出エジプト記
イスラエルの子等のエジプトに至りし者の名は左のごとし衆人各その家族をたづさへてヤコブとともに至れり
すなはちルベン、シメオン、レビ、ユダ、
イツサカル、ゼブルン、ベニヤミン、
ダン、ナフタリ、ガド、アセルなり
ヤコブの腰より出たる者は都合七十人ヨセフはすでにエジプトにありき
ヨセフとその諸の兄弟および當世の人みな死たり
イスラエルの子孫饒く子を生み彌増殖え甚だしく大に強くなりて國に滿るにいたれり
茲にヨセフの事をしらざる新き王エジプトに起りしが
彼その民にいひけるは視よ此民イスラエルの子孫われらよりも多く且強し
來れわれら機巧く彼等に事をなさん恐くは彼等多ならん又戰爭の起ることある時は彼等敵にくみして我等と戰ひ遂に國よりいでさらんと
すなはち督者をかれらの上に立て彼らに重荷をおはせて之を苦む彼等パロのために府庫の邑ピトムとラメセスを建たり
然るにイスラエルの子孫は苦むるに隨ひて増し殖たれば皆これを懼れたり
エジプト人イスラエルの子孫を嚴く動作かしめ
辛き力役をもて彼等をして苦みて生を度らしむ即ち和泥、作甎および田圃の諸の工にはたらかしめけるが其働かしめし工作は皆嚴かりき
エジプトの王又ヘブルの產婆シフラと名くる者とブワと名くる者の二人に諭して
いひけるは汝等ヘブルの婦女のために收生をなす時は床の上を見てその子若男子ならばこれを殺せ女子ならば生しおくべしと
然に產婆神を畏れエジプト王の命ぜしごとく爲ずして男子をも生しおけり
エジプト王產婆を召て之にいひけるは汝等なんぞ此事をなし男子を生しおくや
產婆パロに言けるはヘブルの婦はエジプトの婦のごとくならず彼等は健して產婆のかれらに至らぬ前に產をはるなりと
是によりて神その產婆等に恩をほどこしたまへり是において民増ゆきて甚だ強くなりぬ
產婆神を畏れたるによりて神かれらのために家を成たまへり
斯有しかばパロその凡の民に命じていふ男子の生るあらば汝等これを悉く河に投いれよ女子は皆生しおくべし
爰にレビの家の一箇の人往てレビの女を娶れり
女妊みて男子を生みその美きを見て三月のあひだこれを匿せしが
すでにこれを匿すあたはざるにいたりければ萑の箱舟を之がために取て之に瀝靑と樹脂を塗り子をその中に納てこれを河邊の葦の中に置り
その姉遥に立てその如何になるかを窺ふ
茲にパロの女身を洗んとて河にくだりその婢等河の傍にあゆむ彼葦の中に箱舟あるを見て使女をつかはしてこれを取きたらしめ
これを啓きてその子のをるを見る嬰兒すなはち啼く彼これを憐みていひけるは是はヘブル人の子なりと
時にその姉パロの女にいひけるは我ゆきてヘブルの女の中より此子をなんぢのために養ふべき乳母を呼きたらんか
パロの女往よと之にいひければ女子すなはち往てその子の母を呼きたる
パロの女かれにいひけるは此子をつれゆきて我ために之を養へ我その値をなんぢにとらせんと婦すなはちその子を取てこれを養ふ
斯てその子の長ずるにおよびて之をパロの女の所にたづさへゆきければすなはちこれが子となる彼その名をモーセ(援出)と名けて言ふ我これを水より援いだせしに因ると
茲にモーセ生長におよびて一時いでてその兄弟等の所にいたりその重荷を負ふを見しが會一箇のエジプト人が一箇のイスラエル人即ちおのれの兄弟を撃つを見たれば
右左を視まはして人のをらざるを見てそのエジプト人を撃ころし之を沙の中に埋め匿せり
次の日また出て二人のヘブル人の相爭ふを見たればその曲き者にむかひ汝なんぞ汝の隣人を撃つやといふに
彼いひけるは誰が汝を立てわれらの君とし判官としたるや汝かのエジプト人をころせしごとく我をも殺さんとするやと是においてモーセ懼れてその事かならず知れたるならんとおもへり
パロ此事を聞てモーセを殺さんともとめければモーセすなはちパロの面をさけて逃げのびミデアンの地に住り彼井の傍に坐せり
ミデアンの祭司に七人の女子ありしが彼等來りて水を汲み水鉢に盈て父の羊群に飮はんとしけるに
牧羊者等きたりて彼らを逐はらひければモーセ起あがりて彼等をたすけその羊群に飮ふ
彼等その父リウエルに至れる時父言けるは今日はなんぢら何ぞかく速にかへりしや
かれらいひけるは一箇のエジプト人我らを牧羊者等の手より救いだし亦われらのために水を多く汲て羊群に飮しめたり
父女等にいひけるは彼は何處にをるや汝等なんぞその人を遺てきたりしや彼をよびて物を食しめよと
モーセこの人とともに居ることを好めり彼すなはちその女子チツポラをモーセに與ふ
彼男子を生みければモーセその名をゲルシヨム(客)と名けて言ふ我異邦に客となりをればなりと
斯て時をふる程にジプトの王死りイスラエルの子孫その勞役の故によりて歎き號ぶにその勞役の故によりて號ぶところの聲神に達りければ
神その長呻を聞き神そのアブラハム、イサク、ヤコブになしたる契約を憶え
神イスラエルの子孫を眷み神知しめしたまへり
モーセその妻の父なるミデアンの祭司ヱテロの群を牧ひをりしがその群を曠野の奧にみちびきて神の山ホレブに至るに
ヱホバの使者棘の裏の火燄の中にて彼にあらはる彼見るに棘火に燃れどもその棘燬ず
モーセいひけるは我ゆきてこの大なる觀を見 何故に棘の燃たえざるかを見ん
ヱホバ彼がきたり觀んとするを見たまふ即ち神棘の中よりモーセよモーセよと彼をよびたまひければ我ここにありといふに
神いひたまひけるは此に近よるなかれ汝の足より履を脱ぐべし汝が立つ處は聖き地なればなり
又いひたまひけるは我はなんぢの父の神アブラハムの神イサクの神ヤコブの神なりとモーセ神を見ることを畏れてその面を蔽せり
ヱホバ言たまひけるは我まことにエジプトにをるわが民の苦患を觀また彼等がその驅使者の故をもて號ぶところの聲を聞り我かれらの憂苦を知るなり
われ降りてかれらをエジプト人の手より救ひいだし之を彼地より導きのぼりて善き廣き地乳と蜜との流るる地すなはちカナン人ヘテ人アモリ人ベリジ人ヒビ人ヱブス人のをる處に至らしめんとす
今イスラエルの子孫の號呼われに達る我またエジプト人が彼らを苦むるその暴虐を見たり
然ば來れ我なんぢをパロにつかはし汝をしてわが民イスラエルの子孫をエジプトより導きいださしめん
モーセ神にいひけるは我は如何なる者ぞや我豈パロの許に往きイスラエルの子孫をエジプトより導きいだすべき者ならんや
神いひたまひけるは我かならず汝とともにあるべし是はわが汝をつかはせる證據なり汝民をエジプトより導きいだしたる時汝等この山にて神に事へん
モーセ神にいひけるは我イスラエルの子孫の所にゆきて汝らの先祖等の神我を汝らに遣はしたまふと言んに彼等もし其名は何と我に言ば何とかれらに言べきや
神モーセにいひたまひけるは我は有て在る者なり又いひたまひけるは汝かくイスラエルの子孫にいふべし我有といふ者我を汝らに遣したまふと
神またモーセにいひたまひけるは汝かくイスラエルの子孫にいふべし汝らの先祖等の神アブラハムの神イサクの神ヤコブの神ヱホバわれを汝らにつかはしたまふと是は永遠にわが名となり世々にわが誌となるべし
汝往てイスラエルの長老等をあつめて之にいふべし汝らの先祖等の神アブラハム、イサク、ヤコブの神ヱホバ我にあらはれて言たまひけらく我誠になんぢらを眷み汝らがエジプトにて蒙るところの事を見たり
我すなはち言り我汝らをエジプトの苦患の中より導き出してカナン人ヘテ人アモリ人ペリジ人ヒビ人エブス人の地すなはち乳と蜜の流るる地にのぼり至らしめんと
彼等なんぢの言に聽したがふべし汝とイスラエルの長老等エジプトの王の許にいたりて之に言へヘブル人の神ヱホバ我らに臨めり然ば請ふわれらをして三日程ほど曠野に入しめわれらの神ヱホバに犠牲をささぐることを得せしめよと
我しるエジプトの王は假令能力ある手をくはふるも汝等の往をゆるさざるべし
我すなはちわが手を舒ベエジプトの中に諸の奇跡を行ひてエジプトを撃ん其後かれ汝等を去しむべし
我エジプト人をして此民をめぐましめん汝ら去る時手を空うして去るべからず
婦女皆その隣人とおのれの家に寓る者とに金の飾品銀の飾品および衣服を乞べし而して汝らこれを汝らの子女に穿戴せよ汝等かくエジプト人の物を取べし
モーセ對へていひけるは然ながら彼等我を信ぜず又わが言に聽したがはずして言んヱホバ汝にあらはれたまはずと
ヱホバかれにいひたまひけるは汝の手にある者は何なるや彼いふ杖なり
ヱホバいひたまひけるは其を地に擲よとすなはち之を地になぐるに蛇となりければモーセその前を避たり
ヱホバ、モーセにいひたまひけるは汝の手をのべて其尾を執れとすなはち手をのべて之を執ば手にいりて杖となる
ヱホバいひたまふ是は彼らの先祖等の神アブラハムの神イサクの神ヤコブの神ヱホバの汝にあらはれたることを彼らに信ぜしめんためなり
ヱホバまたかれに言たまひけるは汝の手を懐に納よとすなはち手を懐にいれて之を出し見るにその手癩病を生じて雪のごとくなれり
ヱホバまた言たまひけるは汝の手をふたたび懐にいれよと彼すなはちふたたび其手を懐にいれて之を懐より出し見るに變りて他處の肌膚のごとくになる
ヱホバいひたまふ彼等もし汝を信ぜずまたその最初の徴の聲に聽從はざるならば後の徴の聲を信ぜん
彼らもし是ふたつの徴をも信ぜすして汝の言に聽從はざるならば汝河の水をとりて之を陸地にそそげ汝が河より取たる水陸地にて血となるべし
モーセ、ヱホバにいひけるはわが主よ我は素言辭に敏き人にあらず汝が僕に語りたまへるに及びても猶しかり我は口重く舌重き者なり
ヱホバかれにいひたまひけるは人の口を造る者は誰なるや唖者聾者目明者瞽者などを造る者は誰なるや我ヱホバなるにあらずや
然ば往けよ我なんぢの口にありて汝の言ふべきことを敎へん
モーセいひけるはわが主よ願くは遣すべき者をつかはしたまへ
是においてヱホバ、モーセにむかひ怒を發していひたまひけるはレビ人アロンは汝の兄弟なるにあらずや我かれが言を善するを知るまた彼なんぢに遇んとていで來る彼汝を見る時心に喜ばん
汝かれに語りて言をその口に授くべし我なんぢの口と彼の口にありて汝らの爲べき事を敎へん
彼なんぢに代て民に語らん彼は汝の口に代らん汝は彼のために神に代るべし
なんぢこの杖を手に執り之をもて奇蹟をおこなふべし
是においてモーセゆきてその妻の父ヱテロの許にかへりて之にいふ請ふ我をして往てわがエジプトにある兄弟等の所にかへらしめ彼等のなほ生ながらへをるや否を見さしめよヱテロ、モーセに安然に往くべしといふ
爰にヱホバ、ミデアンにてモーセにいひたまひけるは往てエジプトにかへれ汝の生命をもとめし人は皆死たりと
モーセすなはちその妻と子等をとり之を驢馬に乗てエジプトの地にかへるモーセは神の杖を手に執り
ヱホバ、モーセにいひたまひけるは汝エジプトにかへりゆける時はかならず我がなんぢの手に授けたるところの奇跡を悉くパロのまへにおこなふべし但し我かれの心を剛愎にすれば彼民を去しめざるべし
汝パロに言べしヱホバかく言ふイスラエルはわが子わが冢子なり
我なんぢにいふ我が子を去らしめて我に事ふることをえせしめよ汝もし彼をさらしむることを拒ば我なんぢの子なんぢの冢子を殺すべしと
モーセ途にある時ヱホバかれの宿所にて彼に遇てころさんとしたまひければ
チツポラ利き石をとりてその男子の陽の皮を割りモーセの足下になげうちて言ふ汝はまことにわがためには血の夫なりと
是においてヱホバ、モーセをゆるしたまふ此時チツポラが血の夫といひしは割禮の故によりてなり
爰にヱホバ、アロンにいひたまひけるに曠野にゆきてモーセを迎へよと彼すなはちゆきて神の山にてモーセに遇ひ之に接吻す
モーセ、ヱホバがおのれに言ふくめて遣したまへる諸の言とヱホバのおのれに命じたまひし諸の奇跡とをアロンにつげたり
斯てモーセとアロン往てイスラエルの子孫の長老を盡く集む
而してアロン、ヱホバのモーセにかたりたまひし言を盡くつぐ又彼民の目のまへにて奇蹟をなしければ
民すなはち信ず彼等ヱホバがイスラエルの民をかへりみその苦患をおもひたまふを聞て身をかがめて拝をなせり
その後モーセとアロン入てパロにいふイスラエルの神ヱホバ斯いひたまふ我民を去しめ彼等をして曠野に於て我を祭ることをえせしめよと
パロいひけるはヱホバは誰なればか我その聲にしたがひてイスラエルを去しむべき我ヱホバを識ず亦イスラエルを去しめじ
彼ら言けるはヘブル人の神我らに顯れたまへり請ふ我等をして三日程ほど曠野にいりてわれらの神ヱホバに犠牲をささぐることをえせしめよ恐くはヱホバ疫病か又は刀兵をもて我らをなやましたまはん
エジプト王かれらに言けるは汝等モーセ、アロンなんぞ民の操作を妨ぐるや往てなんぢらの荷を負へ
パロまたいふ土民今は多かり然るに汝等かれらをして荷をおふことを止しめんとす
パロ此日民が驅使ふ者等および民の有司等に命じていふ
汝等再び前のごとく民に磚瓦を造る禾稈を與ふべからず彼等をして往てみづから禾稈をあつめしめよ
また彼等が前に造りし磚瓦の數のごとくに仍かれらに之をつくらしめよ其を減すなかれ彼等は懈惰が故に我儕をして往てわれらの神に犠牲をささげしめよと呼はり言ふなり
人々の工作を重くして之に勞かしめよ然ば偽の言を聽ことあらじと
民を驅使ふ者等およびその有司等出ゆきて民にいひけるはパロかく言たまふ我なんぢらに禾稈をあたへじ
汝等往て禾稈のある處にて之をとれ但しなんぢらの工作は分毫も減さざるべしと
是において民遍くエジプトの地に散て草藁をあつめて禾稈となす
驅使者かれらを促たてて言ふ禾稈のありし時のごとく汝らの工作汝らの日々の業をなしをふべしと
パロの驅使者等がイスラエルの子孫の上に立たるところの有司等撻れなんぢら何ぞ昨日も今日も磚瓦を作るところの汝らの業を前のごとくに爲しをへざるやと言る
是に於てイスラエルの子孫の有司等來りてパロに呼はりて言ふ汝なんぞ斯僕等になすや
僕等に禾稈を與へずしてわれらに磚瓦を作れといふ視よ僕等は撻る是なんぢの民の過なりと
然るにパロいふ汝等は懶惰し懶惰し故に汝らは我らをして往てヱホバに犠牲をささげしめよと言ふなり
然ば汝ら往て操作けよ禾稈はなんぢらに與ふることなかるべけれどなんぢら尚數のごとくに磚瓦を交納むべしと
イスラエルの子孫の有司等汝等その日々につくる磚瓦を減すべからずと言るを聞て災害の身におよぶを知り
彼らパロをはなれて出たる時モーセとアロンの對面にたてるを見たれば
之にいひけるは願くはヱホバ汝等を鑒みて鞫きたまへ汝等はわれらの臭をパロの目と彼の僕の目に忌嫌はれしめ刀を彼等の手にわたして我等を殺さしめんとするなりと
モーセ、ヱホバに返りて言ふわが主よ何て此民をあしくしたまふや何のために我をつかはしたまひしや
わがパロの許に來りて汝の名をもて語りしよりして彼この民をあしくす汝また絶てなんぢの民をすくひたまはざるなり
ヱホバ、モーセに言たまひけるは今汝わがパロに爲んところの事を見るべし能ある手の加はるによりてパロ彼らをさらしめん能ある手の加はるによりてパロ彼らを其國より逐いだすべし
神モーセに語りて之にいひたまひけるは我はヱホバなり
我全能の神といひてアブラハム、イサク、ヤコブに顯れたり然ど我名のヱホバの事は彼等しらざりき
我また彼らとわが契約を立て彼等が旅して寄居たる國カナンの地をかれらに與ふ
我またエジプト人が奴隸となせるイスラエルの子孫の呻吟た聞き且我が契約を憶ひ出づ
故にイスラエルの子孫に言へ我はヱホバなり我汝らをエジプト人の重負の下より携出し其使役をまぬかれしめ又腕をのべ大なる罰をほどこして汝等を贖はん
我汝等を取て吾民となし汝等の神となるべし汝等はわがエジプト人の重擔の下より汝らを携出したるなんぢらの神ヱホバなることを知ん
我わが手をあげてアブラハム、イサク、ヤコブに與へんと誓ひし地に汝等を導きいたり之を汝等に與へて產業となさしめん我はヱホバなり
モーセかくイスラエルの子孫に語けれども彼等は心の傷ると役事の苦きとの爲にモーセに聽ざりき
ヱホバ、モーセに告ていひたまひけるは
入てエジプトの王パロに語りイスラエルの子孫をその國より去しめよ
モーセ、ヱホバの前に申していふイスラエルの子孫旣に我に聽ず我は口に割禮をうけざる者なればパロいかで我にきかんや
ヱホバ、モーセとアロンに語り彼等に命じてイスラエルの子孫とエジプトの王パロの所に往しめイスラエルの子孫をエジプトの地より導きいださしめたまふ
かれらの父の家々の長は左のごとしイスラエルの冢子ルベンの子ヘノク、バル、ヘヅロン、カルミ是等はルベンの家族なり
シメオンの子ヱムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ゾハルおよびカナンの女の生しシヤウル是らはシメオンの家族なり
レビの子の名はその世代にしたがひて言ば左のごとしゲルシヨン、コハテ、メラリ是なりレビの齢の年は百三十七年なりき
ゲルシヨンの子はその家族にしたがひて言ばリブニおよびシメイなり
コハテの子はアムラム、イヅハル、ヘブロン、ウジエルなりコハテの齢の年は百三十三年なりき
メラリの子はマヘリおよびムシなり是等はレビの家族にしてその世代にしたがひて言るものなり
アムラム其伯母ヨケベデを妻にめとれり彼アロンとモーセを生むアムラムの齢の年は百三十七年なりき
イヅハルの子はコラ、ネベグ、ジクリなり
ウジエルの子はミサエル、エルザバン、シテリなり
アロン、ナシヨンの姉アミナダブの女エリセバを妻にめとれり彼ナダブ、アビウ、エレアザル、イタマルを生む
コラの子はアツシル、エルカナ、アビアサフ是等はコラ人の族なり
アロンの子エレアザル、ブテエルの女の中より妻をめとれり彼ピネハスを生む是等はレビ人の父の家々の長にしてその家族に循ひて言る者なり
ヱホバがイスラエルの子孫を其軍隊にしたがひてエジプトの地より導きいだせよといひたまひしは此アロンとモーセなり
彼等はイスラエルの子孫をエジプトより導きいださんとしてエジプトの王パロに語りし者にして即ち此モーセとアロンなり
ヱホバ、エジプトの地にてモーセに語りたまへる日に
ヱホバ、モーセに語りて言たまひけるは我はヱホバなり汝わが汝にいふ所を悉皆くエジプトの王パロに語るべし
モーセ、ヱホバの前に言けるは我は口に割禮を受ざる者なればパロいかで我に聽んや
ヱホバ、モーセに言たまひけるは視よ我汝をしてパロにおけること神のごとくならしむ汝の兄弟アロンは汝の預言者となるべし
汝はわが汝に命ずる所を盡く宣べし汝の兄弟アロンはパロに告ることを爲べし彼イスラエルの子孫をその國より出すに至らん
我パロの心を剛愎にして吾徴と奇跡をエジプトの國に多くせん
然どパロ汝に聽ざるべし我すなはち吾手をエジプトに加へ大なる罰をほどこして吾軍隊わが民イスラエルの子孫をエジプトの國より出さん
我わが手をエジプトの上に伸てイスラエルの子孫をエジプト人の中より出す時には彼等我のヱホバなるを知ん
モーセとアロン斯おこなひヱホバの命じたまへる如くに然なしぬ
そのパロと談論ける時モーセは八十歳アロンは八十三歳なりき
ヱホバ、モーセとアロンに告て言たまひけるは
パロ汝等に語りて汝ら自ら奇蹟を行へと言時には汝アロンに言べし汝の杖をとりてパロの前に擲てよと其は蛇とならん
是に於てモーセとアロンはパロの許にいたりヱホバの命じたまひしごとくに行へり即ちアロンその杖をパロとその臣下の前に擲しに蛇となりぬ
斯在しかばパロもまた博士と魔術士を召よせたるにエジプトの法術士等もその秘術をもてかくおこなへり
即ち彼ら各人その杖を投たれば蛇となりけるがアロンの杖かれらの杖を呑つくせり
然るにパロの心剛愎になりて彼らに聽ことをせざりきヱホバの言たまひし如し
ヱホバ、モーセに言たまひけるはパロは心頑にして民を去しむることを拒むなり
朝におよびて汝パロの許にいたれ視よ彼は水に臨む汝河の邊にたちて彼を逆ふべし汝かの蛇に化し杖を手にとりて居り
彼に言ふべしヘブル人の神ヱホバ我を汝につかはして言しむ吾民を去しめて曠野にて我に事ふることを得せしめよ視よ今まで汝は聽入ざりしなり
ヱホバかく言ふ汝これによりて我がヱホバなるを知ん視よ我わが手の杖をもて河の水を撃ん是血に變ずべし
而して河の魚は死に河は臭くならんエジプト人は河の水を飮ことを厭ふにいたるべし
ヱホバまたモーセに言たまはく汝アロンに言へ汝の杖をとりて汝の手をエジプトの上に伸べ流水の上河々の上池塘の上一切の湖水の上に伸て血とならしめよエジプト全國に於て木石の器の中に凡て血あるにいたらん
モーセ、アロンすなはちヱホバの命じたまへるごとくに爲り即ち彼パロとその臣下の前にて杖をあげて河の水を撃しに河の水みな血に變じたり
是において河の魚死て河臭くなりエジプト人河の水を飮ことを得ざりき斯エジプト全國に血ありき
エジプトの法術士等もその秘術をもて斯のごとく行へりパロは心頑固にして彼等に聽ことをせざりきヱホバの言たまひし如し
パロすなはち身をめぐらしてその家に入り此事にも心をとめざりき
エジプト人河の水を飮ことを得ざりしかば皆飮水を得んとて河のまはりを掘たりヱホバ河を撃たまひてより後七日たちぬ
ヱホバ、モーセに言たまひけるは汝パロに詣りて彼に言へヱホバかく言たまふ吾民を去しめて我に事ふることを得せしめよ
汝もし去しむることを拒まば我蛙をもて汝の四方の境を惱さん
河に蛙むらがり上りきたりて汝の家にいり汝の寝室にいり汝の牀にのぼり汝の臣下の家にいり汝の民の所にいたり汝の竃におよび汝の搓鉢にいらん
蛙なんぢの身にのぼり汝の民と汝の臣下の上にのぼるべし
ヱホバ、モーセに言たまはく汝アロンに言へ汝杖をとりて手を流水の上に伸べ河々の上と池塘の上に伸て蛙をエジプトの地に上らしめよ
アロン手をエジプトの水のうへに伸たれば蛙のぼりきたりてエジプトの地を蔽ふ
法術士等もその秘術をもて斯おこなひ蛙をエジプトの地に上らしめたり
パロ、モーセとアロンを召て言けるはヱホバに願ひてこの蛙を我とわが民の所より取さらしめよ我この民を去しめてヱホバに犠牲をささぐることを得せしめん
モーセ、パロに言けるは我なんぢと汝の臣下と汝の民のために願ひて何時此蛙を汝と汝の家より絶さりて河にのみ止らしむべきや我に示せと
彼明日といひければモーセ言ふ汝の言のごとくに爲し汝をして我らの神ヱホバのごとき者なきことを知しめん
蛙汝と汝の家を離れ汝の臣下と汝の民を離れて河にのみ止るべしと
モーセとアロンすなはちパロを離れて出でモーセそのパロに至らしめたまひし蛙のためにヱホバに呼はりしに
ヱホバ、モーセの言のごとくなしたまひて蛙家より村より田野より死亡たり
茲にこれを攢むるに山をなし地臭くなりぬ
然るにパロは嘘氣時あるを見てその心を頑固にして彼等に聽ことをせざりきヱホバの言たまひし如し
ヱホバ、モーセに言たまひけるは汝アロンに言へ汝の杖を伸べ地の塵を打てエジプト全國に蚤とならしめよと
彼等斯なせり即ちアロン杖をとりて手を伸べ地の塵を撃けるに蚤となりて人と畜につけりエジプト全國において地の塵みな蚤となりぬ
法術士等その秘術をもて斯おこなひて蚤を出さんとしたりしが能はざりき蚤は人と畜に著く
是において法術士等パロに言ふ是は神の指なりと然るにパロは心剛愎にして彼等に聽ざりきヱホバの言たまひし如し
ヱホバ、モーセに言たまはく汝朝早く起てパロの前に立て視よ彼は水に臨む汝彼に言へヱホバかく言たまふわが民を去しめて我に事ふることを得せしめよ
汝もしわが民を去しめずば視よ我汝と汝の臣下と汝の民と汝の家とに蚋をおくらんエジプト人の家々には蚋充べし彼らの居るところの地も然らん
その日に我わが民の居るゴセンの地を區別おきて其處に蚋あらしめじ是地の中にありて我のヱホバなることを汝が知んためなり
我わが民と汝の民の間に區別をたてん明日この徴あるべし
ヱホバかく爲たまひたれば蚋おびただしく出來りてパロの家にいりその臣下の家にいりエジプト全國にたり蚋のために地害はる
是においてパロ、モーセとアロンを召ていひけるは汝等往て國の中にて汝らの神に犠牲を献げよ
モーセ言ふ然するは宜からず我等はエジプト人の崇拝む者を犠牲としてわれらの神ヱホバに献ぐべければなり我等もしエジプト人の崇拝む者をその目の前にて犠牲に献げなば彼等石にて我等を撃ざらんや
我等は三日路ほど曠野にいりて我らの神ヱホバに犠牲を献げその命じたまひしごとくせんとす
パロ言けるは我汝らを去しめて汝らの神ヱホバに曠野にて犠牲を献ぐることを得せしめん但餘に遠くは行べからず我ために祈れよ
モーセ言けるは視よ我汝をはなれて出づ我ヱホバに祈ん明日蚋パロとその臣下とその民を離れん第パロ再び偽をおこなひ民を去しめてヱホバに犠牲をささぐるを得せしめざるが如きことを爲ざれ
かくてモーセ、パロをはなれて出でヱホバに祈りたれば
ヱホバ、モーセの言のごとく爲したまへり即ちその蚋をパロとその臣下とその民よりはなれしめたまふ一ものこらざりき
然るにパロ此時にもまたその心を頑固にして民を去しめざりき
爰にヱホバ、モーセにいひたまひけるはパロの所にいりてかれに告よヘブル人の神ヱホバ斯いひたまふ吾民を去しめて我につかふることをえせしめよ
汝もし彼等をさらしむることを拒みて尚かれらを拘留へなば
ヱホバの手野にをる汝の家畜馬驢馬駱駝牛および羊に加はらん即ち甚だ惡き疾あるべし
ヱホバ、イスラエルの家畜とエジプトの家畜とを別ちたまはんイスラエルの子孫に屬する者は死る者あらざるべしと
ヱホバまた期をさだめて言たまふ明日ヱホバこの事を國になさんと
明日ヱホバこの事をなしたまひければエジプトの家畜みな死り然どイスラエルの子孫の家畜は一も死ざりき
パロ人をつかはして見さしめたるにイスラエルの家畜は一頭だにも死ざりき然どもパロは心剛愎にして民をさらしめざりき
またヱホバ、モーセとアロンにいひたまひけるは汝等竃爐の灰を一握とれ而してモーセ、パロの目の前にて天にむかひて之をまきちらすべし
其灰エジプト全國に塵となりてエジプト全國の人と畜獣につき膿をもちて脹るる腫物とならんと
彼等すなはち竃爐の灰をとりてパロの前に立ちモーセ天にむかひて之をまきちらしければ人と獣畜につき膿をもちて脹るる腫物となれり
法術士等はその腫物のためにモーセの前に立つことを得ざりき腫物は法術士等よりして諸のエジプト人にまで生じたり
然どヱホバ、パロの心を剛愎にしたまひたれば彼らに聽ざりきヱホバのモーセに言給ひし如し
爰にヱホバ、モーセにいひたまひけるは朝早くおきてパロの前にたちて彼に言へヘブル人の神ヱホバ斯いひたまふ吾民を去しめて我に事ふるをえせしめよ
我此度わが諸の災害を汝の心となんぢの臣下およびなんぢの民に降し全地に我ごとき者なきことを汝に知しめん
我もしわが手を伸べ疫病をもて汝となんぢの民を撃たらば汝は地より絶れしならん
抑わが汝をたてたるは即ちなんぢをしてわが權能を見さしめわが名を全地に傳へんためなり
汝なほ吾民の前に立ふさがりて之を去しめざるや
視よ明日の今頃我はなはだ大なる雹を降すべし是はエジプトの開國より今までに嘗てあらざりし者なり
然ば人をやりて汝の家畜および凡て汝が野に有る物を集めよ人も獣畜も凡て野にありて家に歸らざる者は雹その上にふりくだりて死るにたらん
パロの臣下の中ヱホバの言を畏る者はその僕と家畜を家に逃いらしめしが
ヱホバの言を意にとめざる者はその僕と家畜を野に置り
ヱホバ、モーセにいひたまひけるは汝の手を天に舒てエジプト全國に雹あらしめエジプトの國中の人と獣畜と田圃の諸の蔬にふりくだらしめよと
モーセ天にむかひて杖を舒たればヱホバ雷と雹を遣りたまふ又火いでて地に馳すヱホバ雹をエジプトの地に降せたまふ
斯雹ふり又火の塊雹に雑りて降る甚だ勵しエジプト全國には其國を成てよりこのかた未だ斯る者あらざりしなり
雹エジプト全國に於て人と獣畜とをいはず凡て田圃にをる者を撃り雹また田圃の諸の蔬を撃ち野の諸の樹を折り
唯イスラエルの子孫のをるゴセンの地には雹あらざりき
是に於てパロ人をつかはしてモーセとアロンを召てこれに言けるは我此度罪ををかしたりヱホバは義く我とわが民は惡し
ヱホバに願ひてこの神鳴と雹を最早これにて足しめよ我なんぢらを去しめん汝等今は留るにおよばず
モーセかれに曰けるは我邑より出て我手をヱホバに舒ひろげん然ば雷やみて雹かさねてあらざるべし斯して地はヱホバの所屬なるを汝にしらしめん
然ど我しる汝となんぢの臣下等はなほヱホバ神を畏れざるならんと
偖麻と大麥は撃れたり大麥は穂いで麻は花さきゐたればなり
然ど小麥と裸麥は未だ長ざりしによりて撃れざりき
モーセ、パロをはなれて邑より出でヱホバにむかひて手をのべひろげたれば雷と雹やみて雨地にふらずなりぬ
然るにパロ雨と雹と雷鳴のやみたるを見て復も罪を犯し其心を剛硬にす彼もその臣下も然り
即ちパロは心剛愎にしてイスラエルの子孫を去しめざりきヱホバのモーセによりて言たまひしごとし
爰にヱホバ、モーセにいひたまひけるはパロの所に入れ我かれの心とその臣下の心を剛硬にせり是はわが此等の徴を彼等の中に示さんため
又なんぢをして吾がエジプトにて行ひし事等すなはち吾がエジプトの中にてなしたる徴をなんぢの子となんぢの子の子の耳に語らしめんためなり斯して汝等わがヱホバなるを知べし
モーセとアロン、パロの所にいりて彼にいひけるはヘブル人の神ヱホバかく言たまふ何時まで汝は我に降ることを拒むや我民をさらしめて我に事ふることをえせしめよ
汝もしわが民を去しむることを拒まば明日我蝗をなんぢの境に入しめん
蝗地の面を蔽て人地を見るあたはざるべし蝗かの免かれてなんぢに遺れる者すなはち雹に打のこされたる者を食ひ野に汝らのために生る諸の樹をくらはん
又なんぢの家となんぢの臣下の家々および凡のエジプト人の家に滿べし是はなんぢの父となんぢの父の父が世にいでしより今日にいたるまで未だ嘗て見ざるものなりと斯て彼身をめぐらしてパロの所よりいでたり
時にパロの臣下パロにいひけるは何時まで此人われらの羂となるや人々を去しめてその神ヱホバに事ふることをえせしめよ汝なほエジプトの滅ぶるを知ざるやと
是をもてモーセとアロンふたたび召れてパロの許にいたるにパロかれらにいふ往てなんぢらの神ヱホバに事よ但し往く者は誰と誰なるや
モーセいひけるは我等は幼者をも老者をも子息をも息女をも挈へて往き羊をも牛をもたづさへて往くべし其は我らヱホバの祭禮をなさんとすればなり
パロかれらにいひけるは我汝等となんぢらの子等を去しむる時はヱホバなんぢらと偕に在れ愼めよ惡き事なんぢらの面のまへにあり
そは宜からず汝ら男子のみ往てヱホバに事よ是なんぢらが求むるところなりと彼等つひにパロの前より逐いださる
爰にヱホバ、モーセにいひたまひけるは汝の手をエジプトの地のうへに舒て蝗をエジプトの國にのぞませて彼の雹が打殘したる地の諸の蔬を悉く食しめよ
モーセすなはちエジプトの地の上に其杖をのべければヱホバ東風をおこしてその一日一夜地にふかしめたまひしが東風朝におよびて蝗を吹きたりて
蝗エジプト全國にのぞみエジプトの四方の境に居て害をなすこと太甚し是より先には斯のごとき蝗なかりし是より後にもあらざるべし
蝗全國の上を蔽ひければ國暗くなりぬ而して蝗地の諸の蔬および雹の打殘せし樹の菓を食ひたればエジプト全國に於て樹にも田圃の蔬にも靑き者とてはのこらざりき
是をもてパロ急ぎモーセとアロンを召て言ふ 我なんちらの神ヱホバと汝等とにむかひて罪ををかせり
然ば請ふ今一次のみ吾罪を宥してなんぢらの神ヱホバに願ひ唯此死を我より取はなさしめよと
彼すなはちパロの所より出てヱホバにねがひければ
ヱホバはなはだ強き西風を吹めぐらせて蝗を吹はらはしめ之を紅海に驅いれたまひてエジプトの四方の境に蝗ひとつも遺らざるにいたれり
然れどもヱホバ、パロの心を剛愎にしたまひたればイスラエルの子孫をさらしめざりき
ヱホバまたモーセにいひたまひけるは天にむかひて汝の手を舒べエジプトの國に黑暗を起すべし其暗黑は摸るべきなりと
モーセすなはち天にむかひて手を舒ければ稠密黑暗三日のあひだエジプト全國にありて
三日の間は人々たがひに相見るあたはず又おのれの處より起ものなかりき然どイスラエルの子孫の居處には皆光ありき
是に於てパロ、モーセを呼ていひけるは汝等ゆきてヱホバに事よ唯なんぢらの羊と牛を留めおくべし汝らの子女も亦なんぢらとともに往べし
モーセいひけるは汝また我等の神ヱホバに献ぐべき犠牲と燔祭の物をも我儕に與ふべきなり
われらの家畜もわれらとともに往べし一蹄も後にのこすべからず其は我等その中を取てわれらの神ヱホバに事べきが故なりまたわれら彼處にいたるまでは何をもてヱホバに事ふべきかを知ざればなりと
然れどもヱホバ、パロの心を剛愎にしたまひたればパロかれらをさらしむることを肯ぜざりき
すなはちパロ、モーセに言ふ我をはなれて去よ自ら愼め重てわが面を見るなかれ汝わが面を見る日には死べし
モーセいひけるは汝の言ふところは善し我重て復なんぢの面を見ざるべし
ヱホバ、モーセにいひたまひけるは我今一箇の災をパロおよびエジプトに降さん然後かれ汝等を此處より去しむべし彼なんぢらを全く去しむるには必ず汝らを此より逐はらはん
然ば汝民の耳にかたり男女をしておのおのその隣々に銀の飾品金の飾具を乞しめよと
ヱホバつひに民をしてエジプト人の恩を蒙らしめたまふ又その人モーセはエジプトの國にてパロの臣下の目と民の目に甚だ大なる者と見えたり
モーセいひけるはヱホバかく言たまふ夜半頃われ出てエジプトの中に至らん
エジプトの國の中の長子たる者は位に坐するパロの長子より磨の後にをる婢の長子まで悉く死べし又獣畜の首出もしかり
而してエジプト全國に大なる號哭あるべし是まで是のごとき事はあらずまた再び斯ること有ざるべし
然どイスラエルの子孫にむかひては犬もその舌をうごかさじ人にむかひても獣畜にむかひても然り汝等これによりてヱホバがエジプト人とイスラエルのあひだに區別をなしたまふを知べし
汝の此臣等みなわが許に下り來てわれを拝し汝となんぢに從がふ民みな出よと言ん然る後われ出べしと烈しく怒りてパロの所より出たり
ヱホバ、モーセにいひたまひけるはパロ汝に聽ざるべし是をもて吾がエジプトの國に奇蹟をおこなふこと増べし
モーセとアロンこの諸の奇蹟をことごとくパロの前に行ひたれどもヱホバ、パロの心を剛愎にしたまひければ彼イスラエルの子孫をその國より去しめざりき
ヱホバ、エジプトの國にてモーセとアロンに告ていひたまひけるは
此月を汝らの月の首となせ汝ら是を年の正月となすべし
汝等イスラエルの全會衆に告て言べし此月の十日に家の父たる者おのおの羔羊を取べし即ち家ごとに一箇の羔羊を取べし
もし家族少くして其羔羊を盡すことあたはずばその家の隣なる人とともに人の數にしたがひて之を取べし各人の食ふ所にしたがひて汝等羔羊を計るべし
汝らの羔羊は疵なき當歳の牡なるべし汝等綿羊あるひは山羊の中よりこれを取べし
而して此月の十四日まで之を守りおきイスラエルの會衆みな薄暮に之を屠り
その血をとりて其之を食ふ家の門口の兩旁の橒と鴨居に塗べし
而して此夜その肉を火に炙て食ひ又酵いれぬパンに苦菜をそへて食ふべし
其を生にても水に煮ても食ふなかれ火に炙べし其頭と脛と臓腑とを皆くらへ
其を明朝まで殘しおくなかれ其明朝まで殘れる者は火にて燒つくすべし
なんぢら斯之を食ふべし即ち腰をひきからげ足に鞋を穿き手に杖をとりて急て之を食ふべし是ヱホバの逾越節なり
是夜われエジプトの國を巡りて人と畜とを論ずエジプトの國の中の長子たる者を盡く撃殺し又エジプトの諸の神に罰をかうむらせん我はヱホバなり
その血なんぢらが居るところの家にありて汝等のために記號とならん我血を見る時なんぢらを逾越すべし又わがエジプトの國を撃つ時災なんぢらに降りて滅ぼすことなかるべし
汝ら是日を記念えてヱホバの節期となし世々これを祝ふべし汝等之を常例となして祝ふべし
七日の間酵いれぬパンを食ふべしその首の日にパン酵を汝等の家より除け凡て首の日より七日までに酵入たるパンを食ふ人はイスラエルより絶るべきなり
且首の日に聖會をひらくべし又第七日に聖會を汝らの中に開け是ふたつの日には何の業をもなすべからず只各人の食ふ者のみ汝等作ることを得べし
汝ら酵いれぬパンの節期を守るべし其は此日に我なんぢらの軍隊をエジプトの國より導きいだせばなり故に汝ら常例となして世々是日をまもるべし
正月に於てその月の十四日の晩より同月の二十一日の晩まで汝ら酵いれぬパンを食へ
七日の間なんぢらの家にパン酵をおくべからず凡て酵いれたる物を食ふ人は其異邦人たると本國に生れし者たるとを問ず皆イスラエルの聖會より絶るべし
汝ら酵いれたる物は何をも食ふべからず凡て汝らの居處に於ては酵いれぬパンを食ふべし
是に於てモーセ、イスラエルの長老を盡くまねきて之にいふ汝等その家族に循ひて一頭の羔羊を撿み取り之を屠りて逾越節のために備へよ
又牛膝草一束を取て盂の血に濡し盂の血を門口の鴨居および二旁の柱にそそぐべし明朝にいたるまで汝等一人も家の戸をいづるなかれ
其はヱホバ、エジプトを撃に巡りたまふ時鴨居と兩旁の柱に血のあるを見ばヱキバ其門を逾越し殺滅者をして汝等の家に入て撃ざらしめたまふべければなり
汝ら是事を例となして汝となんぢの子孫永くこれを守るべし
汝等ヱホバがその言たまひし如くになんぢらに與へたまはんところの地に至る時はこの禮式をまもるべし
若なんぢらの子女この禮式は何の意なるやと汝らに問ば
汝ら言ふべし是はヱホバの逾越節の祭祀なりヱホバ、エジプト人を撃たまひし時エジプトにをるイスラエルの子孫の家を逾越てわれらの家を救ひたまへりと民すなはち鞠て拝せり
イスラエルの子孫去てヱホバのモーセとアロンに命じたまひしごとくなし斯おこなへり
爰にヱホバ夜半にエジプトの國の中の長子たる者を位に坐するパロの長子より牢獄にある俘虜の長子まで盡く撃たまふ亦家畜の首生もしかり
期有しかばパロとその諸の臣下およびエジプト人みな夜の中に起あがりエジプトに大なる號哭ありき死人あらざる家なかりければなり
パロすなはち夜の中にモーセとアロンを召ていひけるは汝らとイスラエルの子孫起てわが民の中より出さり汝らがいへる如くに往てヱホバに事へよ
亦なんぢらが言るごとく汝らの羊と牛をひきて去れ汝らまた我を祝せよと
是においてエジプト人我等みな死ると言て民を催逼て速かに國を去しめんとせしかば
民捏粉の未だ酵いれざるを執り捏盤を衣服に包みて肩に負ふ
而してイスラエルの子孫モーセの言のごとく爲しエジプト人に銀の飾物、金の飾物および衣服を乞たるに
ヱホバ、エジプト人をして民をめぐましめ彼等にこれを與へしめたまふ斯かれらエジプト人の物を取り
斯てイスラエルの子孫ラメセスよりスコテに進みしが子女の外に徒にて歩める男六十萬人ありき
又衆多の寄集人および羊牛等はなはだ多の家畜彼等とともに上れり
爰に彼等エジプトより携へいでたる捏粉をもて酵いれぬパンを烘り未だ酵をいれざりければなり是かれらエジプトより逐いだされて濡滞るを得ざりしに由り又何の食糧をも備へざりしに因る
偖イスラエルの子孫のエジプトに住居しその住居の間は四百三十年なりき
四百三十年の終にいたり即ち其日にヱホバの軍隊みなエジプトの國より出たり
是はヱホバが彼等をエジプトの國より導きいだしたまひし事のためにヱホバの前に守るべき夜なり是はヱホバの夜にしてイスラエルの子孫が皆世々まもるべき者なり
ヱホバ、モーセとアロンに言たまひけるは逾越節の例は是のごとし異邦人はこれを食ふべからず
但し各人の金にて買たる僕は割禮を施して然る後是を食しむべし
外國の客および傭人は之を食ふべからず
一の家にてこれを食ふべしその肉を少も家の外に持いづるなかれ又其骨を折べからず
イスラエルの會衆みな之を守るべし
異邦人なんぢとともに寄居てヱホバの逾越節を守らんとせば其男悉く割禮を受て然る後に近りて守るべし即ち彼は國に生れたる者のごとくなるべし割禮をうけざる人はこれを食ふべからざるなり
國に生れたる者にもまた汝らの中に寄居る異邦人にも此法は同一なり
イスラエルの子孫みな斯おこなひヱホバのモーセとアロンに命じたまひしごとく爲たり
その同じ日にヱホバ、イスラエルの子孫をその軍隊にしたがひてエジプトの國より導きいだしたまへり
爰にヱホバ、モーセに告ていひたまひけるは
人と畜とを論ず凡てイスラエルの子孫の中の始て生れたる首生をば皆聖別て我に歸せしむべし是わが所屬なればなり
モーセ民にいひけるは汝等エジプトを出で奴隸たる家を出るこの日を誌えよヱホバ能ある手をもて汝等を此より導きいだしたまへばなり酵いれたるパンを食ふべからず
アビブの月の此日なんぢら出づ
ヱホバ汝を導きてカナン人ヘテ人アモリ人ヒビ人エブス人の地すなはちその汝にあたへんと汝の先祖たちに誓ひたまひし彼乳と蜜の流るる地に至らしめたまはん時なんぢ此月に是禮式を守るべし
七日の間なんぢ酵いれぬパンを食ひ第七日にヱホバの節筵をなすべし
酵いれぬパンを七日くらふべし酵いれたるパンを汝の所におくなかれ又汝の境の中にて汝の許にパン酵をおくなかれ
汝その日に汝の子に示して言べし是は吾がエジプトより出る時にヱホバの我に爲したまひし事のためなりと
斯是をなんぢの手におきて記號となし汝の目の間におきて記號となしてヱホバの法律を汝の口に在しむべし其はヱホバ能ある手をもて汝をエジプトより導きいだしたまへばなり
是故に年々その期にいたりてこの例をまもるべし
ヱホバ汝となんぢの先祖等に誓ひたまひしごとく汝をカナン人の地にみちびきて之を汝に與へたまはん時
汝凡て始て生れたる者及び汝の有る畜の初生を悉く分ちてヱホバに歸せしむべし男牡はヱホバの所屬なるべし
又驢馬の初子は皆羔羊をもて贖ふべしもし贖はずばその頸を折るべし汝の子等の中の長子なる人はみな贖ふべし
後に汝の子汝に問て是は何なると言ばこれに言べしヱホバ能ある手をもて我等をエジプトより出し奴隸たりし家より出したまへり
當時パロ剛愎にして我等を去しめざりしかばヱホバ、エジプトの國の中の長子たる者を人の長子より畜の初生まで盡く殺したまへり是故に始めて生れし牡を盡くヱホバに犠牲に献ぐ但しわが子等の中の長子は之を贖ふなり
是をなんぢの手におきて號となし汝の目の間におきて誌となすべしヱホバ能ある手をもて我等をエジプトより導きいだしたまひたればなりと
偖パロ民をさらしめし時ペリシテ人の地は近かりけれども神彼等をみちびきて其地を通りたまはざりき其は民戰爭を見ば悔てエジプトに歸るならんと神おもひたまひたればなり
神紅海の曠野の道より民を導きたまふイスラエルの子孫行伍をたててエジプトの國より出づ
其時モーセはヨセフの骨を携ふ是はヨセフ神かならず汝らを眷みたまふべければ汝らわが骨を此より携へ出づべしといひてイスラエルの子孫を固く誓せたればなり
斯てかれらスコテより進みて曠野の端なるエタム比幕張す
ヱホバかれらの前に往たまひ晝は雲の柱をもてかれらを導き夜は火の柱をもて彼らを照して晝夜往すすましめたまふ
民の前に晝は雲の柱を除きたまはず夜は火の柱をのぞきたまはず
茲にヱホバ、モーセに告ていひ給ひけるは
イスラエルの子孫に言て轉回てミグドルと海の間なるピハヒロテの前にあたりてバアルゼポンの前に幕を張しめよ其にむかひて海の傍に幕を張るべし
パロ、イスラエルの子孫の事をかたりて彼等はその地に迷ひをりて曠野に閉こめられたるならんといふべければなり
我パロの心を剛愎にすべければパロ彼等の後を追はん我パロとその凡の軍勢に由て譽を得エジプト人をして吾ヱホバなるを知しめんと彼等すなはち斯なせり
茲に民の逃さりたることエジプト王に聞えければパロとその臣下等民の事につきて心を變じて言ふ我等何て斯イスラエルを去しめて我に事ざらしむるがごとき事をなしたるやと
パロすなはちその車を備へ民を將て己にしたがはしめ
撰抜の戰車六百兩にエジプトの諸の戰車および其の諸の軍長等を率ゐたり
ヱホバ、エジプト王パロの心を剛愎にしたまひたれば彼イスラエルの子孫の後を追ふイスラエルの子孫は高らかなる手によりて出しなり
エジプト人等パロの馬、車およびその騎兵と軍勢彼等の後を追てそのバアルゼポンの前なるピハヒロテの邊にて海の傍に幕を張るに追つけり
パロの近よりし時イスラエルの子孫目をあげて視しにエジプト人己の後に進み來りしかば痛く懼れたり是に於てイスラエルの子孫ヱホバに呼號り
且モーセに言けるはエジプトに墓のあらざるがために汝われらをたづさへいだして曠野に死しむるや何故に汝われらをエジプトより導き出して斯我らに爲や
我等がエジプトにて汝に告て我儕を棄おき我らをしてエジプト人に事しめよと言し言は是ならずや其は曠野にて死るよりもエジプト人に事るは善ればなり
モーセ民にいひけるは汝ら懼るるなかれ立てヱホバが今日汝等のために爲たまはんところの救を見よ汝らが今日見たるエジプト人をば汝らかさねて復これを見ること絶てなかるべきなり
ヱホバ汝等のために戰ひたまはん汝等は靜りて居るべし
時にヱホバ、モーセにいひたまひけるは汝なんぞ我に呼はるやイスラエルの子孫に言て進みゆかしめよ
汝杖を擧げ手を海の上に伸て之を分ちイスラエルの子孫をして海の中の乾ける所を往しめよ
我エジプト人の心を剛愎にすべければ彼等その後にしたがひて入るべし我かくしてパロとその諸の軍勢およびそ戰車と騎兵に囚て榮譽を得ん
我がパロとその戰車と騎兵とによりて榮譽をえん時エジプト人は我のヱホバなるを知ん
爰にイスラエルの陣營の前に行る神の使者移りてその後に行けり即ち雲の柱その前面をはなれて後に立ち
エジプト人の陣營とイスラエル人の陣營の間に至りけるが彼がためには雲となり暗となり是がためには夜を照せり是をもて彼と是と夜の中に相近づかざりき
モーセ手を海の上に伸ければヱホバ終夜強き東風をもて海を退かしめ海を陸地となしたまひて水遂に分れたり
イスラエルの子孫海の中の乾ける所を行くに水は彼等の右左に墻となれり
エジプト人等パロの馬車、騎兵みなその後にしたがひて海の中に入る
暁にヱホバ火と雲との柱の中よりエジプト人の軍勢を望みエジプト人の軍勢を惱まし
其車の輪を脱して行に重くならしめたまひければエジプト人言ふ我儕イスラエルを離れて逃ん其はヱホバかれらのためにエジプト人と戰へばなりと
時にヱホバ、モーセに言たまひける汝の手を海の上に伸て水をエジプト人とその戰車と騎兵の上に流れ反らしめよと
モーセすなはち手を海の上に伸けるに夜明におよびて海本の勢力にかへりたればエジプト人之に逆ひて逃たりしがヱホバ、エジプト人を海の中に擲ちたまへり
即ち水流反りて戰車と騎兵を覆ひイスラエルの後にしたがひて海にいりしパロの軍勢を悉く覆へり一人も遺れる者あらざりき
然どイスラエルの子孫は海の中の乾ける所を歩みしが水はその右左に墻となれり
斯ヱホバこの日イスラエルをエジプト人の手より救ひたまへりイスラエルはエジプト人が海邊に死をるを見たり
イスラエルまたヱホバがエジプト人に爲たまひし大なる事を見たり是に於て民ヱホバを畏れヱホバとその僕モーセを信じたり
是に於てモーセおよびイスラエルの子孫この歌をヱホバに謡ふ云く我ヱホバを歌ひ頌ん彼は高らかに高くいますなり彼は馬とその乗者を海になげうちたまへり
わが力わが歌はヱホバなり彼はわが救拯となりたまへり彼はわが神なり我これを頌美ん彼はわが父の神なり我これを崇めん
ヱホバは軍人にして其名はヱホバなり
彼パロの戰車とその軍勢を海に投すてたまふパロの勝れたる軍長等は紅海に沈めり
大水かれらを掩ひて彼等石のごとくに淵の底に下る
ヱホバよ汝の右の手は力をもて榮光をあらはすヱホバよ汝の右の手は敵を碎く
汝の大なる榮光をもて汝は汝にたち逆ふ者を滅したまふ汝怒を發すれば彼等は藁のごとくに焚つくさる
汝の鼻の息によりて水積かさなり浪堅く立て岸のごとくに成り大水海の中に凝る
敵は言ふ我追て追つき掠取物を分たん我かれらに因てわが心を飽しめん我劍を抜んわが手かれらを亡さんと
汝氣を吹たまへば海かれらを覆ひて彼等は猛烈き水に鉛のごとくに沈めり
ヱホバよ神の中に誰か汝に如ものあらん誰か汝のごとく聖して榮あり讃べくして威ありて奇事を行なふ者あらんや
汝その右の手を伸たまへば地かれらを呑む
汝はその贖ひし民を恩惠をもて導き汝の力をもて彼等を汝の聖き居所に引たまふ
國々の民聞て慄へペリシテに住む者畏懼を懐く
エドムの君等駭きモアブの剛者戰慄くカナンに住る者みな消うせん
畏懼と戰慄かれらに及ぶ汝の腕の大なるがために彼らは石のごとくに默然たりヱホバよ汝の民の通り過るまで汝の買たまひし民の通り過るまで然るべし
汝民を導きてこれを汝の產業の山に植たまはんヱホバよ是すなはち汝の居所とせんとて汝の設けたまひし者なり主よ是汝の手の建たる聖所なり
ヱホバは世々限なく王たるべし
斯パロの馬その車および騎兵とともに海にいりしにヱホバ海の水を彼等の上に流れ還らしめたまひしがイスラエルの子孫は海の中にありて旱地を通れり
時にアロンの姉なる預言者ミリアム鼗を手にとるに婦等みな彼にしたがひて出で鼗をとり且踊る
ミリアムすなはち彼等に和へて言ふ汝等ヱホバを歌ひ頌よ彼は高らかに高くいますなり彼は馬とその乗者を海に擲ちたまへりと
斯てモーセ紅海よりイスラエルを導きてシユルの曠野にいり曠野に三日歩みたりしが水を得ざりき
彼ら遂にメラにいたりしがメラの水苦くして飮ことを得ざりき是をもて其名はメラ(苦)と呼る
是に於て民モーセにむかひて呟き我儕何を飮んかと言ければ
モーセ、ヱホバに呼はりしにヱホバこれに一本の木を示したまひたれば即ちこれを水に投いれしに水甘くなれり彼處にてヱホバ民のために法度と法律をたてたまひ彼處にてこれを試みて
言たまはく汝もし善く汝の神ヱホバの聲に聽したがひヱホバの口に善と見ることを爲しその誡命に耳を傾けその諸の法度を守ば我わがエジプト人に加へしところのその疾病を一も汝に加へざるべし其は我はヱホバにして汝を醫す者なればなりと
斯て彼等エリムに至れり其處に水の井十二棕櫚七十本あり彼處にて彼等水の傍に幕張す
斯てエリムを出たちてイスラエルの子孫の會衆そのエジプトの地を出しより二箇月の十五日に皆エリムとシナイの間なるシンの曠野にいたりけるが
其曠野においてイスラエルの全會衆モーセとアロンに向ひて呟けり
即ちイスラエルの子孫かれらに言けるは我儕エジプトの地に於て肉の鍋の側に坐り飽までにパンを食ひし時にヱホバの手によりて死たらば善りし者を汝等はこの曠野に我等を導きいだしてこの全會を饑に死しめんとするなり
時にヱホバ、モーセに言たまひけるは視よ我パンを汝らのために天より降さん民いでて日用の分を毎日斂むべし斯して我かれらが吾の法律にしたがふや否を試みん
第六日には彼等その取いれたる者を調理ふべし其は日々に斂る者の二倍なるべし
モーセとアロン、イスラエルの全の子孫に言けるは夕にいたらば汝等はヱホバが汝らをエジプトの地より導きいだしたまひしなるを知にいたらん
又朝にいたらば汝等ヱホバの榮光を見ん其はヱホバなんぢらがヱホバに向ひて呟くを聞たまへばなり我等を誰となして汝等は我儕に向ひて呟くや
モーセまた言けるはヱホバ夕には汝等に肉を與へて食はしめ朝にはパンをあたへて飽しめたまはん其はヱホバ己にむかひて汝等が呟くところの怨言を聞給へばなり我儕を誰と爲や汝等の怨言は我等にむかひてするに非ずヱホバにむかひてするなり
モーセ、アロンに言けるはイスラエルの子孫の全會衆に言へ汝等ヱホバの前に近よれヱホバなんぢらの怨言を聞給へりと
アロンすなはちイスラエルの子孫の全會衆に語しかば彼等曠野を望むにヱホバの榮光雲の中に顯はる
ヱホバ、モーセに告て言たまひけるは
我イスラエルの子孫の怨言を聞り彼等に告て言へ汝等夕には肉を食ひ朝にはパンに飽べし而して我のヱホバにして汝等の神なることを知にいたらんと
即ち夕におよびて鶉きたりて營を覆ふ又朝におよびて露營の四圍におきしが
そのおける露乾くにあたりて曠野の表に霜のごとき小き圓き者地にあり
イスラエルの子孫これを見て此は何ぞやと互に言ふ其はその何たるを知ざればなりモーセかれらに言けるは是はヱホバが汝等の食にあたへたまふパンなり
ヱホバの命じたまふところの事は是なり即ち各その食ふところに循ひて之を斂め汝等の人數にしたがひて一人に一オメルを取れ各人その天幕にをる者等のためにこれを取べし
イスラエルの子孫かくなせしに其斂るところに多きと少きとありしが
オメルをもてこれむ量るに多く斂めし者にも餘るところ無く少く斂めし者にも足ぬところ無りき皆その食ふところに循ひてこれを斂めたり
モーセ彼等に誰も朝までこれを殘しおく可らずと言り
然るに彼等モーセに聽したがはずして或者はこれを朝まで殘したりしが蟲たかりて臭なりぬモーセこれを怒る
人々各その食ふところに循ひて朝毎に之を斂めしが日熱なれば消ゆ
第六日にいたりて人々二倍のパンを斂めたり即ち一人に二オメルを斂むるに會衆の長皆きたりて之をモーセに告ぐモーセ
かれらに言ふヱホバの言たまふところ是のごとし明日はヱホバの聖安息日にして休息なり今日汝等烤んとする者を烤き煮んとする者を煮よ其殘れる者は皆明朝まで蔵めおくべし
彼等モーセの命ぜしごとくに翌朝まで蔵めおきしが臭なること無く又蟲もその中に生ぜざりき
モーセ言ふ汝等今日其を食へ今日はヱホバの安息日なれば今日は汝等これを野に獲ざるべし
六日の間汝等これを斂むべし第七日は安息日なればその日には有ざるべし
然るに民の中に七日に出て斂めんとせし者ありしが得ところ無りき
是に於てヱホバ、モーセに言たまひけるは何時まで汝等は吾が誡命とわが律法をまもることをせざるや
汝等視よヱホバなんぢらに安息日を賜へり故に第六日に二日の食物を汝等にあたへたまふなり汝等おのおのその處に休みをれ第七日にはその處より出る者あるべからず
是民第七日に休息り
イスラエルの家その物の名をマナと稱り是は莞の實のごとくにして白く其味は蜜をいれたる菓子のごとし
モーセ言ふヱホバの命じたまふところ是のごとし是を一オメル盛て汝等の代々の子孫のためにたくはへおくべし是はわが汝等をエジプトの地より導きいだせし時に曠野にて汝等を養ひしところのパンを之に見さしめんためなり
而してモーセ、アロンに言けるは壷を取てその中にマナ一オメルを盛てこれをヱホバの前におき汝等の代々の子孫のためにたくはふべし
ヱホバのモーセに命じたまひし如くにアロンこれを律法の前におきてたくはふ
イスラエルの子孫は人の住る地に至るまで四十年が間マナを食へり即ちカナンの地の境にいたるまでマナを食へり
オメルはエパの十分の一なり
イスラエルの子孫の會衆ヱホバの命にしたがひて皆シンの曠野を立出で旅路をかさねてレピデムに幕張せしが民の飮む水あらざりき
是をもて民モーセと爭ひて言ふ我儕に水をあたへて飮しめよモーセかれらに言けるは汝ら何ぞ我とあらそふや何ぞヱホバを試むるや
彼處にて民水に渇き民モーセにむかひて呟き言ふ汝などて我等をエジプトより導きいだして我等とわれらの子女とわれらの家畜を渇に死しめんとするや
是に於てモーセ、ヱホバに呼はりて言ふ我この民に何をなすべきや彼等は殆ど我を石にて撃んとするなり
ヱホバ、モーセに言たまひけるは汝民の前に進み民の中の或長老等を伴ひかの汝が河を撃し杖を手に執て往よ
視よ我そこにて汝の前にあたりてホレブの磐の上に立ん汝磐を撃べし然せば其より水出ん民これを飮べしモーセすなはちイスラエルの長老等の前にて斯おこなへり
かくて彼その處の名をマツサと呼び又メリバと呼り是はイスラエルの子孫の爭ひしに由り又そのヱホバはわれらの中に在すや否と言てヱホバを試みしに由なり
時にアマレクきたりてイスラエルとレピデムに戰ふ
モーセ、ヨシユアに言けるは我等のために人を擇み出てアマレクと戰へ明日我神の杖を手にとりて岡の嶺に立ん
ヨシユアすなはちモーセの己に言しごとくに爲しアマレクと戰ふモーセ、アロンおよびホルは岡の嶺に登りしが
モーセ手を擧をればイスラエル勝ち手を垂ればアマレク勝り
然るにモーセの手重くなりたればアロンとホル石をとりてモーセの下におきてその上に坐せしめ一人は此方一人は彼方にありてモーセの手を支へたりしかばその手日の沒まで垂下ざりき
是においてヨシユア刃をもてアマレクとその民を敗れり
ヱホバ、モーセに言たまひけるは之を書に筆して記念となしヨシユアの耳にこれをいれよ我必ずアマレクの名を塗抹て天下にこれを誌ゆること无らしめんと
斯てモーセ一座の壇を築きその名をヱホバニシ(ヱホバ吾旗)と稱ふ
モーセ云けらくヱホバの寶位にむかひて手を擧ることありヱホバ世々アマレクと戰ひたまはん
茲にモーセの外舅なるミデアンの祭司ヱテロ神が凡てモーセのため又その民イスラエルのために爲したまひし事ヱホバがイスラエルをエジプトより導き出したまひし事を聞り
是に於てモーセの外舅ヱテロかの遣り還されてありしモーセの妻チッポラとその二人の子を挈へ來る
その子の一人の名はゲルシヨムと云ふ是はモーセ我他國に客となりをると言たればなり
今一人の名はエリエゼルと曰ふ是はかれ吾父の神われを助け我を救ひてパロの劍を免かれしめたまふと言たればなり
斯モーセの外舅ヱテロ、モーセの子等と妻をつれて曠野に來りモーセが神の山に陣を張る處にいたる
彼すなはちモーセに言けるは汝の外舅なる我ヱテロ汝の妻および之と供なるその二人の子をたづさへて汝に詣ると
モーセ出てその外舅を迎へ禮をなして之に接吻し互に其安否を問て共に天幕に入る
而してモーセ、ヱホバがイスラエルのためにパロとエジプト人とに爲たまひし諸の事と途にて遇し諸の艱難およびヱホバの己等を拯ひたまひし事をその外舅に語りければ
ヱテロ、ヱホバがイスラエルをエジプト人の手より救ひいだして之に諸の恩典をたまひし事を喜べり
ヱテロすなはち言けるはヱホバは頌べき哉汝等をエジプト人の手とパロの手より救ひいだし民をエジプト人の手の下より拯ひいだせり
今我知るヱホバは諸の神よりも大なり彼等傲慢を逞しうして事をなせしがヱホバかれらに勝りと
而してモーセの外舅ヱテロ燔祭と犠牲をヱホバに持きたれりアロンおよびイスラエルの長老等皆きたりてモーセの外舅とともに神の前に食をなす
次の日にいたりてモーセ坐して民を審判きしが民は朝より夕までモーセの傍に立り
モーセの外舅モーセの凡て民に爲ところを見て言けるは汝が民になす此事は何なるや何故に汝は一人坐しをりて民朝より夕まで汝の傍にたつや
モーセその外舅に言けるは民神に問んとて我に來るなり
彼等事ある時は我に來れば我此と彼とを審判きて神の法度と律法を知しむ
モーセの外舅これに言けるは汝のなすところ善らず
汝かならず氣力おとろへん汝も汝とともなる民も然らん此事汝には重に過ぐ汝一人にては之を爲ことあたはざるべし
今吾言を聽け我なんぢに策を授けん願くは神なんぢとともに在せ汝民のために神の前に居り訴訟を神に陳よ
汝かれらに法度と律法を敎へ彼等の歩むべき道と爲べき事とを彼等に示せ
又汝全體の民の中より賢して神を畏れ眞實を重んじ利を惡むところの人を選み之を民の上に立て千人の司となし百人の司となし五十人の司となし十人の司となすべし
而して彼等をして常に民を鞫かしめ大事は凡てこれを汝に陳しめ小事は凡て彼等みづからこれを判かしむべし斯汝の身の煩瑣を省き彼らをして汝とその任を共にせしめよ
汝もし此事を爲し神また斯汝に命じなば汝はこれに勝ん此民もまた安然にその所に到ることを得べし
モーセその外舅の言にしたがひてその凡て言しごとく成り
モーセすなはちイスラエルの中より遍く賢き人を擇みてこれを民の長となし千人の司となし百人の司となし五十人の司となし十人の司となせり
彼等常に民を鞫き難事はこれをモーセに陳べ小事は凡て自らこれを判けり
斯てモーセその外舅を還したればその國に往ぬ
イスラエルの子孫エジプトの地を出て後第三月にいたりて其日にシナイの曠野に至る
即ちかれらレピデムを出たちてシナイの曠野にいたり曠野に幕を張り彼處にてイスラエルは山の前に營を設けたり
爰にモーセ登て神に詣るにヱホバ山より彼を呼て言たまはく汝かくヤコブの家に言ひイスラエルの子孫に告べし
汝らはエジプト人に我がなしたるところの事を見我が鷲の翼をのべて汝らを負て我にいたらしめしを見たり
然ば汝等もし善く我が言を聽きわが契約を守らば汝等は諸の民に愈りてわが寶となるべし全地はわが所有なればなり
汝等は我に對して祭司の國となり聖き民となるべし是等の言語を汝イスラエルの子孫に告べし
是に於てモーセ來りて民の長老等を呼びヱホバの己に命じたまひし言を盡くその前に陳たれば
民皆等く應へて言けるはヱホバの言たまひし所は皆われら之を爲べしとモーセすなはち民の言をヱホバに告ぐ
ヱホバ、モーセに言たまひけるは觀よ我密雲の中にをりて汝に臨む是民をして我が汝と語るを聞しめて汝を永く信ぜしめんがためなりとモーセ民の言をヱホバに告たり
ヱホバ、モーセに言たまひけるは汝民の所に往て今日明日これを聖め之にその衣服を澣せ
準備をなして三日を待て其は第三日にヱホバ全體の民の目の前にてシナイ山に降ればなり
汝民のために四周に境界を設けて言べし汝等愼んで山に登るなかれその境界に捫るべからず山に捫る者はかならず殺さるべし
手を之に觸べからず其者はかならす石にて撃ころされ或は射ころさるべし獣と人とを言ず生ることを得じ喇叭を長く吹鳴さば人々山に上るべしと
モーセすなはち山を下り民にいたりて民を聖め民その衣服を濯ふ
モーセ民に言けるは準備をなして三日を待て婦人に近づくべからず
かくて三日の朝にいたりて雷と電および密雲山の上にあり又喇叭の聲ありて甚だ高かり營にある民みな震ふ
モーセ營より民を引いでて神に會しむ民山の麓に立に
シナイ山都て煙を出せりヱホバ火の中にありてその上に下りたまへばなりその煙竃の煙のごとく立のぼり山すべて震ふ
喇叭の聲彌高くなりゆきてばげしくなりける時モーセ言を出すに神聲をもて應へたまふ
ヱホバ、シナイ山に下りその山の頂上にいまし而してヱホバ山の頂上にモーセを召たまひければモーセ上れり
ヱホバ、モーセに言たまひけるは下りて民を警めよ恐らくは民推破りてヱホバに來りて見んとし多の者死るにいたらん
又ヱホバに近くところの祭司等にその身を潔めしめよ恐くはヱホバかれらを撃ん
モーセ、ヱホバに言けるは民はシナイ山に得のぼらじ其は汝われらを警めて山の四周に境界をたて山を聖めよと言たまひたればなり
ヱホバかれに言たまひけるは往け下れ而して汝とアロンともに上り來るべし但祭司等と民には推破りてにのぼりきたらしめざれ恐らくは我かれらを撃ん
モーセ民にくだりゆきてこれに告たり