》によってますます|豊《ゆた》かになるからである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、この|援助《えんじょ》を|行《おこな》った|結果《けっか》として、あなたがたがキリストの|福音《ふくいん》の|告白《こくはく》に|対《たい》して|従順《じゅうじゅん》であることや、|彼《かれ》らにも、すべての|人《ひと》にも、|惜《お》しみなく|施《ほどこ》しをしていることがわかってきて、|彼《かれ》らは|神《かみ》に|栄光《えいこう》を|帰《き》し、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたがたに|賜《たま》わったきわめて|豊《ゆた》かな|神《かみ》の|恵《めぐ》みのゆえに、あなたがたを|慕《した》い、あなたがたのために|祈《いの》るのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》いつくせない|賜物《たまもの》のゆえに、|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》する。 第一〇章[#「第一〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、「あなたがたの|間《あいだ》にいて|面《めん》と|向《む》かってはおとなしいが、|離《はな》れていると、|気《き》が|強《つよ》くなる」このパウロが、キリストの|優《やさ》しさ、|寛大《かんだい》さをもって、あなたがたに|勧《すす》める。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちを|肉《にく》に|従《したが》って|歩《ある》いているかのように|思《おも》っている|人々《ひとびと》に|対《たい》しては、わたしは|勇敢《ゆうかん》に|行動《こうどう》するつもりであるが、あなたがたの|所《ところ》では、どうか、そのような|思《おも》いきったことをしないですむようでありたい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|肉《にく》にあって|歩《ある》いてはいるが、|肉《にく》に|従《したが》って|戦《たたか》っているのではない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|戦《たたか》いの|武器《ぶき》は、|肉《にく》のものではなく、|神《かみ》のためには|要塞《ようさい》をも|破壊《はかい》するほどの|力《ちから》あるものである。わたしたちはさまざまな|議論《ぎろん》を|破《やぶ》り、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|知恵《ちえ》に|逆《さか》らって|立《た》てられたあらゆる|障害物《しょうがいぶつ》を|打《う》ちこわし、すべての|思《おも》いをとりこにしてキリストに|服従《ふくじゅう》させ、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたがたが|完全《かんぜん》に|服従《ふくじゅう》した|時《とき》、すべて|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》な|者《もの》を|処罰《しょばつ》しようと、|用意《ようい》しているのである。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、うわべの|事《こと》だけを|見《み》ている。もしある|人《ひと》が、キリストに|属《ぞく》する|者《もの》だと|自任《じにん》しているなら、その|人《ひと》はもう|一度《いちど》よく|反省《はんせい》すべきである。その|人《ひと》がキリストに|属《ぞく》する|者《もの》であるように、わたしたちもそうである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]たとい、あなたがたを|倒《たお》すためではなく|高《たか》めるために|主《しゅ》からわたしたちに|賜《たま》わった|権威《けんい》について、わたしがやや|誇《ほこ》りすぎたとしても、|恥《はじ》にはなるまい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ただ、わたしは、|手紙《てがみ》であなたがたをおどしているのだと、|思《おも》われたくはない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》は|言《い》う、「|彼《かれ》の|手紙《てがみ》は|重味《おもみ》があって|力強《ちからづよ》いが、|会《あ》って|見《み》ると|外見《がいけん》は|弱《よわ》々しく、|話《はなし》はつまらない」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そういう|人《ひと》は|心得《こころえ》ているがよい。わたしたちは、|離《はな》れていて|書《か》きおくる|手紙《てがみ》の|言葉《ことば》どおりに、|一緒《いっしょ》にいる|時《とき》でも|同《おな》じようにふるまうのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|自己《じこ》|推薦《すいせん》をするような|人々《ひとびと》と|自分《じぶん》を|同《どう》|列《れつ》においたり|比較《ひかく》したりはしない。|彼《かれ》らは|仲間《なかま》|同志《どうし》で|互《たがい》にはかり|合《あ》ったり、|互《たがい》に|比《くら》べ|合《あ》ったりしているが、|知恵《ちえ》のないしわざである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしたちは|限度《げんど》をこえて|誇《ほこ》るようなことはしない。むしろ、|神《かみ》が|割《わ》り|当《あ》てて|下《くだ》さった|地域《ちいき》の|限度内《げんどない》で|誇《ほこ》るにすぎない。わたしはその|限度《げんど》にしたがって、あなたがたの|所《ところ》まで|行《い》ったのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、あなたがたの|所《ところ》まで|行《い》けない|者《もの》であるかのように、むりに|手《て》を|延《の》ばしているのではない。|事実《じじつ》、わたしたちが|最初《さいしょ》にキリストの|福音《ふくいん》を|携《たずさ》えて、あなたがたの|所《ところ》までも|行《い》ったのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは|限度《げんど》をこえて、|他人《たにん》の|働《はたら》きを|誇《ほこ》るようなことはしない。ただ、あなたがたの|信仰《しんこう》が|成長《せいちょう》するにつれて、わたしたちの|働《はたら》きの|範囲《はんい》があなたがたの|中《なか》でますます|大《おお》きくなることを|望《のぞ》んでいる。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]こうして、わたしたちはほかの|人《ひと》の|地域《ちいき》ですでになされていることを|誇《ほこ》ることはせずに、あなたがたを|越《こ》えたさきざきにまで、|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えたい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|誇《ほこ》る|者《もの》は|主《しゅ》を|誇《ほこ》るべきである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》で|自分《じぶん》を|推薦《すいせん》する|人《ひと》ではなく、|主《しゅ》に|推薦《すいせん》される|人《ひと》こそ、|確《たし》かな|人《ひと》なのである。 第一一章[#「第一一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|少《すこ》しばかり|愚《おろ》かなことを|言《い》うのを、どうか、|忍《しの》んでほしい。もちろん|忍《しの》んでくれるのだ。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|神《かみ》の|熱《ねつ》|情《じょう》をもって、あなたがたを|熱愛《ねつあい》している。あなたがたを、きよいおとめとして、ただひとりの|男子《だんし》キリストにささげるために、|婚約《こんやく》させたのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ただ|恐《おそ》れるのは、エバがへびの|悪巧《わるだく》みで|誘惑《ゆうわく》されたように、あなたがたの|思《おも》いが|汚《けが》されて、キリストに|対《たい》する|純情《じゅんじょう》と|貞操《ていそう》とを|失《うしな》いはしないかということである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]というのは、もしある|人《ひと》がきて、わたしたちが|宣《の》べ|伝《つた》えもしなかったような|異《こと》なるイエスを|宣《の》べ|伝《つた》え、あるいは、あなたがたが|受《う》けたことのない|違《ちが》った|霊《れい》を|受《う》け、あるいは、|受《う》けいれたことのない|違《ちが》った|福音《ふくいん》を|聞《き》く|場合《ばあい》に、あなたがたはよくもそれを|忍《しの》んでいる。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|事実《じじつ》、わたしは、あの|大使徒《だいしと》たちにいささかも|劣《おと》ってはいないと|思《おも》う。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]たとい|弁舌《べんぜつ》はつたなくても、|知識《ちしき》はそうでない。わたしは、|事《こと》ごとに、いろいろの|場合《ばあい》に、あなたがたに|対《たい》してそれを|明《あき》らかにした。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それとも、あなたがたを|高《たか》めるために|自分《じぶん》を|低《ひく》くして、|神《かみ》の|福音《ふくいん》を|価《あたい》なしにあなたがたに|宣《の》べ|伝《つた》えたことが、|罪《つみ》になるのだろうか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|他《た》の|諸《しょ》|教会《きょうかい》をかすめたと|言《い》われながら|得《え》た|金《かね》で、あなたがたに|奉仕《ほうし》し、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|所《ところ》にいて|貧乏《びんぼう》をした|時《とき》にも、だれにも|負担《ふたん》をかけたことはなかった。わたしの|欠乏《けつぼう》は、マケドニヤからきた|兄弟《きょうだい》たちが、|補《おぎな》ってくれた。こうして、わたしはすべての|事《こと》につき、あなたがたに|重荷《おもに》を|負《お》わせまいと|努《つと》めてきたし、|今後《こんご》も|努《つと》めよう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|内《うち》にあるキリストの|真実《しんじつ》にかけて|言《い》う、この|誇《ほこり》がアカヤ|地方《ちほう》で|封《ふう》じられるようなことは、|決《けっ》してない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]なぜであるか。わたしがあなたがたを|愛《あい》していないからか。それは、|神《かみ》がご|存《ぞん》じである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしは、|現在《げんざい》していることを|今後《こんご》もしていこう。それは、わたしたちと|同《おな》じように|誇《ほこ》りうる|立《た》ち|場《ば》を|得《え》ようと|機会《きかい》をねらっている|者《もの》どもから、その|機会《きかい》を|断《た》ち|切《き》ってしまうためである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]こういう|人々《ひとびと》はにせ|使徒《しと》、|人《ひと》をだます|働《はたら》き|人《びと》であって、キリストの|使徒《しと》に|擬装《ぎそう》しているにすぎないからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|驚《おどろ》くには|及《およ》ばない。サタンも|光《ひかり》の|天使《てんし》に|擬装《ぎそう》するのだから。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]だから、たといサタンの|手《て》|下《した》どもが、|義《ぎ》の|奉仕者《ほうししゃ》のように|擬装《ぎそう》したとしても、|不思議《ふしぎ》ではない。|彼《かれ》らの|最期《さいご》は、そのしわざに|合《あ》ったものとなろう。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|繰《く》り|返《かえ》して|言《い》うが、だれも、わたしを|愚《おろ》か|者《もの》と|思《おも》わないでほしい。もしそう|思《おも》うなら、|愚《おろ》か|者《もの》あつかいにされてもよいから、わたしにも、|少《すこ》し|誇《ほこ》らせてほしい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]いま|言《い》うことは、|主《しゅ》によって|言《い》うのではなく、|愚《おろ》か|者《もの》のように、|自分《じぶん》の|誇《ほこり》とするところを|信《しん》じきって|言《い》うのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|多《おお》くの|人《ひと》が|肉《にく》によって|誇《ほこ》っているから、わたしも|誇《ほこ》ろう。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|賢《かしこ》い|人《ひと》たちなのだから、|喜《よろこ》んで|愚《おろ》か|者《もの》を|忍《しの》んでくれるだろう。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|実際《じっさい》、あなたがたは|奴隷《どれい》にされても、|食《く》い|倒《たお》されても、|略奪《りゃくだつ》されても、いばられても、|顔《かお》をたたかれても、それを|忍《しの》んでいる。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》うのも|恥《は》ずかしいことだが、わたしたちは|弱《よわ》すぎたのだ。もしある|人《ひと》があえて|誇《ほこ》るなら、わたしは|愚《おろ》か|者《もの》になって|言《い》うが、わたしもあえて|誇《ほこ》ろう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはヘブル|人《びと》なのか。わたしもそうである。|彼《かれ》らはイスラエル|人《びと》なのか。わたしもそうである。|彼《かれ》らはアブラハムの|子孫《しそん》なのか。わたしもそうである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはキリストの|僕《しもべ》なのか。わたしは|気《き》が|狂《くる》ったようになって|言《い》う、わたしは|彼《かれ》ら|以上《いじょう》にそうである。|苦労《くろう》したことはもっと|多《おお》く、|投獄《とうごく》されたことももっと|多《おお》く、むち|打《う》たれたことは、はるかにおびただしく、|死《し》に|面《めん》したこともしばしばあった。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》から四十に一つ|足《た》りないむちを|受《う》けたことが五|度《ど》、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ローマ|人《じん》にむちで|打《う》たれたことが三|度《ど》、|石《いし》で|打《う》たれたことが|一度《いちど》、|難船《なんせん》したことが三|度《ど》、そして、|一昼夜《いっちゅうや》、|海《うみ》の|上《うえ》を|漂《ただよ》ったこともある。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|幾《いく》たびも|旅《たび》をし、|川《かわ》の|難《なん》、|盗賊《とうぞく》の|難《なん》、|同国民《どうこくみん》の|難《なん》、|異邦人《いほうじん》の|難《なん》、|都会《とかい》の|難《なん》、|荒野《あらの》の|難《なん》、|海上《かいじょう》の|難《なん》、にせ|兄弟《きょうだい》の|難《なん》に|会《あ》い、[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|労《ろう》し|苦《くる》しみ、たびたび|眠《ねむ》られぬ|夜《よる》を|過《す》ごし、|飢《う》えかわき、しばしば|食物《しょくもつ》がなく、|寒《さむ》さに|凍《こご》え、|裸《はだか》でいたこともあった。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]なおいろいろの|事《こと》があった|外《ほか》に、|日々《ひび》わたしに|迫《せま》って|来《く》る|諸《しょ》|教会《きょうかい》の|心配《しんぱい》ごとがある。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]だれかが|弱《よわ》っているのに、わたしも|弱《よわ》らないでおれようか。だれかが|罪《つみ》を|犯《おか》しているのに、わたしの|心《こころ》が|燃《も》えないでおれようか。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]もし|誇《ほこ》らねばならないのなら、わたしは|自分《じぶん》の|弱《よわ》さを|誇《ほこ》ろう。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|永遠《えいえん》にほむべき、|主《しゅ》イエス・キリストの|父《ちち》なる|神《かみ》は、わたしが|偽《いつわ》りを|言《い》っていないことを、ご|存《ぞん》じである。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]ダマスコでアレタ|王《おう》の|代《だい》|官《かん》が、わたしを|捕《とら》えるためにダマスコ|人《びと》の|町《まち》を|監視《かんし》したことがあったが、[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》わたしは|窓《まど》から|町《まち》の|城壁《じょうへき》づたいに、かごでつり|降《お》ろされて、|彼《かれ》の|手《て》からのがれた。 第一二章[#「第一二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|誇《ほこ》らざるを|得《え》ないので、|無益《むえき》ではあろうが、|主《しゅ》のまぼろしと|啓示《けいじ》とについて|語《かた》ろう。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしはキリストにあるひとりの|人《ひと》を|知《し》っている。この|人《ひと》は十四|年《ねん》|前《まえ》に|第《だい》三の|天《てん》にまで|引《ひ》き|上《あ》げられた――それが、からだのままであったか、わたしは|知《し》らない。からだを|離《はな》れてであったか、それも|知《し》らない。|神《かみ》がご|存《ぞん》じである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》が――それが、からだのままであったか、からだを|離《はな》れてであったか、わたしは|知《し》らない。|神《かみ》がご|存《ぞん》じである――[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]パラダイスに|引《ひ》き|上《あ》げられ、そして|口《くち》に|言《い》い|表《あら》わせない、|人間《にんげん》が|語《かた》ってはならない|言葉《ことば》を|聞《き》いたのを、わたしは|知《し》っている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしはこういう|人《ひと》について|誇《ほこ》ろう。しかし、わたし|自身《じしん》については、|自分《じぶん》の|弱《よわ》さ|以外《いがい》には|誇《ほこ》ることをすまい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]もっとも、わたしが|誇《ほこ》ろうとすれば、ほんとうの|事《こと》を|言《い》うのだから、|愚《おろ》か|者《もの》にはならないだろう。しかし、それはさし|控《ひか》えよう。わたしがすぐれた|啓示《けいじ》を|受《う》けているので、わたしについて|見《み》たり|聞《き》いたりしている|以上《いじょう》に、|人《ひと》に|買《か》いかぶられるかも|知《し》れないから。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|高慢《こうまん》にならないように、わたしの|肉体《にくたい》に一つのとげが|与《あた》えられた。それは、|高慢《こうまん》にならないように、わたしを|打《う》つサタンの|使《つかい》なのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]このことについて、わたしは|彼《かれ》を|離《はな》れ|去《さ》らせて|下《くだ》さるようにと、三|度《ど》も|主《しゅ》に|祈《いの》った。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|主《しゅ》が|言《い》われた、「わたしの|恵《めぐ》みはあなたに|対《たい》して|十分《じゅうぶん》である。わたしの|力《ちから》は|弱《よわ》いところに|完全《かんぜん》にあらわれる」。それだから、キリストの|力《ちから》がわたしに|宿《やど》るように、むしろ、|喜《よろこ》んで|自分《じぶん》の|弱《よわ》さを|誇《ほこ》ろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしはキリストのためならば、|弱《よわ》さと、|侮辱《ぶじょく》と、|危機《きき》と、|迫害《はくがい》と、|行《ゆ》き|詰《づ》まりとに|甘《あま》んじよう。なぜなら、わたしが|弱《よわ》い|時《とき》にこそ、わたしは|強《つよ》いからである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|愚《おろ》か|者《もの》となった。あなたがたが、むりにわたしをそうしてしまったのだ。|実際《じっさい》は、あなたがたから|推薦《すいせん》されるべきであった。というのは、たといわたしは|取《と》るに|足《た》りない|者《もの》だとしても、あの|大使徒《だいしと》たちにはなんら|劣《おと》るところがないからである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|使徒《しと》たるの|実《じつ》を、しるしと|奇跡《きせき》と|力《ちから》あるわざとにより、|忍耐《にんたい》をつくして、あなたがたの|間《あいだ》であらわしてきた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]いったい、あなたがたが|他《た》の|教会《きょうかい》よりも劣っている|点《てん》は|何《なに》か。ただ、このわたしがあなたがたに|負担《ふたん》をかけなかったことだけではないか。この|不義《ふぎ》は、どうか、ゆるしてもらいたい。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしは|今《いま》、三|度目《どめ》にあなたがたの|所《ところ》に|行《ゆ》く|用意《ようい》をしている。しかし、|負担《ふたん》はかけないつもりである。わたしの|求《もと》めているのは、あなたがたの|持《も》ち|物《もの》ではなく、あなたがた|自身《じしん》なのだから。いったい、|子供《こども》は|親《おや》のために財をたくわえて|置《お》く|必要《ひつよう》はなく、|親《おや》が|子供《こども》のためにたくわえて|置《お》くべきである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしは、あなたがたの|魂《たましい》のためには、|大《おお》いに|喜《よろこ》んで|費用《ひよう》を|使《つか》い、また、わたし|自身《じしん》をも|使《つか》いつくそう。わたしがあなたがたを|愛《あい》すれば|愛《あい》するほど、あなたがたからますます|愛《あい》されなくなるのであろうか。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたに|重荷《おもに》を|負《お》わせなかったとしても、|悪《わる》がしこくて、あなたがたからだまし|取《と》ったのだと、|人《ひと》は|言《い》う。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたにつかわした|人《ひと》たちのうちのだれかをとおして、あなたがたからむさぼり|取《と》っただろうか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、テトスに|勧《すす》めてそちらに|行《い》かせ、また、かの|兄弟《きょうだい》を|同行《どうこう》させた。テトスは、あなたがたからむさぼり|取《と》ったことがあろうか。わたしたちは、みな|同《おな》じ|心《こころ》で|歩《ある》いたではないか。|同《おな》じ|足《あし》|並《な》みで|歩《ある》いたではないか。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わたしたちがあなたがたに|対《たい》して|弁明《べんめい》をしているのだと、|今《いま》までずっと|思《おも》ってきたであろう。しかし、わたしたちは、|神《かみ》のみまえでキリストにあって|語《かた》っているのである。|愛《あい》する|者《もの》たちよ。これらすべてのことは、あなたがたの|徳《とく》を|高《たか》めるためなのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、こんな|心配《しんぱい》をしている。わたしが|行《い》ってみると、もしかしたら、あなたがたがわたしの|願《ねが》っているような|者《もの》ではなく、わたしも、あなたがたの|願《ねが》っているような|者《もの》でないことになりはすまいか。もしかしたら、|争《あらそ》い、ねたみ、|怒《いか》り、|党派心《とうはしん》、そしり、ざんげん、|高慢《こうまん》、|騒乱《そうらん》などがありはすまいか。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|再《ふたた》びそちらに|行《い》った|場合《ばあい》、わたしの|神《かみ》が、あなたがたの|前《まえ》でわたしに|恥《はじ》をかかせ、その|上《うえ》、|多《おお》くの|人《ひと》が|前《まえ》に|罪《つみ》を|犯《おか》していながら、その|汚《けが》れと|不品行《ふひんこう》と|好色《こうしょく》とを|悔《く》い|改《あらた》めていないので、わたしを|悲《かな》しませることになりはすまいか。 第一三章[#「第一三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|今《いま》、三|度目《どめ》にあなたがたの|所《ところ》に|行《い》こうとしている。すべての|事《こと》がらは、ふたりか三|人《にん》の|証人《しょうにん》の|証言《しょうげん》によって|確定《かくてい》する。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|前《まえ》に|罪《つみ》を|犯《おか》した|者《もの》たちやその|他《た》のすべての|人々《ひとびと》に、二|度目《どめ》に|滞在《たいざい》していたとき|警告《けいこく》しておいたが、|離《はな》れている|今《いま》またあらかじめ|言《い》っておく。|今度《こんど》|行《い》った|時《とき》には、|決《けっ》して|容赦《ようしゃ》はしない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、あなたがたが、キリストのわたしにあって|語《かた》っておられるという|証拠《しょうこ》を|求《もと》めているからである。キリストは、あなたがたに|対《たい》して|弱《よわ》くはなく、あなたがたのうちにあって|強《つよ》い。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、キリストは|弱《よわ》さのゆえに|十字架《じゅうじか》につけられたが、|神《かみ》の|力《ちから》によって|生《い》きておられるのである。このように、わたしたちもキリストにあって|弱《よわ》い|者《もの》であるが、あなたがたに|対《たい》しては、|神《かみ》の|力《ちから》によって、キリストと|共《とも》に|生《い》きるのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、はたして|信仰《しんこう》があるかどうか、|自分《じぶん》を|反省《はんせい》し、|自分《じぶん》を|吟味《ぎんみ》するがよい。それとも、イエス・キリストがあなたがたのうちにおられることを、|悟《さと》らないのか。もし|悟《さと》らなければ、あなたがたは、にせものとして|見捨《みす》てられる。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかしわたしは、|自分《じぶん》たちが|見捨《みす》てられた|者《もの》ではないことを、|知《し》っていてもらいたい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、あなたがたがどんな|悪《あく》をも|行《おこな》わないようにと、|神《かみ》に|祈《いの》る。それは、|自分《じぶん》たちがほんとうの|者《もの》であることを|見《み》せるためではなく、たといわたしたちが|見捨《みす》てられた|者《もの》のようになっても、あなたがたに|良《よ》い|行《おこな》いをしてもらいたいためである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|真理《しんり》に|逆《さか》らっては|何《なに》をする|力《ちから》もなく、|真理《しんり》にしたがえば|力《ちから》がある。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|自分《じぶん》は|弱《よわ》くても、あなたがたが|強《つよ》ければ、それを|喜《よろこ》ぶ。わたしたちが|特《とく》に|祈《いの》るのは、あなたがたが|完全《かんぜん》に|良《よ》くなってくれることである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、|離《はな》れていて|以上《いじょう》のようなことを|書《か》いたのは、わたしがあなたがたの|所《ところ》に|行《い》ったとき、|倒《たお》すためではなく|高《たか》めるために|主《しゅ》が|授《さづ》けて|下《くだ》さった|権威《けんい》を|用《もち》いて、きびしい|処置《しょち》をする|必要《ひつよう》がないようにしたいためである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|最後《さいご》に、|兄弟《きょうだい》たちよ。いつも|喜《よろこ》びなさい。|全《まった》き|者《もの》となりなさい。|互《たがい》に|励《はげ》まし|合《あ》いなさい。|思《おも》いを一つにしなさい。|平和《へいわ》に|過《す》ごしなさい。そうすれば、|愛《あい》と|平和《へいわ》の|神《かみ》があなたがたと|共《とも》にいて|下《くだ》さるであろう。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]きよい|接吻《せっぷん》をもって|互《たがい》にあいさつをかわしなさい。|聖徒《せいと》たち|一同《いちどう》が、あなたがたによろしく。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》イエス・キリストの|恵《めぐ》みと、|神《かみ》の|愛《あい》と、|聖霊《せいれい》の|交《まじ》わりとが、あなたがた|一同《いちどう》と|共《とも》にあるように。 [#改ページ] ガラテヤ人への手紙[#「ガラテヤ人への手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》からでもなく、|人《ひと》によってでもなく、イエス・キリストと|彼《かれ》を|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせた|父《ちち》なる|神《かみ》とによって|立《た》てられた|使徒《しと》パウロ、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ならびにわたしと|共《とも》にいる|兄弟《きょうだい》たち|一同《いちどう》から、ガラテヤの|諸《しょ》|教会《きょうかい》へ。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストから、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]キリストは、わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》の|御旨《みむね》に|従《したが》い、わたしたちを|今《いま》の|悪《あく》の|世《よ》から|救《すく》い|出《だ》そうとして、ご|自身《じしん》をわたしたちの|罪《つみ》のためにささげられたのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|栄光《えいこう》が|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|神《かみ》にあるように、アァメン。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたがこんなにも|早《はや》く、あなたがたをキリストの|恵《めぐ》みの|内《うち》へお|招《まね》きになったかたから|離《はな》れて、|違《ちが》った|福音《ふくいん》に|落《お》ちていくことが、わたしには|不思議《ふしぎ》でならない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それは|福音《ふくいん》というべきものではなく、ただ、ある|種《たね》の|人々《ひとびと》があなたがたをかき|乱《みだ》し、キリストの|福音《ふくいん》を|曲《ま》げようとしているだけのことである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、たといわたしたちであろうと、|天《てん》からの|御使《みつかい》であろうと、わたしたちが|宣《の》べ|伝《つた》えた|福音《ふくいん》に|反《はん》することをあなたがたに|宣《の》べ|伝《つた》えるなら、その|人《ひと》はのろわるべきである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|前《まえ》に|言《い》っておいたように、|今《いま》わたしは|重《かさ》ねて|言《い》う。もしある|人《ひと》が、あなたがたの|受《う》けいれた|福音《ふくいん》に|反《はん》することを|宣《の》べ|伝《つた》えているなら、その|人《ひと》はのろわるべきである。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》わたしは、|人《ひと》に|喜《よろこ》ばれようとしているのか、それとも、|神《かみ》に|喜《よろこ》ばれようとしているのか。あるいは、|人《ひと》の|歓心《かんしん》を|買《か》おうと|努《つと》めているのか。もし、|今《いま》もなお|人《ひと》の|歓心《かんしん》を|買《か》おうとしているとすれば、わたしはキリストの|僕《しもべ》ではあるまい。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたに、はっきり|言《い》っておく。わたしが|宣《の》べ|伝《つた》えた|福音《ふくいん》は|人間《にんげん》によるものではない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、それを|人間《にんげん》から|受《う》けたのでも|教《おし》えられたのでもなく、ただイエス・キリストの|啓示《けいじ》によったのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|教《きょう》を|信《しん》じていたころのわたしの|行動《こうどう》については、あなたがたはすでによく|聞《き》いている。すなわち、わたしは|激《はげ》しく|神《かみ》の|教会《きょうかい》を|迫害《はくがい》し、また|荒《あら》しまわっていた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして、|同国人《どうこくじん》の|中《なか》でわたしと|同年輩《どうねんぱい》の|多《おお》くの|者《もの》にまさってユダヤ|教《きょう》に|精進《しょうじん》し、|先祖《せんぞ》たちの|言伝《いいつた》えに|対《たい》して、だれよりもはるかに|熱心《ねっしん》であった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|母《はは》の|胎内《たいない》にある|時《とき》からわたしを|聖《せい》|別《べつ》し、み|恵《めぐ》みをもってわたしをお|召《め》しになったかたが、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|異邦人《いほうじん》の|間《あいだ》に|宣《の》べ|伝《つた》えさせるために、|御子《みこ》をわたしの|内《うち》に|啓示《けいじ》して|下《くだ》さった|時《とき》、わたしは|直《ただ》ちに、|血肉《けつにく》に|相談《そうだん》もせず、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また|先輩《せんぱい》の|使徒《しと》たちに|会《あ》うためにエルサレムにも|上《のぼ》らず、アラビヤに|出《で》て|行《い》った。それから|再《ふたた》びダマスコに|帰《かえ》った。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》三|年《ねん》たってから、わたしはケパをたずねてエルサレムに|上《のぼ》り、|彼《かれ》のもとに十五|日間《にちかん》、|滞在《たいざい》した。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|主《しゅ》の|兄弟《きょうだい》ヤコブ|以外《いがい》には、ほかのどの|使徒《しと》にも|会《あ》わなかった。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ここに|書《か》いていることは、|神《かみ》のみまえで|言《い》うが、|決《けっ》して|偽《いつわ》りではない。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》、わたしはシリヤとキリキヤとの|地方《ちほう》に|行《い》った。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、キリストにあるユダヤの|諸《しょ》|教会《きょうかい》には、|顔《かお》を|知《し》られていなかった。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ただ|彼《かれ》らは、「かつて|自分《じぶん》たちを|迫害《はくがい》した|者《もの》が、|以前《いぜん》には|撲滅《ぼくめつ》しようとしていたその|信仰《しんこう》を、|今《いま》は|宣《の》べ|伝《つた》えている」と|聞《き》き、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]わたしのことで、|神《かみ》をほめたたえた。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》十四|年《ねん》たってから、わたしはバルナバと|一緒《いっしょ》に、テトスをも|連《つ》れて、|再《ふたた》びエルサレムに|上《のぼ》った。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そこに|上《のぼ》ったのは、|啓示《けいじ》によってである。そして、わたしが|異邦人《いほうじん》の|間《あいだ》に|宣《の》べ|伝《つた》えている|福音《ふくいん》を、|人々《ひとびと》に|示《しめ》し、「|重《おも》だった|人《ひと》たち」には|個人《こじん》|的《てき》に|示《しめ》した。それは、わたしが|現《げん》に|走《はし》っており、またすでに|走《はし》ってきたことが、むだにならないためである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしが|連《つ》れていたテトスでさえ、ギリシヤ|人《じん》であったのに、|割礼《かつれい》をしいられなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]それは、|忍《しの》び|込《こ》んできたにせ|兄弟《きょうだい》らがいたので――|彼《かれ》らが|忍《しの》び|込《こ》んできたのは、キリスト・イエスにあって|持《も》っているわたしたちの|自由《じゆう》をねらって、わたしたちを|奴隷《どれい》にするためであった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|福音《ふくいん》の|真理《しんり》があなたがたのもとに|常《つね》にとどまっているように、|瞬時《しゅんじ》も|彼《かれ》らの|強要《きょうよう》に|屈服《くっぷく》しなかった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そして、かの「|重《おも》だった|人《ひと》たち」からは――|彼《かれ》らがどんな|人《ひと》であったにしても、それは、わたしには|全《まった》く|問題《もんだい》ではない。|神《かみ》は|人《ひと》を|分《わ》け|隔《へだ》てなさらないのだから――|事実《じじつ》、かの「|重《おも》だった|人《ひと》たち」は、わたしに|何《なに》も|加《くわ》えることをしなかった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それどころか、|彼《かれ》らは、ペテロが|割礼《かつれい》の|者《もの》への|福音《ふくいん》をゆだねられているように、わたしには|無《む》|割礼《かつれい》の|者《もの》への|福音《ふくいん》がゆだねられていることを|認《みと》め、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり](というのは、ペテロに|働《はたら》きかけて|割礼《かつれい》の|者《もの》への|使徒《しと》の|務《つとめ》につかせたかたは、わたしにも|働《はたら》きかけて、|異邦人《いほうじん》につかわして|下《くだ》さったからである)、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]かつ、わたしに|賜《たま》わった|恵《めぐ》みを|知《し》って、|柱《はしら》として|重《おも》んじられているヤコブとケパとヨハネとは、わたしとバルナバとに、|交《まじ》わりの|手《て》を|差《さ》し|伸《の》べた。そこで、わたしたちは|異邦人《いほうじん》に|行《い》き、|彼《かれ》らは|割礼《かつれい》の|者《もの》に|行《い》くことになったのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]ただ一つ、わたしたちが|貧《まず》しい|人々《ひとびと》をかえりみるようにとのことであったが、わたしはもとより、この|事《こと》のためにも|大《おお》いに|努《つと》めてきたのである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ところが、ケパがアンテオケにきたとき、|彼《かれ》に|非難《ひなん》すべきことがあったので、わたしは|面《めん》とむかって|彼《かれ》をなじった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]というのは、ヤコブのもとからある|人々《ひとびと》が|来《く》るまでは、|彼《かれ》は|異邦人《いほうじん》と|食《しょく》を|共《とも》にしていたのに、|彼《かれ》らがきてからは、|割礼《かつれい》の|者《もの》どもを|恐《おそ》れ、しだいに|身《み》を|引《ひ》いて|離《はな》れて|行《い》ったからである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そして、ほかのユダヤ|人《じん》たちも|彼《かれ》と|共《とも》に|偽善《ぎぜん》の|行為《こうい》をし、バルナバまでがそのような|偽善《ぎぜん》に|引《ひ》きずり|込《こ》まれた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|福音《ふくいん》の|真理《しんり》に|従《したが》ってまっすぐに|歩《ある》いていないのを|見《み》て、わたしは|衆人《しゅうじん》の|面前《めんぜん》でケパに|言《い》った、「あなたは、ユダヤ|人《じん》であるのに、|自分《じぶん》|自身《じしん》はユダヤ|人《じん》のように|生活《せいかつ》しないで、|異邦人《いほうじん》のように|生活《せいかつ》していながら、どうして|異邦人《いほうじん》にユダヤ|人《じん》のようになることをしいるのか」。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは|生《うま》れながらのユダヤ|人《じん》であって、|異邦人《いほうじん》なる|罪人《つみびと》ではないが、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|義《ぎ》とされるのは|律法《りっぽう》の|行《おこな》いによるのではなく、ただキリスト・イエスを|信《しん》じる|信仰《しんこう》によることを|認《みと》めて、わたしたちもキリスト・イエスを|信《しん》じたのである。それは、|律法《りっぽう》の|行《おこな》いによるのではなく、キリストを|信《しん》じる|信仰《しんこう》によって|義《ぎ》とされるためである。なぜなら、|律法《りっぽう》の|行《おこな》いによっては、だれひとり|義《ぎ》とされることがないからである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、キリストにあって|義《ぎ》とされることを|求《もと》めることによって、わたしたち|自身《じしん》が|罪人《つみびと》であるとされるのなら、キリストは|罪《つみ》に|仕《つか》える|者《もの》なのであろうか。|断《だん》じてそうではない。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしが、いったん|打《う》ちこわしたものを、|再《ふたた》び|建《た》てるとすれば、それこそ、|自分《じぶん》が|違反者《いはんしゃ》であることを|表明《ひょうめい》することになる。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|神《かみ》に|生《い》きるために、|律法《りっぽう》によって|律法《りっぽう》に|死《し》んだ。わたしはキリストと|共《とも》に|十字架《じゅうじか》につけられた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|生《い》きているのは、もはや、わたしではない。キリストが、わたしのうちに|生《い》きておられるのである。しかし、わたしがいま|肉《にく》にあって|生《い》きているのは、わたしを|愛《あい》し、わたしのためにご|自身《じしん》をささげられた|神《かみ》の|御子《みこ》を|信《しん》じる|信仰《しんこう》によって、|生《い》きているのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|神《かみ》の|恵《めぐ》みを|無《む》にはしない。もし、|義《ぎ》が|律法《りっぽう》によって|得《え》られるとすれば、キリストの|死《し》はむだであったことになる。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]ああ、|物《もの》わかりのわるいガラテヤ|人《びと》よ。|十字架《じゅうじか》につけられたイエス・キリストが、あなたがたの|目《め》の|前《まえ》に|描《えが》き|出《だ》されたのに、いったい、だれがあなたがたを|惑《まど》わしたのか。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、ただこの一つの|事《こと》を、あなたがたに|聞《き》いてみたい。あなたがたが|御霊《みたま》を|受《う》けたのは、|律法《りっぽう》を|行《おこな》ったからか、それとも、|聞《き》いて|信《しん》じたからか。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、そんなに|物《もの》わかりがわるいのか。|御霊《みたま》で|始《はじ》めたのに、|今《いま》になって|肉《にく》で|仕上《しあ》げるというのか。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]あれほどの|大《おお》きな|経験《けいけん》をしたことは、むだであったのか。まさか、むだではあるまい。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]すると、あなたがたに|御霊《みたま》を|賜《たま》い、|力《ちから》あるわざをあなたがたの|間《あいだ》でなされたのは、|律法《りっぽう》を|行《おこな》ったからか、それとも、|聞《き》いて|信《しん》じたからか。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]このように、アブラハムは「|神《かみ》を|信《しん》じた。それによって、|彼《かれ》は|義《ぎ》と|認《みと》められた」のである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]だから、|信仰《しんこう》による|者《もの》こそアブラハムの|子《こ》であることを、|知《し》るべきである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》は、|神《かみ》が|異邦人《いほうじん》を|信仰《しんこう》によって|義《ぎ》とされることを、あらかじめ|知《し》って、アブラハムに、「あなたによって、すべての|国民《こくみん》は|祝福《しゅくふく》されるであろう」との|良《よ》い|知《し》らせを、|予告《よこく》したのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]このように、|信仰《しんこう》による|者《もの》は、|信仰《しんこう》の|人《ひと》アブラハムと|共《とも》に、|祝福《しゅくふく》を|受《う》けるのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|律法《りっぽう》の|行《おこな》いによる|者《もの》は、|皆《みな》のろいの|下《もと》にある。「|律法《りっぽう》の|書《しょ》に|書《か》いてあるいっさいのことを|守《まも》らず、これを|行《おこな》わない|者《もの》は、|皆《みな》のろわれる」と|書《か》いてあるからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|律法《りっぽう》によっては、|神《かみ》のみまえに|義《ぎ》とされる|者《もの》はひとりもないことが、|明《あき》らかである。なぜなら、「|信仰《しんこう》による|義人《ぎじん》は|生《い》きる」からである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》は|信仰《しんこう》に|基《もとづ》いているものではない。かえって、「|律法《りっぽう》を|行《おこな》う|者《もの》は|律法《りっぽう》によって|生《い》きる」のである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]キリストは、わたしたちのためにのろいとなって、わたしたちを|律法《りっぽう》ののろいからあがない|出《だ》して|下《くだ》さった。|聖書《せいしょ》に、「|木《き》にかけられる|者《もの》は、すべてのろわれる」と|書《か》いてある。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]それは、アブラハムの|受《う》けた|祝福《しゅくふく》が、イエス・キリストにあって|異邦人《いほうじん》に|及《およ》ぶためであり、|約束《やくそく》された|御霊《みたま》を、わたしたちが|信仰《しんこう》によって|受《う》けるためである。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|世《よ》のならわしを|例《れい》にとって|言《い》おう。|人間《にんげん》の|遺言《ゆいごん》でさえ、いったん|作成《さくせい》されたら、これを|無効《むこう》にしたり、これに|付《つ》け|加《くわ》えたりすることは、だれにもできない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]さて、|約束《やくそく》は、アブラハムと|彼《かれ》の|子孫《しそん》とに|対《たい》してなされたのである。それは、|多数《たすう》をさして「|子孫《しそん》たちとに」と|言《い》わずに、ひとりをさして「あなたの|子孫《しそん》とに」と|言《い》っている。これは、キリストのことである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|言《い》う|意味《いみ》は、こうである。|神《かみ》によってあらかじめ|立《た》てられた|契約《けいやく》が、四百三十|年《ねん》の|後《のち》にできた|律法《りっぽう》によって|破棄《はき》されて、その|約束《やくそく》がむなしくなるようなことはない。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]もし|相続《そうぞく》が、|律法《りっぽう》に|基《もとづ》いてなされるとすれば、もはや|約束《やくそく》に|基《もとづ》いたものではない。ところが|事実《じじつ》、|神《かみ》は|約束《やくそく》によって、|相続《そうぞく》の|恵《めぐ》みをアブラハムに|賜《たま》わったのである。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]それでは、|律法《りっぽう》はなんであるか。それは|違反《いはん》を|促《うなが》すため、あとから|加《くわ》えられたのであって、|約束《やくそく》されていた|子孫《しそん》が|来《く》るまで|存続《そんぞく》するだけのものであり、かつ、|天使《てんし》たちをとおし、|仲介者《ちゅうかいしゃ》の|手《て》によって|制定《せいてい》されたものにすぎない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|仲介者《ちゅうかいしゃ》なるものは、|一方《いっぽう》だけに|属《ぞく》する|者《もの》ではない。しかし、|神《かみ》はひとりである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]では、|律法《りっぽう》は|神《かみ》の|約束《やくそく》と|相《あい》いれないものか。|断《だん》じてそうではない。もし|人《ひと》を|生《い》かす|力《ちから》のある|律法《りっぽう》が|与《あた》えられていたとすれば、|義《ぎ》はたしかに|律法《りっぽう》によって|実現《じつげん》されたであろう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|約束《やくそく》が、|信《しん》じる|人々《ひとびと》にイエス・キリストに|対《たい》する|信仰《しんこう》によって|与《あた》えられるために、|聖書《せいしょ》はすべての|人《ひと》を|罪《つみ》の|下《もと》に|閉《と》じ|込《こ》めたのである。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|信仰《しんこう》が|現《あらわ》れる|前《まえ》には、わたしたちは|律法《りっぽう》の|下《もと》で|監視《かんし》されており、やがて|啓示《けいじ》される|信仰《しんこう》の|時《とき》まで|閉《と》じ|込《こ》められていた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]このようにして|律法《りっぽう》は、|信仰《しんこう》によって|義《ぎ》とされるために、わたしたちをキリストに|連《つ》れて|行《ゆ》く|養育掛《よういくがかり》となったのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、いったん|信仰《しんこう》が|現《あらわ》れた|以上《いじょう》、わたしたちは、もはや|養育掛《よういくがかり》のもとにはいない。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはみな、キリスト・イエスにある|信仰《しんこう》によって、|神《かみ》の|子《こ》なのである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]キリストに|合《あ》うバプテスマを|受《う》けたあなたがたは、|皆《みな》キリストを|着《き》たのである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]もはや、ユダヤ|人《じん》もギリシヤ|人《じん》もなく、|奴隷《どれい》も|自由人《じゆうじん》もなく、|男《おとこ》も|女《おんな》もない。あなたがたは|皆《みな》、キリスト・イエスにあって一つだからである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]もしキリストのものであるなら、あなたがたはアブラハムの|子孫《しそん》であり、|約束《やくそく》による|相続人《そうぞくにん》なのである。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|言《い》う|意味《いみ》は、こうである。|相続人《そうぞくにん》が|子供《こども》である|間《あいだ》は、|全《ぜん》|財産《ざいさん》の|持《も》ち|主《ぬし》でありながら、|僕《しもべ》となんの|差別《さべつ》もなく、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|父親《ちちおや》の|定《さだ》めた|時期《じき》までは、|管理人《かんりにん》や|後見人《こうけんにん》の|監督《かんとく》の|下《もと》に|置《お》かれているのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]それと|同《おな》じく、わたしたちも|子供《こども》であった|時《とき》には、いわゆるこの|世《よ》のもろもろの|霊力《れいりょく》の|下《もと》に、|縛《しば》られていた|者《もの》であった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|時《とき》の|満《み》ちるに|及《およ》んで、|神《かみ》は|御子《みこ》を|女《おんな》から|生《うま》れさせ、|律法《りっぽう》の|下《もと》に|生《うま》れさせて、おつかわしになった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それは、|律法《りっぽう》の|下《もと》にある|者《もの》をあがない|出《だ》すため、わたしたちに|子《こ》たる|身分《みぶん》を|授《さづ》けるためであった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]このように、あなたがたは|子《こ》であるのだから、|神《かみ》はわたしたちの|心《こころ》の|中《なか》に、「アバ、|父《ちち》よ」と|呼《よ》ぶ|御子《みこ》の|霊《れい》を|送《おく》って|下《くだ》さったのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]したがって、あなたがたはもはや|僕《しもべ》ではなく、|子《こ》である。|子《こ》である|以上《いじょう》、また|神《かみ》による|相続人《そうぞくにん》である。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》を|知《し》らなかった|当時《とうじ》、あなたがたは、|本来《ほんらい》|神《かみ》ならぬ|神々《かみがみ》の|奴隷《どれい》になっていた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|今《いま》では|神《かみ》を|知《し》っているのに、|否《いな》、むしろ|神《かみ》に|知《し》られているのに、どうして、あの|無力《むりょく》で|貧弱《ひんじゃく》な、もろもろの|霊力《れいりょく》に|逆《ぎゃく》もどりして、またもや、|新《あら》たにその|奴隷《どれい》になろうとするのか。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|日《ひ》や|月《つき》や|季節《きせつ》や|年《とし》などを|守《まも》っている。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたのために|努力《どりょく》してきたことが、あるいは、むだになったのではないかと、あなたがたのことが|心配《しんぱい》でならない。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。お|願《ねが》いする。どうか、わたしのようになってほしい。わたしも、あなたがたのようになったのだから。あなたがたは、一|度《ど》もわたしに|対《たい》して|不都合《ふつごう》なことをしたことはない。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたも|知《し》っているとおり、|最初《さいしょ》わたしがあなたがたに|福音《ふくいん》を|伝《つた》えたのは、わたしの|肉体《にくたい》が|弱《よわ》っていたためであった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして、わたしの|肉体《にくたい》にはあなたがたにとって|試錬《しれん》となるものがあったのに、それを|卑《いや》しめもせず、またきらいもせず、かえってわたしを、|神《かみ》の|使《つかい》かキリスト・イエスかでもあるように、|迎《むか》えてくれた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》のあなたがたの|感激《かんげき》は、|今《いま》どこにあるのか。はっきり|言《い》うが、あなたがたは、できることなら、|自分《じぶん》の|目《め》をえぐり|出《だ》してでも、わたしにくれたかったのだ。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]それだのに、|真理《しんり》を|語《かた》ったために、わたしはあなたがたの|敵《てき》になったのか。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らがあなたがたに|対《たい》して|熱心《ねっしん》なのは、|善意《ぜんい》からではない。むしろ、|自分《じぶん》らに|熱心《ねっしん》にならせるために、あなたがたをわたしから|引《ひ》き|離《はな》そうとしているのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあなたがたの|所《ところ》にいる|時《とき》だけでなく、いつも、|良《よ》いことについて|熱心《ねっしん》に|慕《した》われるのは、|良《よ》いことである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ああ、わたしの|幼《おさ》な|子《ご》たちよ。あなたがたの|内《うち》にキリストの|形《かたち》ができるまでは、わたしは、またもや、あなたがたのために|産《う》みの|苦《くる》しみをする。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]できることなら、わたしは|今《いま》あなたがたの|所《ところ》にいて、|語調《ごちょう》を|変《か》えて|話《はな》してみたい。わたしは、あなたがたのことで、|途方《とほう》にくれている。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》の|下《もと》にとどまっていたいと|思《おも》う|人《ひと》たちよ。わたしに|答《こた》えなさい。あなたがたは|律法《りっぽう》の|言《い》うところを|聞《き》かないのか。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そのしるすところによると、アブラハムにふたりの|子《こ》があったが、ひとりは|女《おんな》|奴隷《どれい》から、ひとりは|自由《じゆう》の|女《おんな》から|生《うま》れた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》|奴隷《どれい》の|子《こ》は|肉《にく》によって|生《うま》れたのであり、|自由《じゆう》の|女《おんな》の|子《こ》は|約束《やくそく》によって|生《うま》れたのであった。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]さて、この|物語《ものがたり》は|比喩《ひゆ》としてみられる。すなわち、この|女《おんな》たちは二つの|契約《けいやく》をさす。そのひとりはシナイ|山《ざん》から|出《で》て、|奴隷《どれい》となる|者《もの》を|産《う》む。ハガルがそれである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ハガルといえば、アラビヤではシナイ|山《ざん》のことで、|今《いま》のエルサレムに|当《あた》る。なぜなら、それは|子《こ》たちと|共《とも》に、|奴隷《どれい》となっているからである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|上《うえ》なるエルサレムは、|自由《じゆう》の|女《おんな》であって、わたしたちの|母《はは》をさす。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、こう|書《か》いてある、 [#ここから2字下げ] 「|喜《よろこ》べ、|不妊《ふにん》の|女《おんな》よ。 |声《こえ》をあげて|喜《よろこ》べ、|産《う》みの|苦《くる》しみを|知《し》らない|女《おんな》よ。 ひとり|者《もの》となっている|女《おんな》は|多《おお》くの|子《こ》を|産《う》み、 その|数《かず》は、|夫《おっと》ある|女《おんな》の|子《こ》らよりも|多《おお》い」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたは、イサクのように、|約束《やくそく》の|子《こ》である。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、その|当時《とうじ》、|肉《にく》によって|生《うま》れた|者《もの》が、|霊《れい》によって|生《うま》れた|者《もの》を|迫害《はくがい》したように、|今《いま》でも|同様《どうよう》である。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|聖書《せいしょ》はなんと|言《い》っているか。「|女《おんな》|奴隷《どれい》とその|子《こ》とを|追《お》い|出《だ》せ。|女《おんな》|奴隷《どれい》の|子《こ》は、|自由《じゆう》の|女《おんな》の|子《こ》と|共《とも》に|相続《そうぞく》をしてはならない」とある。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]だから、|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちは|女《おんな》|奴隷《どれい》の|子《こ》ではなく、|自由《じゆう》の|女《おんな》の|子《こ》なのである。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|自由《じゆう》を|得《え》させるために、キリストはわたしたちを|解放《かいほう》して|下《くだ》さったのである。だから、|堅《かた》く|立《た》って、二|度《ど》と|奴隷《どれい》のくびきにつながれてはならない。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、このパウロがあなたがたに|言《い》う。もし|割礼《かつれい》を|受《う》けるなら、キリストはあなたがたに|用《よう》のないものになろう。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|割礼《かつれい》を|受《う》けようとするすべての|人《ひと》たちに、もう一|度《ど》|言《い》っておく。そういう|人《ひと》たちは、|律法《りっぽう》の|全部《ぜんぶ》を|行《おこな》う|義務《ぎむ》がある。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》によって|義《ぎ》とされようとするあなたがたは、キリストから|離《はな》れてしまっている。|恵《めぐ》みから|落《お》ちている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|御霊《みたま》の|助《たす》けにより、|信仰《しんこう》によって|義《ぎ》とされる|望《のぞ》みを|強《つよ》くいだいている。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスにあっては、|割礼《かつれい》があってもなくても、|問題《もんだい》ではない。|尊《たっと》いのは、|愛《あい》によって|働《はたら》く|信仰《しんこう》だけである。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはよく|走《はし》り|続《つづ》けてきたのに、だれが|邪魔《じゃま》をして、|真理《しんり》にそむかせたのか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そのような|勧誘《かんゆう》は、あなたがたを|召《め》されたかたから|出《で》たものではない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|少《すこ》しのパン|種《たね》でも、|粉《こな》のかたまり|全体《ぜんたい》をふくらませる。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはいささかもわたしと|違《ちが》った|思《おも》いをいだくことはないと、|主《しゅ》にあって|信頼《しんらい》している。しかし、あなたがたを|動揺《どうよう》させている|者《もの》は、それがだれであろうと、さばきを|受《う》けるであろう。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしがもし|今《いま》でも|割礼《かつれい》を|宣《の》べ|伝《つた》えていたら、どうして、いまなお|迫害《はくがい》されるはずがあろうか。そうしていたら、|十字架《じゅうじか》のつまずきは、なくなっているであろう。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|煽動《せんどう》|者《しゃ》どもは、|自《みずか》ら|不具《ふぐ》になるがよかろう。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたが|召《め》されたのは、|実《じつ》に、|自由《じゆう》を|得《え》るためである。ただ、その|自由《じゆう》を、|肉《にく》の|働《はたら》く|機会《きかい》としないで、|愛《あい》をもって|互《たがい》に|仕《つか》えなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》の|全体《ぜんたい》は、「|自分《じぶん》を|愛《あい》するように、あなたの|隣《とな》り|人《ひと》を|愛《あい》せよ」というこの|一句《いっく》に|尽《つ》きるからである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|気《き》をつけるがよい。もし|互《たがい》にかみ|合《あ》い、|食《く》い|合《あ》っているなら、あなたがたは|互《たがい》に|滅《ほろ》ぼされてしまうだろう。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|命《めい》じる、|御霊《みたま》によって|歩《ある》きなさい。そうすれば、|決《けっ》して|肉《にく》の|欲《よく》を|満《み》たすことはない。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|肉《にく》の|欲《ほっ》するところは|御霊《みたま》に|反《はん》し、また|御霊《みたま》の|欲《ほっ》するところは|肉《にく》に|反《はん》するからである。こうして、二つのものは|互《たがい》に|相《あい》さからい、その|結果《けっか》、あなたがたは|自分《じぶん》でしようと|思《おも》うことを、することができないようになる。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたがたが|御霊《みたま》に|導《みちび》かれるなら、|律法《りっぽう》の|下《もと》にはいない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|肉《にく》の|働《はたら》きは|明白《めいはく》である。すなわち、|不品行《ふひんこう》、|汚《けが》れ、|好色《こうしょく》、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|偶像《ぐうぞう》|礼拝《れいはい》、まじない、|敵意《てきい》、|争《あらそ》い、そねみ、|怒《いか》り、|党派心《とうはしん》、|分裂《ぶんれつ》、|分派《ぶんぱ》、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]ねたみ、|泥酔《でいすい》、|宴楽《えんらく》、および、そのたぐいである。わたしは|以前《いぜん》も|言《い》ったように、|今《いま》も|前《まえ》もって|言《い》っておく。このようなことを|行《おこな》う|者《もの》は、|神《かみ》の|国《くに》をつぐことがない。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|御霊《みたま》の|実《み》は、|愛《あい》、|喜《よろこ》び、|平和《へいわ》、|寛容《かんよう》、|慈愛《じあい》、|善意《ぜんい》、|忠実《ちゅうじつ》、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|柔和《にゅうわ》、|自制《じせい》であって、これらを|否定《ひてい》する|律法《りっぽう》はない。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスに|属《ぞく》する|者《もの》は、|自分《じぶん》の|肉《にく》を、その|情《じょう》と|欲《よく》と|共《とも》に|十字架《じゅうじか》につけてしまったのである。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしたちが|御霊《みたま》によって|生《い》きるのなら、また|御霊《みたま》によって|進《すすむ》もうではないか。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》にいどみ|合《あ》い、|互《たがい》にねたみ|合《あ》って、|虚栄《きょえい》に|生《い》きてはならない。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。もしもある|人《ひと》が|罪過《ざいか》に|陥《おちい》っていることがわかったなら、|霊《れい》の|人《ひと》であるあなたがたは、|柔和《にゅうわ》な|心《こころ》をもって、その|人《ひと》を|正《ただ》しなさい。それと|同時《どうじ》に、もしか|自分《じぶん》|自身《じしん》も|誘惑《ゆうわく》に|陥《おちい》ることがありはしないかと、|反省《はんせい》しなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》に|重荷《おもに》を|負《お》い|合《あ》いなさい。そうすれば、あなたがたはキリストの|律法《りっぽう》を|全《まっと》うするであろう。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]もしある|人《ひと》が、|事実《じじつ》そうでないのに、|自分《じぶん》が|何《なに》か|偉《えら》い|者《もの》であるように|思《おも》っているとすれば、その|人《ひと》は|自分《じぶん》を|欺《あざむ》いているのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ひとりびとり、|自分《じぶん》の|行《おこな》いを|検討《けんとう》してみるがよい。そうすれば、|自分《じぶん》だけには|誇《ほこ》ることができても、ほかの|人《ひと》には|誇《ほこ》れなくなるであろう。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》はそれぞれ、|自分《じぶん》|自身《じしん》の|重荷《おもに》を|負《お》うべきである。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|御言《みことば》を|教《おし》えてもらう|人《ひと》は、|教《おし》える|人《ひと》と、すべて|良《よ》いものを|分《わ》け|合《あ》いなさい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]まちがってはいけない、|神《かみ》は|侮《あなど》られるようなかたではない。|人《ひと》は|自分《じぶん》のまいたものを、|刈《か》り|取《と》ることになる。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|自分《じぶん》の|肉《にく》にまく|者《もの》は、|肉《にく》から|滅《ほろ》びを|刈《か》り|取《と》り、|霊《れい》にまく|者《もの》は、|霊《れい》から|永遠《えいえん》のいのちを|刈《か》り|取《と》るであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|善《ぜん》を|行《おこな》うことに、うみ|疲《つか》れてはならない。たゆまないでいると、|時《とき》が|来《く》れば|刈《か》り|取《と》るようになる。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]だから、|機会《きかい》のあるごとに、だれに|対《たい》しても、とくに|信仰《しんこう》の|仲間《なかま》に|対《たい》して、|善《ぜん》を|行《おこな》おうではないか。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ごらんなさい。わたし|自身《じしん》いま|筆《ふで》をとって、こんなに|大《おお》きい|字《じ》で、あなたがたに|書《か》いていることを。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|肉《にく》において|見《み》えを|飾《かざ》ろうとする|者《もの》たちは、キリスト・イエスの|十字架《じゅうじか》のゆえに、|迫害《はくがい》を|受《う》けたくないばかりに、あなたがたにしいて|割礼《かつれい》を|受《う》けさせようとする。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|事実《じじつ》、|割礼《かつれい》のあるもの|自身《じしん》が|律法《りっぽう》を|守《まも》らず、ただ、あなたがたの|肉《にく》について|誇《ほこ》りたいために、|割礼《かつれい》を|受《う》けさせようとしているのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたし|自身《じしん》には、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|十字架《じゅうじか》|以外《いがい》に、|誇《ほこり》とするものは、|断《だん》じてあってはならない。この|十字架《じゅうじか》につけられて、この|世《よ》はわたしに|対《たい》して|死《し》に、わたしもこの|世《よ》に|対《たい》して|死《し》んでしまったのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|割礼《かつれい》のあるなしは|問題《もんだい》ではなく、ただ、|新《あたら》しく|造《つく》られることこそ、|重要《じゅうよう》なのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]この|法則《ほうそく》に|従《したが》って|進《すす》む|人々《ひとびと》の|上《うえ》に、|平和《へいわ》とあわれみとがあるように。また、|神《かみ》のイスラエルの|上《うえ》にあるように。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]だれも|今後《こんご》は、わたしに|煩《わずら》いをかけないでほしい。わたしは、イエスの|焼《や》き|印《いん》を|身《み》に|帯《お》びているのだから。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|恵《めぐ》みが、あなたがたの|霊《れい》と|共《とも》にあるように、アァメン。 [#改ページ] エペソ人への手紙[#「エペソ人への手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|御旨《みむね》によるキリスト・イエスの|使徒《しと》パウロから、エペソにいる、キリスト・イエスにあって|忠実《ちゅうじつ》な|聖徒《せいと》たちへ。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストから、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ほむべきかな、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|父《ちち》なる|神《かみ》。|神《かみ》はキリストにあって、|天上《てんじょう》で|霊《れい》のもろもろの|祝福《しゅくふく》をもって、わたしたちを|祝福《しゅくふく》し、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]みまえにきよく|傷《きず》のない|者《もの》となるようにと、|天地《てんち》の|造《つく》られる|前《まえ》から、キリストにあってわたしたちを|選《えら》び、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちに、イエス・キリストによって|神《かみ》の|子《こ》たる|身分《みぶん》を|授《さづ》けるようにと、|御旨《みむね》のよしとするところに|従《したが》い、|愛《あい》のうちにあらかじめ|定《さだ》めて|下《くだ》さったのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]これは、その|愛《あい》する|御子《みこ》によって|賜《たま》わった|栄光《えいこう》ある|恵《めぐ》みを、わたしたちがほめたたえるためである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|御子《みこ》にあって、|神《かみ》の|豊《ゆた》かな|恵《めぐ》みのゆえに、その|血《ち》によるあがない、すなわち、|罪過《ざいか》のゆるしを|受《う》けたのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はその|恵《めぐ》みをさらに|増《ま》し|加《くわ》えて、あらゆる|知恵《ちえ》と|悟《さと》りとをわたしたちに|賜《たま》わり、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|御旨《みむね》の|奥義《おくぎ》を、|自《みずか》らあらかじめ|定《さだ》められた|計画《けいかく》に|従《したが》って、わたしたちに|示《しめ》して|下《くだ》さったのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それは、|時《とき》の|満《み》ちるに|及《およ》んで|実現《じつげん》されるご|計画《けいかく》にほかならない。それによって、|神《かみ》は|天《てん》にあるもの|地《ち》にあるものを、ことごとく、キリストにあって一つに|帰《き》せしめようとされたのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|御旨《みむね》の|欲《ほっ》するままにすべての|事《こと》をなさるかたの|目的《もくてき》の|下《もと》に、キリストにあってあらかじめ|定《さだ》められ、|神《かみ》の|民《たみ》として|選《えら》ばれたのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それは、|早《はや》くからキリストに|望《のぞ》みをおいているわたしたちが、|神《かみ》の|栄光《えいこう》をほめたたえる|者《もの》となるためである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたもまた、キリストにあって、|真理《しんり》の|言葉《ことば》、すなわち、あなたがたの|救《すくい》の|福音《ふくいん》を|聞《き》き、また、|彼《かれ》を|信《しん》じた|結果《けっか》、|約束《やくそく》された|聖霊《せいれい》の|証印《しょういん》をおされたのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]この|聖霊《せいれい》は、わたしたちが|神《かみ》の|国《くに》をつぐことの|保証《ほしょう》であって、やがて|神《かみ》につける|者《もの》が|全《まった》くあがなわれ、|神《かみ》の|栄光《えいこう》をほめたたえるに|至《いた》るためである。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、わたしも、|主《しゅ》イエスに|対《たい》するあなたがたの|信仰《しんこう》と、すべての|聖徒《せいと》に|対《たい》する|愛《あい》とを|耳《みみ》にし、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|祈《いのり》のたびごとにあなたがたを|覚《おぼ》えて、|絶《た》えずあなたがたのために|感謝《かんしゃ》している。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]どうか、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|神《かみ》、|栄光《えいこう》の|父《ちち》が、|知恵《ちえ》と|啓示《けいじ》との|霊《れい》をあなたがたに|賜《たま》わって|神《かみ》を|認《みと》めさせ、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|心《こころ》の|目《め》を|明《あき》らかにして|下《くだ》さるように、そして、あなたがたが|神《かみ》に|召《め》されていだいている|望《のぞ》みがどんなものであるか、|聖徒《せいと》たちがつぐべき|神《かみ》の|国《くに》がいかに|栄光《えいこう》に|富《と》んだものであるか、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また、|神《かみ》の|力強《ちからづよ》い|活動《かつどう》によって|働《はたら》く|力《ちから》が、わたしたち|信《しん》じる|者《もの》にとっていかに|絶大《ぜつだい》なものであるかを、あなたがたが|知《し》るに|至《いた》るように、と|祈《いの》っている。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はその|力《ちから》をキリストのうちに|働《はたら》かせて、|彼《かれ》を|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせ、|天上《てんじょう》においてご|自分《じぶん》の|右《みぎ》に|座《ざ》せしめ、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》を、すべての|支配《しはい》、|権威《けんい》、|権力《けんりょく》、|権勢《けんせい》の|上《うえ》におき、また、この|世《よ》ばかりでなくきたるべき|世《よ》においても|唱《とな》えられる、あらゆる|名《な》の|上《うえ》におかれたのである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そして、|万物《ばんぶつ》をキリストの|足《あし》の|下《した》に|従《したが》わせ、|彼《かれ》を|万物《ばんぶつ》の|上《うえ》にかしらとして|教会《きょうかい》に|与《あた》えられた。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]この|教会《きょうかい》はキリストのからだであって、すべてのものを、すべてのもののうちに|満《み》たしているかたが、|満《み》ちみちているものに、ほかならない。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さてあなたがたは、|先《さき》には|自分《じぶん》の|罪過《ざいか》と|罪《つみ》とによって|死《し》んでいた|者《もの》であって、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]かつてはそれらの|中《なか》で、この|世《よ》のならわしに|従《したが》い、|空中《くうちゅう》の|権《けん》をもつ|君《きみ》、すなわち、|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》の|子《こ》らの|中《なか》に|今《いま》も|働《はたら》いている|霊《れい》に|従《したが》って、|歩《ある》いていたのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしたちもみな、かつては|彼《かれ》らの|中《なか》にいて、|肉《にく》の|欲《よく》に|従《したが》って|日《ひ》を|過《す》ごし、|肉《にく》とその|思《おも》いとの|欲《ほっ》するままを|行《おこな》い、ほかの|人々《ひとびと》と|同《おな》じく、|生《うま》れながらの|怒《いか》りの|子《こ》であった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかるに、あわれみに|富《と》む|神《かみ》は、わたしたちを|愛《あい》して|下《くだ》さったその|大《おお》きな|愛《あい》をもって、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|罪過《ざいか》によって|死《し》んでいたわたしたちを、キリストと|共《とも》に|生《い》かし――あなたがたの|救《すく》われたのは、|恵《めぐ》みによるのである――[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスにあって、|共《とも》によみがえらせ、|共《とも》に|天上《てんじょう》で|座《ざ》につかせて|下《くだ》さったのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それは、キリスト・イエスにあってわたしたちに|賜《たま》わった|慈愛《じあい》による|神《かみ》の|恵《めぐ》みの|絶大《ぜつだい》な|富《とみ》を、きたるべき|世々《よよ》に|示《しめ》すためであった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|救《すく》われたのは、|実《じつ》に、|恵《めぐ》みにより、|信仰《しんこう》によるのである。それは、あなたがた|自身《じしん》から|出《で》たものではなく、|神《かみ》の|賜物《たまもの》である。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|決《けっ》して|行《おこな》いによるのではない。それは、だれも|誇《ほこ》ることがないためなのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは|神《かみ》の|作品《さくひん》であって、|良《よ》い|行《おこな》いをするように、キリスト・イエスにあって|造《つく》られたのである。|神《かみ》は、わたしたちが、|良《よ》い|行《おこな》いをして|日《ひ》を|過《す》ごすようにと、あらかじめ|備《そな》えて|下《くだ》さったのである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]だから、|記憶《きおく》しておきなさい。あなたがたは|以前《いぜん》には、|肉《にく》によれば|異邦人《いほうじん》であって、|手《て》で|行《おこな》った|肉《にく》の|割礼《かつれい》ある|者《もの》と|称《しょう》せられる|人々《ひとびと》からは、|無《む》|割礼《かつれい》の|者《もの》と|呼《よ》ばれており、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]またその|当時《とうじ》は、キリストを|知《し》らず、イスラエルの|国籍《こくせき》がなく、|約束《やくそく》されたいろいろの|契約《けいやく》に|縁《えん》がなく、この|世《よ》の|中《なか》で|希望《きぼう》もなく|神《かみ》もない|者《もの》であった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]ところが、あなたがたは、このように|以前《いぜん》は|遠《とお》く|離《はな》れていたが、|今《いま》ではキリスト・イエスにあって、キリストの|血《ち》によって|近《ちか》いものとなったのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]キリストはわたしたちの|平和《へいわ》であって、二つのものを一つにし、|敵意《てきい》という|隔《へだ》ての|中垣《なかがき》を|取《と》り|除《のぞ》き、ご|自分《じぶん》の|肉《にく》によって、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|数々《かずかず》の|規定《きてい》から|成《な》っている|戒《いまし》めの|律法《りっぽう》を|廃棄《はいき》したのである。それは、|彼《かれ》にあって、二つのものをひとりの|新《あたら》しい|人《ひと》に|造《つく》りかえて|平和《へいわ》をきたらせ、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|十字架《じゅうじか》によって、二つのものを一つのからだとして|神《かみ》と|和解《わかい》させ、|敵意《てきい》を|十字架《じゅうじか》にかけて|滅《ほろ》ぼしてしまったのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それから|彼《かれ》は、こられた|上《うえ》で、|遠《とお》く|離《はな》れているあなたがたに|平和《へいわ》を|宣《の》べ|伝《つた》え、また|近《ちか》くにいる|者《もの》たちにも|平和《へいわ》を|宣《の》べ|伝《つた》えられたのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|彼《かれ》によって、わたしたち|両方《りょうほう》の|者《もの》が一つの|御霊《みたま》の|中《なか》にあって、|父《ちち》のみもとに|近《ちか》づくことができるからである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこであなたがたは、もはや|異国人《いこくじん》でも|宿《やど》り|人《びと》でもなく、|聖徒《せいと》たちと|同《おな》じ|国籍《こくせき》の|者《もの》であり、|神《かみ》の|家族《かぞく》なのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]またあなたがたは、|使徒《しと》たちや|預言者《よげんしゃ》たちという|土台《どだい》の|上《うえ》に|建《た》てられたものであって、キリスト・イエスご|自身《じしん》が|隅《すみ》のかしら|石《いし》である。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]このキリストにあって、|建物《たてもの》|全体《ぜんたい》が|組《く》み|合《あ》わされ、|主《しゅ》にある|聖《せい》なる|宮《みや》に|成長《せいちょう》し、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そしてあなたがたも、|主《しゅ》にあって|共《とも》に|建《た》てられて、|霊《れい》なる|神《かみ》のすまいとなるのである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、あなたがた|異邦人《いほうじん》のためにキリスト・イエスの|囚人《しゅうじん》となっているこのパウロ――[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあなたがたのために|神《かみ》から|賜《たま》わった|恵《めぐ》みの|務《つとめ》について、あなたがたはたしかに|聞《き》いたであろう。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、すでに|簡単《かんたん》に|書《か》きおくったように、わたしは|啓示《けいじ》によって|奥義《おくぎ》を|知《し》らされたのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはそれを|読《よ》めば、キリストの|奥義《おくぎ》をわたしがどう|理解《りかい》しているかがわかる。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]この|奥義《おくぎ》は、いまは、|御霊《みたま》によって|彼《かれ》の|聖《せい》なる|使徒《しと》たちと|預言者《よげんしゃ》たちとに|啓示《けいじ》されているが、|前《まえ》の|時代《じだい》には、|人《ひと》の|子《こ》らに|対《たい》して、そのように|知《し》らされてはいなかったのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]それは、|異邦人《いほうじん》が、|福音《ふくいん》によりキリスト・イエスにあって、わたしたちと|共《とも》に|神《かみ》の|国《くに》をつぐ|者《もの》となり、|共《とも》に一つのからだとなり、|共《とも》に|約束《やくそく》にあずかる|者《もの》となることである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|神《かみ》の|力《ちから》がわたしに|働《はたら》いて、|自分《じぶん》に|与《あた》えられた|神《かみ》の|恵《めぐ》みの|賜物《たまもの》により、|福音《ふくいん》の|僕《しもべ》とされたのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|聖徒《せいと》たちのうちで|最《もっと》も|小《ちい》さい|者《もの》であるわたしにこの|恵《めぐ》みが|与《あた》えられたが、それは、キリストの|無尽蔵《むじんぞう》の|富《とみ》を|異邦人《いほうじん》に|宣《の》べ|伝《つた》え、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|更《さら》にまた、|万物《ばんぶつ》の|造《つく》り|主《しゅ》である|神《かみ》の|中《なか》に|世々《よよ》|隠《かく》されていた|奥義《おくぎ》にあずかる|務《つとめ》がどんなものであるかを、|明《あき》らかに|示《しめ》すためである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それは|今《いま》、|天上《てんじょう》にあるもろもろの|支配《しはい》や|権威《けんい》が、|教会《きょうかい》をとおして、|神《かみ》の|多種《たしゅ》|多様《たよう》な|知恵《ちえ》を|知《し》るに|至《いた》るためであって、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|主《しゅ》キリスト・イエスにあって|実現《じつげん》された|神《かみ》の|永遠《えいえん》の|目的《もくてき》にそうものである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]この|主《しゅ》キリストにあって、わたしたちは、|彼《かれ》に|対《たい》する|信仰《しんこう》によって、|確信《かくしん》をもって|大胆《だいたん》に|神《かみ》に|近《ちか》づくことができるのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたのためにわたしが|受《う》けている|患難《かんなん》を|見《み》て、|落胆《らくたん》しないでいてもらいたい。わたしの|患難《かんなん》は、あなたがたの|光栄《こうえい》なのである。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、わたしはひざをかがめて、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|天上《てんじょう》にあり|地上《ちじょう》にあって「|父《ちち》」と|呼《よ》ばれているあらゆるものの|源《みなもと》なる|父《ちち》に|祈《いの》る。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]どうか|父《ちち》が、その|栄光《えいこう》の|富《とみ》にしたがい、|御霊《みたま》により、|力《ちから》をもってあなたがたの|内《うち》なる|人《ひと》を|強《つよ》くして|下《くだ》さるように、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また、|信仰《しんこう》によって、キリストがあなたがたの|心《こころ》のうちに|住《す》み、あなたがたが|愛《あい》に|根《ね》ざし|愛《あい》を|基《もとい》として|生活《せいかつ》することにより、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]すべての|聖徒《せいと》と|共《とも》に、その|広《ひろ》さ、|長《なが》さ、|高《たか》さ、|深《ふか》さを|理解《りかい》することができ、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また|人知《じんち》をはるかに|越《こ》えたキリストの|愛《あい》を|知《し》って、|神《かみ》に|満《み》ちているもののすべてをもって、あなたがたが|満《み》たされるように、と|祈《いの》る。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]どうか、わたしたちのうちに|働《はたら》く|力《ちから》によって、わたしたちが|求《もと》めまた|思《おも》うところのいっさいを、はるかに|越《こ》えてかなえて|下《くだ》さることができるかたに、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|教会《きょうかい》により、また、キリスト・イエスによって、|栄光《えいこう》が|世々《よよ》|限《かぎ》りなくあるように、アァメン。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|主《しゅ》にある|囚人《しゅうじん》であるわたしは、あなたがたに|勧《すす》める。あなたがたが|召《め》されたその|召《め》しにふさわしく|歩《ある》き、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]できる|限《かぎ》り|謙虚《けんきょ》で、かつ|柔和《にゅうわ》であり、|寛容《かんよう》を|示《しめ》し、|愛《あい》をもって|互《たがい》に|忍《しの》びあい、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|平和《へいわ》のきずなで|結《むす》ばれて、|聖霊《せいれい》による|一致《いっち》を|守《まも》り|続《つづ》けるように|努《つと》めなさい。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]からだは一つ、|御霊《みたま》も一つである。あなたがたが|召《め》されたのは、一つの|望《のぞ》みを|目《め》ざして|召《め》されたのと|同様《どうよう》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は一つ、|信仰《しんこう》は一つ、バプテスマは一つ。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]すべてのものの|上《うえ》にあり、すべてのものを|貫《つらぬ》き、すべてのものの|内《うち》にいます、すべてのものの|父《ちち》なる|神《かみ》は一つである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、キリストから|賜《たま》わる|賜物《たまもの》のはかりに|従《したが》って、わたしたちひとりびとりに、|恵《めぐ》みが|与《あた》えられている。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、こう|言《い》われている、 [#ここから2字下げ] 「|彼《かれ》は|高《たか》いところに|上《のぼ》った|時《とき》、 とりこを|捕《とら》えて|引《ひ》き|行《ゆ》き、 |人々《ひとびと》に|賜物《たまもの》を|分《わ》け|与《あた》えた」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]さて「|上《のぼ》った」と|言《い》う|以上《いじょう》、また|地下《ちか》の|低《ひく》い|底《そこ》にも|降《お》りてこられたわけではないか。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|降《お》りてこられた|者《もの》|自身《じしん》は、|同時《どうじ》に、あらゆるものに|満《み》ちるために、もろもろの|天《てん》の|上《うえ》にまで|上《のぼ》られたかたなのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》は、ある|人《ひと》を|使徒《しと》とし、ある|人《ひと》を|預言者《よげんしゃ》とし、ある|人《ひと》を|伝道者《でんどうしゃ》とし、ある|人《ひと》を|牧師《ぼくし》、|教師《きょうし》として、お|立《た》てになった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それは、|聖徒《せいと》たちをととのえて|奉仕《ほうし》のわざをさせ、キリストのからだを|建《た》てさせ、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちすべての|者《もの》が、|神《かみ》の|子《こ》を|信《しん》じる|信仰《しんこう》の|一致《いっち》と|彼《かれ》を|知《し》る|知識《ちしき》の|一致《いっち》とに|到達《とうたつ》し、|全《まった》き|人《ひと》となり、ついに、キリストの|満《み》ちみちた|徳《とく》の|高《たか》さにまで|至《いた》るためである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]こうして、わたしたちはもはや|子供《こども》ではないので、だまし|惑《まど》わす|策略《さくりゃく》により、|人々《ひとびと》の|悪巧《わるだく》みによって|起《おこ》る|様々《さまざま》な|教《おしえ》の|風《かぜ》に|吹《ふ》きまわされたり、もてあそばれたりすることがなく、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》にあって|真理《しんり》を|語《かた》り、あらゆる|点《てん》において|成長《せいちょう》し、かしらなるキリストに|達《たっ》するのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]また、キリストを|基《もとい》として、|全身《ぜんしん》はすべての|節々《ふしぶし》の|助《たす》けにより、しっかりと|組《く》み|合《あ》わされ|結《むす》び|合《あ》わされ、それぞれの|部分《ぶぶん》は|分《ぶん》に|応《おう》じて|働《はたら》き、からだを|成長《せいちょう》させ、|愛《あい》のうちに|育《そだ》てられていくのである。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしは|主《しゅ》にあっておごそかに|勧《すす》める。あなたがたは|今後《こんご》、|異邦人《いほうじん》がむなしい|心《こころ》で|歩《ある》いているように|歩《ある》いてはならない。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|知力《ちりょく》は|暗《くら》くなり、その|内《うち》なる|無知《むち》と|心《こころ》の|硬化《こうか》とにより、|神《かみ》のいのちから|遠《とお》く|離《はな》れ、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|自《みずか》ら|無感覚《むかんかく》になって、ほしいままにあらゆる|不潔《ふけつ》な|行《おこな》いをして、|放縦《ほうじゅう》に|身《み》をゆだねている。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかしあなたがたは、そのようにキリストに|学《まな》んだのではなかった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはたしかに|彼《かれ》に|聞《き》き、|彼《かれ》にあって|教《おし》えられて、イエスにある|真理《しんり》をそのまま|学《まな》んだはずである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、あなたがたは、|以前《いぜん》の|生活《せいかつ》に|属《ぞく》する、|情欲《じょうよく》に|迷《まよ》って|滅《ほろ》び|行《い》く|古《ふる》き|人《ひと》を|脱《ぬ》ぎ|捨《す》て、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|心《こころ》の|深《ふか》みまで|新《あら》たにされて、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|真《しん》の|義《ぎ》と|聖《せい》とをそなえた|神《かみ》にかたどって|造《つく》られた|新《あたら》しき|人《ひと》を|着《き》るべきである。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけだから、あなたがたは|偽《いつわ》りを|捨《す》てて、おのおの|隣《とな》り|人《ひと》に|対《たい》して、|真実《しんじつ》を|語《かた》りなさい。わたしたちは、お|互《たがい》に|肢体《したい》なのであるから。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|怒《いか》ることがあっても、|罪《つみ》を|犯《おか》してはならない。|憤《いきどお》ったままで、|日《ひ》が|暮《く》れるようであってはならない。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]また、|悪魔《あくま》に|機会《きかい》を|与《あた》えてはいけない。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|盗《ぬす》んだ|者《もの》は、|今後《こんご》、|盗《ぬす》んではならない。むしろ、|貧《まず》しい|人々《ひとびと》に|分《わ》け|与《あた》えるようになるために、|自分《じぶん》の|手《て》で|正当《せいとう》な|働《はたら》きをしなさい。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|悪《わる》い|言葉《ことば》をいっさい、あなたがたの|口《くち》から|出《だ》してはいけない。|必要《ひつよう》があれば、|人《ひと》の|徳《とく》を|高《たか》めるのに|役立《やくだ》つような|言葉《ことば》を|語《かた》って、|聞《き》いている|者《もの》の|益《えき》になるようにしなさい。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|聖霊《せいれい》を|悲《かな》しませてはいけない。あなたがたは、あがないの|日《ひ》のために、|聖霊《せいれい》の|証印《しょういん》を|受《う》けたのである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]すべての|無慈悲《むじひ》、|憤《いきどお》り、|怒《いか》り、|騒《さわ》ぎ、そしり、また、いっさいの|悪意《あくい》を|捨《す》て|去《さ》りなさい。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》に|情深《なさけぶか》く、あわれみ|深《ぶか》い|者《もの》となり、|神《かみ》がキリストにあってあなたがたをゆるして|下《くだ》さったように、あなたがたも|互《たがい》にゆるし|合《あ》いなさい。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]こうして、あなたがたは、|神《かみ》に|愛《あい》されている|子供《こども》として、|神《かみ》にならう|者《もの》になりなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]また|愛《あい》のうちを|歩《ある》きなさい。キリストもあなたがたを|愛《あい》して|下《くだ》さって、わたしたちのために、ご|自身《じしん》を、|神《かみ》へのかんばしいかおりのささげ|物《もの》、また、いけにえとしてささげられたのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]また、|不品行《ふひんこう》といろいろな|汚《けが》れや|貪欲《どんよく》などを、|聖徒《せいと》にふさわしく、あなたがたの|間《あいだ》では、|口《くち》にすることさえしてはならない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また、|卑《いや》しい|言葉《ことば》と|愚《おろ》かな|話《はなし》やみだらな|冗談《じょうだん》を|避《さ》けなさい。これらは、よろしくない|事《こと》である。それよりは、むしろ|感謝《かんしゃ》をささげなさい。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、よく|知《し》っておかねばならない。すべて|不品行《ふひんこう》な|者《もの》、|汚《けが》れたことをする|者《もの》、|貪欲《どんよく》な|者《もの》、すなわち、|偶像《ぐうぞう》を|礼拝《れいはい》する|者《もの》は、キリストと|神《かみ》との|国《くに》をつぐことができない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、だれにも|不誠実《ふせいじつ》な|言葉《ことば》でだまされてはいけない。これらのことから、|神《かみ》の|怒《いか》りは|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》の|子《こ》らに|下《くだ》るのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]だから、|彼《かれ》らの|仲間《なかま》になってはいけない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|以前《いぜん》はやみであったが、|今《いま》は|主《しゅ》にあって|光《ひかり》となっている。|光《ひかり》の|子《こ》らしく|歩《ある》きなさい――[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|光《ひかり》はあらゆる|善意《ぜんい》と|正義《せいぎ》と|真実《しんじつ》との|実《み》を|結《むす》ばせるものである――[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》に|喜《よろこ》ばれるものがなんであるかを、わきまえ|知《し》りなさい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|実《み》を|結《むす》ばないやみのわざに|加《くわ》わらないで、むしろ、それを|指摘《してき》してやりなさい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが|隠《かく》れて|行《おこな》っていることは、|口《くち》にするだけでも|恥《は》ずかしい|事《こと》である。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|光《ひかり》にさらされる|時《とき》、すべてのものは、|明《あき》らかになる。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|明《あき》らかにされたものは|皆《みな》、|光《ひかり》となるのである。だから、こう|書《か》いてある、 [#ここから2字下げ] 「|眠《ねむ》っている|者《もの》よ、|起《お》きなさい。 |死人《しにん》のなかから、|立《た》ち|上《あ》がりなさい。 そうすれば、キリストがあなたを|照《てら》すであろう」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたがたの|歩《ある》きかたによく|注意《ちゅうい》して、|賢《かしこ》くない|者《もの》のようにではなく、|賢《かしこ》い|者《もの》のように|歩《ある》き、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》の|時《とき》を|生《い》かして|用《もち》いなさい。|今《いま》は|悪《わる》い|時代《じだい》なのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]だから、|愚《おろ》かな|者《もの》にならないで、|主《しゅ》の|御旨《みむね》がなんであるかを|悟《さと》りなさい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|酒《さけ》に|酔《よ》ってはいけない。それは|乱行《らんぎょう》のもとである。むしろ|御霊《みたま》に|満《み》たされて、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|詩《し》とさんびと|霊《れい》の|歌《うた》とをもって|語《かた》り|合《あ》い、|主《しゅ》にむかって|心《こころ》からさんびの|歌《うた》をうたいなさい。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そしてすべてのことにつき、いつも、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|御名《みな》によって、|父《ちち》なる|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》し、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]キリストに|対《たい》する|恐《おそ》れの|心《こころ》をもって、|互《たがい》に|仕《つか》え|合《あ》うべきである。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|妻《つま》たる|者《もの》よ。|主《しゅ》に|仕《つか》えるように|自分《じぶん》の|夫《おっと》に|仕《つか》えなさい。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]キリストが|教会《きょうかい》のかしらであって、|自《みずか》らは、からだなる|教会《きょうかい》の|救主《すくいぬし》であられるように、|夫《おっと》は|妻《つま》のかしらである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]そして|教会《きょうかい》がキリストに|仕《つか》えるように、|妻《つま》もすべてのことにおいて、|夫《おっと》に|仕《つか》えるべきである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|夫《おっと》たる|者《もの》よ。キリストが|教会《きょうかい》を|愛《あい》してそのためにご|自身《じしん》をささげられたように、|妻《つま》を|愛《あい》しなさい。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]キリストがそうなさったのは、|水《みず》で|洗《あら》うことにより、|言葉《ことば》によって、|教会《きょうかい》をきよめて|聖《せい》なるものとするためであり、[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]また、しみも、しわも、そのたぐいのものがいっさいなく、|清《きよ》くて|傷《きず》のない|栄光《えいこう》の|姿《すがた》の|教会《きょうかい》を、ご|自分《じぶん》に|迎《むか》えるためである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]それと|同《おな》じく、|夫《おっと》も|自分《じぶん》の|妻《つま》を、|自分《じぶん》のからだのように|愛《あい》さねばならない。|自分《じぶん》の|妻《つま》を|愛《あい》する|者《もの》は、|自分《じぶん》|自身《じしん》を|愛《あい》するのである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》|自身《じしん》を|憎《にく》んだ|者《もの》は、いまだかつて、ひとりもいない。かえって、キリストが|教会《きょうかい》になさったようにして、おのれを|育《そだ》て|養《やしな》うのが|常《つね》である。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、キリストのからだの|肢体《したい》なのである。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]「それゆえに、|人《ひと》は|父母《ふぼ》を|離《はな》れてその|妻《つま》と|結《むす》ばれ、ふたりの|者《もの》は|一体《いったい》となるべきである」。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]この|奥義《おくぎ》は|大《おお》きい。それは、キリストと|教会《きょうかい》とをさしている。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]いずれにしても、あなたがたは、それぞれ、|自分《じぶん》の|妻《つま》を|自分《じぶん》|自身《じしん》のように|愛《あい》しなさい。|妻《つま》もまた|夫《おっと》を|敬《うやま》いなさい。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|子《こ》たる|者《もの》よ。|主《しゅ》にあって|両親《りょうしん》に|従《したが》いなさい。これは|正《ただ》しいことである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]「あなたの|父《ちち》と|母《はは》とを|敬《うやま》え」。これが|第《だい》一の|戒《いまし》めであって、|次《つぎ》の|約束《やくそく》がそれについている、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]「そうすれば、あなたは|幸福《こうふく》になり、|地上《ちじょう》でながく|生《い》きながらえるであろう」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》たる|者《もの》よ。|子供《こども》をおこらせないで、|主《しゅ》の|薫陶《くんとう》と|訓戒《くんかい》とによって、|彼《かれ》らを|育《そだ》てなさい。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|僕《しもべ》たる|者《もの》よ。キリストに|従《したが》うように、|恐《おそ》れおののきつつ、|真心《まごころ》をこめて、|肉《にく》による|主人《しゅじん》に|従《したが》いなさい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》にへつらおうとして|目先《めさき》だけの|勤《つと》めをするのでなく、キリストの|僕《しもべ》として|心《こころ》から|神《かみ》の|御旨《みむね》を|行《おこな》い、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》にではなく|主《しゅ》に|仕《つか》えるように、|快《こころよ》く|仕《つか》えなさい。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|知《し》っているとおり、だれでも|良《よ》いことを|行《おこな》えば、|僕《しもべ》であれ、|自由人《じゆうじん》であれ、それに|相当《そうとう》する|報《むく》いを、それぞれ|主《しゅ》から|受《う》けるであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》たる|者《もの》よ。|僕《しもべ》たちに|対《たい》して、|同様《どうよう》にしなさい。おどすことを、してはならない。あなたがたが|知《し》っているとおり、|彼《かれ》らとあなたがたとの|主《しゅ》は|天《てん》にいますのであり、かつ|人《ひと》をかたより|見《み》ることをなさらないのである。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|最後《さいご》に|言《い》う。|主《しゅ》にあって、その|偉大《いだい》な|力《ちから》によって、|強《つよ》くなりなさい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|悪魔《あくま》の|策略《さくりゃく》に|対抗《たいこう》して|立《た》ちうるために、|神《かみ》の|武具《ぶぐ》で|身《み》を|固《かた》めなさい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|戦《たたか》いは、|血肉《けつにく》に|対《たい》するものではなく、もろもろの|支配《しはい》と、|権威《けんい》と、やみの|世《よ》の|主権者《しゅけんしゃ》、また|天上《てんじょう》にいる|悪《あく》の|霊《れい》に|対《たい》する|戦《たたか》いである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それだから、|悪《あ》しき|日《ひ》にあたって、よく|抵抗《ていこう》し、|完全《かんぜん》に|勝《か》ち|抜《ぬ》いて、|堅《かた》く|立《た》ちうるために、|神《かみ》の|武具《ぶぐ》を|身《み》につけなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|立《た》って|真理《しんり》の|帯《おび》を|腰《こし》にしめ、|正義《せいぎ》の|胸当《むねあて》を|胸《むね》につけ、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|平和《へいわ》の|福音《ふくいん》の|備《そな》えを|足《あし》にはき、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]その|上《うえ》に、|信仰《しんこう》のたてを|手《て》に|取《と》りなさい。それをもって、|悪《あ》しき|者《もの》の|放《はな》つ|火《ひ》の|矢《や》を|消《け》すことができるであろう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また、|救《すくい》のかぶとをかぶり、|御霊《みたま》の|剣《つるぎ》、すなわち、|神《かみ》の|言《ことば》を|取《と》りなさい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|絶《た》えず|祈《いのり》と|願《ねが》いをし、どんな|時《とき》でも|御霊《みたま》によって|祈《いの》り、そのために|目《め》をさましてうむことがなく、すべての|聖徒《せいと》のために|祈《いの》りつづけなさい。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしが|口《くち》を|開《ひら》くときに|語《かた》るべき|言葉《ことば》を|賜《たま》わり、|大胆《だいたん》に|福音《ふくいん》の|奥義《おくぎ》を|明《あき》らかに|示《しめ》しうるように、わたしのためにも|祈《いの》ってほしい。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしはこの|福音《ふくいん》のための|使節《しせつ》であり、そして|鎖《くさり》につながれているのであるが、つながれていても、|語《かた》るべき|時《とき》には|大胆《だいたん》に|語《かた》れるように|祈《いの》ってほしい。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしがどういう|様子《ようす》か、|何《なに》をしているかを、あなたがたに|知《し》ってもらうために、|主《しゅ》にあって|忠実《ちゅうじつ》に|仕《つか》えている|愛《あい》する|兄弟《きょうだい》テキコが、いっさいの|事《こと》を|報告《ほうこく》するであろう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》をあなたがたのもとに|送《おく》るのは、あなたがたがわたしたちの|様子《ようす》を|知《し》り、また|彼《かれ》によって|心《こころ》に|励《はげ》ましを|受《う》けるようになるためなのである。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》なる|神《かみ》とわたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストから|平安《へいあん》ならびに|信仰《しんこう》に|伴《ともな》う|愛《あい》が、|兄弟《きょうだい》たちにあるように。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|変《かわ》らない|真実《しんじつ》をもって、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストを|愛《あい》するすべての|人々《ひとびと》に、|恵《めぐ》みがあるように。 [#改ページ] ピリピ人への手紙[#「ピリピ人への手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスの|僕《しもべ》たち、パウロとテモテから、ピリピにいる、キリスト・イエスにあるすべての|聖徒《せいと》たち、ならびに|監督《かんとく》たちと|執事《しつじ》たちへ。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストから、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしはあなたがたを|思《おも》うたびごとに、わたしの|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》し、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがた|一同《いちどう》のために|祈《いの》るとき、いつも|喜《よろこ》びをもって|祈《いの》り、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|最初《さいしょ》の|日《ひ》から|今日《こんにち》に|至《いた》るまで、|福音《ふくいん》にあずかっていることを|感謝《かんしゃ》している。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたがたのうちに|良《よ》いわざを|始《はじ》められたかたが、キリスト・イエスの|日《ひ》までにそれを|完成《かんせい》して|下《くだ》さるにちがいないと、|確信《かくしん》している。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしが、あなたがた|一同《いちどう》のために、そう|考《かんが》えるのは|当然《とうぜん》である。それは、わたしが|獄《ごく》に|捕《とら》われている|時《とき》にも、|福音《ふくいん》を|弁明《べんめい》し|立証《りっしょう》する|時《とき》にも、あなたがたをみな、|共《とも》に|恵《めぐ》みにあずかる|者《もの》として、わたしの|心《こころ》に|深《ふか》く|留《と》めているからである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしがキリスト・イエスの|熱愛《ねつあい》をもって、どんなに|深《ふか》くあなたがた|一同《いちどう》を|思《おも》っていることか、それを|証明《しょうめい》して|下《くだ》さるかたは|神《かみ》である。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしはこう|祈《いの》る。あなたがたの|愛《あい》が、|深《ふか》い|知識《ちしき》において、するどい|感覚《かんかく》において、いよいよ|増《ま》し|加《くわ》わり、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それによって、あなたがたが、|何《なに》が|重要《じゅうよう》であるかを|判別《はんべつ》することができ、キリストの|日《ひ》に|備《そな》えて、|純真《じゅんしん》で|責《せ》められるところのないものとなり、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]イエス・キリストによる|義《ぎ》の|実《み》に|満《み》たされて、|神《かみ》の|栄光《えいこう》とほまれとをあらわすに|至《いた》るように。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]さて、|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしの|身《み》に|起《おこ》った|事《こと》が、むしろ|福音《ふくいん》の|前進《ぜんしん》に|役立《やくだ》つようになったことを、あなたがたに|知《し》ってもらいたい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、わたしが|獄《ごく》に|捕《とら》われているのはキリストのためであることが、|兵営《へいえい》|全体《ぜんたい》にもそのほかのすべての|人々《ひとびと》にも|明《あき》らかになり、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして|兄弟《きょうだい》たちのうち|多《おお》くの|者《もの》は、わたしの|入獄《にゅうごく》によって|主《しゅ》にある|確信《かくしん》を|得《え》、|恐《おそ》れることなく、ますます|勇敢《ゆうかん》に、|神《かみ》の|言《ことば》を|語《かた》るようになった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|一方《いっぽう》では、ねたみや|闘争《とうそう》|心《しん》からキリストを|宣《の》べ|伝《つた》える|者《もの》がおり、|他方《たほう》では|善意《ぜんい》からそうする|者《もの》がいる。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|後者《こうしゃ》は、わたしが|福音《ふくいん》を|弁明《べんめい》するために|立《た》てられていることを|知《し》り、|愛《あい》の|心《こころ》でキリストを|伝《つた》え、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|前者《ぜんしゃ》は、わたしの|入獄《にゅうごく》の|苦《くる》しみに|更《さら》に|患難《かんなん》を|加《くわ》えようと|思《おも》って、|純真《じゅんしん》な|心《こころ》からではなく、|党派心《とうはしん》からそうしている。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]すると、どうなのか。|見《み》えからであるにしても、|真実《しんじつ》からであるにしても、|要《よう》するに、|伝《つた》えられているのはキリストなのだから、わたしはそれを|喜《よろこ》んでいるし、また|喜《よろこ》ぶであろう。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、あなたがたの|祈《いのり》と、イエス・キリストの|霊《れい》の|助《たす》けとによって、この|事《こと》がついには、わたしの|救《すくい》となることを|知《し》っているからである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしが|切実《せつじつ》な|思《おも》いで|待《ま》ち|望《のぞ》むことは、わたしが、どんなことがあっても|恥《は》じることなく、かえって、いつものように|今《いま》も、|大胆《だいたん》に|語《かた》ることによって、|生《い》きるにも|死《し》ぬにも、わたしの|身《み》によってキリストがあがめられることである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしにとっては、|生《い》きることはキリストであり、|死《し》ぬことは|益《えき》である。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|肉体《にくたい》において|生《い》きていることが、わたしにとっては|実《みの》り|多《おお》い|働《はたら》きになるのだとすれば、どちらを|選《えら》んだらよいか、わたしにはわからない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、これら二つのものの|間《あいだ》に|板《いた》ばさみになっている。わたしの|願《ねが》いを|言《い》えば、この|世《よ》を|去《さ》ってキリストと|共《とも》にいることであり、|実《じつ》は、その|方《ほう》がはるかに|望《のぞ》ましい。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|肉体《にくたい》にとどまっていることは、あなたがたのためには、さらに|必要《ひつよう》である。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]こう|確信《かくしん》しているので、わたしは|生《い》きながらえて、あなたがた|一同《いちどう》のところにとどまり、あなたがたの|信仰《しんこう》を|進《すす》ませ、その|喜《よろこ》びを|得《え》させようと|思《おも》う。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]そうなれば、わたしが|再《ふたた》びあなたがたのところに|行《い》くので、あなたがたはわたしによってキリスト・イエスにある|誇《ほこり》を|増《ま》すことになろう。  [#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]ただ、あなたがたはキリストの|福音《ふくいん》にふさわしく|生活《せいかつ》しなさい。そして、わたしが|行《い》ってあなたがたに|会《あ》うにしても、|離《はな》れているにしても、あなたがたが一つの|霊《れい》によって|堅《かた》く|立《た》ち、一つ|心《こころ》になって|福音《ふくいん》の|信仰《しんこう》のために|力《ちから》を|合《あ》わせて|戦《たたか》い、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]かつ、|何事《なにごと》についても、|敵対《てきたい》する|者《もの》どもにろうばいさせられないでいる|様子《ようす》を、|聞《き》かせてほしい。このことは、|彼《かれ》らには|滅《ほろ》びのしるし、あなたがたには|救《すくい》のしるしであって、それは|神《かみ》から|来《く》るのである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはキリストのために、ただ|彼《かれ》を|信《しん》じることだけではなく、|彼《かれ》のために|苦《くる》しむことをも|賜《たま》わっている。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、さきにわたしについて|見《み》、|今《いま》またわたしについて|聞《き》いているのと|同《おな》じ|苦闘《くとう》を、|続《つづ》けているのである。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたがたに、キリストによる|勧《すす》め、|愛《あい》の|励《はげ》まし、|御霊《みたま》の|交《まじ》わり、|熱愛《ねつあい》とあわれみとが、いくらかでもあるなら、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]どうか|同《おな》じ|思《おも》いとなり、|同《おな》じ|愛《あい》の|心《こころ》を|持《も》ち、|心《こころ》を|合《あ》わせ、一つ|思《おも》いになって、わたしの|喜《よろこ》びを|満《み》たしてほしい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|何事《なにごと》も|党派心《とうはしん》や|虚栄《きょえい》からするのでなく、へりくだった|心《こころ》をもって|互《たがい》に|人《ひと》を|自分《じぶん》よりすぐれた|者《もの》としなさい。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]おのおの、|自分《じぶん》のことばかりでなく、|他人《たにん》のことも|考《かんが》えなさい。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスにあっていだいているのと|同《おな》じ|思《おも》いを、あなたがたの|間《あいだ》でも|互《たがい》に|生《い》かしなさい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]キリストは、|神《かみ》のかたちであられたが、|神《かみ》と|等《ひと》しくあることを|固守《こしゅ》すべき|事《こと》とは|思《おも》わず、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]かえって、おのれをむなしうして|僕《しもべ》のかたちをとり、|人間《にんげん》の|姿《すがた》になられた。その|有様《ありさま》は|人《ひと》と|異《こと》ならず、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]おのれを|低《ひく》くして、|死《し》に|至《いた》るまで、しかも|十字架《じゅうじか》の|死《し》に|至《いた》るまで|従順《じゅうじゅん》であられた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それゆえに、|神《かみ》は|彼《かれ》を|高《たか》く|引《ひ》き|上《あ》げ、すべての|名《な》にまさる|名《な》を|彼《かれ》に|賜《たま》わった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それは、イエスの|御名《みな》によって、|天上《てんじょう》のもの、|地上《ちじょう》のもの、|地下《ちか》のものなど、あらゆるものがひざをかがめ、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また、あらゆる|舌《した》が、「イエス・キリストは|主《しゅ》である」と|告白《こくはく》して、|栄光《えいこう》を|父《ちち》なる|神《かみ》に|帰《き》するためである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|愛《あい》する|者《もの》たちよ。そういうわけだから、あなたがたがいつも|従順《じゅうじゅん》であったように、わたしが|一緒《いっしょ》にいる|時《とき》だけでなく、いない|今《いま》は、いっそう|従順《じゅうじゅん》でいて、|恐《おそ》れおののいて|自分《じぶん》の|救《すくい》の|達成《たっせい》に|努《つと》めなさい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうちに|働《はたら》きかけて、その|願《ねが》いを|起《おこ》させ、かつ|実現《じつげん》に|至《いた》らせるのは|神《かみ》であって、それは|神《かみ》のよしとされるところだからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]すべてのことを、つぶやかず|疑《うたが》わないでしなさい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それは、あなたがたが|責《せ》められるところのない|純真《じゅんしん》な|者《もの》となり、|曲《まが》った|邪悪《じゃあく》な|時代《じだい》のただ|中《なか》にあって、|傷《きず》のない|神《かみ》の|子《こ》となるためである。あなたがたは、いのちの|言葉《ことば》を|堅《かた》く|持《も》って、|彼《かれ》らの|間《あいだ》で|星《ほし》のようにこの|世《よ》に|輝《かがや》いている。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]このようにして、キリストの|日《ひ》に、わたしは|自分《じぶん》の|走《はし》ったことがむだでなく、|労《ろう》したこともむだではなかったと|誇《ほこ》ることができる。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そして、たとい、あなたがたの|信仰《しんこう》の|供《そな》え|物《もの》をささげる|祭壇《さいだん》に、わたしの|血《ち》をそそぐことがあっても、わたしは|喜《よろこ》ぼう。あなたがた|一同《いちどう》と|共《とも》に|喜《よろこ》ぼう。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|同《おな》じように、あなたがたも|喜《よろこ》びなさい。わたしと|共《とも》に|喜《よろこ》びなさい。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしは、まもなくテモテをあなたがたのところに|送《おく》りたいと、|主《しゅ》イエスにあって|願《ねが》っている。それは、あなたがたの|様子《ようす》を|知《し》って、わたしも|力《ちから》づけられたいからである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]テモテのような|心《こころ》で、|親身《しんみ》になってあなたがたのことを|心配《しんぱい》している|者《もの》は、ほかにひとりもない。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》はみな、|自分《じぶん》のことを|求《もと》めるだけで、キリスト・イエスのことは|求《もと》めていない。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、テモテの|錬達《れんたつ》ぶりは、あなたがたの|知《し》っているとおりである。すなわち、|子《こ》が|父《ちち》に|対《たい》するようにして、わたしと|一緒《いっしょ》に|福音《ふくいん》に|仕《つか》えてきたのである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、この|人《ひと》を、わたしの|成行《なりゆ》きがわかりしだい、すぐにでも、そちらへ|送《おく》りたいと|願《ねが》っている。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]わたし|自身《じしん》もまもなく|行《い》けるものと、|主《しゅ》にあって|確信《かくしん》している。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、さしあたり、わたしの|同労者《どうろうしゃ》で|戦友《せんゆう》である|兄弟《きょうだい》、また、あなたがたの|使者《ししゃ》としてわたしの|窮乏《きゅうぼう》を|補《おぎな》ってくれたエパフロデトを、あなたがたのもとに|送《おく》り|返《かえ》すことが|必要《ひつよう》だと|思《おも》っている。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、あなたがた|一同《いちどう》にしきりに|会《あ》いたがっているからである。その|上《うえ》、|自分《じぶん》の|病気《びょうき》のことがあなたがたに|聞《きこ》えたので、|彼《かれ》は|心苦《こころぐる》しく|思《おも》っている。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|実《じつ》に、ひん|死《し》の|病気《びょうき》にかかったが、|神《かみ》は|彼《かれ》をあわれんで|下《くだ》さった。|彼《かれ》ばかりではなく、わたしをもあわれんで|下《くだ》さったので、わたしは|悲《かな》しみに|悲《かな》しみを|重《かさ》ねないですんだのである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|大急《おおいそ》ぎで|彼《かれ》を|送《おく》り|返《かえ》す。これで、あなたがたは|彼《かれ》と|再《ふたた》び|会《あ》って|喜《よろこ》び、わたしもまた、|心配《しんぱい》を|和《やわ》らげることができよう。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけだから、|大《おお》いに|喜《よろこ》んで、|主《しゅ》にあって|彼《かれ》を|迎《むか》えてほしい。また、こうした|人々《ひとびと》は|尊重《そんちょう》せねばならない。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、わたしに|対《たい》してあなたがたが|奉仕《ほうし》のできなかった|分《ぶん》を|補《おぎな》おうとして、キリストのわざのために|命《いのち》をかけ、|死《し》ぬばかりになったのである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|最後《さいご》に、わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。|主《しゅ》にあって|喜《よろこ》びなさい。さきに|書《か》いたのと|同《おな》じことをここで|繰《く》り|返《かえ》すが、それは、わたしには|煩《わず》らわしいことではなく、あなたがたには|安全《あんぜん》なことになる。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あの|犬《いぬ》どもを|警戒《けいかい》しなさい。|悪《わる》い|働《はたら》き|人《びと》たちを|警戒《けいかい》しなさい。|肉《にく》に|割礼《かつれい》の|傷《きず》をつけている|人《ひと》たちを|警戒《けいかい》しなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|霊《れい》によって|礼拝《れいはい》をし、キリスト・イエスを|誇《ほこり》とし、|肉《にく》を|頼《たの》みとしないわたしたちこそ、|割礼《かつれい》の|者《もの》である。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]もとより、|肉《にく》の|頼《たの》みなら、わたしにも|無《な》くはない。もし、だれかほかの|人《ひと》が|肉《にく》を|頼《たの》みとしていると|言《い》うなら、わたしはそれをもっと|頼《たの》みとしている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしは八|日目《かめ》に|割礼《かつれい》を|受《う》けた|者《もの》、イスラエルの|民族《みんぞく》に|属《ぞく》する|者《もの》、ベニヤミン|族《ぞく》の|出身《しゅっしん》、ヘブル|人《びと》の|中《なか》のヘブル|人《びと》、|律法《りっぽう》の|上《うえ》ではパリサイ|人《びと》、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|熱心《ねっしん》の|点《てん》では|教会《きょうかい》の|迫害者《はくがいしゃ》、|律法《りっぽう》の|義《ぎ》については|落《お》ち|度《ど》のない|者《もの》である。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしにとって|益《えき》であったこれらのものを、キリストのゆえに|損《そん》と|思《おも》うようになった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|更《さら》に|進《すす》んで、わたしの|主《しゅ》キリスト・イエスを|知《し》る|知識《ちしき》の|絶大《ぜつだい》な|価値《かち》のゆえに、いっさいのものを|損《そん》と|思《おも》っている。キリストのゆえに、わたしはすべてを|失《うしな》ったが、それらのものを、ふん|土《ど》のように|思《おも》っている。それは、わたしがキリストを|得《え》るためであり、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》による|自分《じぶん》の|義《ぎ》ではなく、キリストを|信《しん》じる|信仰《しんこう》による|義《ぎ》、すなわち、|信仰《しんこう》に|基《もとづ》く|神《かみ》からの|義《ぎ》を|受《う》けて、キリストのうちに|自分《じぶん》を|見《み》いだすようになるためである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、キリストとその|復活《ふっかつ》の|力《ちから》とを|知《し》り、その|苦難《くなん》にあずかって、その|死《し》のさまとひとしくなり、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]なんとかして|死人《しにん》のうちからの|復活《ふっかつ》に|達《たっ》したいのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしがすでにそれを|得《え》たとか、すでに|完全《かんぜん》な|者《もの》になっているとか|言《い》うのではなく、ただ|捕《とら》えようとして|追《お》い|求《もと》めているのである。そうするのは、キリスト・イエスによって|捕《とら》えられているからである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしはすでに|捕《とら》えたとは|思《おも》っていない。ただこの|一事《いちじ》を|努《つと》めている。すなわち、|後《うしろ》のものを|忘《わす》れ、|前《まえ》のものに|向《む》かってからだを|伸《の》ばしつつ、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|目標《もくひょう》を|目《め》ざして|走《はし》り、キリスト・イエスにおいて|上《うえ》に|召《め》して|下《くだ》さる|神《かみ》の|賞与《しょうよ》を|得《え》ようと|努《つと》めているのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしたちの|中《なか》で|全《まった》き|人《ひと》たちは、そのように|考《かんが》えるべきである。しかし、あなたがたが|違《ちが》った|考《かんが》えを|持《も》っているなら、|神《かみ》はそのことも|示《しめ》して|下《くだ》さるであろう。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]ただ、わたしたちは、|達《たっ》し|得《え》たところに|従《したが》って|進《すす》むべきである。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。どうか、わたしにならう|者《もの》となってほしい。また、あなたがたの|模範《もはん》にされているわたしたちにならって|歩《ある》く|人《ひと》たちに、|目《め》をとめなさい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしがそう|言《い》うのは、キリストの|十字架《じゅうじか》に|敵対《てきたい》して|歩《ある》いている|者《もの》が|多《おお》いからである。わたしは、|彼《かれ》らのことをしばしばあなたがたに|話《はな》したが、|今《いま》また|涙《なみだ》を|流《なが》して|語《かた》る。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|最後《さいご》は|滅《ほろ》びである。|彼《かれ》らの|神《かみ》はその|腹《はら》、|彼《かれ》らの|栄光《えいこう》はその|恥《はじ》、|彼《かれ》らの|思《おも》いは|地上《ちじょう》のことである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしたちの|国籍《こくせき》は|天《てん》にある。そこから、|救主《すくいぬし》、|主《しゅ》イエス・キリストのこられるのを、わたしたちは|待《ま》ち|望《のぞ》んでいる。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、|万物《ばんぶつ》をご|自身《じしん》に|従《したが》わせうる|力《ちから》の|働《はたら》きによって、わたしたちの|卑《いや》しいからだを、ご|自身《じしん》の|栄光《えいこう》のからだと|同《おな》じかたちに|変《か》えて|下《くだ》さるであろう。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしの|愛《あい》し|慕《した》っている|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしの|喜《よろこ》びであり|冠《かんむり》である|愛《あい》する|者《もの》たちよ。このように、|主《しゅ》にあって|堅《かた》く|立《た》ちなさい。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしはユウオデヤに|勧《すす》め、またスントケに|勧《すす》める。どうか、|主《しゅ》にあって一つ|思《おも》いになってほしい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ついては、|真実《しんじつ》な|協力者《きょうりょくしゃ》よ。あなたにお|願《ねが》いする。このふたりの|女《おんな》を|助《たす》けてあげなさい。|彼《かれ》らは、「いのちの|書《しょ》」に|名《な》を|書《か》きとめられているクレメンスや、その|他《た》の|同労者《どうろうしゃ》たちと|協力《きょうりょく》して、|福音《ふくいん》のためにわたしと|共《とも》に|戦《たたか》ってくれた|女《おんな》たちである。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|主《しゅ》にあっていつも|喜《よろこ》びなさい。|繰《く》り|返《かえ》して|言《い》うが、|喜《よろこ》びなさい。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|寛容《かんよう》を、みんなの|人《ひと》に|示《しめ》しなさい。|主《しゅ》は|近《ちか》い。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|何事《なにごと》も|思《おも》い|煩《わずら》ってはならない。ただ、|事《こと》ごとに、|感謝《かんしゃ》をもって|祈《いのり》と|願《ねが》いとをささげ、あなたがたの|求《もと》めるところを|神《かみ》に|申《もう》し|上《あ》げるがよい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そうすれば、|人知《じんち》ではとうてい|測《はか》り|知《し》ることのできない|神《かみ》の|平安《へいあん》が、あなたがたの|心《こころ》と|思《おも》いとを、キリスト・イエスにあって|守《まも》るであろう。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|最後《さいご》に、|兄弟《きょうだい》たちよ。すべて|真実《しんじつ》なこと、すべて|尊《たっと》ぶべきこと、すべて|正《ただ》しいこと、すべて|純真《じゅんしん》なこと、すべて|愛《あい》すべきこと、すべてほまれあること、また|徳《とく》といわれるもの、|称賛《しょうさん》に|値《あたい》するものがあれば、それらのものを|心《こころ》にとめなさい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが、わたしから|学《まな》んだこと、|受《う》けたこと、|聞《き》いたこと、|見《み》たことは、これを|実行《じっこう》しなさい。そうすれば、|平和《へいわ》の|神《かみ》が、あなたがたと|共《とも》にいますであろう。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしが|主《しゅ》にあって|大《おお》いに|喜《よろこ》んでいるのは、わたしを|思《おも》う|心《こころ》が、あなたがたに|今《いま》またついに|芽《め》ばえてきたことである。|実《じつ》は、あなたがたは、わたしのことを|心《こころ》にかけてくれてはいたが、よい|機会《きかい》がなかったのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|乏《とぼ》しいから、こう|言《い》うのではない。わたしは、どんな|境遇《きょうぐう》にあっても、|足《た》ることを|学《まな》んだ。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|貧《ひん》に|処《しょ》する|道《みち》を|知《し》っており、|富《とみ》におる|道《みち》も|知《し》っている。わたしは、|飽《あ》くことにも|飢《う》えることにも、|富《と》むことにも|乏《とぼ》しいことにも、ありとあらゆる|境遇《きょうぐう》に|処《しょ》する|秘《ひ》けつを|心得《こころえ》ている。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしを|強《つよ》くして|下《くだ》さるかたによって、|何事《なにごと》でもすることができる。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたは、よくもわたしと|患難《かんなん》を|共《とも》にしてくれた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ピリピの|人《ひと》たちよ。あなたがたも|知《し》っているとおり、わたしが|福音《ふくいん》を|宣伝《せんでん》し|始《はじ》めたころ、マケドニヤから|出《で》かけて|行《い》った|時《とき》、|物《もの》のやりとりをしてわたしの|働《はたら》きに|参加《さんか》した|教会《きょうかい》は、あなたがたのほかには|全《まった》く|無《な》かった。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]またテサロニケでも、|一再《いっさい》ならず、|物《もの》を|送《おく》ってわたしの|欠乏《けつぼう》を|補《おぎな》ってくれた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|贈《おく》り|物《もの》を|求《もと》めているのではない。わたしの|求《もと》めているのは、あなたがたの|勘定《かんじょう》をふやしていく|果実《かじつ》なのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、すべての|物《もの》を|受《う》けてあり|余《あま》るほどである。エパフロデトから、あなたがたの|贈《おく》り|物《もの》をいただいて、|飽《あ》き|足《た》りている。それは、かんばしいかおりであり、|神《かみ》の|喜《よろこ》んで|受《う》けて|下《くだ》さる|供《そな》え|物《もの》である。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|神《かみ》は、ご|自身《じしん》の|栄光《えいこう》の|富《とみ》の|中《なか》から、あなたがたのいっさいの|必要《ひつよう》を、キリスト・イエスにあって|満《み》たして|下《くだ》さるであろう。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》に、|栄光《えいこう》が|世々《よよ》|限《かぎ》りなくあるように、アァメン。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスにある|聖徒《せいと》のひとりびとりに、よろしく。わたしと|一緒《いっしょ》にいる|兄弟《きょうだい》たちから、あなたがたによろしく。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]すべての|聖徒《せいと》たちから、|特《とく》にカイザルの|家《いえ》の|者《もの》たちから、よろしく。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》イエス・キリストの|恵《めぐ》みが、あなたがたの|霊《れい》と|共《とも》にあるように。 [#改ページ] コロサイ人への手紙[#「コロサイ人への手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|御旨《みむね》によるキリスト・イエスの|使徒《しと》パウロと|兄弟《きょうだい》テモテから、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]コロサイにいる、キリストにある|聖徒《せいと》たち、|忠実《ちゅうじつ》な|兄弟《きょうだい》たちへ。  わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》から、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、いつもあなたがたのために|祈《いの》り、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|父《ちち》なる|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》している。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]これは、キリスト・イエスに|対《たい》するあなたがたの|信仰《しんこう》と、すべての|聖徒《せいと》に|対《たい》していだいているあなたがたの|愛《あい》とを、|耳《みみ》にしたからである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]この|愛《あい》は、あなたがたのために|天《てん》にたくわえられている|望《のぞ》みに|基《もとづ》くものであり、その|望《のぞ》みについては、あなたがたはすでに、あなたがたのところまで|伝《つた》えられた|福音《ふくいん》の|真理《しんり》の|言葉《ことば》によって|聞《き》いている。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そして、この|福音《ふくいん》は、|世界中《せかいじゅう》いたる|所《ところ》でそうであるように、あなたがたのところでも、これを|聞《き》いて|神《かみ》の|恵《めぐ》みを|知《し》ったとき|以来《いらい》、|実《み》を|結《むす》んで|成長《せいちょう》しているのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはこの|福音《ふくいん》を、わたしたちと|同《おな》じ|僕《しもべ》である、|愛《あい》するエペフラスから|学《まな》んだのであった。|彼《かれ》はあなたがたのためのキリストの|忠実《ちゅうじつ》な|奉仕者《ほうししゃ》であって、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|御霊《みたま》によっていだいている|愛《あい》を、わたしたちに|知《し》らせてくれたのである。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そういうわけで、これらの|事《こと》を|耳《みみ》にして|以来《いらい》、わたしたちも|絶《た》えずあなたがたのために|祈《いの》り|求《もと》めているのは、あなたがたがあらゆる|霊的《れいてき》な|知恵《ちえ》と|理解力《りかいりょく》とをもって、|神《かみ》の|御旨《みむね》を|深《ふか》く|知《し》り、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》のみこころにかなった|生活《せいかつ》をして|真《しん》に|主《しゅ》を|喜《よろこ》ばせ、あらゆる|良《よ》いわざを|行《おこな》って|実《み》を|結《むす》び、|神《かみ》を|知《し》る|知識《ちしき》をいよいよ|増《ま》し|加《くわ》えるに|至《いた》ることである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|更《さら》にまた|祈《いの》るのは、あなたがたが、|神《かみ》の|栄光《えいこう》の|勢《いきお》いにしたがって|賜《たま》わるすべての|力《ちから》によって|強《つよ》くされ、|何事《なにごと》も|喜《よろこ》んで|耐《た》えかつ|忍《しの》び、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|光《ひかり》のうちにある|聖徒《せいと》たちの|特権《とっけん》にあずかるに|足《た》る|者《もの》とならせて|下《くだ》さった|父《ちち》なる|神《かみ》に、|感謝《かんしゃ》することである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、わたしたちをやみの|力《ちから》から|救《すく》い|出《だ》して、その|愛《あい》する|御子《みこ》の|支配下《しはいか》に|移《うつ》して|下《くだ》さった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、この|御子《みこ》によってあがない、すなわち、|罪《つみ》のゆるしを|受《う》けているのである。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|御子《みこ》は、|見《み》えない|神《かみ》のかたちであって、すべての|造《つく》られたものに|先《さき》だって|生《うま》れたかたである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|万物《ばんぶつ》は、|天《てん》にあるものも|地《ち》にあるものも、|見《み》えるものも|見《み》えないものも、|位《くらい》も|主権《しゅけん》も、|支配《しはい》も|権威《けんい》も、みな|御子《みこ》にあって|造《つく》られたからである。これらいっさいのものは、|御子《みこ》によって|造《つく》られ、|御子《みこ》のために|造《つく》られたのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|万物《ばんぶつ》よりも|先《さき》にあり、|万物《ばんぶつ》は|彼《かれ》にあって|成《な》り|立《た》っている。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そして|自《みずか》らは、そのからだなる|教会《きょうかい》のかしらである。|彼《かれ》は|初《はじ》めの|者《もの》であり、|死人《しにん》の|中《なか》から|最初《さいしょ》に|生《うま》れたかたである。それは、ご|自身《じしん》がすべてのことにおいて|第《だい》一の|者《もの》となるためである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、|御旨《みむね》によって、|御子《みこ》のうちにすべての|満《み》ちみちた|徳《とく》を|宿《やど》らせ、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、その|十字架《じゅうじか》の|血《ち》によって|平和《へいわ》をつくり、|万物《ばんぶつ》、すなわち、|地《ち》にあるもの、|天《てん》にあるものを、ことごとく、|彼《かれ》によってご|自分《じぶん》と|和解《わかい》させて|下《くだ》さったのである。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたも、かつては|悪《わる》い|行《おこな》いをして|神《かみ》から|離《はな》れ、|心《こころ》の|中《なか》で|神《かみ》に|敵対《てきたい》していた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかし|今《いま》では、|御子《みこ》はその|肉《にく》のからだにより、その|死《し》をとおして、あなたがたを|神《かみ》と|和解《わかい》させ、あなたがたを|聖《せい》なる、|傷《きず》のない、|責《せ》められるところのない|者《もの》として、みまえに|立《た》たせて|下《くだ》さったのである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ただし、あなたがたは、ゆるぐことがなく、しっかりと|信仰《しんこう》にふみとどまり、すでに|聞《き》いている|福音《ふくいん》の|望《のぞ》みから|移《うつ》り|行《い》くことのないようにすべきである。この|福音《ふくいん》は、|天《てん》の|下《した》にあるすべての|造《つく》られたものに|対《たい》して|宣《の》べ|伝《つた》えられたものであって、それにこのパウロが|奉仕《ほうし》しているのである。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》わたしは、あなたがたのための|苦難《くなん》を|喜《よろこ》んで|受《う》けており、キリストのからだなる|教会《きょうかい》のために、キリストの|苦《くる》しみのなお|足《た》りないところを、わたしの|肉体《にくたい》をもって|補《おぎな》っている。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|神《かみ》の|言《ことば》を|告《つ》げひろめる|務《つとめ》を、あなたがたのために|神《かみ》から|与《あた》えられているが、そのために|教会《きょうかい》に|奉仕《ほうし》する|者《もの》になっているのである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]その|言《ことば》の|奥義《おくぎ》は、|代々《よよ》にわたってこの|世《よ》から|隠《かく》されていたが、|今《いま》や|神《かみ》の|聖徒《せいと》たちに|明《あき》らかにされたのである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|彼《かれ》らに、|異邦人《いほうじん》の|受《う》くべきこの|奥義《おくぎ》が、いかに|栄光《えいこう》に|富《と》んだものであるかを、|知《し》らせようとされたのである。この|奥義《おくぎ》は、あなたがたのうちにいますキリストであり、|栄光《えいこう》の|望《のぞ》みである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちはこのキリストを|宣《の》べ|伝《つた》え、|知恵《ちえ》をつくしてすべての|人《ひと》を|訓戒《くんかい》し、また、すべての|人《ひと》を|教《おし》えている。それは、|彼《かれ》らがキリストにあって|全《まった》き|者《もの》として|立《た》つようになるためである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]わたしはこのために、わたしのうちに|力強《ちからづよ》く|働《はたら》いておられるかたの|力《ちから》により、|苦闘《くとう》しながら|努力《どりょく》しているのである。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしが、あなたがたとラオデキヤにいる|人《ひと》たちのため、また、|直接《ちょくせつ》にはまだ|会《あ》ったことのない|人々《ひとびと》のために、どんなに|苦闘《くとう》しているか、わかってもらいたい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それは|彼《かれ》らが、|心《こころ》を|励《はげ》まされ、|愛《あい》によって|結《むす》び|合《あ》わされ、|豊《ゆた》かな|理解力《りかいりょく》を|十分《じゅうぶん》に|与《あた》えられ、|神《かみ》の|奥義《おくぎ》なるキリストを|知《し》るに|至《いた》るためである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]キリストのうちには、|知恵《ちえ》と|知識《ちしき》との|宝《たから》が、いっさい|隠《かく》されている。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしがこう|言《い》うのは、あなたがたが、だれにも|巧《たく》みな|言葉《ことば》で|迷《まよ》わされることのないためである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]たとい、わたしは|肉体《にくたい》においては|離《はな》れていても、|霊《れい》においてはあなたがたと|一緒《いっしょ》にいて、あなたがたの|秩序《ちつじょ》|正《ただ》しい|様子《ようす》とキリストに|対《たい》するあなたがたの|強固《きょうこ》な|信仰《しんこう》とを|見《み》て、|喜《よろこ》んでいる。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]このように、あなたがたは|主《しゅ》キリスト・イエスを|受《う》けいれたのだから、|彼《かれ》にあって|歩《ある》きなさい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]また、|彼《かれ》に|根《ね》ざし、|彼《かれ》にあって|建《た》てられ、そして|教《おし》えられたように、|信仰《しんこう》が|確立《かくりつ》されて、あふれるばかり|感謝《かんしゃ》しなさい。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、むなしいだましごとの|哲学《てつがく》で、|人《ひと》のとりこにされないように、|気《き》をつけなさい。それはキリストに|従《したが》わず、|世《よ》のもろもろの|霊力《れいりょく》に|従《したが》う|人間《にんげん》の|言伝《いいつた》えに|基《もとづ》くものにすぎない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]キリストにこそ、|満《み》ちみちているいっさいの|神《かみ》の|徳《とく》が、かたちをとって|宿《やど》っており、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そしてあなたがたは、キリストにあって、それに|満《み》たされているのである。|彼《かれ》はすべての|支配《しはい》と|権威《けんい》とのかしらであり、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはまた、|彼《かれ》にあって、|手《て》によらない|割礼《かつれい》、すなわち、キリストの|割礼《かつれい》を|受《う》けて、|肉《にく》のからだを|脱《ぬ》ぎ|捨《す》てたのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはバプテスマを|受《う》けて|彼《かれ》と|共《とも》に|葬《ほうむ》られ、|同時《どうじ》に、|彼《かれ》を|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせた|神《かみ》の|力《ちから》を|信《しん》じる|信仰《しんこう》によって、|彼《かれ》と|共《とも》によみがえらされたのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|先《さき》には|罪《つみ》の|中《なか》にあり、かつ|肉《にく》の|割礼《かつれい》がないままで|死《し》んでいた|者《もの》であるが、|神《かみ》は、あなたがたをキリストと|共《とも》に|生《い》かし、わたしたちのいっさいの|罪《つみ》をゆるして|下《くだ》さった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、わたしたちを|責《せ》めて|不利《ふり》におとしいれる|証書《しょうしょ》を、その|規定《きてい》もろともぬり|消《け》し、これを|取《と》り|除《のぞ》いて、|十字架《じゅうじか》につけてしまわれた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そして、もろもろの|支配《しはい》と|権威《けんい》との|武装《ぶそう》を|解除《かいじょ》し、キリストにあって|凱旋《がいせん》し、|彼《かれ》らをその|行列《ぎょうれつ》に|加《くわ》えて、さらしものとされたのである。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたは、|食物《しょくもつ》と|飲《の》み|物《もの》とにつき、あるいは|祭《まつり》や|新月《しんげつ》や|安息日《あんそくにち》などについて、だれにも|批評《ひひょう》されてはならない。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]これらは、きたるべきものの|影《かげ》であって、その|本体《ほんたい》はキリストにある。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、わざとらしい|謙《けん》そんと|天使《てんし》|礼拝《れいはい》とにおぼれている|人々《ひとびと》から、いろいろと|悪評《あくひょう》されてはならない。|彼《かれ》らは|幻《まぼろし》を|見《み》たことを|重《おも》んじ、|肉《にく》の|思《おも》いによっていたずらに|誇《ほこ》るだけで、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]キリストなるかしらに、しっかりと|着《つ》くことをしない。このかしらから|出《で》て、からだ|全体《ぜんたい》は、|節《ふし》と|節《ふし》、|筋《すじ》と|筋《すじ》とによって|強《つよ》められ|結《むす》び|合《あ》わされ、|神《かみ》に|育《そだ》てられて|成長《せいちょう》していくのである。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]もしあなたがたが、キリストと|共《とも》に|死《し》んで|世《よ》のもろもろの|霊力《れいりょく》から|離《はな》れたのなら、なぜ、なおこの|世《よ》に|生《い》きているもののように、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]「さわるな、|味《あじ》わうな、|触《ふ》れるな」などという|規定《きてい》に|縛《しば》られているのか。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]これらは|皆《みな》、|使《つか》えば|尽《つ》きてしまうもの、|人間《にんげん》の|規定《きてい》や|教《おしえ》によっているものである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]これらのことは、ひとりよがりの|礼拝《れいはい》とわざとらしい|謙《けん》そんと、からだの|苦行《くぎょう》とをともなうので、|知恵《ちえ》のあるしわざらしく|見《み》えるが、|実《じつ》は、ほしいままな|肉欲《にくよく》を|防《ふせ》ぐのに、なんの|役《やく》にも|立《た》つものではない。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]このように、あなたがたはキリストと|共《とも》によみがえらされたのだから、|上《うえ》にあるものを|求《もと》めなさい。そこではキリストが|神《かみ》の|右《みぎ》に|座《ざ》しておられるのである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|上《うえ》にあるものを|思《おも》うべきであって、|地上《ちじょう》のものに|心《こころ》を|引《ひ》かれてはならない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはすでに|死《し》んだものであって、あなたがたのいのちは、キリストと|共《とも》に|神《かみ》のうちに|隠《かく》されているのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちのいのちなるキリストが|現《あらわ》れる|時《とき》には、あなたがたも、キリストと|共《とも》に|栄光《えいこう》のうちに|現《あらわ》れるであろう。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]だから、|地上《ちじょう》の|肢体《したい》、すなわち、|不品行《ふひんこう》、|汚《けが》れ、|情欲《じょうよく》、|悪《あく》|欲《よく》、また|貪欲《どんよく》を|殺《ころ》してしまいなさい。|貪欲《どんよく》は|偶像《ぐうぞう》|礼拝《れいはい》にほかならない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]これらのことのために、|神《かみ》の|怒《いか》りが|下《くだ》るのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたも、|以前《いぜん》これらのうちに|日《ひ》を|過《す》ごしていた|時《とき》には、これらのことをして|歩《ある》いていた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし|今《いま》は、これらいっさいのことを|捨《す》て、|怒《いか》り、|憤《いきどお》り、|悪意《あくい》、そしり、|口《くち》から|出《で》る|恥《は》ずべき|言葉《ことば》を、|捨《す》ててしまいなさい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》にうそを|言《い》ってはならない。あなたがたは、|古《ふる》き|人《ひと》をその|行《おこな》いと|一緒《いっしょ》に|脱《ぬ》ぎ|捨《す》て、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|造《つく》り|主《しゅ》のかたちに|従《したが》って|新《あたら》しくされ、|真《しん》の|知識《ちしき》に|至《いた》る|新《あたら》しき|人《ひと》を|着《き》たのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこには、もはやギリシヤ|人《じん》とユダヤ|人《じん》、|割礼《かつれい》と|無《む》|割礼《かつれい》、|未開《みかい》の|人《ひと》、スクテヤ|人《びと》、|奴隷《どれい》、|自由人《じゆうじん》の|差別《さべつ》はない。キリストがすべてであり、すべてのもののうちにいますのである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたは、|神《かみ》に|選《えら》ばれた|者《もの》、|聖《せい》なる、|愛《あい》されている|者《もの》であるから、あわれみの|心《こころ》、|慈愛《じあい》、|謙《けん》そん、|柔和《にゅうわ》、|寛容《かんよう》を|身《み》に|着《つ》けなさい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|互《たがい》に|忍《しの》びあい、もし|互《たがい》に|責《せめ》むべきことがあれば、ゆるし|合《あ》いなさい。|主《しゅ》もあなたがたをゆるして|下《くだ》さったのだから、そのように、あなたがたもゆるし|合《あ》いなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]これらいっさいのものの|上《うえ》に、|愛《あい》を|加《くわ》えなさい。|愛《あい》は、すべてを|完全《かんぜん》に|結《むす》ぶ|帯《おび》である。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]キリストの|平和《へいわ》が、あなたがたの|心《こころ》を|支配《しはい》するようにしなさい。あなたがたが|召《め》されて|一体《いったい》となったのは、このためでもある。いつも|感謝《かんしゃ》していなさい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]キリストの|言葉《ことば》を、あなたがたのうちに|豊《ゆた》かに|宿《やど》らせなさい。そして、|知恵《ちえ》をつくして|互《たがい》に|教《おし》えまた|訓戒《くんかい》し、|詩《し》とさんびと|霊《れい》の|歌《うた》とによって、|感謝《かんしゃ》して|心《こころ》から|神《かみ》をほめたたえなさい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたのすることはすべて、|言葉《ことば》によるとわざによるとを|問《と》わず、いっさい|主《しゅ》イエスの|名《な》によってなし、|彼《かれ》によって|父《ちち》なる|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》しなさい。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|妻《つま》たる|者《もの》よ、|夫《おっと》に|仕《つか》えなさい。それが、|主《しゅ》にある|者《もの》にふさわしいことである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|夫《おっと》たる|者《もの》よ、|妻《つま》を|愛《あい》しなさい。つらくあたってはいけない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|子《こ》たる|者《もの》よ、|何事《なにごと》についても|両親《りょうしん》に|従《したが》いなさい。これが|主《しゅ》に|喜《よろこ》ばれることである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》たる|者《もの》よ、|子供《こども》をいらだたせてはいけない。|心《こころ》がいじけるかも|知《し》れないから。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|僕《しもべ》たる|者《もの》よ、|何事《なにごと》についても、|肉《にく》による|主人《しゅじん》に|従《したが》いなさい。|人《ひと》にへつらおうとして、|目先《めさき》だけの|勤《つと》めをするのではなく、|真心《まごころ》をこめて|主《しゅ》を|恐《おそ》れつつ、|従《したが》いなさい。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|何《なに》をするにも、|人《ひと》に|対《たい》してではなく、|主《しゅ》に|対《たい》してするように、|心《こころ》から|働《はたら》きなさい。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|知《し》っているとおり、あなたがたは|御国《みくに》をつぐことを、|報《むく》いとして|主《しゅ》から|受《う》けるであろう。あなたがたは、|主《しゅ》キリストに|仕《つか》えているのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|不正《ふせい》を|行《おこな》う|者《もの》は、|自分《じぶん》の|行《おこな》った|不正《ふせい》に|対《たい》して|報《むく》いを|受《う》けるであろう。それには|差別《さべつ》|扱《あつか》いはない。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|主人《しゅじん》たる|者《もの》よ、|僕《しもべ》を|正《ただ》しく|公平《こうへい》に|扱《あつか》いなさい。あなたがたにも|主《しゅ》が|天《てん》にいますことが、わかっているのだから。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|目《め》をさまして、|感謝《かんしゃ》のうちに|祈《いの》り、ひたすら|祈《いの》り|続《つづ》けなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|同時《どうじ》にわたしたちのためにも、|神《かみ》が|御言《みことば》のために|門《もん》を|開《ひら》いて|下《くだ》さって、わたしたちがキリストの|奥義《おくぎ》を|語《かた》れるように(わたしは、|実《じつ》は、そのために|獄《ごく》につながれているのである)、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしが|語《かた》るべきことをはっきりと|語《かた》れるように、|祈《いの》ってほしい。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》の|時《とき》を|生《い》かして|用《もち》い、そとの|人《ひと》に|対《たい》して|賢《かしこ》く|行動《こうどう》しなさい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]いつも、|塩《しお》で|味《あじ》つけられた、やさしい|言葉《ことば》を|使《つか》いなさい。そうすれば、ひとりびとりに|対《たい》してどう|答《こた》えるべきか、わかるであろう。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|様子《ようす》については、|主《しゅ》にあって|共《とも》に|僕《しもべ》であり、また|忠実《ちゅうじつ》に|仕《つか》えている|愛《あい》する|兄弟《きょうだい》テキコが、あなたがたにいっさいのことを|報告《ほうこく》するであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|彼《かれ》をあなたがたのもとに|送《おく》るのは、わたしたちの|様子《ようす》を|知《し》り、また|彼《かれ》によって|心《こころ》に|励《はげ》ましを|受《う》けるためなのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのひとり、|忠実《ちゅうじつ》な|愛《あい》する|兄弟《きょうだい》オネシモをも、|彼《かれ》と|共《とも》に|送《おく》る。|彼《かれ》らはあなたがたに、こちらのいっさいの|事情《じじょう》を|知《し》らせるであろう。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしと|一緒《いっしょ》に|捕《とら》われの|身《み》となっているアリスタルコと、バルナバのいとこマルコとが、あなたがたによろしくと|言《い》っている。このマルコについては、もし|彼《かれ》があなたがたのもとに|行《い》くなら、|迎《むか》えてやるようにとのさしずを、あなたがたはすでに|受《う》けているはずである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また、ユストと|呼《よ》ばれているイエスからもよろしく。|割礼《かつれい》の|者《もの》の|中《なか》で、この三|人《にん》だけが|神《かみ》の|国《くに》のために|働《はたら》く|同労者《どうろうしゃ》であって、わたしの|慰《なぐさ》めとなった|者《もの》である。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうちのひとり、キリスト・イエスの|僕《しもべ》エパフラスから、よろしく。|彼《かれ》はいつも、|祈《いのり》のうちであなたがたを|覚《おぼ》え、あなたがたが|全《まった》き|人《ひと》となり、|神《かみ》の|御旨《みむね》をことごとく|確信《かくしん》して|立《た》つようにと、|熱心《ねっしん》に|祈《いの》っている。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|彼《かれ》があなたがたのため、またラオデキヤとヒエラポリスの|人々《ひとびと》のために、ひじょうに|心労《しんろう》していることを、|証言《しょうげん》する。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|医者《いしゃ》ルカとデマスとが、あなたがたによろしく。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ラオデキヤの|兄弟《きょうだい》たちに、またヌンパとその|家《いえ》にある|教会《きょうかい》とに、よろしく。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]この|手紙《てがみ》があなたがたの|所《ところ》で|朗読《ろうどく》されたら、ラオデキヤの|教会《きょうかい》でも|朗読《ろうどく》されるように、|取《と》り|計《はか》らってほしい。またラオデキヤからまわって|来《く》る|手紙《てがみ》を、あなたがたも|朗読《ろうどく》してほしい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]アルキポに、「|主《しゅ》にあって|受《う》けた|務《つとめ》をよく|果《はた》すように」と|伝《つた》えてほしい。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]パウロ|自身《じしん》が、|手《て》ずからこのあいさつを|書《か》く。わたしが|獄《ごく》につながれていることを、|覚《おぼ》えていてほしい。|恵《めぐ》みが、あなたがたと|共《とも》にあるように。 [#改ページ] テサロニケ人への第一の手紙[#「テサロニケ人への第一の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]パウロとシルワノとテモテから、|父《ちち》なる|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストとにあるテサロニケ|人《びと》たちの|教会《きょうかい》へ。  |恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは|祈《いのり》の|時《とき》にあなたがたを|覚《おぼ》え、あなたがた|一同《いちどう》のことを、いつも|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》し、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|信仰《しんこう》の|働《はたら》きと、|愛《あい》の|労苦《ろうく》と、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストに|対《たい》する|望《のぞ》みの|忍耐《にんたい》とを、わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》のみまえに、|絶《た》えず|思《おも》い|起《おこ》している。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》に|愛《あい》されている|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちは、あなたがたが|神《かみ》に|選《えら》ばれていることを|知《し》っている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、わたしたちの|福音《ふくいん》があなたがたに|伝《つた》えられたとき、それは|言葉《ことば》だけによらず、|力《ちから》と|聖霊《せいれい》と|強《つよ》い|確信《かくしん》とによったからである。わたしたちが、あなたがたの|間《あいだ》で、みんなのためにどんなことをしたか、あなたがたの|知《し》っているとおりである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そしてあなたがたは、|多《おお》くの|患難《かんなん》の|中《なか》で、|聖霊《せいれい》による|喜《よろこ》びをもって|御言《みことば》を|受《う》けいれ、わたしたちと|主《しゅ》とにならう|者《もの》となり、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]こうして、マケドニヤとアカヤとにいる|信者《しんじゃ》|全体《ぜんたい》の|模範《もはん》になった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|主《しゅ》の|言葉《ことば》はあなたがたから|出《で》て、ただマケドニヤとアカヤとに|響《ひび》きわたっているばかりではなく、|至《いた》るところで、|神《かみ》に|対《たい》するあなたがたの|信仰《しんこう》のことが|言《い》いひろめられたので、これについては|何《なに》も|述《の》べる|必要《ひつよう》はないほどである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが、どんなにしてあなたがたの|所《ところ》にはいって|行《い》ったか、また、あなたがたが、どんなにして|偶像《ぐうぞう》を|捨《す》てて|神《かみ》に|立《た》ち|帰《かえ》り、|生《い》けるまことの|神《かみ》に|仕《つか》えるようになり、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえった|神《かみ》の|御子《みこ》、すなわち、わたしたちをきたるべき|怒《いか》りから|救《すく》い|出《だ》して|下《くだ》さるイエスが、|天《てん》から|下《くだ》ってこられるのを|待《ま》つようになったかを、|彼《かれ》ら|自身《じしん》が|言《い》いひろめているのである。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがた|自身《じしん》が|知《し》っているとおり、わたしたちがあなたがたの|所《ところ》にはいって|行《い》ったことは、むだではなかった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それどころか、あなたがたが|知《し》っているように、わたしたちは、|先《さき》にピリピで|苦《くる》しめられ、はずかしめられたにもかかわらず、わたしたちの|神《かみ》に|勇気《ゆうき》を|与《あた》えられて、|激《はげ》しい|苦闘《くとう》のうちに|神《かみ》の|福音《ふくいん》をあなたがたに|語《かた》ったのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]いったい、わたしたちの|宣教《せんきょう》は、|迷《まよ》いや|汚《けが》れた|心《こころ》から|出《で》たものでもなく、だましごとでもない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]かえって、わたしたちは|神《かみ》の|信《しん》|任《にん》を|受《う》けて|福音《ふくいん》を|託《たく》されたので、|人間《にんげん》に|喜《よろこ》ばれるためではなく、わたしたちの|心《こころ》を|見分《みわ》ける|神《かみ》に|喜《よろこ》ばれるように、|福音《ふくいん》を|語《かた》るのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、あなたがたが|知《し》っているように、|決《けっ》してへつらいの|言葉《ことば》を|用《もち》いたこともなく、|口実《こうじつ》を|設《もう》けて、むさぼったこともない。それは、|神《かみ》があかしして|下《くだ》さる。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしたちは、キリストの|使徒《しと》として|重《おも》んじられることができたのであるが、あなたがたからにもせよ、ほかの|人々《ひとびと》からにもせよ、|人間《にんげん》からの|栄誉《えいよ》を|求《もと》めることはしなかった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、あなたがたの|間《あいだ》で、ちょうど|母《はは》がその|子供《こども》を|育《そだ》てるように、やさしくふるまった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]このように、あなたがたを|慕《した》わしく|思《おも》っていたので、ただ|神《かみ》の|福音《ふくいん》ばかりではなく、|自分《じぶん》のいのちまでもあなたがたに|与《あた》えたいと|願《ねが》ったほどに、あなたがたを|愛《あい》したのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたはわたしたちの|労苦《ろうく》と|努力《どりょく》とを|記憶《きおく》していることであろう。すなわち、あなたがたのだれにも|負担《ふたん》をかけまいと|思《おも》って、|日夜《にちや》はたらきながら、あなたがたに|神《かみ》の|福音《ふくいん》を|宣《の》べ|伝《つた》えた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたもあかしし、|神《かみ》もあかしして|下《くだ》さるように、わたしたちはあなたがた|信者《しんじゃ》の|前《まえ》で、|信心《しんじん》|深《ぶか》く、|正《ただ》しく、|責《せ》められるところがないように、|生活《せいかつ》をしたのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたがたも|知《し》っているとおり、|父《ちち》がその|子《こ》に|対《たい》してするように、あなたがたのひとりびとりに|対《たい》して、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|御国《みくに》とその|栄光《えいこう》とに|召《め》して|下《くだ》さった|神《かみ》のみこころにかなって|歩《ある》くようにと、|勧《すす》め、|励《はげ》まし、また、さとしたのである。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]これらのことを|考《かんが》えて、わたしたちがまた|絶《た》えず|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》しているのは、あなたがたがわたしたちの|説《と》いた|神《かみ》の|言《ことば》を|聞《き》いた|時《とき》に、それを|人間《にんげん》の|言葉《ことば》としてではなく、|神《かみ》の|言《ことば》として――|事実《じじつ》そのとおりであるが――|受《う》けいれてくれたことである。そして、この|神《かみ》の|言《ことば》は、|信《しん》じるあなたがたのうちに|働《はたら》いているのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたは、ユダヤの、キリスト・イエスにある|神《かみ》の|諸《しょ》|教会《きょうかい》にならう|者《もの》となった。すなわち、|彼《かれ》らがユダヤ|人《じん》たちから|苦《くる》しめられたと|同《おな》じように、あなたがたもまた|同国人《どうこくじん》から|苦《くる》しめられた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》たちは|主《しゅ》イエスと|預言者《よげんしゃ》たちとを|殺《ころ》し、わたしたちを|迫害《はくがい》し、|神《かみ》を|喜《よろこ》ばせず、すべての|人《ひと》に|逆《さか》らい、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|異邦人《いほうじん》に|救《すくい》の|言《ことば》を|語《かた》るのを|妨《さまた》げて、|絶《た》えず|自分《じぶん》の|罪《つみ》を|満《み》たしている。そこで、|神《かみ》の|怒《いか》りは|最《もっと》も|激《はげ》しく|彼《かれ》らに|臨《のぞ》むに|至《いた》ったのである。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちは、しばらくの|間《あいだ》、あなたがたから|引《ひ》き|離《はな》されていたので――|心《こころ》においてではなく、からだだけではあるが――なおさら、あなたがたの|顔《かお》を|見《み》たいと|切《せつ》にこいねがった。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしたちは、あなたがたの|所《ところ》に|行《い》こうとした。ことに、このパウロは、|一再《いっさい》ならず|行《い》こうとしたのである。それだのに、わたしたちはサタンに|妨《さまた》げられた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|実際《じっさい》、わたしたちの|主《しゅ》イエスの|来臨《らいりん》にあたって、わたしたちの|望《のぞ》みと|喜《よろこ》びと|誇《ほこり》の|冠《かんむり》となるべき|者《もの》は、あなたがたを|外《ほか》にして、だれがあるだろうか。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたこそ、|実《じつ》にわたしたちのほまれであり、|喜《よろこ》びである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしたちはこれ|以上《いじょう》|耐《た》えられなくなって、わたしたちだけがアテネに留まることに|定《さだ》め、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|兄弟《きょうだい》で、キリストの|福音《ふくいん》における|神《かみ》の|同労者《どうろうしゃ》テモテをつかわした。それは、あなたがたの|信仰《しんこう》を|強《つよ》め、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]このような|患難《かんなん》の|中《なか》にあって、|動揺《どうよう》する|者《もの》がひとりもないように|励《はげ》ますためであった。あなたがたの|知《し》っているとおり、わたしたちは|患難《かんなん》に|会《あ》うように|定《さだ》められているのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたがたの|所《ところ》にいたとき、わたしたちがやがて|患難《かんなん》に|会《あ》うことをあらかじめ|言《い》っておいたが、あなたがたの|知《し》っているように、|今《いま》そのとおりになったのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしはこれ|以上《いじょう》|耐《た》えられなくなって、もしや「|試《こころ》みる|者《もの》」があなたがたを|試《こころ》み、そのためにわたしたちの|労苦《ろうく》がむだになりはしないかと|気《き》づかって、あなたがたの|信仰《しんこう》を|知《し》るために、|彼《かれ》をつかわしたのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ところが|今《いま》テモテが、あなたがたの|所《ところ》からわたしたちのもとに|帰《かえ》ってきて、あなたがたの|信仰《しんこう》と|愛《あい》とについて|知《し》らせ、また、あなたがたがいつもわたしたちのことを|覚《おぼ》え、わたしたちがあなたがたに|会《あ》いたく|思《おも》っていると|同《おな》じように、わたしたちにしきりに|会《あ》いたがっているという|吉報《きっぽう》をもたらした。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。それによって、わたしたちはあらゆる|苦難《くなん》と|患難《かんなん》との|中《なか》にありながら、あなたがたの|信仰《しんこう》によって|慰《なぐさ》められた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、あなたがたが|主《しゅ》にあって|堅《かた》く|立《た》ってくれるなら、わたしたちはいま|生《い》きることになるからである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ほんとうに、わたしたちの|神《かみ》のみまえで、あなたがたのことで|喜《よろこ》ぶ|大《おお》きな|喜《よろこ》びのために、どんな|感謝《かんしゃ》を|神《かみ》にささげたらよいだろうか。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、あなたがたの|顔《かお》を|見《み》、あなたがたの|信仰《しんこう》の|足《た》りないところを|補《おぎな》いたいと、|日夜《にちや》しきりに|願《ねが》っているのである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]どうか、わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》ご|自身《じしん》と、わたしたちの|主《しゅ》イエスとが、あなたがたのところへ|行《い》く|道《みち》を、わたしたちに|開《ひら》いて|下《くだ》さるように。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|主《しゅ》が、あなたがた|相互《そうご》の|愛《あい》とすべての|人《ひと》に|対《たい》する|愛《あい》とを、わたしたちがあなたがたを|愛《あい》する|愛《あい》と|同《おな》じように、|増《ま》し|加《くわ》えて|豊《ゆた》かにして|下《くだ》さるように。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そして、どうか、わたしたちの|主《しゅ》イエスが、そのすべての|聖《せい》なる|者《もの》と|共《とも》にこられる|時《とき》、|神《かみ》のみまえに、あなたがたの|心《こころ》を|強《つよ》め、|清《きよ》く、|責《せ》められるところのない|者《もの》にして|下《くだ》さるように。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|最後《さいご》に、|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちは|主《しゅ》イエスにあってあなたがたに|願《ねが》いかつ|勧《すす》める。あなたがたが、どのように|歩《ある》いて|神《かみ》を|喜《よろこ》ばすべきかをわたしたちから|学《まな》んだように、また、いま|歩《ある》いているとおりに、ますます|歩《ある》き|続《つづ》けなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちがどういう|教《おしえ》を|主《しゅ》イエスによって|与《あた》えたか、あなたがたはよく|知《し》っている。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》のみこころは、あなたがたが|清《きよ》くなることである。すなわち、|不品行《ふひんこう》を|慎《つつし》み、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|各自《かくじ》、|気《き》をつけて|自分《じぶん》のからだを|清《きよ》く|尊《たっと》く|保《たも》ち、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》を|知《し》らない|異邦人《いほうじん》のように|情欲《じょうよく》をほしいままにせず、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]また、このようなことで|兄弟《きょうだい》を|踏《ふ》みつけたり、だましたりしてはならない。|前《まえ》にもあなたがたにきびしく|警告《けいこく》しておいたように、|主《しゅ》はこれらすべてのことについて、|報《むく》いをなさるからである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》がわたしたちを|召《め》されたのは、|汚《けが》れたことをするためではなく、|清《きよ》くなるためである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけであるから、これらの|警告《けいこく》を|拒《こば》む|者《もの》は、|人《ひと》を|拒《こば》むのではなく、|聖霊《せいれい》をあなたがたの|心《こころ》に|賜《たま》わる|神《かみ》を|拒《こば》むのである。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》|愛《あい》については、|今《いま》さら|書《か》きおくる|必要《ひつよう》はない。あなたがたは、|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》うように|神《かみ》に|直接《ちょくせつ》|教《おし》えられており、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]また、|事実《じじつ》マケドニヤ|全土《ぜんど》にいるすべての|兄弟《きょうだい》に|対《たい》して、それを|実行《じっこう》しているのだから。しかし、|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたに|勧《すす》める。ますます、そうしてほしい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたがたに|命《めい》じておいたように、つとめて|落《お》ち|着《つ》いた|生活《せいかつ》をし、|自分《じぶん》の|仕事《しごと》に|身《み》をいれ、|手《て》ずから|働《はたら》きなさい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そうすれば、|外部《がいぶ》の|人々《ひとびと》に|対《たい》して|品位《ひんい》を|保《たも》ち、まただれの|世話《せわ》にもならずに、|生活《せいかつ》できるであろう。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|眠《ねむ》っている|人々《ひとびと》については、|無知《むち》でいてもらいたくない。|望《のぞ》みを|持《も》たない|外《ほか》の|人々《ひとびと》のように、あなたがたが|悲《かな》しむことのないためである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|信《しん》じているように、イエスが|死《し》んで|復活《ふっかつ》されたからには、|同様《どうよう》に|神《かみ》はイエスにあって|眠《ねむ》っている|人々《ひとびと》をも、イエスと|一緒《いっしょ》に|導《みち》き|出《だ》して|下《くだ》さるであろう。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは|主《しゅ》の|言葉《ことば》によって|言《い》うが、|生《い》きながらえて|主《しゅ》の|来臨《らいりん》の|時《とき》まで|残《のこ》るわたしたちが、|眠《ねむ》った|人々《ひとびと》より|先《さき》になることは、|決《けっ》してないであろう。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|主《しゅ》ご|自身《じしん》が|天使《てんし》のかしらの|声《こえ》と|神《かみ》のラッパの|鳴《な》り|響《ひび》くうちに、|合図《あいず》の|声《こえ》で、|天《てん》から|下《くだ》ってこられる。その|時《とき》、キリストにあって|死《し》んだ|人々《ひとびと》が、まず|最初《さいしょ》によみがえり、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それから|生《い》き|残《のこ》っているわたしたちが、|彼《かれ》らと|共《とも》に|雲《くも》に|包《つつ》まれて|引《ひ》き|上《あ》げられ、|空中《くうちゅう》で|主《しゅ》に|会《あ》い、こうして、いつも|主《しゅ》と|共《とも》にいるであろう。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたは、これらの|言葉《ことば》をもって|互《たがい》に|慰《なぐさ》め|合《あ》いなさい。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。その|時期《じき》と|場合《ばあい》とについては、|書《か》きおくる|必要《ひつよう》はない。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがた|自身《じしん》がよく|知《し》っているとおり、|主《しゅ》の|日《ひ》は|盗人《ぬすびと》が|夜《よる》くるように|来《く》る。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》が|平和《へいわ》だ|無事《ぶじ》だと|言《い》っているその|矢先《やさき》に、ちょうど|妊婦《にんぷ》に|産《う》みの|苦《くる》しみが|臨《のぞ》むように、|突如《とつじょ》として|滅《ほろ》びが|彼《かれ》らをおそって|来《く》る。そして、それからのがれることは|決《けっ》してできない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかし|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたは|暗《くら》やみの|中《なか》にいないのだから、その|日《ひ》が、|盗人《ぬすびと》のようにあなたがたを|不《ふ》|意《い》に|襲《おそ》うことはないであろう。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはみな|光《ひかり》の|子《こ》であり、|昼《ひる》の|子《こ》なのである。わたしたちは、|夜《よる》の|者《もの》でもやみの|者《もの》でもない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]だから、ほかの|人々《ひとびと》のように|眠《ねむ》っていないで、|目《め》をさまして|慎《つつし》んでいよう。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|眠《ねむ》る|者《もの》は|夜《よる》|眠《ねむ》り、|酔《よ》う|者《もの》は|夜《よる》|酔《よ》うのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしたちは|昼《ひる》の|者《もの》なのだから、|信仰《しんこう》と|愛《あい》との|胸当《むねあて》を|身《み》につけ、|救《すくい》の|望《のぞ》みのかぶとをかぶって、|慎《つつし》んでいよう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、わたしたちを|怒《いか》りにあわせるように|定《さだ》められたのではなく、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストによって|救《すくい》を|得《え》るように|定《さだ》められたのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]キリストがわたしたちのために|死《し》なれたのは、さめていても|眠《ねむ》っていても、わたしたちが|主《しゅ》と|共《とも》に|生《い》きるためである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたは、|今《いま》しているように、|互《たがい》に|慰《なぐさ》め|合《あ》い、|相互《そうご》の|徳《とく》を|高《たか》めなさい。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちはお|願《ねが》いする。どうか、あなたがたの|間《あいだ》で|労《ろう》し、|主《しゅ》にあってあなたがたを|指導《しどう》し、かつ|訓戒《くんかい》している|人々《ひとびと》を|重《おも》んじ、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|働《はたら》きを|思《おも》って、|特《とく》に|愛《あい》し|敬《うやま》いなさい。|互《たがい》に|平和《へいわ》に|過《す》ごしなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたにお|勧《すす》めする。|怠惰《たいだ》な|者《もの》を|戒《いまし》め、|小心《しょうしん》な|者《もの》を|励《はげ》まし、|弱《よわ》い|者《もの》を|助《たす》け、すべての|人《ひと》に|対《たい》して|寛容《かんよう》でありなさい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]だれも|悪《あく》をもって|悪《あく》に|報《むく》いないように|心《こころ》がけ、お|互《たがい》に、またみんなに|対《たい》して、いつも|善《ぜん》を|追《お》い|求《もと》めなさい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]いつも|喜《よろこ》んでいなさい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|絶《た》えず|祈《いの》りなさい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]すべての|事《こと》について、|感謝《かんしゃ》しなさい。これが、キリスト・イエスにあって、|神《かみ》があなたがたに|求《もと》めておられることである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|御霊《みたま》を|消《け》してはいけない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|預言《よげん》を|軽《かろ》んじてはならない。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]すべてのものを|識別《しきべつ》して、|良《よ》いものを|守《まも》り、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]あらゆる|種類《しゅるい》の|悪《あく》から|遠《とお》ざかりなさい。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|平和《へいわ》の|神《かみ》ご|自身《じしん》が、あなたがたを|全《まった》くきよめて|下《くだ》さるように。また、あなたがたの|霊《れい》と|心《こころ》とからだとを|完全《かんぜん》に|守《まも》って、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|来臨《らいりん》のときに、|責《せ》められるところのない|者《もの》にして|下《くだ》さるように。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたを|召《め》されたかたは|真実《しんじつ》であられるから、このことをして|下《くだ》さるであろう。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちのためにも、|祈《いの》ってほしい。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]すべての|兄弟《きょうだい》たちに、きよい|接吻《せっぷん》をもって、よろしく|伝《つた》えてほしい。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|主《しゅ》によって|命《めい》じる。この|手紙《てがみ》を、みんなの|兄弟《きょうだい》に|読《よ》み|聞《き》かせなさい。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|恵《めぐ》みが、あなたがたと|共《とも》にあるように。 [#改ページ] テサロニケ人への第二の手紙[#「テサロニケ人への第二の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]パウロとシルワノとテモテから、わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストとにあるテサロニケ|人《びと》たちの|教会《きょうかい》へ。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》なる|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストから、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちは、いつもあなたがたのことを|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》せずにはおられない。またそうするのが|当然《とうぜん》である。それは、あなたがたの|信仰《しんこう》が|大《おお》いに|成長《せいちょう》し、あなたがたひとりびとりの|愛《あい》が、お|互《たがい》の|間《あいだ》に|増《ま》し|加《くわ》わっているからである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そのために、わたしたち|自身《じしん》は、あなたがたがいま|受《う》けているあらゆる|迫害《はくがい》と|患難《かんなん》とのただ|中《なか》で|示《しめ》している|忍耐《にんたい》と|信仰《しんこう》とにつき、|神《かみ》の|諸《しょ》|教会《きょうかい》に|対《たい》してあなたがたを|誇《ほこり》としている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]これは、あなたがたを、|神《かみ》の|国《くに》にふさわしい|者《もの》にしようとする|神《かみ》のさばきが|正《ただ》しいことを、|証拠《しょうこ》だてるものである。その|神《かみ》の|国《くに》のために、あなたがたも|苦《くる》しんでいるのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、あなたがたを|悩《なや》ます|者《もの》には|患難《かんなん》をもって|報《むく》い、|悩《なや》まされているあなたがたには、わたしたちと|共《とも》に、|休息《きゅうそく》をもって|報《むく》いて|下《くだ》さるのが、|神《かみ》にとって|正《ただ》しいことだからである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]それは、|主《しゅ》イエスが|炎《ほのお》の|中《なか》で|力《ちから》ある|天使《てんし》たちを|率《ひき》いて|天《てん》から|現《あらわ》れる|時《とき》に|実現《じつげん》する。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、|主《しゅ》は|神《かみ》を|認《みと》めない|者《もの》たちや、わたしたちの|主《しゅ》イエスの|福音《ふくいん》に|聞《き》き|従《したが》わない|者《もの》たちに|報復《ほうふく》し、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》らは|主《しゅ》のみ|顔《かお》とその|力《ちから》の|栄光《えいこう》から|退《しりぞ》けられて、|永遠《えいえん》の|滅《ほろ》びに|至《いた》る|刑罰《けいばつ》を|受《う》けるであろう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]その|日《ひ》に、イエスは|下《くだ》ってこられ、|聖徒《せいと》たちの|中《なか》であがめられ、すべて|信《しん》じる|者《もの》たちの|間《あいだ》で|驚嘆《きょうたん》されるであろう――わたしたちのこのあかしは、あなたがたによって|信《しん》じられているのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]このためにまた、わたしたちは、わたしたちの|神《かみ》があなたがたを|召《め》しにかなう|者《もの》となし、|善《ぜん》に|対《たい》するあらゆる|願《ねが》いと|信仰《しんこう》の|働《はたら》きとを|力強《ちからづよ》く|満《み》たして|下《くだ》さるようにと、あなたがたのために|絶《た》えず|祈《いの》っている。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それは、わたしたちの|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストとの|恵《めぐ》みによって、わたしたちの|主《しゅ》イエスの|御名《みな》があなたがたの|間《あいだ》であがめられ、あなたがたも|主《しゅ》にあって|栄光《えいこう》を|受《う》けるためである。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|来臨《らいりん》と、わたしたちがみもとに|集《あつ》められることとについて、あなたがたにお|願《ねが》いすることがある。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|霊《れい》により、あるいは|言葉《ことば》により、あるいはわたしたちから|出《で》たという|手紙《てがみ》によって、|主《しゅ》の|日《ひ》はすでにきたとふれまわる|者《もの》があっても、すぐさま|心《こころ》を|動《うご》かされたり、あわてたりしてはいけない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]だれがどんな|事《こと》をしても、それにだまされてはならない。まず|背教《はいきょう》のことが|起《おこ》り、|不法《ふほう》の|者《もの》、すなわち、|滅《ほろ》びの|子《こ》が|現《あらわ》れるにちがいない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、すべて|神《かみ》と|呼《よ》ばれたり|拝《おが》まれたりするものに|反抗《はんこう》して|立《た》ち|上《あ》がり、|自《みずか》ら|神《かみ》の|宮《みや》に|座《ざ》して、|自分《じぶん》は|神《かみ》だと|宣言《せんげん》する。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしがまだあなたがたの|所《ところ》にいた|時《とき》、これらの|事《こと》をくり|返《かえ》して|言《い》ったのを|思《おも》い|出《だ》さないのか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたがたが|知《し》っているとおり、|彼《かれ》が|自分《じぶん》に|定《さだ》められた|時《とき》になってから|現《あらわ》れるように、いま|彼《かれ》を|阻止《そし》しているものがある。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|不法《ふほう》の|秘密《ひみつ》の|力《ちから》が、すでに|働《はたら》いているのである。ただそれは、いま|阻止《そし》している|者《もの》が|取《と》り|除《のぞ》かれる|時《とき》までのことである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》になると、|不法《ふほう》の|者《もの》が|現《あらわ》れる。この|者《もの》を、|主《しゅ》イエスは|口《くち》の|息《いき》をもって|殺《ころ》し、|来臨《らいりん》の|輝《かがや》きによって|滅《ほろ》ぼすであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|不法《ふほう》の|者《もの》が|来《く》るのは、サタンの|働《はたら》きによるのであって、あらゆる|偽《いつわ》りの|力《ちから》と、しるしと、|不思議《ふしぎ》と、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]また、あらゆる|不義《ふぎ》の|惑《まど》わしとを、|滅《ほろ》ぶべき|者《もの》どもに|対《たい》して|行《おこな》うためである。|彼《かれ》らが|滅《ほろ》びるのは、|自分《じぶん》らの|救《すくい》となるべき|真理《しんり》に|対《たい》する|愛《あい》を|受《う》けいれなかった|報《むく》いである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで|神《かみ》は、|彼《かれ》らが|偽《いつわ》りを|信《しん》じるように、|迷《まよ》わす|力《ちから》を|送《おく》り、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|真理《しんり》を|信《しん》じないで|不義《ふぎ》を|喜《よろこ》んでいたすべての|人《ひと》を、さばくのである。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|主《しゅ》に|愛《あい》されている|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちはいつもあなたがたのことを、|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》せずにはおられない。それは、|神《かみ》があなたがたを|初《はじ》めから|選《えら》んで、|御霊《みたま》によるきよめと、|真理《しんり》に|対《たい》する|信仰《しんこう》とによって、|救《すくい》を|得《え》させようとし、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そのために、わたしたちの|福音《ふくいん》によりあなたがたを|召《め》して、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|栄光《えいこう》にあずからせて|下《くだ》さるからである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|兄弟《きょうだい》たちよ。|堅《かた》く|立《た》って、わたしたちの|言葉《ことば》や|手紙《てがみ》で|教《おし》えられた|言伝《いいつた》えを、しっかりと|守《まも》り|続《つづ》けなさい。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]どうか、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストご|自身《じしん》と、わたしたちを|愛《あい》し、|恵《めぐ》みをもって|永遠《えいえん》の|慰《なぐさ》めと|確《たし》かな|望《のぞ》みとを|賜《たま》わるわたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》とが、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|心《こころ》を|励《はげ》まし、あなたがたを|強《つよ》めて、すべての|良《よ》いわざを|行《おこな》い、|正《ただ》しい|言葉《ことば》を|語《かた》る|者《もの》として|下《くだ》さるように。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|最後《さいご》に、|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちのために|祈《いの》ってほしい。どうか|主《しゅ》の|言葉《ことば》が、あなたがたの|所《ところ》と|同《おな》じように、ここでも|早《はや》く|広《ひろ》まり、また、あがめられるように。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]また、どうか、わたしたちが|不都合《ふつごう》な|悪人《あくにん》から|救《すく》われるように。|事実《じじつ》、すべての|人《ひと》が|信仰《しんこう》を|持《も》っているわけではない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|主《しゅ》は|真実《しんじつ》なかたであるから、あなたがたを|強《つよ》め、|悪《あ》しき|者《もの》から|守《まも》って|下《くだ》さるであろう。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|命《めい》じる|事《こと》を、あなたがたは|現《げん》に|実行《じっこう》しており、また、|実行《じっこう》するであろうと、わたしたちは、|主《しゅ》にあって|確信《かくしん》している。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|主《しゅ》があなたがたの|心《こころ》を|導《みちび》いて、|神《かみ》の|愛《あい》とキリストの|忍耐《にんたい》とを|持《も》たせて|下《くだ》さるように。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|主《しゅ》イエス・キリストの|名《な》によってあなたがたに|命《めい》じる。|怠惰《たいだ》な|生活《せいかつ》をして、わたしたちから|受《う》けた|言伝《いいつた》えに|従《したが》わないすべての|兄弟《きょうだい》たちから、|遠《とお》ざかりなさい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちに、どうならうべきであるかは、あなたがた|自身《じしん》が|知《し》っているはずである。あなたがたの|所《ところ》にいた|時《とき》には、わたしたちは|怠惰《たいだ》な|生活《せいかつ》をしなかったし、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》からパンをもらって|食《た》べることもしなかった。それどころか、あなたがたのだれにも|負担《ふたん》をかけまいと、|日夜《にちや》、|労苦《ろうく》し|努力《どりょく》して|働《はたら》き|続《つづ》けた。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それは、わたしたちにその|権利《けんり》がないからではなく、ただわたしたちにあなたがたが|見習《みなら》うように、|身《み》をもって|模範《もはん》を|示《しめ》したのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがたの|所《ところ》にいた|時《とき》に、「|働《はたら》こうとしない|者《もの》は、|食《た》べることもしてはならない」と|命《めい》じておいた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|聞《き》くところによると、あなたがたのうちのある|者《もの》は|怠惰《たいだ》な|生活《せいかつ》を|送《おく》り、|働《はたら》かないで、ただいたずらに|動《うご》きまわっているとのことである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]こうした|人々《ひとびと》に|対《たい》しては、|静《しず》かに|働《はたら》いて|自分《じぶん》で|得《え》たパンを|食《た》べるように、|主《しゅ》イエス・キリストによって|命《めい》じまた|勧《すす》める。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたは、たゆまずに|良《よ》い|働《はたら》きをしなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]もしこの|手紙《てがみ》にしるしたわたしたちの|言葉《ことば》に|聞《き》き|従《したが》わない|人《ひと》があれば、そのような|人《ひと》には|注意《ちゅうい》をして、|交際《こうさい》しないがよい。|彼《かれ》が|自《みずか》ら|恥《は》じるようになるためである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》を|敵《てき》のように|思《おも》わないで、|兄弟《きょうだい》として|訓戒《くんかい》しなさい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|平和《へいわ》の|主《しゅ》ご|自身《じしん》が、いついかなる|場合《ばあい》にも、あなたがたに|平和《へいわ》を|与《あた》えて|下《くだ》さるように。|主《しゅ》があなたがた|一同《いちどう》と|共《とも》におられるように。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]ここでパウロ|自身《じしん》が、|手《て》ずからあいさつを|書《か》く。これは、わたしのどの|手紙《てがみ》にも|書《か》く|印《しるし》である。わたしは、このように|書《か》く。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]どうか、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|恵《めぐ》みが、あなたがた|一同《いちどう》と|共《とも》にあるように。 [#改ページ] テモテヘの第一の手紙[#「テモテヘの第一の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|救主《すくいぬし》なる|神《かみ》と、わたしたちの|望《のぞ》みであるキリスト・イエスとの|任命《にんめい》によるキリスト・イエスの|使徒《しと》パウロから、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によるわたしの|真実《しんじつ》な|子《こ》テモテへ。  |父《ちち》なる|神《かみ》とわたしたちの|主《しゅ》キリスト・イエスから、|恵《めぐ》みとあわれみと|平安《へいあん》とが、あなたにあるように。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしがマケドニヤに|向《む》かって|出発《しゅっぱつ》する|際《さい》、|頼《たの》んでおいたように、あなたはエペソにとどまっていて、ある|人々《ひとびと》に、|違《ちが》った|教《おしえ》を|説《と》くことをせず、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|作《つく》り|話《ばなし》やはてしのない|系図《けいず》などに|気《き》をとられることもないように、|命《めい》じなさい。そのようなことは|信仰《しんこう》による|神《かみ》の|務《つとめ》を|果《はた》すものではなく、むしろ|論議《ろんぎ》を|引《ひ》き|起《おこ》させるだけのものである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしのこの|命令《めいれい》は、|清《きよ》い|心《こころ》と|正《ただ》しい|良心《りょうしん》と|偽《いつわ》りのない|信仰《しんこう》とから|出《で》てくる|愛《あい》を|目標《もくひょう》としている。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ある|人々《ひとびと》はこれらのものからそれて|空論《くうろん》に|走《はし》り、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》の|教師《きょうし》たることを|志《こころざ》していながら、|自分《じぶん》の|言《い》っていることも|主張《しゅちょう》していることも、わからないでいる。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|知《し》っているとおり、|律法《りっぽう》なるものは、|法《ほう》に|従《したが》って|用《もち》いるなら、|良《よ》いものである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|律法《りっぽう》は|正《ただ》しい|人《ひと》のために|定《さだ》められたのではなく、|不法《ふほう》な|者《もの》と|法《ほう》に|服《ふく》さない|者《もの》、|不信心《ふしんじん》な|者《もの》と|罪《つみ》ある|者《もの》、|神聖《しんせい》を|汚《けが》す|者《もの》と|俗悪《ぞくあく》な|者《もの》、|父《ちち》を|殺《ころ》す|者《もの》と|母《はは》を|殺《ころ》す|者《もの》、|人《ひと》を|殺《ころ》す|者《もの》、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|不品行《ふひんこう》な|者《もの》、|男色《なんしょく》をする|者《もの》、|誘《ゆう》かいする|者《もの》、|偽《いつわ》る|者《もの》、|偽《いつわ》り|誓《ちか》う|者《もの》、そのほか|健全《けんぜん》な|教《おしえ》にもとることがあれば、そのために|定《さだ》められていることを|認《みと》むべきである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]これは、|祝福《しゅくふく》に|満《み》ちた|神《かみ》の|栄光《えいこう》の|福音《ふくいん》が|示《しめ》すところであって、わたしはこの|福音《ふくいん》をゆだねられているのである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|自分《じぶん》を|強《つよ》くして|下《くだ》さったわたしたちの|主《しゅ》キリスト・イエスに|感謝《かんしゃ》する。|主《しゅ》はわたしを|忠実《ちゅうじつ》な|者《もの》と|見《み》て、この|務《つとめ》に|任《にん》じて|下《くだ》さったのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|以前《いぜん》には、|神《かみ》をそしる|者《もの》、|迫害《はくがい》する|者《もの》、|不遜《ふそん》な|者《もの》であった。しかしわたしは、これらの|事《こと》を、|信仰《しんこう》がなかったとき、|無知《むち》なためにしたのだから、あわれみをこうむったのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]その|上《うえ》、わたしたちの|主《しゅ》の|恵《めぐ》みが、キリスト・イエスにある|信仰《しんこう》と|愛《あい》とに|伴《ともな》い、ますます|増《ま》し|加《くわ》わってきた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]「キリスト・イエスは、|罪人《つみびと》を|救《すく》うためにこの|世《よ》にきて|下《くだ》さった」という|言葉《ことば》は、|確実《かくじつ》で、そのまま|受《う》けいれるに|足《た》るものである。わたしは、その|罪人《つみびと》のかしらなのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしがあわれみをこうむったのは、キリスト・イエスが、まずわたしに|対《たい》して|限《かぎ》りない|寛容《かんよう》を|示《しめ》し、そして、わたしが|今後《こんご》、|彼《かれ》を|信《しん》じて|永遠《えいえん》のいのちを|受《う》ける|者《もの》の|模範《もはん》となるためである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|世々《よよ》の|支配者《しはいしゃ》、|不朽《ふきゅう》にして|見《み》えざる|唯一《ゆいいつ》の|神《かみ》に、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく、ほまれと|栄光《えいこう》とがあるように、アァメン。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|子《こ》テモテよ。|以前《いぜん》あなたに|対《たい》してなされた|数々《かずかず》の|預言《よげん》の|言葉《ことば》に|従《したが》って、この|命令《めいれい》を|与《あた》える。あなたは、これらの|言葉《ことば》に|励《はげ》まされて、|信仰《しんこう》と|正《ただ》しい|良心《りょうしん》とを|保《たも》ちながら、りっぱに|戦《たたか》いぬきなさい。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]ある|人々《ひとびと》は、|正《ただ》しい|良心《りょうしん》を|捨《す》てたため、|信仰《しんこう》の|破船《はせん》に|会《あ》った。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]その|中《なか》に、ヒメナオとアレキサンデルとがいる。わたしは、|神《かみ》を|汚《けが》さないことを|学《まな》ばせるため、このふたりをサタンの|手《て》に|渡《わた》したのである。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、まず|第《だい》一に|勧《すす》める。すべての|人《ひと》のために、|王《おう》たちと|上《うえ》に|立《た》っているすべての|人々《ひとびと》のために、|願《ねが》いと、|祈《いのり》と、とりなしと、|感謝《かんしゃ》とをささげなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それはわたしたちが、|安《やす》らかで|静《しず》かな|一生《いっしょう》を、|真《しん》に|信心《しんじん》|深《ぶか》くまた|謹厳《きんげん》に|過《す》ごすためである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]これは、わたしたちの|救主《すくいぬし》である|神《かみ》のみまえに|良《よ》いことであり、また、みこころにかなうことである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、すべての|人《ひと》が|救《すく》われて、|真理《しんり》を|悟《さと》るに|至《いた》ることを|望《のぞ》んでおられる。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|唯一《ゆいいつ》であり、|神《かみ》と|人《ひと》との|間《あいだ》の|仲保者《ちゅうほしゃ》もただひとりであって、それは|人《ひと》なるキリスト・イエスである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、すべての|人《ひと》のあがないとしてご|自身《じしん》をささげられたが、それは、|定《さだ》められた|時《とき》になされたあかしにほかならない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そのために、わたしは|立《た》てられて|宣教者《せんきょうしゃ》、|使徒《しと》となり(わたしは|真実《しんじつ》を|言《い》っている、|偽《いつわ》ってはいない)、また|異邦人《いほうじん》に|信仰《しんこう》と|真理《しんり》とを|教《おし》える|教師《きょうし》となったのである。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|男《おとこ》は、|怒《いか》ったり|争《あらそ》ったりしないで、どんな|場所《ばしょ》でも、きよい|手《て》をあげて|祈《いの》ってほしい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]また、|女《おんな》はつつましい|身《み》なりをし、|適度《てきど》に|慎《つつし》み|深《ぶか》く|身《み》を|飾《かざ》るべきであって、|髪《かみ》を|編《あ》んだり、|金《きん》や|真珠《しんじゅ》をつけたり、|高価《こうか》な|着物《きもの》を|着《き》たりしてはいけない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、|良《よ》いわざをもって|飾《かざ》りとすることが、|信仰《しんこう》を|言《い》いあらわしている|女《おんな》に|似《に》つかわしい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》は|静《しず》かにしていて、|万事《ばんじ》につけ|従順《じゅうじゅん》に|教《おしえ》を|学《まな》ぶがよい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》が|教《おし》えたり、|男《おとこ》の|上《うえ》に|立《た》ったりすることを、わたしは|許《ゆる》さない。むしろ、|静《しず》かにしているべきである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、アダムがさきに|造《つく》られ、それからエバが|造《つく》られたからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]またアダムは|惑《まど》わされなかったが、|女《おんな》は|惑《まど》わされて、あやまちを|犯《おか》した。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|女《おんな》が|慎《つつし》み|深《ぶか》く、|信仰《しんこう》と|愛《あい》と|清《きよ》さとを|持《も》ち|続《つづ》けるなら、|子《こ》を|産《う》むことによって|救《すく》われるであろう。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]「もし|人《ひと》が|監督《かんとく》の|職《しょく》を|望《のぞ》むなら、それは|良《よ》い|仕事《しごと》を|願《ねが》うことである」とは|正《ただ》しい|言葉《ことば》である。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]さて、|監督《かんとく》は、|非難《ひなん》のない|人《ひと》で、ひとりの|妻《つま》の|夫《おっと》であり、|自《みずか》らを|制《せい》し、|慎《つつし》み|深《ぶか》く、|礼儀《れいぎ》|正《ただ》しく、|旅人《たびびと》をもてなし、よく|教《おし》えることができ、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|酒《さけ》を|好《この》まず、|乱暴《らんぼう》でなく、|寛容《かんよう》であって、|人《ひと》と|争《あらそ》わず、|金《かね》に|淡泊《たんぱく》で、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|家《いえ》をよく|治め《おさめ》、|謹厳《きんげん》であって、|子供《こども》たちを|従順《じゅうじゅん》な|者《もの》に|育《そだ》てている|人《ひと》でなければならない。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|家《いえ》を|治《おさ》めることも|心得《こころえ》ていない|人《ひと》が、どうして|神《かみ》の|教会《きょうかい》を|預《あづ》かることができようか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はまた、|信者《しんじゃ》になって|間《あいだ》もないものであってはならない。そうであると、|高慢《こうまん》になって、|悪魔《あくま》と|同《おな》じ|審判《しんぱん》を|受《う》けるかも|知《し》れない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]さらにまた、|教会外《きょうかいがい》の|人々《ひとびと》にもよく|思《おも》われている|人《ひと》でなければならない。そうでないと、そしりを|受《う》け、|悪魔《あくま》のわなにかかるであろう。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それと|同様《どうよう》に、|執事《しつじ》も|謹厳《きんげん》であって、|二枚舌《にまいじた》を|使《つか》わず、|大酒《おおざけ》を|飲《の》まず、|利《り》をむさぼらず、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]きよい|良心《りょうしん》をもって、|信仰《しんこう》の|奥義《おくぎ》を|保《たも》っていなければならない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはまず|調《しら》べられて、|不都合《ふつごう》なことがなかったなら、それから|執事《しつじ》の|職《しょく》につかすべきである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》たちも、|同様《どうよう》に|謹厳《きんげん》で、|他人《たにん》をそしらず、|自《みずか》らを|制《せい》し、すべてのことに|忠実《ちゅうじつ》でなければならない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|執事《しつじ》はひとりの|妻《つま》の|夫《おっと》であって、|子供《こども》と|自分《じぶん》の|家《いえ》とをよく|治《おさ》める|者《もの》でなければならない。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|執事《しつじ》の|職《しょく》をよくつとめた|者《もの》は、|良《よ》い|地位《ちい》を|得《え》、さらにキリスト・イエスを|信《しん》じる|信仰《しんこう》による、|大《おお》いなる|確信《かくしん》を|得《え》るであろう。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたの|所《ところ》にすぐ|行《い》きたいと|望《のぞ》みながら、この|手紙《てがみ》を|書《か》いている。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|万一《まんいち》わたしが遅れる|場合《ばあい》には、|神《かみ》の|家《いえ》でいかに|生活《せいかつ》すべきかを、あなたに|知《し》ってもらいたいからである。|神《かみ》の|家《いえ》というのは、|生《い》ける|神《かみ》の|教会《きょうかい》のことであって、それは|真理《しんり》の|柱《はしら》、|真理《しんり》の|基礎《きそ》なのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|確《たし》かに|偉大《いだい》なのは、この|信心《しんじん》の|奥義《おくぎ》である、 [#ここから2字下げ] 「キリストは|肉《にく》において|現《あらわ》れ、 |霊《れい》において|義《ぎ》とせられ、 |御使《みつかい》たちに|見《み》られ、 |諸《しょ》|国民《こくみん》の|間《あいだ》に|伝《つた》えられ、 |世界《せかい》の|中《なか》で|信《しん》じられ、 |栄光《えいこう》のうちに|天《てん》に|上《あ》げられた」。 [#ここで字下げ終わり] 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|御霊《みたま》は|明《あき》らかに|告《つ》げて|言《い》う。|後《のち》の|時《とき》になると、ある|人々《ひとびと》は、|惑《まど》わす|霊《れい》と|悪霊《あくりょう》の|教《おしえ》とに|気《き》をとられて、|信仰《しんこう》から|離《はな》れ|去《さ》るであろう。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それは、|良心《りょうしん》に|焼《や》き|印《いん》をおされている|偽《いつわ》り|者《もの》の|偽善《ぎぜん》のしわざである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]これらの|偽《いつわ》り|者《もの》どもは、|結婚《けっこん》を|禁《きん》じたり、|食物《しょくもつ》を|断《た》つことを|命《めい》じたりする。しかし|食物《しょくもつ》は、|信仰《しんこう》があり|真理《しんり》を|認《みと》める|者《もの》が、|感謝《かんしゃ》して|受《う》けるようにと、|神《かみ》の|造《つく》られたものである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|造《つく》られたものは、みな|良《よ》いものであって、|感謝《かんしゃ》して|受《う》けるなら、|何《なに》ひとつ|捨《す》てるべきものはない。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それらは、|神《かみ》の|言《ことば》と|祈《いのり》とによって、きよめられるからである。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]これらのことを|兄弟《きょうだい》たちに|教《おし》えるなら、あなたは、|信仰《しんこう》の|言葉《ことば》とあなたの|従《したが》ってきた|良《よ》い|教《おしえ》の|言葉《ことば》とに|養《やしな》われて、キリスト・イエスのよい|奉仕者《ほうししゃ》になるであろう。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|俗悪《ぞくあく》で|愚《ぐ》にもつかない|作《つく》り|話《ばなし》は|避《さ》けなさい。|信心《しんじん》のために|自分《じぶん》を|訓練《くんれん》しなさい。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]からだの|訓練《くんれん》は|少《すこ》しは|益《えき》するところがあるが、|信心《しんじん》は、|今《いま》のいのちと|後《のち》の|世《よ》のいのちとが|約束《やくそく》されてあるので、|万事《ばんじ》に|益《えき》となる。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]これは|確実《かくじつ》で、そのまま|受《う》けいれるに|足《た》る|言葉《ことば》である。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、このために|労《ろう》し|苦《くる》しんでいる。それは、すべての|人《ひと》の|救主《すくいぬし》、|特《とく》に|信《しん》じる|者《もの》たちの|救主《すくいぬし》なる|生《い》ける|神《かみ》に、|望《のぞ》みを|置《お》いてきたからである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]これらの|事《こと》を|命《めい》じ、また|教《おし》えなさい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、|年《とし》が|若《わか》いために|人《ひと》に|軽《かろ》んじられてはならない。むしろ、|言葉《ことば》にも、|行状《ぎょうじょう》にも、|愛《あい》にも、|信仰《しんこう》にも、|純潔《じゅんけつ》にも、|信者《しんじゃ》の|模範《もはん》になりなさい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしがそちらに|行《ゆ》く|時《とき》まで、|聖書《せいしょ》を|朗読《ろうどく》することと、|勧《すす》めをすることと、|教《おし》えることとに|心《こころ》を|用《もち》いなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|長老《ちょうろう》の|按手《あんしゅ》を|受《う》けた|時《とき》、|預言《よげん》によってあなたに|与《あた》えられて|内《うち》に|持《も》っている|恵《めぐ》みの|賜物《たまもの》を、|軽視《けいし》してはならない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すべての|事《こと》にあなたの|進歩《しんぽ》があらわれるため、これらの|事《こと》を|実行《じっこう》し、それを|励《はげ》みなさい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》のことと|教《おしえ》のこととに|気《き》をつけ、それらを|常《つね》に|努《つと》めなさい。そうすれば、あなたは、|自分《じぶん》|自身《じしん》とあなたの|教《おしえ》を|聞《き》く|者《もの》たちとを、|救《すく》うことになる。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|老人《ろうじん》をとがめてはいけない。むしろ|父親《ちちおや》に|対《たい》するように、|話《はな》してあげなさい。|若《わか》い|男《おとこ》には|兄弟《きょうだい》に|対《たい》するように、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|年《とし》とった|女《おんな》には|母親《ははおや》に|対《たい》するように、|若《わか》い|女《おんな》には、|真《しん》に|純潔《じゅんけつ》な|思《おも》いをもって、|姉妹《しまい》に|対《たい》するように、|勧告《かんこく》しなさい。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]やもめについては、|真《しん》にたよりのないやもめたちを、よくしてあげなさい。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]やもめに|子《こ》か|孫《まご》かがある|場合《ばあい》には、これらの|者《もの》に、まず|自分《じぶん》の|家《いえ》で|孝養《こうよう》をつくし、|親《おや》の|恩《おん》に|報《むく》いることを|学《まな》ばせるべきである。それが、|神《かみ》のみこころにかなうことなのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|真《しん》にたよりのない、ひとり|暮《ぐら》しのやもめは、|望《のぞ》みを|神《かみ》において、|日夜《にちや》、たえず|願《ねが》いと|祈《いのり》とに|専心《せんしん》するが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]これに|反《はん》して、みだらな|生活《せいかつ》をしているやもめは、|生《い》けるしかばねにすぎない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]これらのことを|命《めい》じて、|彼女《かのじょ》たちを|非難《ひなん》のない|者《もの》としなさい。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]もしある|人《ひと》が、その|親族《しんぞく》を、ことに|自分《じぶん》の|家族《かぞく》をかえりみない|場合《ばあい》には、その|信仰《しんこう》を|捨《す》てたことになるのであって、|不信者《ふしんじゃ》|以上《いじょう》にわるい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]やもめとして|登録《とうろく》さるべき|者《もの》は、六十|歳《さい》|以下《いか》のものではなくて、ひとりの|夫《おっと》の|妻《つま》であった|者《もの》、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]また|子女《しじょ》をよく|養育《よういく》し、|旅人《たびびと》をもてなし、|聖徒《せいと》の|足《あし》を|洗《あら》い、|困《こま》っている|人《ひと》を|助《たす》け、|種々《しゅじゅ》の|善行《ぜんこう》に|努《つと》めるなど、そのよいわざでひろく|認《みと》められている|者《もの》でなければならない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|若《わか》いやもめは|除《じょ》|外《がい》すべきである。|彼女《かのじょ》たちがキリストにそむいて|気《き》ままになると、|結婚《けっこん》をしたがるようになり、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|初《はじ》めの|誓《ちか》いを|無視《むし》したという|非難《ひなん》を|受《う》けねばならないからである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]その|上《うえ》、|彼女《かのじょ》たちはなまけていて、|家々《いえいえ》を|遊《あそ》び|歩《ある》くことをおぼえ、なまけるばかりか、むだごとをしゃべって、いたずらに|動《うご》きまわり、|口《くち》にしてはならないことを|言《い》う。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そういうわけだから、|若《わか》いやもめは|結婚《けっこん》して|子《こ》を|産《う》み、|家《いえ》をおさめ、そして、|反対者《はんたいしゃ》にそしられるすきを|作《つく》らないようにしてほしい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》たちのうちには、サタンのあとを|追《お》って|道《みち》を|踏《ふ》みはずした|者《もの》もある。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》の|信者《しんじゃ》が|家《いえ》にやもめを|持《も》っている|場合《ばあい》には、|自分《じぶん》でそのやもめの|世話《せわ》をしてあげなさい。|教会《きょうかい》のやっかいになってはいけない。|教会《きょうかい》は、|真《しん》にたよりのないやもめの|世話《せわ》をしなければならない。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]よい|指導《しどう》をしている|長老《ちょうろう》、|特《とく》に|宣教《せんきょう》と|教《おしえ》とのために|労《ろう》している|長老《ちょうろう》は、二|倍《ばい》の|尊敬《そんけい》を|受《う》けるにふさわしい|者《もの》である。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》は、「|穀物《こくもつ》をこなしている|牛《うし》に、くつこをかけてはならない」また「|働《はたら》き|人《びと》がその|報酬《ほうしゅう》を|受《う》けるのは|当然《とうぜん》である」と|言《い》っている。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|長老《ちょうろう》に|対《たい》する|訴訟《そしょう》は、ふたりか三|人《にん》の|証人《しょうにん》がない|場合《ばあい》には、|受理《じゅり》してはならない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|罪《つみ》を|犯《おか》した|者《もの》に|対《たい》しては、ほかの|人々《ひとびと》も|恐《おそ》れをいだくに|至《いた》るために、すべての|人《ひと》の|前《まえ》でその|罪《つみ》をとがむべきである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|神《かみ》とキリスト・イエスと|選《えら》ばれた|御使《みつかい》たちとの|前《まえ》で、おごそかにあなたに|命《めい》じる。これらのことを|偏見《へんけん》なしに|守《まも》り、|何事《なにごと》についても、|不《ふ》|公平《こうへい》な|仕方《しかた》をしてはならない。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|軽々《かるがる》しく|人《ひと》に|手《て》をおいてはならない。また、ほかの|人《ひと》の|罪《つみ》に|加《くわ》わってはいけない。|自分《じぶん》をきよく|守《まも》りなさい。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり](これからは、|水《みず》ばかりを|飲《の》まないで、|胃《い》のため、また、たびたびのいたみを|和《やわ》らげるために、|少量《しょうりょう》のぶどう|酒《しゅ》を|用《もち》いなさい。)[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ある|人《ひと》の|罪《つみ》は|明白《めいはく》であって、すぐ|裁判《さいばん》にかけられるが、ほかの|人《ひと》の|罪《つみ》は、あとになってわかって|来《く》る。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]それと|同《おな》じく、|良《よ》いわざもすぐ|明《あき》らかになり、そうならない|場合《ばあい》でも、|隠《かく》れていることはあり|得《え》ない。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]くびきの|下《した》にある|奴隷《どれい》はすべて、|自分《じぶん》の|主人《しゅじん》を、|真《しん》に|尊敬《そんけい》すべき|者《もの》として|仰《あお》ぐべきである。それは、|神《かみ》の|御名《みな》と|教《おしえ》とが、そしりを|受《う》けないためである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|信者《しんじゃ》である|主人《しゅじん》を|持《も》っている|者《もの》たちは、その|主人《しゅじん》が|兄弟《きょうだい》であるというので|軽視《けいし》してはならない。むしろ、ますます|励《はげ》んで|仕《つか》えるべきである。その|益《えき》を|受《う》ける|主人《しゅじん》は、|信者《しんじゃ》であり|愛《あい》されている|人《ひと》だからである。  あなたは、これらの|事《こと》を|教《おし》えかつ|勧《すす》めなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]もし|違《ちが》ったことを|教《おし》えて、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|健全《けんぜん》な|言葉《ことば》、ならびに|信心《しんじん》にかなう|教《おしえ》に|同意《どうい》しないような|者《もの》があれば、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|高慢《こうまん》であって、|何《なに》も|知《し》らず、ただ|論議《ろんぎ》と|言葉《ことば》の|争《あらそ》いとに|病《やまい》みついている|者《もの》である。そこから、ねたみ、|争《あらそ》い、そしり、さいぎの|心《こころ》が|生《しょう》じ、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また|知性《ちせい》が|腐《くさ》って、|真理《しんり》にそむき、|信心《しんじん》を|利得《りとく》と|心《こころ》|得《え》る|者《もの》どもの|間《あいだ》に、はてしのないいがみ|合《あ》いが|起《おこ》るのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|信心《しんじん》があって|足《た》ることを|知《し》るのは、|大《おお》きな|利得《りとく》である。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|何《なに》ひとつ|持《も》たないでこの|世《よ》にきた。また、|何《なに》ひとつ|持《も》たないでこの|世《よ》を|去《さ》って|行《い》く。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ただ|衣食《いしょく》があれば、それで|足《た》れりとすべきである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|富《と》むことを|願《ねが》い|求《もと》める|者《もの》は、|誘惑《ゆうわく》と、わなとに|陥《おちい》り、また、|人《ひと》を|滅《ほろ》びと|破壊《はかい》とに|沈《しず》ませる、|無分別《むふんべつ》な|恐《おそ》ろしいさまざまの|情欲《じょうよく》に|陥《おちい》るのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|金銭《きんせん》を|愛《あい》することは、すべての|悪《あく》の|根《ね》である。ある|人々《ひとびと》は|欲《よく》ばって|金銭《きんせん》を|求《もと》めたため、|信仰《しんこう》から|迷《まよ》い|出《で》て、|多《おお》くの|苦痛《くつう》をもって|自分《じぶん》|自身《じしん》を|刺《さ》しとおした。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|神《かみ》の|人《ひと》よ。あなたはこれらの|事《こと》を|避《さ》けなさい。そして、|義《ぎ》と|信心《しんじん》と|信仰《しんこう》と|愛《あい》と|忍耐《にんたい》と|柔和《にゅうわ》とを|追《お》い|求《もと》めなさい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》の|戦《たたか》いをりっぱに|戦《たたか》いぬいて、|永遠《えいえん》のいのちを|獲得《かくとく》しなさい。あなたは、そのために|召《め》され、|多《おお》くの|証人《しょうにん》の|前《まえ》で、りっぱなあかしをしたのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしはすべてのものを|生《い》かして|下《くだ》さる|神《かみ》のみまえと、またポンテオ・ピラトの|面前《めんぜん》でりっぱなあかしをなさったキリスト・イエスのみまえで、あなたに|命《めい》じる。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|出現《しゅつげん》まで、その|戒《いまし》めを|汚《けが》すことがなく、また、それを|非難《ひなん》のないように|守《まも》りなさい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|時《とき》がくれば、|祝福《しゅくふく》に|満《み》ちた、ただひとりの|力《ちから》あるかた、もろもろの|王《おう》の|王《おう》、もろもろの|主《しゅ》の|主《しゅ》が、キリストを|出現《しゅつげん》させて|下《くだ》さるであろう。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はただひとり|不《ふ》|死《し》を|保《たも》ち、|近《ちか》づきがたい|光《ひかり》の|中《なか》に|住《す》み、|人間《にんげん》の|中《なか》でだれも|見《み》た|者《もの》がなく、|見《み》ることもできないかたである。ほまれと|永遠《えいえん》の|支配《しはい》とが、|神《かみ》にあるように、アァメン。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]この|世《よ》で|富《と》んでいる|者《もの》たちに、|命《めい》じなさい。|高慢《こうまん》にならず、たよりにならない|富《とみ》に|望《のぞ》みをおかず、むしろ、わたしたちにすべての|物《もの》を|豊《ゆた》かに|備《そな》えて|楽《たの》しませて|下《くだ》さる|神《かみ》に、のぞみをおくように、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]また、|良《よ》い|行《おこな》いをし、|良《よ》いわざに|富《とみ》み、|惜《お》しみなく|施《ほどこ》し、|人《ひと》に|分《わ》け|与《あた》えることを|喜《よろこ》び、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|真《しん》のいのちを|得《え》るために、|未来《みらい》に|備《そな》えてよい|土台《どだい》を|自分《じぶん》のために|築《きず》き|上《あ》げるように、|命《めい》じなさい。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]テモテよ。あなたにゆだねられていることを|守《まも》りなさい。そして、|俗悪《ぞくあく》なむだ|話《はなし》と、|偽《いつわ》りの「|知識《ちしき》」による|反対《はんたい》|論《ろん》とを|避《さ》けなさい。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]ある|人々《ひとびと》はそれに|熱中《ねっちゅう》して、|信仰《しんこう》からそれてしまったのである。  |恵《めぐ》みが、あなたがたと|共《とも》にあるように。 [#改ページ] テモテヘの第二の手紙[#「テモテヘの第二の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|御旨《みむね》により、キリスト・イエスにあるいのちの|約束《やくそく》によって|立《た》てられたキリスト・イエスの|使徒《しと》パウロから、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|子《こ》テモテへ。  |父《ちち》なる|神《かみ》とわたしたちの|主《しゅ》キリスト・イエスから、|恵《めぐ》みとあわれみと|平安《へいあん》とが、あなたにあるように。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|日夜《にちや》、|祈《いのり》の|中《なか》で、|絶《た》えずあなたのことを|思《おも》い|出《だ》しては、きよい|良心《りょうしん》をもって|先祖《せんぞ》|以来《いらい》つかえている|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》している。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたの|涙《なみだ》をおぼえており、あなたに|会《あ》って|喜《よろこ》びで|満《み》たされたいと、|切《せつ》に|願《ねが》っている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また、あなたがいだいている|偽《いつわ》りのない|信仰《しんこう》を|思《おも》い|起《おこ》している。この|信仰《しんこう》は、まずあなたの|祖母《そぼ》ロイスとあなたの|母《はは》ユニケとに|宿《やど》ったものであったが、|今《いま》あなたにも|宿《やど》っていると、わたしは|確信《かくしん》している。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、あなたに|注意《ちゅうい》したい。わたしの|按手《あんしゅ》によって|内《うち》にいただいた|神《かみ》の|賜物《たまもの》を、|再《ふたた》び|燃《も》えたたせなさい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|神《かみ》がわたしたちに|下《くだ》さったのは、|臆《おく》する|霊《れい》ではなく、|力《ちから》と|愛《あい》と|慎《つつし》みとの|霊《れい》なのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたは、わたしたちの|主《しゅ》のあかしをすることや、わたしが|主《しゅ》の|囚人《しゅうじん》であることを、|決《けっ》して|恥《は》ずかしく|思《おも》ってはならない。むしろ、|神《かみ》の|力《ちから》にささえられて、|福音《ふくいん》のために、わたしと|苦《くる》しみを|共《とも》にしてほしい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はわたしたちを|救《すく》い、|聖《せい》なる|招《まね》きをもって|召《め》して|下《くだ》さったのであるが、それは、わたしたちのわざによるのではなく、|神《かみ》ご|自身《じしん》の|計画《けいかく》に|基《もとづ》き、また、|永遠《えいえん》の|昔《むかし》にキリスト・イエスにあってわたしたちに|賜《たま》わっていた|恵《めぐ》み、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そして|今《いま》や、わたしたちの|救主《すくいぬし》キリスト・イエスの|出現《しゅつげん》によって|明《あき》らかにされた|恵《めぐ》みによるのである。キリストは|死《し》を|滅《ほろ》ぼし、|福音《ふくいん》によっていのちと|不《ふ》|死《し》とを|明《あき》らかに|示《しめ》されたのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、この|福音《ふくいん》のために|立《た》てられて、その|宣教者《せんきょうしゃ》、|使徒《しと》、|教師《きょうし》になった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そのためにまた、わたしはこのような|苦《くる》しみを|受《う》けているが、それを|恥《はじ》としない。なぜなら、わたしは|自分《じぶん》の|信《しん》じてきたかたを|知《し》っており、またそのかたは、わたしにゆだねられているものを、かの|日《ひ》に|至《いた》るまで|守《まも》って|下《くだ》さることができると、|確信《かくしん》しているからである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、キリスト・イエスに|対《たい》する|信仰《しんこう》と|愛《あい》とをもって、わたしから|聞《き》いた|健全《けんぜん》な|言葉《ことば》を|模範《もはん》にしなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたにゆだねられている|尊《たっと》いものを、わたしたちの|内《うち》に|宿《やど》っている|聖霊《せいれい》によって|守《まも》りなさい。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|知《し》っているように、アジヤにいる|者《もの》たちは、|皆《みな》わたしから|離《はな》れて|行《い》った。その|中《なか》には、フゲロとヘルモゲネもいる。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|主《しゅ》が、オネシポロの|家《いえ》にあわれみをたれて|下《くだ》さるように。|彼《かれ》はたびたび、わたしを|慰《なぐさ》めてくれ、またわたしの|鎖《くさり》を|恥《はじ》とも|思《おも》わないで、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]ローマに|着《つ》いた|時《とき》には、|熱心《ねっしん》にわたしを|捜《さが》しまわった|末《すえ》、|尋《たず》ね|出《だ》してくれたのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|主《しゅ》がかの|日《ひ》に、あわれみを|彼《かれ》に|賜《たま》わるように。――|彼《かれ》がエペソで、どれほどわたしに|仕《つか》えてくれたかは、だれよりもあなたがよく|知《し》っている。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしの|子《こ》よ。あなたはキリスト・イエスにある|恵《めぐ》みによって、|強《つよ》くなりなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして、あなたが|多《おお》くの|証人《しょうにん》の|前《まえ》でわたしから|聞《き》いたことを、さらにほかの|者《もの》たちにも|教《おし》えることのできるような|忠実《ちゅうじつ》な|人々《ひとびと》に、ゆだねなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスの|良《よ》い|兵卒《へいそつ》として、わたしと|苦《くる》しみを|共《とも》にしてほしい。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|兵《へい》|役《えき》に|服《ふく》している|者《もの》は、|日常《にちじょう》|生活《せいかつ》の|事《こと》に|煩《わずら》わされてはいない。ただ、|兵《へい》を|募《つの》った|司令官《しれいかん》を|喜《よろこ》ばせようと|努《つと》める。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また、|競技《きょうぎ》をするにしても、|規定《きてい》に|従《したが》って|競技《きょうぎ》をしなければ、|栄冠《えいかん》は|得《え》られない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|労苦《ろうく》をする|農夫《のうふ》が、だれよりも|先《さき》に、|生産物《せいさんぶつ》の|分配《ぶんぱい》にあずかるべきである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|言《い》うことを、よく|考《かんが》えてみなさい。|主《しゅ》は、それを|十分《じゅうぶん》に|理解《りかい》する|力《ちから》をあなたに|賜《たま》わるであろう。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ダビデの|子孫《しそん》として|生《うま》れ、|死人《しにん》のうちからよみがえったイエス・キリストを、いつも|思《おも》っていなさい。これがわたしの|福音《ふくいん》である。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]この|福音《ふくいん》のために、わたしは|悪者《わるもの》のように|苦《くる》しめられ、ついに|鎖《くさり》につながれるに|至《いた》った。しかし、|神《かみ》の|言《ことば》はつながれてはいない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それだから、わたしは|選《えら》ばれた|人《ひと》たちのために、いっさいのことを|耐《た》え|忍《しの》ぶのである。それは、|彼《かれ》らもキリスト・イエスによる|救《すくい》を|受《う》け、また、それと|共《とも》に|永遠《えいえん》の|栄光《えいこう》を|受《う》けるためである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|次《つぎ》の|言葉《ことば》は|確実《かくじつ》である。「もしわたしたちが、|彼《かれ》と|共《とも》に|死《し》んだなら、また|彼《かれ》と|共《とも》に|生《い》きるであろう。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]もし|耐《た》え|忍《しの》ぶなら、|彼《かれ》と|共《とも》に|支配者《しはいしゃ》となるであろう。もし|彼《かれ》を|否《いな》むなら、|彼《かれ》もわたしたちを|否《いな》むであろう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]たとい、わたしたちは|不《ふ》|真実《しんじつ》であっても、|彼《かれ》は|常《つね》に|真実《しんじつ》である。|彼《かれ》は|自分《じぶん》を|偽《いつわ》ることが、できないのである」。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、これらのことを|彼《かれ》らに|思《おも》い|出《だ》させて、なんの|益《えき》もなく、|聞《き》いている|人々《ひとびと》を|破滅《はめつ》におとしいれるだけである|言葉《ことば》の|争《あらそ》いをしないように、|神《かみ》のみまえでおごそかに|命《めい》じなさい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたは|真理《しんり》の|言葉《ことば》を|正《ただ》しく|教《おし》え、|恥《は》じるところのない|錬達《れんたつ》した|働《はたら》き|人《びと》になって、|神《かみ》に|自分《じぶん》をささげるように|努《つと》めはげみなさい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|俗悪《ぞくあく》なむだ|話《はなし》を|避《さ》けなさい。それによって|人々《ひとびと》は、ますます|不信心《ふしんじん》に|落《お》ちていき、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|言葉《ことば》は、がんのように|腐《くさ》れひろがるであろう。その|中《なか》にはヒメナオとピレトとがいる。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|真理《しんり》からはずれ、|復活《ふっかつ》はすでに|済《す》んでしまったと|言《い》い、そして、ある|人々《ひとびと》の|信仰《しんこう》をくつがえしている。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|神《かみ》のゆるがない|土台《どだい》はすえられていて、それに|次《つぎ》の|句《く》が|証印《しょういん》として、しるされている。「|主《しゅ》は|自分《じぶん》の|者《もの》たちを|知《し》る」。また「|主《しゅ》の|名《な》を|呼《よ》ぶ|者《もの》は、すべて|不義《ふぎ》から|離《はな》れよ」。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|大《おお》きな|家《いえ》には、|金《きん》や|銀《ぎん》の|器《うつわ》ばかりではなく、|木《き》や|土《つち》の|器《うつわ》もあり、そして、あるものは|尊《たっと》いことに|用《もち》いられ、あるものは|卑《いや》しいことに|用《もち》いられる。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]もし|人《ひと》が|卑《いや》しいものを|取《と》り|去《さ》って|自分《じぶん》をきよめるなら、|彼《かれ》は|尊《たっと》いきよめられた|器《うつわ》となって、|主人《しゅじん》に|役立《やくだ》つものとなり、すべての|良《よ》いわざに|間《あいだ》に|合《あ》うようになる。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたは|若《わか》い|時《とき》の|情欲《じょうよく》を|避《さ》けなさい。そして、きよい|心《こころ》をもって|主《しゅ》を|呼《よ》び|求《もと》める|人々《ひとびと》と|共《とも》に、|義《ぎ》と|信仰《しんこう》と|愛《あい》と|平和《へいわ》とを|追《お》い|求《もと》めなさい。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|愚《おろ》かで|無知《むち》な|論議《ろんぎ》をやめなさい。それは、あなたが|知《し》っているとおり、ただ|争《あらそ》いに|終《おわ》るだけである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》の|僕《しもべ》たる|者《もの》は|争《あらそ》ってはならない。だれに|対《たい》しても|親切《しんせつ》であって、よく|教《おし》え、よく|忍《しの》び、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|反対《はんたい》する|者《もの》を|柔和《にゅうわ》な|心《こころ》で|教《おし》え|導《みちび》くべきである。おそらく|神《かみ》は、|彼《かれ》らに|悔改《くいあらた》めの|心《こころ》を|与《あた》えて、|真理《しんり》を|知《し》らせ、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]一|度《ど》は|悪魔《あくま》に|捕《とら》えられてその|欲《ほっ》するままになっていても、|目《め》ざめて|彼《かれ》のわなからのがれさせて|下《くだ》さるであろう。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、このことは|知《し》っておかねばならない。|終《おわ》りの|時《とき》には、|苦難《くなん》の|時代《じだい》が|来《く》る。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、|人々《ひとびと》は|自分《じぶん》を|愛《あい》する|者《もの》、|金《かね》を|愛《あい》する|者《もの》、|大言壮語《たいげんそうご》する|者《もの》、|高慢《こうまん》な|者《もの》、|神《かみ》をそしる|者《もの》、|親《おや》に|逆《さか》らう|者《もの》、|恩《おん》を|知《し》らぬ|者《もの》、|神聖《しんせい》を|汚《けが》す|者《もの》、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|無情《むじょう》な|者《もの》、|融和《ゆうわ》しない|者《もの》、そしる|者《もの》、|無《む》|節制《せっせい》な|者《もの》、|粗暴《そぼう》な|者《もの》、|善《ぜん》を|好《この》まない|者《もの》、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|裏切《うらぎ》り|者《もの》、|乱暴《らんぼう》|者《もの》、|高言《こうげん》をする|者《もの》、|神《かみ》よりも|快楽《かいらく》を|愛《あい》する|者《もの》、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|信心《しんじん》|深《ぶか》い|様子《ようす》をしながらその|実《じつ》を|捨《す》てる|者《もの》となるであろう。こうした|人々《ひとびと》を|避《さ》けなさい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|中《なか》には、|人《ひと》の|家《いえ》にもぐり|込《こ》み、そして、さまざまの|欲《よく》に|心《こころ》を|奪《うば》われて、|多《おお》くの|罪《つみ》を|積《つ》み|重《かさ》ねている|愚《おろ》かな|女《おんな》どもを、とりこにしている|者《もの》がある。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》たちは、|常《つね》に|学《まな》んではいるが、いつになっても|真理《しんり》の|知識《ちしき》に|達《たっ》することができない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ちょうど、ヤンネとヤンブレとがモーセに|逆《さか》らったように、こうした|人々《ひとびと》も|真理《しんり》に|逆《さか》らうのである。|彼《かれ》らは|知性《ちせい》の|腐《くさ》った、|信仰《しんこう》の|失格者《しっかくしゃ》である。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》らはそのまま|進《すす》んでいけるはずがない。|彼《かれ》らの|愚《おろ》かさは、あのふたりの|場合《ばあい》と|同《おな》じように、|多《おお》くの|人《ひと》に|知《し》れて|来《く》るであろう。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]しかしあなたは、わたしの|教《おしえ》、|歩《あゆ》み、こころざし、|信仰《しんこう》、|寛容《かんよう》、|愛《あい》、|忍耐《にんたい》、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]それから、わたしがアンテオケ、イコニオム、ルステラで|受《う》けた|数々《かずかず》の|迫害《はくがい》、|苦難《くなん》に、よくも|続《つづ》いてきてくれた。そのひどい|迫害《はくがい》にわたしは|耐《た》えてきたが、|主《しゅ》はそれらいっさいのことから、|救《すく》い|出《だ》して|下《くだ》さったのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]いったい、キリスト・イエスにあって|信心《しんじん》|深《ぶか》く|生《い》きようとする|者《もの》は、みな、|迫害《はくがい》を|受《う》ける。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|悪人《あくにん》と|詐欺《さぎ》|師《し》とは|人《ひと》を|惑《まど》わし|人《ひと》に|惑《まど》わされて、|悪《あく》から|悪《あく》へと|落《お》ちていく。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたは、|自分《じぶん》が|学《まな》んで|確信《かくしん》しているところに、いつもとどまっていなさい。あなたは、それをだれから|学《まな》んだか|知《し》っており、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]また|幼《おさな》い|時《とき》から、|聖書《せいしょ》に|親《した》しみ、それが、キリスト・イエスに|対《たい》する|信仰《しんこう》によって|救《すくい》に|至《いた》る|知恵《ちえ》を、あなたに|与《あた》えうる|書物《しょもつ》であることを|知《し》っている。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》は、すべて|神《かみ》の|霊《れい》|感《かん》を|受《う》けて|書《か》かれたものであって、|人《ひと》を|教《おし》え、|戒《いまし》め、|正《ただ》しくし、|義《ぎ》に|導《みちび》くのに|有益《ゆうえき》である。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それによって、|神《かみ》の|人《ひと》が、あらゆる|良《よ》いわざに|対《たい》して|十分《じゅうぶん》な|準備《じゅんび》ができて、|完全《かんぜん》にととのえられた|者《もの》になるのである。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》のみまえと、|生《い》きている|者《もの》と|死《し》んだ|者《もの》とをさばくべきキリスト・イエスのみまえで、キリストの|出現《しゅつげん》とその|御国《みくに》とを|思《おも》い、おごそかに|命《めい》じる。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|御言《みことば》を|宣《の》べ|伝《つた》えなさい。|時《とき》が|良《よ》くても|悪《わる》くても、それを|励《はげ》み、あくまでも|寛容《かんよう》な|心《こころ》でよく|教《おし》えて、|責《せ》め、|戒《いまし》め、|勧《すす》めなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》が|健全《けんぜん》な|教《おしえ》に|耐《た》えられなくなり、|耳《みみ》ざわりのよい|話《はなし》をしてもらおうとして、|自分《じぶん》|勝手《かって》な|好《この》みにまかせて|教師《きょうし》たちを|寄《よ》せ|集《あつ》め、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そして、|真理《しんり》からは|耳《みみ》をそむけて、|作《つく》り|話《ばなし》の|方《ほう》にそれていく|時《とき》が|来《く》るであろう。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたは、|何事《なにごと》にも|慎《つつし》み、|苦難《くなん》を|忍《しの》び、|伝道者《でんどうしゃ》のわざをなし、|自分《じぶん》の|務《つとめ》を|全《まっと》うしなさい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、すでに|自身《じしん》を|犠牲《ぎせい》としてささげている。わたしが|世《よ》を|去《さ》るべき|時《とき》はきた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|戦《たたか》いをりっぱに|戦《たたか》いぬき、|走《はし》るべき|行程《こうてい》を|走《はし》りつくし、|信仰《しんこう》を|守《まも》りとおした。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》や、|義《ぎ》の|冠《かんむり》がわたしを|待《ま》っているばかりである。かの|日《ひ》には、|公平《こうへい》な|審判者《しんぱんしゃ》である|主《しゅ》が、それを|授《さづ》けて|下《くだ》さるであろう。わたしばかりではなく、|主《しゅ》の|出現《しゅつげん》を|心《こころ》から|待《ま》ち|望《のぞ》んでいたすべての|人《ひと》にも|授《さづ》けて|下《くだ》さるであろう。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|所《ところ》に、|急《いそ》いで|早《はや》くきてほしい。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]デマスはこの|世《よ》を|愛《あい》し、わたしを|捨《す》ててテサロニケに|行《い》ってしまい、クレスケンスはガラテヤに、テトスはダルマテヤに|行《い》った。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]ただルカだけが、わたしのもとにいる。マルコを|連《つ》れて、|一緒《いっしょ》にきなさい。|彼《かれ》はわたしの|務《つとめ》のために|役《やく》に|立《た》つから。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしはテキコをエペソにつかわした。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたが|来《く》るときに、トロアスのカルポの|所《ところ》に|残《のこ》しておいた|上着《うわぎ》を|持《も》ってきてほしい。また|書物《しょもつ》も、|特《とく》に、|羊皮紙《ようひし》のを|持《も》ってきてもらいたい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|銅細工人《どうざいくにん》のアレキサンデルが、わたしを|大《おお》いに|苦《くる》しめた。|主《しゅ》はそのしわざに|対《たい》して、|彼《かれ》に|報《むく》いなさるだろう。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたも、|彼《かれ》を|警戒《けいかい》しなさい。|彼《かれ》は、わたしたちの|言《い》うことに|強《つよ》く|反対《はんたい》したのだから。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|第《だい》一|回《かい》の|弁明《べんめい》の|際《さい》には、わたしに|味方《みかた》をする|者《もの》はひとりもなく、みなわたしを|捨《す》てて|行《い》った。どうか、|彼《かれ》らが、そのために|責《せ》められることがないように。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしが|御言《みことば》を余すところなく|宣《の》べ|伝《つた》えて、すべての|異邦人《いほうじん》に|聞《き》かせるように、|主《しゅ》はわたしを|助《たす》け、|力《ちから》づけて|下《くだ》さった。そして、わたしは、ししの|口《くち》から|救《すく》い|出《だ》されたのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》はわたしを、すべての|悪《あく》のわざから|助《たす》け|出《だ》し、|天《てん》にある|御国《みくに》に|救《すく》い|入《い》れて|下《くだ》さるであろう。|栄光《えいこう》が|永遠《えいえん》から|永遠《えいえん》にわたって|主《しゅ》にあるように、アァメン。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]プリスカとアクラとに、またオネシポロの|家《いえ》に、よろしく|伝《つた》えてほしい。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]エラストはコリントにとどまっており、トロピモは|病気《びょうき》なので、ミレトに|残《のこ》してきた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|冬《ふゆ》になる|前《まえ》に、|急《いそ》いできてほしい。ユブロ、プデス、リノス、クラウデヤならびにすべての|兄弟《きょうだい》たちから、あなたによろしく。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》が、あなたの|霊《れい》と|共《とも》にいますように。|恵《めぐ》みが、あなたがたと|共《とも》にあるように。 [#改ページ] テトスヘの手紙[#「テトスヘの手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|僕《しもべ》、イエス・キリストの|使徒《しと》パウロから――わたしが|使徒《しと》とされたのは、|神《かみ》に|選《えら》ばれた|者《もの》たちの|信仰《しんこう》を|強《つよ》め、また、|信心《しんじん》にかなう|真理《しんり》の|知識《ちしき》を|彼《かれ》らに|得《え》させるためであり、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|偽《いつわ》りのない|神《かみ》が|永遠《えいえん》の|昔《むかし》に|約束《やくそく》された|永遠《えいえん》のいのちの|望《のぞ》みに|基《もとづ》くのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、|定《さだ》められた|時《とき》に|及《およ》んで、|御言《みことば》を|宣教《せんきょう》によって|明《あき》らかにされたが、わたしは、わたしたちの|救主《すくいぬし》なる|神《かみ》の|任命《にんめい》によって、この|宣教《せんきょう》をゆだねられたのである――[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》を|同《おな》じうするわたしの|真実《しんじつ》の|子《こ》テトスへ。  |父《ちち》なる|神《かみ》とわたしたちの|救主《すくいぬし》キリスト・イエスから、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたにあるように。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたをクレテにおいてきたのは、わたしがあなたに|命《めい》じておいたように、そこにし|残《のこ》してあることを|整理《せいり》してもらい、また、|町々《まちまち》に|長老《ちょうろう》を|立《た》ててもらうためにほかならない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|長老《ちょうろう》は、|責《せ》められる|点《てん》がなく、ひとりの|妻《つま》の|夫《おっと》であって、その|子《こ》たちも|不品行《ふひんこう》のうわさをたてられず、|親不孝《おやふこう》をしない|信者《しんじゃ》でなくてはならない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|監督《かんとく》たる|者《もの》は、|神《かみ》に|仕《つか》える|者《もの》として、|責《せ》められる|点《てん》がなく、わがままでなく、|軽々《かるがる》しく|怒《いか》らず、|酒《さけ》を|好《この》まず、|乱暴《らんぼう》でなく、|利《り》をむさぼらず、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]かえって、|旅人《たびびと》をもてなし、|善《ぜん》を|愛《あい》し、|慎《つつし》み|深《ふか》く、|正《ただ》しく、|信仰《しんこう》|深《ぶか》く、|自《じ》|制《せい》する|者《もの》であり、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|教《おしえ》にかなった|信頼《しんらい》すべき|言葉《ことば》を|守《まも》る|人《ひと》でなければならない。それは、|彼《かれ》が|健全《けんぜん》な|教《おしえ》によって|人《ひと》をさとし、また、|反対者《はんたいしゃ》の|誤《あやま》りを|指摘《してき》することができるためである。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|実《じつ》は、|法《ほう》に|服《ふく》さない|者《もの》、|空論《くうろん》に|走《はし》る|者《もの》、|人《ひと》の|心《こころ》を|惑《まど》わす|者《もの》が|多《おお》くおり、とくに、|割礼《かつれい》のある|者《もの》の|中《なか》に|多《おお》い。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|口《くち》を|封《ふう》ずべきである。|彼《かれ》らは|恥《は》ずべき|利《り》のために、|教《おし》えてはならないことを|教《おし》えて、|数々《かずかず》の|家庭《かてい》を|破壊《はかい》してしまっている。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]クレテ|人《びと》のうちのある|預言者《よげんしゃ》が [#ここから2字下げ] 「クレテ|人《びと》は、いつもうそつき、 たちの|悪《わる》いけもの、 なまけ|者《もの》の|食《く》いしんぼう」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》っているが、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]この|非難《ひなん》はあたっている。だから、|彼《かれ》らをきびしく|責《せ》めて、その|信仰《しんこう》を|健全《けんぜん》なものにし、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ユダヤ|人《じん》の|作《つく》り|話《ばなし》や、|真理《しんり》からそれていった|人々《ひとびと》の|定《さだ》めなどに、|気《き》をとられることがないようにさせなさい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]きよい|人《ひと》には、すべてのものがきよい。しかし、|汚《けが》れている|不《ふ》|信仰《しんこう》な|人《ひと》には、きよいものは一つもなく、その|知性《ちせい》も|良心《りょうしん》も|汚《けが》れてしまっている。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|神《かみ》を|知《し》っていると、|口《くち》では|言《い》うが、|行《おこな》いではそれを|否定《ひてい》している。|彼《かれ》らは|忌《い》まわしい|者《もの》、また|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》な|者《もの》であって、いっさいの|良《よ》いわざに|関《かん》しては、|失格者《しっかくしゃ》である。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたは、|健全《けんぜん》な|教《おしえ》にかなうことを|語《かた》りなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|老人《ろうじん》たちには|自《みずか》らを|制《せい》し、|謹厳《きんげん》で、|慎《つつし》み|深《ふか》くし、また、|信仰《しんこう》と|愛《あい》と|忍耐《にんたい》とにおいて|健全《けんぜん》であるように|勧《すす》め、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|年老《としお》いた|女《おんな》たちにも、|同《おな》じように、たち|居《い》ふるまいをうやうやしくし、|人《ひと》をそしったり|大酒《たいしゅ》の|奴隷《どれい》になったりせず、|良《よ》いことを|教《おし》える|者《もの》となるように、|勧《すす》めなさい。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そうすれば、|彼女《かのじょ》たちは、|若《わか》い|女《おんな》たちに、|夫《おっと》を|愛《あい》し、|子供《こども》を|愛《あい》し、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|慎《つつし》み|深《ふか》く、|純潔《じゅんけつ》で、|家事《かじ》に|努《つと》め、|善良《ぜんりょう》で、|自分《じぶん》の|夫《おっと》に|従順《じゅうじゅん》であるように|教《おし》えることになり、したがって、|神《かみ》の|言《ことば》がそしりを|受《う》けないようになるであろう。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|若《わか》い|男《おとこ》にも、|同《おな》じく、|万事《ばんじ》につけ|慎《つつし》み|深《ぶか》くあるように、|勧《すす》めなさい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなた|自身《じしん》を|良《よ》いわざの|模範《もはん》として|示《しめ》し、|人《ひと》を|教《おし》える|場合《ばあい》には、|清廉《せいれん》と|謹厳《きんげん》とをもってし、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|非難《ひなん》のない|健全《けんぜん》な|言葉《ことば》を|用《もち》いなさい。そうすれば、|反対者《はんたいしゃ》も、わたしたちについてなんの|悪口《あっこう》も|言《い》えなくなり、|自《みずか》ら|恥《は》じいるであろう。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|奴隷《どれい》には、|万事《ばんじ》につけその|主人《しゅじん》に|服従《ふくじゅう》して、|喜《よろこ》ばれるようになり、|反抗《はんこう》をせず、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|盗《ぬす》みをせず、どこまでも|心《こころ》をこめた|真実《しんじつ》を|示《しめ》すようにと、|勧《すす》めなさい。そうすれば、|彼《かれ》らは|万事《ばんじ》につけ、わたしたちの|救主《すくいぬし》なる|神《かみ》の|教《おしえ》を|飾《かざ》ることになろう。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]すべての|人《ひと》を|救《すく》う|神《かみ》の|恵《めぐ》みが|現《あらわ》れた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そして、わたしたちを|導《みちび》き、|不信心《ふしんじん》とこの|世《よ》の|情欲《じょうよく》とを|捨《す》てて、|慎《つつし》み|深《ぶか》く、|正《ただ》しく、|信心《しんじん》|深《ぶか》くこの|世《よ》で|生活《せいかつ》し、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|祝福《しゅくふく》に|満《み》ちた|望《のぞ》み、すなわち、|大《おお》いなる|神《かみ》、わたしたちの|救主《すくいぬし》キリスト・イエスの|栄光《えいこう》の|出現《しゅつげん》を|待《ま》ち|望《のぞ》むようにと、|教《おし》えている。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]このキリストが、わたしたちのためにご|自身《じしん》をささげられたのは、わたしたちをすべての|不法《ふほう》からあがない|出《だ》して、|良《よ》いわざに|熱心《ねっしん》な|選《えら》びの|民《たみ》を、ご|自身《じしん》のものとして|聖《せい》|別《べつ》するためにほかならない。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、|権威《けんい》をもってこれらのことを|語《かた》り、|勧《すす》め、また|責《せ》めなさい。だれにも|軽《かろ》んじられてはならない。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]あなたは|彼《かれ》らに|勧《すす》めて、|支配者《しはいしゃ》、|権威《けんい》ある|者《もの》に|服《ふく》し、これに|従《したが》い、いつでも|良《よ》いわざをする|用意《ようい》があり、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]だれをもそしらず、|争《あらそ》わず、|寛容《かんよう》であって、すべての|人《ひと》に|対《たい》してどこまでも|柔和《にゅうわ》な|態度《たいど》を|示《しめ》すべきことを、|思《おも》い|出《だ》させなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちも|以前《いぜん》には、|無分別《むふんべつ》で、|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》な、|迷《まよ》っていた|者《もの》であって、さまざまの|情欲《じょうよく》と|快楽《かいらく》との|奴隷《どれい》になり、|悪意《あくい》とねたみとで|日《ひ》を|過《す》ごし、|人《ひと》に|憎《にく》まれ、|互《たがい》に|憎《にく》み|合《あ》っていた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、わたしたちの|救主《すくいぬし》なる|神《かみ》の|慈悲《じひ》と|博愛《はくあい》とが|現《あらわ》れたとき、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|行《おこな》った|義《ぎ》のわざによってではなく、ただ|神《かみ》のあわれみによって、|再生《さいせい》の|洗《あら》いを|受《う》け、|聖霊《せいれい》により|新《あら》たにされて、わたしたちは|救《すく》われたのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]この|聖霊《せいれい》は、わたしたちの|救主《すくいぬし》イエス・キリストをとおして、わたしたちの|上《うえ》に|豊《ゆた》かに|注《そそ》がれた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]これは、わたしたちが、キリストの|恵《めぐ》みによって|義《ぎ》とされ、|永遠《えいえん》のいのちを|望《のぞ》むことによって、|御国《みくに》をつぐ|者《もの》となるためである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]この|言葉《ことば》は|確実《かくじつ》である。わたしは、あなたがそれらのことを|主張《しゅちょう》するのを|願《ねが》っている。それは、|神《かみ》を|信《しん》じている|者《もの》たちが、|努《つと》めて|良《よ》いわざを|励《はげ》むことを|心《こころ》がけるようになるためである。これは|良《よ》いことであって、|人々《ひとびと》の|益《えき》となる。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|愚《おろ》かな|議論《ぎろん》と、|系図《けいず》と、|争《あらそ》いと、|律法《りっぽう》についての|論争《ろんそう》とを、|避《さ》けなさい。それらは|無益《むえき》かつ|空虚《くうきょ》なことである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|異端者《いたんしゃ》は、一、二|度《ど》、|訓戒《くんかい》を|加《くわ》えた|上《うえ》で|退《しりぞ》けなさい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]たしかに、こういう|人《ひと》たちは、|邪道《じゃどう》に|陥《おちい》り、|自《みずか》ら|悪《あく》と|知《し》りつつも、|罪《つみ》を|犯《おか》しているからである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしがアルテマスかテキコかをあなたのところに|送《おく》ったなら、|急《いそ》いでニコポリにいるわたしの|所《ところ》にきなさい。わたしは、そこで|冬《ふゆ》を|過《す》ごすことにした。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|法学者《ほうがくしゃ》ゼナスと、アポロとを、|急《いそ》いで|旅《たび》につかせ、|不自由《ふじゆう》のないようにしてあげなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|仲間《なかま》も、さし|迫《せま》った|必要《ひつよう》に|備《そな》えて、|努《つと》めて|良《よ》いわざを|励《はげ》み、|実《み》を|結《むす》ばぬ|者《もの》とならないように、|心《こころ》がけるべきである。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしと|共《とも》にいる|一同《いちどう》の|者《もの》から、あなたによろしく。わたしたちを|愛《あい》している|信徒《しんと》たちに、よろしく。  |恵《めぐ》みが、あなたがた|一同《いちどう》と|共《とも》にあるように。 [#改ページ] ピレモンヘの手紙[#「ピレモンヘの手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスの|囚人《しゅうじん》パウロと|兄弟《きょうだい》テモテから、わたしたちの|愛《あい》する|同労者《どうろうしゃ》ピレモン、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|姉妹《しまい》アピヤ、わたしたちの|戦友《せんゆう》アルキポ、ならびに、あなたの|家《いえ》にある|教会《きょうかい》へ。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|父《ちち》なる|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストから、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|祈《いのり》の|時《とき》にあなたをおぼえて、いつもわたしの|神《かみ》に|感謝《かんしゃ》している。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それは、|主《しゅ》イエスに|対《たい》し、また、すべての|聖徒《せいと》に|対《たい》するあなたの|愛《あい》と|信仰《しんこう》とについて、|聞《き》いているからである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]どうか、あなたの|信仰《しんこう》の|交《まじ》わりが|強《つよ》められて、わたしたちの|間《あいだ》でキリストのためになされているすべての|良《よ》いことが、|知《し》られて|来《く》るようになってほしい。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》よ。わたしは、あなたの|愛《あい》によって|多《おお》くの|喜《よろこ》びと|慰《なぐさ》めとを|与《あた》えられた。|聖徒《せいと》たちの|心《こころ》が、あなたによって|力《ちから》づけられたからである。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、わたしは、キリストにあってあなたのなすべき|事《こと》を、きわめて|率直《そっちょく》に|指示《しじ》してもよいと|思《おも》うが、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、|愛《あい》のゆえにお|願《ねが》いする。すでに|老年《ろうねん》になり、|今《いま》またキリスト・イエスの|囚人《しゅうじん》となっているこのパウロが、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|捕《とら》われの|身《み》で|産《う》んだわたしの|子供《こども》オネシモについて、あなたにお|願《ねが》いする。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|以前《いぜん》は、あなたにとって|無益《むえき》な|者《もの》であったが、|今《いま》は、あなたにも、わたしにも、|有益《ゆうえき》な|者《もの》になった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》をあなたのもとに|送《おく》りかえす。|彼《かれ》はわたしの|心《こころ》である。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|彼《かれ》を|身近《みぢか》に|引《ひ》きとめておいて、わたしが|福音《ふくいん》のために|捕《とら》われている|間《あいだ》、あなたに|代《かわ》って|仕《つか》えてもらいたかったのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしは、あなたの|承諾《しょうだく》なしには|何《なに》もしたくない。あなたが|強制《きょうせい》されて|良《よ》い|行《おこな》いをするのではなく、|自発《じはつ》|的《てき》にすることを|願《ねが》っている。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》がしばらくの|間《あいだ》あなたから|離《はな》れていたのは、あなたが|彼《かれ》をいつまでも|留《と》めておくためであったかも|知《し》れない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかも、もはや|奴隷《どれい》としてではなく、|奴隷《どれい》|以上《いじょう》のもの、|愛《あい》する|兄弟《きょうだい》としてである。とりわけ、わたしにとってそうであるが、ましてあなたにとっては、|肉《にく》においても、|主《しゅ》にあっても、それ|以上《いじょう》であろう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、もしわたしをあなたの|信仰《しんこう》の|友《とも》と|思《おも》ってくれるなら、わたし|同様《どうよう》に|彼《かれ》を|受《う》けいれてほしい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]もし、|彼《かれ》があなたに|何《なに》か|不都合《ふつごう》なことをしたか、あるいは、|何《なに》か|負債《ふさい》があれば、それをわたしの|借《か》りにしておいてほしい。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]このパウロが|手《て》ずからしるす、わたしがそれを|返済《へんさい》する。この|際《さい》、あなたが、あなた|自身《じしん》をわたしに|負《お》うていることについては、|何《なに》も|言《い》うまい。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》よ。わたしはあなたから、|主《しゅ》にあって|何《なに》か|益《えき》を|得《え》たいものである。わたしの|心《こころ》を、|主《しゅ》にあって|力《ちから》づけてもらいたい。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしはあなたの|従順《じゅうじゅん》を|堅《かた》く|信《しん》じて、この|手紙《てがみ》を|書《か》く。あなたは、|確《たし》かにわたしが|言《い》う|以上《いじょう》のことをしてくれるだろう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ついでにお|願《ねが》いするが、わたしのために|宿《やど》を|用意《ようい》しておいてほしい。あなたがたの|祈《いのり》によって、あなたがたの|所《ところ》に|行《い》かせてもらえるように|望《のぞ》んでいるのだから。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]キリスト・イエスにあって、わたしと|共《とも》に|捕《とら》われの|身《み》になっているエパフラスから、あなたによろしく。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|同労者《どうろうしゃ》たち、マルコ、アリスタルコ、デマス、ルカからも、よろしく。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》イエス・キリストの|恵《めぐ》みが、あなたがたの|霊《れい》と|共《とも》にあるように。 [#改ページ] ヘブル人への手紙[#「ヘブル人への手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、むかしは、|預言者《よげんしゃ》たちにより、いろいろな|時《とき》に、いろいろな|方法《ほうほう》で、|先祖《せんぞ》たちに|語《かた》られたが、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]この|終《おわ》りの|時《とき》には、|御子《みこ》によって、わたしたちに|語《かた》られたのである。|神《かみ》は|御子《みこ》を|万物《ばんぶつ》の|相続者《そうぞくしゃ》と|定《さだ》め、また、|御子《みこ》によって、もろもろの|世界《せかい》を|造《つく》られた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|御子《みこ》は|神《かみ》の|栄光《えいこう》の|輝《かがや》きであり、|神《かみ》の|本質《ほんしつ》の|真《しん》の|姿《すがた》であって、その|力《ちから》ある|言葉《ことば》をもって|万物《ばんぶつ》を|保《たも》っておられる。そして|罪《つみ》のきよめのわざをなし|終《お》えてから、いと|高《たか》き|所《ところ》にいます|大能者《たいのうしゃ》の|右《みぎ》に、|座《ざ》につかれたのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|御子《みこ》は、その|受《う》け|継《つ》がれた|名《な》が|御使《みつかい》たちの|名《な》にまさっているので、|彼《かれ》らよりもすぐれた|者《もの》となられた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|神《かみ》は|御使《みつかい》たちのだれに|対《たい》して、 [#ここから2字下げ] 「あなたこそは、わたしの|子《こ》。 きょう、わたしはあなたを|生《う》んだ」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》い、さらにまた、 [#ここから2字下げ] 「わたしは|彼《かれ》の|父《ちち》となり、 |彼《かれ》はわたしの|子《こ》となるであろう」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》われたことがあるか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]さらにまた、|神《かみ》は、その|長子《ちょうし》を|世界《せかい》に|導《みちび》き|入《い》れるに|当《あた》って、 [#ここから2字下げ] 「|神《かみ》の|御使《みつかい》たちはことごとく、|彼《かれ》を|拝《はい》すべきである」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》われた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]また、|御使《みつかい》たちについては、 [#ここから2字下げ] 「|神《かみ》は、|御使《みつかい》たちを|風《かぜ》とし、 ご|自分《じぶん》に|仕《つか》える|者《もの》たちを|炎《ほのお》とされる」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》われているが、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|御子《みこ》については、 [#ここから2字下げ] 「|神《かみ》よ、あなたの|御座《みざ》は、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|続《つづ》き、 あなたの|支配《しはい》のつえは、|公平《こうへい》のつえである。 [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]あなたは|義《ぎ》を|愛《あい》し、|不法《ふほう》を|憎《にく》まれた。 それゆえに、|神《かみ》、あなたの|神《かみ》は、|喜《よろこ》びのあぶらを、 あなたの|友《とも》に|注《そそ》ぐよりも|多《おお》く、あなたに|注《そそ》がれた」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》い、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]さらに、 [#ここから2字下げ] 「|主《しゅ》よ、あなたは|初《はじ》めに、|地《ち》の|基《もとい》をおすえになった。 もろもろの|天《てん》も、み|手《て》のわざである。 [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]これらのものは|滅《ほろ》びてしまうが、 あなたは、いつまでもいますかたである。 すべてのものは|衣《ころも》のように|古《ふる》び、 [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それらをあなたは、|外套《がいとう》のように|巻《ま》かれる。 これらのものは、|衣《ころも》のように|変《かわ》るが、 あなたは、いつも|変《かわ》ることがなく、 あなたのよわいは、|尽《つ》きることがない」 [#ここで字下げ終わり] とも|言《い》われている。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、|御使《みつかい》たちのだれに|対《たい》して、 [#ここから2字下げ] 「あなたの|敵《てき》を、あなたの|足《あし》|台《だい》とするときまでは、 わたしの|右《みぎ》に|座《ざ》していなさい」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》われたことがあるか。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》たちはすべて|仕《つか》える|霊《れい》であって、|救《すくい》を|受《う》け|継《つ》ぐべき|人々《ひとびと》に|奉仕《ほうし》するため、つかわされたものではないか。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけだから、わたしたちは|聞《き》かされていることを、いっそう|強《つよ》く|心《こころ》に|留《と》めねばならない。そうでないと、おし|流《なが》されてしまう。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|御使《みつかい》たちをとおして|語《かた》られた|御言《みことば》が|効力《こうりょく》を|持《も》ち、あらゆる|罪過《ざいか》と|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》とに|対《たい》して|正当《せいとう》な|報《むく》いが|加《くわ》えられたとすれば、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、こんなに|尊《たっと》い|救《すくい》をなおざりにしては、どうして|報《むく》いをのがれることができようか。この|救《すくい》は、|初《はじ》め|主《しゅ》によって|語《かた》られたものであって、|聞《き》いた|人々《ひとびと》からわたしたちにあかしされ、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]さらに|神《かみ》も、しるしと|不思議《ふしぎ》とさまざまな|力《ちから》あるわざとにより、また、|御旨《みむね》に|従《したが》い|聖霊《せいれい》を|各自《かくじ》に|賜《たま》うことによって、あかしをされたのである。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|神《かみ》は、わたしたちがここで|語《かた》っているきたるべき|世界《せかい》を、|御使《みつかい》たちに|服従《ふくじゅう》させることは、なさらなかった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》はある|箇所《かしょ》で、こうあかししている、 [#ここから2字下げ] 「|人間《にんげん》が|何者《なにもの》だから、 これを|御《み》|心《こころ》に|留《と》められるのだろうか。 |人《ひと》の|子《こ》が|何者《なにもの》だから、 これをかえりみられるのだろうか。 [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、しばらくの|間《あいだ》、 |彼《かれ》を|御使《みつかい》たちよりも|低《ひく》い|者《もの》となし、 |栄光《えいこう》とほまれとを|冠《かんむり》として|彼《かれ》に|与《あた》え、 [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|万物《ばんぶつ》をその|足《あし》の|下《した》に|服従《ふくじゅう》させて|下《くだ》さった」。 [#ここで字下げ終わり] 「|万物《ばんぶつ》を|彼《かれ》に|服従《ふくじゅう》させて|下《くだ》さった」という|以上《いじょう》、|服従《ふくじゅう》しないものは、|何《なに》ひとつ|残《のこ》されていないはずである。しかし、|今《いま》もなお|万物《ばんぶつ》が|彼《かれ》に|服従《ふくじゅう》している|事実《じじつ》を、わたしたちは|見《み》ていない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ただ、「しばらくの|間《あいだ》、|御使《みつかい》たちよりも|低《ひく》い|者《もの》とされた」イエスが、|死《し》の|苦《くる》しみのゆえに、|栄光《えいこう》とほまれとを|冠《かんむり》として|与《あた》えられたのを|見《み》る。それは、|彼《かれ》が|神《かみ》の|恵《めぐ》みによって、すべての|人《ひと》のために|死《し》を|味《あじ》わわれるためであった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|万物《ばんぶつ》の|帰《き》すべきかた、|万物《ばんぶつ》を|造《つく》られたかたが、|多《おお》くの|子《こ》らを|栄光《えいこう》に|導《みちび》くのに、|彼《かれ》らの|救《すくい》の|君《きみ》を、|苦難《くなん》をとおして|全《まっと》うされたのは、|彼《かれ》にふさわしいことであったからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|実《じつ》に、きよめるかたも、きよめられる|者《もの》たちも、|皆《みな》ひとりのかたから|出《で》ている。それゆえに|主《しゅ》は、|彼《かれ》らを|兄弟《きょうだい》と|呼《よ》ぶことを|恥《はじ》とされない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、 [#ここから2字下げ] 「わたしは、|御名《みな》をわたしの|兄弟《きょうだい》たちに|告《つ》げ|知《し》らせ、 |教会《きょうかい》の|中《なか》で、あなたをほめ|歌《うた》おう」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》い、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]また、 [#ここから2字下げ] 「わたしは、|彼《かれ》により|頼《たの》む」、 [#ここで字下げ終わり] また、 [#ここから2字下げ] 「|見《み》よ、わたしと、|神《かみ》がわたしに|賜《たま》わった|子《こ》らとは」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》われた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]このように、|子《こ》たちは|血《ち》と|肉《にく》とに|共《とも》にあずかっているので、イエスもまた|同様《どうよう》に、それらをそなえておられる。それは、|死《し》の|力《ちから》を|持《も》つ|者《もの》、すなわち|悪魔《あくま》を、ご|自分《じぶん》の|死《し》によって|滅《ほろ》ぼし、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|死《し》の|恐怖《きょうふ》のために|一《いっ》|生涯《しょうがい》、|奴隷《どれい》となっていた|者《もの》たちを、|解《と》き|放《はな》つためである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|確《たし》かに、|彼《かれ》は|天使《てんし》たちを|助《たす》けることはしないで、アブラハムの|子孫《しそん》を|助《たす》けられた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、イエスは、|神《かみ》のみまえにあわれみ|深《ぶか》い|忠実《ちゅうじつ》な|大祭司《だいさいし》となって、|民《たみ》の|罪《つみ》をあがなうために、あらゆる|点《てん》において|兄弟《きょうだい》たちと|同《おな》じようにならねばならなかった。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》ご|自身《じしん》、|試錬《しれん》を|受《う》けて|苦《くる》しまれたからこそ、|試錬《しれん》の|中《なか》にある|者《もの》たちを|助《たす》けることができるのである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|天《てん》の|召《め》しにあずかっている|聖《せい》なる|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたは、わたしたちが|告白《こくはく》する|信仰《しんこう》の|使者《ししゃ》また|大祭司《だいさいし》なるイエスを、|思《おも》いみるべきである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、モーセが|神《かみ》の|家《いえ》の|全体《ぜんたい》に|対《たい》して|忠実《ちゅうじつ》であったように、|自分《じぶん》を|立《た》てたかたに|対《たい》して|忠実《ちゅうじつ》であられた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]おおよそ、|家《いえ》を|造《つく》る|者《もの》が|家《いえ》そのものよりもさらに|尊《たっと》ばれるように、|彼《かれ》は、モーセ|以上《いじょう》に、|大《おお》いなる|光栄《こうえい》を|受《う》けるにふさわしい|者《もの》とされたのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|家《いえ》はすべて、だれかによって|造《つく》られるものであるが、すべてのものを|造《つく》られたかたは、|神《かみ》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]さて、モーセは、|後《のち》に|語《かた》らるべき|事《こと》がらについてあかしをするために、|仕《つか》える|者《もの》として、|神《かみ》の|家《いえ》の|全体《ぜんたい》に|対《たい》して|忠実《ちゅうじつ》であったが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]キリストは|御子《みこ》として、|神《かみ》の|家《いえ》を|治《おさ》めるのに|忠実《ちゅうじつ》であられたのである。もしわたしたちが、|望《のぞ》みの|確信《かくしん》と|誇《ほこり》とを|最後《さいご》までしっかりと|持《も》ち|続《つづ》けるなら、わたしたちは|神《かみ》の|家《いえ》なのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]だから、|聖霊《せいれい》が|言《い》っているように、 [#ここから2字下げ] 「きょう、あなたがたがみ|声《こえ》を|聞《き》いたなら、 [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|荒野《あらの》における|試錬《しれん》の|日《ひ》に、 |神《かみ》にそむいた|時《とき》のように、 あなたがたの|心《こころ》を、かたくなにしてはいけない。 [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|先祖《せんぞ》たちは、 そこでわたしを|試《こころ》みためし、 [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]しかも、四十|年《ねん》の|間《あいだ》わたしのわざを|見《み》たのである。 だから、わたしはその|時代《じだい》の|人々《ひとびと》に|対《たい》して、 いきどおって|言《い》った、 |彼《かれ》らの|心《こころ》は、いつも|迷《まよ》っており、 |彼《かれ》らは、わたしの|道《みち》を|認《みと》めなかった。 [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしは|怒《いか》って、|彼《かれ》らをわたしの|安息《あんそく》にはいらせることはしない、と|誓《ちか》った」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|気《き》をつけなさい。あなたがたの|中《なか》には、あるいは、|不《ふ》|信仰《しんこう》な|悪《わる》い|心《こころ》をいだいて、|生《い》ける|神《かみ》から|離《はな》れ|去《さ》る|者《もの》があるかも|知《し》れない。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|中《なか》に、|罪《つみ》の|惑《まど》わしに|陥《おちい》って、|心《こころ》をかたくなにする|者《もの》がないように、「きょう」といううちに、|日々《ひび》、|互《たがい》に|励《はげ》まし|合《あ》いなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]もし|最初《さいしょ》の|確信《かくしん》を、|最後《さいご》までしっかりと|持《も》ち|続《つづ》けるならば、わたしたちはキリストにあずかる|者《もの》となるのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それについて、こう|言《い》われている、 [#ここから2字下げ] 「きょう、み|声《こえ》を|聞《き》いたなら、 |神《かみ》にそむいた|時《とき》のように、 あなたがたの|心《こころ》を、かたくなにしてはいけない」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]すると、|聞《き》いたのにそむいたのは、だれであったのか。モーセに|率《ひき》いられて、エジプトから|出《で》て|行《い》ったすべての|人々《ひとびと》ではなかったか。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また、四十|年《ねん》の|間《あいだ》、|神《かみ》がいきどおられたのはだれに|対《たい》してであったか。|罪《つみ》を|犯《おか》して、その|死《し》かばねを|荒野《あらの》にさらした|者《もの》たちに|対《たい》してではなかったか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]また、|神《かみ》が、わたしの|安息《あんそく》に、はいらせることはしない、と|誓《ちか》われたのは、だれに|向《む》かってであったか。|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》な|者《もの》に|向《む》かってではなかったか。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|彼《かれ》らがはいることのできなかったのは、|不《ふ》|信仰《しんこう》のゆえであることがわかる。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]それだから、|神《かみ》の|安息《あんそく》にはいるべき|約束《やくそく》が、まだ|存続《そんぞく》しているにかかわらず、|万一《まんいち》にも、はいりそこなう|者《もの》が、あなたがたの|中《なか》から|出《で》ることがないように、|注意《ちゅうい》しようではないか。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|彼《かれ》らと|同《おな》じく、わたしたちにも|福音《ふくいん》が|伝《つた》えられているのである。しかし、その|聞《き》いた|御言《みことば》は、|彼《かれ》らには|無益《むえき》であった。それが、|聞《き》いた|者《もの》たちに、|信仰《しんこう》によって|結《むす》びつけられなかったからである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ところが、わたしたち|信《しん》じている|者《もの》は、|安息《あんそく》にはいることができる。それは、 [#ここから2字下げ] 「わたしが|怒《いか》って、 |彼《かれ》らをわたしの|安息《あんそく》に、はいらせることはしないと、|誓《ちか》ったように」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》われているとおりである。しかも、みわざは|世《よ》の|初《はじ》めに、でき|上《あ》がっていた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|聖書《せいしょ》のある|箇所《かしょ》で、|七日《なぬか》|目《め》のことについて、「|神《かみ》は、|七日《なぬか》|目《め》にすべてのわざをやめて|休《やす》まれた」と|言《い》われており、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]またここで、「|彼《かれ》らをわたしの|安息《あんそく》に、はいらせることはしない」と|言《い》われている。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、その|安息《あんそく》にはいる|機会《きかい》が、|人々《ひとびと》になお|残《のこ》されているのであり、しかも、|初《はじ》めに|福音《ふくいん》を|伝《つた》えられた|人々《ひとびと》は、|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》のゆえに、はいることをしなかったのであるから、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、あらためて、ある|日《ひ》を「きょう」として|定《さだ》め、|長《なが》く|時《とき》がたってから、|先《さき》に|引用《いんよう》したとおり、 [#ここから2字下げ] 「きょう、み|声《こえ》を|聞《き》いたなら、 あなたがたの|心《こころ》を、かたくなにしてはいけない」 [#ここで字下げ終わり] とダビデをとおして|言《い》われたのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]もしヨシュアが|彼《かれ》らを|休《やす》ませていたとすれば、|神《かみ》はあとになって、ほかの|日《ひ》のことについて|語《かた》られたはずはない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、|安息日《あんそくにち》の|休《やす》みが、|神《かみ》の|民《たみ》のためにまだ|残《のこ》されているのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|神《かみ》の|安息《あんそく》にはいった|者《もの》は、|神《かみ》がみわざをやめて|休《やす》まれたように、|自分《じぶん》もわざを|休《やす》んだからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]したがって、わたしたちは、この|安息《あんそく》にはいるように|努力《どりょく》しようではないか。そうでないと、|同《おな》じような|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》の|悪例《あくれい》にならって、|落《お》ちて|行《ゆ》く|者《もの》が|出《で》るかもしれない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]というのは、|神《かみ》の|言《ことば》は|生《い》きていて、|力《ちから》があり、もろ|刃《は》のつるぎよりも|鋭《するど》くて、|精神《せいしん》と|霊魂《れいこん》と、|関節《かんせつ》と|骨髄《こつづい》とを|切《き》り|離《はな》すまでに|刺《さ》しとおして、|心《こころ》の|思《おも》いと|志《こころざし》とを|見分《みわ》けることができる。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そして、|神《かみ》のみまえには、あらわでない|被《ひ》|造物《ぞうぶつ》はひとつもなく、すべてのものは、|神《かみ》の|目《め》には|裸《はだか》であり、あらわにされているのである。この|神《かみ》に|対《たい》して、わたしたちは|言《い》い|開《ひら》きをしなくてはならない。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしたちには、もろもろの|天《てん》をとおって|行《い》かれた|大祭司《だいさいし》なる|神《かみ》の|子《こ》イエスがいますのであるから、わたしたちの|告白《こくはく》する|信仰《しんこう》をかたく|守《まも》ろうではないか。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]この|大祭司《だいさいし》は、わたしたちの|弱《よわ》さを|思《おも》いやることのできないようなかたではない。|罪《つみ》は|犯《おか》されなかったが、すべてのことについて、わたしたちと|同《おな》じように|試錬《しれん》に|会《あ》われたのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしたちは、あわれみを|受《う》け、また、|恵《めぐ》みにあずかって|時機《じき》を|得《え》た|助《たす》けを|受《う》けるために、はばかることなく|恵《めぐ》みの|御座《みざ》に|近《ちか》づこうではないか。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|大祭司《だいさいし》なるものはすべて、|人間《にんげん》の|中《なか》から|選《えら》ばれて、|罪《つみ》のために|供《そな》え|物《もの》といけにえとをささげるように、|人々《ひとびと》のために|神《かみ》に|仕《つか》える|役《やく》に|任《にん》じられた|者《もの》である。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|自分《じぶん》|自身《じしん》、|弱《よわ》さを|身《み》に|負《お》うているので、|無知《むち》な|迷《まよ》っている|人々《ひとびと》を、|思《おも》いやることができると|共《とも》に、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]その|弱《よわ》さのゆえに、|民《たみ》のためだけではなく|自分《じぶん》|自身《じしん》のためにも、|罪《つみ》についてささげものをしなければならないのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]かつ、だれもこの|栄誉《えいよ》ある|務《つとめ》を|自分《じぶん》で|得《え》るのではなく、アロンの|場合《ばあい》のように、|神《かみ》の|召《め》しによって|受《う》けるのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|同様《どうよう》に、キリストもまた、|大祭司《だいさいし》の|栄誉《えいよ》を|自分《じぶん》で|得《え》たのではなく、 [#ここから2字下げ] 「あなたこそは、わたしの|子《こ》。 きょう、わたしはあなたを|生《う》んだ」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》われたかたから、お|受《う》けになったのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]また、ほかの|箇所《かしょ》でこう|言《い》われている、 [#ここから2字下げ] 「あなたこそは、|永遠《えいえん》に、 メルキゼデクに|等《ひと》しい|祭司《さいし》である」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]キリストは、その|肉《にく》の|生活《せいかつ》の|時《とき》には、|激《はげ》しい|叫《さけ》びと|涙《なみだ》とをもって、ご|自分《じぶん》を|死《し》から|救《すく》う|力《ちから》のあるかたに、|祈《いのり》と|願《ねが》いとをささげ、そして、その|深《ふか》い|信仰《しんこう》のゆえに|聞《き》きいれられたのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|御子《みこ》であられたにもかかわらず、さまざまの|苦《くる》しみによって|従順《じゅうじゅん》を|学《まな》び、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そして、|全《まった》き|者《もの》とされたので、|彼《かれ》に|従順《じゅうじゅん》であるすべての|人《ひと》に|対《たい》して、|永遠《えいえん》の|救《すくい》の|源《みなもと》となり、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》によって、メルキゼデクに|等《ひと》しい|大祭司《だいさいし》と、となえられたのである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]このことについては、|言《い》いたいことがたくさんあるが、あなたがたの|耳《みみ》が|鈍《にぶ》くなっているので、それを|説《と》き|明《あ》かすことはむずかしい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|久《ひさ》しい|以前《いぜん》からすでに|教師《きょうし》となっているはずなのに、もう一|度《ど》|神《かみ》の|言《ことば》の|初歩《しょほ》を、|人《ひと》から|手《て》ほどきしてもらわねばならない|始末《しまつ》である。あなたがたは|堅《かた》い|食物《しょくもつ》ではなく、|乳《ちち》を|必要《ひつよう》としている。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]すべて|乳《ちち》を|飲《の》んでいる|者《もの》は、|幼《おさ》な|子《ご》なのだから、|義《ぎ》の|言葉《ことば》を|味《あじ》わうことができない。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|堅《かた》い|食物《しょくもつ》は、|善悪《ぜんあく》を|見《み》わける|感覚《かんかく》を|実際《じっさい》に|働《はたら》かせて|訓練《くんれん》された|成人《せいじん》のとるべきものである。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そういうわけだから、わたしたちは、キリストの|教《おしえ》の|初歩《しょほ》をあとにして、|完成《かんせい》を|目《め》ざして|進《すすむ》もうではないか。|今《いま》さら、|死《し》んだ|行《おこな》いの|悔改《くいあらた》めと|神《かみ》への|信仰《しんこう》、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|洗《あら》いごとについての|教《おしえ》と|按手《あんしゅ》、|死人《しにん》の|復活《ふっかつ》と|永遠《えいえん》のさばき、などの|基本《きほん》の|教《おしえ》をくりかえし|学《まな》ぶことをやめようではないか。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|許《ゆる》しを|得《え》て、そうすることにしよう。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]いったん、|光《ひかり》を|受《う》けて|天《てん》よりの|賜物《たまもの》を|味《あじ》わい、|聖霊《せいれい》にあずかる|者《もの》となり、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また、|神《かみ》の|良《よ》きみ|言葉《ことば》と、きたるべき|世《よ》の|力《ちから》とを|味《あじ》わった|者《もの》たちが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そののち|堕落《だらく》した|場合《ばあい》には、またもや|神《かみ》の|御子《みこ》を、|自《みずか》ら|十字架《じゅうじか》につけて、さらしものにするわけであるから、ふたたび|悔改《くいあらた》めにたち|帰《かえ》ることは|不可能《ふかのう》である。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]たとえば、|土地《とち》が、その|上《うえ》にたびたび|降《ふ》る|雨《あめ》を|吸《す》い|込《こん》で、|耕《たがや》す|人々《ひとびと》に|役立《やくだ》つ|作物《さくもつ》を|育《そだ》てるなら、|神《かみ》の|祝福《しゅくふく》にあずかる。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、いばらやあざみをはえさせるなら、それは|無用《むよう》になり、やがてのろわれ、ついには|焼《や》かれてしまう。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|愛《あい》する|者《もの》たちよ。こうは|言《い》うものの、わたしたちは、|救《すくい》にかかわる|更《さら》に|良《よ》いことがあるのを、あなたがたについて|確信《かくしん》している。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は|不義《ふぎ》なかたではないから、あなたがたの|働《はたら》きや、あなたがたがかつて|聖徒《せいと》に|仕《つか》え、|今《いま》もなお|仕《つか》えて、|御名《みな》のために|示《しめ》してくれた|愛《あい》を、お|忘《わす》れになることはない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、あなたがたがひとり|残《のこ》らず、|最後《さいご》まで|望《のぞ》みを|持《も》ちつづけるためにも、|同《おな》じ|熱意《ねつい》を|示《しめ》し、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|怠《おこた》ることがなく、|信仰《しんこう》と|忍耐《にんたい》とをもって|約束《やくそく》のものを|受《う》け|継《つ》ぐ|人々《ひとびと》に|見習《みなら》う|者《もの》となるように、と|願《ねが》ってやまない。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]さて、|神《かみ》がアブラハムに|対《たい》して|約束《やくそく》されたとき、さして|誓《ちか》うのに、ご|自分《じぶん》よりも|上《うえ》のものがないので、ご|自分《じぶん》をさして|誓《ちか》って、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]「わたしは、|必《かなら》ずあなたを|祝福《しゅくふく》し、|必《かなら》ずあなたの|子孫《しそん》をふやす」と|言《い》われた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]このようにして、アブラハムは|忍耐《にんたい》|強《づよ》く|待《ま》ったので、|約束《やくそく》のものを|得《え》たのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|人間《にんげん》は|自分《じぶん》より|上《うえ》のものをさして|誓《ちか》うのであり、そして、その|誓《ちか》いはすべての|反対《はんたい》|論《ろん》を|封《ふう》じる|保証《ほしょう》となるのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|神《かみ》は、|約束《やくそく》のものを|受《う》け|継《つ》ぐ|人々《ひとびと》に、ご|計画《けいかく》の|不変《ふへん》であることを、いっそうはっきり|示《しめ》そうと|思《おも》われ、|誓《ちか》いによって|保証《ほしょう》されたのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]それは、|偽《いつわ》ることのあり|得《え》ない|神《かみ》に|立《た》てられた二つの|不変《ふへん》の|事《こと》がらによって、|前《まえ》におかれている|望《のぞ》みを|捕《とら》えようとして|世《よ》をのがれてきたわたしたちが、|力強《ちからづよ》い|励《はげ》ましを|受《う》けるためである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]この|望《のぞ》みは、わたしたちにとって、いわば、たましいを|安全《あんぜん》にし|不動《ふどう》にする|錨《いかり》であり、かつ「|幕《まく》の|内《うち》」にはいり|行《い》かせるものである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]その|幕《まく》の|内《うち》に、イエスは、|永遠《えいえん》にメルキゼデクに|等《ひと》しい|大祭司《だいさいし》として、わたしたちのためにさきがけとなって、はいられたのである。 第七章[#「第七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]このメルキゼデクはサレムの|王《おう》であり、いと|高《たか》き|神《かみ》の|祭司《さいし》であったが、|王《おう》たちを|撃破《げきは》して|帰《かえ》るアブラハムを|迎《むか》えて|祝福《しゅくふく》し、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それに|対《たい》して、アブラハムは|彼《かれ》にすべての|物《もの》の十|分《ぶん》の一を|分《わ》け|与《あた》えたのである。その|名《な》の|意味《いみ》は、|第《だい》一に|義《ぎ》の|王《おう》、|次《つぎ》にまたサレムの|王《おう》、すなわち|平和《へいわ》の|王《おう》である。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》には|父《ちち》がなく、|母《はは》がなく、|系図《けいず》がなく、|生涯《しょうがい》の|初《はじ》めもなく、|生命《せいめい》の|終《おわ》りもなく、|神《かみ》の|子《こ》のようであって、いつまでも|祭司《さいし》なのである。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|族長《ぞくちょう》のアブラハムが|最《もっと》もよいぶんどり|品《ひん》の十|分《ぶん》の一を|与《あた》えたのだから、この|人《ひと》がどんなにすぐれた|人物《じんぶつ》であったかが、あなたがたにわかるであろう。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]さて、レビの|子《こ》のうちで|祭司《さいし》の|務《つとめ》をしている|者《もの》たちは、|兄弟《きょうだい》である|民《たみ》から、|同《おな》じくアブラハムの|子孫《しそん》であるにもかかわらず、十|分《ぶん》の一を|取《と》るように、|律法《りっぽう》によって|命《めい》じられている。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|彼《かれ》らの|血統《けっとう》に|属《ぞく》さないこの|人《ひと》が、アブラハムから十|分《ぶん》の一を|受《う》けとり、|約束《やくそく》を|受《う》けている|者《もの》を|祝福《しゅくふく》したのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|言《い》うまでもなく、|小《しょう》なる|者《もの》が|大《おお》なる|者《もの》から|祝福《しゅくふく》を|受《う》けるのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]その|上《うえ》、|一方《いっぽう》では|死《し》ぬべき|人間《にんげん》が、十|分《ぶん》の一を|受《う》けているが、|他方《たほう》では「|彼《かれ》は|生《い》きている|者《もの》」とあかしされた|人《ひと》が、それを|受《う》けている。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、十|分《ぶん》の一を|受《う》けるべきレビでさえも、アブラハムを|通《つう》じて十|分《ぶん》の一を|納《おさ》めた、と|言《い》える。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、メルキゼデクがアブラハムを|迎《むか》えた|時《とき》には、レビはまだこの|父祖《ふそ》の|腰《こし》の|中《なか》にいたからである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]もし|全《まっと》うされることがレビ|系《けい》の|祭司《さいし》|制《せい》によって|可能《かのう》であったら――|民《たみ》は|祭司《さいし》|制《せい》の|下《もと》に|律法《りっぽう》を|与《あた》えられたのであるが――なんの|必要《ひつよう》があって、なお、「アロンに|等《ひと》しい」と|呼《よ》ばれない、|別《べつ》な「メルキゼデクに|等《ひと》しい」|祭司《さいし》が|立《た》てられるのであるか。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|祭司《さいし》|制《せい》に|変更《へんこう》があれば、|律法《りっぽう》にも|必《かなら》ず|変更《へんこう》があるはずである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]さて、これらのことは、いまだかつて|祭壇《さいだん》に|奉仕《ほうし》したことのない、|他《た》の|部族《ぶぞく》に|関《かん》して|言《い》われているのである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]というのは、わたしたちの|主《しゅ》がユダ|族《ぞく》の|中《なか》から|出《で》られたことは、|明《あき》らかであるが、モーセは、この|部族《ぶぞく》について、|祭司《さいし》に|関《かん》することでは、ひとことも|言《い》っていない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そしてこの|事《こと》は、メルキゼデクと|同様《どうよう》な、ほかの|祭司《さいし》が|立《た》てられたことによって、ますます|明白《めいはく》になる。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、|肉《にく》につける|戒《いまし》めの|律法《りっぽう》によらないで、|朽《く》ちることのないいのちの|力《ちから》によって|立《た》てられたのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]それについては、|聖書《せいしょ》に「あなたこそは、|永遠《えいえん》に、メルキゼデクに|等《ひと》しい|祭司《さいし》である」とあかしされている。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]このようにして、|一方《いっぽう》では、|前《まえ》の|戒《いまし》めが|弱《よわ》くかつ|無益《むえき》であったために|無効《むこう》になると|共《とも》に、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり](|律法《りっぽう》は、|何事《なにごと》をも|全《まっと》うし|得《え》なかったからである)、|他方《たほう》では、さらにすぐれた|望《のぞ》みが|現《あらわ》れてきて、わたしたちを|神《かみ》に|近《ちか》づかせるのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]その|上《うえ》に、このことは|誓《ちか》いをもってなされた。|人々《ひとびと》は、|誓《ちか》いをしないで|祭司《さいし》とされるのであるが、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]この|人《ひと》の|場合《ばあい》は、|次《つぎ》のような|誓《ちか》いをもってされたのである。すなわち、|彼《かれ》について、こう|言《い》われている、「|主《しゅ》は|誓《ちか》われたが、|心《こころ》を|変《か》えることをされなかった。あなたこそは、|永遠《えいえん》に|祭司《さいし》である」。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]このようにして、イエスは|更《さら》にすぐれた|契約《けいやく》の|保証《ほしょう》となられたのである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]かつ、|死《し》ということがあるために、|務《つとめ》を|続《つづ》けることができないので、|多《おお》くの|人々《ひとびと》が|祭司《さいし》に|立《た》てられるのである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]しかし|彼《かれ》は、|永遠《えいえん》にいますかたであるので、|変《かわ》らない|祭司《さいし》の|務《つとめ》を|持《も》ちつづけておられるのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]そこでまた、|彼《かれ》は、いつも|生《い》きていて|彼《かれ》らのためにとりなしておられるので、|彼《かれ》によって|神《かみ》に|来《く》る|人々《ひとびと》を、いつも|救《すく》うことができるのである。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]このように、|聖《せい》にして、|悪《あく》も|汚《けが》れもなく、|罪人《つみびと》とは|区別《くべつ》され、かつ、もろもろの|天《てん》よりも|高《たか》くされている|大祭司《だいさいし》こそ、わたしたちにとってふさわしいかたである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、ほかの|大祭司《だいさいし》のように、まず|自分《じぶん》の|罪《つみ》のため、|次《つぎ》に|民《たみ》の|罪《つみ》のために、|日々《ひび》、いけにえをささげる|必要《ひつよう》はない。なぜなら、|自分《じぶん》をささげて、一|度《ど》だけ、それをされたからである。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|律法《りっぽう》は、|弱《よわ》さを|身《み》に|負《お》う|人間《にんげん》を|立《た》てて|大祭司《だいさいし》とするが、|律法《りっぽう》の|後《のち》にきた|誓《ちか》いの|御言《みことば》は、|永遠《えいえん》に|全《まっと》うされた|御子《みこ》を|立《た》てて、|大祭司《だいさいし》としたのである。 第八章[#「第八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|以上《いじょう》|述《の》べたことの|要点《ようてん》は、このような|大祭司《だいさいし》がわたしたちのためにおられ、|天《てん》にあって|大能者《たいのうしゃ》の|御座《みざ》の|右《みぎ》に|座《ざ》し、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|人間《にんげん》によらず|主《しゅ》によって|設《もう》けられた|真《しん》の|幕屋《まくや》なる|聖所《せいじょ》で|仕《つか》えておられる、ということである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]おおよそ、|大祭司《だいさいし》が|立《た》てられるのは、|供《そな》え|物《もの》やいけにえをささげるためにほかならない。したがって、この|大祭司《だいさいし》もまた、|何《なに》かささぐべき|物《もの》を|持《も》っておられねばならない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこで、もし|彼《かれ》が|地上《ちじょう》におられたなら、|律法《りっぽう》にしたがって|供《そな》え|物《もの》をささげる|祭司《さいし》たちが、|現《げん》にいるのだから、|彼《かれ》は|祭司《さいし》ではあり|得《え》なかったであろう。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|天《てん》にある|聖所《せいじょ》のひな|型《がた》と|影《かげ》とに|仕《つか》えている|者《もの》にすぎない。それについては、モーセが|幕屋《まくや》を|建《た》てようとしたとき、|御《み》|告《つ》げを|受《う》け、「|山《やま》で|示《しめ》された|型《かた》どおりに、|注意《ちゅうい》してそのいっさいを|作《つく》りなさい」と|言《い》われたのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ところがキリストは、はるかにすぐれた|務《つとめ》を|得《え》られたのである。それは、さらにまさった|約束《やくそく》に|基《もとづ》いて|立《た》てられた、さらにまさった|契約《けいやく》の|仲保者《ちゅうほしゃ》となられたことによる。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]もし|初《はじ》めの|契約《けいやく》に|欠《か》けたところがなかったなら、あとのものが|立《た》てられる|余地《よち》はなかったであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|神《かみ》は|彼《かれ》らを|責《せ》めて|言《い》われた、 [#ここから2字下げ] 「|主《しゅ》は|言《い》われる、|見《み》よ、 わたしがイスラエルの|家《いえ》およびユダの|家《いえ》と、 |新《あたら》しい|契約《けいやく》を|結《むす》ぶ|日《ひ》が|来《く》る。 [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それは、わたしが|彼《かれ》らの|先祖《せんぞ》たちの|手《て》をとって、 エジプトの|地《ち》から|導《みち》き|出《だ》した|日《ひ》に、 |彼《かれ》らと|結《むす》んだ|契約《けいやく》のようなものではない。 |彼《かれ》らがわたしの|契約《けいやく》にとどまることをしないので、 わたしも|彼《かれ》らをかえりみなかったからであると、 |主《しゅ》が|言《い》われる。 [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしが、それらの|日《ひ》の|後《のち》、イスラエルの|家《いえ》と|立《た》てようとする|契約《けいやく》はこれである、と|主《しゅ》が|言《い》われる。 すなわち、わたしの|律法《りっぽう》を|彼《かれ》らの|思《おも》いの|中《なか》に|入《い》れ、 |彼《かれ》らの|心《こころ》に|書《か》きつけよう。 こうして、わたしは|彼《かれ》らの|神《かみ》となり、 |彼《かれ》らはわたしの|民《たみ》となるであろう。 [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、それぞれ、その|同胞《どうほう》に、 また、それぞれ、その|兄弟《きょうだい》に、 |主《しゅ》を|知《し》れ、と|言《い》って|教《おし》えることはなくなる。 なぜなら、|大《おお》なる|者《もの》から|小《しょう》なる|者《もの》に|至《いた》るまで、 |彼《かれ》らはことごとく、 わたしを|知《し》るようになるからである。 [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|彼《かれ》らの|不義《ふぎ》をあわれみ、 もはや、|彼《かれ》らの|罪《つみ》を|思《おも》い|出《だ》すことはしない」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、「|新《あたら》しい」と|言《い》われたことによって、|初《はじ》めの|契約《けいやく》を|古《ふる》いとされたのである。|年《とし》を|経《へ》て|古《ふる》びたものは、やがて|消《き》えていく。 第九章[#「第九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|初《はじ》めの|契約《けいやく》にも、|礼拝《れいはい》についてのさまざまな|規定《きてい》と、|地上《ちじょう》の|聖所《せいじょ》とがあった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、まず|幕屋《まくや》が|設《もう》けられ、その|前《まえ》の|場所《ばしょ》には|燭台《しょくだい》と|机《つくえ》と|供《そな》えのパンとが|置《お》かれていた。これが、|聖所《せいじょ》と|呼《よ》ばれた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]また|第《だい》二の|幕《まく》の|後《のち》に、|別《べつ》の|場所《ばしょ》があり、それは|至聖所《しせいじょ》と|呼《よ》ばれた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そこには|金《きん》の|香《こう》|壇《だん》と|全面《ぜんめん》|金《きん》でおおわれた|契約《けいやく》の|箱《はこ》とが|置《お》かれ、その|中《なか》にはマナのはいっている|金《きん》のつぼと、|芽《め》を|出《だ》したアロンのつえと、|契約《けいやく》の|石板《いしいた》とが|入《い》れてあり、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|箱《はこ》の|上《うえ》には|栄光《えいこう》に|輝《かがや》くケルビムがあって、|贖罪所《しょくざいしょ》をおおっていた。これらのことについては、|今《いま》ここで、いちいち|述《の》べることができない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]これらのものが、|以上《いじょう》のように|整《ととの》えられた|上《うえ》で、|祭司《さいし》たちは|常《つね》に|幕屋《まくや》の|前《まえ》の|場所《ばしょ》にはいって|礼拝《れいはい》をするのであるが、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|幕屋《まくや》の|奥《おく》には|大祭司《だいさいし》が|年《ねん》に一|度《ど》だけはいるのであり、しかも|自分《じぶん》|自身《じしん》と|民《たみ》とのあやまちのためにささげる|血《ち》をたずさえないで|行《ゆ》くことはない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それによって|聖霊《せいれい》は、|前方《ぜんぽう》の|幕屋《まくや》が|存在《そんざい》している|限《かぎ》り、|聖所《せいじょ》にはいる|道《みち》はまだ|開《ひら》かれていないことを、|明《あき》らかに|示《しめ》している。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]この|幕屋《まくや》というのは|今《いま》の|時代《じだい》に|対《たい》する|比喩《ひゆ》である。すなわち、|供《そな》え|物《もの》やいけにえはささげられるが、|儀式《ぎしき》にたずさわる|者《もの》の|良心《りょうしん》を|全《まっと》うすることはできない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]それらは、ただ|食物《しょくもつ》と|飲《の》み|物《もの》と|種々《しゅじゅ》の|洗《あら》いごとに|関《かん》する|行事《ぎょうじ》であって、|改革《かいかく》の|時《とき》まで|課《か》せられている|肉《にく》の|規定《きてい》にすぎない。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]しかしキリストがすでに|現《あらわ》れた|祝福《しゅくふく》の|大祭司《だいさいし》としてこられたとき、|手《て》で|造《つく》られず、この|世《よ》界に|属《ぞく》さない、さらに|大《おお》きく、|完全《かんぜん》な|幕屋《まくや》をとおり、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]かつ、やぎと|子《こ》|牛《うし》との|血《ち》によらず、ご|自身《じしん》の|血《ち》によって、一|度《ど》だけ|聖所《せいじょ》にはいられ、それによって|永遠《えいえん》のあがないを|全《まっと》うされたのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]もし、やぎや|雄《お》|牛《うし》の|血《ち》や|雌牛《めうし》の|灰《はい》が、|汚《けが》れた|人《ひと》たちの|上《うえ》にまきかけられて、|肉体《にくたい》をきよめ|聖《せい》|別《べつ》するとすれば、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|永遠《えいえん》の|聖霊《せいれい》によって、ご|自身《じしん》を|傷《きず》なき|者《もの》として|神《かみ》にささげられたキリストの|血《ち》は、なおさら、わたしたちの|良心《りょうしん》をきよめて|死《し》んだわざを|取《と》り|除《のぞ》き、|生《い》ける|神《かみ》に|仕《つか》える|者《もの》としないであろうか。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それだから、キリストは|新《あたら》しい|契約《けいやく》の|仲保者《ちゅうほしゃ》なのである。それは、|彼《かれ》が|初《はじ》めの|契約《けいやく》のもとで|犯《おか》した|罪過《ざいか》をあがなうために|死《し》なれた|結果《けっか》、|召《め》された|者《もの》たちが、|約束《やくそく》された|永遠《えいえん》の|国《くに》を|受《う》け|継《つ》ぐためにほかならない。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|遺言《ゆいごん》には、|遺言者《ゆいごんしゃ》の|死《し》の|証明《しょうめい》が|必要《ひつよう》である。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|遺言《ゆいごん》は|死《し》によってのみその|効力《こうりょく》を|生《しょう》じ、|遺言者《ゆいごんしゃ》が|生《い》きている|間《あいだ》は、|効力《こうりょく》がない。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]だから、|初《はじ》めの|契約《けいやく》も、|血《ち》を|流《なが》すことなしに|成立《せいりつ》したのではない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、モーセが、|律法《りっぽう》に|従《したが》ってすべての|戒《いまし》めを|民《たみ》|全体《ぜんたい》に|宣言《せんげん》したとき、|水《みず》と|赤色《あかいろ》の|羊毛《ようもう》とヒソプとの|外《ほか》に、|子《こ》|牛《うし》とやぎとの|血《ち》を|取《と》って、|契約《けいやく》|書《しょ》と|民《たみ》|全体《ぜんたい》とにふりかけ、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、「これは、|神《かみ》があなたがたに|対《たい》して|立《た》てられた|契約《けいやく》の|血《ち》である」と|言《い》った。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はまた、|幕屋《まくや》と|儀式《ぎしき》|用《よう》の|器具《きぐ》いっさいにも、|同様《どうよう》に|血《ち》をふりかけた。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]こうして、ほとんどすべての|物《もの》が、|律法《りっぽう》に|従《したが》い、|血《ち》によってきよめられたのである。|血《ち》を|流《なが》すことなしには、|罪《つみ》のゆるしはあり|得《え》ない。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]このように、|天《てん》にあるもののひな|型《がた》は、これらのものできよめられる|必要《ひつよう》があるが、|天《てん》にあるものは、これらより|更《さら》にすぐれたいけにえで、きよめられねばならない。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]ところが、キリストは、ほんとうのものの|模型《もけい》にすぎない、|手《て》で|造《つく》った|聖所《せいじょ》にはいらないで、|上《うえ》なる|天《てん》にはいり、|今《いま》やわたしたちのために|神《かみ》のみまえに|出《で》て|下《くだ》さったのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|大祭司《だいさいし》は、|年《とし》ごとに、|自分《じぶん》|以外《いがい》のものの|血《ち》をたずさえて|聖所《せいじょ》にはいるが、キリストは、そのように、たびたびご|自身《じしん》をささげられるのではなかった。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]もしそうだとすれば、|世《よ》の|初《はじ》めから、たびたび|苦難《くなん》を|受《う》けねばならなかったであろう。しかし|事実《じじつ》、ご|自身《じしん》をいけにえとしてささげて|罪《つみ》を|取《と》り|除《のぞ》くために、|世《よ》の|終《おわ》りに、一|度《ど》だけ|現《あらわ》れたのである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]そして、一|度《ど》だけ|死《し》ぬことと、|死《し》んだ|後《のち》さばきを|受《う》けることとが、|人間《にんげん》に|定《さだ》まっているように、[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]キリストもまた、|多《おお》くの|人《ひと》の|罪《つみ》を|負《お》うために、一|度《ど》だけご|自身《じしん》をささげられた|後《のち》、|彼《かれ》を|待《ま》ち|望《のぞ》んでいる|人々《ひとびと》に、|罪《つみ》を|負《お》うためではなしに二|度目《どめ》に|現《あらわ》れて、|救《すくい》を|与《あた》えられるのである。 第一〇章[#「第一〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]いったい、|律法《りっぽう》はきたるべき|良《よ》いことの|影《かげ》をやどすにすぎず、そのものの|真《しん》のかたちをそなえているものではないから、|年《とし》ごとに|引《ひ》きつづきささげられる|同《おな》じようないけにえによっても、みまえに|近《ちか》づいて|来《く》る|者《もの》たちを、|全《まっと》うすることはできないのである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]もしできたとすれば、|儀式《ぎしき》にたずさわる|者《もの》たちは、一|度《ど》きよめられた|以上《いじょう》、もはや|罪《つみ》の|自覚《じかく》がなくなるのであるから、ささげ|物《もの》をすることがやんだはずではあるまいか。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]しかし|実際《じっさい》は、|年《とし》ごとに、いけにえによって|罪《つみ》の|思《おも》い|出《で》がよみがえって|来《く》るのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|雄《お》|牛《うし》ややぎなどの|血《ち》は、|罪《つみ》を|除《のぞ》き|去《さ》ることができないからである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それだから、キリストがこの|世《よ》にこられたとき、|次《つぎ》のように|言《い》われた、 [#ここから2字下げ] 「あなたは、いけにえやささげ|物《もの》を|望《のぞ》まれないで、 わたしのために、からだを|備《そな》えて|下《くだ》さった。 [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]あなたは|燔祭《はんさい》や|罪祭《ざいさい》を|好《この》まれなかった。 [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、わたしは|言《い》った、 『|神《かみ》よ、わたしにつき、 |巻物《まきもの》の|書物《しょもつ》に|書《か》いてあるとおり、 |見《み》よ、|御旨《みむね》を|行《おこな》うためにまいりました』」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ここで、|初《はじ》めに、「あなたは、いけにえとささげ|物《もの》と|燔祭《はんさい》と|罪祭《ざいさい》と(すなわち、|律法《りっぽう》に|従《したが》ってささげられるもの)を|望《のぞ》まれず、|好《この》まれもしなかった」とあり、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|次《つぎ》に、「|見《み》よ、わたしは|御旨《みむね》を|行《おこな》うためにまいりました」とある。すなわち、|彼《かれ》は、|後《のち》のものを|立《た》てるために、|初《はじ》めのものを|廃止《はいし》されたのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]この|御旨《みむね》に|基《もとづ》きただ一|度《ど》イエス・キリストのからだがささげられたことによって、わたしたちはきよめられたのである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]こうして、すべての|祭司《さいし》は|立《た》って|日《ひ》ごとに|儀式《ぎしき》を|行《おこな》い、たびたび|同《おな》じようないけにえをささげるが、それらは|決《けっ》して|罪《つみ》を|除《のぞ》き|去《さ》ることはできない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]しかるに、キリストは|多《おお》くの|罪《つみ》のために一つの|永遠《えいえん》のいけにえをささげた|後《のち》、|神《かみ》の|右《みぎ》に|座《ざ》し、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それから、|敵《てき》をその|足《あし》|台《だい》とするときまで、|待《ま》っておられる。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は一つのささげ|物《もの》によって、きよめられた|者《もの》たちを|永遠《えいえん》に|全《まっと》うされたのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|聖霊《せいれい》もまた、わたしたちにあかしをして、 [#ここから2字下げ] [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]「わたしが、それらの|日《ひ》の|後《のち》、 |彼《かれ》らに|対《たい》して|立《た》てようとする|契約《けいやく》はこれであると、 |主《しゅ》が|言《い》われる。 わたしの|律法《りっぽう》を|彼《かれ》らの|心《こころ》に|与《あた》え、 |彼《かれ》らの|思《おも》いのうちに|書《か》きつけよう」 [#ここで字下げ終わり] と|言《い》い、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]さらに、「もはや、|彼《かれ》らの|罪《つみ》と|彼《かれ》らの|不法《ふほう》とを、|思《おも》い|出《だ》すことはしない」と|述《の》べている。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]これらのことに|対《たい》するゆるしがある|以上《いじょう》、|罪《つみ》のためのささげ|物《もの》は、もはやあり|得《え》ない。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。こういうわけで、わたしたちはイエスの|血《ち》によって、はばかることなく|聖所《せいじょ》にはいることができ、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》の|肉体《にくたい》なる|幕《まく》をとおり、わたしたちのために|開《ひら》いて|下《くだ》さった|新《あたら》しい|生《い》きた|道《みち》をとおって、はいって|行《ゆ》くことができるのであり、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]さらに、|神《かみ》の|家《いえ》を|治《おさ》める|大《おお》いなる|祭司《さいし》があるのだから、[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|心《こころ》はすすがれて|良心《りょうしん》のとがめを|去《さ》り、からだは|清《きよ》い|水《みず》で|洗《あら》われ、まごころをもって|信仰《しんこう》の|確信《かくしん》に|満《み》たされつつ、みまえに|近《ちか》づこうではないか。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]また、|約束《やくそく》をして|下《くだ》さったのは|忠実《ちゅうじつ》なかたであるから、わたしたちの|告白《こくはく》する|望《のぞ》みを、|動《うご》くことなくしっかりと|持《も》ち|続《つづ》け、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》と|善行《ぜんこう》とを|励《はげ》むように|互《たがい》に|努《つと》め、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ある|人《ひと》たちがいつもしているように、|集会《しゅうかい》をやめることはしないで|互《たがい》に|励《はげ》まし、かの|日《ひ》が|近《ちか》づいているのを|見《み》て、ますます、そうしようではないか。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]もしわたしたちが、|真理《しんり》の|知識《ちしき》を|受《う》けたのちにもなお、ことさらに|罪《つみ》を|犯《おか》しつづけるなら、|罪《つみ》のためのいけにえは、もはやあり|得《え》ない。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]ただ、さばきと、|逆《さか》らう|者《もの》たちを|焼《や》きつくす|激《はげ》しい|火《ひ》とを、|恐《おそ》れつつ|待《ま》つことだけがある。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]モーセの|律法《りっぽう》を|無視《むし》する|者《もの》が、あわれみを|受《う》けることなしに、二、三の|人《ひと》の|証言《しょうげん》に|基《もとづ》いて|死刑《しけい》に|処《しょ》せられるとすれば、[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|子《こ》を|踏《ふ》みつけ、|自分《じぶん》がきよめられた|契約《けいやく》の|血《ち》を|汚《けが》れたものとし、さらに|恵《めぐ》みの|御霊《みたま》を|侮《あなど》る|者《もの》は、どんなにか|重《おも》い|刑罰《けいばつ》に|価《あたい》することであろう。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]「|復讐《ふくしゅう》はわたしのすることである。わたし|自身《じしん》が|報復《ほうふく》する」と|言《い》われ、また「|主《しゅ》はその|民《たみ》をさばかれる」と|言《い》われたかたを、わたしたちは|知《し》っている。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|生《い》ける|神《かみ》のみ|手《て》のうちに|落《お》ちるのは、|恐《おそ》ろしいことである。  [#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|光《ひかり》に|照《てら》されたのち、|苦《くる》しい|大《おお》きな|戦《たたか》いによく|耐《た》えた|初《はじ》めのころのことを、|思《おも》い|出《だ》してほしい。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]そしられ|苦《くる》しめられて|見《み》せ|物《もの》にされたこともあれば、このようなめに|会《あ》った|人々《ひとびと》の|仲間《なかま》にされたこともあった。[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]さらに|獄《ごく》に|入《い》れられた|人々《ひとびと》を|思《おも》いやり、また、もっとまさった|永遠《えいえん》の|宝《たから》を|持《も》っていることを|知《し》って、|自分《じぶん》の|財産《ざいさん》が|奪《うば》われても|喜《よろこ》んでそれを|忍《しの》んだ。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたは|自分《じぶん》の|持《も》っている|確信《かくしん》を|放棄《ほうき》してはいけない。その|確信《かくしん》には|大《おお》きな|報《むく》いが|伴《ともな》っているのである。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|御旨《みむね》を|行《おこな》って|約束《やくそく》のものを|受《う》けるため、あなたがたに|必要《ひつよう》なのは、|忍耐《にんたい》である。 [#ここから2字下げ] [#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]「もうしばらくすれば、 きたるべきかたがお|見《み》えになる。 |遅《おそ》くなることはない。 [#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり]わが|義人《ぎじん》は、|信仰《しんこう》によって|生《い》きる。 もし|信仰《しんこう》を|捨《す》てるなら、 わたしのたましいはこれを|喜《よろこ》ばない」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]しかしわたしたちは、|信仰《しんこう》を|捨《す》てて|滅《ほろ》びる|者《もの》ではなく、|信仰《しんこう》に|立《た》って、いのちを|得《え》る|者《もの》である。 第一一章[#「第一一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]さて、|信仰《しんこう》とは、|望《のぞ》んでいる|事《こと》がらを|確信《かくしん》し、まだ|見《み》ていない|事実《じじつ》を|確認《かくにん》することである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|昔《むかし》の|人《ひと》たちは、この|信仰《しんこう》のゆえに|賞賛《しょうさん》された。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、わたしたちは、この|世《よ》界が|神《かみ》の|言葉《ことば》で|造《つく》られたのであり、したがって、|見《み》えるものは|現《あらわ》れているものから|出《で》てきたのでないことを、|悟《さと》るのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、アベルはカインよりもまさったいけにえを|神《かみ》にささげ、|信仰《しんこう》によって|義《ぎ》なる|者《もの》と|認《みと》められた。|神《かみ》が、|彼《かれ》の|供《そな》え|物《もの》をよしとされたからである。|彼《かれ》は|死《し》んだが、|信仰《しんこう》によって|今《いま》もなお|語《かた》っている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、エノクは|死《し》を|見《み》ないように|天《てん》に|移《うつ》された。|神《かみ》がお|移《うつ》しになったので、|彼《かれ》は|見《み》えなくなった。|彼《かれ》が|移《うつ》される|前《まえ》に、|神《かみ》に|喜《よろこ》ばれた|者《もの》と、あかしされていたからである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》がなくては、|神《かみ》に|喜《よろこ》ばれることはできない。なぜなら、|神《かみ》に|来《く》る|者《もの》は、|神《かみ》のいますことと、ご|自身《じしん》を|求《もと》める|者《もの》に|報《むく》いて|下《くだ》さることとを、|必《かなら》ず|信《しん》じるはずだからである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、ノアはまだ|見《み》ていない|事《こと》がらについて|御《み》|告《つ》げを|受《う》け、|恐《おそ》れかしこみつつ、その|家族《かぞく》を|救《すく》うために|箱舟《はこぶね》を|造《つく》り、その|信仰《しんこう》によって|世《よ》の|罪《つみ》をさばき、そして、|信仰《しんこう》による|義《ぎ》を|受《う》け|継《つ》ぐ|者《もの》となった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、アブラハムは、|受《う》け|継《つ》ぐべき|地《ち》に|出《で》て|行《い》けとの|召《め》しをこうむった|時《とき》、それに|従《したが》い、|行《ゆ》く|先《さき》を|知《し》らないで|出《で》て|行《い》った。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、|他国《たこく》にいるようにして|約束《やくそく》の|地《ち》に|宿《やど》り、|同《おな》じ|約束《やくそく》を|継《つ》ぐイサク、ヤコブと|共《とも》に、|幕屋《まくや》に|住《す》んだ。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、ゆるがぬ|土台《どだい》の|上《うえ》に|建《た》てられた|都《みやこ》を、|待《ま》ち|望《のぞ》んでいたのである。その|都《みやこ》をもくろみ、また|建《た》てたのは、|神《かみ》である。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、サラもまた、|年老《としお》いていたが、|種《たね》を|宿《やど》す|力《ちから》を|与《あた》えられた。|約束《やくそく》をなさったかたは|真実《しんじつ》であると、|信《しん》じていたからである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]このようにして、ひとりの|死《し》んだと|同様《どうよう》な|人《ひと》から、|天《てん》の|星《ほし》のように、|海《うみ》べの|数《かぞ》えがたい|砂《すな》のように、おびただしい|人《ひと》が|生《うま》れてきたのである。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]これらの|人《ひと》はみな、|信仰《しんこう》をいだいて|死《し》んだ。まだ|約束《やくそく》のものは|受《う》けていなかったが、はるかにそれを|望《のぞ》み|見《み》て|喜《よろこ》び、そして、|地上《ちじょう》では|旅人《たびびと》であり|寄留者《きりゅうしゃ》であることを、|自《みずか》ら|言《い》いあらわした。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そう|言《い》いあらわすことによって、|彼《かれ》らがふるさとを|求《もと》めていることを|示《しめ》している。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]もしその|出《で》てきた|所《ところ》のことを|考《かんが》えていたなら、|帰《かえ》る|機会《きかい》はあったであろう。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし|実際《じっさい》、|彼《かれ》らが|望《のぞ》んでいたのは、もっと|良《よ》い、|天《てん》にあるふるさとであった。だから|神《かみ》は、|彼《かれ》らの|神《かみ》と|呼《よ》ばれても、それを|恥《はじ》とはされなかった。|事実《じじつ》、|神《かみ》は|彼《かれ》らのために、|都《みやこ》を|用意《ようい》されていたのである。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、アブラハムは、|試錬《しれん》を|受《う》けたとき、イサクをささげた。すなわち、|約束《やくそく》を|受《う》けていた|彼《かれ》が、そのひとり|子《こ》をささげたのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]この|子《こ》については、「イサクから|出《で》る|者《もの》が、あなたの|子孫《しそん》と|呼《よ》ばれるであろう」と|言《い》われていたのであった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、|神《かみ》が|死人《しにん》の|中《なか》から|人《ひと》をよみがえらせる|力《ちから》がある、と|信《しん》じていたのである。だから|彼《かれ》は、いわば、イサクを|生《い》きかえして|渡《わた》されたわけである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、イサクは、きたるべきことについて、ヤコブとエサウとを|祝福《しゅくふく》した。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、ヤコブは|死《し》のまぎわに、ヨセフの|子《こ》らをひとりびとり|祝福《しゅくふく》し、そしてそのつえのかしらによりかかって|礼拝《れいはい》した。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、ヨセフはその|臨終《りんじゅう》に、イスラエルの|子《こ》らの|出《で》て|行《ゆ》くことを|思《おも》い、|自分《じぶん》の|骨《ほね》のことについてさしずした。  [#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、モーセの|生《うま》れたとき、|両親《りょうしん》は、三か|月《げつ》のあいだ|彼《かれ》を|隠《かく》した。それは、|彼《かれ》らが|子供《こども》のうるわしいのを|見《み》たからである。|彼《かれ》らはまた、|王《おう》の|命令《めいれい》をも|恐《おそ》れなかった。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、モーセは、|成人《せいじん》したとき、パロの|娘《むすめ》の|子《こ》と|言《い》われることを|拒《こば》み、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|罪《つみ》のはかない|歓楽《かんらく》にふけるよりは、むしろ|神《かみ》の|民《たみ》と|共《とも》に|虐待《ぎゃくたい》されることを|選《えら》び、[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]キリストのゆえに|受《う》けるそしりを、エジプトの|宝《たから》にまさる|富《とみ》と|考《かんが》えた。それは、|彼《かれ》が|報《むく》いを|望《のぞ》み|見《み》ていたからである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、|彼《かれ》は|王《おう》の|憤《いきどお》りをも|恐《おそ》れず、エジプトを|立《た》ち|去《さ》った。|彼《かれ》は、|見《み》えないかたを|見《み》ているようにして、|忍《しの》びとおした。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、|滅《ほろ》ぼす|者《もの》が、|長子《ちょうし》らに|手《て》を|下《くだ》すことのないように、|彼《かれ》は|過越《すぎこし》を|行《おこな》い|血《ち》を|塗《ぬ》った。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、|人々《ひとびと》は|紅海《こうかい》をかわいた|土地《とち》をとおるように|渡《わた》ったが、|同《おな》じことを|企《くわだ》てたエジプト|人《じん》はおぼれ|死《し》んだ。[#太字]三〇[#「三〇」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、エリコの|城壁《じょうへき》は、|七日《なぬか》にわたってまわったために、くずれおちた。[#太字]三一[#「三一」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》によって、|遊女《ゆうじょ》ラハブは、|探《さぐ》りにきた|者《もの》たちをおだやかに|迎《むか》えたので、|不《ふ》|従順《じゅうじゅん》な|者《もの》どもと|一緒《いっしょ》に|滅《ほろ》びることはなかった。[#太字]三二[#「三二」は行右小書き][#太字終わり]このほか、|何《なに》を|言《い》おうか。もしギデオン、バラク、サムソン、エフタ、ダビデ、サムエル|及《およ》び|預言者《よげんしゃ》たちについて|語《かた》り|出《だ》すなら、|時間《じかん》が|足《た》りないであろう。[#太字]三三[#「三三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|信仰《しんこう》によって、|国々《くにぐに》を|征服《せいふく》し、|義《ぎ》を|行《おこな》い、|約束《やくそく》のものを|受《う》け、ししの|口《くち》をふさぎ、[#太字]三四[#「三四」は行右小書き][#太字終わり]|火《ひ》の|勢《いきお》いを|消《け》し、つるぎの|刃《は》をのがれ、|弱《よわ》いものは|強《つよ》くされ、|戦《たたか》いの|勇者《ゆうしゃ》となり、|他国《たこく》の|軍《ぐん》を|退《しりぞ》かせた。[#太字]三五[#「三五」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》たちは、その|死者《ししゃ》たちをよみがえらさせてもらった。ほかの|者《もの》は、|更《さら》にまさったいのちによみがえるために、|拷問《ごうもん》の|苦《くる》しみに|甘《あま》んじ、|放免《ほうめん》されることを|願《ねが》わなかった。[#太字]三六[#「三六」は行右小書き][#太字終わり]なおほかの|者《もの》たちは、あざけられ、むち|打《う》たれ、しばり|上《あ》げられ、|投獄《とうごく》されるほどのめに|会《あ》った。[#太字]三七[#「三七」は行右小書き][#太字終わり]あるいは、|石《いし》で|打《う》たれ、さいなまれ、のこぎりで|引《ひ》かれ、つるぎで|切《き》り|殺《ころ》され、|羊《ひつじ》の|皮《かわ》や、やぎの|皮《かわ》を|着《き》て|歩《ある》きまわり、|無一物《むいちもつ》になり、|悩《なや》まされ、|苦《くる》しめられ、[#太字]三八[#「三八」は行右小書き][#太字終わり](この|世《よ》は|彼《かれ》らの|住《す》む|所《ところ》ではなかった)、|荒野《あらの》と|山《やま》の|中《なか》と|岩《いわ》の|穴《あな》と|土《つち》の|穴《あな》とを、さまよい|続《つづ》けた。  [#太字]三九[#「三九」は行右小書き][#太字終わり]さて、これらの|人々《ひとびと》はみな、|信仰《しんこう》によってあかしされたが、|約束《やくそく》のものは|受《う》けなかった。[#太字]四〇[#「四〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はわたしたちのために、さらに|良《よ》いものをあらかじめ|備《そな》えて|下《くだ》さっているので、わたしたちをほかにしては|彼《かれ》らが|全《まっと》うされることはない。 第一二章[#「第一二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、わたしたちは、このような|多《おお》くの|証人《しょうにん》に|雲《くも》のように|囲《かこ》まれているのであるから、いっさいの|重荷《おもに》と、からみつく|罪《つみ》とをかなぐり|捨《す》てて、わたしたちの|参加《さんか》すべき|競走《きょうそう》を、|耐《た》え|忍《しの》んで|走《はし》りぬこうではないか。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》の|導《みちび》き|手《て》であり、またその|完成《かんせい》|者《もの》であるイエスを|仰《あお》ぎ|見《み》つつ、|走《はし》ろうではないか。|彼《かれ》は、|自分《じぶん》の|前《まえ》におかれている|喜《よろこ》びのゆえに、|恥《はじ》をもいとわないで|十字架《じゅうじか》を|忍《しの》び、|神《かみ》の|御座《みざ》の|右《みぎ》に|座《ざ》するに|至《いた》ったのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|弱《よわ》り|果《は》てて|意気《いき》そそうしないために、|罪人《つみびと》らのこのような|反抗《はんこう》を|耐《た》え|忍《しの》んだかたのことを、|思《おも》いみるべきである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|罪《つみ》と|取《と》り|組《く》んで|戦《たたか》う|時《とき》、まだ|血《ち》を|流《なが》すほどの|抵抗《ていこう》をしたことがない。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また|子《こ》たちに|対《たい》するように、あなたがたに|語《かた》られたこの|勧《すす》めの|言葉《ことば》を|忘《わす》れている、 [#ここから2字下げ] 「わたしの|子《こ》よ、 |主《しゅ》の|訓練《くんれん》を|軽《かろ》んじてはいけない。 |主《しゅ》に|責《せ》められるとき、|弱《よわ》り|果《は》ててはならない。 [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は|愛《あい》する|者《もの》を|訓練《くんれん》し、 |受《う》けいれるすべての|子《こ》を、 むち|打《う》たれるのである」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは|訓練《くんれん》として|耐《た》え|忍《しの》びなさい。|神《かみ》はあなたがたを、|子《こ》として|取《と》り|扱《あつか》っておられるのである。いったい、|父《ちち》に|訓練《くんれん》されない|子《こ》があるだろうか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]だれでも|受《う》ける|訓練《くんれん》が、あなたがたに|与《あた》えられないとすれば、それこそ、あなたがたは|私生子《しせいじ》であって、ほんとうの|子《こ》ではない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]その|上《うえ》、|肉親《にくしん》の|父《ちち》はわたしたちを|訓練《くんれん》するのに、なお|彼《かれ》をうやまうとすれば、なおさら、わたしたちは、たましいの|父《ちち》に|服従《ふくじゅう》して、|真《しん》に|生《い》きるべきではないか。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|肉親《にくしん》の|父《ちち》は、しばらくの|間《あいだ》、|自分《じぶん》の|考《かんが》えに|従《したが》って|訓練《くんれん》を|与《あた》えるが、たましいの|父《ちち》は、わたしたちの|益《えき》のため、そのきよさにあずからせるために、そうされるのである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]すべての|訓練《くんれん》は、|当座《とうざ》は、|喜《よろこ》ばしいものとは|思《おも》われず、むしろ|悲《かな》しいものと|思《おも》われる。しかし|後《のち》になれば、それによって|鍛え《きたえ》られる|者《もの》に、|平安《へいあん》な|義《ぎ》の|実《み》を|結《むす》ばせるようになる。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それだから、あなたがたのなえた|手《て》と、|弱《よわ》くなっているひざとを、まっすぐにしなさい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]また、|足《あし》のなえている|者《もの》が|踏《ふ》みはずすことなく、むしろいやされるように、あなたがたの|足《あし》のために、まっすぐな|道《みち》をつくりなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]すべての|人《ひと》と|相《あい》|和《わ》し、また、|自《みずか》らきよくなるように|努《つと》めなさい。きよくならなければ、だれも|主《しゅ》を|見《み》ることはできない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|気《き》をつけて、|神《かみ》の|恵《めぐ》みからもれることがないように、また、|苦《にが》い|根《ね》がはえ|出《で》て、あなたがたを|悩《なや》まし、それによって|多《おお》くの|人《ひと》が|汚《けが》されることのないようにしなさい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]また、|一杯《いっぱい》の|食《しょく》のために|長子《ちょうし》の|権利《けんり》を|売《う》ったエサウのように、|不品行《ふひんこう》な|俗悪《ぞくあく》な|者《もの》にならないようにしなさい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|知《し》っているように、|彼《かれ》はその|後《のち》、|祝福《しゅくふく》を|受《う》け|継《つ》ごうと|願《ねが》ったけれども、|捨《す》てられてしまい、|涙《なみだ》を|流《なが》してそれを|求《もと》めたが、|悔改《くいあらた》めの|機会《きかい》を|得《え》なかったのである。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|近《ちか》づいているのは、|手《て》で|触《ふ》れることができ、|火《ひ》が|燃《も》え、|黒雲《くろくも》や|暗《くら》やみやあらしにつつまれ、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また、ラッパの|響《ひびき》や、|聞《き》いた|者《もの》たちがそれ|以上《いじょう》、|耳《みみ》にしたくないと|願《ねが》ったような|言葉《ことば》がひびいてきた|山《やま》ではない。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そこでは、|彼《かれ》らは、「けものであっても、|山《やま》に|触《ふれ》たら、|石《いし》で|打《う》ち|殺《ころ》されてしまえ」という|命令《めいれい》の|言葉《ことば》に、|耐《た》えることができなかったのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]その|光景《こうけい》が|恐《おそ》ろしかったのでモーセさえも、「わたしは|恐《おそ》ろしさのあまり、おののいている」と|言《い》ったほどである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]しかしあなたがたが|近《ちか》づいているのは、シオンの|山《やま》、|生《い》ける|神《かみ》の|都《みやこ》、|天《てん》にあるエルサレム、|無数《むすう》の|天使《てんし》の|祝《いわい》|会《かい》、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|天《てん》に|登録《とうろく》されている|長子《ちょうし》たちの|教会《きょうかい》、|万民《ばんみん》の|審判者《しんぱんしゃ》なる|神《かみ》、|全《まっと》うされた|義人《ぎじん》の|霊《れい》、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|新《あたら》しい|契約《けいやく》の|仲保者《ちゅうほしゃ》イエス、ならびに、アベルの|血《ち》よりも|力強《ちからづよ》く|語《かた》るそそがれた|血《ち》である。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|語《かた》っておられるかたを|拒《こば》むことがないように、|注意《ちゅうい》しなさい。もし|地上《ちじょう》で|御旨《みむね》を|告《つ》げた|者《もの》を|拒《こば》んだ|人々《ひとびと》が、|罰《ばつ》をのがれることができなかったなら、|天《てん》から|告《つ》げ|示《しめ》すかたを|退《しりぞ》けるわたしたちは、なおさらそうなるのではないか。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]あの|時《とき》には、|御《み》|声《こえ》が|地《ち》を|震《ふる》わせた。しかし|今《いま》は、|約束《やくそく》して|言《い》われた、「わたしはもう一|度《ど》、|地《ち》ばかりでなく|天《てん》をも|震《ふる》わそう」。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]この「もう一|度《ど》」という|言葉《ことば》は、|震《ふる》われないものが|残《のこ》るために、|震《ふる》われるものが、|造《つく》られたものとして|取《と》り|除《のぞ》かれることを|示《しめ》している。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]このように、わたしたちは|震《ふる》われない|国《くに》を|受《う》けているのだから、|感謝《かんしゃ》をしようではないか。そして|感謝《かんしゃ》しつつ、|恐《おそ》れかしこみ、|神《かみ》に|喜《よろこ》ばれるように、|仕《つか》えていこう。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|神《かみ》は、|実《じつ》に、|焼《や》きつくす|火《ひ》である。 第一三章[#「第一三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》|愛《あい》を|続《つづ》けなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|旅人《たびびと》をもてなすことを|忘《わす》れてはならない。このようにして、ある|人々《ひとびと》は、|気《き》づかないで|御使《みつかい》たちをもてなした。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|獄《ごく》につながれている|人《ひと》たちを、|自分《じぶん》も|一緒《いっしょ》につながれている|心持《こころもち》で|思《おも》いやりなさい。また、|自分《じぶん》も|同《おな》じ|肉体《にくたい》にある|者《もの》だから、|苦《くる》しめられている|人《ひと》たちのことを、|心《こころ》にとめなさい。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すべての|人《ひと》は、|結婚《けっこん》を|重《おも》んずべきである。また|寝床《ねどこ》を|汚《けが》してはならない。|神《かみ》は、|不品行《ふひんこう》な|者《もの》や|姦淫《かんいん》をする|者《もの》をさばかれる。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|金銭《きんせん》を|愛《あい》することをしないで、|自分《じぶん》の|持《も》っているもので|満足《まんぞく》しなさい。|主《しゅ》は、「わたしは、|決《けっ》してあなたを|離《はな》れず、あなたを|捨《す》てない」と|言《い》われた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしたちは、はばからずに|言《い》おう、 [#ここから2字下げ] 「|主《しゅ》はわたしの|助《たす》け|主《ぬし》である。 わたしには|恐《おそ》れはない。 |人《ひと》は、わたしに|何《なに》ができようか」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|言《ことば》をあなたがたに|語《かた》った|指導者《しどうしゃ》たちのことを、いつも|思《おも》い|起《おこ》しなさい。|彼《かれ》らの|生活《せいかつ》の|最後《さいご》を|見《み》て、その|信仰《しんこう》にならいなさい。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]イエス・キリストは、きのうも、きょうも、いつまでも|変《かわ》ることがない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]さまざまな|違《ちが》った|教《おしえ》によって、|迷《まよ》わされてはならない。|食物《しょくもつ》によらず、|恵《めぐ》みによって、|心《こころ》を|強《つよ》くするがよい。|食物《しょくもつ》によって|歩《ある》いた|者《もの》は、|益《えき》を|得《え》ることがなかった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちには一つの|祭壇《さいだん》がある。|幕屋《まくや》で|仕《つか》えている|者《もの》たちは、その|祭壇《さいだん》の|食物《しょくもつ》をたべる|権利《けんり》はない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|大祭司《だいさいし》によって|罪《つみ》のためにささげられるけものの|血《ち》は、|聖所《せいじょ》のなかに|携《たずさ》えて|行《い》かれるが、そのからだは、|営所《えいしょ》の|外《そと》で|焼《や》かれてしまうからである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]だから、イエスもまた、ご|自分《じぶん》の|血《ち》で|民《たみ》をきよめるために、|門《もん》の|外《そと》で|苦難《くなん》を|受《う》けられたのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]したがって、わたしたちも、|彼《かれ》のはずかしめを|身《み》に|負《お》い、|営所《えいしょ》の|外《そと》に|出《で》て、みもとに|行《い》こうではないか。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]この|地上《ちじょう》には、|永遠《えいえん》の|都《みやこ》はない。きたらんとする|都《みやこ》こそ、わたしたちの|求《もと》めているものである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしたちはイエスによって、さんびのいけにえ、すなわち、|彼《かれ》の|御名《みな》をたたえるくちびるの|実《み》を、たえず|神《かみ》にささげようではないか。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして、|善《ぜん》を|行《おこな》うことと|施《ほどこ》しをすることとを、|忘《わす》れてはいけない。|神《かみ》は、このようないけにえを|喜《よろこ》ばれる。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|指導者《しどうしゃ》たちの|言《い》うことを|聞《き》きいれて、|従《したが》いなさい。|彼《かれ》らは、|神《かみ》に|言《い》いひらきをすべき|者《もの》として、あなたがたのたましいのために、|目《め》をさましている。|彼《かれ》らが|嘆《なげ》かないで、|喜《よろこ》んでこのことをするようにしなさい。そうでないと、あなたがたの|益《えき》にならない。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちのために、|祈《いの》ってほしい。わたしたちは|明《あき》らかな|良心《りょうしん》を|持《も》っていると|信《しん》じており、|何事《なにごと》についても、|正《ただ》しく|行動《こうどう》しようと|願《ねが》っている。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]わたしがあなたがたの|所《ところ》に|早《はや》く|帰《かえ》れるため、|祈《いの》ってくれるように、|特《とく》にお|願《ねが》いする。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|永遠《えいえん》の|契約《けいやく》の|血《ち》による|羊《ひつじ》の|大牧者《だいぼくしゃ》、わたしたちの|主《しゅ》イエスを、|死人《しにん》の|中《なか》から|引《ひ》き|上《あ》げられた|平和《へいわ》の|神《かみ》が、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]イエス・キリストによって、みこころにかなうことをわたしたちにして|下《くだ》さり、あなたがたが|御旨《みむね》を|行《おこな》うために、すべての|良《よ》きものを|備《そな》えて|下《くだ》さるようにこい|願《ねが》う。|栄光《えいこう》が、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|神《かみ》にあるように、アァメン。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。どうかわたしの|勧《すす》めの|言葉《ことば》を|受《う》けいれてほしい。わたしは、ただ|手《て》みじかに|書《か》いたのだから。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|兄弟《きょうだい》テモテがゆるされたことを、お|知《し》らせする。もし|彼《かれ》が|早《はや》く|来《く》れば、|彼《かれ》と|一緒《いっしょ》にわたしはあなたがたに|会《あ》えるだろう。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|指導者《しどうしゃ》|一同《いちどう》と|聖徒《せいと》たち|一同《いちどう》に、よろしく|伝《つた》えてほしい。イタリヤからきた|人々《ひとびと》から、あなたがたによろしく。  [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|恵《めぐ》みが、あなたがた|一同《いちどう》にあるように。 [#改ページ] ヤコブの手紙[#「ヤコブの手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》と|主《しゅ》イエス・キリストとの|僕《しもべ》ヤコブから、|離散《りさん》している十二|部族《ぶぞく》の|人々《ひとびと》へ、あいさつをおくる。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたが、いろいろな|試錬《しれん》に|会《あ》った|場合《ばあい》、それをむしろ|非常《ひじょう》に|喜《よろこ》ばしいことと|思《おも》いなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|知《し》っているとおり、|信仰《しんこう》がためされることによって、|忍耐《にんたい》が|生《う》み|出《だ》されるからである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]だから、なんら|欠点《けってん》のない、|完全《かんぜん》な、でき|上《あ》がった|人《ひと》となるように、その|忍耐力《にんたいりょく》を|十分《じゅうぶん》に|働《はたら》かせるがよい。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうち、|知恵《ちえ》に|不足《ふそく》している|者《もの》があれば、その|人《ひと》は、とがめもせずに|惜《お》しみなくすべての|人《ひと》に|与《あた》える|神《かみ》に、|願《ねが》い|求《もと》めるがよい。そうすれば、|与《あた》えられるであろう。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|疑《うたが》わないで、|信仰《しんこう》をもって|願《ねが》い|求《もと》めなさい。|疑《うたが》う|人《ひと》は、|風《かぜ》の|吹《ふ》くままに|揺《ゆ》れ|動《うご》く|海《うみ》の|波《なみ》に|似《に》ている。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そういう|人《ひと》は、|主《しゅ》から|何《なに》かをいただけるもののように|思《おも》うべきではない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そんな|人間《にんげん》は、|二心《ふたごころ》の|者《もの》であって、そのすべての|行動《こうどう》に|安定《あんてい》がない。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|低《ひく》い|身分《みぶん》の|兄弟《きょうだい》は、|自分《じぶん》が|高《たか》くされたことを|喜《よろこ》びなさい。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]また、|富《と》んでいる|者《もの》は、|自分《じぶん》が|低《ひく》くされたことを|喜《よろこ》ぶがよい。|富《と》んでいる|者《もの》は、|草花《くさばな》のように|過《す》ぎ|去《さ》るからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]たとえば、|太陽《たいよう》が|上《のぼ》って|熱風《ねっぷう》をおくると、|草《くさ》を|枯《か》らす。そしてその|花《はな》は|落《お》ち、その|美《うつく》しい|姿《すがた》は|消《き》えうせてしまう。それと|同《おな》じように、|富《と》んでいる|者《もの》も、その|一生《いっしょう》の|旅《たび》なかばで|没落《ぼつらく》するであろう。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|試錬《しれん》を|耐《た》え|忍《しの》ぶ|人《ひと》は、さいわいである。それを|忍《しの》びとおしたなら、|神《かみ》を|愛《あい》する|者《もの》たちに|約束《やくそく》されたいのちの|冠《かんむり》を|受《う》けるであろう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]だれでも|誘惑《ゆうわく》に|会《あ》う|場合《ばあい》、「この|誘惑《ゆうわく》は、|神《かみ》からきたものだ」と|言《い》ってはならない。|神《かみ》は|悪《あく》の|誘惑《ゆうわく》に|陥《おちい》るようなかたではなく、また|自《みずか》ら|進《すす》んで|人《ひと》を|誘惑《ゆうわく》することもなさらない。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》が|誘惑《ゆうわく》に|陥《おちい》るのは、それぞれ、|欲《よく》に|引《ひ》かれ、さそわれるからである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|欲《よく》がはらんで|罪《つみ》を|生《う》み、|罪《つみ》が|熟《じゅく》して|死《し》を|生《う》み|出《だ》す。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|兄弟《きょうだい》たちよ。|思《おも》い|違《ちが》いをしてはいけない。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]あらゆる|良《よ》い|贈《おく》り|物《もの》、あらゆる|完全《かんぜん》な|賜物《たまもの》は、|上《うえ》から、|光《ひかり》の|父《ちち》から|下《くだ》って|来《く》る。|父《ちち》には、|変化《へんか》とか|回転《かいてん》の|影《かげ》とかいうものはない。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》は、わたしたちを、いわば|被《ひ》|造物《ぞうぶつ》の|初穂《はつほ》とするために、|真理《しんり》の|言葉《ことば》によって|御旨《みむね》のままに、|生《う》み|出《だ》して|下《くだ》さったのである。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|兄弟《きょうだい》たちよ。このことを|知《し》っておきなさい。|人《ひと》はすべて、|聞《き》くに|早《はや》く、|語《かた》るにおそく、|怒《いか》るにおそくあるべきである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|怒《いか》りは、|神《かみ》の|義《ぎ》を|全《まっと》うするものではないからである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]だから、すべての|汚《けが》れや、はなはだしい|悪《あく》を|捨《す》て|去《さ》って、|心《こころ》に|植《う》えつけられている|御言《みことば》を、すなおに|受《う》け|入《い》れなさい。|御言《みことば》には、あなたがたのたましいを|救《すく》う|力《ちから》がある。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そして、|御言《みことば》を|行《おこな》う|人《ひと》になりなさい。おのれを|欺《あざむ》いて、ただ|聞《き》くだけの|者《もの》となってはいけない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]おおよそ|御言《みことば》を|聞《き》くだけで|行《おこな》わない|人《ひと》は、ちょうど、|自分《じぶん》の|生《うま》れつきの|顔《かお》を|鏡《かがみ》に|映《うつ》して|見《み》る|人《ひと》のようである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|自分《じぶん》を|映《うつ》して|見《み》てそこから|立《た》ち|去《さ》ると、そのとたんに、|自分《じぶん》の|姿《すがた》がどんなであったかを|忘《わす》れてしまう。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]これに|反《はん》して、|完全《かんぜん》な|自由《じゆう》の|律法《りっぽう》を|一心《いっしん》に|見《み》つめてたゆまない|人《ひと》は、|聞《き》いて|忘《わす》れてしまう|人《ひと》ではなくて、|実際《じっさい》に|行《おこな》う|人《ひと》である。こういう|人《ひと》は、その|行《おこな》いによって|祝福《しゅくふく》される。  [#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]もし|人《ひと》が|信心《しんじん》|深《ぶか》い|者《もの》だと|自任《じにん》しながら、|舌《した》を|制《せい》することをせず、|自分《じぶん》の|心《こころ》を|欺《あざむ》いているならば、その|人《ひと》の|信心《しんじん》はむなしいものである。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》なる|神《かみ》のみまえに|清《きよ》く|汚《けが》れのない|信心《しんじん》とは、|困《こま》っている|孤児《こじ》や、やもめを|見舞《みま》い、|自《みずか》らは|世《よ》の|汚《けが》れに|染《そ》まずに、|身《み》を|清《きよ》く|保《たも》つことにほかならない。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。わたしたちの|栄光《えいこう》の|主《しゅ》イエス・キリストへの|信仰《しんこう》を|守《まも》るのに、|分《わ》け|隔《へだ》てをしてはならない。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]たとえば、あなたがたの|会堂《かいどう》に、|金《きん》の|指輪《ゆびわ》をはめ、りっぱな|着物《きもの》を|着《き》た|人《ひと》がはいって|来《く》ると|同時《どうじ》に、みすぼらしい|着物《きもの》を|着《き》た|貧《まず》しい|人《ひと》がはいってきたとする。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]その|際《さい》、りっぱな|着物《きもの》を|着《き》た|人《ひと》に|対《たい》しては、うやうやしく「どうぞ、こちらの|良《よ》い|席《せき》にお|掛《か》け|下《くだ》さい」と|言《い》い、|貧《まず》しい|人《ひと》には、「あなたは、そこに|立《た》っていなさい。それとも、わたしの|足《あし》もとにすわっているがよい」と|言《い》ったとしたら、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|自分《じぶん》たちの|間《あいだ》で|差別《さべつ》|立《だ》てをし、よからぬ|考《かんが》えで|人《ひと》をさばく|者《もの》になったわけではないか。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|兄弟《きょうだい》たちよ。よく|聞《き》きなさい。|神《かみ》は、この|世《よ》の|貧《まず》しい|人《ひと》たちを|選《えら》んで|信仰《しんこう》に|富《と》ませ、|神《かみ》を|愛《あい》する|者《もの》たちに|約束《やくそく》された|御国《みくに》の|相続者《そうぞくしゃ》とされたではないか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかるに、あなたがたは|貧《まず》しい|人《ひと》をはずかしめたのである。あなたがたをしいたげ、|裁判所《さいばんしょ》に|引《ひ》きずり|込《こ》むのは、|富《と》んでいる|者《もの》たちではないか。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|対《たい》して|唱《とな》えられた|尊《たっと》い|御名《みな》を|汚《けが》すのは、|実《じつ》に|彼《かれ》らではないか。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もしあなたがたが、「|自分《じぶん》を|愛《あい》するように、あなたの|隣《とな》り|人《ひと》を|愛《あい》せよ」という|聖書《せいしょ》の|言葉《ことば》に|従《したが》って、このきわめて|尊《たっと》い|律法《りっぽう》を|守《まも》るならば、それは|良《よ》いことである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もし|分《わ》け|隔《へだ》てをするならば、あなたがたは|罪《つみ》を|犯《おか》すことになり、|律法《りっぽう》によって|違反者《いはんしゃ》として|宣告《せんこく》される。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|律法《りっぽう》をことごとく|守《まも》ったとしても、その一つの|点《てん》にでも|落《お》ち|度《ど》があれば、|全体《ぜんたい》を|犯《おか》したことになるからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]たとえば、「|姦淫《かんいん》するな」と|言《い》われたかたは、また「|殺《ころ》すな」とも|仰《おお》せになった。そこで、たとい|姦淫《かんいん》はしなくても、|人殺《ひとごろ》しをすれば、|律法《りっぽう》の|違反者《いはんしゃ》になったことになる。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]だから、|自由《じゆう》の|律法《りっぽう》によってさばかるべき|者《もの》らしく|語《かた》り、かつ|行《おこな》いなさい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あわれみを|行《おこな》わなかった|者《もの》に|対《たい》しては、|仮借《かしゃく》のないさばきが|下《くだ》される。あわれみは、さばきにうち|勝《か》つ。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。ある|人《ひと》が|自分《じぶん》には|信仰《しんこう》があると|称《しょう》していても、もし|行《おこな》いがなかったら、なんの|役《やく》に|立《た》つか。その|信仰《しんこう》は|彼《かれ》を|救《すく》うことができるか。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ある|兄弟《きょうだい》または|姉妹《しまい》が|裸《はだか》でいて、その|日《ひ》の|食物《しょくもつ》にもこと|欠《か》いている|場合《ばあい》、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうち、だれかが、「|安《やす》らかに|行《い》きなさい。|暖《あたた》まって、|食《た》べ|飽《あ》きなさい」と|言《い》うだけで、そのからだに|必要《ひつよう》なものを|何《なに》ひとつ|与《あた》えなかったとしたら、なんの|役《やく》に|立《た》つか。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》も、それと|同様《どうよう》に、|行《おこな》いを|伴《ともな》わなければ、それだけでは|死《し》んだものである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、「ある|人《ひと》には|信仰《しんこう》があり、またほかの|人《ひと》には|行《おこな》いがある」と|言《い》う|者《もの》があろう。それなら、|行《おこな》いのないあなたの|信仰《しんこう》なるものを|見《み》せてほしい。そうしたら、わたしの|行《おこな》いによって|信仰《しんこう》を|見《み》せてあげよう。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、|神《かみ》はただひとりであると|信《しん》じているのか。それは|結構《けっこう》である。|悪霊《あくりょう》どもでさえ、|信《しん》じておののいている。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]ああ、|愚《おろ》かな|人《ひと》よ。|行《おこな》いを|伴《ともな》わない|信仰《しんこう》のむなしいことを|知《し》りたいのか。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|父祖《ふそ》アブラハムは、その|子《こ》イサクを|祭壇《さいだん》にささげた|時《とき》、|行《おこな》いによって|義《ぎ》とされたのではなかったか。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]あなたが|知《し》っているとおり、|彼《かれ》においては、|信仰《しんこう》が|行《おこな》いと|共《とも》に|働《はたら》き、その|行《おこな》いによって|信仰《しんこう》が|全《まっと》うされ、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]こうして、「アブラハムは|神《かみ》を|信《しん》じた。それによって、|彼《かれ》は|義《ぎ》と|認《みと》められた」という|聖書《せいしょ》の|言葉《ことば》が|成就《じょうじゅ》し、そして、|彼《かれ》は「|神《かみ》の|友《とも》」と|唱《とな》えられたのである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]これでわかるように、|人《ひと》が|義《ぎ》とされるのは、|行《おこな》いによるのであって、|信仰《しんこう》だけによるのではない。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|同《おな》じように、かの|遊女《ゆうじょ》ラハブでさえも、|使者《ししゃ》たちをもてなし、|彼《かれ》らを|別《べつ》な|道《みち》から|送《おく》り|出《だ》した|時《とき》、|行《おこな》いによって|義《ぎ》とされたではないか。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|霊魂《れいこん》のないからだが|死《し》んだものであると|同様《どうよう》に、|行《おこな》いのない|信仰《しんこう》も|死《し》んだものなのである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたのうち|多《おお》くの|者《もの》は、|教師《きょうし》にならないがよい。わたしたち|教師《きょうし》が、|他《た》の|人《ひと》たちよりも、もっときびしいさばきを|受《う》けることが、よくわかっているからである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは|皆《みな》、|多《おお》くのあやまちを|犯《おか》すものである。もし、|言葉《ことば》の|上《うえ》であやまちのない|人《ひと》があれば、そういう|人《ひと》は、|全身《ぜんしん》をも|制《せい》|御《ぎょ》することのできる|完全《かんぜん》な|人《ひと》である。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|馬《うま》を|御《ぎょ》するために、その|口《くち》にくつわをはめるなら、その|全身《ぜんしん》を|引《ひ》きまわすことができる。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また|船《ふね》を|見《み》るがよい。|船体《せんたい》が|非常《ひじょう》に|大《おお》きく、また|激《はげ》しい|風《かぜ》に|吹《ふ》きまくられても、ごく|小《ちい》さなかじ一つで、|操縦者《そうじゅうしゃ》の|思《おも》いのままに|運転《うんてん》される。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それと|同《おな》じく、|舌《した》は|小《ちい》さな|器官《きかん》ではあるが、よく|大言壮語《たいげんそうご》する。|見《み》よ、ごく|小《ちい》さな|火《ひ》でも、|非常《ひじょう》に|大《おお》きな|森《もり》を|燃《も》やすではないか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|舌《した》は|火《ひ》である。|不義《ふぎ》の|世界《せかい》である。|舌《した》は、わたしたちの|器官《きかん》の一つとしてそなえられたものであるが、|全身《ぜんしん》を|汚《けが》し、|生存《せいぞん》の|車輪《しゃりん》を|燃《も》やし、|自《みずか》らは|地獄《じごく》の|火《ひ》で|焼《や》かれる。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あらゆる|種類《しゅるい》の|獣《けもの》、|鳥《とり》、|這《は》うもの、|海《うみ》の|生物《せいぶつ》は、すべて|人類《じんるい》に|制《せい》せられるし、また|制《せい》せられてきた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ところが、|舌《した》を|制《せい》しうる|人《ひと》は、ひとりもいない。それは、|制《せい》しにくい|悪《あく》であって、|死《し》の|毒《どく》に|満《み》ちている。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、この|舌《した》で|父《ちち》なる|主《しゅ》をさんびし、また、その|同《おな》じ|舌《した》で、|神《かみ》にかたどって|造《つく》られた|人間《にんげん》をのろっている。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|同《おな》じ|口《くち》から、さんびとのろいとが|出《で》て|来《く》る。わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。このような|事《こと》は、あるべきでない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|泉《いずみ》が、|甘《あま》い|水《みず》と|苦《にが》い|水《みず》とを、|同《おな》じ|穴《あな》からふき|出《だ》すことがあろうか。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。いちじくの|木《き》がオリブの|実《み》を|結《むす》び、ぶどうの|木《き》がいちじくの|実《み》を|結《むす》ぶことができようか。|塩水《しおみず》も、|甘《あま》い|水《みず》を|出《だ》すことはできない。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうちで、|知恵《ちえ》があり|物《もの》わかりのよい|人《ひと》は、だれであるか。その|人《ひと》は、|知恵《ちえ》にかなう|柔和《にゅうわ》な|行《おこな》いをしていることを、よい|生活《せいかつ》によって|示《しめ》すがよい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、もしあなたがたの|心《こころ》の|中《なか》に、|苦々《にがにが》しいねたみや|党派心《とうはしん》をいだいているのなら、|誇《ほこ》り|高《たか》ぶってはならない。また、|真理《しんり》にそむいて|偽《いつわ》ってはならない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そのような|知恵《ちえ》は、|上《うえ》から|下《くだ》ってきたものではなくて、|地《ち》につくもの、|肉《にく》に|属《ぞく》するもの、|悪魔《あくま》|的《てき》なものである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]ねたみと|党派心《とうはしん》とのあるところには、|混乱《こんらん》とあらゆる|忌《い》むべき|行為《こうい》とがある。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]しかし|上《うえ》からの|知恵《ちえ》は、|第《だい》一に|清《きよ》く、|次《つぎ》に|平和《へいわ》、|寛容《かんよう》、|温順《おんじゅん》であり、あわれみと|良《よ》い|実《み》とに|満《み》ち、かたより|見《み》ず、|偽《いつわ》りがない。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|義《ぎ》の|実《み》は、|平和《へいわ》を|造《つく》り|出《りだ》す|人《ひと》たちによって、|平和《へいわ》のうちにまかれるものである。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|中《なか》の|戦《たたか》いや|争《あらそ》いは、いったい、どこから|起《おこ》るのか。それはほかではない。あなたがたの|肢体《したい》の|中《なか》で|相戦《あいたたか》う|欲情《よくじょう》からではないか。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、むさぼるが|得《え》られない。そこで|人殺《ひとごろ》しをする。|熱望《ねつぼう》するが|手《て》に|入《い》れることができない。そこで|争《あらそ》い|戦《たたか》う。あなたがたは、|求《もと》めないから|得《え》られないのだ。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|求《もと》めても|与《あた》えられないのは、|快楽《かいらく》のために|使《つか》おうとして、|悪《わる》い|求《もと》め|方《ほう》をするからだ。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|不貞《ふてい》のやからよ。|世《よ》を|友《とも》とするのは、|神《かみ》への|敵対《てきたい》であることを、|知《し》らないか。おおよそ|世《よ》の|友《とも》となろうと|思《おも》う|者《もの》は、|自《みずか》らを|神《かみ》の|敵《てき》とするのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それとも、「|神《かみ》は、わたしたちの|内《うち》に|住《す》まわせた|霊《れい》を、ねたむほどに|愛《あい》しておられる」と|聖書《せいしょ》に|書《か》いてあるのは、むなしい|言葉《ことば》だと|思《おも》うのか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし|神《かみ》は、いや|増《ま》しに|恵《めぐ》みを|賜《たま》う。であるから、「|神《かみ》は|高《たか》ぶる|者《もの》をしりぞけ、へりくだる|者《もの》に|恵《めぐ》みを|賜《たま》う」とある。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そういうわけだから、|神《かみ》に|従《したが》いなさい。そして、|悪魔《あくま》に|立《た》ちむかいなさい。そうすれば、|彼《かれ》はあなたがたから|逃《に》げ|去《さ》るであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》に|近《ちか》づきなさい。そうすれば、|神《かみ》はあなたがたに|近《ちか》づいて|下《くだ》さるであろう。|罪人《つみびと》どもよ、|手《て》をきよめよ。|二心《ふたごころ》の|者《もの》どもよ、|心《こころ》を|清《きよ》くせよ。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|苦《くる》しめ、|悲《かな》しめ、|泣《な》け。あなたがたの|笑《わら》いを|悲《かな》しみに、|喜《よろこ》びを|憂《うれ》いに|変《か》えよ。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》のみまえにへりくだれ。そうすれば、|主《しゅ》は、あなたがたを|高《たか》くして|下《くだ》さるであろう。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|互《たがい》に|悪口《わるぐち》を|言《い》い|合《あ》ってはならない。|兄弟《きょうだい》の|悪口《わるぐち》を|言《い》ったり、|自分《じぶん》の|兄弟《きょうだい》をさばいたりする|者《もの》は、|律法《りっぽう》をそしり、|律法《りっぽう》をさばくやからである。もしあなたが|律法《りっぽう》をさばくなら、|律法《りっぽう》の|実行《じっこう》|者《もの》ではなくて、その|審判者《しんぱんしゃ》なのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|立法《りっぽう》|者《しゃ》であり|審判者《しんぱんしゃ》であるかたは、ただひとりであって、|救《すく》うことも|滅《ほろ》ぼすこともできるのである。しかるに、|隣《とな》り|人《ひと》をさばくあなたは、いったい、|何者《なにもの》であるか。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]よく|聞《き》きなさい。「きょうか、あす、これこれの|町《まち》へ|行《い》き、そこに一か|年《ねん》|滞在《たいざい》し、|商売《しょうばい》をして|一《ひと》もうけしよう」と|言《い》う|者《もの》たちよ。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、あすのこともわからぬ|身《み》なのだ。あなたがたのいのちは、どんなものであるか。あなたがたは、しばしの|間《あいだ》あらわれて、たちまち|消《き》え|行《い》く|霧《きり》にすぎない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、あなたがたは「|主《しゅ》のみこころであれば、わたしは|生《い》きながらえもし、あの|事《こと》この|事《こと》もしよう」と|言《い》うべきである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]ところが、あなたがたは|誇《ほこ》り|高《たか》ぶっている。このような|高慢《こうまん》は、すべて|悪《あく》である。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》が、なすべき|善《ぜん》を|知《し》りながら|行《おこな》わなければ、それは|彼《かれ》にとって|罪《つみ》である。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|富《と》んでいる|人《ひと》たちよ。よく|聞《き》きなさい。あなたがたは、|自分《じぶん》の|身《み》に|降《ふ》りかかろうとしているわざわいを|思《おも》って、|泣《な》き|叫《さけ》ぶがよい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|富《とみ》は|朽《く》ち|果《は》て、|着物《きもの》はむしばまれ、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|金銀《きんぎん》はさびている。そして、そのさびの|毒《どく》は、あなたがたの|罪《つみ》を|責《せ》め、あなたがたの|肉《にく》を|火《ひ》のように|食《く》いつくすであろう。あなたがたは、|終《おわ》りの|時《とき》にいるのに、なお|宝《たから》をたくわえている。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、あなたがたが|労働者《ろうどうしゃ》たちに|畑《はたけ》の|刈入《かりい》れをさせながら、|支払《しはら》わずにいる|賃銀《ちんぎん》が、|叫《さけ》んでいる。そして、|刈入《かりい》れをした|人《ひと》たちの|叫《さけ》び|声《ごえ》が、すでに|万軍《ばんぐん》の|主《しゅ》の|耳《みみ》に|達《たっ》している。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|地上《ちじょう》でおごり|暮《くら》し、|快楽《かいらく》にふけり、「ほふらるる|日《ひ》」のために、おのが|心《こころ》を|肥《こ》やしている。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そして、|義人《ぎじん》を|罪《つみ》に|定《さだ》め、これを|殺《ころ》した。しかも|彼《かれ》は、あなたがたに|抵抗《ていこう》しない。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]だから、|兄弟《きょうだい》たちよ。|主《しゅ》の|来臨《らいりん》の|時《とき》まで|耐《た》え|忍《しの》びなさい。|見《み》よ、|農夫《のうふ》は、|地《ち》の|尊《たっと》い|実《みの》りを、|前《まえ》の|雨《あめ》と|後《のち》の|雨《あめ》とがあるまで、|耐《た》え|忍《しの》んで|待《ま》っている。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたも、|主《しゅ》の|来臨《らいりん》が|近《ちか》づいているから、|耐《た》え|忍《しの》びなさい。|心《こころ》を|強《つよ》くしていなさい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|互《たがい》に|不平《ふへい》を|言《い》い|合《あ》ってはならない。さばきを|受《う》けるかも|知《し》れないから。|見《み》よ、さばき|主《しゅ》が、すでに|戸口《とぐち》に|立《た》っておられる。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|苦《くる》しみを|耐《た》え|忍《しの》ぶことについては、|主《しゅ》の|御名《みな》によって|語《かた》った|預言者《よげんしゃ》たちを|模範《もはん》にするがよい。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|忍《しの》び|抜《ぬ》いた|人《ひと》たちはさいわいであると、わたしたちは|思《おも》う。あなたがたは、ヨブの|忍耐《にんたい》のことを|聞《き》いている。また、|主《しゅ》が|彼《かれ》になさったことの|結末《けつまつ》を|見《み》て、|主《しゅ》がいかに|慈愛《じあい》とあわれみとに|富《と》んだかたであるかが、わかるはずである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]さて、わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。|何《なに》はともあれ、|誓《ちか》いをしてはならない。|天《てん》をさしても、|地《ち》をさしても、あるいは、そのほかのどんな|誓《ちか》いによっても、いっさい|誓《ちか》ってはならない。むしろ、「しかり」を「しかり」とし、「|否《いな》」を「|否《いな》」としなさい。そうしないと、あなたがたは、さばきを|受《う》けることになる。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|中《なか》に、|苦《くる》しんでいる|者《もの》があるか。その|人《ひと》は、|祈《いの》るがよい。|喜《よろこ》んでいる|者《もの》があるか。その|人《ひと》は、さんびするがよい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|中《なか》に、|病《や》んでいる|者《もの》があるか。その|人《ひと》は、|教会《きょうかい》の|長老《ちょうろう》たちを|招《まね》き、|主《しゅ》の|御名《みな》によって、オリブ|油《ゆ》を|注《そそ》いで|祈《いの》ってもらうがよい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|信仰《しんこう》による|祈《いのり》は、|病《や》んでいる|人《ひと》を|救《すく》い、そして、|主《しゅ》はその|人《ひと》を|立《た》ちあがらせて|下《くだ》さる。かつ、その|人《ひと》が|罪《つみ》を|犯《おか》していたなら、それもゆるされる。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]だから、|互《たがい》に|罪《つみ》を|告白《こくはく》し|合《あ》い、また、いやされるようにお|互《たがい》のために|祈《いの》りなさい。|義人《ぎじん》の|祈《いのり》は、|大《おお》いに|力《ちから》があり、|効果《こうか》のあるものである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]エリヤは、わたしたちと|同《おな》じ|人間《にんげん》であったが、|雨《あめ》が|降《ふ》らないようにと|祈《いのり》をささげたところ、三|年《ねん》六か|月《げつ》のあいだ、|地上《ちじょう》に|雨《あめ》が|降《ふ》らなかった。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]それから、ふたたび|祈《いの》ったところ、|天《てん》は|雨《あめ》を|降《ふ》らせ、|地《ち》はその|実《み》をみのらせた。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|兄弟《きょうだい》たちよ。あなたがたのうち、|真理《しんり》の|道《みち》から|踏《ふ》み|迷《まよ》う|者《もの》があり、だれかが|彼《かれ》を|引《ひ》きもどすなら、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]かように|罪人《つみびと》を|迷《まよ》いの|道《みち》から|引《ひ》きもどす|人《ひと》は、そのたましいを|死《し》から|救《すく》い|出《だ》し、かつ、|多《おお》くの|罪《つみ》をおおうものであることを、|知《し》るべきである。 [#改ページ] ペテロの第一の手紙[#「ペテロの第一の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエス・キリストの|使徒《しと》ペテロから、ポント、ガラテヤ、カパドキヤ、アジヤおよびビテニヤに|離散《りさん》し|寄留《きりゅう》している|人《ひと》たち、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、イエス・キリストに|従《したが》い、かつ、その|血《ち》のそそぎを|受《う》けるために、|父《ちち》なる|神《かみ》の|予知《よち》されたところによって|選《えら》ばれ、|御霊《みたま》のきよめにあずかっている|人《ひと》たちへ。  |恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたに|豊《ゆた》かに|加《くわ》わるように。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ほむべきかな、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|父《ちち》なる|神《かみ》。|神《かみ》は、その|豊《ゆた》かなあわれみにより、イエス・キリストを|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせ、それにより、わたしたちを|新《あら》たに|生《うま》れさせて|生《い》ける|望《のぞ》みをいだかせ、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのために|天《てん》にたくわえてある、|朽《く》ちず|汚《けが》れず、しぼむことのない|資産《しさん》を|受《う》け|継《つ》ぐ|者《もの》として|下《くだ》さったのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|終《おわ》りの|時《とき》に|啓示《けいじ》さるべき|救《すくい》にあずかるために、|信仰《しんこう》により|神《かみ》の|御《み》|力《ちから》に|守《まも》られているのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そのことを|思《おも》って、|今《いま》しばらくのあいだは、さまざまな|試錬《しれん》で|悩《なや》まねばならないかも|知《し》れないが、あなたがたは|大《おお》いに|喜《よろこ》んでいる。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]こうして、あなたがたの|信仰《しんこう》はためされて、|火《ひ》で|精錬《せいれん》されても|朽《く》ちる|外《ほか》はない|金《きん》よりもはるかに|尊《たっと》いことが|明《あき》らかにされ、イエス・キリストの|現《あらわ》れるとき、さんびと|栄光《えいこう》とほまれとに|変《かわ》るであろう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、イエス・キリストを|見《み》たことはないが、|彼《かれ》を|愛《あい》している。|現在《げんざい》、|見《み》てはいないけれども、|信《しん》じて、|言葉《ことば》につくせない、|輝《かがや》きにみちた|喜《よろこ》びにあふれている。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それは、|信仰《しんこう》の|結果《けっか》なるたましいの|救《すくい》を|得《え》ているからである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]この|救《すくい》については、あなたがたに|対《たい》する|恵《めぐ》みのことを|預言《よげん》した|預言者《よげんしゃ》たちも、たずね|求《もと》め、かつ、つぶさに|調《しら》べた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|自分《じぶん》たちのうちにいますキリストの|霊《れい》が、キリストの|苦難《くなん》とそれに|続《つづ》く|栄光《えいこう》とを、あらかじめあかしした|時《とき》、それは、いつの|時《とき》、どんな|場合《ばあい》をさしたのかを、|調《しら》べたのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そして、それらについて|調《しら》べたのは、|自分《じぶん》たちのためではなくて、あなたがたのための|奉仕《ほうし》であることを|示《しめ》された。それらの|事《こと》は、|天《てん》からつかわされた|聖霊《せいれい》に|感《かん》じて|福音《ふくいん》をあなたがたに|宣《の》べ|伝《つた》えた|人々《ひとびと》によって、|今《いま》や、あなたがたに|告《つ》げ|知《し》らされたのであるが、これは、|御使《みつかい》たちも、うかがい|見《み》たいと|願《ねが》っている|事《こと》である。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それだから、|心《こころ》の|腰《こし》に|帯《おび》を|締《し》め、|身《み》を|慎《つつし》み、イエス・キリストの|現《あらわ》れる|時《とき》に|与《あた》えられる|恵《めぐ》みを、いささかも|疑《うたが》わずに|待《ま》ち|望《のぞ》んでいなさい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|従順《じゅうじゅん》な|子供《こども》として、|無知《むち》であった|時代《じだい》の|欲情《よくじょう》に|従《したが》わず、[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、あなたがたを|召《め》して|下《くだ》さった|聖《せい》なるかたにならって、あなたがた|自身《じしん》も、あらゆる|行《おこな》いにおいて|聖《せい》なる|者《もの》となりなさい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》に、「わたしが|聖《せい》なる|者《もの》であるから、あなたがたも|聖《せい》なる|者《もの》になるべきである」と|書《か》いてあるからである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|人《ひと》をそれぞれのしわざに|応《おう》じて、|公平《こうへい》にさばくかたを、|父《ちち》と|呼《よ》んでいるからには、|地上《ちじょう》に|宿《やど》っている|間《あいだ》を、おそれの|心《こころ》をもって|過《す》ごすべきである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのよく|知《し》っているとおり、あなたがたが|先祖《せんぞ》|伝来《でんらい》の|空疎《くうそ》な|生活《せいかつ》からあがない|出《だ》されたのは、|銀《ぎん》や|金《きん》のような|朽《く》ちる|物《もの》によったのではなく、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]きずも、しみもない|小羊《こひつじ》のようなキリストの|尊《たっと》い|血《ち》によったのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]キリストは、|天地《てんち》が|造《つく》られる|前《まえ》から、あらかじめ|知《し》られていたのであるが、この|終《おわ》りの|時《とき》に|至《いた》って、あなたがたのために|現《あらわ》れたのである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、このキリストによって、|彼《かれ》を|死人《しにん》の|中《なか》からよみがえらせて、|栄光《えいこう》をお|与《あた》えになった|神《かみ》を|信《しん》じる|者《もの》となったのであり、したがって、あなたがたの|信仰《しんこう》と|望《のぞ》みとは、|神《かみ》にかかっているのである。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|真理《しんり》に|従《したが》うことによって、たましいをきよめ、|偽《いつわ》りのない|兄弟《きょうだい》|愛《あい》をいだくに|至《いた》ったのであるから、|互《たがい》に|心《こころ》から|熱《あつ》く|愛《あい》し|合《あ》いなさい。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|新《あら》たに|生《うま》れたのは、|朽《く》ちる|種《たね》からではなく、|朽《く》ちない|種《たね》から、すなわち、|神《かみ》の|変《かわ》ることのない|生《い》ける|御言《みことば》によったのである。 [#ここから2字下げ] [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]「|人《ひと》はみな|草《くさ》のごとく、 その|栄華《えいが》はみな|草《くさ》の|花《はな》に|似《に》ている。 |草《くさ》は|枯《か》れ、 |花《はな》は散る。 しかし、|主《しゅ》の|言葉《ことば》は、とこしえに|残《のこ》る」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]これが、あなたがたに|宣《の》べ|伝《つた》えられた|御言葉《みことば》である。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]だから、あらゆる|悪意《あくい》、あらゆる|偽《いつわ》り、|偽善《ぎぜん》、そねみ、いっさいの|悪口《あっこう》を|捨《す》てて、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》|生《うま》れたばかりの|乳飲《ちの》み|子《ご》のように、|混《ま》じりけのない|霊《れい》の|乳《ちち》を|慕《した》い|求《もと》めなさい。それによっておい|育《そだ》ち、|救《すくい》に|入《はい》るようになるためである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|主《しゅ》が|恵《めぐ》み|深《ぶか》いかたであることを、すでに|味《あじ》わい|知《し》ったはずである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は、|人《ひと》には|捨《す》てられたが、|神《かみ》にとっては|選《えら》ばれた|尊《たっと》い|生《い》ける|石《いし》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]この|主《しゅ》のみもとにきて、あなたがたも、それぞれ|生《い》ける|石《いし》となって、|霊《れい》の|家《いえ》に|築《きず》き|上《あ》げられ、|聖《せい》なる|祭司《さいし》となって、イエス・キリストにより、|神《かみ》によろこばれる|霊《れい》のいけにえを、ささげなさい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》にこう|書《か》いてある、 [#ここから2字下げ] 「|見《み》よ、わたしはシオンに、 |選《えら》ばれた|尊《たっと》い|石《いし》、|隅《すみ》のかしら|石《いし》を|置《お》く。 それにより|頼《たの》む|者《もの》は、 |決《けっ》して、|失望《しつぼう》に|終《おわ》ることがない」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]この|石《いし》は、より|頼《たの》んでいるあなたがたには|尊《たっと》いものであるが、|不《ふ》|信仰《しんこう》な|人々《ひとびと》には「|家《いえ》|造《つく》りらの|捨《す》てた|石《いし》で、|隅《すみ》のかしら|石《いし》となったもの」、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]また「つまずきの|石《いし》、|妨《さまた》げの|岩《いわ》」である。しかし、|彼《かれ》らがつまずくのは、|御言《みことば》に|従《したが》わないからであって、|彼《かれ》らは、|実《じつ》は、そうなるように|定《さだ》められていたのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたは、|選《えら》ばれた|種族《しゅぞく》、|祭司《さいし》の|国《くに》、|聖《せい》なる|国民《こくみん》、|神《かみ》につける|民《たみ》である。それによって、|暗《くら》やみから|驚《おどろ》くべきみ|光《ひかり》に|招《まね》き|入《い》れて|下《くだ》さったかたのみわざを、あなたがたが|語《かた》り|伝《つた》えるためである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|以前《いぜん》は|神《かみ》の|民《たみ》でなかったが、いまは|神《かみ》の|民《たみ》であり、|以前《いぜん》は、あわれみを|受《う》けたことのない|者《もの》であったが、いまは、あわれみを|受《う》けた|者《もの》となっている。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。あなたがたに|勧《すす》める。あなたがたは、この|世《よ》の|旅人《たびびと》であり|寄留者《きりゅうしゃ》であるから、たましいに|戦《たたか》いをいどむ|肉《にく》の|欲《よく》を|避《さ》けなさい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|異邦人《いほうじん》の|中《なか》にあって、りっぱな|行《おこな》いをしなさい。そうすれば、|彼《かれ》らは、あなたがたを|悪人《あくにん》|呼《よ》ばわりしていても、あなたがたのりっぱなわざを|見《み》て、かえって、おとずれの|日《ひ》に|神《かみ》をあがめるようになろう。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、すべて|人《ひと》の|立《た》てた|制《せい》|度《ど》に、|主《しゅ》のゆえに|従《したが》いなさい。|主権者《しゅけんしゃ》としての|王《おう》であろうと、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]あるいは、|悪《あく》を|行《おこな》う|者《もの》を|罰《ばっ》し|善《ぜん》を|行《おこな》う|者《もの》を|賞《しょう》するために、|王《おう》からつかわされた|長官《ちょうかん》であろうと、これに|従《したが》いなさい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|善《ぜん》を|行《おこな》うことによって、|愚《おろ》かな|人々《ひとびと》の|無知《むち》な|発言《はつげん》を|封《ふう》じるのは、|神《かみ》の|御旨《みむね》なのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|自由人《じゆうじん》にふさわしく|行動《こうどう》しなさい。ただし、|自由《じゆう》をば|悪《あく》を|行《おこな》う|口実《こうじつ》として|用《もち》いず、|神《かみ》の|僕《しもべ》にふさわしく|行動《こうどう》しなさい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]すべての|人《ひと》をうやまい、|兄弟《きょうだい》たちを|愛《あい》し、|神《かみ》をおそれ、|王《おう》を|尊《たっと》びなさい。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|僕《しもべ》たる|者《もの》よ。|心《こころ》からのおそれをもって、|主人《しゅじん》に|仕《つか》えなさい。|善良《ぜんりょう》で|寛容《かんよう》な|主人《しゅじん》だけにでなく、|気《き》むずかしい|主人《しゅじん》にも、そうしなさい。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]もしだれかが、|不当《ふとう》な|苦《くる》しみを|受《う》けても、|神《かみ》を|仰《あお》いでその|苦痛《くつう》を|耐《た》え|忍《しの》ぶなら、それはよみせられることである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|悪《わる》いことをして|打《う》ちたたかれ、それを|忍《しの》んだとしても、なんの|手柄《てがら》になるのか。しかし|善《ぜん》を|行《おこな》って|苦《くる》しみを|受《う》け、しかもそれを|耐《た》え|忍《しの》んでいるとすれば、これこそ|神《かみ》によみせられることである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|実《じつ》に、そうするようにと|召《め》されたのである。キリストも、あなたがたのために|苦《くる》しみを|受《う》け、|御足《みあし》の|跡《あと》を|踏《ふ》み|従《したが》うようにと、|模範《もはん》を|残《のこ》されたのである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]キリストは|罪《つみ》を|犯《おか》さず、その|口《くち》には|偽《いつわ》りがなかった。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]ののしられても、ののしりかえさず、|苦《くる》しめられても、おびやかすことをせず、|正《ただ》しいさばきをするかたに、いっさいをゆだねておられた。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]さらに、わたしたちが|罪《つみ》に|死《し》に、|義《ぎ》に|生《い》きるために、|十字架《じゅうじか》にかかって、わたしたちの|罪《つみ》をご|自分《じぶん》の|身《み》に|負《お》われた。その|傷《きず》によって、あなたがたは、いやされたのである。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|羊《ひつじ》のようにさ|迷《まよ》っていたが、|今《いま》は、たましいの|牧者《ぼくしゃ》であり|監督《かんとく》であるかたのもとに、たち|帰《かえ》ったのである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|同《おな》じように、|妻《つま》たる|者《もの》よ。|夫《おっと》に|仕《つか》えなさい。そうすれば、たとい|御言《みことば》に|従《したが》わない|夫《おっと》であっても、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうやうやしく|清《きよ》い|行《おこな》いを|見《み》て、その|妻《つま》の|無言《むごん》の|行《おこな》いによって、|救《すくい》に|入《い》れられるようになるであろう。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、|髪《かみ》を|編《あ》み、|金《きん》の|飾《かざ》りをつけ、|服装《ふくそう》をととのえるような|外《がい》|面《めん》の|飾《かざ》りではなく、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]かくれた|内《うち》なる|人《ひと》、|柔和《にゅうわ》で、しとやかな|霊《れい》という|朽《く》ちることのない|飾《かざ》りを、|身《み》につけるべきである。これこそ、|神《かみ》のみまえに、きわめて|尊《たっと》いものである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]むかし、|神《かみ》を|仰《あお》ぎ|望《のぞ》んでいた|聖《せい》なる|女《おんな》たちも、このように|身《み》を|飾《かざ》って、その|夫《おっと》に|仕《つか》えたのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]たとえば、サラはアブラハムに|仕《つか》えて、|彼《かれ》を|主《しゅ》と|呼《よ》んだ。あなたがたも、|何事《なにごと》にもおびえ|臆《おく》することなく|善《ぜん》を|行《おこな》えば、サラの|娘《むすめ》たちとなるのである。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|夫《おっと》たる|者《もの》よ。あなたがたも|同《おな》じように、|女《おんな》は|自分《じぶん》よりも|弱《よわ》い|器《うつわ》であることを|認《みと》めて、|知識《ちしき》に|従《したが》って|妻《つま》と|共《とも》に|住《す》み、いのちの|恵《めぐ》みを|共《とも》どもに|受《う》け|継《つ》ぐ|者《もの》として、|尊《たっと》びなさい。それは、あなたがたの|祈《いのり》が|妨《さまた》げられないためである。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|最後《さいご》に|言《い》う。あなたがたは|皆《みな》、|心《こころ》をひとつにし、|同情《どうじょう》し|合《あ》い、|兄弟《きょうだい》|愛《あい》をもち、あわれみ|深《ぶか》くあり、|謙虚《けんきょ》でありなさい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|悪《あく》をもって|悪《あく》に|報《むく》いず、|悪口《あっこう》をもって|悪口《あっこう》に|報《むく》いず、かえって、|祝福《しゅくふく》をもって|報《むく》いなさい。あなたがたが|召《め》されたのは、|祝福《しゅくふく》を|受《う》け|継《つ》ぐためなのである。 [#ここから2字下げ] [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]「いのちを|愛《あい》し、 さいわいな|日々《ひび》を|過《す》ごそうと|願《ねが》う|人《ひと》は、 |舌《した》を|制《せい》して|悪《あく》を|言《い》わず、 くちびるを|閉《と》じて|偽《いつわ》りを|語《かた》らず、 [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|悪《あく》を|避《さ》けて|善《ぜん》を|行《おこな》い、 |平和《へいわ》を|求《もと》めて、これを|追《お》え。 [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》の|目《め》は|義人《ぎじん》たちに|注《そそ》がれ、 |主《しゅ》の|耳《みみ》は|彼《かれ》らの|祈《いのり》にかたむく。 しかし|主《しゅ》の|御顔《みかお》は、|悪《あく》を|行《おこな》う|者《もの》に|対《たい》して|向《む》かう」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]そこで、もしあなたがたが|善《ぜん》に|熱心《ねっしん》であれば、だれが、あなたがたに|危害《きがい》を|加《くわ》えようか。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|万一《まんいち》|義《ぎ》のために|苦《くる》しむようなことがあっても、あなたがたはさいわいである。|彼《かれ》らを|恐《おそ》れたり、|心《こころ》を|乱《みだ》したりしてはならない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|心《こころ》の|中《なか》でキリストを|主《しゅ》とあがめなさい。また、あなたがたのうちにある|望《のぞ》みについて|説明《せつめい》を|求《もと》める|人《ひと》には、いつでも|弁明《べんめい》のできる|用意《ようい》をしていなさい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、やさしく、|慎《つつし》み|深《ぶか》く、|明《あき》らかな|良心《りょうしん》をもって、|弁明《べんめい》しなさい。そうすれば、あなたがたがキリストにあって|営《いとな》んでいる|良《よ》い|生活《せいかつ》をそしる|人々《ひとびと》も、そのようにののしったことを|恥《は》じいるであろう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|善《ぜん》をおこなって|苦《くる》しむことは――それが|神《かみ》の|御旨《みむね》であれば――|悪《あく》をおこなって|苦《くる》しむよりも、まさっている。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]キリストも、あなたがたを|神《かみ》に近づけようとして、|自《みずか》らは|義《ぎ》なるかたであるのに、|不義《ふぎ》なる|人々《ひとびと》のために、ひとたび|罪《つみ》のゆえに|死《し》なれた。ただし、|肉《にく》においては|殺《ころ》されたが、|霊《れい》においては|生《い》かされたのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|彼《かれ》は|獄《ごく》に|捕《とら》われている|霊《れい》どものところに|下《くだ》って|行《い》き、|宣《の》べ|伝《つた》えることをされた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]これらの|霊《れい》というのは、むかしノアの|箱舟《はこぶね》が|造《つく》られていた|間《あいだ》、|神《かみ》が|寛容《かんよう》をもって|待《ま》っておられたのに|従《したが》わなかった|者《もの》どものことである。その|箱舟《はこぶね》に|乗《の》り|込《こ》み、|水《みず》を|経《へ》て|救《すく》われたのは、わずかに八|名《めい》だけであった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]この|水《みず》はバプテスマを|象徴《しょうちょう》するものであって、|今《いま》やあなたがたをも|救《すく》うのである。それは、イエス・キリストの|復活《ふっかつ》によるのであって、からだの|汚《けが》れを|除《のぞ》くことではなく、|明《あき》らかな|良心《りょうしん》を|神《かみ》に|願《ねが》い|求《もと》めることである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]キリストは|天《てん》に|上《のぼ》って|神《かみ》の|右《みぎ》に|座《ざ》し、|天使《てんし》たちともろもろの|権威《けんい》、|権力《けんりょく》を|従《したが》えておられるのである。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]このように、キリストは|肉《にく》において|苦《くる》しまれたのであるから、あなたがたも|同《おな》じ|覚悟《かくご》で|心《こころ》の|武装《ぶそう》をしなさい。|肉《にく》において|苦《くる》しんだ|人《ひと》は、それによって|罪《つみ》からのがれたのである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それは、|肉《にく》における|残《のこ》りの|生涯《しょうがい》を、もはや|人間《にんげん》の|欲情《よくじょう》によらず、|神《かみ》の|御旨《みむね》によって|過《す》ごすためである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|過《す》ぎ|去《さ》った|時代《じだい》には、あなたがたは、|異邦人《いほうじん》の|好《この》みにまかせて、|好色《こうしょく》、|欲情《よくじょう》、|酔酒《すいしゅ》、|宴楽《えんらく》、|暴飲《ぼういん》、|気《き》ままな|偶像《ぐうぞう》|礼拝《れいはい》などにふけってきたが、もうそれで|十分《じゅうぶん》であろう。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》はあなたがたが、そうした|度《ど》を|過《す》ごした|乱行《らんぎょう》に|加《くわ》わらないので、|彼《かれ》らは|驚《おどろ》きあやしみ、かつ、ののしっている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、やがて|生《い》ける|者《もの》と|死《し》ねる|者《もの》とをさばくかたに、|申《もう》し|開《ひら》きをしなくてはならない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|死人《しにん》にさえ|福音《ふくいん》が|宣《の》べ|伝《つた》えられたのは、|彼《かれ》らは|肉《にく》においては|人間《にんげん》としてさばきを|受《う》けるが、|霊《れい》においては|神《かみ》に|従《したが》って|生《い》きるようになるためである。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|万物《ばんぶつ》の|終《おわ》りが|近《ちか》づいている。だから、|心《こころ》を|確《たし》かにし、|身《み》を|慎《つつし》んで、|努《つと》めて|祈《いの》りなさい。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|何《なに》よりもまず、|互《たがい》の|愛《あい》を|熱《あつ》く|保《たも》ちなさい。|愛《あい》は|多《おお》くの|罪《つみ》をおおうものである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|不平《ふへい》を|言《い》わずに、|互《たがい》にもてなし|合《あ》いなさい。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、それぞれ|賜物《たまもの》をいただいているのだから、|神《かみ》のさまざまな|恵《めぐ》みの|良《よ》き|管理人《かんりにん》として、それをお|互《たがい》のために|役《やく》|立《た》てるべきである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|語《かた》る|者《もの》は、|神《かみ》の|御言《みことば》を|語《かた》る|者《もの》にふさわしく|語《かた》り、|奉仕《ほうし》する|者《もの》は、|神《かみ》から|賜《たま》わる|力《ちから》による|者《もの》にふさわしく|奉仕《ほうし》すべきである。それは、すべてのことにおいてイエス・キリストによって、|神《かみ》があがめられるためである。|栄光《えいこう》と|力《ちから》とが|世々《よよ》|限《かぎ》りなく、|彼《かれ》にあるように、アァメン。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。あなたがたを|試《こころ》みるために|降《ふ》りかかって|来《く》る|火《ひ》のような|試錬《しれん》を、|何《なに》か|思《おも》いがけないことが|起《おこ》ったかのように|驚《おどろ》きあやしむことなく、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]むしろ、キリストの|苦《くる》しみにあずかればあずかるほど、|喜《よろこ》ぶがよい。それは、キリストの|栄光《えいこう》が|現《あらわ》れる|際《さい》に、よろこびにあふれるためである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]キリストの|名《な》のためにそしられるなら、あなたがたはさいわいである。その|時《とき》には、|栄光《えいこう》の|霊《れい》、|神《かみ》の|霊《れい》が、あなたがたに|宿《やど》るからである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうち、だれも、|人殺《ひとごろ》し、|盗人《ぬすびと》、|悪《あく》を|行《おこな》う|者《もの》、あるいは、|他人《たにん》に|干渉《かんしょう》する|者《もの》として|苦《くる》しみに|会《あ》うことのないようにしなさい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、クリスチャンとして|苦《くる》しみを|受《う》けるのであれば、|恥《は》じることはない。かえって、この|名《な》によって|神《かみ》をあがめなさい。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]さばきが|神《かみ》の|家《いえ》から|始《はじ》められる|時《とき》がきた。それが、わたしたちからまず|始《はじ》められるとしたら、|神《かみ》の|福音《ふくいん》に|従《したが》わない|人々《ひとびと》の|行《ゆ》く|末《すえ》は、どんなであろうか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]また|義人《ぎじん》でさえ、かろうじて|救《すく》われるのだとすれば、|不信《ふしん》なる|者《もの》や|罪人《つみびと》は、どうなるであろうか。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]だから、|神《かみ》の|御旨《みむね》に|従《したが》って|苦《くる》しみを|受《う》ける|人々《ひとびと》は、|善《ぜん》をおこない、そして、|真実《しんじつ》であられる|創造者《そうぞうしゃ》に、|自分《じぶん》のたましいをゆだねるがよい。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたがたのうちの|長老《ちょうろう》たちに|勧《すす》める。わたしも、|長老《ちょうろう》のひとりで、キリストの|苦難《くなん》についての|証人《しょうにん》であり、また、やがて|現《あらわ》れようとする|栄光《えいこう》にあずかる|者《もの》である。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたにゆだねられている|神《かみ》の|羊《ひつじ》の|群《む》れを|牧《ぼく》しなさい。しいられてするのではなく、|神《かみ》に|従《したが》って|自《みずか》ら|進《すす》んでなし、|恥《は》ずべき|利得《りとく》のためではなく、|本心《ほんしん》から、それをしなさい。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]また、ゆだねられた|者《もの》たちの|上《うえ》に|権力《けんりょく》をふるうことをしないで、むしろ、|群《む》れの|模範《もはん》となるべきである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そうすれば、|大牧者《だいぼくしゃ》が|現《あらわ》れる|時《とき》には、しぼむことのない|栄光《えいこう》の|冠《かんむり》を|受《う》けるであろう。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|同《おな》じように、|若《わか》い|人《ひと》たちよ。|長老《ちょうろう》たちに|従《したが》いなさい。また、みな|互《たがい》に|謙遜《けんそん》を|身《み》につけなさい。|神《かみ》は|高《たか》ぶる|者《もの》をしりぞけ、へりくだる|者《もの》に|恵《めぐ》みを|賜《たま》うからである。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたがたは、|神《かみ》の|力強《ちからづよ》い|御《み》|手《て》の|下《もと》に、|自《みずか》らを|低《ひく》くしなさい。|時《とき》が|来《く》れば|神《かみ》はあなたがたを|高《たか》くして|下《くだ》さるであろう。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はあなたがたをかえりみていて|下《くだ》さるのであるから、|自分《じぶん》の|思《おも》いわずらいを、いっさい|神《かみ》にゆだねるがよい。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|身《み》を|慎《つつし》み、|目《め》をさましていなさい。あなたがたの|敵《てき》である|悪魔《あくま》が、ほえたけるししのように、|食《く》いつくすべきものを|求《もと》めて|歩《ある》き|回《まわ》っている。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]この|悪魔《あくま》にむかい、|信仰《しんこう》にかたく|立《た》って、|抵抗《ていこう》しなさい。あなたがたのよく|知《し》っているとおり、|全《ぜん》|世界《せかい》にいるあなたがたの|兄弟《きょうだい》たちも、|同《おな》じような|苦《くる》しみの|数々《かずかず》に|会《あ》っているのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたをキリストにある|永遠《えいえん》の|栄光《えいこう》に|招《まね》き|入《い》れて|下《くだ》さったあふるる|恵《めぐ》みの|神《かみ》は、しばらくの|苦《くる》しみの|後《のち》、あなたがたをいやし、|強《つよ》め、|力《ちから》づけ、|不動《ふどう》のものとして|下《くだ》さるであろう。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]どうか、|力《ちから》が|世々《よよ》|限《かぎ》りなく、|神《かみ》にあるように、アァメン。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、|忠実《ちゅうじつ》な|兄弟《きょうだい》として|信頼《しんらい》しているシルワノの|手《て》によって、この|短《みじか》い|手紙《てがみ》をあなたがたにおくり、|勧《すす》めをし、また、これが|神《かみ》のまことの|恵《めぐ》みであることをあかしした。この|恵《めぐ》みのうちに、かたく|立《た》っていなさい。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたと|共《とも》に|選《えら》ばれてバビロンにある|教会《きょうかい》、ならびに、わたしの|子《こ》マルコから、あなたがたによろしく。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》の|接吻《せっぷん》をもって|互《たがい》にあいさつをかわしなさい。  キリストにあるあなたがた|一同《いちどう》に、|平安《へいあん》があるように。 [#改ページ] ペテロの第二の手紙[#「ペテロの第二の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエス・キリストの|僕《しもべ》また|使徒《しと》であるシメオン・ペテロから、わたしたちの|神《かみ》と|救主《すくいぬし》イエス・キリストとの|義《ぎ》によって、わたしたちと|同《おな》じ|尊《たっと》い|信仰《しんこう》を|授《さず》かった|人々《ひとびと》へ。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》とわたしたちの|主《しゅ》イエスとを|知《し》ることによって、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたに|豊《ゆた》かに|加《くわ》わるように。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]いのちと|信心《しんじん》とにかかわるすべてのことは、|主《しゅ》イエスの|神聖《しんせい》な|力《ちから》によって、わたしたちに|与《あた》えられている。それは、ご|自身《じしん》の|栄光《えいこう》と|徳《とく》とによって、わたしたちを|召《め》されたかたを|知《し》る|知識《ちしき》によるのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また、それらのものによって、|尊《たっと》く、|大《おお》いなる|約束《やくそく》が、わたしたちに|与《あた》えられている。それは、あなたがたが、|世《よ》にある|欲《よく》のために|滅《ほろ》びることを|免《まぬか》れ、|神《かみ》の|性質《せいしつ》にあずかる|者《もの》となるためである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それだから、あなたがたは、|力《ちから》の|限《かぎ》りをつくして、あなたがたの|信仰《しんこう》に|徳《とく》を|加《くわ》え、|徳《とく》に|知識《ちしき》を、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|知識《ちしき》に|節制《せっせい》を、|節制《せっせい》に|忍耐《にんたい》を、|忍耐《にんたい》に|信心《しんじん》を、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|信心《しんじん》に|兄弟《きょうだい》|愛《あい》を、|兄弟《きょうだい》|愛《あい》に|愛《あい》を|加《くわ》えなさい。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]これらのものがあなたがたに|備《そな》わって、いよいよ|豊《ゆた》かになるならば、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストを|知《し》る|知識《ちしき》について、あなたがたは、|怠《おこた》る|者《もの》、|実《み》を|結《むす》ばない|者《もの》となることはないであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]これらのものを|備《そな》えていない|者《もの》は、|盲人《もうじん》であり、|近視《きんし》の|者《もの》であり、|自分《じぶん》の|以前《いぜん》の|罪《つみ》がきよめられたことを|忘《わす》れている|者《もの》である。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。それだから、ますます|励《はげ》んで、あなたがたの|受《う》けた|召《め》しと|選《えら》びとを、|確《たし》かなものにしなさい。そうすれば、|決《けっ》してあやまちに|陥《おちい》ることはない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]こうして、わたしたちの|主《しゅ》また|救主《すくいぬし》イエス・キリストの|永遠《えいえん》の|国《くに》に|入《はい》る|恵《めぐ》みが、あなたがたに|豊《ゆた》かに|与《あた》えられるからである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それだから、あなたがたは|既《すで》にこれらのことを|知《し》っており、また、いま|持《も》っている|真理《しんり》に|堅《かた》く|立《た》ってはいるが、わたしは、これらのことをいつも、あなたがたに|思《おも》い|起《おこ》させたいのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしがこの|幕屋《まくや》にいる|間《あいだ》、あなたがたに|思《おも》い|起《おこ》させて、|奮《ふる》い|立《た》たせることが|適当《てきとう》と|思《おも》う。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]それは、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストもわたしに|示《しめ》して|下《くだ》さったように、わたしのこの|幕屋《まくや》を|脱《ぬ》ぎ|去《さ》る|時《とき》が|間近《まぢか》であることを|知《し》っているからである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|世《よ》を|去《さ》った|後《のち》にも、これらのことを、あなたがたにいつも|思《おも》い|出《だ》させるように|努《つと》めよう。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|力《ちから》と|来臨《らいりん》とを、あなたがたに|知《し》らせた|時《とき》、わたしたちは、|巧《たく》みな|作《つく》り|話《ばなし》を|用《もち》いることはしなかった。わたしたちが、そのご|威光《いこう》の|目撃者《もくげきしゃ》なのだからである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]イエスは|父《ちち》なる|神《かみ》からほまれと|栄光《えいこう》とをお|受《う》けになったが、その|時《とき》、おごそかな|栄光《えいこう》の|中《なか》から|次《つぎ》のようなみ|声《こえ》がかかったのである、「これはわたしの|愛《あい》する|子《こ》、わたしの|心《こころ》にかなう|者《もの》である」。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちもイエスと|共《とも》に|聖《せい》なる|山《やま》にいて、|天《てん》から|出《で》たこの|声《こえ》を|聞《き》いたのである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]こうして、|預言《よげん》の|言葉《ことば》は、わたしたちにいっそう|確実《かくじつ》なものになった。あなたがたも、|夜《よる》が|明《あ》け、|明星《みょうじょう》がのぼって、あなたがたの|心《こころ》の|中《なか》を|照《てら》すまで、この|預言《よげん》の|言葉《ことば》を|暗《くら》やみに|輝《かがや》くともしびとして、それに|目《め》をとめているがよい。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|聖書《せいしょ》の|預言《よげん》はすべて、|自分《じぶん》|勝手《かって》に|解釈《かいしゃく》すべきでないことを、まず|第《だい》一に|知《し》るべきである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、|預言《よげん》は|決《けっ》して|人間《にんげん》の|意志《いし》から|出《で》たものではなく、|人々《ひとびと》が|聖霊《せいれい》に|感《かん》じ、|神《かみ》によって|語《かた》ったものだからである。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|民《たみ》の|間《あいだ》に、にせ|預言者《よげんしゃ》が|起《おこ》ったことがあるが、それと|同《おな》じく、あなたがたの|間《あいだ》にも、にせ|教師《きょうし》が|現《あらわ》れるであろう。|彼《かれ》らは、|滅《ほろ》びに|至《いた》らせる|異端《いたん》をひそかに|持《も》ち|込《こ》み、|自分《じぶん》たちをあがなって|下《くだ》さった|主《しゅ》を|否定《ひてい》して、すみやかな|滅亡《めつぼう》を|自分《じぶん》の|身《み》に|招《まね》いている。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]また、|大《おお》ぜいの|人《ひと》が|彼《かれ》らの|放縦《ほうしょう》を|見習《みなら》い、そのために、|真理《しんり》の|道《みち》がそしりを|受《う》けるに|至《いた》るのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|貪欲《どんよく》のために、|甘言《かんげん》をもってあなたがたをあざむき、|利《り》をむさぼるであろう。|彼《かれ》らに|対《たい》するさばきは|昔《むかし》から|猶予《ゆうよ》なく|行《おこな》われ、|彼《かれ》らの|滅亡《めつぼう》も滞ることはない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、|罪《つみ》を|犯《おか》した|御使《みつかい》たちを|許《ゆる》しておかないで、|彼《かれ》らを|下界《げかい》におとしいれ、さばきの|時《とき》まで|暗《くら》やみの|穴《あな》に|閉《と》じ|込《こ》めておかれた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また、|古《ふる》い|世界《せかい》をそのままにしておかないで、その|不《ふ》|信仰《しんこう》な|世界《せかい》に|洪水《こうずい》をきたらせ、ただ、|義《ぎ》の|宣伝者《せんでんしゃ》ノアたち八|人《にん》の|者《もの》だけを|保護《ほご》された。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]また、ソドムとゴモラの|町々《まちまち》を|灰《はい》に|帰《き》せしめて|破滅《はめつ》に|処《しょ》し、|不《ふ》|信仰《しんこう》に|走《はし》ろうとする|人々《ひとびと》の|見《み》せしめとし、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ただ、|非道《ひどう》の|者《もの》どもの|放縦《ほうじゅう》な|行《おこな》いによってなやまされていた|義人《ぎじん》ロトだけを|救《すく》い|出《だ》された。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり](この|義人《ぎじん》は、|彼《かれ》らの|間《あいだ》に|住《す》み、|彼《かれ》らの|不法《ふほう》の|行《おこな》いを|日々《ひび》|見聞《みき》きして、その|正《ただ》しい|心《こころ》を|痛《いた》めていたのである。)[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]こういうわけで、|主《しゅ》は、|信心《しんじん》|深《ぶか》い|者《もの》を|試錬《しれん》の|中《なか》から|救《すく》い|出《だ》し、また、|不義《ふぎ》な|者《もの》ども、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|特《とく》に、|汚《けが》れた|情欲《じょうよく》におぼれ|肉《にく》にしたがって|歩《あゆ》み、また、|権威《けんい》ある|者《もの》を|軽《かろ》んじる|人々《ひとびと》を|罰《ばっ》して、さばきの|日《ひ》まで|閉《と》じ|込《こ》めておくべきことを、よくご|存《ぞん》じなのである。こういう|人々《ひとびと》は、|大胆《だいたん》|不《ふ》|敵《てき》なわがまま|者《もの》であって、|栄光《えいこう》ある|者《もの》たちをそしってはばかるところがない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|御使《みつかい》たちは、|勢《いきお》いにおいても|力《ちから》においても、|彼《かれ》らにまさっているにかかわらず、|彼《かれ》らを|主《しゅ》のみまえに|訴《うった》えそしることはしない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]これらの|者《もの》は、|捕《とら》えられ、ほふられるために|生《うま》れてきた、|分別《ふんべつ》のない|動物《どうぶつ》のようなもので、|自分《じぶん》が|知《し》りもしないことをそしり、その|不義《ふぎ》の|報《むく》いとして|罰《ばつ》を|受《う》け、|必《かなら》ず|滅《ほろ》ぼされてしまうのである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|真昼《まひる》でさえ|酒食《しゅしょく》を|楽《たの》しみ、あなたがたと|宴会《えんかい》に|同席《どうせき》して、だましごとにふけっている。|彼《かれ》らは、しみであり、きずである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]その|目《め》は|淫行《いんこう》を|追《お》い、|罪《つみ》を|犯《おか》して|飽《あ》くことを|知《し》らない。|彼《かれ》らは|心《こころ》の|定《さだ》まらない|者《もの》を|誘惑《ゆうわく》し、その|心《こころ》は|貪欲《どんよく》に|慣《な》れ、のろいの|子《こ》となっている。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|正《ただ》しい|道《みち》からはずれて|迷《まよ》いに|陥《おちい》り、ベオルの|子《こ》バラムの|道《みち》に|従《したが》った。バラムは|不《ふ》|義《ぎ》の|実《み》を|愛《あい》し、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そのために、|自分《じぶん》のあやまちに|対《たい》するとがめを|受《う》けた。ものを|言《い》わないろばが、|人間《にんげん》の|声《こえ》でものを|言《い》い、この|預言者《よげんしゃ》の|狂気《きょうき》じみたふるまいをはばんだのである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]この|人々《ひとびと》は、いわば、|水《みず》のない|井戸《いど》、|突風《とっぷう》に|吹《ふ》きはらわれる|霧《きり》であって、|彼《かれ》らには|暗《くら》やみが|用意《ようい》されている。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはむなしい|誇《ほこり》を|語《かた》り、|迷《まよ》いの|中《なか》に|生《い》きている|人々《ひとびと》の|間《あいだ》から、かろうじてのがれてきた|者《もの》たちを、|肉欲《にくよく》と|色情《しきじょう》とによって|誘惑《ゆうわく》し、[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]この|人々《ひとびと》に|自由《じゆう》を|与《あた》えると|約束《やくそく》しながら、|彼《かれ》ら|自身《じしん》は|滅亡《めつぼう》の|奴隷《どれい》になっている。おおよそ、|人《ひと》は|征服者《せいふくしゃ》の|奴隷《どれい》となるものである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らが、|主《しゅ》また|救主《すくいぬし》なるイエス・キリストを|知《し》ることにより、この|世《よ》の|汚《けが》れからのがれた|後《のち》、またそれに|巻《ま》き|込《こ》まれて|征服《せいふく》されるならば、|彼《かれ》らの|後《のち》の|状態《じょうたい》は|初《はじ》めよりも、もっと|悪《わる》くなる。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|義《ぎ》の|道《みち》を|心得《こころえ》ていながら、|自分《じぶん》に|授《さづ》けられた|聖《せい》なる|戒《いまし》めにそむくよりは、むしろ|義《ぎ》の|道《みち》を|知《し》らなかった|方《ほう》がよい。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]ことわざに、「|犬《いぬ》は|自分《じぶん》の|吐《は》いた|物《もの》に|帰《かえ》り、|豚《ぶた》は|洗《あら》われても、また、どろの|中《なか》にころがって|行《い》く」とあるが、|彼《かれ》らの|身《み》に|起《おこ》ったことは、そのとおりである。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。わたしは|今《いま》この|第《だい》二の|手紙《てがみ》をあなたがたに|書《か》きおくり、これらの|手紙《てがみ》によって|記憶《きおく》を|呼《よ》び|起《おこ》し、あなたがたの|純真《じゅんしん》な|心《こころ》を|奮《ふる》い|立《た》たせようとした。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それは、|聖《せい》なる|預言者《よげんしゃ》たちがあらかじめ|語《かた》った|言葉《ことば》と、あなたがたの|使徒《しと》たちが|伝《つた》えた|主《しゅ》なる|救主《すくいぬし》の|戒《いまし》めとを、|思《おも》い|出《だ》させるためである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]まず|次《つぎ》のことを|知《し》るべきである。|終《おわ》りの|時《とき》にあざける|者《もの》たちが、あざけりながら|出《で》てきて、|自分《じぶん》の|欲情《よくじょう》のままに|生活《せいかつ》し、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]「|主《しゅ》の|来臨《らいりん》の|約束《やくそく》はどうなったのか。|先祖《せんぞ》たちが|眠《ねむ》りについてから、すべてのものは|天地《てんち》|創造《そうぞう》の|初《はじ》めからそのままであって、|変《かわ》ってはいない」と|言《い》うであろう。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、|彼《かれ》らはこのことを|認《みと》めようとはしない。|古《ふる》い|昔《むかし》に|天《てん》が|存在《そんざい》し、|地《ち》は|神《かみ》の|言《ことば》によって、|水《みず》がもとになり、また、|水《みず》によって|成《な》ったのであるが、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》の|世界《せかい》は、|御言《みことば》により|水《みず》でおおわれて|滅《ほろ》んでしまった。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|今《いま》の|天《てん》と|地《ち》とは、|同《おな》じ|御言《みことば》によって|保存《ほぞん》され、|不《ふ》|信仰《しんこう》な|人々《ひとびと》がさばかれ、|滅《ほろ》ぼさるべき|日《ひ》に|火《ひ》で|焼《や》かれる|時《とき》まで、そのまま|保《たも》たれているのである。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。この|一事《いちじ》を|忘《わす》れてはならない。|主《しゅ》にあっては、一|日《にち》は千|年《ねん》のようであり、千|年《ねん》は一|日《にち》のようである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ある|人々《ひとびと》がおそいと|思《おも》っているように、|主《しゅ》は|約束《やくそく》の|実行《じっこう》をおそくしておられるのではない。ただ、ひとりも|滅《ほろ》びることがなく、すべての|者《もの》が|悔改《くいあらた》めに|至《いた》ることを|望《のぞ》み、あなたがたに|対《たい》してながく|忍耐《にんたい》しておられるのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|主《しゅ》の|日《ひ》は|盗人《ぬすびと》のように|襲《おそ》って|来《く》る。その|日《ひ》には、|天《てん》は|大音響《だいおんきょう》をたてて|消《き》え|去《さ》り、|天体《てんたい》は|焼《や》けてくずれ、|地《ち》とその|上《うえ》に|造《つく》り|出《だ》されたものも、みな|焼《や》きつくされるであろう。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]このように、これらはみなくずれ|落《お》ちていくものであるから、|神《かみ》の|日《ひ》の|到来《とうらい》を|熱心《ねっしん》に|待《ま》ち|望《のぞ》んでいるあなたがたは、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|極力《きょくりょく》、きよく|信心《しんじん》|深《ぶか》い|行《おこな》いをしていなければならない。その|日《ひ》には、|天《てん》は|燃《も》えくずれ、|天体《てんたい》は|焼《や》けうせてしまう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしたちは、|神《かみ》の|約束《やくそく》に|従《したが》って、|義《ぎ》の|住《す》む|新《あたら》しい|天《てん》と|新《あたら》しい|地《ち》とを|待《ま》ち|望《のぞ》んでいる。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。それだから、この|日《ひ》を|待《ま》っているあなたがたは、しみもなくきずもなく、|安《やす》らかな|心《こころ》で、|神《かみ》のみまえに|出《で》られるように|励《はげ》みなさい。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしたちの|主《しゅ》の|寛容《かんよう》は|救《すくい》のためであると|思《おも》いなさい。このことは、わたしたちの|愛《あい》する|兄弟《きょうだい》パウロが、|彼《かれ》に|与《あた》えられた|知恵《ちえ》によって、あなたがたに|書《か》きおくったとおりである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、どの|手紙《てがみ》にもこれらのことを|述《の》べている。その|手紙《てがみ》の|中《なか》には、ところどころ、わかりにくい|箇所《かしょ》もあって、|無学《むがく》で|心《こころ》の|定《さだ》まらない|者《もの》たちは、ほかの|聖書《せいしょ》についてもしているように、|無理《むり》な|解釈《かいしゃく》をほどこして、|自分《じぶん》の|滅亡《めつぼう》を|招《まね》いている。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。それだから、あなたがたはかねてから|心《こころ》がけているように、|非道《ひどう》の|者《もの》の|惑《まど》わしに|誘《さそ》い|込《こ》まれて、あなたがた|自身《じしん》の|確信《かくしん》を|失《うしな》うことのないように|心《こころ》がけなさい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そして、わたしたちの|主《しゅ》また|救主《すくいぬし》イエス・キリストの|恵《めぐ》みと|知識《ちしき》とにおいて、ますます|豊《ゆた》かになりなさい。|栄光《えいこう》が、|今《いま》も、また|永遠《えいえん》の|日《ひ》に|至《いた》るまでも、|主《しゅ》にあるように、アァメン。 [#改ページ] ヨハネの第一の手紙[#「ヨハネの第一の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|初《はじ》めからあったもの、わたしたちが|聞《き》いたもの、|目《め》で|見《み》たもの、よく|見《み》て|手《て》でさわったもの、すなわち、いのちの|言《ことば》について――[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]このいのちが|現《あらわ》れたので、この|永遠《えいえん》のいのちをわたしたちは|見《み》て、そのあかしをし、かつ、あなたがたに|告《つ》げ|知《し》らせるのである。この|永遠《えいえん》のいのちは、|父《ちち》と|共《とも》にいましたが、|今《いま》やわたしたちに|現《あらわ》れたものである――[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、わたしたちが|見《み》たもの、|聞《き》いたものを、あなたがたにも|告《つ》げ|知《し》らせる。それは、あなたがたも、わたしたちの|交《まじ》わりにあずかるようになるためである。わたしたちの|交《まじ》わりとは、|父《ちち》ならびに|御子《みこ》イエス・キリストとの|交《まじ》わりのことである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]これを|書《か》きおくるのは、わたしたちの|喜《よろこ》びが|満《み》ちあふれるためである。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちがイエスから|聞《き》いて、あなたがたに|伝《つた》えるおとずれは、こうである。|神《かみ》は|光《ひかり》であって、|神《かみ》には|少《すこ》しの|暗《くら》いところもない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》と|交《まじ》わりをしていると|言《い》いながら、もし、やみの|中《なか》を|歩《ある》いているなら、わたしたちは|偽《いつわ》っているのであって、|真理《しんり》を|行《おこな》っているのではない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|神《かみ》が|光《ひかり》の|中《なか》にいますように、わたしたちも|光《ひかり》の|中《なか》を|歩《ある》くならば、わたしたちは|互《たがい》に|交《まじ》わりをもち、そして、|御子《みこ》イエスの|血《ち》が、すべての|罪《つみ》からわたしたちをきよめるのである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]もし、|罪《つみ》がないと|言《い》うなら、それは|自分《じぶん》を|欺《あざむ》くことであって、|真理《しんり》はわたしたちのうちにない。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]もし、わたしたちが|自分《じぶん》の|罪《つみ》を|告白《こくはく》するならば、|神《かみ》は|真実《しんじつ》で|正《ただ》しいかたであるから、その|罪《つみ》をゆるし、すべての|不義《ふぎ》からわたしたちをきよめて|下《くだ》さる。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]もし、|罪《つみ》を|犯《おか》したことがないと|言《い》うなら、それは|神《かみ》を|偽《いつわ》り|者《もの》とするのであって、|神《かみ》の|言《ことば》はわたしたちのうちにない。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|子《こ》たちよ。これらのことを|書《か》きおくるのは、あなたがたが|罪《つみ》を|犯《おか》さないようになるためである。もし、|罪《つみ》を|犯《おか》す|者《もの》があれば、|父《ちち》のみもとには、わたしたちのために|助《たす》け|主《ぬし》、すなわち、|義《ぎ》なるイエス・キリストがおられる。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、わたしたちの|罪《つみ》のための、あがないの|供《そな》え|物《もの》である。ただ、わたしたちの|罪《つみ》のためばかりではなく、|全《ぜん》|世界《せかい》の|罪《つみ》のためである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]もし、わたしたちが|彼《かれ》の|戒《いまし》めを|守《まも》るならば、それによって|彼《かれ》を|知《し》っていることを|悟《さと》るのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]「|彼《かれ》を|知《し》っている」と|言《い》いながら、その|戒《いまし》めを|守《まも》らない|者《もの》は、|偽《いつわ》り|者《もの》であって、|真理《しんり》はその|人《ひと》のうちにない。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|彼《かれ》の|御言《みことば》を|守《まも》る|者《もの》があれば、その|人《ひと》のうちに、|神《かみ》の|愛《あい》が|真《しん》に|全《まっと》うされるのである。それによって、わたしたちが|彼《かれ》にあることを|知《し》るのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]「|彼《かれ》におる」と|言《い》う|者《もの》は、|彼《かれ》が|歩《ある》かれたように、その|人《ひと》|自身《じしん》も|歩《ある》くべきである。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。わたしがあなたがたに|書《か》きおくるのは、|新《あたら》しい|戒《いまし》めではなく、あなたがたが|初《はじ》めから|受《う》けていた|古《ふる》い|戒《いまし》めである。その|古《ふる》い|戒《いまし》めとは、あなたがたがすでに|聞《き》いた|御言《みことば》である。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかも、|新《あたら》しい|戒《いまし》めを、あなたがたに|書《か》きおくるのである。そして、それは、|彼《かれ》にとってもあなたがたにとっても、|真理《しんり》なのである。なぜなら、やみは|過《す》ぎ|去《さ》り、まことの|光《ひかり》がすでに|輝《かがや》いているからである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]「|光《ひかり》の|中《なか》にいる」と|言《い》いながら、その|兄弟《きょうだい》を|憎《にく》む|者《もの》は、|今《いま》なお、やみの|中《なか》にいるのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》を|愛《あい》する|者《もの》は、|光《ひかり》におるのであって、つまずくことはない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》を|憎《にく》む|者《もの》は、やみの|中《なか》におり、やみの|中《なか》を|歩《ある》くのであって、|自分《じぶん》ではどこへ|行《い》くのかわからない。やみが|彼《かれ》の|目《め》を|見《み》えなくしたからである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|子《こ》たちよ。あなたがたにこれを|書《か》きおくるのは、|御名《みな》のゆえに、あなたがたの|多《おお》くの|罪《つみ》がゆるされたからである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》たちよ。あなたがたに|書《か》きおくるのは、あなたがたが、|初《はじ》めからいますかたを|知《し》ったからである。|若者《わかもの》たちよ。あなたがたに|書《か》きおくるのは、あなたがたが、|悪《あ》しき|者《もの》にうち|勝《か》ったからである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|子供《こども》たちよ。あなたがたに|書《か》きおくったのは、あなたがたが|父《ちち》を|知《し》ったからである。|父《ちち》たちよ。あなたがたに|書《か》きおくったのは、あなたがたが、|初《はじ》めからいますかたを|知《し》ったからである。|若者《わかもの》たちよ。あなたがたに|書《か》きおくったのは、あなたがたが|強《つよ》い|者《もの》であり、|神《かみ》の|言《ことば》があなたがたに|宿《やど》り、そして、あなたがたが|悪《あ》しき|者《もの》にうち|勝《か》ったからである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|世《よ》と|世《よ》にあるものとを、|愛《あい》してはいけない。もし、|世《よ》を|愛《あい》する|者《もの》があれば、|父《ちち》の|愛《あい》は|彼《かれ》のうちにない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]すべて|世《よ》にあるもの、すなわち、|肉《にく》の|欲《よく》、|目《め》の|欲《よく》、|持《も》ち|物《もの》の|誇《ほこり》は、|父《ちち》から|出《で》たものではなく、|世《よ》から|出《で》たものである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|世《よ》と|世《よ》の|欲《よく》とは|過《す》ぎ|去《さ》る。しかし、|神《かみ》の|御旨《みむね》を|行《おこな》う|者《もの》は、|永遠《えいえん》にながらえる。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|子供《こども》たちよ。|今《いま》は|終《おわ》りの|時《とき》である。あなたがたがかねて|反《はん》キリストが|来《く》ると|聞《き》いていたように、|今《いま》や|多《おお》くの|反《はん》キリストが|現《あらわ》れてきた。それによって|今《いま》が|終《おわ》りの|時《とき》であることを|知《し》る。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはわたしたちから|出《で》て|行《い》った。しかし、|彼《かれ》らはわたしたちに|属《ぞく》する|者《もの》ではなかったのである。もし|属《ぞく》する|者《もの》であったなら、わたしたちと|一緒《いっしょ》にとどまっていたであろう。しかし、|出《で》て|行《い》ったのは、|元来《がんらい》、|彼《かれ》らがみなわたしたちに|属《ぞく》さない|者《もの》であることが、|明《あき》らかにされるためである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたがたは|聖《せい》なる|者《もの》に|油《あぶら》を|注《そそ》がれているので、あなたがたすべてが、そのことを|知《し》っている。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしが|書《か》きおくったのは、あなたがたが|真理《しんり》を|知《し》らないからではなく、それを|知《し》っているからであり、また、すべての|偽《いつわ》りは|真理《しんり》から|出《で》るものでないことを、|知《し》っているからである。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|偽《いつわ》り|者《もの》とは、だれであるか。イエスのキリストであることを|否定《ひてい》する|者《もの》ではないか。|父《ちち》と|御子《みこ》とを|否定《ひてい》する|者《もの》は、|反《はん》キリストである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|御子《みこ》を|否定《ひてい》する|者《もの》は|父《ちち》を|持《も》たず、|御子《みこ》を|告白《こくはく》する|者《もの》は、また|父《ちち》をも|持《も》つのである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|初《はじ》めから|聞《き》いたことが、あなたがたのうちに、とどまるようにしなさい。|初《はじ》めから|聞《き》いたことが、あなたがたのうちにとどまっておれば、あなたがたも|御子《みこ》と|父《ちち》とのうちに、とどまることになる。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]これが、|彼《かれ》|自《みずか》らわたしたちに|約束《やくそく》された|約束《やくそく》であって、すなわち、|永遠《えいえん》のいのちである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたがたを|惑《まど》わす|者《もの》たちについて、これらのことを|書《か》きおくった。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたのうちには、キリストからいただいた|油《あぶら》がとどまっているので、だれにも|教《おし》えてもらう|必要《ひつよう》はない。この|油《あぶら》が、すべてのことをあなたがたに|教《おし》える。それはまことであって、|偽《いつわ》りではないから、その|油《あぶら》が|教《おし》えたように、あなたがたは|彼《かれ》のうちにとどまっていなさい。  [#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|子《こ》たちよ。キリストのうちにとどまっていなさい。それは、|彼《かれ》が|現《あらわ》れる|時《とき》に、|確信《かくしん》を|持《も》ち、その|来臨《らいりん》に|際《さい》して、みまえに|恥《は》じいることがないためである。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》の|義《ぎ》なるかたであることがわかれば、|義《ぎ》を|行《おこな》う|者《もの》はみな|彼《かれ》から|生《うま》れたものであることを、|知《し》るであろう。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|神《かみ》の|子《こ》と|呼《よ》ばれるためには、どんなに|大《おお》きな|愛《あい》を|父《ちち》から|賜《たま》わったことか、よく|考《かんが》えてみなさい。わたしたちは、すでに|神《かみ》の|子《こ》なのである。|世《よ》がわたしたちを|知《し》らないのは、|父《ちち》を|知《し》らなかったからである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。わたしたちは|今《いま》や|神《かみ》の|子《こ》である。しかし、わたしたちがどうなるのか、まだ|明《あき》らかではない。|彼《かれ》が|現《あらわ》れる|時《とき》、わたしたちは、|自分《じぶん》たちが|彼《かれ》に|似《に》るものとなることを|知《し》っている。そのまことの|御姿《みすがた》を|見《み》るからである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》についてこの|望《のぞ》みをいだいている|者《もの》は|皆《みな》、|彼《かれ》がきよくあられるように、|自《みずか》らをきよくする。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すべて|罪《つみ》を|犯《おか》す|者《もの》は、|不法《ふほう》を|行《おこな》う|者《もの》である。|罪《つみ》は|不法《ふほう》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|知《し》っているとおり、|彼《かれ》は|罪《つみ》をとり|除《のぞ》くために|現《あらわ》れたのであって、|彼《かれ》にはなんらの|罪《つみ》がない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]すべて|彼《かれ》におる|者《もの》は、|罪《つみ》を|犯《おか》さない。すべて|罪《つみ》を|犯《おか》す|者《もの》は|彼《かれ》を|見《み》たこともなく、|知《し》ったこともない|者《もの》である。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|子《こ》たちよ。だれにも|惑《まど》わされてはならない。|彼《かれ》が|義人《ぎじん》であると|同様《どうよう》に、|義《ぎ》を|行《おこな》う|者《もの》は|義人《ぎじん》である。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|罪《つみ》を|犯《おか》す|者《もの》は、|悪魔《あくま》から|出《で》た|者《もの》である。|悪魔《あくま》は|初《はじ》めから|罪《つみ》を|犯《おか》しているからである。|神《かみ》の|子《こ》が|現《あらわ》れたのは、|悪魔《あくま》のわざを|滅《ほろ》ぼしてしまうためである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すべて|神《かみ》から|生《うま》れた|者《もの》は、|罪《つみ》を|犯《おか》さない。|神《かみ》の|種《たね》が、その|人《ひと》のうちにとどまっているからである。また、その|人《ひと》は、|神《かみ》から|生《うま》れた|者《もの》であるから、|罪《つみ》を|犯《おか》すことができない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|子《こ》と|悪魔《あくま》の|子《こ》との|区別《くべつ》は、これによって|明《あき》らかである。すなわち、すべて|義《ぎ》を|行《おこな》わない|者《もの》は、|神《かみ》から|出《で》た|者《もの》ではない。|兄弟《きょうだい》を|愛《あい》さない|者《もの》も、|同様《どうよう》である。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》うべきである。これが、あなたがたの|初《はじ》めから|聞《き》いていたおとずれである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]カインのようになってはいけない。|彼《かれ》は|悪《あ》しき|者《もの》から|出《で》て、その|兄弟《きょうだい》を|殺《ころ》したのである。なぜ|兄弟《きょうだい》を|殺《ころ》したのか。|彼《かれ》のわざが|悪《わる》く、その|兄弟《きょうだい》のわざは|正《ただ》しかったからである。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちよ。|世《よ》があなたがたを|憎《にく》んでも、|驚《おどろ》くには|及《およ》ばない。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|兄弟《きょうだい》を|愛《あい》しているので、|死《し》からいのちへ|移《うつ》ってきたことを、|知《し》っている。|愛《あい》さない|者《もの》は、|死《し》のうちにとどまっている。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたが|知《し》っているとおり、すべて|兄弟《きょうだい》を|憎《にく》む|者《もの》は|人殺《ひとごろ》しであり、|人殺《ひとごろ》しはすべて、そのうちに|永遠《えいえん》のいのちをとどめてはいない。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は、わたしたちのためにいのちを|捨《す》てて|下《くだ》さった。それによって、わたしたちは|愛《あい》ということを|知《し》った。それゆえに、わたしたちもまた、|兄弟《きょうだい》のためにいのちを|捨《す》てるべきである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|世《よ》の|富《とみ》を|持《も》っていながら、|兄弟《きょうだい》が|困《こま》っているのを|見《み》て、あわれみの|心《こころ》を|閉《と》じる|者《もの》には、どうして|神《かみ》の|愛《あい》が、|彼《かれ》のうちにあろうか。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|子《こ》たちよ。わたしたちは|言葉《ことば》や|口《くち》|先《さき》だけで|愛《あい》するのではなく、|行《おこな》いと|真実《しんじつ》とをもって|愛《あい》し合おうではないか。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]それによって、わたしたちが|真理《しんり》から|出《で》たものであることがわかる。そして、|神《かみ》のみまえに|心《こころ》を|安《やす》んじていよう。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、たといわたしたちの|心《こころ》に|責《せ》められるようなことがあっても、|神《かみ》はわたしたちの|心《こころ》よりも|大《おお》いなるかたであって、すべてをご|存《ぞん》じだからである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。もし|心《こころ》に|責《せ》められるようなことがなければ、わたしたちは|神《かみ》に|対《たい》して|確信《かくしん》を|持《も》つことができる。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]そして、|願《ねが》い|求《もと》めるものは、なんでもいただけるのである。それは、わたしたちが|神《かみ》の|戒《いまし》めを|守《まも》り、みこころにかなうことを、|行《おこな》っているからである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]その|戒《いまし》めというのは、|神《かみ》の|子《こ》イエス・キリストの|御名《みな》を|信《しん》じ、わたしたちに|命《めい》じられたように、|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》うべきことである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|戒《いまし》めを|守《まも》る|人《ひと》は、|神《かみ》におり、|神《かみ》もまたその|人《ひと》にいます。そして、|神《かみ》がわたしたちのうちにいますことは、|神《かみ》がわたしたちに|賜《たま》わった|御霊《みたま》によって|知《し》るのである。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。すべての|霊《れい》を|信《しん》じることはしないで、それらの|霊《れい》が|神《かみ》から|出《で》たものであるかどうか、ためしなさい。|多《おお》くのにせ|預言者《よげんしゃ》が|世《よ》に|出《で》てきているからである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたは、こうして|神《かみ》の|霊《れい》を|知《し》るのである。すなわち、イエス・キリストが|肉体《にくたい》をとってこられたことを|告白《こくはく》する|霊《れい》は、すべて|神《かみ》から|出《で》ているものであり、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]イエスを|告白《こくはく》しない|霊《れい》は、すべて|神《かみ》から|出《で》ているものではない。これは、|反《はん》キリストの|霊《れい》である。あなたがたは、それが|来《く》るとかねて|聞《き》いていたが、|今《いま》やすでに|世《よ》にきている。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|子《こ》たちよ。あなたがたは|神《かみ》から|出《で》た|者《もの》であって、|彼《かれ》らにうち|勝《か》ったのである。あなたがたのうちにいますのは、|世《よ》にある|者《もの》よりも|大《おお》いなる|者《もの》なのである。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|世《よ》から|出《で》たものである。だから、|彼《かれ》らは|世《よ》のことを|語《かた》り、|世《よ》も|彼《かれ》らの|言《い》うことを|聞《き》くのである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、わたしたちは|神《かみ》から|出《で》たものである。|神《かみ》を|知《し》っている|者《もの》は、わたしたちの|言《い》うことを|聞《き》き、|神《かみ》から|出《で》ない|者《もの》は、わたしたちの|言《い》うことを|聞《き》かない。これによって、わたしたちは、|真理《しんり》の|霊《れい》と|迷《まよ》いの|霊《れい》との|区別《くべつ》を|知《し》るのである。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。わたしたちは|互《たがい》に|愛《あい》し合おうではないか。|愛《あい》は、|神《かみ》から|出《で》たものなのである。すべて|愛《あい》する|者《もの》は、|神《かみ》から|生《うま》れた|者《もの》であって、|神《かみ》を|知《し》っている。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》さない|者《もの》は、|神《かみ》を|知《し》らない。|神《かみ》は|愛《あい》である。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》はそのひとり|子《こ》を|世《よ》につかわし、|彼《かれ》によってわたしたちを|生《い》きるようにして|下《くだ》さった。それによって、わたしたちに|対《たい》する|神《かみ》の|愛《あい》が|明《あき》らかにされたのである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|神《かみ》を|愛《あい》したのではなく、|神《かみ》がわたしたちを|愛《あい》して|下《くだ》さって、わたしたちの|罪《つみ》のためにあがないの|供《そな》え|物《もの》として、|御子《みこ》をおつかわしになった。ここに|愛《あい》がある。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。|神《かみ》がこのようにわたしたちを|愛《あい》して|下《くだ》さったのであるから、わたしたちも|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》うべきである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》を|見《み》た|者《もの》は、まだひとりもいない。もしわたしたちが|互《たがい》に|愛《あい》し|合《あ》うなら、|神《かみ》はわたしたちのうちにいまし、|神《かみ》の|愛《あい》がわたしたちのうちに|全《まっと》うされるのである。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》が|御霊《みたま》をわたしたちに|賜《たま》わったことによって、わたしたちが|神《かみ》におり、|神《かみ》がわたしたちにいますことを|知《し》る。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|父《ちち》が|御子《みこ》を|世《よ》の|救主《すくいぬし》としておつかわしになったのを|見《み》て、そのあかしをするのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]もし|人《ひと》が、イエスを|神《かみ》の|子《こ》と|告白《こくはく》すれば、|神《かみ》はその|人《ひと》のうちにいまし、その|人《ひと》は|神《かみ》のうちにいるのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは、|神《かみ》がわたしたちに|対《たい》して|持《も》っておられる|愛《あい》を|知《し》り、かつ|信《しん》じている。|神《かみ》は|愛《あい》である。|愛《あい》のうちにいる|者《もの》は、|神《かみ》におり、|神《かみ》も|彼《かれ》にいます。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちもこの|世《よ》にあって|彼《かれ》のように|生《い》きているので、さばきの|日《ひ》に|確信《かくしん》を|持《も》って|立《た》つことができる。そのことによって、|愛《あい》がわたしたちに|全《まっと》うされているのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》には|恐《おそ》れがない。|完全《かんぜん》な|愛《あい》は|恐《おそ》れをとり|除《のぞ》く。|恐《おそ》れには|懲《こ》らしめが伴い、かつ|恐《おそ》れる|者《もの》には、|愛《あい》が|全《まっと》うされていないからである。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|愛《あい》し|合《あ》うのは、|神《かみ》がまずわたしたちを|愛《あい》して|下《くだ》さったからである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]「|神《かみ》を|愛《あい》している」と|言《い》いながら|兄弟《きょうだい》を|憎《にく》む|者《もの》は、|偽《いつわ》り|者《もの》である。|現《げん》に|見《み》ている|兄弟《きょうだい》を|愛《あい》さない|者《もの》は、|目《め》に|見《み》えない|神《かみ》を|愛《あい》することはできない。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》を|愛《あい》する|者《もの》は、|兄弟《きょうだい》をも|愛《あい》すべきである。この|戒《いまし》めを、わたしたちは|神《かみ》から|授《さず》かっている。 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]すべてイエスのキリストであることを|信《しん》じる|者《もの》は、|神《かみ》から|生《うま》れた|者《もの》である。すべて|生《う》んで|下《くだ》さったかたを|愛《あい》する|者《もの》は、そのかたから|生《うま》れた|者《もの》をも|愛《あい》するのである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》を|愛《あい》してその|戒《いまし》めを|行《おこな》えば、それによってわたしたちは、|神《かみ》の|子《こ》たちを|愛《あい》していることを|知《し》るのである。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》を|愛《あい》するとは、すなわち、その|戒《いまし》めを|守《まも》ることである。そして、その|戒《いまし》めはむずかしいものではない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、すべて|神《かみ》から|生《うま》れた|者《もの》は、|世《よ》に|勝《か》つからである。そして、わたしたちの|信仰《しんこう》こそ、|世《よ》に|勝《か》たしめた|勝利《しょうり》の|力《ちから》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|世《よ》に|勝《か》つ|者《もの》はだれか。イエスを|神《かみ》の|子《こ》と|信《しん》じる|者《もの》ではないか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]このイエス・キリストは、|水《みず》と|血《ち》とをとおってこられたかたである。|水《みず》によるだけではなく、|水《みず》と|血《ち》とによってこられたのである。そのあかしをするものは、|御霊《みたま》である。|御霊《みたま》は|真理《しんり》だからである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]あかしをするものが、三つある。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|御霊《みたま》と|水《みず》と|血《ち》とである。そして、この三つのものは|一致《いっち》する。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは|人間《にんげん》のあかしを|受《う》けいれるが、しかし、|神《かみ》のあかしはさらにまさっている。|神《かみ》のあかしというのは、すなわち、|御子《みこ》について|立《た》てられたあかしである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|子《こ》を|信《しん》じる|者《もの》は、|自分《じぶん》のうちにこのあかしを|持《も》っている。|神《かみ》を|信《しん》じない|者《もの》は、|神《かみ》を|偽《いつわ》り|者《もの》とする。|神《かみ》が|御子《みこ》についてあかしせられたそのあかしを、|信《しん》じていないからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そのあかしとは、|神《かみ》が|永遠《えいえん》のいのちをわたしたちに|賜《たま》わり、かつ、そのいのちが|御子《みこ》のうちにあるということである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|御子《みこ》を|持《も》つ|者《もの》はいのちを|持《も》ち、|神《かみ》の|御子《みこ》を|持《も》たない|者《もの》はいのちを|持《も》っていない。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]これらのことをあなたがたに|書《か》きおくったのは、|神《かみ》の|子《こ》の|御名《みな》を|信《しん》じるあなたがたに、|永遠《えいえん》のいのちを|持《も》っていることを、|悟《さと》らせるためである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちが|神《かみ》に|対《たい》していだいている|確信《かくしん》は、こうである。すなわち、わたしたちが|何事《なにごと》でも|神《かみ》の|御旨《みむね》に|従《したが》って|願《ねが》い|求《もと》めるなら、|神《かみ》はそれを|聞《き》きいれて|下《くだ》さるということである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]そして、わたしたちが|願《ねが》い|求《もと》めることは、なんでも|聞《き》きいれて|下《くだ》さるとわかれば、|神《かみ》に|願《ねが》い|求《もと》めたことはすでにかなえられたことを、|知《し》るのである。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]もしだれかが|死《し》に|至《いた》ることのない|罪《つみ》を|犯《おか》している|兄弟《きょうだい》を|見《み》たら、|神《かみ》に|願《ねが》い|求《もと》めなさい。そうすれば|神《かみ》は、|死《し》に|至《いた》ることのない|罪《つみ》を|犯《おか》している|人々《ひとびと》には、いのちを|賜《たま》わるであろう。|死《し》に|至《いた》る|罪《つみ》がある。これについては、|願《ねが》い|求《もと》めよ、とは|言《い》わない。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|不義《ふぎ》はすべて、|罪《つみ》である。しかし、|死《し》に|至《いた》ることのない|罪《つみ》もある。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]すべて|神《かみ》から|生《うま》れた|者《もの》は|罪《つみ》を|犯《おか》さないことを、わたしたちは|知《し》っている。|神《かみ》から|生《うま》れたかたが|彼《かれ》を|守《まも》っていて|下《くだ》さるので、|悪《あ》しき|者《もの》が|手《て》を|触《ふ》れるようなことはない。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしたちは|神《かみ》から|出《で》た|者《もの》であり、|全《ぜん》|世界《せかい》は|悪《あ》しき|者《もの》の|配下《はいか》にあることを、|知《し》っている。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]さらに、|神《かみ》の|子《こ》がきて、|真実《しんじつ》なかたを|知《し》る|知力《ちりょく》をわたしたちに|授《さづ》けて|下《くだ》さったことも、|知《し》っている。そして、わたしたちは、|真実《しんじつ》なかたにおり、|御子《みこ》イエス・キリストにおるのである。このかたは|真実《しんじつ》な|神《かみ》であり、|永遠《えいえん》のいのちである。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|子《こ》たちよ。|気《き》をつけて、|偶像《ぐうぞう》を|避《さ》けなさい。 [#改ページ] ヨハネの第二の手紙[#「ヨハネの第二の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|長老《ちょうろう》のわたしから、|真実《しんじつ》に|愛《あい》している|選《えら》ばれた|婦人《ふじん》とその|子《こ》たちへ。あなたがたを|愛《あい》しているのは、わたしだけではなく、|真理《しんり》を|知《し》っている|者《もの》はみなそうである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それは、わたしたちのうちにあり、また|永遠《えいえん》に|共《とも》にあるべき|真理《しんり》によるのである。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》なる|神《かみ》および|父《ちち》の|御子《みこ》イエス・キリストから、|恵《めぐ》みとあわれみと|平安《へいあん》とが、|真理《しんり》と|愛《あい》のうちにあって、わたしたちと|共《とも》にあるように。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|子供《こども》たちのうちで、わたしたちが|父《ちち》から|受《う》けた|戒《いまし》めどおりに、|真理《しんり》のうちを|歩《ある》いている|者《もの》があるのを|見《み》て、わたしは|非常《ひじょう》に|喜《よろこ》んでいる。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|婦人《ふじん》よ。ここにお|願《ねが》いしたいことがある。それは、|新《あたら》しい|戒《いまし》めを|書《か》くわけではなく、|初《はじ》めから|持《も》っていた|戒《いまし》めなのであるが、わたしたちは、みんな|互《たがい》に|愛《あい》し合おうではないか。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|父《ちち》の|戒《いまし》めどおりに|歩《ある》くことが、すなわち、|愛《あい》であり、あなたがたが|初《はじ》めから|聞《き》いてきたとおりに|愛《あい》のうちを|歩《ある》くことが、すなわち、|戒《いまし》めなのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]なぜなら、イエス・キリストが|肉体《にくたい》をとってこられたことを|告白《こくはく》しないで|人《ひと》を|惑《まど》わす|者《もの》が、|多《おお》く|世《よ》にはいってきたからである。そういう|者《もの》は、|惑《まど》わす|者《もの》であり、|反《はん》キリストである。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]よく|注意《ちゅうい》して、わたしたちの|働《はたら》いて|得《え》た|成果《せいか》を|失《うしな》うことがなく、|豊《ゆた》かな|報《むく》いを|受《う》けられるようにしなさい。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]すべてキリストの|教《おしえ》をとおり|過《す》ごして、それにとどまらない|者《もの》は、|神《かみ》を|持《も》っていないのである。その|教《おしえ》にとどまっている|者《もの》は、|父《ちち》を|持《も》ち、また|御子《みこ》をも|持《も》つ。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]この|教《おしえ》を|持《も》たずにあなたがたのところに|来《く》る|者《もの》があれば、その|人《ひと》を|家《いえ》に|入《い》れることも、あいさつすることもしてはいけない。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]そのような|人《ひと》にあいさつする|者《もの》は、その|悪《わる》い|行《おこな》いにあずかることになるからである。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたに|書《か》きおくることはたくさんあるが、|紙《かみ》と|墨《すみ》とで|書《か》くことはすまい。むしろ、あなたがたのところに|行《い》き、|直接《ちょくせつ》はなし|合《あ》って、|共《とも》に|喜《よろこ》びに|満《み》ちあふれたいものである。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|選《えら》ばれたあなたの|姉妹《しまい》の|子供《こども》たちが、あなたによろしく。 [#改ページ] ヨハネの第三の手紙[#「ヨハネの第三の手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|長老《ちょうろう》のわたしから、|真実《しんじつ》に|愛《あい》している|親愛《しんあい》なるガイオへ。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》よ。あなたのたましいがいつも|恵《めぐ》まれていると|同《おな》じく、あなたがすべてのことに|恵《めぐ》まれ、またすこやかであるようにと、わたしは|祈《いの》っている。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちがきて、あなたが|真理《しんり》に|生《い》きていることを、あかししてくれたので、ひじょうに|喜《よろこ》んでいる。|事実《じじつ》、あなたは|真理《しんり》のうちを|歩《ある》いているのである。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|子供《こども》たちが|真理《しんり》のうちを|歩《ある》いていることを|聞《き》く|以上《いじょう》に、|大《おお》きい|喜《よろこ》びはない。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》よ。あなたが、|兄弟《きょうだい》たち、しかも|旅先《たびさき》にある|者《もの》につくしていることは、みな|真実《しんじつ》なわざである。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|諸《しょ》|教会《きょうかい》で、あなたの|愛《あい》についてあかしをした。それらの|人々《ひとびと》を、|神《かみ》のみこころにかなうように|送《おく》り|出《だ》してくれたら、それは|願《ねが》わしいことである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|御名《みな》のために|旅立《たびだ》った|者《もの》であって、|異邦人《いほうじん》からは|何《なに》も|受《う》けていない。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それだから、わたしたちは、|真理《しんり》のための|同労者《どうろうしゃ》となるように、こういう|人々《ひとびと》を|助《たす》けねばならない。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|少《すこ》しばかり|教会《きょうかい》に|書《か》きおくっておいたが、みんなのかしらになりたがっているデオテレペスが、わたしたちを|受《う》けいれてくれない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]だから、わたしがそちらへ|行《い》った|時《とき》、|彼《かれ》のしわざを|指摘《してき》しようと|思《おも》う。|彼《かれ》は|口《くち》ぎたなくわたしたちをののしり、そればかりか、|兄弟《きょうだい》たちを|受《う》けいれようともせず、|受《う》けいれようとする|人《ひと》たちを|妨《さまた》げて、|教会《きょうかい》から|追《お》い|出《だ》している。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》よ。|悪《あく》にならわないで、|善《ぜん》にならいなさい。|善《ぜん》を|行《おこな》う|者《もの》は|神《かみ》から|出《で》た|者《もの》であり、|悪《あく》を|行《おこな》う|者《もの》は|神《かみ》を|見《み》たことのない|者《もの》である。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]デメテリオについては、あらゆる|人《ひと》も、また|真理《しんり》そのものも、|証明《しょうめい》している。わたしたちも|証明《しょうめい》している。そして、あなたが|知《し》っているとおり、わたしたちの|証明《しょうめい》は|真実《しんじつ》である。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]あなたに|書《か》きおくりたいことはたくさんあるが、|墨《すみ》と|筆《ふで》とで|書《か》くことはすまい。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]すぐにでもあなたに|会《あ》って、|直接《ちょくせつ》はなし|合《あ》いたいものである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|平安《へいあん》が、あなたにあるように。|友人《ゆうじん》たちから、あなたによろしく。|友人《ゆうじん》たちひとりびとりに、よろしく。 [#改ページ] ユダの手紙[#「ユダの手紙」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエス・キリストの|僕《しもべ》またヤコブの|兄弟《きょうだい》であるユダから、|父《ちち》なる|神《かみ》に|愛《あい》され、イエス・キリストに|守《まも》られている|召《め》された|人々《ひとびと》へ。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]あわれみと|平安《へいあん》と|愛《あい》とが、あなたがたに|豊《ゆた》かに|加《くわ》わるように。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。わたしたちが|共《とも》にあずかっている|救《すくい》について、あなたがたに|書《か》きおくりたいと|心《こころ》から|願《ねが》っていたので、|聖徒《せいと》たちによって、ひとたび|伝《つた》えられた|信仰《しんこう》のために|戦《たたか》うことを|勧《すす》めるように、|手紙《てがみ》をおくる|必要《ひつよう》を|感《かん》じるに|至《いた》った。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]そのわけは、|不《ふ》|信仰《しんこう》な|人々《ひとびと》がしのび|込《こ》んできて、わたしたちの|神《かみ》の|恵《めぐ》みを|放縦《ほうじゅう》な|生活《せいかつ》に|変《か》え、|唯一《ゆいいつ》の|君《きみ》であり、わたしたちの|主《しゅ》であるイエス・キリストを|否定《ひてい》しているからである。|彼《かれ》らは、このようなさばきを|受《う》けることに、|昔《むかし》から|予告《よこく》されているのである。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたはみな、じゅうぶんに|知《し》っていることではあるが、|主《しゅ》が|民《たみ》をエジプトの|地《ち》から|救《すく》い|出《だ》して|後《のち》、|不《ふ》|信仰《しんこう》な|者《もの》を|滅《ほろ》ぼされたことを、|思《おも》い|起《おこ》してもらいたい。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》は、|自分《じぶん》たちの|地位《ちい》を|守《まも》ろうとはせず、そのおるべき|所《ところ》を|捨《す》て|去《さ》った|御使《みつかい》たちを、|大《おお》いなる|日《ひ》のさばきのために、|永久《えいきゅう》にしばりつけたまま、|暗《くら》やみの|中《なか》に|閉《と》じ|込《こ》めておかれた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ソドム、ゴモラも、まわりの|町々《まちまち》も、|同様《どうよう》であって、|同《おな》じように|淫行《いんこう》にふけり、|不自然《ふしぜん》な|肉欲《にくよく》に|走《はし》ったので、|永遠《えいえん》の|火《ひ》の|刑罰《けいばつ》を|受《う》け、|人々《ひとびと》の|見《み》せしめにされている。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、これと|同《おな》じように、これらの|人々《ひとびと》は、|夢《ゆめ》に|迷《まよ》わされて|肉《にく》を|汚《けが》し、|権威《けんい》ある|者《もの》たちを|軽《かろ》んじ、|栄光《えいこう》ある|者《もの》たちをそしっている。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》のかしらミカエルは、モーセの|死体《したい》について|悪魔《あくま》と|論《ろん》じ|争《あらそ》った|時《とき》、|相手《あいて》をののしりさばくことはあえてせず、ただ、「|主《しゅ》がおまえを|戒《いまし》めて|下《くだ》さるように」と|言《い》っただけであった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、この|人々《ひとびと》は|自分《じぶん》が|知《し》りもしないことをそしり、また、|分別《ふんべつ》のない|動物《どうぶつ》のように、ただ|本能《ほんのう》|的《てき》な|知識《ちしき》にあやまられて、|自《みずか》らの|滅亡《めつぼう》を|招《まね》いている。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはわざわいである。|彼《かれ》らはカインの|道《みち》を|行《い》き、|利《り》のためにバラムの|惑《まど》わしに|迷《まよ》い|入《い》り、コラのような|反逆《はんぎゃく》をして|滅《ほろ》んでしまうのである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、あなたがたの|愛《あい》|餐《さん》に|加《くわ》わるが、それを|汚《けが》し、|無遠慮《ぶえんりょ》に|宴会《えんかい》に|同席《どうせき》して、|自分《じぶん》の|腹《はら》を|肥《こ》やしている。|彼《かれ》らは、いわば、|風《かぜ》に|吹《ふ》きまわされる|水《みず》なき|雲《くも》、|実《みの》らない|枯《か》れ|果《は》てて、|抜《ぬ》き|捨《す》てられた|秋《あき》の|木《き》、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|自分《じぶん》の|恥《はじ》をあわにして|出《だ》す|海《うみ》の|荒波《あらなみ》、さまよう|星《ほし》である。|彼《かれ》らには、まっくらなやみが|永久《えいきゅう》に|用意《ようい》されている。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]アダムから七|代目《だいめ》にあたるエノクも|彼《かれ》らについて|預言《よげん》して|言《い》った、「|見《み》よ、|主《しゅ》は|無数《むすう》の|聖徒《せいと》たちを|率《ひき》いてこられた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それは、すべての|者《もの》にさばきを|行《おこな》うためであり、また、|不信心《ふしんじん》な|者《もの》が、|信仰《しんこう》を|無視《むし》して|犯《おか》したすべての|不信心《ふしんじん》なしわざと、さらに、|不信心《ふしんじん》な|罪人《つみびと》が|主《しゅ》にそむいて|語《かた》ったすべての|暴言《ぼうげん》とを|責《せ》めるためである」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|不平《ふへい》をならべ、|不満《ふまん》を|鳴《な》らす|者《もの》であり、|自分《じぶん》の|欲《よく》のままに|生活《せいかつ》し、その|口《くち》は|大言《たいげん》を|吐《は》き、|利《り》のために|人《ひと》にへつらう|者《もの》である。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|愛《あい》する|者《もの》たちよ。わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストの|使徒《しと》たちが|予告《よこく》した|言葉《ことば》を|思《おも》い|出《だ》しなさい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らはあなたがたにこう|言《い》った、「|終《おわ》りの|時《とき》に、あざける|者《もの》たちがあらわれて、|自分《じぶん》の|不信心《ふしんじん》な|欲《よく》のままに|生活《せいかつ》するであろう」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|分派《ぶんぱ》をつくる|者《もの》、|肉《にく》に|属《ぞく》する|者《もの》、|御霊《みたま》を|持《も》たない|者《もの》たちである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|愛《あい》する|者《もの》たちよ。あなたがたは、|最《もっと》も|神聖《しんせい》な|信仰《しんこう》の|上《うえ》に|自《みずか》らを|築《きず》き|上《あ》げ、|聖霊《せいれい》によって|祈《いの》り、[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|愛《あい》の|中《なか》に|自《みずか》らを|保《たも》ち、|永遠《えいえん》のいのちを|目《め》あてとして、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストのあわれみを|待《ま》ち|望《のぞ》みなさい。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|疑《うたが》いをいだく|人々《ひとびと》があれば、|彼《かれ》らをあわれみ、[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|火《ひ》の|中《なか》から|引《ひ》き|出《だ》して|救《すく》ってやりなさい。また、そのほかの|人《ひと》たちを、おそれの|心《こころ》をもってあわれみなさい。しかし、|肉《にく》に|汚《けが》れた|者《もの》に|対《たい》しては、その|下着《したぎ》さえも|忌《い》みきらいなさい。  [#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたを|守《まも》ってつまずかない|者《もの》とし、また、その|栄光《えいこう》のまえに|傷《きず》なき|者《もの》として、|喜《よろこ》びのうちに|立《た》たせて|下《くだ》さるかた、[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]すなわち、わたしたちの|救主《すくいぬし》なる|唯一《ゆいいつ》の|神《かみ》に、|栄光《えいこう》、|大能《たいのう》、|力《ちから》、|権威《けんい》が、わたしたちの|主《しゅ》イエス・キリストによって、|世々《よよ》の|初《はじ》めにも、|今《いま》も、また、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく、あるように、アァメン。 [#改ページ] ヨハネの黙示録[#「ヨハネの黙示録」は大見出し] 第一章[#「第一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]イエス・キリストの|黙示《もくし》。この|黙示《もくし》は、|神《かみ》が、すぐにも|起《おこ》るべきことをその|僕《しもべ》たちに|示《しめ》すためキリストに|与《あた》え、そして、キリストが、|御使《みつかい》をつかわして、|僕《しもべ》ヨハネに|伝《つた》えられたものである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネは、|神《かみ》の|言《ことば》とイエス・キリストのあかしと、すなわち、|自分《じぶん》が|見《み》たすべてのことをあかしした。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]この|預言《よげん》の|言葉《ことば》を|朗読《ろうどく》する|者《もの》と、これを|聞《き》いて、その|中《なか》に|書《か》かれていることを|守《まも》る|者《もの》たちとは、さいわいである。|時《とき》が|近《ちか》づいているからである。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]ヨハネからアジヤにある七つの|教会《きょうかい》へ。|今《いま》いまし、|昔《むかし》いまし、やがてきたるべきかたから、また、その|御座《みざ》の|前《まえ》にある七つの|霊《れい》から、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また、|忠実《ちゅうじつ》な|証人《しょうにん》、|死人《しにん》の|中《なか》から|最初《さいしょ》に|生《うま》れた|者《もの》、|地上《ちじょう》の|諸王《しょおう》の|支配者《しはいしゃ》であるイエス・キリストから、|恵《めぐ》みと|平安《へいあん》とが、あなたがたにあるように。わたしたちを|愛《あい》し、その|血《ち》によってわたしたちを|罪《つみ》から|解放《かいほう》し、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちを、その|父《ちち》なる|神《かみ》のために、|御国《みくに》の|民《たみ》とし、|祭司《さいし》として|下《くだ》さったかたに、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|栄光《えいこう》と|権力《けんりょく》とがあるように、アァメン。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、|彼《かれ》は、|雲《くも》に|乗《の》ってこられる。すべての|人《ひと》の|目《め》、ことに、|彼《かれ》を|刺《さ》しとおした|者《もの》たちは、|彼《かれ》を|仰《あお》ぎ|見《み》るであろう。また|地上《ちじょう》の|諸《しょ》|族《ぞく》はみな、|彼《かれ》のゆえに|胸《むね》を|打《う》って|嘆《なげ》くであろう。しかり、アァメン。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|今《いま》いまし、|昔《むかし》いまし、やがてきたるべき|者《もの》、|全能者《ぜんのうしゃ》にして|主《しゅ》なる|神《かみ》が|仰《おお》せになる、「わたしはアルパであり、オメガである」。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]あなたがたの|兄弟《きょうだい》であり、|共《とも》にイエスの|苦難《くなん》と|御国《みくに》と|忍耐《にんたい》とにあずかっている、わたしヨハネは、|神《かみ》の|言《ことば》とイエスのあかしとのゆえに、パトモスという|島《しま》にいた。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]ところが、わたしは、|主《しゅ》の|日《ひ》に|御霊《みたま》に|感《かん》じた。そして、わたしのうしろの|方《ほう》で、ラッパのような|大《おお》きな|声《こえ》がするのを|聞《き》いた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]その|声《こえ》はこう|言《い》った、「あなたが|見《み》ていることを|書《か》きものにして、それをエペソ、スミルナ、ペルガモ、テアテラ、サルデス、ヒラデルヒヤ、ラオデキヤにある七つの|教会《きょうかい》に|送《おく》りなさい」。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そこでわたしは、わたしに|呼《よ》びかけたその|声《こえ》を|見《み》ようとしてふりむいた。ふりむくと、七つの|金《きん》の|燭台《しょくだい》が|目《め》についた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]それらの|燭台《しょくだい》の|間《あいだ》に、|足《あし》までたれた|上着《うわぎ》を|着《き》、|胸《むね》に|金《きん》の|帯《おび》をしめている|人《ひと》の|子《こ》のような|者《もの》がいた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そのかしらと|髪《かみ》の|毛《け》とは、|雪《ゆき》のように|白《しろ》い|羊毛《ようもう》に|似《に》て|真白《まっしろ》であり、|目《め》は|燃《も》える|炎《ほのお》のようであった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]その|足《あし》は、|炉《ろ》で|精錬《せいれん》されて|光《ひか》り|輝《かがや》くしんちゅうのようであり、|声《こえ》は|大水《おおみず》のとどろきのようであった。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]その|右手《みぎて》に七つの|星《ほし》を|持《も》ち、|口《くち》からは、|鋭《するど》いもろ|刃《は》のつるぎがつき|出《で》ており、|顔《かお》は、|強《つよ》く|照《て》り|輝《かがや》く|太陽《たいよう》のようであった。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|彼《かれ》を|見《み》たとき、その|足《あし》もとに|倒《たお》れて|死人《しにん》のようになった。すると、|彼《かれ》は|右手《みぎて》をわたしの|上《うえ》において|言《い》った、「|恐《おそ》れるな。わたしは|初《はじ》めであり、|終《おわ》りであり、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]また、|生《い》きている|者《もの》である。わたしは|死《し》んだことはあるが、|見《み》よ、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|生《い》きている|者《もの》である。そして、|死《し》と|黄泉《よみ》とのかぎを|持《も》っている。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたの|見《み》たこと、|現在《げんざい》のこと、|今後《こんご》|起《おこ》ろうとすることを、|書《か》きとめなさい。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたがわたしの|右手《みぎて》に|見《み》た七つの|星《ほし》と、七つの|金《きん》の|燭台《しょくだい》との|奥義《おくぎ》は、こうである。すなわち、七つの|星《ほし》は七つの|教会《きょうかい》の|御使《みつかい》であり、七つの|燭台《しょくだい》は七つの|教会《きょうかい》である。 第二章[#「第二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]エペソにある|教会《きょうかい》の|御使《みつかい》に、こう|書《か》きおくりなさい。  『|右《みぎ》の|手《て》に七つの|星《ほし》を|持《も》つ|者《もの》、七つの|金《きん》の|燭台《しょくだい》の|間《あいだ》を|歩《ある》く|者《もの》が、|次《つぎ》のように|言《い》われる。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたのわざと|労苦《ろうく》と|忍耐《にんたい》とを|知《し》っている。また、あなたが、|悪《わる》い|者《もの》たちをゆるしておくことができず、|使徒《しと》と|自《じ》|称《しょう》してはいるが、その|実《じつ》、|使徒《しと》でない|者《もの》たちをためしてみて、にせ|者《もの》であると|見抜《みぬ》いたことも、|知《し》っている。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]あなたは|忍耐《にんたい》をし|続《つづ》け、わたしの|名《な》のために|忍《しの》びとおして、|弱《よわ》り|果《は》てることがなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたに|対《たい》して|責《せめ》むべきことがある。あなたは|初《はじ》めの|愛《あい》から|離《はな》れてしまった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたはどこから|落《お》ちたかを|思《おも》い|起《おこ》し、|悔《く》い|改《あらた》めて|初《はじ》めのわざを|行《おこな》いなさい。もし、そうしないで|悔《く》い|改《あらた》めなければ、わたしはあなたのところにきて、あなたの|燭台《しょくだい》をその|場所《ばしょ》から|取《と》りのけよう。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、こういうことはある、あなたはニコライ|宗《しゅう》の|人々《ひとびと》のわざを|憎《にく》んでおり、わたしもそれを|憎《にく》んでいる。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|耳《みみ》のある|者《もの》は、|御霊《みたま》が|諸《しょ》|教会《きょうかい》に|言《い》うことを|聞《き》くがよい。|勝利《しょうり》を|得《え》る|者《もの》には、|神《かみ》のパラダイスにあるいのちの|木《き》の|実《み》を|食《た》べることをゆるそう』。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]スミルナにある|教会《きょうかい》の|御使《みつかい》に、こう|書《か》きおくりなさい。  『|初《はじ》めであり、|終《おわ》りである|者《もの》、|死《し》んだことはあるが|生《い》き|返《かえ》った|者《もの》が、|次《つぎ》のように|言《い》われる。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたの|苦難《くなん》や、|貧《まず》しさを|知《し》っている(しかし|実際《じっさい》は、あなたは|富《と》んでいるのだ)。また、ユダヤ|人《じん》と|自《じ》|称《しょう》してはいるが、その|実《じつ》ユダヤ|人《じん》でなくてサタンの|会堂《かいどう》に|属《ぞく》する|者《もの》たちにそしられていることも、わたしは|知《し》っている。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|受《う》けようとする|苦《くる》しみを|恐《おそ》れてはならない。|見《み》よ、|悪魔《あくま》が、あなたがたのうちのある|者《もの》をためすために、|獄《ごく》に|入《い》れようとしている。あなたがたは十|日《か》の|間《あいだ》、|苦難《くなん》にあうであろう。|死《し》に|至《いた》るまで|忠実《ちゅうじつ》であれ。そうすれば、いのちの|冠《かんむり》を|与《あた》えよう。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|耳《みみ》のある|者《もの》は、|御霊《みたま》が|諸《しょ》|教会《きょうかい》に|言《い》うことを|聞《き》くがよい。|勝利《しょうり》を|得《え》る|者《もの》は、|第《だい》二の|死《し》によって|滅《ほろ》ぼされることはない』。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ペルガモにある|教会《きょうかい》の|御使《みつかい》に、こう|書《か》きおくりなさい。  『|鋭《するど》いもろ|刃《は》のつるぎを|持《も》っているかたが、|次《つぎ》のように|言《い》われる。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしはあなたの|住《す》んでいる|所《ところ》を|知《し》っている。そこにはサタンの|座《ざ》がある。あなたは、わたしの|名《な》を|堅《かた》く|持《も》ちつづけ、わたしの|忠実《ちゅうじつ》な|証人《しょうにん》アンテパスがサタンの|住《す》んでいるあなたがたの|所《ところ》で|殺《ころ》された|時《とき》でさえ、わたしに|対《たい》する|信仰《しんこう》を|捨《す》てなかった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたに|対《たい》して|責《せめ》むべきことが、|少《すこ》しばかりある。あなたがたの|中《なか》には、|現《げん》にバラムの|教《おしえ》を|奉《ほう》じている|者《もの》がある。バラムは、バラクに|教《おし》え|込《こ》み、イスラエルの|子《こ》らの|前《まえ》に、つまずきになるものを|置《お》かせて、|偶像《ぐうぞう》にささげたものを|食《た》べさせ、また|不品行《ふひんこう》をさせたのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|同《おな》じように、あなたがたの|中《なか》には、ニコライ|宗《しゅう》の|教《おしえ》を|奉《ほう》じている|者《もの》もいる。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]だから、|悔《く》い|改《あらた》めなさい。そうしないと、わたしはすぐにあなたのところに|行《い》き、わたしの|口《くち》のつるぎをもって|彼《かれ》らと|戦《たたか》おう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|耳《みみ》のある|者《もの》は、|御霊《みたま》が|諸《しょ》|教会《きょうかい》に|言《い》うことを|聞《き》くがよい。|勝利《しょうり》を|得《え》る|者《もの》には、|隠《かく》されているマナを|与《あた》えよう。また、|白《しろ》い|石《いし》を|与《あた》えよう。この|石《いし》の|上《うえ》には、これを|受《う》ける|者《もの》のほかだれも|知《し》らない|新《あたら》しい|名《な》が|書《か》いてある』。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]テアテラにある|教会《きょうかい》の|御使《みつかい》に、こう|書《か》きおくりなさい。  『|燃《も》える|炎《ほのお》のような|目《め》と|光《ひか》り|輝《かがや》くしんちゅうのような|足《あし》とを|持《も》った|神《かみ》の|子《こ》が、|次《つぎ》のように|言《い》われる。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたのわざと、あなたの|愛《あい》と|信仰《しんこう》と|奉仕《ほうし》と|忍耐《にんたい》とを|知《し》っている。また、あなたの|後《のち》のわざが、|初《はじ》めのよりもまさっていることを|知《し》っている。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、あなたに|対《たい》して|責《せめ》むべきことがある。あなたは、あのイゼベルという|女《おんな》を、そのなすがままにさせている。この|女《おんな》は|女《おんな》|預言者《よげんしゃ》と|自《じ》|称《しょう》し、わたしの|僕《しもべ》たちを|教《おし》え、|惑《まど》わして、|不品行《ふひんこう》をさせ、|偶像《ぐうぞう》にささげたものを|食《た》べさせている。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、この|女《おんな》に|悔《く》い|改《あらた》めるおりを|与《あた》えたが、|悔《く》い|改《あらた》めてその|不品行《ふひんこう》をやめようとはしない。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、わたしはこの|女《おんな》を|病《やまい》の|床《とこ》に|投《な》げ|入《い》れる。この|女《おんな》と|姦淫《かんいん》する|者《もの》をも、|悔《く》い|改《あらた》めて|彼女《かのじょ》のわざから|離《はな》れなければ、|大《おお》きな|患難《かんなん》の|中《なか》に|投《な》げ|入《い》れる。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]また、この|女《おんな》の|子《こ》|供《とも》たちをも|打《う》ち|殺《ころ》そう。こうしてすべての|教会《きょうかい》は、わたしが|人《ひと》の|心《こころ》の|奥底《おくそこ》までも|探《さぐ》り|知《し》る|者《もの》であることを|悟《さと》るであろう。そしてわたしは、あなたがたひとりびとりのわざに|応《おう》じて|報《むく》いよう。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]また、テアテラにいるほかの|人《ひと》たちで、まだあの|女《おんな》の|教《おしえ》を|受《う》けておらず、サタンの、いわゆる「|深《ふか》み」を|知《し》らないあなたがたに|言《い》う。わたしは|別《べつ》にほかの|重荷《おもに》を、あなたがたに|負《お》わせることはしない。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]ただ、わたしが|来《く》る|時《とき》まで、|自分《じぶん》の|持《も》っているものを|堅《かた》く|保《たも》っていなさい。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|勝利《しょうり》を|得《え》る|者《もの》、わたしのわざを|最後《さいご》まで|持《も》ち|続《つづ》ける|者《もの》には、|諸《しょ》|国民《こくみん》を|支配《しはい》する|権威《けんい》を|授《さづ》ける。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|鉄《てつ》のつえをもって、ちょうど|土《つち》の|器《うつわ》を|砕《くだ》くように、|彼《かれ》らを|治《おさ》めるであろう。それは、わたし|自身《じしん》が|父《ちち》から|権威《けんい》を|受《う》けて|治《おさ》めるのと|同様《どうよう》である。[#太字]二八[#「二八」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまた、|彼《かれ》に|明《あ》けの|明星《みょうじょう》を|与《あた》える。[#太字]二九[#「二九」は行右小書き][#太字終わり]|耳《みみ》のある|者《もの》は、|御霊《みたま》が|諸《しょ》|教会《きょうかい》に|言《い》うことを|聞《き》くがよい』。 第三章[#「第三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]サルデスにある|教会《きょうかい》の|御使《みつかい》に、こう|書《か》きおくりなさい。  『|神《かみ》の七つの|霊《れい》と七つの|星《ほし》とを|持《も》つかたが、|次《つぎ》のように|言《い》われる。わたしはあなたのわざを|知《し》っている。すなわち、あなたは、|生《い》きているというのは|名《な》だけで、|実《じつ》は|死《し》んでいる。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|目《め》をさましていて、|死《し》にかけている|残《のこ》りの|者《もの》たちを|力《ちから》づけなさい。わたしは、あなたのわざが、わたしの|神《かみ》のみまえに|完全《かんぜん》であるとは|見《み》ていない。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]だから、あなたが、どのようにして|受《う》けたか、また|聞《き》いたかを|思《おも》い|起《おこ》して、それを|守《まも》りとおし、かつ|悔《く》い|改《あらた》めなさい。もし|目《め》をさましていないなら、わたしは|盗人《ぬすびと》のように|来《く》るであろう。どんな|時《とき》にあなたのところに|来《く》るか、あなたには|決《けっ》してわからない。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、サルデスにはその|衣《ころも》を|汚《けが》さない|人《ひと》が、|数人《すうにん》いる。|彼《かれ》らは|白《しろ》い|衣《ころも》を|着《き》て、わたしと|共《とも》に|歩《あゆ》みを|続《つづ》けるであろう。|彼《かれ》らは、それにふさわしい|者《もの》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|勝利《しょうり》を|得《え》る|者《もの》は、このように|白《しろ》い|衣《ころも》を|着《き》せられるのである。わたしは、その|名《な》をいのちの|書《か》から|消《け》すようなことを、|決《けっ》してしない。また、わたしの|父《ちち》と|御使《みつかい》たちの|前《まえ》で、その|名《な》を|言《い》いあらわそう。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|耳《みみ》のある|者《もの》は、|御霊《みたま》が|諸《しょ》|教会《きょうかい》に|言《い》うことを|聞《き》くがよい』。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]ヒラデルヒヤにある|教会《きょうかい》の|御使《みつかい》に、こう|書《か》きおくりなさい。  『|聖《せい》なる|者《もの》、まことなる|者《もの》、ダビデのかぎを|持《も》つ|者《もの》、|開《ひら》けばだれにも|閉《と》じられることがなく、|閉《と》じればだれにも|開《ひら》かれることのない|者《もの》が、|次《つぎ》のように|言《い》われる。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、あなたのわざを|知《し》っている。|見《み》よ、わたしは、あなたの|前《まえ》に、だれも|閉《と》じることのできない|門《もん》を|開《ひら》いておいた。なぜなら、あなたには|少《すこ》ししか|力《ちから》がなかったにもかかわらず、わたしの|言葉《ことば》を|守《まも》り、わたしの|名《な》を|否《いな》まなかったからである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、サタンの|会堂《かいどう》に|属《ぞく》する|者《もの》、すなわち、ユダヤ|人《じん》と|自《じ》|称《しょう》してはいるが、その|実《じつ》ユダヤ|人《じん》でなくて、|偽《いつわ》る|者《もの》たちに、こうしよう。|見《み》よ、|彼《かれ》らがあなたの|足《あし》もとにきて|平伏《へいふく》するようにし、そして、わたしがあなたを|愛《あい》していることを、|彼《かれ》らに|知《し》らせよう。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|忍耐《にんたい》についてのわたしの|言葉《ことば》をあなたが|守《まも》ったから、わたしも、|地上《ちじょう》に|住《す》む|者《もの》たちをためすために、|全《ぜん》|世界《せかい》に|臨《のぞ》もうとしている|試錬《しれん》の|時《とき》に、あなたを|防《ふせ》ぎ|守《まも》ろう。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、すぐに|来《く》る。あなたの|冠《かんむり》がだれにも|奪《うば》われないように、|自分《じぶん》の|持《も》っているものを|堅《かた》く|守《まも》っていなさい。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|勝利《しょうり》を|得《え》る|者《もの》を、わたしの|神《かみ》の|聖所《せいじょ》における|柱《はしら》にしよう。|彼《かれ》は|決《けっ》して二|度《ど》と|外《そと》へ|出《で》ることはない。そして|彼《かれ》の|上《うえ》に、わたしの|神《かみ》の|御名《みな》と、わたしの|神《かみ》の|都《みやこ》、すなわち、|天《てん》とわたしの|神《かみ》のみもとから|下《くだ》ってくる|新《あたら》しいエルサレムの|名《な》と、わたしの|新《あたら》しい|名《な》とを、|書《か》きつけよう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|耳《みみ》のある|者《もの》は、|御霊《みたま》が|諸《しょ》|教会《きょうかい》に|言《い》うことを|聞《き》くがよい』。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ラオデキヤにある|教会《きょうかい》の|御使《みつかい》に、こう|書《か》きおくりなさい。  『アァメンたる|者《もの》、|忠実《ちゅうじつ》な、まことの|証人《しょうにん》、|神《かみ》に|造《つく》られたものの|根源《こんげん》であるかたが、|次《つぎ》のように|言《い》われる。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしはあなたのわざを|知《し》っている。あなたは|冷《つめ》たくもなく、|熱《あつ》くもない。むしろ、|冷《つめ》たいか|熱《あつ》いかであってほしい。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]このように、|熱《あつ》くもなく、|冷《つめ》たくもなく、なまぬるいので、あなたを|口《くち》から|吐《は》き|出《だ》そう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]あなたは、|自分《じぶん》は|富《と》んでいる、|豊《ゆた》かになった、なんの|不自由《ふじゆう》もないと|言《い》っているが、|実《じつ》は、あなた|自身《じしん》がみじめな|者《もの》、あわれむべき|者《もの》、|貧《まず》しい|者《もの》、|目《め》の|見《み》えない|者《もの》、|裸《はだか》な|者《もの》であることに|気《き》がついていない。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そこで、あなたに|勧《すす》める。|富《と》む|者《もの》となるために、わたしから|火《ひ》で|精錬《せいれん》された|金《きん》を|買《か》い、また、あなたの|裸《はだか》の|恥《はじ》をさらさないため|身《み》に|着《つ》けるように、|白《しろ》い|衣《ころも》を|買《か》いなさい。また、|見《み》えるようになるため、|目《め》にぬる|目薬《めぐすり》を|買《か》いなさい。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]すべてわたしの|愛《あい》している|者《もの》を、わたしはしかったり、|懲《こ》らしめたりする。だから、|熱心《ねっしん》になって|悔《く》い|改《あらた》めなさい。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、わたしは|戸《と》の|外《そと》に|立《た》って、たたいている。だれでもわたしの|声《こえ》を|聞《き》いて|戸《と》をあけるなら、わたしはその|中《なか》にはいって|彼《かれ》と|食《しょく》を|共《とも》にし、|彼《かれ》もまたわたしと|食《しょく》を|共《とも》にするであろう。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|勝利《しょうり》を|得《え》る|者《もの》には、わたしと|共《とも》にわたしの|座《ざ》につかせよう。それはちょうど、わたしが|勝利《しょうり》を|得《え》てわたしの|父《ちち》と|共《とも》にその|御座《みざ》についたのと|同様《どうよう》である。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]|耳《みみ》のある|者《もの》は、|御霊《みたま》が|諸《しょ》|教会《きょうかい》に|言《い》うことを|聞《き》くがよい』」。 第四章[#「第四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》、わたしが|見《み》ていると、|見《み》よ、|開《ひら》いた|門《もん》が|天《てん》にあった。そして、さきにラッパのような|声《こえ》でわたしに|呼《よ》びかけるのを|聞《き》いた|初《はじ》めの|声《こえ》が、「ここに|上《のぼ》ってきなさい。そうしたら、これから|後《のち》に|起《おこ》るべきことを、|見《み》せてあげよう」と|言《い》った。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]すると、たちまち、わたしは|御霊《みたま》に|感《かん》じた。|見《み》よ、|御座《みざ》が|天《てん》に|設《もう》けられており、その|御座《みざ》にいますかたがあった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]その|座《ざ》にいますかたは、|碧玉《へきぎょく》や|赤《あか》めのうのように|見《み》え、また、|御座《みざ》のまわりには、|緑玉《りょくぎょく》のように|見《み》えるにじが|現《あらわ》れていた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また、|御座《みざ》のまわりには二十四の|座《ざ》があって、二十四|人《にん》の|長老《ちょうろう》が|白《しろ》い|衣《ころも》を|身《み》にまとい、|頭《あたま》に|金《きん》の|冠《かんむり》をかぶって、それらの|座《ざ》についていた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|御座《みざ》からは、いなずまと、もろもろの|声《こえ》と、|雷鳴《らいめい》とが、|発《はっ》していた。また、七つのともし|火《ひ》が、|御座《みざ》の|前《まえ》で|燃《も》えていた。これらは、|神《かみ》の七つの|霊《れい》である。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|御座《みざ》の|前《まえ》は、|水晶《すいしょう》に|似《に》たガラスの|海《うみ》のようであった。|御座《みざ》のそば|近《ちか》くそのまわりには、四つの|生《い》き|物《もの》がいたが、その|前《まえ》にも|後《のち》にも、一|面《めん》に|目《め》がついていた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》一の|生《い》き|物《もの》はししのようであり、|第《だい》二の|生《い》き|物《もの》は|雄《お》|牛《うし》のようであり、|第《だい》三の|生《い》き|物《もの》は|人《ひと》のような|顔《かお》をしており、|第《だい》四の|生《い》き|物《もの》は|飛《と》ぶわしのようであった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]この四つの|生《い》き|物《もの》には、それぞれ六つの|翼《つばさ》があり、その|翼《つばさ》のまわりも|内側《うちがわ》も|目《め》で|満《み》ちていた。そして、|昼《ひる》も|夜《よる》も、|絶《た》え|間《ま》なくこう|叫《さけ》びつづけていた、 [#ここから2字下げ] 「|聖《せい》なるかな、|聖《せい》なるかな、|聖《せい》なるかな、 |全能者《ぜんのうしゃ》にして|主《しゅ》なる|神《かみ》。 |昔《むかし》いまし、|今《いま》いまし、やがてきたるべき|者《もの》」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]これらの|生《い》き|物《もの》が、|御座《みざ》にいまし、かつ、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|生《い》きておられるかたに、|栄光《えいこう》とほまれとを|帰《き》し、また、|感謝《かんしゃ》をささげている|時《とき》、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]二十四|人《にん》の|長老《ちょうろう》は、|御座《みざ》にいますかたのみまえにひれ|伏《ふ》し、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|生《い》きておられるかたを|拝《おが》み、|彼《かれ》らの|冠《かんむり》を|御座《みざ》のまえに、|投《な》げ|出《だ》して|言《い》った、 [#ここから2字下げ] [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]「われらの|主《しゅ》なる|神《かみ》よ、 あなたこそは、 |栄光《えいこう》とほまれと|力《ちから》とを|受《う》けるにふさわしいかた。 あなたは|万物《ばんぶつ》を|造《つく》られました。 |御旨《みむね》によって、|万物《ばんぶつ》は|存在《そんざい》し、 また|造《つく》られたのであります」。 [#ここで字下げ終わり] 第五章[#「第五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまた、|御座《みざ》にいますかたの|右《みぎ》の|手《て》に、|巻物《まきもの》があるのを|見《み》た。その|内側《うちがわ》にも|外側《そとがわ》にも|字《じ》が|書《か》いてあって、七つの|封印《ふういん》で|封《ふう》じてあった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]また、ひとりの|強《つよ》い|御使《みつかい》が、|大声《おおごえ》で、「その|巻物《まきもの》を|開《ひら》き、|封印《ふういん》をとくのにふさわしい|者《もの》は、だれか」と|呼《よ》ばわっているのを|見《み》た。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|天《てん》にも|地《ち》にも|地《ち》の|下《した》にも、この|巻物《まきもの》を|開《ひら》いて、それを|見《み》ることのできる|者《もの》は、ひとりもいなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|巻物《まきもの》を|開《ひら》いてそれを|見《み》るのにふさわしい|者《もの》が|見当《みあた》らないので、わたしは|激《はげ》しく|泣《な》いていた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]すると、|長老《ちょうろう》のひとりがわたしに|言《い》った、「|泣《な》くな。|見《み》よ、ユダ|族《ぞく》のしし、ダビデの|若《わか》|枝《えだ》であるかたが、|勝利《しょうり》を|得《え》たので、その|巻物《まきもの》を|開《ひら》き七つの|封印《ふういん》を|解《と》くことができる」。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまた、|御座《みざ》と四つの|生《い》き|物《もの》との|間《あいだ》、|長老《ちょうろう》たちの|間《あいだ》に、ほふられたとみえる|小羊《こひつじ》が|立《た》っているのを|見《み》た。それに七つの|角《つの》と七つの|目《め》とがあった。これらの|目《め》は、|全《ぜん》|世界《せかい》につかわされた、|神《かみ》の七つの|霊《れい》である。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|小羊《こひつじ》は|進《すす》み|出《で》て、|御座《みざ》にいますかたの|右《みぎ》の|手《て》から、|巻物《まきもの》を|受《う》けとった。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|巻物《まきもの》を|受《う》けとった|時《とき》、四つの|生《い》き|物《もの》と二十四|人《にん》の|長老《ちょうろう》とは、おのおの、|立琴《たてごと》と、|香《こう》の|満《み》ちている|金《きん》の|鉢《はち》とを|手《て》に|持《も》って、|小羊《こひつじ》の|前《まえ》にひれ|伏《ふ》した。この|香《こう》は|聖徒《せいと》の|祈《いのり》である。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|新《あたら》しい|歌《うた》を|歌《うた》って|言《い》った、「あなたこそは、その|巻物《まきもの》を|受《う》けとり、|封印《ふういん》を|解《と》くにふさわしいかたであります。あなたはほふられ、その|血《ち》によって、|神《かみ》のために、あらゆる|部族《ぶぞく》、|国語《こくご》、|民族《みんぞく》、|国民《こくみん》の|中《なか》から|人々《ひとびと》をあがない、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちの|神《かみ》のために、|彼《かれ》らを|御国《みくに》の|民《たみ》とし、|祭司《さいし》となさいました。|彼《かれ》らは|地上《ちじょう》を|支配《しはい》するに|至《いた》るでしょう」。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]さらに|見《み》ていると、|御座《みざ》と|生《い》き|物《もの》と|長老《ちょうろう》たちとのまわりに、|多《おお》くの|御使《みつかい》たちの|声《こえ》が|上《あ》がるのを|聞《き》いた。その|数《かず》は万の|幾《いく》万|倍《ばい》、千の|幾《いく》千|倍《ばい》もあって、[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んでいた、 [#ここから2字下げ] 「ほふられた|小羊《こひつじ》こそは、 |力《ちから》と、|富《とみ》と、|知恵《ちえ》と、|勢《いきお》いと、ほまれと、|栄光《えいこう》と、 さんびとを|受《う》けるにふさわしい」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]またわたしは、|天《てん》と|地《ち》、|地《ち》の|下《した》と|海《うみ》の|中《なか》にあるすべての|造《つく》られたもの、そして、それらの|中《なか》にあるすべてのものの|言《い》う|声《こえ》を|聞《き》いた、 [#ここから2字下げ] 「|御座《みざ》にいますかたと|小羊《こひつじ》とに、 さんびと、ほまれと、|栄光《えいこう》と、|権力《けんりょく》とが、 |世々《よよ》|限《かぎ》りなくあるように」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]四つの|生《い》き|物《もの》はアァメンと|唱《とな》え、|長老《ちょうろう》たちはひれ|伏《ふ》して|礼拝《れいはい》した。 第六章[#「第六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|小羊《こひつじ》がその七つの|封印《ふういん》の一つを|解《と》いた|時《とき》、わたしが|見《み》ていると、四つの|生《い》き|物《もの》の一つが、|雷《かみなり》のような|声《こえ》で「きたれ」と|呼《よ》ぶのを|聞《き》いた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして|見《み》ていると、|見《み》よ、|白《しろ》い|馬《うま》が|出《で》てきた。そして、それに|乗《の》っている|者《もの》は、|弓《ゆみ》を|手《て》に|持《も》っており、また|冠《かんむり》を|与《あた》えられて、|勝利《しょうり》の|上《うえ》にもなお|勝利《しょうり》を|得《え》ようとして|出《で》かけた。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|小羊《こひつじ》が|第《だい》二の|封印《ふういん》を|解《と》いた|時《とき》、|第《だい》二の|生《い》き|物《もの》が「きたれ」と|言《い》うのを、わたしは|聞《き》いた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すると|今度《こんど》は、|赤《あか》い|馬《うま》が|出《で》てきた。そして、それに|乗《の》っている|者《もの》は、|人々《ひとびと》が|互《たがい》に|殺《ころ》し|合《あ》うようになるために、|地上《ちじょう》から|平和《へいわ》を|奪《うば》い|取《と》ることを|許《ゆる》され、また、|大《おお》きなつるぎを|与《あた》えられた。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]また、|第《だい》三の|封印《ふういん》を|解《と》いた|時《とき》、|第《だい》三の|生《い》き|物《もの》が「きたれ」と|言《い》うのを、わたしは|聞《き》いた。そこで|見《み》ていると、|見《み》よ、|黒《くろ》い|馬《うま》が|出《で》てきた。そして、それに|乗《の》っている|者《もの》は、はかりを|手《て》に|持《も》っていた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]すると、わたしは四つの|生《い》き|物《もの》の|間《あいだ》から|出《で》て|来《く》ると|思《おも》われる|声《こえ》が、こう|言《い》うのを|聞《き》いた、「|小麦《こむぎ》一ますは一デナリ。|大麦《おおむぎ》三ますも一デナリ。オリブ|油《ゆ》とぶどう|酒《しゅ》とを、そこなうな」。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|小羊《こひつじ》が|第《だい》四の|封印《ふういん》を|解《と》いた|時《とき》、|第《だい》四の|生《い》き|物《もの》が「きたれ」と|言《い》う|声《こえ》を、わたしは|聞《き》いた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そこで|見《み》ていると、|見《み》よ、|青白《あおじろ》い|馬《うま》が|出《で》てきた。そして、それに|乗《の》っている|者《もの》の|名《な》は「|死《し》」と|言《い》い、それに|黄泉《よみ》が|従《したが》っていた。|彼《かれ》らには、|地《ち》の四|分《ぶん》の一を|支配《しはい》する|権威《けんい》、および、つるぎと、ききんと、|死《し》と、|地《ち》の|獣《けもの》らとによって|人《ひと》を|殺《ころ》す|権威《けんい》とが、|与《あた》えられた。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|小羊《こひつじ》が|第《だい》五の|封印《ふういん》を|解《と》いた|時《とき》、|神《かみ》の|言《ことば》のゆえに、また、そのあかしを|立《た》てたために、|殺《ころ》された|人々《ひとびと》の|霊魂《れいこん》が、|祭壇《さいだん》の|下《した》にいるのを、わたしは|見《み》た。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んで|言《い》った、「|聖《せい》なる、まことなる|主《しゅ》よ。いつまであなたは、さばくことをなさらず、また|地《ち》に|住《す》む|者《もの》に|対《たい》して、わたしたちの|血《ち》の|報復《ほうふく》をなさらないのですか」。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]すると、|彼《かれ》らのひとりびとりに|白《しろ》い|衣《ころも》が|与《あた》えられ、それから、「|彼《かれ》らと|同《おな》じく|殺《ころ》されようとする|僕《しもべ》|仲間《なかま》や|兄弟《きょうだい》たちの|数《かず》が|満《み》ちるまで、もうしばらくの|間《あいだ》、|休《やす》んでいるように」と|言《い》い|渡《わた》された。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|小羊《こひつじ》が|第《だい》六の|封印《ふういん》を|解《と》いた|時《とき》、わたしが|見《み》ていると、|大《だい》|地震《じしん》が|起《おこ》って、|太陽《たいよう》は|毛織《けおり》の|荒布《あらぬの》のように|黒《くろ》くなり、|月《つき》は|全面《ぜんめん》、|血《ち》のようになり、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|天《てん》の|星《ほし》は、いちじくのまだ|青《あお》い|実《み》が|大風《おおふう》に|揺《ゆ》られて|振《ふ》り|落《おと》されるように、|地《ち》に|落《お》ちた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|天《てん》は|巻物《まきもの》が|巻《ま》かれるように|消《き》えていき、すべての|山《やま》と|島《しま》とはその|場所《ばしょ》から|移《うつ》されてしまった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|地《ち》の|王《おう》たち、|高官《こうかん》、|千卒長《せんそつちょう》、|富《と》める|者《もの》、|勇者《ゆうしゃ》、|奴隷《どれい》、|自由人《じゆうじん》らはみな、ほら|穴《あな》や|山《やま》の|岩《いわ》かげに、|身《み》をかくした。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして、|山《やま》と|岩《いわ》とにむかって|言《い》った、「さあ、われわれをおおって、|御座《みざ》にいますかたの|御顔《みかお》と|小羊《こひつじ》の|怒《いか》りとから、かくまってくれ。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|御《み》|怒《いか》りの|大《おお》いなる|日《ひ》が、すでにきたのだ。だれが、その|前《まえ》に|立《た》つことができようか」。 第七章[#「第七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]この|後《のち》、わたしは四|人《にん》の|御使《みつかい》が|地《ち》の四すみに|立《た》っているのを|見《み》た。|彼《かれ》らは|地《ち》の|四方《しほう》の|風《かぜ》をひき|止《と》めて、|地《ち》にも|海《うみ》にもすべての|木《き》にも、|吹《ふ》きつけないようにしていた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]また、もうひとりの|御使《みつかい》が、|生《い》ける|神《かみ》の|印《いん》を|持《も》って、|日《ひ》の|出《で》る|方《ほう》から|上《のぼ》って|来《く》るのを|見《み》た。|彼《かれ》は|地《ち》と|海《うみ》とをそこなう|権威《けんい》を|授《さず》かっている四|人《にん》の|御使《みつかい》にむかって、|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んで|言《い》った、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]「わたしたちの|神《かみ》の|僕《しもべ》らの|額《ひたい》に、わたしたちが|印《いん》をおしてしまうまでは、|地《ち》と|海《うみ》と|木《き》とをそこなってはならない」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|印《いん》をおされた|者《もの》の|数《かず》を|聞《き》いたが、イスラエルの|子《こ》らのすべての|部族《ぶぞく》のうち、|印《いん》をおされた|者《もの》は十四万四千|人《にん》であった。 [#ここから2字下げ] [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]ユダの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》が|印《いん》をおされ、 ルベンの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》、 ガドの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》、 [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]アセルの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》、 ナフタリの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》、 マナセの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》、 [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]シメオンの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》、 レビの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》、 イサカルの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》、 [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]ゼブルンの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》、 ヨセフの|部族《ぶぞく》のうち、一万二千|人《にん》、 ベニヤミンの|部族《ぶぞく》のうち、 一万二千|人《にん》が|印《いん》をおされた。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》、わたしが|見《み》ていると、|見《み》よ、あらゆる|国民《こくみん》、|部族《ぶぞく》、|民族《みんぞく》、|国語《こくご》のうちから、|数《かぞ》えきれないほどの|大《おお》ぜいの|群衆《ぐんしゅう》が、|白《しろ》い|衣《ころも》を|身《み》にまとい、しゅろの|枝《えだ》を|手《て》に|持《も》って、|御座《みざ》と|小羊《こひつじ》との|前《まえ》に|立《た》ち、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んで|言《い》った、 [#ここから2字下げ] 「|救《すくい》は、|御座《みざ》にいますわれらの|神《かみ》と |小羊《こひつじ》からきたる」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》たちはみな、|御座《みざ》と|長老《ちょうろう》たちと四つの|生《い》き|物《もの》とのまわりに|立《た》っていたが、|御座《みざ》の|前《まえ》にひれ|伏《ふ》し、|神《かみ》を|拝《はい》して|言《い》った、 [#ここから2字下げ] [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]「アァメン、さんび、|栄光《えいこう》、|知恵《ちえ》、|感謝《かんしゃ》、 ほまれ、|力《ちから》、|勢《いきお》いが、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく、 われらの|神《かみ》にあるように、アァメン」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|長老《ちょうろう》たちのひとりが、わたしにむかって|言《い》った、「この|白《しろ》い|衣《ころも》を|身《み》にまとっている|人々《ひとびと》は、だれか。また、どこからきたのか」。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|彼《かれ》に|答《こた》えた、「わたしの|主《しゅ》よ、それはあなたがご|存《ぞん》じです」。すると、|彼《かれ》はわたしに|言《い》った、「|彼《かれ》らは|大《おお》きな|患難《かんなん》をとおってきた|人《ひと》たちであって、その|衣《ころも》を|小羊《こひつじ》の|血《ち》で|洗《あら》い、それを|白《しろ》くしたのである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それだから|彼《かれ》らは、|神《かみ》の|御座《みざ》の|前《まえ》におり、|昼《ひる》も|夜《よる》もその|聖所《せいじょ》で|神《かみ》に|仕《つか》えているのである。|御座《みざ》にいますかたは、|彼《かれ》らの|上《うえ》に|幕屋《まくや》を|張《は》って|共《とも》に|住《す》まわれるであろう。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、もはや|飢《う》えることがなく、かわくこともない。|太陽《たいよう》も|炎暑《えんしょ》も、|彼《かれ》らを|侵《おか》すことはない。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|御座《みざ》の|正面《しょうめん》にいます|小羊《こひつじ》は|彼《かれ》らの|牧者《ぼくしゃ》となって、いのちの|水《みず》の|泉《いずみ》に|導《みちび》いて|下《くだ》さるであろう。また|神《かみ》は、|彼《かれ》らの|目《め》から|涙《なみだ》をことごとくぬぐいとって|下《くだ》さるであろう」。 第八章[#「第八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|小羊《こひつじ》が|第《だい》七の|封印《ふういん》を|解《と》いた|時《とき》、|半《はん》|時間《じかん》ばかり|天《てん》に|静《しず》けさがあった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]それからわたしは、|神《かみ》のみまえに|立《た》っている七|人《にん》の|御使《みつかい》を|見《み》た。そして、七つのラッパが|彼《かれ》らに|与《あた》えられた。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]また、|別《べつ》の|御使《みつかい》が|出《で》てきて、|金《きん》の|香炉《こうろ》を|手《て》に|持《も》って|祭壇《さいだん》の|前《まえ》に|立《た》った。たくさんの|香《こう》が|彼《かれ》に|与《あた》えられていたが、これは、すべての|聖徒《せいと》の|祈《いのり》に|加《くわ》えて、|御座《みざ》の|前《まえ》の|金《きん》の|祭壇《さいだん》の|上《うえ》にささげるためのものであった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|香《こう》の|煙《けむり》は、|御使《みつかい》の|手《て》から、|聖徒《せいと》たちの|祈《いのり》と|共《とも》に|神《かみ》のみまえに|立《た》ちのぼった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》はその|香炉《こうろ》をとり、これに|祭壇《さいだん》の|火《ひ》を|満《み》たして、|地《ち》に|投《な》げつけた。すると、|多《おお》くの|雷鳴《らいめい》と、もろもろの|声《こえ》と、いなずまと、|地震《じしん》とが|起《おこ》った。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、七つのラッパを|持《も》っている七|人《にん》の|御使《みつかい》が、それを|吹《ふ》く|用意《ようい》をした。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》一の|御使《みつかい》が、ラッパを|吹《ふ》き|鳴《な》らした。すると、|血《ち》のまじった|雹《ひょう》と|火《ひ》とがあらわれて、|地上《ちじょう》に|降《ふ》ってきた。そして、|地《ち》の三|分《ぶん》の一が|焼《や》け、|木《き》の三|分《ぶん》の一が|焼《や》け、また、すべての|青草《あおくさ》も|焼《や》けてしまった。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》二の|御使《みつかい》が、ラッパを|吹《ふ》き|鳴《な》らした。すると、|火《ひ》の|燃《も》えさかっている|大《おお》きな|山《やま》のようなものが、|海《うみ》に|投《な》げ|込《こ》まれた。そして、|海《うみ》の三|分《ぶん》の一は|血《ち》となり、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|海《うみ》の|中《なか》の|造《つく》られた|生《い》き|物《もの》の三|分《ぶん》の一は|死《し》に、|舟《ふね》の三|分《ぶん》の一がこわされてしまった。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》三の|御使《みつかい》が、ラッパを|吹《ふ》き|鳴《な》らした。すると、たいまつのように|燃《も》えている|大《おお》きな|星《ほし》が、|空《そら》から|落《お》ちてきた。そしてそれは、|川《かわ》の三|分《ぶん》の一とその|水源《すいげん》との|上《うえ》に|落《お》ちた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]この|星《ほし》の|名《な》は「|苦《にが》よもぎ」と|言《い》い、|水《みず》の三|分《ぶん》の一が「|苦《にが》よもぎ」のように|苦《にが》くなった。|水《みず》が|苦《にが》くなったので、そのために|多《おお》くの|人《ひと》が|死《し》んだ。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》四の|御使《みつかい》が、ラッパを|吹《ふ》き|鳴《な》らした。すると、|太陽《たいよう》の三|分《ぶん》の一と、|月《つき》の三|分《ぶん》の一と、|星《ほし》の三|分《ぶん》の一とが|打《う》たれて、これらのものの三|分《ぶん》の一は|暗《くら》くなり、|昼《ひる》の三|分《ぶん》の一は|明《あか》るくなくなり、|夜《よる》も|同《おな》じようになった。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]また、わたしが|見《み》ていると、一|羽《わ》のわしが|中空《なかぞら》を|飛《と》び、|大《おお》きな|声《こえ》でこう|言《い》うのを|聞《き》いた、「ああ、わざわいだ、わざわいだ、|地《ち》に|住《す》む|人々《ひとびと》は、わざわいだ。なお三|人《にん》の|御使《みつかい》がラッパを|吹《ふ》き|鳴《な》らそうとしている」。 第九章[#「第九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》五の|御使《みつかい》が、ラッパを|吹《ふ》き|鳴《な》らした。するとわたしは、一つの|星《ほし》が|天《てん》から|地《ち》に|落《お》ちて|来《く》るのを|見《み》た。この|星《ほし》に、|底《そこ》|知《し》れぬ|所《ところ》の|穴《あな》を|開《ひら》くかぎが|与《あた》えられた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして、この|底《そこ》|知《し》れぬ|所《ところ》の|穴《あな》が|開《ひら》かれた。すると、その|穴《あな》から|煙《けむり》が|大《おお》きな|炉《ろ》の|煙《けむり》のように|立《た》ちのぼり、その|穴《あな》の|煙《けむり》で、|太陽《たいよう》も|空気《くうき》も|暗《くら》くなった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]その|煙《けむり》の|中《なか》から、いなごが|地上《ちじょう》に|出《で》てきたが、|地《ち》のさそりが|持《も》っているような|力《ちから》が、|彼《かれ》らに|与《あた》えられた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|地《ち》の|草《くさ》やすべての|青草《あおくさ》、またすべての|木《き》をそこなってはならないが、|額《ひたい》に|神《かみ》の|印《いん》がない|人《ひと》たちには|害《がい》を|加《くわ》えてもよいと、|言《い》い|渡《わた》された。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|人間《にんげん》を|殺《ころ》すことはしないで、五か|月《げつ》のあいだ|苦《くる》しめることだけが|許《ゆる》された。|彼《かれ》らの|与《あた》える|苦痛《くつう》は、|人《ひと》がさそりにさされる|時《とき》のような|苦痛《くつう》であった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》には、|人々《ひとびと》は|死《し》を|求《もと》めても|与《あた》えられず、|死《し》にたいと|願《ねが》っても、|死《し》は|逃《に》げて|行《い》くのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]これらのいなごは、|出陣《しゅつじん》の|用意《ようい》のととのえられた|馬《うま》によく|似《に》ており、その|頭《あたま》には|金《きん》の|冠《かんむり》のようなものをつけ、その|顔《かお》は|人間《にんげん》の|顔《かお》のようであり、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]また、そのかみの|毛《け》は|女《おんな》のかみのようであり、その|歯《は》はししの|歯《は》のようであった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]また、|鉄《てつ》の|胸当《むねあて》のような|胸当《むねあて》をつけており、その|羽《はね》の|音《おと》は、|馬《うま》に|引《ひ》かれて|戦場《せんじょう》に|急《いそ》ぐ|多《おお》くの|戦車《せんしゃ》の|響《ひび》きのようであった。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]その|上《うえ》、さそりのような|尾《お》と|針《はり》とを|持《も》っている。その|尾《お》には、五か|月《げつ》のあいだ|人間《にんげん》をそこなう|力《ちから》がある。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|底《そこ》|知《し》れぬ|所《ところ》の|使《つかい》を|王《おう》にいただいており、その|名《な》をヘブル|語《ご》でアバドンと|言《い》い、ギリシヤ|語《ご》ではアポルオンと|言《い》う。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》一のわざわいは、|過《す》ぎ|去《さ》った。|見《み》よ、この|後《のち》、なお二つのわざわいが|来《く》る。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》六の|御使《みつかい》が、ラッパを|吹《ふ》き|鳴《な》らした。すると、一つの|声《こえ》が、|神《かみ》のみまえにある|金《きん》の|祭壇《さいだん》の四つの|角《つの》から|出《で》て、[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]ラッパを|持《も》っている|第《だい》六の|御使《みつかい》にこう|呼《よ》びかけるのを、わたしは|聞《き》いた。「|大《だい》ユウフラテ|川《がわ》のほとりにつながれている四|人《にん》の|御使《みつかい》を、|解《と》いてやれ」。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すると、その|時《とき》、その|日《ひ》、その|月《つき》、その|年《とし》に|備《そな》えておかれた四|人《にん》の|御使《みつかい》が、|人間《にんげん》の三|分《ぶん》の一を|殺《ころ》すために、|解《と》き|放《はな》たれた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|騎兵隊《きへいたい》の|数《かず》は二|億《おく》であった。わたしはその|数《かず》を|聞《き》いた。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]そして、まぼろしの|中《なか》で、それらの|馬《うま》とそれに|乗《の》っている|者《もの》たちとを|見《み》ると、|乗《の》っている|者《もの》たちは、|火《ひ》の|色《いろ》と|青玉色《せいぎょくしょく》と|硫黄《いおう》の|色《いろ》の|胸当《むねあて》をつけていた。そして、それらの|馬《うま》の|頭《あたま》はししの|頭《あたま》のようであって、その|口《くち》から|火《ひ》と|煙《けむり》と|硫黄《いおう》とが、|出《で》ていた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]この三つの|災害《さいがい》、すなわち、|彼《かれ》らの|口《くち》から|出《で》て|来《く》る|火《ひ》と|煙《けむり》と|硫黄《いおう》とによって、|人間《にんげん》の三|分《ぶん》の一は|殺《ころ》されてしまった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|馬《うま》の|力《ちから》はその|口《くち》と|尾《お》とにある。その|尾《お》はへびに|似《に》ていて、それに|頭《あたま》があり、その|頭《あたま》で|人《ひと》に|害《がい》を|加《くわ》えるのである。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]これらの|災害《さいがい》で|殺《ころ》されずに|残《のこ》った|人々《ひとびと》は、|自分《じぶん》の|手《て》で|造《つく》ったものについて、|悔《く》い|改《あらた》めようとせず、また|悪霊《あくれい》のたぐいや、|金《きん》、|銀《ぎん》、|銅《どう》、|石《いし》、|木《き》で|造《つく》られ、|見《み》ることも|聞《き》くことも|歩《ある》くこともできない|偶像《ぐうぞう》を|礼拝《れいはい》して、やめようともしなかった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]また、|彼《かれ》らは、その|犯《おか》した|殺人《さつじん》や、まじないや、|不品行《ふひんこう》や、|盗《ぬす》みを|悔《く》い|改《あらた》めようとしなかった。 第一〇章[#「第一〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、もうひとりの|強《つよ》い|御使《みつかい》が、|雲《くも》に|包《つつ》まれて、|天《てん》から|降《お》りて|来《く》るのを|見《み》た。その|頭《あたま》に、にじをいただき、その|顔《かお》は|太陽《たいよう》のようで、その|足《あし》は|火《ひ》の|柱《はしら》のようであった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、|開《ひら》かれた|小《ちい》さな|巻物《まきもの》を|手《て》に|持《も》っていた。そして、|右足《みぎあし》を|海《うみ》の|上《うえ》に、|左足《ひだりあし》を|地《ち》の|上《うえ》に|踏《ふ》みおろして、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]ししがほえるように|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んだ。|彼《かれ》が|叫《さけ》ぶと、七つの|雷《かみなり》がおのおのその|声《こえ》を|発《はっ》した。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]七つの|雷《かみなり》が|声《こえ》を|発《はっ》した|時《とき》、わたしはそれを|書《か》きとめようとした。すると、|天《てん》から|声《こえ》があって、「七つの|雷《かみなり》の|語《かた》ったことを|封印《ふういん》せよ。それを|書《か》きとめるな」と|言《い》うのを|聞《き》いた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それから、|海《うみ》と|地《ち》の|上《うえ》に|立《た》っているのをわたしが|見《み》たあの|御使《みつかい》は、|天《てん》にむけて|右手《みぎて》を|上《あ》げ、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|天《てん》とその|中《なか》にあるもの、|地《ち》とその|中《なか》にあるもの、|海《うみ》とその|中《なか》にあるものを|造《つく》り、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|生《い》きておられるかたをさして|誓《ちか》った、「もう|時《とき》がない。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》七の|御使《みつかい》が|吹《ふ》き|鳴《な》らすラッパの|音《おと》がする|時《とき》には、|神《かみ》がその|僕《しもべ》、|預言者《よげんしゃ》たちにお|告《つ》げになったとおり、|神《かみ》の|奥義《おくぎ》は|成就《じょうじゅ》される」。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すると、|前《まえ》に|天《てん》から|聞《きこ》えてきた|声《こえ》が、またわたしに|語《かた》って|言《い》った、「さあ|行《い》って、|海《うみ》と|地《ち》との|上《うえ》に|立《た》っている|御使《みつかい》の|手《て》に|開《ひら》かれている|巻物《まきもの》を、|受《う》け|取《と》りなさい」。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしはその|御使《みつかい》のもとに|行《い》って、「その|小《ちい》さな|巻物《まきもの》を|下《くだ》さい」と|言《い》った。すると、|彼《かれ》は|言《い》った、「|取《と》って、それを|食《た》べてしまいなさい。あなたの|腹《はら》には|苦《にが》いが、|口《くち》には|蜜《みつ》のように|甘《あま》い」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]わたしは|御使《みつかい》の|手《て》からその|小《ちい》さな|巻物《まきもの》を|受《う》け|取《と》って|食《た》べてしまった。すると、わたしの|口《くち》には|蜜《みつ》のように|甘《あま》かったが、それを|食《た》べたら、|腹《はら》が|苦《にが》くなった。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、「あなたは、もう|一度《いちど》、|多《おお》くの|民族《みんぞく》、|国民《こくみん》、|国語《こくご》、|王《おう》たちについて、|預言《よげん》せねばならない」と|言《い》う|声《こえ》がした。 第一一章[#「第一一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]それから、わたしはつえのような|測《はか》りざおを|与《あた》えられて、こう|命《めい》じられた、「さあ|立《た》って、|神《かみ》の|聖所《せいじょ》と|祭壇《さいだん》と、そこで|礼拝《れいはい》している|人々《ひとびと》とを、|測《はか》りなさい。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|聖所《せいじょ》の|外《そと》の|庭《にわ》はそのままにしておきなさい。それを|測《はか》ってはならない。そこは|異邦人《いほうじん》に|与《あた》えられた|所《ところ》だから。|彼《かれ》らは、四十二か|月《げつ》の|間《あいだ》この|聖《せい》なる|都《みやこ》を|踏《ふ》みにじるであろう。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そしてわたしは、わたしのふたりの|証人《しょうにん》に、|荒布《あらぬの》を|着《き》て、千二百六十|日《にち》のあいだ|預言《よげん》することを|許《ゆる》そう」。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|全《ぜん》|地《ち》の|主《しゅ》のみまえに|立《た》っている二|本《ほん》のオリブの|木《き》、また、二つの|燭台《しょくだい》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]もし|彼《かれ》らに|害《がい》を|加《くわ》えようとする|者《もの》があれば、|彼《かれ》らの|口《くち》から|火《ひ》が|出《で》て、その|敵《てき》を|滅《ほろ》ぼすであろう。もし|彼《かれ》らに|害《がい》を|加《くわ》えようとする|者《もの》があれば、その|者《もの》はこのように|殺《ころ》されねばならない。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|預言《よげん》をしている|期間《きかん》、|彼《かれ》らは、|天《てん》を|閉《と》じて|雨《あめ》を|降《ふ》らせないようにする|力《ちから》を|持《も》っている。さらにまた、|水《みず》を|血《ち》に|変《か》え、|何《なに》|度《ど》でも|思《おも》うままに、あらゆる|災害《さいがい》で|地《ち》を|打《う》つ|力《ちから》を|持《も》っている。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》らがそのあかしを|終《お》えると、|底《そこ》|知《し》れぬ|所《ところ》からのぼって|来《く》る|獣《けもの》が、|彼《かれ》らと|戦《たたか》って|打《う》ち|勝《か》ち、|彼《かれ》らを|殺《ころ》す。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|死体《したい》はソドムや、エジプトにたとえられている|大《おお》いなる|都《みやこ》の|大通《おおどお》りにさらされる。|彼《かれ》らの|主《しゅ》も、この|都《みやこ》で|十字架《じゅうじか》につけられたのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]いろいろな|民族《みんぞく》、|部族《ぶぞく》、|国語《こくご》、|国民《こくみん》に|属《ぞく》する|人々《ひとびと》が、三|日《か》|半《はん》の|間《あいだ》、|彼《かれ》らの|死体《したい》をながめるが、その|死体《したい》を|墓《はか》に|納《おさ》めることは|許《ゆる》さない。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|地《ち》に|住《す》む|人々《ひとびと》は、|彼《かれ》らのことで|喜《よろこ》び|楽《たの》しみ、|互《たがい》に|贈《おく》り|物《もの》をしあう。このふたりの|預言者《よげんしゃ》は、|地《ち》に|住《す》む|者《もの》たちを|悩《なや》ましたからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]三|日《か》|半《はん》の|後《のち》、いのちの|息《いき》が、|神《かみ》から|出《で》て|彼《かれ》らの|中《なか》にはいり、そして、|彼《かれ》らが|立《た》ち|上《あ》がったので、それを|見《み》た|人々《ひとびと》は|非常《ひじょう》な|恐怖《きょうふ》に|襲《おそ》われた。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、|天《てん》から|大《おお》きな|声《こえ》がして、「ここに|上《のぼ》ってきなさい」と|言《い》うのを、|彼《かれ》らは|聞《き》いた。そして、|彼《かれ》らは|雲《くも》に|乗《の》って|天《てん》に|上《のぼ》った。|彼《かれ》らの|敵《てき》はそれを|見《み》た。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]この|時《とき》、|大《だい》|地震《じしん》が|起《おこ》って、|都《みやこ》の|十分《じゅうぶん》の一は|倒《たお》れ、その|地震《じしん》で七千|人《にん》が|死《し》に、|生《い》き|残《のこ》った|人々《ひとびと》は|驚《おどろ》き|恐《おそ》れて、|天《てん》の|神《かみ》に|栄光《えいこう》を|帰《き》した。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》二のわざわいは、|過《す》ぎ|去《さ》った。|見《み》よ、|第《だい》三のわざわいがすぐに|来《く》る。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》七の|御使《みつかい》が、ラッパを|吹《ふ》き|鳴《な》らした。すると、|大《おお》きな|声々《こえごえ》が|天《てん》に|起《おこ》って|言《い》った、 [#ここから2字下げ] 「この|世《よ》の|国《くに》は、 われらの|主《しゅ》とそのキリストとの|国《くに》となった。 |主《しゅ》は|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|支配《しはい》なさるであろう」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]そして、|神《かみ》のみまえで|座《ざ》についている二十四|人《にん》の|長老《ちょうろう》は、ひれ|伏《ふ》し、|神《かみ》を|拝《はい》して|言《い》った、 [#ここから2字下げ] [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]「|今《いま》いまし、|昔《むかし》いませる、|全能者《ぜんのうしゃ》にして|主《しゅ》なる|神《かみ》よ。 |大《おお》いなる|御《み》|力《ちから》をふるって|支配《しはい》なさったことを、 |感謝《かんしゃ》します。 [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|諸《しょ》|国民《こくみん》は|怒《いか》り|狂《くる》いましたが、 あなたも|怒《いか》りをあらわされました。 そして、|死人《しにん》をさばき、あなたの|僕《しもべ》なる |預言者《よげんしゃ》、|聖徒《せいと》、|小《ちい》さき|者《もの》も、|大《おお》いなる|者《もの》も、 すべて|御名《みな》をおそれる|者《もの》たちに|報《むく》いを|与《あた》え、また、 |地《ち》を|滅《ほろ》ぼす|者《もの》どもを|滅《ほろ》ぼして|下《くだ》さる|時《とき》がきました」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そして、|天《てん》にある|神《かみ》の|聖所《せいじょ》が|開《ひら》けて、|聖所《せいじょ》の|中《なか》に|契約《けいやく》の|箱《はこ》が|見《み》えた。また、いなずまと、もろもろの|声《こえ》と、|雷鳴《らいめい》と、|地震《じしん》とが|起《おこ》り、|大粒《おおつぶ》の|雹《ひょう》が|降《ふ》った。 第一二章[#「第一二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]また、|大《おお》いなるしるしが|天《てん》に|現《あらわ》れた。ひとりの|女《おんな》が|太陽《たいよう》を|着《き》て、|足《あし》の|下《した》に|月《つき》を|踏《ふ》み、その|頭《あたま》に十二の|星《ほし》の|冠《かんむり》をかぶっていた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》は|子《こ》を|宿《やど》しており、|産《う》みの|苦《くる》しみと|悩《なや》みとのために、|泣《な》き|叫《さけ》んでいた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]また、もう一つのしるしが|天《てん》に|現《あらわ》れた。|見《み》よ、|大《おお》きな、|赤《あか》い|龍《りゅう》がいた。それに七つの|頭《あたま》と十の|角《つの》とがあり、その|頭《あたま》に七つの|冠《かんむり》をかぶっていた。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]その|尾《お》は|天《てん》の|星《ほし》の三|分《ぶん》の一を|掃《は》き|寄《よ》せ、それらを|地《ち》に|投《な》げ|落《おと》した。|龍《りゅう》は|子《こ》を|産《う》もうとしている|女《おんな》の|前《まえ》に|立《た》ち、|生《うま》れたなら、その|子《こ》を|食《く》い|尽《つく》そうとかまえていた。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》は|男《おとこ》の|子《こ》を|産《う》んだが、|彼《かれ》は|鉄《てつ》のつえをもってすべての|国民《こくみん》を|治《おさ》めるべき|者《もの》である。この|子《こ》は、|神《かみ》のみもとに、その|御座《みざ》のところに、|引《ひ》き|上《あ》げられた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|女《おんな》は|荒野《あらの》へ|逃《に》げて|行《い》った。そこには、|彼女《かのじょ》が千二百六十|日《にち》のあいだ|養《やしな》われるように、|神《かみ》の|用意《ようい》された|場所《ばしょ》があった。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]さて、|天《てん》では|戦《たたか》いが|起《おこ》った。ミカエルとその|御使《みつかい》たちとが、|龍《りゅう》と|戦《たたか》ったのである。|龍《りゅう》もその|使《つかい》たちも|応戦《おうせん》したが、[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|勝《か》てなかった。そして、もはや|天《てん》には|彼《かれ》らのおる|所《ところ》がなくなった。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]この|巨大《きょだい》な|龍《りゅう》、すなわち、|悪魔《あくま》とか、サタンとか|呼《よ》ばれ、|全《ぜん》|世界《せかい》を|惑《まど》わす|年《とし》を|経《へ》たへびは、|地《ち》に|投《な》げ|落《おと》され、その|使《つかい》たちも、もろともに|投《な》げ|落《おと》された。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》わたしは、|大《おお》きな|声《こえ》が|天《てん》でこう|言《い》うのを|聞《き》いた、 [#ここから2字下げ] 「|今《いま》や、われらの|神《かみ》の|救《すくい》と|力《ちから》と|国《くに》と、 |神《かみ》のキリストの|権威《けんい》とは、|現《あらわ》れた。 われらの|兄弟《きょうだい》らを|訴《うった》える|者《もの》、 |夜昼《よるひる》われらの|神《かみ》のみまえで|彼《かれ》らを|訴《うった》える|者《もの》は、 |投《な》げ|落《おと》された。 [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|兄弟《きょうだい》たちは、 |小羊《こひつじ》の|血《ち》と|彼《かれ》らのあかしの|言葉《ことば》とによって、 |彼《かれ》にうち|勝《か》ち、 |死《し》に|至《いた》るまでもそのいのちを|惜《お》しまなかった。 [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それゆえに、|天《てん》とその|中《なか》に|住《す》む|者《もの》たちよ、 |大《おお》いに|喜《よろこ》べ。 しかし、|地《ち》と|海《うみ》よ、 おまえたちはわざわいである。 |悪魔《あくま》が、|自分《じぶん》の|時《とき》が|短《みじか》いのを|知《し》り、 |激《はげ》しい|怒《いか》りをもって、 おまえたちのところに|下《くだ》ってきたからである」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|龍《りゅう》は、|自分《じぶん》が|地上《ちじょう》に|投《な》げ|落《おと》されたと|知《し》ると、|男子《だんし》を|産《う》んだ|女《おんな》を|追《お》いかけた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|女《おんな》は|自分《じぶん》の|場所《ばしょ》である|荒野《あらの》に|飛《と》んで|行《い》くために、|大《おお》きなわしの二つの|翼《つばさ》を|与《あた》えられた。そしてそこでへびからのがれて、一|年《ねん》、二|年《ねん》、また、|半年《はんとし》の|間《あいだ》、|養《やしな》われることになっていた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]へびは|女《おんな》の|後《うしろ》に|水《みず》を|川《かわ》のように、|口《くち》から|吐《は》き|出《だ》して、|女《おんな》をおし|流《なが》そうとした。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|地《ち》は|女《おんな》を|助《たす》けた。すなわち、|地《ち》はその|口《くち》を|開《ひら》いて、|龍《りゅう》が|口《くち》から|吐《は》き|出《だ》した|川《かわ》を|飲《の》みほした。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|龍《りゅう》は、|女《おんな》に|対《たい》して|怒《いか》りを|発《はっ》し、|女《おんな》の|残《のこ》りの|子《こ》ら、すなわち、|神《かみ》の|戒《いまし》めを|守《まも》り、イエスのあかしを|持《も》っている|者《もの》たちに|対《たい》して、|戦《たたか》いをいどむために、|出《で》て|行《い》った。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そして、|海《うみ》の|砂《すな》の|上《うえ》に|立《た》った。 第一三章[#「第一三章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまた、一|匹《ぴき》の|獣《けもの》が|海《うみ》から|上《のぼ》って|来《く》るのを|見《み》た。それには|角《つの》が十|本《ぽん》、|頭《あたま》が七つあり、それらの|角《つの》には十の|冠《かんむり》があって、|頭《あたま》には|神《かみ》を|汚《けが》す|名《な》がついていた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]わたしの|見《み》たこの|獣《けもの》はひょうに|似《に》ており、その|足《あし》はくまの|足《あし》のようで、その|口《くち》はししの|口《くち》のようであった。|龍《りゅう》は|自分《じぶん》の|力《ちから》と|位《くらい》と|大《おお》いなる|権威《けんい》とを、この|獣《けもの》に|与《あた》えた。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]その|頭《あたま》の一つが、|死《し》ぬほどの|傷《きず》を|受《う》けたが、その|致命《ちめい》|的《てき》な|傷《きず》もなおってしまった。そこで、|全《ぜん》|地《ち》の|人々《ひとびと》は|驚《おどろ》きおそれて、その|獣《けもの》に|従《したが》い、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また、|龍《りゅう》がその|権威《けんい》を|獣《けもの》に|与《あた》えたので、|人々《ひとびと》は|龍《りゅう》を|拝《おが》み、さらに、その|獣《けもの》を|拝《おが》んで|言《い》った、「だれが、この|獣《けもの》に|匹敵《ひってき》し|得《え》ようか。だれが、これと|戦《たたか》うことができようか」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]この|獣《けもの》には、また、|大言《たいげん》を|吐《は》き|汚《けが》しごとを|語《かた》る|口《くち》が|与《あた》えられ、四十二か|月《げつ》のあいだ|活動《かつどう》する|権威《けんい》が|与《あた》えられた。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|彼《かれ》は|口《くち》を|開《ひら》いて|神《かみ》を|汚《けが》し、|神《かみ》の|御名《みな》と、その|幕屋《まくや》、すなわち、|天《てん》に|住《す》む|者《もの》たちとを|汚《けが》した。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そして|彼《かれ》は、|聖徒《せいと》に|戦《たたか》いをいどんでこれに|勝《か》つことを|許《ゆる》され、さらに、すべての|部族《ぶぞく》、|民族《みんぞく》、|国語《こくご》、|国民《こくみん》を|支配《しはい》する|権威《けんい》を|与《あた》えられた。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|地《ち》に|住《す》む|者《もの》で、ほふられた|小羊《こひつじ》のいのちの|書《しょ》に、その|名《な》を|世《よ》の|初《はじ》めからしるされていない|者《もの》はみな、この|獣《けもの》を|拝《おが》むであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|耳《みみ》のある|者《もの》は、|聞《き》くがよい。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]とりこになるべき|者《もの》は、とりこになっていく。つるぎで|殺《ころ》す|者《もの》は、|自《みずか》らもつるぎで|殺《ころ》されねばならない。ここに、|聖徒《せいと》たちの|忍耐《にんたい》と|信仰《しんこう》とがある。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまた、ほかの|獣《けもの》が|地《ち》から|上《のぼ》って|来《く》るのを|見《み》た。それには|小羊《こひつじ》のような|角《つの》が二つあって、|龍《りゅう》のように|物《もの》を|言《い》った。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]そして、|先《さき》の|獣《けもの》の|持《も》つすべての|権力《けんりょく》をその|前《まえ》で|働《はたら》かせた。また、|地《ち》と|地《ち》に|住《す》む|人々《ひとびと》に、|致命《ちめい》|的《てき》な|傷《きず》がいやされた|先《さき》の|獣《けもの》を|拝《おが》ませた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]また、|大《おお》いなるしるしを|行《おこな》って、|人々《ひとびと》の|前《まえ》で|火《ひ》を|天《てん》から|地《ち》に|降《ふ》らせることさえした。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]さらに、|先《さき》の|獣《けもの》の|前《まえ》で|行《おこな》うのを|許《ゆる》されたしるしで、|地《ち》に|住《す》む|人々《ひとびと》を|惑《まど》わし、かつ、つるぎの|傷《きず》を|受《う》けてもなお|生《い》きている|先《さき》の|獣《けもの》の|像《ぞう》を|造《つく》ることを、|地《ち》に|住《す》む|人々《ひとびと》に|命《めい》じた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]それから、その|獣《けもの》の|像《ぞう》に|息《いき》を|吹《ふ》き|込《こ》んで、その|獣《けもの》の|像《ぞう》が|物《もの》を|言《い》うことさえできるようにし、また、その|獣《けもの》の|像《ぞう》を|拝《おが》まない|者《もの》をみな|殺《ころ》させた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]また、|小《ちい》さき|者《もの》にも、|大《おお》いなる|者《もの》にも、|富《と》める|者《もの》にも、|貧《まず》しき|者《もの》にも、|自由人《じゆうじん》にも、|奴隷《どれい》にも、すべての|人々《ひとびと》に、その|右《みぎ》の|手《て》あるいは|額《ひたい》に|刻印《こくいん》を|押《お》させ、[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]この|刻印《こくいん》のない|者《もの》はみな、|物《もの》を|買《か》うことも|売《う》ることもできないようにした。この|刻印《こくいん》は、その|獣《けもの》の|名《な》、または、その|名《な》の|数字《すうじ》のことである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]ここに、|知恵《ちえ》が|必要《ひつよう》である。|思慮《しりょ》のある|者《もの》は、|獣《けもの》の|数字《すうじ》を|解《と》くがよい。その|数字《すうじ》とは、|人間《にんげん》をさすものである。そして、その|数字《すうじ》は六百六十六である。 第一四章[#「第一四章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]なお、わたしが|見《み》ていると、|見《み》よ、|小羊《こひつじ》がシオンの|山《やま》に|立《た》っていた。また、十四万四千の|人々《ひとびと》が|小羊《こひつじ》と|共《とも》におり、その|額《ひたい》に|小羊《こひつじ》の|名《な》とその|父《ちち》の|名《な》とが|書《か》かれていた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]またわたしは、|大水《おおみず》のとどろきのような、|激《はげ》しい|雷鳴《らいめい》のような|声《こえ》が、|天《てん》から|出《で》るのを|聞《き》いた。わたしの|聞《き》いたその|声《こえ》は、|琴《こと》をひく|人《ひと》が|立琴《たてごと》をひく|音《おと》のようでもあった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|御座《みざ》の|前《まえ》、四つの|生《い》き|物《もの》と|長老《ちょうろう》たちとの|前《まえ》で、|新《あたら》しい|歌《うた》を|歌《うた》った。この|歌《うた》は、|地《ち》からあがなわれた十四万四千|人《にん》のほかは、だれも|学《まな》ぶことができなかった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|女《おんな》にふれたことのない|者《もの》である。|彼《かれ》らは、|純潔《じゅんけつ》な|者《もの》である。そして、|小羊《こひつじ》の|行《い》く|所《ところ》へは、どこへでもついて|行《い》く。|彼《かれ》らは、|神《かみ》と|小羊《こひつじ》とにささげられる|初穂《はつほ》として、|人間《にんげん》の|中《なか》からあがなわれた|者《もの》である。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らの|口《くち》には|偽《いつわ》りがなく、|彼《かれ》らは|傷《きず》のない|者《もの》であった。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、もうひとりの|御使《みつかい》が|中空《なかぞら》を|飛《と》ぶのを|見《み》た。|彼《かれ》は|地《ち》に|住《す》む|者《もの》、すなわち、あらゆる|国民《こくみん》、|部族《ぶぞく》、|国語《こくご》、|民族《みんぞく》に|宣《の》べ|伝《つた》えるために、|永遠《えいえん》の|福音《ふくいん》をたずさえてきて、[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|大声《おおごえ》で|言《い》った、「|神《かみ》をおそれ、|神《かみ》に|栄光《えいこう》を|帰《き》せよ。|神《かみ》のさばきの|時《とき》がきたからである。|天《てん》と|地《ち》と|海《うみ》と|水《みず》の|源《みなもと》とを|造《つく》られたかたを、|伏《ふ》し|拝《おが》め」。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]また、ほかの|第《だい》二の|御使《みつかい》が、|続《つづ》いてきて|言《い》った、「|倒《たお》れた、|大《おお》いなるバビロンは|倒《たお》れた。その|不品行《ふひんこう》に|対《たい》する|激《はげ》しい|怒《いか》りのぶどう|酒《しゅ》を、あらゆる|国民《こくみん》に|飲《の》ませた|者《もの》」。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ほかの|第《だい》三の|御使《みつかい》が|彼《かれ》らに|続《つづ》いてきて、|大声《おおごえ》で|言《い》った、「おおよそ、|獣《けもの》とその|像《ぞう》とを|拝《おが》み、|額《ひたい》や|手《て》に|刻印《こくいん》を|受《う》ける|者《もの》は、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》の|怒《いか》りの|杯《さかずき》に|混《ま》ぜものなしに|盛《も》られた、|神《かみ》の|激《はげ》しい|怒《いか》りのぶどう|酒《しゅ》を|飲《の》み、|聖《せい》なる|御使《みつかい》たちと|小羊《こひつじ》との|前《まえ》で、|火《ひ》と|硫黄《いおう》とで|苦《くる》しめられる。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]その|苦《くる》しみの|煙《けむり》は|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|立《た》ちのぼり、そして、|獣《けもの》とその|像《ぞう》とを|拝《おが》む|者《もの》、また、だれでもその|名《な》の|刻印《こくいん》を|受《う》けている|者《もの》は、|昼《ひる》も|夜《よる》も|休《やす》みが|得《え》られない。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]ここに、|神《かみ》の|戒《いまし》めを|守《まも》り、イエスを|信《しん》じる|信仰《しんこう》を|持《も》ちつづける|聖徒《せいと》の|忍耐《にんたい》がある」。  [#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]またわたしは、|天《てん》からの|声《こえ》がこう|言《い》うのを|聞《き》いた、「|書《か》きしるせ、『|今《いま》から|後《のち》、|主《しゅ》にあって|死《し》ぬ|死人《しにん》はさいわいである』」。|御霊《みたま》も|言《い》う、「しかり、|彼《かれ》らはその|労苦《ろうく》を|解《と》かれて|休《やす》み、そのわざは|彼《かれ》らについていく」。  [#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]また|見《み》ていると、|見《み》よ、|白《しろ》い|雲《くも》があって、その|雲《くも》の|上《うえ》に|人《ひと》の|子《こ》のような|者《もの》が|座《ざ》しており、|頭《あたま》には|金《きん》の|冠《かんむり》をいただき、|手《て》には|鋭《するど》いかまを|持《も》っていた。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]すると、もうひとりの|御使《みつかい》が|聖所《せいじょ》から|出《で》てきて、|雲《くも》の|上《うえ》に|座《ざ》している|者《もの》にむかって|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んだ、「かまを|入《い》れて|刈《か》り|取《と》りなさい。|地《ち》の|穀物《こくもつ》は|全《まった》く|実《みの》り、|刈《か》り|取《と》るべき|時《とき》がきた」。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|雲《くも》の|上《うえ》に|座《ざ》している|者《もの》は、そのかまを|地《ち》に|投《な》げ|入《い》れた。すると、|地《ち》のものが|刈《か》り|取《と》られた。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また、もうひとりの|御使《みつかい》が、|天《てん》の|聖所《せいじょ》から|出《で》てきたが、|彼《かれ》もまた|鋭《するど》いかまを|持《も》っていた。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]さらに、もうひとりの|御使《みつかい》で、|火《ひ》を|支配《しはい》する|権威《けんい》を|持《も》っている|者《もの》が、|祭壇《さいだん》から|出《で》てきて、|鋭《するど》いかまを|持《も》つ|御使《みつかい》にむかい、|大声《おおごえ》で|言《い》った、「その|鋭《するど》いかまを|地《ち》に|入《い》れて、|地《ち》のぶどうのふさを|刈《か》り|集《あつ》めなさい。ぶどうの|実《み》がすでに|熟《じゅく》しているから」。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]そこで、|御使《みつかい》はそのかまを|地《ち》に|投《な》げ|入《い》れて、|地《ち》のぶどうを|刈《か》り|集《あつ》め、|神《かみ》の|激《はげ》しい|怒《いか》りの|大《おお》きな|酒《さか》ぶねに|投《な》げ|込《こ》んだ。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、その|酒《さか》ぶねが|都《みやこ》の|外《そと》で|踏《ふ》まれた。すると、|血《ち》が|酒《さか》ぶねから|流《なが》れ|出《で》て、|馬《うま》のくつわにとどくほどになり、一千六百|丁《ちょう》にわたってひろがった。 第一五章[#「第一五章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]またわたしは、|天《てん》に|大《おお》いなる|驚《おどろ》くべきほかのしるしを|見《み》た。七|人《にん》の|御使《みつかい》が、|最後《さいご》の七つの|災害《さいがい》を|携《たずさ》えていた。これらの|災害《さいがい》で|神《かみ》の|激《はげ》しい|怒《いか》りがその|頂点《ちょうてん》に|達《たっ》するのである。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]またわたしは、|火《ひ》のまじったガラスの|海《うみ》のようなものを|見《み》た。そして、このガラスの|海《うみ》のそばに、|獣《けもの》とその|像《ぞう》とその|名《な》の|数字《すうじ》とにうち|勝《か》った|人々《ひとびと》が、|神《かみ》の|立琴《たてごと》を|手《て》にして|立《た》っているのを|見《み》た。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは、|神《かみ》の|僕《しもべ》モーセの|歌《うた》と|小羊《こひつじ》の|歌《うた》とを|歌《うた》って|言《い》った、 [#ここから2字下げ] 「|全能者《ぜんのうしゃ》にして|主《しゅ》なる|神《かみ》よ。 あなたのみわざは、 |大《おお》いなる、また|驚《おどろ》くべきものであります。 |万民《ばんみん》の|王《おう》よ、 あなたの|道《みち》は|正《ただ》しく、かつ|真実《しんじつ》であります。 [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》よ、あなたをおそれず、 |御名《みな》をほめたたえない|者《もの》が、ありましょうか。 あなただけが|聖《せい》なるかたであり、 あらゆる|国民《こくみん》はきて、あなたを|伏《ふ》し|拝《おが》むでしょう。 あなたの|正《ただ》しいさばきが、 あらわれるに|至《いた》ったからであります」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]その|後《のち》、わたしが|見《み》ていると、|天《てん》にある、あかしの|幕屋《まくや》の|聖所《せいじょ》が|開《ひら》かれ、[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]その|聖所《せいじょ》から、七つの|災害《さいがい》を|携《たずさ》えている七|人《にん》の|御使《みつかい》が、|汚《けが》れのない、|光《ひか》り|輝《かがや》く|亜麻布《あまぬの》を|身《み》にまとい、|金《きん》の|帯《おび》を|胸《むね》にしめて、|出《で》てきた。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]そして、四つの|生《い》き|物《もの》の一つが、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|生《い》きておられる|神《かみ》の|激《はげ》しい|怒《いか》りの|満《み》ちた七つの|金《きん》の|鉢《はち》を、七|人《にん》の|御使《みつかい》に|渡《わた》した。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]すると、|聖所《せいじょ》は|神《かみ》の|栄光《えいこう》とその|力《ちから》とから|立《た》ちのぼる|煙《けむり》で|満《み》たされ、七|人《にん》の|御使《みつかい》の七つの|災害《さいがい》が|終《おわ》ってしまうまでは、だれも|聖所《せいじょ》にはいることができなかった。 第一六章[#「第一六章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]それから、|大《おお》きな|声《こえ》が|聖所《せいじょ》から|出《で》て、七|人《にん》の|御使《みつかい》にむかい、「さあ|行《い》って、|神《かみ》の|激《はげ》しい|怒《いか》りの七つの|鉢《はち》を、|地《ち》に|傾《かたむ》けよ」と|言《い》うのを|聞《き》いた。  [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そして、|第《だい》一の|者《もの》が|出《で》て|行《い》って、その|鉢《はち》を|地《ち》に|傾《かたむ》けた。すると、|獣《けもの》の|刻印《こくいん》を|持《も》つ|人々《ひとびと》と、その|像《ぞう》を|拝《おが》む|人々《ひとびと》とのからだに、ひどい|悪性《あくせい》のでき|物《もの》ができた。  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》二の|者《もの》が、その|鉢《はち》を|海《うみ》に|傾《かたむ》けた。すると、|海《うみ》は|死人《しにん》の|血《ち》のようになって、その|中《なか》の|生《い》き|物《もの》がみな|死《し》んでしまった。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》三の|者《もの》がその|鉢《はち》を|川《かわ》と|水《みず》の|源《みなもと》とに|傾《かたむ》けた。すると、みな|血《ち》になった。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]それから、|水《みず》をつかさどる|御使《みつかい》がこう|言《い》うのを、|聞《き》いた、「|今《いま》いまし、|昔《むかし》いませる|聖《せい》なる|者《もの》よ。このようにお|定《さだ》めになったあなたは、|正《ただ》しいかたであります。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|聖徒《せいと》と|預言者《よげんしゃ》との|血《ち》を|流《なが》した|者《もの》たちに、|血《ち》をお|飲《の》ませになりましたが、それは|当然《とうぜん》のことであります」。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまた|祭壇《さいだん》がこう|言《い》うのを|聞《き》いた、「|全能者《ぜんのうしゃ》にして|主《しゅ》なる|神《かみ》よ。しかり、あなたのさばきは|真実《しんじつ》で、かつ|正《ただ》しいさばきであります」。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》四の|者《もの》が、その|鉢《はち》を|太陽《たいよう》に|傾《かたむ》けた。すると、|太陽《たいよう》は|火《ひ》で|人々《ひとびと》を|焼《や》くことを|許《ゆる》された。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は、|激《はげ》しい|炎熱《えんねつ》で|焼《や》かれたが、これらの|災害《さいがい》を|支配《しはい》する|神《かみ》の|御名《みな》を|汚《けが》し、|悔《く》い|改《あらた》めて|神《かみ》に|栄光《えいこう》を|帰《き》することをしなかった。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》五の|者《もの》が、その|鉢《はち》を|獣《けもの》の|座《ざ》に|傾《かたむ》けた。すると、|獣《けもの》の|国《くに》は|暗《くら》くなり、|人々《ひとびと》は|苦痛《くつう》のあまり|舌《した》をかみ、[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]その|苦痛《くつう》とでき|物《もの》とのゆえに、|天《てん》の|神《かみ》をのろった。そして、|自分《じぶん》の|行《おこな》いを|悔《く》い|改《あらた》めなかった。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》六の|者《もの》が、その|鉢《はち》を|大《だい》ユウフラテ|川《がわ》に|傾《かたむ》けた。すると、その|水《みず》は、|日《ひ》の|出《で》る|方《ほう》から|来《く》る|王《おう》たちに|対《たい》し|道《みち》を|備《そな》えるために、かれてしまった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]また|見《み》ると、|龍《りゅう》の|口《くち》から、|獣《けもの》の|口《くち》から、にせ|預言者《よげんしゃ》の|口《くち》から、かえるのような三つの|汚《けが》れた|霊《れい》が|出《で》てきた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]これらは、しるしを|行《おこな》う|悪霊《あくれい》の|霊《れい》であって、|全《ぜん》|世界《せかい》の|王《おう》たちのところに|行《い》き、|彼《かれ》らを|召集《しょうしゅう》したが、それは、|全能《ぜんのう》なる|神《かみ》の|大《おお》いなる|日《ひ》に、|戦《たたか》いをするためであった。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり](|見《み》よ、わたしは|盗人《ぬすびと》のように|来《く》る。|裸《はだか》のままで|歩《ある》かないように、また、|裸《はだか》の|恥《はじ》を|見《み》られないように、|目《め》をさまし|着物《きもの》を|身《み》に|着《つ》けている|者《もの》は、さいわいである。)[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]三つの|霊《れい》は、ヘブル|語《ご》でハルマゲドンという|所《ところ》に、|王《おう》たちを|召集《しょうしゅう》した。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》七の|者《もの》が、その|鉢《はち》を|空中《くうちゅう》に|傾《かたむ》けた。すると、|大《おお》きな|声《こえ》が|聖所《せいじょ》の|中《なか》から、|御座《みざ》から|出《で》て、「|事《こと》はすでに|成《な》った」と|言《い》った。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]すると、いなずまと、もろもろの|声《こえ》と、|雷鳴《らいめい》とが|起《おこ》り、また|激《はげ》しい|地震《じしん》があった。それは|人間《にんげん》が|地上《ちじょう》にあらわれて|以来《いらい》、かつてなかったようなもので、それほどに|激《はげ》しい|地震《じしん》であった。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|大《おお》いなる|都《みやこ》は三つに|裂《さ》かれ、|諸《しょ》|国民《こくみん》の|町々《まちまち》は|倒《たお》れた。|神《かみ》は|大《おお》いなるバビロンを|思《おも》い|起《おこ》し、これに|神《かみ》の|激《はげ》しい|怒《いか》りのぶどう|酒《しゅ》の|杯《さかずき》を|与《あた》えられた。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|島々《しまじま》はみな|逃《に》げ|去《さ》り、|山々《やまやま》は|見《み》えなくなった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]また一タラントの|重《おも》さほどの|大《おお》きな|雹《ひょう》が、|天《てん》から|人々《ひとびと》の|上《うえ》に|降《ふ》ってきた。|人々《ひとびと》は、この|雹《ひょう》の|災害《さいがい》のゆえに|神《かみ》をのろった。その|災害《さいがい》が、|非常《ひじょう》に|大《おお》きかったからである。 第一七章[#「第一七章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]それから、七つの|鉢《はち》を|持《も》つ七|人《にん》の|御使《みつかい》のひとりがきて、わたしに|語《かた》って|言《い》った、「さあ、きなさい。|多《おお》くの|水《みず》の|上《うえ》にすわっている|大《おお》|淫婦《いんぷ》に|対《たい》するさばきを、|見《み》せよう。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|地《ち》の|王《おう》たちはこの|女《おんな》と|姦淫《かんいん》を|行《おこな》い、|地《ち》に|住《す》む|人々《ひとびと》はこの|女《おんな》の|姦淫《かんいん》のぶどう|酒《しゅ》に|酔《よ》いしれている」。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》は、わたしを|御霊《みたま》に|感《かん》じたまま、|荒野《あらの》へ|連《つ》れて|行《い》った。わたしは、そこでひとりの|女《おんな》が|赤《あか》い|獣《けもの》に|乗《の》っているのを|見《み》た。その|獣《けもの》は|神《かみ》を|汚《けが》すかずかずの|名《な》でおおわれ、また、それに七つの|頭《あたま》と十の|角《つの》とがあった。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]この|女《おんな》は|紫《むらさき》と|赤《あか》の|衣《ころも》をまとい、|金《きん》と|宝石《ほうせき》と|真珠《しんじゅ》とで|身《み》を|飾《かざ》り、|憎《にく》むべきものと|自分《じぶん》の|姦淫《かんいん》の|汚《けが》れとで|満《み》ちている|金《きん》の|杯《さかずき》を|手《て》に|持《も》ち、[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]その|額《ひたい》には、一つの|名《な》がしるされていた。それは|奥義《おくぎ》であって、「|大《おお》いなるバビロン、|淫婦《いんぷ》どもと|地《ち》の|憎《にく》むべきものらとの|母《はは》」というのであった。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、この|女《おんな》が|聖徒《せいと》の|血《ち》とイエスの|証人《しょうにん》の|血《ち》に|酔《よ》いしれているのを|見《み》た。  この|女《おんな》を|見《み》た|時《とき》、わたしは|非常《ひじょう》に|驚《おどろ》きあやしんだ。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]すると、|御使《みつかい》はわたしに|言《い》った、「なぜそんなに|驚《おどろ》くのか。この|女《おんな》の|奥義《おくぎ》と、|女《おんな》を|乗《の》せている七つの|頭《あたま》と十の|角《つの》のある|獣《けもの》の|奥義《おくぎ》とを、|話《はな》してあげよう。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|見《み》た|獣《けもの》は、|昔《むかし》はいたが、|今《いま》はおらず、そして、やがて|底《そこ》|知《し》れぬ|所《ところ》から|上《のぼ》ってきて、ついには|滅《ほろ》びに|至《いた》るものである。|地《ち》に|住《す》む|者《もの》のうち、|世《よ》の|初《はじ》めからいのちの|書《しょ》に|名《な》をしるされていない|者《もの》たちは、この|獣《けもの》が、|昔《むかし》はいたが|今《いま》はおらず、やがて|来《く》るのを|見《み》て、|驚《おどろ》きあやしむであろう。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]ここに、|知恵《ちえ》のある|心《こころ》が|必要《ひつよう》である。七つの|頭《あたま》は、この|女《おんな》のすわっている七つの|山《やま》であり、また、七|人《にん》の|王《おう》のことである。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そのうちの五|人《にん》はすでに|倒《たお》れ、ひとりは|今《いま》おり、もうひとりは、まだきていない。それが|来《く》れば、しばらくの|間《あいだ》だけおることになっている。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|昔《むかし》はいたが|今《いま》はいないという|獣《けもの》は、すなわち|第《だい》八のものであるが、またそれは、かの七|人《にん》の|中《なか》のひとりであって、ついには|滅《ほろ》びに|至《いた》るものである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|見《み》た十の|角《つの》は、十|人《にん》の|王《おう》のことであって、|彼《かれ》らはまだ|国《くに》を|受《う》けてはいないが、|獣《けもの》と|共《とも》に、|一時《ひととき》だけ|王《おう》としての|権威《けんい》を|受《う》ける。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|心《こころ》をひとつにしている。そして、|自分《じぶん》たちの|力《ちから》と|権威《けんい》とを|獣《けもの》に|与《あた》える。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|小羊《こひつじ》に|戦《たたか》いをいどんでくるが、|小羊《こひつじ》は、|主《しゅ》の|主《しゅ》、|王《おう》の|王《おう》であるから、|彼《かれ》らにうち|勝《か》つ。また、|小羊《こひつじ》と|共《とも》にいる|召《め》された、|選《えら》ばれた、|忠実《ちゅうじつ》な|者《もの》たちも、|勝利《しょうり》を|得《え》る」。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》はまた、わたしに|言《い》った、「あなたの|見《み》た|水《みず》、すなわち、|淫婦《いんぷ》のすわっている|所《ところ》は、あらゆる|民族《みんぞく》、|群衆《ぐんしゅう》、|国民《こくみん》、|国語《こくご》である。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|見《み》た十の|角《つの》と|獣《けもの》とは、この|淫婦《いんぷ》を|憎《にく》み、みじめな|者《もの》にし、|裸《はだか》にし、|彼女《かのじょ》の|肉《にく》を|食《く》い、|火《ひ》で|焼《や》き|尽《つく》すであろう。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|神《かみ》は、|御言《みことば》が|成就《じょうじゅ》する|時《とき》まで、|彼《かれ》らの|心《こころ》の|中《なか》に、|御旨《みむね》を|行《おこな》い、|思《おも》いをひとつにし、|彼《かれ》らの|支配《しはい》|権《けん》を|獣《けもの》に|与《あた》える|思《おも》いを|持《も》つようにされたからである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]あなたの|見《み》たかの|女《おんな》は、|地《ち》の|王《おう》たちを|支配《しはい》する|大《おお》いなる|都《みやこ》のことである」。 第一八章[#「第一八章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]この|後《のち》、わたしは、もうひとりの|御使《みつかい》が、|大《おお》いなる|権威《けんい》を|持《も》って、|天《てん》から|降《お》りて|来《く》るのを|見《み》た。|地《ち》は|彼《かれ》の|栄光《えいこう》によって|明《あか》るくされた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|力強《ちからづよ》い|声《こえ》で|叫《さけ》んで|言《い》った、「|倒《たお》れた、|大《おお》いなるバビロンは|倒《たお》れた。そして、それは|悪魔《あくま》の|住《す》む|所《ところ》、あらゆる|汚《けが》れた|霊《れい》の|巣《そう》くつ、また、あらゆる|汚《けが》れた|憎《にく》むべき|鳥《とり》の|巣《そう》くつとなった。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]すべての|国民《こくみん》は、|彼女《かのじょ》の|姦淫《かんいん》に|対《たい》する|激《はげ》しい|怒《いか》りのぶどう|酒《しゅ》を|飲《の》み、|地《ち》の|王《おう》たちは|彼女《かのじょ》と|姦淫《かんいん》を|行《おこな》い、|地上《ちじょう》の|商人《しょうにん》たちは、|彼女《かのじょ》の|極度《きょくど》のぜいたくによって|富《とみ》を|得《え》たからである」。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまた、もうひとつの|声《こえ》が|天《てん》から|出《で》るのを|聞《き》いた、「わたしの|民《たみ》よ。|彼女《かのじょ》から|離《はな》れ|去《さ》って、その|罪《つみ》にあずからないようにし、その|災害《さいがい》に|巻《ま》き|込《こ》まれないようにせよ。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》の|罪《つみ》は|積《つも》り|積《つ》って|天《てん》に|達《たっ》しており、|神《かみ》はその|不義《ふぎ》の|行《おこな》いを|覚《おぼ》えておられる。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》がしたとおりに|彼女《かのじょ》にし|返《かえ》し、そのしわざに|応《おう》じて二|倍《ばい》に|報復《ほうふく》をし、|彼女《かのじょ》が|混《ま》ぜて|入《い》れた|杯《さかずき》の|中《なか》に、その|倍《ばい》の|量《りょう》を、|入《い》れてやれ。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》が|自《みずか》ら|高《たか》ぶり、ぜいたくをほしいままにしたので、それに|対《たい》して、|同《おな》じほどの|苦《くる》しみと|悲《かな》しみとを|味《あじ》わわせてやれ。|彼女《かのじょ》は|心《こころ》の|中《なか》で『わたしは|女王《じょおう》の|位《くらい》についている|者《もの》であって、やもめではないのだから、|悲《かな》しみを|知《し》らない』と|言《い》っている。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]それゆえ、さまざまの|災害《さいがい》が、|死《し》と|悲《かな》しみとききんとが、一|日《にち》のうちに|彼女《かのじょ》を|襲《おそ》い、そして、|彼女《かのじょ》は|火《ひ》で|焼《や》かれてしまう。|彼女《かのじょ》をさばく|主《しゅ》なる|神《かみ》は、|力強《ちからづよ》いかたなのである。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》と|姦淫《かんいん》を|行《おこな》い、ぜいたくをほしいままにしていた|地《ち》の|王《おう》たちは、|彼女《かのじょ》が|焼《や》かれる|火《ひ》の|煙《けむり》を|見《み》て、|彼女《かのじょ》のために|胸《むね》を|打《う》って|泣《な》き|悲《かな》しみ、[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》の|苦《くる》しみに|恐《おそ》れをいだき、|遠《とお》くに|立《た》って|言《い》うであろう、『ああ、わざわいだ、|大《おお》いなる|都《みやこ》、|不《ふ》|落《お》の|都《みやこ》、バビロンは、わざわいだ。おまえに|対《たい》するさばきは、|一瞬《いっしゅん》にしてきた』。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また、|地《ち》の|商人《しょうにん》たちも|彼女《かのじょ》のために|泣《な》き|悲《かな》しむ。もはや、|彼《かれ》らの|商品《しょうひん》を|買《か》う|者《もの》が、ひとりもないからである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]その|商品《しょうひん》は、|金《きん》、|銀《ぎん》、|宝石《ほうせき》、|真珠《しんじゅ》、|麻布《あさぬの》、|紫《むらさき》|布《ぬの》、|絹《きぬ》、|緋《ひ》|布《ぬの》、|各種《かくしゅ》の|香木《こうぼく》、|各種《かくしゅ》の|象牙《ぞうげ》|細工《ざいく》、|高価《こうか》な|木材《もくざい》、|銅《どう》、|鉄《てつ》、|大理石《だいりせき》などの|器《うつわ》、[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|肉桂《にっけい》、|香料《こうりょう》、|香《こう》、におい|油《あぶら》、|乳香《にゅうこう》、ぶどう|酒《しゅ》、オリブ|油《ゆ》、|麦粉《むぎこ》、|麦《むぎ》、|牛《うし》、|羊《ひつじ》、|馬《うま》、|車《くるま》、|奴隷《どれい》、そして|人身《じんしん》などである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]おまえの|心《こころ》の|喜《よろこ》びであったくだものはなくなり、あらゆるはでな、はなやかな|物《もの》はおまえから|消《き》え|去《さ》った。それらのものはもはや|見《み》られない。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]これらの|品々《しなじな》を|売《う》って、|彼女《かのじょ》から|富《とみ》を|得《え》た|商人《しょうにん》は、|彼女《かのじょ》の|苦《くる》しみに|恐《おそ》れをいだいて|遠《とお》くに|立《た》ち、|泣《な》き|悲《かな》しんで|言《い》う、[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]『ああ、わざわいだ、|麻布《あさぬの》と|紫《むらさき》|布《ぬの》と|緋《ひ》|布《ぬの》をまとい、|金《きん》や|宝石《ほうせき》や|真珠《しんじゅ》で|身《み》を|飾《かざ》っていた|大《おお》いなる|都《みやこ》は、わざわいだ。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]これほどの|富《とみ》が、|一瞬《いっしゅん》にして|無《む》に|帰《き》してしまうとは』。また、すべての|船長《せんちょう》、|航海者《こうかいしゃ》、|水夫《すいふ》、すべて|海《うみ》で|働《はたら》いている|人《ひと》たちは、|遠《とお》くに|立《た》ち、[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》が|焼《や》かれる|火《ひ》の|煙《けむり》を|見《み》て、|叫《さけ》んで|言《い》う、『これほどの|大《おお》いなる|都《みやこ》は、どこにあろう』。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|頭《あたま》にちりをかぶり、|泣《な》き|悲《かな》しんで|叫《さけ》ぶ、『ああ、わざわいだ、この|大《おお》いなる|都《みやこ》は、わざわいだ。そのおごりによって、|海《うみ》に|舟《ふね》を|持《も》つすべての|人《ひと》が|富《とみ》を|得《え》ていたのに、この|都《みやこ》も|一瞬《いっしゅん》にして|無《む》に|帰《き》してしまった』。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|天《てん》よ、|聖徒《せいと》たちよ、|使徒《しと》たちよ、|預言者《よげんしゃ》たちよ。この|都《みやこ》について|大《おお》いに|喜《よろこ》べ。|神《かみ》は、あなたがたのために、この|都《みやこ》をさばかれたのである」。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]すると、ひとりの|力強《ちからづよ》い|御使《みつかい》が、|大《おお》きなひきうすのような|石《いし》を|持《も》ちあげ、それを|海《うみ》に|投《な》げ|込《こ》んで|言《い》った、「|大《おお》いなる|都《みやこ》バビロンは、このように|激《はげ》しく|打《う》ち|倒《たお》され、そして、|全《まった》く|姿《すがた》を|消《け》してしまう。[#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]また、おまえの|中《なか》では、|立琴《たてごと》をひく|者《もの》、|歌《うた》を|歌《うた》う|者《もの》、|笛《ふえ》を|吹《ふ》く|者《もの》、ラッパを|吹《ふ》き|鳴《な》らす|者《もの》の|楽《がく》の|音《ね》は|全《まった》く|聞《き》かれず、あらゆる|仕事《しごと》の|職人《しょくにん》たちも|全《まった》く|姿《すがた》を|消《け》し、また、ひきうすの|音《おと》も、|全《まった》く|聞《き》かれない。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]また、おまえの|中《なか》では、あかりもともされず、|花婿《はなむこ》、|花嫁《はなよめ》の|声《こえ》も|聞《き》かれない。というのは、おまえの|商人《しょうにん》たちは|地上《ちじょう》で|勢力《せいりょく》を|張《は》る|者《もの》となり、すべての|国民《こくみん》はおまえのまじないでだまされ、[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]また、|預言者《よげんしゃ》や|聖徒《せいと》の|血《ち》、さらに、|地上《ちじょう》で|殺《ころ》されたすべての|者《もの》の|血《ち》が、この|都《みやこ》で|流《なが》されたからである」。 第一九章[#「第一九章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]この|後《のち》、わたしは|天《てん》の|大群《たいぐん》衆が|大声《おおごえ》で|唱《とな》えるような|声《こえ》を|聞《き》いた、 [#ここから2字下げ] 「ハレルヤ、|救《すくい》と|栄光《えいこう》と|力《ちから》とは、 われらの|神《かみ》のものであり、 [#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]そのさばきは、|真実《しんじつ》で|正《ただ》しい。 |神《かみ》は、|姦淫《かんいん》で|地《ち》を|汚《けが》した|大《だい》|淫婦《いんぷ》をさばき、 |神《かみ》の|僕《しもべ》たちの|血《ち》の|報復《ほうふく》を |彼女《かのじょ》になさったからである」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]|再《ふたた》び|声《こえ》があって、「ハレルヤ、|彼女《かのじょ》が|焼《や》かれる|火《ひ》の|煙《けむり》は、|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|立《た》ちのぼる」と|言《い》った。[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]すると、二十四|人《にん》の|長老《ちょうろう》と四つの|生《い》き|物《もの》とがひれ|伏《ふ》し、|御座《みざ》にいます|神《かみ》を|拝《はい》して|言《い》った、「アァメン、ハレルヤ」。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]その|時《とき》、|御座《みざ》から|声《こえ》が|出《で》て|言《い》った、 [#ここから2字下げ] 「すべての|神《かみ》の|僕《しもべ》たちよ、|神《かみ》をおそれる|者《もの》たちよ。 |小《ちい》さき|者《もの》も|大《おお》いなる|者《もの》も、 |共《とも》に、われらの|神《かみ》をさんびせよ」。 [#ここで字下げ終わり] [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまた、|大《だい》|群衆《ぐんしゅう》の|声《こえ》、|多《おお》くの|水《みず》の|音《おと》、また|激《はげ》しい|雷鳴《らいめい》のようなものを|聞《き》いた。それはこう|言《い》った、 [#ここから2字下げ] 「ハレルヤ、|全能者《ぜんのうしゃ》にして|主《しゅ》なるわれらの|神《かみ》は、 |王《おう》なる|支配者《しはいしゃ》であられる。 [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]わたしたちは|喜《よろこ》び|楽《たの》しみ、|神《かみ》をあがめまつろう。 |小羊《こひつじ》の|婚姻《こんいん》の|時《とき》がきて、 |花嫁《はなよめ》はその|用意《ようい》をしたからである。 [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]|彼女《かのじょ》は、|光《ひか》り|輝《かがや》く、 |汚《けが》れのない|麻布《あさぬの》の|衣《ころも》を|着《き》ることを|許《ゆる》された。 この|麻布《あさぬの》の|衣《ころも》は、|聖徒《せいと》たちの|正《ただ》しい|行《おこな》いである」。 [#ここで字下げ終わり]  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]それから、|御使《みつかい》はわたしに|言《い》った、「|書《か》きしるせ。|小羊《こひつじ》の|婚《こん》|宴《えん》に|招《まね》かれた|者《もの》は、さいわいである」。またわたしに|言《い》った、「これらは、|神《かみ》の|真実《しんじつ》の|言葉《ことば》である」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そこで、わたしは|彼《かれ》の|足《あし》もとにひれ|伏《ふ》して、|彼《かれ》を|拝《はい》そうとした。すると、|彼《かれ》は|言《い》った、「そのようなことをしてはいけない。わたしは、あなたと|同《おな》じ|僕《しもべ》|仲間《なかま》であり、またイエスのあかしびとであるあなたの|兄弟《きょうだい》たちと|同《おな》じ|僕《しもべ》|仲間《なかま》である。ただ|神《かみ》だけを|拝《はい》しなさい。イエスのあかしは、すなわち|預言《よげん》の|霊《れい》である」。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]またわたしが|見《み》ていると、|天《てん》が|開《ひら》かれ、|見《み》よ、そこに|白《しろ》い|馬《うま》がいた。それに|乗《の》っているかたは、「|忠実《ちゅうじつ》で|真実《しんじつ》な|者《もの》」と|呼《よ》ばれ、|義《ぎ》によってさばき、また、|戦《たたか》うかたである。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]その|目《め》は|燃《も》える|炎《ほのお》であり、その|頭《あたま》には|多《おお》くの|冠《かんむり》があった。また、|彼《かれ》|以外《いがい》にはだれも|知《し》らない|名《な》がその|身《み》にしるされていた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|血染《ちぞ》めの|衣《ころも》をまとい、その|名《な》は「|神《かみ》の|言《ことば》」と|呼《よ》ばれた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]そして、|天《てん》の|軍勢《ぐんぜい》が、|純白《じゅんぱく》で、|汚《けが》れのない|麻布《あさぬの》の|衣《ころも》を|着《き》て、|白《しろ》い|馬《うま》に|乗《の》り、|彼《かれ》に|従《したが》った。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]その|口《くち》からは、|諸《しょ》|国民《こくみん》を|打《う》つために、|鋭《するど》いつるぎが|出《で》ていた。|彼《かれ》は、|鉄《てつ》のつえをもって|諸《しょ》|国民《こくみん》を|治め《おさめ》、また、|全能者《ぜんのうしゃ》なる|神《かみ》の|激《はげ》しい|怒《いか》りの|酒《さか》ぶねを|踏《ふ》む。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]その|着物《きもの》にも、そのももにも、「|王《おう》の|王《おう》、|主《しゅ》の|主《しゅ》」という|名《な》がしるされていた。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また|見《み》ていると、ひとりの|御使《みつかい》が|太陽《たいよう》の|中《なか》に|立《た》っていた。|彼《かれ》は、|中空《なかぞら》を|飛《と》んでいるすべての|鳥《とり》にむかって、|大声《おおごえ》で|叫《さけ》んだ、「さあ、|神《かみ》の|大《だい》|宴会《えんかい》に|集《あつ》まってこい。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]そして、|王《おう》たちの|肉《にく》、|将軍《しょうぐん》の|肉《にく》、|勇者《ゆうしゃ》の|肉《にく》、|馬《うま》の|肉《にく》、|馬《うま》に|乗《の》っている|者《もの》の|肉《にく》、また、すべての|自由人《じゆうじん》と|奴隷《どれい》との|肉《にく》、|小《ちい》さき|者《もの》と|大《おお》いなる|者《もの》との|肉《にく》をくらえ」。  [#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]なお|見《み》ていると、|獣《けもの》と|地《ち》の|王《おう》たちと|彼《かれ》らの|軍勢《ぐんぜい》とが|集《あつ》まり、|馬《うま》に|乗《の》っているかたとその|軍勢《ぐんぜい》とに|対《たい》して、|戦《たたか》いをいどんだ。[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|獣《けもの》は|捕《とら》えられ、また、この|獣《けもの》の|前《まえ》でしるしを|行《おこな》って、|獣《けもの》の|刻印《こくいん》を|受《う》けた|者《もの》とその|像《ぞう》を|拝《おが》む|者《もの》とを|惑《まど》わしたにせ|預言者《よげんしゃ》も、|獣《けもの》と|共《とも》に|捕《とら》えられた。そして、この|両者《りょうしゃ》とも、|生《い》きながら、|硫黄《いおう》の|燃《も》えている|火《ひ》の|池《いけ》に|投《な》げ|込《こ》まれた。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]それ|以外《いがい》の|者《もの》たちは、|馬《うま》に|乗《の》っておられるかたの|口《くち》から|出《で》るつるぎで|切《き》り|殺《ころ》され、その|肉《にく》を、すべての|鳥《とり》が|飽《あ》きるまで|食《た》べた。 第二〇章[#「第二〇章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]またわたしが|見《み》ていると、ひとりの|御使《みつかい》が、|底《そこ》|知《し》れぬ|所《ところ》のかぎと|大《おお》きな|鎖《くさり》とを|手《て》に|持《も》って、|天《てん》から|降《お》りてきた。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は、|悪魔《あくま》でありサタンである|龍《りゅう》、すなわち、かの|年《とし》を|経《へ》たへびを|捕《とら》えて千|年《ねん》の|間《あいだ》つなぎおき、[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]そして、|底《そこ》|知《し》れぬ|所《ところ》に|投《な》げ|込《こ》み、|入口《いりぐち》を|閉《と》じてその|上《うえ》に|封印《ふういん》し、千|年《ねん》の|期間《きかん》が|終《おわ》るまで、|諸《しょ》|国民《こくみん》を|惑《まど》わすことがないようにしておいた。その|後《のち》、しばらくの|間《あいだ》だけ|解放《かいほう》されることになっていた。  [#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]また|見《み》ていると、かず|多《おお》くの|座《ざ》があり、その|上《うえ》に|人々《ひとびと》がすわっていた。そして、|彼《かれ》らにさばきの|権《けん》が|与《あた》えられていた。また、イエスのあかしをし|神《かみ》の|言《ことば》を|伝《つた》えたために|首《くび》を|切《き》られた|人々《ひとびと》の|霊《れい》がそこにおり、また、|獣《けもの》をもその|像《ぞう》をも|拝《おが》まず、その|刻印《こくいん》を|額《ひたい》や|手《て》に|受《う》けることをしなかった|人々《ひとびと》がいた。|彼《かれ》らは|生《い》きかえって、キリストと|共《とも》に千|年《ねん》の|間《あいだ》、|支配《しはい》した。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり](それ|以外《いがい》の|死人《しにん》は、千|年《ねん》の|期間《きかん》が|終《おわ》るまで|生《い》きかえらなかった。)これが|第《だい》一の|復活《ふっかつ》である。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]この|第《だい》一の|復活《ふっかつ》にあずかる|者《もの》は、さいわいな|者《もの》であり、また|聖《せい》なる|者《もの》である。この|人《ひと》たちに|対《たい》しては、|第《だい》二の|死《し》はなんの|力《ちから》もない。|彼《かれ》らは|神《かみ》とキリストとの|祭司《さいし》となり、キリストと|共《とも》に千|年《ねん》の|間《あいだ》、|支配《しはい》する。  [#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]千|年《ねん》の|期間《きかん》が|終《おわ》ると、サタンはその|獄《ごく》から|解放《かいほう》される。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]そして、|出《で》て|行《い》き、|地《ち》の|四方《しほう》にいる|諸《しょ》|国民《こくみん》、すなわちゴグ、マゴグを|惑《まど》わし、|彼《かれ》らを|戦《たたか》いのために|召集《しょうしゅう》する。その|数《かず》は、|海《うみ》の|砂《すな》のように|多《おお》い。[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》らは|地上《ちじょう》の|広《ひろ》い|所《ところ》に|上《のぼ》ってきて、|聖徒《せいと》たちの|陣営《じんえい》と|愛《あい》されていた|都《みやこ》とを|包囲《ほうい》した。すると、|天《てん》から|火《ひ》が|下《くだ》ってきて、|彼《かれ》らを|焼《や》き|尽《つく》した。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]そして、|彼《かれ》らを|惑《まど》わした|悪魔《あくま》は、|火《ひ》と|硫黄《いおう》との|池《いけ》に|投《な》げ|込《こ》まれた。そこには、|獣《けもの》もにせ|預言者《よげんしゃ》もいて、|彼《かれ》らは|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|日夜《にちや》、|苦《くる》しめられるのである。  [#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]また|見《み》ていると、|大《おお》きな|白《しろ》い|御座《みざ》があり、そこにいますかたがあった。|天《てん》も|地《ち》も|御顔《みかお》の|前《まえ》から|逃《に》げ|去《さ》って、あとかたもなくなった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]また、|死《し》んでいた|者《もの》が、|大《おお》いなる|者《もの》も|小《ちい》さき|者《もの》も|共《とも》に、|御座《みざ》の|前《まえ》に|立《た》っているのが|見《み》えた。かずかずの|書物《しょもつ》が|開《ひら》かれたが、もう一つの|書物《しょもつ》が|開《ひら》かれた。これはいのちの|書《しょ》であった。|死人《しにん》はそのしわざに|応《おう》じ、この|書物《しょもつ》に|書《か》かれていることにしたがって、さばかれた。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|海《うみ》はその|中《なか》にいる|死人《しにん》を|出《だ》し、|死《し》も|黄泉《よみ》もその|中《なか》にいる|死人《しにん》を|出《だ》し、そして、おのおのそのしわざに|応《おう》じて、さばきを|受《う》けた。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]それから、|死《し》も|黄泉《よみ》も|火《ひ》の|池《いけ》に|投《な》げ|込《こ》まれた。この|火《ひ》の|池《いけ》が|第《だい》二の|死《し》である。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]このいのちの|書《しょ》に|名《な》がしるされていない|者《もの》はみな、|火《ひ》の|池《いけ》に|投《な》げ|込《こ》まれた。 第二一章[#「第二一章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]わたしはまた、|新《あたら》しい|天《てん》と|新《あたら》しい|地《ち》とを|見《み》た。|先《さき》の|天《てん》と|地《ち》とは|消《き》え|去《さ》り、|海《うみ》もなくなってしまった。[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]また、|聖《せい》なる|都《みやこ》、|新《あたら》しいエルサレムが、|夫《おっと》のために|着飾《きかざ》った|花嫁《はなよめ》のように|用意《ようい》をととのえて、|神《かみ》のもとを|出《で》て、|天《てん》から|下《くだ》って|来《く》るのを|見《み》た。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]また、|御座《みざ》から|大《おお》きな|声《こえ》が|叫《さけ》ぶのを|聞《き》いた、「|見《み》よ、|神《かみ》の|幕屋《まくや》が|人《ひと》と|共《とも》にあり、|神《かみ》が|人《ひと》と|共《とも》に|住《す》み、|人《ひと》は|神《かみ》の|民《たみ》となり、|神《かみ》|自《みずか》ら|人《ひと》と|共《とも》にいまして、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|人《ひと》の|目《め》から|涙《なみだ》を|全《まった》くぬぐいとって|下《くだ》さる。もはや、|死《し》もなく、|悲《かな》しみも、|叫《さけ》びも、|痛《いた》みもない。|先《さき》のものが、すでに|過《す》ぎ|去《さ》ったからである」。  [#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]すると、|御座《みざ》にいますかたが|言《い》われた、「|見《み》よ、わたしはすべてのものを|新《あら》たにする」。また|言《い》われた、「|書《か》きしるせ。これらの|言葉《ことば》は、|信《しん》ずべきであり、まことである」。[#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]そして、わたしに|仰《おお》せられた、「|事《こと》はすでに|成《な》った。わたしは、アルパでありオメガである。|初《はじ》めであり|終《おわ》りである。かわいている|者《もの》には、いのちの|水《みず》の|泉《いずみ》から|価《あたい》なしに|飲《の》ませよう。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|勝利《しょうり》を|得《え》る|者《もの》は、これらのものを|受《う》け|継《つ》ぐであろう。わたしは|彼《かれ》の|神《かみ》となり、|彼《かれ》はわたしの|子《こ》となる。[#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]しかし、おくびょうな|者《もの》、|信《しん》じない|者《もの》、|忌《い》むべき|者《もの》、|人殺《ひとごろ》し、|姦淫《かんいん》を|行《おこな》う|者《もの》、まじないをする|者《もの》、|偶像《ぐうぞう》を|拝《おが》む|者《もの》、すべて|偽《いつわ》りを|言《い》う|者《もの》には、|火《ひ》と|硫黄《いおう》の|燃《も》えている|池《いけ》が、|彼《かれ》らの|受《う》くべき|報《むく》いである。これが|第《だい》二の|死《し》である」。  [#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|最後《さいご》の七つの|災害《さいがい》が|満《み》ちている七つの|鉢《はち》を|持《も》っていた七|人《にん》の|御使《みつかい》のひとりがきて、わたしに|語《かた》って|言《い》った、「さあ、きなさい。|小羊《こひつじ》の|妻《つま》なる|花嫁《はなよめ》を|見《み》せよう」。[#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]この|御使《みつかい》は、わたしを|御霊《みたま》に|感《かん》じたまま、|大《おお》きな|高《たか》い|山《やま》に|連《つ》れて|行《い》き、|聖《せい》|都《みやこ》エルサレムが、|神《かみ》の|栄光《えいこう》のうちに、|神《かみ》のみもとを|出《で》て|天《てん》から|下《くだ》って|来《く》るのを|見《み》せてくれた。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]その|都《みやこ》の|輝《かがや》きは、|高価《こうか》な|宝石《ほうせき》のようであり、|透明《とうめい》な|碧玉《へきぎょく》のようであった。[#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]それには|大《おお》きな、|高《たか》い|城壁《じょうへき》があって、十二の|門《もん》があり、それらの|門《もん》には、十二の|御使《みつかい》がおり、イスラエルの|子《こ》らの十二|部族《ぶぞく》の|名《な》が、それに|書《か》いてあった。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]|東《ひがし》に三つの|門《もん》、|北《きた》に三つの|門《もん》、|南《みなみ》に三つの|門《もん》、|西《にし》に三つの|門《もん》があった。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]また|都《みやこ》の|城壁《じょうへき》には十二の|土台《どだい》があり、それには|小羊《こひつじ》の十二|使徒《しと》の十二の|名《な》が|書《か》いてあった。  [#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]わたしに|語《かた》っていた|者《もの》は、|都《みやこ》とその|門《もん》と|城壁《じょうへき》とを|測《はか》るために、|金《きん》の|測《はか》りざおを|持《も》っていた。[#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]|都《みやこ》は|方形《ほうけい》であって、その|長《なが》さと|幅《はば》とは|同《おな》じである。|彼《かれ》がその|測《はか》りざおで|都《みやこ》を|測《はか》ると、一万二千|丁《ちょう》であった。|長《なが》さと|幅《はば》と|高《たか》さとは、いずれも|同《おな》じである。[#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]また|城壁《じょうへき》を|測《はか》ると、百四十四キュビトであった。これは|人間《にんげん》の、すなわち、|御使《みつかい》の|尺度《しゃくど》によるのである。[#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]|城壁《じょうへき》は|碧玉《へきぎょく》で|築《きず》かれ、|都《みやこ》はすきとおったガラスのような|純金《じゅんきん》で|造《つく》られていた。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]|都《みやこ》の|城壁《じょうへき》の|土台《どだい》は、さまざまな|宝石《ほうせき》で|飾《かざ》られていた。|第《だい》一の|土台《どだい》は|碧玉《へきぎょく》、|第《だい》二はサファイヤ、|第《だい》三はめのう、|第《だい》四は|緑玉《りょくぎょく》、[#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]|第《だい》五は|縞《しま》めのう、|第《だい》六は|赤《あか》めのう、|第《だい》七はかんらん|石《せき》、|第《だい》八は|緑柱石《りょくちゅうせき》、|第《だい》九は|黄玉石《おうぎょくせき》、|第《だい》十はひすい、|第《だい》十一は|青玉《せいぎょく》、|第《だい》十二は|紫水晶《むらさきずいしょう》であった。[#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]十二の|門《もん》は十二の|真珠《しんじゅ》であり、|門《もん》はそれぞれ一つの|真珠《しんじゅ》で|造《つく》られ、|都《みやこ》の|大通《おおどお》りは、すきとおったガラスのような|純金《じゅんきん》であった。  [#太字]二二[#「二二」は行右小書き][#太字終わり]わたしは、この|都《みやこ》の|中《なか》には|聖所《せいじょ》を|見《み》なかった。|全能者《ぜんのうしゃ》にして|主《しゅ》なる|神《かみ》と|小羊《こひつじ》とが、その|聖所《せいじょ》なのである。[#太字]二三[#「二三」は行右小書き][#太字終わり]|都《みやこ》は、|日《ひ》や|月《つき》がそれを|照《てら》す|必要《ひつよう》がない。|神《かみ》の|栄光《えいこう》が|都《みやこ》を|明《あか》るくし、|小羊《こひつじ》が|都《みやこ》のあかりだからである。[#太字]二四[#「二四」は行右小書き][#太字終わり]|諸《しょ》|国民《こくみん》は|都《みやこ》の|光《ひかり》の|中《なか》を|歩《ある》き、|地《ち》の|王《おう》たちは、|自分《じぶん》たちの|光栄《こうえい》をそこに|携《たずさ》えて|来《く》る。[#太字]二五[#「二五」は行右小書き][#太字終わり]|都《みやこ》の|門《もん》は、|終日《しゅうじつ》、|閉《と》ざされることはない。そこには|夜《よる》がないからである。[#太字]二六[#「二六」は行右小書き][#太字終わり]|人々《ひとびと》は、|諸《しょ》|国民《こくみん》の|光栄《こうえい》とほまれとをそこに|携《たずさ》えて|来《く》る。[#太字]二七[#「二七」は行右小書き][#太字終わり]しかし、|汚《けが》れた|者《もの》や、|忌《い》むべきこと|及《およ》び|偽《いつわ》りを|行《おこな》う|者《もの》は、その|中《なか》に|決《けっ》してはいれない。はいれる|者《もの》は、|小羊《こひつじ》のいのちの|書《しょ》に|名《な》をしるされている|者《もの》だけである。 第二二章[#「第二二章」は中見出し]  [#太字]一[#「一」は行右小書き][#太字終わり]|御使《みつかい》はまた、|水晶《すいしょう》のように|輝《かがや》いているいのちの|水《みず》の|川《かわ》をわたしに|見《み》せてくれた。この|川《かわ》は、|神《かみ》と|小羊《こひつじ》との|御座《みざ》から|出《で》て、[#太字]二[#「二」は行右小書き][#太字終わり]|都《みやこ》の|大通《おおどお》りの|中央《ちゅうおう》を|流《なが》れている。|川《かわ》の|両側《りょうがわ》にはいのちの|木《き》があって、十二|種《しゅ》の|実《み》を|結《むす》び、その|実《じつ》は|毎月《まいつき》みのり、その|木《き》の|葉《は》は|諸《しょ》|国民《こくみん》をいやす。[#太字]三[#「三」は行右小書き][#太字終わり]のろわるべきものは、もはや|何《なに》ひとつない。|神《かみ》と|小羊《こひつじ》との|御座《みざ》は|都《みやこ》の|中《なか》にあり、その|僕《しもべ》たちは|彼《かれ》を|礼拝《れいはい》し、[#太字]四[#「四」は行右小書き][#太字終わり]|御顔《みかお》を|仰《あお》ぎ|見《み》るのである。|彼《かれ》らの|額《ひたい》には、|御名《みな》がしるされている。[#太字]五[#「五」は行右小書き][#太字終わり]|夜《よる》は、もはやない。あかりも|太陽《たいよう》の|光《ひかり》も、いらない。|主《しゅ》なる|神《かみ》が|彼《かれ》らを|照《てら》し、そして、|彼《かれ》らは|世々《よよ》|限《かぎ》りなく|支配《しはい》する。  [#太字]六[#「六」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》はまた、わたしに|言《い》った、「これらの|言葉《ことば》は|信《しん》ずべきであり、まことである。|預言者《よげんしゃ》たちのたましいの|神《かみ》なる|主《しゅ》は、すぐにも|起《おこ》るべきことをその|僕《しもべ》たちに|示《しめ》そうとして、|御使《みつかい》をつかわされたのである。[#太字]七[#「七」は行右小書き][#太字終わり]|見《み》よ、わたしは、すぐに|来《く》る。この|書《しょ》の|預言《よげん》の|言葉《ことば》を|守《まも》る|者《もの》は、さいわいである」。  [#太字]八[#「八」は行右小書き][#太字終わり]これらのことを|見聞《みき》きした|者《もの》は、このヨハネである。わたしが|見聞《みき》きした|時《とき》、それらのことを|示《しめ》してくれた|御使《みつかい》の|足《あし》もとにひれ|伏《ふ》して|拝《はい》そうとすると、[#太字]九[#「九」は行右小書き][#太字終わり]|彼《かれ》は|言《い》った、「そのようなことをしてはいけない。わたしは、あなたや、あなたの|兄弟《きょうだい》である|預言者《よげんしゃ》たちや、この|書《しょ》の|言葉《ことば》を|守《まも》る|者《もの》たちと、|同《おな》じ|僕《しもべ》|仲間《なかま》である。ただ|神《かみ》だけを|拝《はい》しなさい」。  [#太字]一〇[#「一〇」は行右小書き][#太字終わり]またわたしに|言《い》った、「この|書《しょ》の|預言《よげん》の|言葉《ことば》を|封《ふう》じてはならない。|時《とき》が|近《ちか》づいているからである。[#太字]一一[#「一一」は行右小書き][#太字終わり]|不義《ふぎ》な|者《もの》はさらに|不義《ふぎ》を|行《おこな》い、|汚《けが》れた|者《もの》はさらに|汚《けが》れたことを|行《おこな》い、|義《ぎ》なる|者《もの》はさらに|義《ぎ》を|行《おこな》い、|聖《せい》なる|者《もの》はさらに|聖《せい》なることを|行《おこな》うままにさせよ」。  [#太字]一二[#「一二」は行右小書き][#太字終わり]「|見《み》よ、わたしはすぐに|来《く》る。|報《むく》いを|携《たずさ》えてきて、それぞれのしわざに|応《おう》じて|報《むく》いよう。[#太字]一三[#「一三」は行右小書き][#太字終わり]わたしはアルパであり、オメガである。|最初《さいしょ》の|者《もの》であり、|最後《さいご》の|者《もの》である。|初《はじ》めであり、|終《おわ》りである。[#太字]一四[#「一四」は行右小書き][#太字終わり]いのちの|木《き》にあずかる|特権《とっけん》を|与《あた》えられ、また|門《もん》をとおって|都《みやこ》にはいるために、|自分《じぶん》の|着物《きもの》を|洗《あら》う|者《もの》たちは、さいわいである。[#太字]一五[#「一五」は行右小書き][#太字終わり]|犬《いぬ》ども、まじないをする|者《もの》、|姦淫《かんいん》を|行《おこな》う|者《もの》、|人殺《ひとごろ》し、|偶像《ぐうぞう》を|拝《おが》む|者《もの》、また、|偽《いつわ》りを|好《この》みかつこれを|行《おこな》う|者《もの》はみな、|外《そと》に|出《だ》されている。  [#太字]一六[#「一六」は行右小書き][#太字終わり]わたしイエスは、|使《つかい》をつかわして、|諸《しょ》|教会《きょうかい》のために、これらのことをあなたがたにあかしした。わたしは、ダビデの|若《わか》|枝《えだ》また|子孫《しそん》であり、|輝《かがや》く|明《あ》けの|明星《みょうじょう》である」。  [#太字]一七[#「一七」は行右小書き][#太字終わり]|御霊《みたま》も|花嫁《はなよめ》も|共《とも》に|言《い》った、「きたりませ」。また、|聞《き》く|者《もの》も「きたりませ」と|言《い》いなさい。かわいている|者《もの》はここに|来《く》るがよい。いのちの|水《みず》がほしい|者《もの》は、|価《あたい》なしにそれを|受《う》けるがよい。  [#太字]一八[#「一八」は行右小書き][#太字終わり]この|書《しょ》の|預言《よげん》の|言葉《ことば》を|聞《き》くすべての|人々《ひとびと》に|対《たい》して、わたしは|警告《けいこく》する。もしこれに|書《か》き|加《くわ》える|者《もの》があれば、|神《かみ》はその|人《ひと》に、この|書《しょ》に|書《か》かれている|災害《さいがい》を|加《くわ》えられる。[#太字]一九[#「一九」は行右小書き][#太字終わり]また、もしこの|預言《よげん》の|書《しょ》の|言葉《ことば》をとり|除《のぞ》く|者《もの》があれば、|神《かみ》はその|人《ひと》の|受《う》くべき|分《ふん》を、この|書《しょ》に|書《か》かれているいのちの|木《き》と|聖《せい》なる|都《みやこ》から、とり|除《のぞ》かれる。  [#太字]二〇[#「二〇」は行右小書き][#太字終わり]これらのことをあかしするかたが|仰《おお》せになる、「しかり、わたしはすぐに|来《く》る」。アァメン、|主《しゅ》イエスよ、きたりませ。  [#太字]二一[#「二一」は行右小書き][#太字終わり]|主《しゅ》イエスの|恵《めぐ》みが、|一同《いちどう》の|者《もの》と|共《とも》にあるように。 [#改ページ] 底本:「聖書」日本聖書協会 1954年発行 2010年9月12日作成 ※テキストを修正した場合には、当サイトの名前を使用してはいけません。